説明

ロードセルユニット及びそれを備えた計量装置

【課題】 ロードセルユニットと表示ユニットとが切り離されてもロードセルユニットの使用状況を容易且つ高精度に把握することができるロードセルユニット及びそれを備えた計量装置を提供する。
【解決手段】 荷重を検出するロードセル11と、ロードセル11で検出される荷重に基づいてロードセル11の使用状況を示すロードセル情報を生成する制御器12と、制御器12で生成されるロードセル情報を記憶する情報記憶器14と、ロードセル11で検出される荷重を表示する表示部21を有する表示ユニット2へ、ロードセル11で検出される荷重を送信する送信器14とを有し、情報記憶器14は、不揮発性メモリにより構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重を検出するロードセルを有するロードセルユニット及びそれを備えた計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロードセルに加えられた荷重を検出することにより被計量物の重量を計量する計量装置においては、ロードセルに加えられた荷重をロードセルが設けられるロードセルユニット内で電気信号に変換し、当該電気信号を表示部を有する表示ユニットへ送っている。
【0003】
このような計量装置において、ロードセルは経時変化による劣化やロードセル近傍の温度異常等が生じると、計量精度が保てなくなる問題がある。
【0004】
上記のような問題に対して、ロードセルユニットの測定重量を表示する指示計ユニットにロードセルユニットの稼動履歴を記憶して計量精度が保てなくなるような危険性を判定する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−219856号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のような構成においては、以下のような問題がある。すなわち、複数のロードセルユニットを有する計量装置(例えば組合せ秤等)に上記構成を適用する場合、表示ユニット(指示計ユニット)で各ロードセルにおける荷重の時間変化等から逐一上記判定を行うと、表示ユニットの制御部の処理能力を超えてしまう、又は、本来の計量に要する処理能力以上に高い処理能力を有する制御部を設ける必要があり高コストとなる。特に、ロードセルへの荷重の負荷状況からロードセルの寿命を高精度に判定するために、ロードセルへ加えれられる荷重の時間変化を逐次記憶していくような場合、単に表示ユニットの記憶容量を増やしただけでは対応できない。
【0007】
また、ロードセルの交換等により、ロードセルユニットと表示ユニットとを切り離してしまうと、当該ロードセルユニットがどのような使用履歴を有するのかを確認する手段がない。さらに、表示ユニット内に記憶された以前のロードセルの情報がそのまま残っていると、当該情報が新たに接続したロードセルユニットの情報と誤って認識されてしまう問題も生じ得る。
【0008】
本発明は、以上のような課題を解決すべくなされたものであり、ロードセルユニットと表示ユニットとが切り離されてもロードセルユニットの過去の使用状況を容易且つ高精度に把握することができるロードセルユニット及びそれを備えた計量装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るロードセルユニットは、荷重を検出するロードセルと、前記ロードセルで検出される荷重に基づいて前記ロードセルの使用状況を示すロードセル情報を生成する制御器と、前記制御器で生成されるロードセル情報を記憶する情報記憶器と、前記ロードセルで検出される荷重を表示する表示部を有する表示ユニットへ、前記ロードセルで検出される荷重を送信する送信器とを有し、前記情報記憶器は、不揮発性メモリにより構成されるものである。
【0010】
上記構成によれば、ロードセルの使用状況を示すロードセル情報がロードセルユニット内の情報記憶器に記憶されるため、ロードセルユニットを表示ユニットから切り離してもロードセルの過去の使用状況が分からなくなることがない。しかも情報記憶器が不揮発性メモリにより構成されているため、記憶容量の大容量化が容易なだけでなく、書込み回数が実質的に無制限なため、荷重変化をきめ細かく記憶させることができる。従って、ロードセルユニットと表示ユニットとが切り離されてもロードセルユニットの使用状況を容易且つ高精度に把握することができる。
【0011】
前記制御器は、前記ロードセルで検出される荷重を前記ロードセルの秤量値を所定数で分割した荷重領域毎に区分し、当該荷重領域に基づいて前記ロードセル情報を生成するよう構成されてもよい。これにより、荷重が荷重領域毎に区分されるため、記憶容量及び書き込み回数を低減させることができる。
【0012】
前記制御器は、前記ロードセルで検出される荷重の時間変化に基づいて前記ロードセルへ加えられる荷重の変移点を算出し、当該変移点間の時間のうち荷重の時間変化が生じている間の時間を積算した稼動時間を算出し、前記情報記憶器に記憶されるロードセル情報は、前記稼働時間を含んでいてもよい。これにより、ロードセルが実際に動作している時間を高精度に算出できるため、ロードセルの異常判定又は寿命判定のための高精度な情報を得ることができる。
【0013】
前記ロードセル近傍の温度を検出する温度センサを有し、前記制御器は、前記温度センサで検出される温度を所定の温度領域を所定数で分割した温度領域毎に区分し、前記温度領域が所定の温度以上である間の時間を積算した高温稼動時間を算出し、前記情報記憶器に記憶されるロードセル情報は、前記高温稼働時間を含んでいてもよい。これにより、高温下でのロードセルの動作状況を高精度に把握することができるため、ロードセルの異常判定又は寿命判定を行うための高精度な情報を得ることができる。
【0014】
前記制御器は、前記ロードセル情報における値が所定のしきい値を超えた場合に、警告情報を生成し、前記送信器を介して前記表示ユニットへ送信してもよい。これにより、高精度に得られたロードセル情報の値に基づいてロードセルの異常判定又は寿命判定を行うことができる。一方、表示ユニットでは送られてきた警告情報に基づいて何らかの報知を行うだけでよいため、表示ユニットにおいて記憶容量や制御部の処理能力を別途高める必要がなくなる。
【0015】
また、本発明に係る計量装置は、上記構成のロードセルユニットと、前記ロードセルユニットの前記送信器から送られた荷重値を受信する受信部及び当該荷重値を表示する表示部を有する表示ユニットとを備えている。
【0016】
上記構成によれば、ロードセルの使用状況を示すロードセル情報がロードセルユニット内の情報記憶器に記憶されるため、ロードセルユニットを表示ユニットから切り離してもロードセルの使用状況が分からなくなることがない。しかも情報記憶器が不揮発性メモリにより構成されているため、記憶容量の大容量化が容易なだけでなく、書込み回数が実質的に無制限なため、荷重変化をきめ細かく記憶させることができる。従って、ロードセルユニットと表示ユニットとが切り離されてもロードセルユニットの使用状況を容易且つ高精度に把握することができる。一方、表示ユニットではロードセル情報を算出及び記憶する必要がないため、表示ユニットにおいて記憶容量や制御器の処理能力を別途高める必要をなくすることができる。特に、複数のロードセルユニットと1つの表示ユニットとで構成される計量装置においても各ロードセルユニットに対応するロードセル情報が記憶されるため、表示ユニットにおいて記憶容量や制御器の処理能力を別途高める必要をなくすことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は以上に説明したように構成され、ロードセルユニットと表示ユニットとが切り離されてもロードセルユニットの使用状況を容易且つ高精度に把握することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係るロードセルユニットが適用された計量装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】ホッパスケールにおけるロードセルの荷重値の時間的変化を示すグラフである。
【図3】コンベヤスケールにおけるロードセルの荷重値の時間的変化を示すグラフである。
【図4】本実施形態の計量装置におけるロードセル近傍の温度の時間的変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係るロードセルユニットが適用された計量装置の概略構成を示すブロック図である。
【0021】
図1に示されるように、本実施形態の重量検出装置10は、荷重を検出するロードセル11を含むロードセルユニット1と、ロードセル11で検出される荷重を表示する表示部21を有する表示ユニット2とを含んでいる。ロードセルユニット1には、制御器12が設けられ、ロードセル11で検出される荷重値をデジタル化するAD変換器(図示せず)からのデジタル出力に応じて被計量物の荷重値のデジタルデータを、送信器13を介して表示ユニット2へ送信する。表示ユニット2は、被計量物の荷重値のデジタルデータを受信する受信器22と、受信器22が受信したデータに基づいて被計量物の荷重値を表示部21に表示させる制御器23とを有している。なお、送信器13と受信器22との間は無線通信であっても有線通信であってもよい。
【0022】
本実施形態におけるロードセルユニット1は、ロードセル11で検出される荷重に基づいてロードセル11の使用状況を示すロードセル情報を生成する制御器12と、制御器12で生成されるロードセル情報を記憶する情報記憶器14→14とをさらに有している。制御器12には、例えばマイクロコンピュータのCPUが用いられる。また、情報記憶器14は、不揮発性メモリにより構成されている。制御器12と情報記憶器14とは相互に接続されている。また、情報記憶器14又は他のメモリ(例えばマイクロコンピュータの内部メモリ)には、制御プログラムが格納されている。制御器12は、格納された制御プログラムを読み出して実行することにより、各種の演算処理や通信制御等を行う。
【0023】
上記構成によれば、ロードセル11の使用状況を示すロードセル情報がロードセルユニット1内の情報記憶器14に記憶されるため、ロードセルユニット1を表示ユニット2から切り離してもロードセル11の過去の使用状況(使用履歴)が分からなくなることがない。しかも情報記憶器14が不揮発性メモリにより構成されているため、記憶容量の大容量化が容易なだけでなく、書込み回数が実質的に無制限なため、荷重変化をきめ細かく記憶させることができる。従って、ロードセルユニット1と表示ユニット2とが切り離されてもロードセルユニット1の使用状況を容易且つ高精度に把握することができる。一方、表示ユニット2ではロードセル情報を算出及び記憶する必要がないため、表示ユニット2において記憶容量や制御器23の処理能力を別途高める必要をなくすることができる。
【0024】
情報記憶器14により好適な不揮発性メモリとしては、例えばFRAM(登録商標)等の強誘電体メモリ(FeRAM:Ferroelectric Random Access Memory)が挙げられる。このような強誘電体メモリは、電源を切っても内容が消えない不揮発性メモリであるため、ロードセルユニット1を表示ユニット2から切り離した場合であっても、ロードセルユニット1内のデータが消えないこと、及び、書込可能回数が1010回以上であるため、荷重の経時変化等の継続的に書き込まれるデータを長期間書き込むのに適していることから、本実施形態のようなロードセル11の使用状況を示すロードセル情報を記憶するのに好適に用いられる。
【0025】
ここで、情報記憶器14に記憶されるロードセル情報について説明する。まず、情報記憶器14には、ロードセル情報として電源投入時間が記憶される。電源投入時間は、ロードセルユニット1を含む計量装置10の電源(表示ユニット2の電源)が供給されている時間を記憶する。具体的には、制御器12は、計量装置10の電源が投入された時刻を表示ユニット2から取得するとともに電源が投入されたときから所定のサンプリング間隔毎に電源の投入の継続を検出してこれを計数し、計数値又は計数値から求められる電源投入時間を情報記憶器14に記憶する。所定のサンプリング間隔毎に電源の投入の継続を検出することにより、ロードセルユニット1において計量装置10の電源がいつオフするか分からない場合でも電源が投入されている時間を計数することができる。なお、電源がオフされる直前に表示ユニット2から電源オフ信号を送信するよう構成し、ロードセルユニット1においてこれを受信することにより、電源の投入時から電源オフまでの時間を制御器12で演算して情報記憶器14に記憶することとしてもよい。制御器12は、電源投入時間を基準に時間の管理を行う。
【0026】
また、情報記憶器14には、ロードセル情報として最低荷重及び最高荷重が記憶される。この場合、制御器12は、所定のサンプリング間隔毎にロードセル11の荷重をサンプリングし、それまでの最低荷重の値より低い荷重が検出された際に最低荷重の値を更新し、それまでの最高荷重の値より高い荷重が検出された際に最高荷重の値を更新するように、情報記憶器14に記憶させる。なお、最低荷重及び最高荷重は、例えば1回の電源投入時間における最低荷重及び最高荷重を記憶してもよいし、所定の期間(例えば1日、1月等)における最低荷重及び最高荷重を記憶してもよい。
【0027】
また、情報記憶器14には、ロードセル情報としてロードセル11が実際に動作している稼働時間が記憶される。このために、制御器12は、ロードセル11で検出される荷重の時間変化に基づいてロードセル11へ加えられる荷重の変移点を算出し、当該変移点間の時間のうち荷重が加えられている間の時間を積算して稼動時間を算出する。
【0028】
より具体的に説明する。制御器12は、ロードセル11で検出される荷重を所定のサンプリング間隔でサンプリングし、サンプリングした荷重値を情報記憶器14に記憶させる。さらに、制御器12は、サンプリングした各荷重値からサンプリング間隔毎の荷重変化量(微分値)を算出する。さらに、制御器12は、算出した荷重変化量からロードセルへ加えられる荷重の変移点を求める。具体的には、制御器12は、荷重変化量が正から負又は0に変化した時点及び荷重変化量が負から正又は0に変化した時点及び荷重変化量が0から正又は負に変化した時点を変移点として求める。そして、制御器12は、変移点における荷重値と、変移点間の時間(変化時間)とを情報記憶器14に記憶させる。
【0029】
さらに、制御器12は、変移点間の時間のうちロードセル11に荷重の時間変化が生じている時間を積算して稼働時間を算出し、当該稼働時間を情報記憶器14に記憶させる。ロードセル11に荷重の時間変化が生じている時間は、荷重が加えられていない状態(荷重が加えられていない状態のロードセル11の出力を開始量として予め記憶しておく)から被計量物が投入されることにより荷重が増加し始めたときの変移点から荷重の増加が収まり安定し始めたときの変移点までの増加時間と、被計量物が排出されることにより荷重が減少し始めたときの変移点から荷重が加えられていない状態へと戻るときの変移点までの減少時間とが加算された時間である。稼働時間は、電源投入時間から安定時間(非計量時及び計量時)を差し引くことによっても算出することができる。
【0030】
ここで、制御器12は、ロードセル11で検出される荷重をロードセル11の秤量値(最大計量重量)を所定数で分割した荷重領域毎に区分し、当該荷重領域に基づいてロードセル情報を生成するよう構成されている。すなわち、制御器12は、サンプリングした荷重値がどの荷重領域に含まれるかを判定し、当該荷重値が含まれる荷重領域をサンプリング時刻とともに情報記憶器14に記憶させる。
【0031】
以下に、本実施形態の計量装置が組合せ秤のホッパスケールに適用された例について説明する。図2はホッパスケールにおけるロードセルの荷重値の時間的変化を示すグラフである。組合せ秤のホッパスケールにおいては、ホッパ内に被計量物が投入され、その状態でロードセル11により被計量物及びホッパの荷重が計量された後、ホッパを開放して被計量物が排出される工程が繰り返される。図2に示されるように、ロードセル11により検出された荷重は、ロードセル11の秤量値を所定数(図2においては10)で分割した荷重領域毎に区分される。例えば、ロードセル11の荷重が秤量値の60%から70%の間の値である場合は、荷重領域は(7)となる。なお、ホッパスケールの場合には、ホッパ自身の重量もロードセル11で計量されるため、被計量物が投入されていない状態でもロードセル11は0にならない。図2において、被計量物が投入されていない状態では秤量値の40%であり、荷重領域は(5)となる。なお、外乱等の影響による荷重のわずかな変動である荷重領域を行ったり来たりしないように所定量のヒステリシスを設けることとしてもよい。
【0032】
図2の例においては、初期状態である荷重領域(5)から被計量物が投入されることにより秤量値の60%を超えたくらいの荷重がロードセル11に加えられている。このとき最初の変移点では荷重領域が(5)であったのが、次の変移点では荷重領域が(7)となっている(期間A)。その後、ホッパ内で一定時間被計量物が保持されることによりホッパ内の被計量物が計量される(期間B)。さらにその後、ホッパから被計量物が排出されると、再び荷重領域が初期状態の荷重領域(5)へと戻る(期間C)。この後、再び被計量物が投入されるまでの間は初期状態の荷重領域(5)が維持される(期間D)。そして、次の被計量物が投入されることにより秤量値の70%以上80%以下の荷重領域(8)となる荷重がロードセル11に加えられる(期間E)。このようにして、制御器12は、上記のような変化を生じる起点となる変移点と変移点間の時間とを情報記憶器14に記憶させる。図2に示す例における変移点と変移点間の時間を表にすると以下のようになる。
【0033】
【表1】

上記表において、期間A,C,Eを加算した時間が期間A〜Eにおける稼働時間となる。言い換えると、電源投入時間(期間A〜Eの全時間)から期間B,Dを差し引いた時間が期間A〜Eにおける稼働時間となる。さらに、制御器12は、上記変移点及び変移点間の時間から計量回数、計量時間、平均計量範囲及び最大計量範囲を算出し、これらの値もロードセル情報として情報記憶器14に記憶させる。
【0034】
ここで、計量回数は、計量の1サイクルである期間A〜Dを1回として計数した指標である。また、計量時間は、期間A〜Cの積算時間を1回の計量における計量時間として算出した指標である。また、平均計量範囲は、どの荷重領域間の荷重変化が多いかを示す指標であり、変化前後の荷重値が属する荷重領域を計数し平均することにより算出される。また、最大計量範囲は、検出された最も大きい荷重領域を示す指標であり、例えば期間A〜Eにおいては、荷重領域(8)である。
【0035】
次に、本実施形態の計量装置がコンベヤスケールに適用された例について説明する。図3はコンベヤスケールにおけるロードセルの荷重値の時間的変化を示すグラフである。コンベヤスケールにおいては、コンベヤにより被計量物を搬送しつつコンベヤ上の被計量物を計量する。基本的な計量方法(サンプリング等)は図2の例と同様である。図3の例においても、ロードセル11により検出された荷重は、ロードセル11の秤量値を所定数(図3においては10)で分割した荷重領域毎に区分される。
【0036】
図3の例においては、初期状態である荷重領域(3)から被計量物がコンベヤ上に供給されることにより荷重が増加し始め(期間A)、荷重領域(8)に到達する。その後、コンベヤ上を被計量物が搬送されている間、多少の荷重変動(コンベヤの振動等による)はあるが、検出される荷重は基本的に同じ荷重領域(8)内で安定する(期間B)。その後、コンベヤにより搬送された被計量物がコンベヤの下流側から排出されることにより検出される荷重は初期状態である荷重領域(3)へと戻り(期間C)、次の被計量物がコンベヤに供給されるまで初期状態である荷重領域(3)内で安定する(期間D)。次の被計量物がコンベヤに供給されると再び荷重が増加する(期間E)。以後これが繰り返される。このようにして、制御器12は、上記のような変化を生じる起点となる変移点と変移点間の時間とを情報記憶器14に記憶する。図3に示す例における変移点と変移点間の時間を表にすると以下のようになる。
【0037】
【表2】

上記表において、期間A,C,Eを加算した時間が期間A〜Eにおける稼働時間となる。言い換えると、電源投入時間(期間A〜Eの全時間)から期間B,Dを差し引いた時間が期間A〜Eにおける稼働時間となる。ただし、コンベヤスケールにおいては、コンベヤ上を被計量物が搬送されている間の期間Bがホッパスケールのような場合に比べて長いこと及びコンベヤの駆動による振動によりロードセル11には小さい荷重変化が常に生じ得ることから期間Bも稼働時間に含めることが好ましい。すなわち、この場合、期間A〜C及びEを加算した時間が期間A〜Eにおける稼働時間となる。言い換えると、電源投入時間から期間Dを差し引いた時間が期間A〜Eにおける稼働時間となる。さらに、制御器12は、上記変移点及び変移点間の時間から図2の例と同様に、計量回数、計量時間、平均計量範囲及び最大計量範囲を算出し、これらの値もロードセル情報として情報記憶器14に記憶させる。
【0038】
以上のように、ロードセル情報として稼働時間を記憶することにより、ロードセル11が実際に動作している時間を高精度に算出できるため、ロードセル11の異常判定又は寿命判定のための高精度な情報を得ることができる。また、ロードセル情報として情報記憶器14に記憶される各指標において荷重が荷重領域毎に区分されるため、情報記憶器14への記憶容量及び書き込み回数を低減させることができる。
【0039】
また、本実施形態のロードセルユニット1は、図1に示すように、ロードセル11近傍の温度を検出する温度センサ15を有している。そして、制御器12は、温度センサ15で検出される温度を所定の温度領域を所定数で分割した温度領域毎に区分し、温度領域が所定の温度以上である間の時間を積算した高温稼動時間を算出するよう構成されている。温度センサ15により検出されたロードセル11近傍の温度からロードセル11がどのような温度環境下で使用されているかについての指標である高温稼働時間がロードセル情報として情報記憶器14に記憶される。
【0040】
以下に、本実施形態の計量装置における温度変化の例について説明する。図4は本実施形態の計量装置におけるロードセル近傍の温度の時間的変化を示すグラフである。図4に示されるように、温度センサ15で検出された温度は、−50℃から100℃までの温度領域を所定数(図4の例においては30)で分割した温度領域毎に区分される。なお、図4においては−10℃から45℃までの温度領域(8)から(18)までが示されている。
【0041】
制御器12は、ロードセル11で検出される荷重と同様に、温度センサ15で検出される温度を所定のサンプリング間隔でサンプリングし、サンプリングした各温度値が温度領域ごとに区分される。サンプリングされた各温度値は、情報記憶器14に記憶される。そして、制御器12は、所定の温度領域以上にある時間を積算し、高温稼働時間を算出する。同様に、制御器12は、所定の温度領域以下にある時間を積算し、低温稼動時間を算出してもよい。これにより、高温下及び低温下でのロードセル11の動作状況を高精度に把握することができるため、ロードセル11の異常判定又は寿命判定を行うための高精度な情報を得ることができる。
【0042】
さらに、制御器12は、サンプリングした各温度値からサンプリング間隔毎の温度変化量(微分値)を算出する。さらに、制御器12は、算出した温度変化量から温度変化の変移点を求める。そして、制御器12は、変移点における温度が属する温度領域と、変移点間の時間(変化時間)とを情報記憶器14に記憶させる。図4に示す例における変移点と変移点間の時間を表にすると以下のようになる。
【0043】
【表3】

さらに、制御器12は、上記変移点及び変移点間の時間から最高温度、最低温度、最高温度領域の時間、最低温度領域の時間、最高温度領域に至る時間及び最低温度領域に至る時間を算出し、これらの値もロードセル情報として情報記憶器14に記憶させる。
【0044】
ここで、最高温度及び最低温度は、検出された温度値のうち最も高い又は最も低い温度領域を示す指標であり、例えば期間A〜Eにおいては最高温度は温度領域(15)、最低温度は温度領域(12)である。また、最高温度領域の時間及び最低温度領域の時間は、最高温度及び最低温度であるときの積算時間を示す指標であり、例えば期間A〜Eにおいて、最高温度領域の時間は期間Bの1時間であり、最低温度領域の時間は期間Dの3時間である。また、最高温度領域に至る時間及び最低温度領域に至る時間は、最高温度領域及び最低温度領域に達するまでの温度変化にかかった時間を示す指標であり、例えば期間A〜Eにおいて最高温度領域に至る時間は、期間Aの10時間であり、最低温度領域に至る時間は、期間Cの9時間である。
【0045】
なお、情報記憶器14には、ロードセル11の生産年月日や出荷年月日等も記憶可能である。以上に説明したようなロードセル情報は、記憶容量の低減を図るべく、例えば、期間毎に適宜圧縮して記憶することとしてもよい。例えば最近の1月分のデータは日毎のデータをそのまま記憶し、最近の1年分のデータは週毎のデータに圧縮して記憶し、2年以上前のデータは月毎のデータに圧縮して記憶することとしてもよい。
【0046】
また、情報記憶器14に記憶されたロードセル情報は、表示ユニット2又は別途接続されたコンピュータ端末等を介して表示又はデータの転送などを行うことができるように構成される。
【0047】
以上に説明したようなロードセル11に関するあらゆる情報をロードセル情報として情報記憶器14に記憶しておくことにより、ロードセル11の過去の使用状況の把握をより詳細且つより容易に行うことができる。
【0048】
詳しくは、制御器12は、ロードセル情報における値が所定のしきい値を超えた場合に、警告情報を生成し、送信器13を介して表示ユニット2へ送信されるよう構成される。これにより、高精度に得られたロードセル情報の値に基づいてロードセル11の異常判定又は寿命判定を行うことができる。例えば、ロードセル11の稼働時間が所定時間を超えた場合に、当該ロードセル11の寿命がなくなったと判定したり、ロードセル11の計量回数が所定回数を超えた場合に、当該ロードセル11の寿命がなくなったと判定する。また、平均計量範囲等から別途寿命判定に用いる指標を演算してもよい。さらに、平均計量範囲の値が所定の範囲を超えた場合(過負荷で頻繁に使用されている場合)、高温稼働時間が所定時間を超えた場合(高温下で連続して使用されている場合)又は最高温度が所定の温度領域を超えた場合に、ロードセルユニット1が異常であると判定してもよい。
【0049】
一方、表示ユニット2では送られてきた警告情報に基づいて何らかの報知を行うだけでよいため、表示ユニット2において記憶容量や制御器23の処理能力を別途高める必要がなくなる。
【0050】
なお、表示ユニット2ではロードセルユニット1から送られてきた警告情報に基づいて別途計量装置を構成するインバータモータ、コンベヤ、ファン、潤滑油等の消耗品の交換時期を示す消耗品交換情報又はロードセル11、温度センサ15又はAD変換器等の故障を示す故障情報等を生成し、表示部21において表示したり、別のコンピュータ(例えばホストコンピュータ等)に当該情報を送ったりしてもよい。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更、修正が可能である。例えば、上記実施形態において列記したロードセル情報を情報記憶器14にすべて記憶してもよいし、そのうちの何れか1つ又は複数だけ記憶してもよい。また、ロードセル11近傍の温度に基づいたロードセル情報を情報記憶器14に記憶しない構成においては、温度センサ15を有しない構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のロードセルユニット及び計量装置は、ロードセルユニットと表示ユニットとが切り離されてもロードセルユニットの使用状況を容易且つ高精度に把握するために有用である。
【符号の説明】
【0053】
1 ロードセルユニット
2 表示ユニット
10 計量装置
11 ロードセル
12 ロードセルユニットの制御器
13 送信器
14 情報記憶器
15 温度センサ
21 表示部
22 受信器
23 表示ユニットの制御器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重を検出するロードセルと、
前記ロードセルで検出される荷重に基づいて前記ロードセルの使用状況を示すロードセル情報を生成する制御器と、
前記制御器で生成されるロードセル情報を記憶する情報記憶器と、
前記ロードセルで検出される荷重を表示する表示部を有する表示ユニットへ、前記ロードセルで検出される荷重を送信する送信器とを有し、
前記情報記憶器は、不揮発性メモリにより構成される、ロードセルユニット。
【請求項2】
前記制御器は、前記ロードセルで検出される荷重を前記ロードセルの秤量値を所定数で分割した荷重領域毎に区分し、当該荷重領域に基づいて前記ロードセル情報を生成する、請求項1に記載のロードセルユニット。
【請求項3】
前記制御器は、前記ロードセルで検出される荷重の時間変化に基づいて前記ロードセルへ加えられる荷重の変移点を算出し、当該変移点間の時間のうち荷重の時間変化が生じている間の時間を積算した稼動時間を算出し、
前記情報記憶器に記憶されるロードセル情報は、前記稼働時間を含んでいる、請求項1又は2に記載のロードセルユニット。
【請求項4】
前記ロードセル近傍の温度を検出する温度センサを有し、
前記制御器は、前記温度センサで検出される温度を所定の温度領域を所定数で分割した温度領域毎に区分し、前記温度領域が所定の温度以上である間の時間を積算した高温稼動時間を算出し、
前記情報記憶器に記憶されるロードセル情報は、前記高温稼働時間を含んでいる、請求項1から3の何れかに記載のロードセルユニット。
【請求項5】
前記制御器は、前記ロードセル情報における値が所定のしきい値を超えた場合に、警告情報を生成し、前記送信器を介して前記表示ユニットへ送信する、請求項1から4の何れかに記載のロードセルユニット。
【請求項6】
請求項1から5の何れかに記載のロードセルユニットと、
前記ロードセルユニットの前記送信器から送られた荷重値を受信する受信部及び当該荷重値を表示する表示部を有する表示ユニットとを備えた、計量装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−209039(P2011−209039A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75669(P2010−75669)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000208444)大和製衡株式会社 (535)