説明

ロータリ除雪車における搬送量算出方法、除雪量と搬送量算出方法及び制御方法並びにそのロータリ除雪車

【課題】除雪作業の効率向上を図ることができるロータリ除雪車を提供する。
【解決手段】オーガ2とブロワ3を備えたロータリ除雪車1の制御方法において、ブロワ3の回転数、オーガ2の回転数、ブロワ3の負荷、オーガ2の負荷を測定し、ブロワ3の回転数と負荷の測定値からブロワ3による除雪量を算出し、オーガ2の回転数と負荷の測定値からオーガ2の雪の搬送量を算出し、除雪量と搬送量とを比較し、除雪量に必要な搬送量になるようにオーガ2の回転を制御する。そして、積雪量や雪の性質による負荷の変化に対応し、「除雪」及び「搬送量」を概算する方法から目標オーガ回転数を算出し、オーガ回転数を制御することで、オーガ消費出力の無駄を最小限に抑え、そのロータリ除雪車1が持つ除雪能力を効率的に引き出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オーガとブロワを備えたロータリ除雪車に係り、特にロータリ除雪車における搬送量算出方法、除雪量と搬送量算出方法及び制御方法並びにそのロータリ除雪車に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリ除雪車は、車体前方にオーガとその後方にブロワを有し、オーガは軸方向を水平状態で走行車両の走行方向にほぼ直行して回転し、堆積した雪を切り崩し、ブロワへと送り込む。ブロワは走行方向にほぼ平行な回転軸となる遠心羽根であり、オーガによって切り崩された雪を周囲の空気流と共に遠心力により放擲する。動力は機関から直接あるいは油圧などに変換された回転力が減速機を介して伝達されオーガとブロワは歯車やチェーンによって機械的に接続される。従って、オーガの回転はブロワの回転数に比例して増減する構造である。オペレータが放擲される雪を制御する手段としてブロワの回転数を変速させて作業を行うが、オーガの回転はブロワの回転数に応じて変速していた(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−96219号公報
【特許文献2】特開2004−293071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ロータリ除雪車では、オーガ及びブロワの除雪装置の駆動系統と、走行装置の駆動系統とを独立して備えているが、オーガ及びブロワを同一の駆動モータにより駆動するため、除雪作業中にオーガとブロワに異なる負荷が加わると、効率よく除雪を行うことができない。
【0005】
そこで、オーガとブロワの駆動を別系統にすることが考えられるが、単にオーガとブロワの駆動を別系統にしても、効率よく除雪を行うことはできない。
【0006】
そこで、本発明は上述した問題点に鑑み、除雪作業の効率向上を図ることができるロータリ除雪車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、雪を掻き集めるオーガと雪を放擲するブロワを備えたロータリ除雪車における除雪量算出方法において、前記ロータリ除雪車は、前記ブロワとオーガをそれぞれ独立駆動し、前記オーガの回転を検出するオーガ回転センサと前記オーガの負荷を検出するオーガ負荷センサを使用して前記オーガの回転数と負荷を測定し、これら測定値から該オーガによりブロワへ搬送される雪の搬送量を算出することを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、雪を掻き集めるオーガと雪を放擲するブロワを備えたロータリ除雪車における除雪量と搬送量算出方法において、前記ロータリ除雪車は、前記ブロワとオーガをそれぞれ独立駆動し、前記ブロワの回転を検出するブロワ回転センサと前記ブロワの負荷を検出するブロワ負荷センサを使用して前記ブロワの回転数と負荷を測定し、これら測定値から除雪量を算出し、前記オーガの回転を検出する回転センサと前記オーガの負荷を検出するオーガ負荷センサを使用して前記オーガの回転数と負荷を測定し、これら測定値から搬送量を算出することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、雪を掻き集めるオーガと雪を放擲するブロワを備えたロータリ除雪車の制御方法において、前記ブロワとオーガをそれぞれ独立駆動し、前記オーガの回転を検出するオーガ回転センサと前記オーガの負荷を検出するオーガ負荷センサを使用して前記オーガの回転数と負荷を測定し、前記ブロワの性能から予め該ブロワによる除雪量を設定し、前記オーガの回転数と負荷の測定値から該オーガによりブロワへ搬送される雪の搬送量を算出し、前記除雪量と前記搬送量とを比較し、前記搬送量が前記除雪量と等しくなる前記オーガの目標オーガ回転数を設定し、この目標オーガ回転数になるように前記オーガの回転を制御することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る発明は、雪を掻き集めるオーガと雪を放擲するブロワを備えたロータリ除雪車において、前記ブロワとオーガをそれぞれ独立駆動し、前記オーガの回転を検出するオーガ回転センサと前記オーガの負荷を検出するオーガ負荷センサを備え、前記オーガ回転センサとオーガ負荷センサを使用して前記オーガの回転数と負荷を測定し、前記ブロワの性能から予め該ブロワによる除雪量を設定し、前記オーガの回転数と負荷の測定値から該オーガによりブロワへ搬送される雪の搬送量を算出し、前記除雪量と前記搬送量とを比較し、前記搬送量が前記除雪量と等しくなる前記オーガの目標オーガ回転数を設定し、この目標オーガ回転数になるように前記オーガの回転を制御する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1の構成によれば、オーガによる雪の搬送量を算出することにより、効率のよい除雪を行うことができる。
【0012】
また、本発明の請求項2の構成によれば、オーガによる雪の搬送量とブロワによる除雪量を算出することにより、効率のよい除雪を行うことができる。
【0013】
また、本発明の請求項3の構成によれば、ブロワの性能に対応したオーガの回転を算出することにより、除雪効率の向上を図ることができる。
【0014】
また、本発明の請求項4の構成によれば、除雪効率の高いロータリ除雪車が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施例の実施例1を示すロータリ除雪車の動力伝達系統図である。
【図2】同上、ロータリ除雪車を示し、図2(A)は正面図、図2(B)は側面図である。
【図3】同上、制御方法のブロック図である。
【図4】同上、他の制御方法のブロック図である。
【図5】同上、除雪量とブロワ回転数、搬送量とオーガ回転数、除雪量とブロワ回転数の関係を示すグラフ図である。
【図6】同上、オーガ回転数と出力の関係を示すグラフ図である。
【図7】同上、ブロワ消費エネルギーとオーガ回転数の関係を示すグラフ図である。
【図8】同上、ブロワ消費出力と除雪量の関係を示すグラフ図である。
【図9】同上、オーガ回転数とオーガ消費出力の関係を示すグラフ図である。
【図10】同上、表示器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明のロータリ除雪車の実施例1について説明する。
【実施例1】
【0017】
オーガ、ブロワの消費出力に着目して見ると、図5などに示すように、回転数が上がればオーガ、ブロワとも消費出力が大きくなる。また、雪の処理量については、過去の実績から経験的に、ブロワの回転が速いほど、雪の処理量をあらわす「除雪量」は少なくなることを発明者は知見した。すなわち、図5のブロワ回転数と除雪量のグラフに示すように、気体と異なり質量の重い雪をブロワで送る場合、回転数を上げても、回転数が一定以上になると、原動機の出力(馬力)が追いつかなくなるので、除雪量が低下する。逆にオーガの場合はスクリューリボンの螺旋形状に沿って雪を掻き集める構造なので回転が速いほど雪の処理量「搬送量」は多くなる。
【0018】
そこで、発明では、ブロワの回転数によって変化する「除雪量」に応じ、最適なオーガの「搬送量」が得られる回転数に制御する方法を提供し、ロータリ除雪装置の省エネルギー化を図るものである。
【0019】
本発明は、ブロワとオーガの駆動装置をそれぞれ独立駆動とし、回転数などの回転情報と負荷量などの負荷情報が分かるセンサを設置する。また、各センサからの情報を演算し、オーガ回転装置の制御装置へ信号出力可能な演算子を用意する。演算子では各センサ信号をブロワ負荷、ブロワ回転数、オーガ負荷、オーガ回転数に変換する。そして、ブロワ消費出力と「除雪量」を算出し、その「除雪量」に必要な「搬送量」とオーガ負荷から最適なオーガ回転数を計算し、オーガ回転装置の制御装置へ信号出力することで、省エネルギー化を達成する。
【0020】
具体的には、図1〜図10に示すように、除雪装置であるロータリ除雪車1は、水平軸回転自在なオーガ2とその奥に進行方向に平行な回転軸3Aを持つブロワ3を具備する。
【0021】
堆積した雪はオーガ2で掻き崩され、オーガ2のスクリューリボン2Aで中央部奥のブロワ3へと搬送される。その後、雪は回転するブロワ3で空気流と共に吐出され、ブロワダクト4を経てシュート5から投擲される。
【0022】
前記ロータリ除雪車1は、前記オーガ2の駆動手段の一例として油圧モータ2Bを装備し、回転制御手段として可変容量油圧ポンプ2Cを備え、可変容量油圧ポンプ2Cからの流量を制御することで、前記油圧モータ2Bの回転数を制御する。前記オーガ2の回転を検出するオーガ回転センサとして近接センサを備え、この近接センサとして回転する歯車の山谷を検知する回転センサ6を使用し、また、オーガ2の負荷を検出するオーガ負荷センサには圧力計7を使用し、この圧力計7は、前記油圧モータ2Bに設けられ、この油圧モータ2Bの圧力を測定し、この圧力と既知の油圧モータ2Bの容量などからオーガ負荷を算出することができる。
【0023】
前記ブロワ3の駆動手段の一例として、車載の原動機8からの回転力をドライブシャフト9,11により伝達する機械式駆動とし、それらドライブシャフト9,11の中間に変速機10を具備する。また、前記ドライブシャフト11とブロワ3の回転軸3Aとの間には減速機12が設けられている。さらに、ブロワ3の回転を検出するブロワ回転センサとして、原動機8の回転を検出する回転センサ8A(歯車の歯数検出式)を使用し、ブロワ負荷センサとしてドライブシャフト11に装着した歪式のトルク計11Aを使用する。
【0024】
また、ロータリ除雪車1の走行駆動手段の一例として走行油圧モータ21を装備し、この走行油圧モータ21と車輪22との間に変速機23を具備する。また、ロータリ除雪車1の走行速度は車載の速度検出手段により検出し、また、車輪22による走行の負荷を検出する走行負荷センサには圧力計24を使用し、この圧力計24は、前記走行油圧モータ21に設けられ、この走行油圧モータ21の圧力を測定し、この圧力と既知の走行油圧モータ21の容量などから走行負荷を算出することができる。
【0025】
尚、オーガ2とブロワ3と走行装置の駆動力は、共通する単一の原動機8を動力源とする。
【0026】
次に、本発明のロータリ除雪車1の制御方法の一例について説明する。
【0027】
ブロワ消費出力の算出方法
(1)前記ブロワ3に係り、ブロワ負荷Fbとブロワ回転数Nbの入力情報から、ブロワ消費出力Ebを算出する。前記トルク計11Aにより得られたブロワ負荷Fbが偶力[Nm]、前記回転センサ6により得られたブロワ回転数[sec-1]の単位で表される値の時、計算式は下記の数1で表すことができる。尚、ブロワ回転数[sec-1]は1秒間における回転数である。
【0028】
【数1】

但し、kbは係数である。
(1−1)ブロワ負荷Fbが測定できない場合について補足説明する。前記オーガ2に係り、オーガ負荷Faとオーガ回転数Naの入力情報から、オーガ消費出力Eaを算出する。前記圧力計7により得られたオーガ圧力Paが圧力[MPa]、前記回転センサ6により得られたオーガ回転数Naが[sec-1]の単位で表される値の時、計算式は下記の数2で表すことができる。
【0029】
【数2】

但し、Fa=Pa×q/2π、qは前記油圧モータ2Bの吐き出し容量、kaは係数である。
(1−2)走行負荷Fdと走行速度Ndの入力情報から、走行消費出力Edを算出する。前記圧力計24から得られた走行圧力Pdが圧力[MPa]、前記速度検出手段により得られた走行速度Ndが[m/s]の単位で表される値の時、計算式は下記の数3で表すことができる。
【0030】
【数3】

但し、Fd=Pd×q×i/2πR、qは走行油圧モータ21の吐き出し容量、iは前記変速機23による走行油圧モータ21と車輪22の回転のギヤ比、Rは車輪22の半径[m]、kdは係数である。
(1−3)ロータリ除雪車1を駆動するエンジンなど原動機8の原動力E[kW]が分かれば、各装置で消費される出力の総和は原動力Eと等しいから、下記の数4で得られる。
【0031】
【数4】

但し、αはロータリ除雪車1のその他の消費出力で一定値としてとらえることができる。
式を変形して、ブロワ消費出力Ebを下記の数5で求めることができる。
【0032】
【数5】

(2)ブロワ消費出力Ebはブロワ3単体が回転する時に生じる慣性などによるその他の出力Eb0と負荷に応じた実消費出力Eb´の和として捉えることができる。その他の出力Eb0は回転数に依存するから、予め空転時に測定をして、定数化しておく。
【0033】
【数6】

ここで、その他の出力Eb0はブロワ回転数Nbの二乗に比例(Eb0∝Nb2)する。
ブロワの「除雪量」の概算方法
(3)実ブロワ消費出力Eb´と除雪量Qは同じブロワ回転数Nbの条件下で比例関係にあることがわかっているから、除雪量Qを下記の数7から算出できる。
【0034】
【数7】

但し、kqはブロワ形状による係数であり、1/Nbに比例する関数である。
オーガの「搬送量」の概算方法
(4)除雪量Qに必要なオーガ搬送量Q´はQ以上の量であればよいから、Q´=Qとして、下記の搬送量に係る数8から目標オーガ回転数Niを求める。
【0035】
【数8】

但し、kcはオーガ形状とオーガ負荷Faにより決定される係数である。
【0036】
上記の数8を変形して、Q´=Qを代入すると、下記の数9が得られる。
【0037】
【数9】

となる。
(4−1)搬送量Q´の式の導出は以下の通りである。
【0038】
オーガ消費出力Eaはオーガ2の回転に関する慣性出力と、オーガ2のスクリューリボン2Aに沿って雪を移動する摩擦に関する運動出力とブロワ3まで雪を持ち上げる位置出力とその他の出力の総和として下記の数10で表すことができる。
【0039】
【数10】

ここで、Q´は搬送中の雪の単位時間当たり質量、Lはオーガ2の送り量に関する距離、Hはオーガ2からブロワ3までの高さ、μは雪とオーガ2の摩擦係数、gは重力加速度、αaはオーガ2のその他の消費出力とする。
【0040】
【数11】

【0041】
【数12】

【0042】
【数13】

となる。Ea=ka×Fa×Naで求められるから、オーガ消費出力Eaはオーガ回転数Naに比例する。
【0043】
基礎試験のデータを分析したところ、実用回転範囲ではαaは小さな値であり、変化量は少ないことから、オーガ2のその他の消費出力αaはオーガ回転数Naに無関係な定数として検討を進める。
【0044】
その結果、搬送量Q´をオーガ回転数Naの関数として纏めると、下記の数14となる。
【0045】
【数14】

ここで、kc=ka×Fa/(μL+gH)、η=αa/(μL+gH)とすれば、
【0046】
【数15】

となる。
【0047】
kcはオーガ負荷Faに比例する値である。そして、上述したようにkc=ka×Fa/(μL+gH)であるから、値kcはオーガ負荷Faの測定データから算出することができる。
【0048】
ηは雪の搬送に直接関わらない出力に関する項であり、小さい値として無視すると、
【0049】
【数16】

の式が得られる。
【0050】
数16により、厳密な値ではないが、実用に問題のない解が得られる。
目標オーガ回転数の算出方法
(5)これまでの数式から、下記の数17と数18が得られる。
【0051】
尚、数17は、上記数9のNi=Q/kcの除雪量Qに数7のkq×Eb´を代入すると、Ni=kq×Eb´/kcとなり、上記数6から実消費出力Eb´はEb−Eb0であるから、Ni=kq×(Eb−Eb0)/kcとなり、ここで上記数1からブロワ消費出力Ebはkb×Fb×Nbであるから、下記の式が得られる。
【0052】
【数17】

または、
【0053】
【数18】

となり、数17において、上述したように値kcはオーガ負荷Faの測定データから算出することができるから、数17を用いてオーガ負荷Fa、ブロワ負荷Fb、ブロワ回転数Nbの情報から目標オーガ回転数Niが求められる。
【0054】
繰返しによる目標オーガ回転数の収束について
(6)オーガ回転数を変化させた時、オーガ負荷Pa、ブロワ回転数Na、ブロワ負荷Fbがそれぞれ原動機8の原動力Eの範囲内でバランスを変え増減するので、目標オーガ回転数Niは変化する。
【0055】
したがって、その都度、上記(1)から(5)の手順でブロワ消費出力の算出から目標オーガ回転数Niまでを再計算していく。そして、一定時間後にはその系の中で最適なオーガ回転数Naに近付ける。
【0056】
オーガ回転数の算出方法(簡略式)
(7)ブロワ3の除雪量を計算するためにブロワ負荷Fb、ブロワ回転数Nbの情報を回転センサ8Aで測定しているが、以下に、オーガ回転数Na、オーガ負荷Paの測定のみで目標オーガ回転数を算出する方法を述べる。
【0057】
ブロワ除雪量は、あらかじめ定めた数値とし、その定数ブロワ除雪量に対して、上記(4)(6)の手順でオーガ搬送量を計算し、目標オーガ回転数Niを計算する。尚、ブロワ3の除雪量Qは、ブロワ3の性能から目標とする除雪量Qを設定することができる。この時に必要な入力情報はオーガ回転数Naとオーガ負荷Faだけでよい。定数のブロワ除雪量に複数個(2,3個)の値を用意し、ブロワ3の変速段数に合わせて切替えることができるようにすれば、簡易的な計測でオーガ消費出力Eaを低減することができる。ブロワ3の変速段数は、ブロワ3の性能から適した範囲で高速、中速、低速などに設定できる。
【0058】
【数19】

となる。
オーガ回転数の制御方法
以上を基本計算し、さらに次の条件を組み込みオーガ回転数Naの制御信号を出力する。
【0059】
オーガ負荷Paによる回転数下限制御方法
(8)オーガ2の回転数が小さくなると、オーガ負荷Paは大きくなることが分かっているので、制御装置を損傷しないためにもオーガ負荷Paの上限値を定めておく。
【0060】
オーガ負荷Paが上限値を上回った場合は、目標オーガ回転数Niを大きくするように補正する。
オーガ回転数による回転数制御方法
(9)オーガ回転数Naが一定の値より小さくなると、雪詰まりを生じ、ブロワ3へ搬送することができなくなることが分かっており、この時のオーガ回転数の下限値とする。
【0061】
オーガ回転数Naがオーガ回転数の下限値(オーガ回転数下限値)に近付いた場合は、目標オーガ回転数Niを大きくするように補正する。
【0062】
回転数下限制御の選択
(10)上記(8)と(9)の項は監視する入力情報は異なるが、目標オーガ回転数Niが下がり過ぎないようにする目的は同じなのでどちらか一方でよい。
回転数上限制御の方法
(11)オーガ駆動装置の構成部品を保護する目的で回転数上限値を設け、オーガ回転数Naが上限値(オーガ回転数上限値)に近い場合は目標オーガ回転数Niを小さくするように補正する。
【0063】
除雪作業中の不連続な状況に対する対処
(12)実際の除雪作業では吹き溜まりで発生する積雪量の増減や陰日向で雪の性質が変化しブロワ負荷Fbが急激に変わるといった不連続な変化が起こる。このため、不連続的に計算された目標オーガ回転数Niが一定の値に落ち着かないことがあるかも知れない。
【0064】
この対処方法として、オーガ回転数変化の上限値と下限値を定め、算出された目標オーガ回転数Niが入力情報であるオーガ回転数Naと比較して変化量が、上限(または下限値)を超えていた場合は、上限値(または下限値)を超えない範囲で目標オーガ回転数Niの出力値を補正する。
【0065】
以上のような流れで、積雪量や雪の性質による負荷の変化に対応し、「除雪」及び「搬送量」を概算する方法から目標オーガ回転数Niを算出し、オーガ回転数Naを制御することで、オーガ消費出力の無駄を最小限に抑え、その除雪装置が持つ除雪能力を効率的に引き出すことができる。
【0066】
また、オーガ2の回転制御を自動化することができるので、オペレータは従来どおりブロワ回転を制御するだけで、オペレータの操作負担をかけずにオーガ消費出力を抑制でき、除雪効率が向上する。
【0067】
さらに、従来はオペレータの経験により感覚的に除雪量・除雪効率を把握するだけであったが、除雪量Qを概算する方法を利用すれば、オペレータに対して概算除雪量を視覚的に知らせることができ、作業性の効率向上に役立てることができる。
【0068】
尚、図10はロータリ除雪車1に搭載した表示器31であり、上述した数式などから得られたロータリ除雪車1の状態を表示する複数の表示部32,32・・・を備え、これら表示部32,32・・・は、エンジン(原動機)回転数、除雪量Q、ブロワ消費出力Eb、除雪燃料消費率などを表示する。
【0069】
これらの装置の制御の仕組みとして、図3のような流れでオーガ2、ブロワ3の各回転数Na,Nb、負荷Fa,Fbの情報を処理し、最適なオーガ回転数Naを求める演算子を用意する。求められた最適なオーガ回転数Naは、オーガ駆動装置の油流量制御の信号に変換して出力し、この信号により可変容量油圧ポンプ2Cを制御し、これによりオーガの回転数Naを制御する。具体的には、ステップ1(S1)において、各センサの検出データの入力によりオーガ回転数Na、ブロワ回転数Nb、Paオーガ負荷、ブロワ負荷Fbを算出し、これら算出データからステップ2(S2)において、ブロワ消費出力Ebを算出し、ステップ1及び2で得られた算出データから、ステップ3(S3)において除雪量Qを算出し、これまでのステップ1〜3で得られた算出データから、ステップ4(S4)において目標オーガ回転数Niを算出し、ステップ5(S5)において、目標オーガ回転数Niと測定で得られたオーガ回転数Naとを比較し、オーガ回転数Naを目標オーガ回転数Niに設定し、且つ目標オーガ回転数Niが雪詰まり限界の下限値以上であるか、機械許容限界の上限値以下であるかを判断する。尚、この判断は、上記(8)〜(12)の手法により行われる。ステップ5(S5)の条件を満足する目標オーガ回転数Niのデータをステップ6(S6)に送り、ステップ6(S6)において、目標オーガ回転数Niを出力し、この出力により可変容量油圧ポンプ2Cからの流量を制御することで、前記油圧モータ2Bの回転数を制御してオーガ2の回転を目標オーガ回転数Niに設定する。これらステップ1(S1)〜ステップ6(S6)を所定時間間隔で繰り返し、除雪作業中にブロワ負荷Fbとブロワ回転数Nbが変化しても、最適な目標オーガ回転数Niになるようにオーガ2の回転を制御する。尚、制御には記憶装置を備えたパーソナルコンピュータなどを用いることができる。
【0070】
また、図4においては、ステップ2とステップ3を省略し、ステップ2とステップ3との間にステップ7(S7)として、除雪量Qを設定する。この場合、ブロワ3の性能からロータリ除雪車1に適した除雪量Qをオペレータが入力する。
【0071】
以上、説明したように、本発明のロータリ除雪装置の駆動制御方法によれば、オーガ回転数Naを制御することでオーガ消費出力Eaを低減させることができ、オペレータはオーガ2の制御を意識することなく従来どうりブロワ回転制御操作だけで効率的な除雪作業ができるようになる。すなわちブロワ3による除雪量Qに応じてオーガ2の出力を調整し、効率のよい除雪を行うことができる。
【0072】
本発明に係る基礎研究の結果を図6〜図9に示す。試験の条件はブロワ回転数Nbを一定にし、オーガ回転数Naを変化させて除雪作業を行い、その除雪量Qを算出したものである。横軸はオーガ回転数Naを示し、縦軸棒グラフは各種センサの情報から算出したオーガ消費出力Eaとブロワ消費出力Ebである。折れ線は単位時間当たりの除雪量Qを表している。この図から言えることはオーガ回転数Naが小さいほどオーガ消費出力Eaが小さくなる。ブロワ消費出力Ebが大きいほど除雪量Qが大きくなる。オーガ消費出力Eaとブロワ消費出力Ebの和はロータリ除雪車1に搭載している原動機8の出力以下であり、オーガ消費出力Eaが減少した分だけブロワ消費出力Ebが増加している。仮にブロワ消費出力Ebが一定で除雪量Qが一定量と仮定すると、オーガ消費出力Eaが減少した分、省エネルギー化することができる。図9のようにオーガ消費出力Eaは45%程度低減した。
【0073】
ロータリ除雪車1はディーゼルエンジンなどの一定出力の原動機8を使用するため、現実にはオーガ消費出力Eaが減少した分の余剰出力は他の仕事に利用できる。基礎研究の結果ではブロワ消費出力Ebが最も顕著に増える。上述したように一定条件下では除雪量Qはブロワ消費出力Ebに比例することからEbが増えた分、除雪量Qが増加する。図9では除雪量Qが22%増加している。
【0074】
このように本実施例では、請求項1に対応して、雪を掻き集めるオーガ2と雪を放擲するブロワ3を備えたロータリ除雪車1における除雪量算出方法において、ロータリ除雪車1は、ブロワ3とオーガ2をそれぞれ独立駆動し、オーガ2の回転を検出するオーガ回転センサたる回転センサ6とオーガ2の負荷を検出するオーガ負荷センサたる圧力計7を使用してオーガ2の回転数Naと負荷Faを測定し、これら測定値からオーガ2によりブロワ3へ搬送される雪の搬送量を算出することにより、効率のよい除雪を行うことができる。
【0075】
また、このように本実施例では、請求項2に対応して、雪を掻き集めるオーガ2と雪を放擲するブロワ3を備えたロータリ除雪車1における除雪量と搬送量算出方法において、ブロワ3とオーガ2をそれぞれ独立駆動し、ブロワ3の回転を検出するブロワ回転センサたる回転センサ8Aとブロワ3の負荷を検出するブロワ負荷センサたる歪式のトルク計11Aを使用してブロワ3の回転数Nbと負荷Fbを測定し、これら測定値から除雪量を算出し、オーガ2の回転を検出するオーガ回転センサたる回転センサ6とオーガ2の負荷を検出するオーガ負荷センサたる圧力計7を使用してオーガ2の回転数Naと負荷Faを測定し、これら測定値からオーガ2によりブロワ3へ搬送される雪の搬送量を算出することにより、効率のよい除雪を行うことができる。
【0076】
また、このように本実施例では、請求項3に対応して、雪を掻き集めるオーガ2と雪を放擲するブロワ3を備えたロータリ除雪車1の制御方法において、ブロワ3とオーガ2をそれぞれ独立駆動し、オーガ2の回転を検出するオーガ回転センサたる回転センサ6とオーガ2の負荷を検出するオーガ負荷センサたる圧力計7を使用してオーガ2の回転数Naと負荷Faを測定し、ブロワ3の性能から予め除雪量Qを設定し、オーガ2の回転数Naと負荷Faの測定値からオーガ2によりブロワ3へ搬送される雪の搬送量を算出し、除雪量Qと搬送量とを比較し、搬送量が除雪量Qと等しくなるオーガ2の目標オーガ回転数Niを設定し、この目標オーガ回転数Niになるようにオーガ2の回転を制御することにより、除雪効率の向上を図ることができる。
【0077】
また、このように本実施例では、オーガ2とブロワ3を備えたロータリ除雪車1の制御方法において、ブロワ3の回転数Nb、オーガ2の回転数Na、ブロワ3の負荷Fb、オーガ2の負荷Faを測定し、ブロワ3の回転数Nbと負荷Fbの測定値から除雪量Qを算出し、オーガ2の回転数Naと負荷Faの測定値から搬送量を算出し、除雪量Qと搬送量とを比較し、除雪量Qに必要な搬送量からオーガ2の回転数Naを算出するから、ブロワ3の除雪量Qに対応したオーガ2の回転数Naを算出することにより、除雪効率の向上を図ることができる。
【0078】
また、このように本実施例では、除雪量Qに必要な搬送量になるようにオーガ2の回転を制御することにより、オーガ消費出力Eaを低減し、この低減分をブロワ消費出力Ebに用いるから、原動機8の出力を効率よく振り分けて除雪効率を向上することができる。
【0079】
また、このように本実施例では、請求項4に対応して、雪を掻き集めるオーガ2と雪を放擲するブロワ3を備えたロータリ除雪車1において、ブロワ3とオーガ2をそれぞれ独立駆動し、オーガ2の回転を検出するオーガ回転センサたる回転センサ6とオーガ2の負荷を検出するオーガ負荷センサたる圧力計7を備え、回転センサ6と圧力計7を使用してオーガ2の回転数Naと負荷Faを測定し、ブロワ3の性能から予め除雪量Qを設定し、オーガ2の回転数Naと負荷Faの測定値からオーガ2によりブロワ3へ搬送される雪の搬送量を算出し、除雪量Qと搬送量とを比較し、搬送量が除雪量Qと等しくなるオーガ2の目標オーガ回転数Niを設定し、この目標オーガ回転数Niになるようにオーガ2の回転を制御するから、除雪効率の高いロータリ除雪車1が得られる。
【0080】
また、このように本実施例では、オーガ2とブロワ3を備えたロータリ除雪車において、オーガ2とブロワ3を備えたロータリ除雪車1の制御方法において、ブロワ3の回転数Nb、オーガ2の回転数Na、ブロワ3の負荷Fb、オーガ2の負荷Faを測定し、ブロワ3の回転数Nbと負荷Fbの測定値から除雪量Qを算出し、オーガ2の回転数Naと負荷Faの測定値から搬送量を算出し、除雪量Qと搬送量とを比較し、除雪量Qに必要な搬送量になるようにオーガ2の回転を制御するから、除雪効率の高いロータリ除雪車1が得られる。
【0081】
尚、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、オーガ回転センサ,オーガ負荷センサ,ブロワ回転センサ及びブロワ負荷センサは実施例に示したものに限らず、各種のものを用いることができる。
【符号の説明】
【0082】
1ロータリ除雪車
2 オーガ
3 ブロワ
6 回転センサ(オーガ回転センサ)
7 圧力計(オーガ負荷センサ)
8 原動機
8A 回転センサ(ブロワ回転センサ)
11A トルク計(ブロワ負荷センサ)
Fb ブロワ負荷
Nb ブロワ回転数
Eb ブロワ消費出力
Fa オーガ負荷
Na オーガ回転数
Ni 目標オーガ回転数
Ea オーガ消費出力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雪を掻き集めるオーガと雪を放擲するブロワを備えたロータリ除雪車における除雪量算出方法において、
前記ロータリ除雪車は、前記ブロワとオーガをそれぞれ独立駆動し、
前記オーガの回転を検出するオーガ回転センサと前記オーガの負荷を検出するオーガ負荷センサを使用して前記オーガの回転数と負荷を測定し、これら測定値から該オーガによりブロワへ搬送される雪の搬送量を算出することを特徴とするロータリ除雪車における搬送量算出方法。
【請求項2】
雪を掻き集めるオーガと雪を放擲するブロワを備えたロータリ除雪車における除雪量と搬送量算出方法において、
前記ロータリ除雪車は、前記ブロワとオーガをそれぞれ独立駆動し、
前記ブロワの回転を検出するブロワ回転センサと前記ブロワの負荷を検出するブロワ負荷センサを使用して前記ブロワの回転数と負荷を測定し、これら測定値から除雪量を算出し、
前記オーガの回転を検出する回転センサと前記オーガの負荷を検出するオーガ負荷センサを使用して前記オーガの回転数と負荷を測定し、これら測定値から搬送量を算出することを特徴とするロータリ除雪車における除雪量と搬送量算出方法。
【請求項3】
雪を掻き集めるオーガと雪を放擲するブロワを備えたロータリ除雪車の制御方法において、
前記ブロワとオーガをそれぞれ独立駆動し、
前記オーガの回転を検出するオーガ回転センサと前記オーガの負荷を検出するオーガ負荷センサを使用して前記オーガの回転数と負荷を測定し、前記ブロワの性能から予め該ブロワによる除雪量を設定し、前記オーガの回転数と負荷の測定値から該オーガによりブロワへ搬送される雪の搬送量を算出し、前記除雪量と前記搬送量とを比較し、前記搬送量が前記除雪量と等しくなる前記オーガの目標オーガ回転数を設定し、この目標オーガ回転数になるように前記オーガの回転を制御することを特徴とするロータリ除雪車の制御方法。
【請求項4】
雪を掻き集めるオーガと雪を放擲するブロワを備えたロータリ除雪車において、
前記ブロワとオーガをそれぞれ独立駆動し、
前記オーガの回転を検出するオーガ回転センサと前記オーガの負荷を検出するオーガ負荷センサを備え、
前記オーガ回転センサとオーガ負荷センサを使用して前記オーガの回転数と負荷を測定し、前記ブロワの性能から予め該ブロワによる除雪量を設定し、前記オーガの回転数と負荷の測定値から該オーガによりブロワへ搬送される雪の搬送量を算出し、前記除雪量と前記搬送量とを比較し、前記搬送量が前記除雪量と等しくなる前記オーガの目標オーガ回転数を設定し、この目標オーガ回転数になるように前記オーガの回転を制御することを特徴とするロータリ除雪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−57238(P2013−57238A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−251657(P2012−251657)
【出願日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【分割の表示】特願2010−211407(P2010−211407)の分割
【原出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(503132257)新潟トランシス株式会社 (16)