説明

ロードセルおよび吊荷の吊り上げ方法

【課題】多点吊りをする吊荷における各吊点の荷重計測を可能としつつ、クレーンと吊荷、および/または天秤と吊荷との距離を短くすることができるロードセルを提供する。
【解決手段】上記課題を解決するためのロードセルは、両端部に連通可能な貫通孔16を備えたシャックル本体12と、歪みゲージを有する荷重検出部26を中央部に備え、一方の端部に雄ネジ部24を形成したピン型ロードセル(ピン型部材20)とを有し、ピン型部材20をシャックル本体12における貫通孔16に挿通させると共に、雄ネジ部24にナット30を螺合させることで抜け止めを図ることを特徴とする。また、シャックル本体12の両端部に形成された2つの貫通孔16の間に配置されたピン型部材20における荷重検出部26と、貫通孔16との間にそれぞれスペーサ60を配置し、吊荷の係合範囲を荷重検出部26に限定するようにしても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロードセル、および吊荷の吊り上げ方法に係り、特に屋内施設における大型モジュールの吊り上げ作業時に用いる事が好適なロードセル、および吊荷の吊り上げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模な工場施設や発電施設などでは、当該施設への搬入物そのものも大型なものが多く、中には別施設で組立られ、モジュールとして搬入される構造物もある。このような大型構造物の搬入は、クレーンと吊荷との間に天秤を配置し、天秤と吊荷の間に複数のワイヤを張り、吊荷の状態を水平に保ったまま多点吊りで吊り上げて搬入を行うという事が行われる。この際、吊荷に定められた各吊点や、ワイヤの負荷荷重に大きな偏りが生じ無いよう、天秤と吊荷を繋ぐワイヤを2つに分断し、上下のワイヤ(上部ワイヤ3、下部ワイヤ4)間に荷重計(ロードセル)1を配置し、吊荷2を地切りする際に各ワイヤにかかる荷重のバランスを調整するという措置がとられている(図10参照)。なお、ワイヤにかかる荷重のバランス調整は、ワイヤに替えて、あるいはワイヤに連結されて配置されるチェーンブロック(不図示)による巻上げ、巻き出しにより成される(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】2004−123248号公報
【特許文献2】2004−224534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ワイヤを連結する場合、あるいはワイヤに吊荷2を取り付ける場合には、ワイヤの端部を折り返し、アイ5と呼ばれる輪を形成し、このアイ5を基点としてワイヤの係合等を行うこととなる。しかし、重量物を持ち上げる際に使用するワイヤは、その耐荷重の大きさに比例してその太さや曲がり難さが増大する。そのため、アイ5を形成する際に要するワイヤの長さや、アイ5自体の長さも大きくなる。
【0004】
そして、大型の吊荷を吊り上げる際には、ロードセル1の上部に係合される上部ワイヤ3のアイ5と、ロードセル1、およびロードセル1の下部に係合される下部ワイヤ4のアイ5を合わせた長さLだけで1m以上の長さとなってしまうこともあり、屋内での吊り上げ作業の場合には、吊り上げ高さを確保することができなくなってしまい、都合が悪かった。
【0005】
そこで本発明では、クレーンと吊荷、および/または天秤と吊荷との距離を短くすることができ、かつ吊荷の水平を保つための荷重計測も可能とするロードセル、および吊り上げ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係るロードセルは、両端部に連通可能な貫通孔を備えたU字部材と、歪みゲージを有する荷重検出部を中央部に備え、一方の端部に雄ネジ部を形成したピン型ロードセルとを有し、前記ピン型ロードセルを前記U字部材における前記貫通孔に挿通させると共に、前記雄ネジ部にナットを螺合させることで抜け止めを図ることを特徴とする。
【0007】
また、上記のような特徴を有するロードセルでは、前記U字部材の両端部に形成された2つの貫通孔の間に配置された前記ピン型ロードセルにおける前記荷重検出部と、前記貫通孔との間にそれぞれスペーサを配置し、吊荷の係合範囲を前記荷重検出部に限定すると良い。このような特徴を有することにより、吊荷の荷重を確実に荷重検出部で捉えることが可能となり、荷重の計測を高精度に行うことが可能となる。
【0008】
また、上記のような特徴を有するロードセルでは、前記スペーサに替え、前記2つの貫通孔の双方から前記荷重検出部へ向けて付勢する押圧板を備えるようにしても良い。このような特徴を有することによれば、吊荷の荷重を確実に荷重検出部で捉えることが可能となり、荷重の計測を高精度に行うことが可能となることに加え、吊荷における係合部の幅に関わり無く、係合範囲を荷重検出部の中心に定めることができる。
【0009】
また、上記のような特徴を有するロードセルでは、前記2つの貫通孔と前記荷重検出部との間に位置するピンにそれぞれ、雄ネジを形成すると共に、前記スペーサに替えて螺合板を設けるようにしても良い。このような特徴を有する場合であっても、吊荷の荷重を確実に荷重検出部で捉えることが可能となり、荷重の計測を高精度に行うことが可能となることに加え、吊荷における係合部の幅に関わり無く、係合範囲を荷重検出部の中心に定めることができる。
【0010】
さらに、上記のような特徴を有するロードセルでは、鉛直レベル計と、前記鉛直レベル計により計測された傾きと、前記ピン型ロードセルにより検出された荷重とに基づいて、前記ピン型ロードセルに負荷された荷重の鉛直方向成分を算出する演算手段とを備えるようにすると良い。このような構成とすることによれば、吊荷の吊点に作用する垂直荷重を算出することが可能となり、吊荷の吊点に作用する垂直荷重のバランスに基づいて吊荷の水平を調整することができるようになる。
【0011】
また、上記目的を達成するための本発明に係る吊荷の吊り上げ方法は、シャックルのピンに荷重計を備え、前記荷重計を備えたシャックルのU字部にワイヤを係合すると共にピンを吊荷における吊点に係合して吊荷を地切りする際に各吊点に作用する荷重の計測を行い、複数の吊点間における荷重のバランスをとることを特徴とする。
【0012】
さらに、上記特徴を有する本発明に係る吊荷の吊り上げ方法は、前記シャックルに係合したワイヤの傾きあるいはシャックルの傾きを計測し、前記傾きと前記荷重計により計測される荷重とに基づいて、吊荷の係合部に作用する垂直荷重を算出することが望ましい。このような構成とすることによれば、吊荷の吊点に作用する垂直荷重のバランスに基づいて吊荷の水平を調整することができるようになる。
【発明の効果】
【0013】
上記のような特徴を有するロードセルによれば、クレーンと吊荷、および/または天秤と吊荷との距離を短くすることができる。また、当然に吊荷の水平を保つための各吊点に作用する荷重の計測も可能となる。
【0014】
また、上記のような特徴を有する吊荷の吊り上げ方法によれば、各吊点に作用する荷重の計測を可能としつつ、クレーンと吊荷、および/または天秤と吊荷との距離を短くすることができ、吊荷の吊り上げ高さを稼ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のロードセル、および吊荷の吊り上げ方法に係る実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
まず、図1、図2を参照して実施形態に係るロードセルについて説明する。なお、図1(A)は実施形態に係るロードセルの全体構成を示す正面図であり、図1(B)は同側面図である。また、図2は、実施形態に係るロードセルの分解形態を示す図である。本実施形態に係るロードセルは、U字状に形成されたシャックル本体12と、シャックル本体12の開口部、すなわちU字の開口部を閉じるためのピン型部材20とより構成されるシャックル型のロードセル(以下、シャックル型ロードセル10と称す)である。
【0016】
前記シャックル本体12は、その耐荷重にもよるが、金属部材により構成され、図2に示すように、U字に形成された金属部材の両端部にそれぞれ、詳細を後述するピン型部材20を挿通するための貫通孔16が設けられている。
【0017】
ピン型部材20は、長手方向に直交する方向、すなわち曲げ方向の負荷荷重を検出する荷重検出部26を有する荷重計とすると良い。荷重計として既存のものを利用する場合、例えば、ピン型ロードセルを例に挙げる事ができる。実施形態に係るピン型部材20の場合、一方の端部に抜け止め用の大径部22を、他方の端部に雄ネジ部24を形成している。
【0018】
荷重計であるピン型ロードセルは、図示しないが、筒体を構成する荷重検出部26の内壁面に備えられた歪みゲージにより予め定められた方向への延び、または圧縮を検知し、検知された延び(あるいは縮み)の大きさに応じた電圧(電気信号)を出力する。ピン型部材20の外部、あるいは内部には、図示しないアンプが設けられており、出力された電気信号を増幅し、演算手段52(図3参照)へ出力する。実施形態に係るピン型部材20では、矢印Aで示す方向への延び(あるいは縮み)を検知可能であれば良く、荷重計としてはこの方向への負荷荷重を検出可能なものであれば良い。
【0019】
荷重計をピン型ロードセルとした場合、負荷荷重を検出可能な方向が定められているため、ピン型部材20とシャックル本体12との双方にケガキ線22a,12aや記号による、いわゆるアイマークを付与する必要がある。ピン型部材20を配置する際に、アイマークを一致させることで、ピン型ロードセルの負荷荷重検出方向を定めることが可能となるからである。
【0020】
上記のようなシャックル本体12とピン型部材20は、シャックル本体12に形成した2つの貫通孔16の双方にピン型部材20を一方向から挿通させる。そして、挿通させたピン型部材20の先端部に形成された雄ネジ部24にナット30を螺合させることで、シャックル本体12からピン型部材20が脱落することを防止する。ここで、ナット30によりピン型部材20を固定する際、シャックル本体12とピン型部材20とに設けたアイマークを一致させて、ピン型部材20の負荷荷重検出方向をシャックル本体12の湾曲部に対向させるようにする。なお図示しないが、ピン型部材20に関しては、雄ネジ部24の先端側に貫通孔を設け、ナット30を螺合させた後に前記貫通孔に割りピンを配置し、これをナット30の回り止めとしても良い。このような構成とすることで、ナット30の脱落に伴うピン型部材20の脱落、吊荷の脱落を防止する事ができるからである。
【0021】
上記のようにして構成されるシャックル型ロードセル10では、ピン型部材20により検出された負荷荷重は、電気信号として有線、あるいは無線等の手段を介して演算手段52へと送信される。ここで、有線により電気信号を送信する場合には、ピン型部材20と演算手段52とを電気ケーブル40により直接接続(不図示)し、図示しないアンプを介して増幅された信号を演算手段52へと出力するようにすれば良い。一方、無線により信号を送信する場合には、シャックル型ロードセル10、あるいはその近傍に発信機50を配置し、当該発信機50とピン型部材20とを電気ケーブル40で接続し、演算手段52に設けた受信機(不図示)に電気信号を出力するようにすれば良い。ここで、無線により電気信号の送信を行う場合には、シャックル型ロードセル10等に配置する発信機50にバッテリ(不図示)を備え、これをピン型ロードセルの電源として共有させることが望ましい。
【0022】
演算手段52には、表示手段54が備えられており、シャックル型ロードセル10から出力された電気信号が、視認可能な荷重値、あるいは予め定められた荷重範囲毎の警告色として表示される。なお当然に、表示に替えて音声や警告音による伝達手段を用いるようにすることも可能である。
【0023】
次に、上記構成を有するシャックル型ロードセル10を用いた吊荷の吊り上げについて図4を参照して説明する。実施形態に係るシャックル型ロードセル10は、シャックル本体12にワイヤやチェーンブロック120等を係合し、ピン型部材20を吊荷100の吊点110に設けられた係合孔、あるいは係合孔に係合されたワイヤのアイ(輪の部分)に挿通させて使用する。
【0024】
ここで、ピン型部材20を吊荷100の吊点110における係合孔に直接挿通させるようにしてシャックル型ロードセル10を配置することによれば、少なくともロードセルと吊荷との間にシャックル(通常のシャックル)を介在させていた従来に比べ、吊荷の吊り上げに使用する部品点数を減らすことができる。またロードセルと吊荷を直接係合させることを可能にしたことで、クレーンのフック140から吊荷100までの距離、および/またはクレーンに吊られた天秤130から吊荷100までの距離を大幅に縮める事が可能となった。これにより、特に屋内において吊荷100の吊り上げ高さを確保することが可能となり、作業性が向上することとなる。
【0025】
実施形態でピン型部材(荷重計)20として採用するピン型ロードセルは、荷重検出部26における受圧の方向、および範囲が定められているため、精度の高い荷重計測を行いたい場合には、ピン型部材20に係合する吊孔やワイヤの当接面を、ピンの中央部付近、すなわち荷重検出部26の中心付近に位置決めする必要がある。
【0026】
よって、ピン型部材20と係合する部材(例えば吊点110)の幅(厚み)が予め定められている場合には図5に示すように、シャックル本体12に形成された貫通孔16と、ピン型部材20における荷重検出部26との間に、位置決め用のスペーサ60を配置すると良い。スペーサ60は、その材質、形状を特に限定されるものでは無いが、例えば加工の容易性、剛性の高さ等を考慮した場合には、炭素鋼やステンレス等で構成したドーナツ型の円板とすれば良い。
【0027】
このようなスペーサ60をピン型部材20に配置することで、吊点110やワイヤ等の係合部材は、ピン型部材20の荷重検出部26に強制的に位置決めされることとなり、荷重検出部26からズレる虞も無いため、高精度な荷重計測を実施することが可能となる。
【0028】
また、ピン型部材20に対する係合部材の位置決めを行う手段としては、図6に示すようなものであっても良い。具体的には、シャックル本体12の両端部にバネ部材74を配置し、その先端に押圧板70を配置するというものである。
【0029】
バネ部材74としては、貫通孔16の径以上の径を有する弦巻バネを使用すると良い。これにより、弦巻バネの中にピン型部材20を挿通させる事が可能となるからである。また、押圧板70としては、板面にピン型部材20を挿通させるための貫通孔を形成しておくと良く、対向して配置される2枚の押圧板70の板面の距離が、ピン型部材20に近づくほど短くなるように、段階的、あるいは連続的なテーパ面72あるいは段差を有するようにすると良い。押圧板70の対向面にテーパ面72や段差を設けることにより、押圧板70,70間に配置された係合部材の幅(厚み)に合わせて押圧板70が広がることとなる。
【0030】
このような構成によれば、対を成す押圧板70は、バネ部材74の作用によりシャックル本体12の中心側、すなわちピン型部材20の中心へと付勢することとなる。そして、押圧板70をバネ部材74によりピン型部材20の中心である荷重検出部26側へ付勢させる構成としたため、係合部材がピン型部材20に係合される際、荷重検出部26の中心に係合部材が当接するように、シャックル型ロードセル10全体をスライドさせて調芯が成されることとなる。なお、吊荷100が軽量物である場合、係合部材の方がスライドされて調芯が成されることとなる。
【0031】
また、ピン型部材20に対する係合部材の位置決めを行う手段としては、図7に示すようなものであっても良い。具体的には、ピン型部材20における荷重検出部26と、シャックル本体12における貫通孔16との間に位置するピンにそれぞれ雄ネジ28,28を形成する。雄ネジ28,28には、螺合可能な雌ネジ孔82を有する螺合板80をそれぞれ配置し、対を成す螺合板80,80を回転させる事で螺合板80の配置位置、間隔を定めるようにするのである。このような構成とした場合であっても係合部材をピン型部材20の荷重検出部26へ位置決めすることが可能となる。なお、図7において、図7(A)はピン型部材20に対して螺合板80,80を螺合させた状態を示す図であり、図7(B)は螺合板80単体の正面図と部分断面側面図である。
【0032】
さらに同様な効果を奏することのできる位置決め手段としては、図8に示すようなスリーブ90であっても良い。スリーブ90は、シャックル本体12における貫通孔16,16の間に位置するピン型部材20の長さと同等の長さを有する筒体である。また、スリーブ90は、両端部に比べて中央部の径を小さくした、いわゆる鼓型に形成されている。このような形状とする事で、シャックル本体12における貫通孔16,16間の中心に位置する荷重検出部26へ、係合部材を誘導することが可能となるからである。なお、図8において、図8(A)はピン型部材20に対してスリーブ90を装着した状態を示す図であり、図8(B)はスリーブ90単体を示す参考斜視図である。また、図8においてスリーブ90の胴面は、湾曲状にくびれを成すように示しているが、これをV字型や荷重検出部26に対応する部分のみ単純な円筒型としても良い。
【0033】
次に、上記構成のシャックル型ロードセル10の応用形態について説明する。上記実施形態ではいずれも、吊荷100を地切りする際、吊荷100と天秤130とを結ぶワイヤ(不図示)やチェーンブロック120等はそれぞれ鉛直状態である事を想定している。しかし実際には、天秤130を用いて吊り掛けした場合であってもワイヤ等には多少の傾きが存在することがあり、クレーンのフック140に複数の吊点110からのワイヤ等を係合する場合には必然的にワイヤやチェーンブロック等に傾きが生ずることとなる。
【0034】
ワイヤ等に傾きが生じた場合、ロードセルが検出する荷重は、ワイヤにかかる張力に関するものとなるが、検出された値は、吊荷の吊点110に作用する垂直荷重では無い。このため、複数の吊点に作用する垂直荷重のバランスは、ワイヤ等の傾斜角によってロードセルが検出した荷重のバランスとは異なることとなることがある。このため、実際の垂直荷重のバランスによっては、地切りをした際に吊荷100の水平を保つことができず、吊荷100が傾いたり、吊荷100に歪みを生じさせたりする可能性がある。よって、吊点110に作用する垂直荷重を算出することにより、吊荷100を水平に吊り上げることを高い精度で実現することが可能となる。
【0035】
ワイヤやシャックル型ロードセル10の傾きを計測するためには、シャックル型ロードセル10におけるシャックル本体12の直線部分14や、シャックル本体12に係合されたワイヤ等に、鉛直レベル計(傾斜計)56を備えるようにすれば良い(図9は、ワイヤに鉛直レベル計56を備えた様子)。シャックル型ロードセル10により検出される荷重は、垂直方向成分の荷重と、水平方向成分の荷重との合力であるから、ワイヤやシャックル本体12の傾斜角度を知る事ができれば、検出荷重に対する垂直荷重を算出することが可能となるからである。
【0036】
例えば、シャックル型ロードセル10による検出荷重がWであり、鉛直レベル計56による検出値(傾斜角)がθである場合、検出荷重に対する垂直荷重W1は、数式1により求めることができる。
【数1】

【0037】
ここで、垂直荷重W1の算出は、上述した演算手段52にて行うようにすれば良く、鉛直レベル計56により検出された傾斜角θは、有線、あるいは無線により、演算手段52へと出力されるようにする。
【0038】
このような構成のシャックル型ロードセル10であっても、従来に比べて天秤130やクレーンのフック140から吊荷100までの距離を短くすることが可能であるため、本発明に係るロードセルとすることができる。また、本実施形態に係る吊荷の吊り上げ方法によれば、吊荷100の吊点110に作用する垂直荷重のバランスを高精度に検知する事ができ、吊荷100の吊り上げ作業の安全性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】実施形態に係るロードセルの正面図と側面図である。
【図2】実施形態に係るロードセルの分解図である。
【図3】実施形態に係るロードセルによる荷重の検出、および表示の説明をするための図である。
【図4】実施形態に係るロードセルを使用して、多点吊により吊荷の吊り上げを行う様子を示す図である。
【図5】係合部材の係合範囲を限定するための第1の構成を示す図である。
【図6】係合部材の係合範囲を限定するための第2の構成を示す図である。
【図7】係合部材の係合範囲を限定するための第3の構成を示す図である。
【図8】係合部材の係合範囲を限定するための第4の構成を示す図である。
【図9】発明に係るロードセルの応用形態を示す図である。
【図10】従来の多点吊りにおけるロードセルとワイヤ、および吊荷の形態を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
10………シャックル型ロードセル、12………シャックル本体、14………直線部分、16………貫通孔、20………ピン型部材、22………大径部、24………雄ネジ部、26………荷重検出部、30………ナット、40………電気ケーブル、50………発信機、52………演算手段、54………表示手段、70………押圧板、80………螺合板、90………スリーブ、100………吊荷、110………吊点、120………チェーンブロック、130………天秤、140………フック。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部に連通可能な貫通孔を備えたU字部材と、
歪みゲージを有する荷重検出部を中央部に備え、一方の端部に雄ネジ部を形成したピン型ロードセルとを有し、
前記ピン型ロードセルを前記U字部材における前記貫通孔に挿通させると共に、前記雄ネジ部にナットを螺合させることで抜け止めを図ることを特徴とするロードセル。
【請求項2】
前記U字部材の両端部に形成された2つの貫通孔の間に配置された前記ピン型ロードセルにおける前記荷重検出部と、前記貫通孔との間にそれぞれスペーサを配置し、
吊荷の係合範囲を前記荷重検出部に限定したことを特徴とする請求項1に記載のロードセル。
【請求項3】
前記スペーサに替え、前記2つの貫通孔の双方から前記荷重検出部へ向けて付勢する押圧板を備えたことを特徴とする請求項2に記載のロードセル。
【請求項4】
前記2つの貫通孔と前記荷重検出部との間に位置するピンにそれぞれ、雄ネジを形成すると共に、
前記スペーサに替えて螺合板を設けたことを特徴とする請求項2に記載のロードセル。
【請求項5】
鉛直レベル計と、
前記鉛直レベル計により計測された傾きと、前記ピン型ロードセルにより検出された荷重とに基づいて、前記ピン型ロードセルに負荷された荷重の鉛直方向成分を算出する演算手段とを備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1に記載のロードセル。
【請求項6】
シャックルのピンに荷重計を備え、
前記荷重計を備えたシャックルのU字部にワイヤを係合すると共にピンを吊荷における吊点に係合して吊荷を地切りする際に各吊点に作用する荷重の計測を行い、
複数の吊点間における荷重のバランスをとることを特徴とする吊荷の吊り上げ方法。
【請求項7】
前記シャックルに係合したワイヤの傾きあるいはシャックルの傾きを計測し、
前記傾きと前記荷重計により計測される荷重とに基づいて、
吊荷の係合部に作用する垂直荷重を算出することを特徴とする請求項6に記載の吊荷の吊り上げ方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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