説明

ロードセル

【課題】 大型化を回避しつつ、性能を向上させること。
【解決手段】 ロードセル10は、起歪体12と歪みゲージ14とを備えている。起歪体12は、直方体形状の金属ブロック体の厚み方向に複数の貫通孔16が穿設されている。起歪体12は、貫通孔16の側方に設けられた一対の剛体部18,20と、貫通孔16の上下方向に設けられ、剛体部18,20間を連結する一対の上,下ビーム部22,24と、各ビーム部22,24に設けられた薄肉部26a〜26dとを有している。上ビーム部22側の薄肉部26a,26cが、下ビーム部24側の薄肉部26b,26dよりも大きくなるように設定されている。歪みゲージ14は、厚みの大きい薄肉部26a,26cにのみ対応するように、起歪体12の上端面に一列状に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ロードセルに関し、特に、秤量の軽いロードセルの性能を改善する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
歪みゲージ式のロードセルは、例えば、特許文献1に示されているように、通常、荷重の印加により弾性変形する起歪体に、4つの歪みゲージを貼付し、歪みゲージでブリッジ回路を構成して、その出力信号から荷重の大きさを検出するようになっている。
【0003】
図3は、特許文献1に開示されているロードセルと同様な周知構造例であり、同図に示したロードセル1は、直方体形状の金属ブロック体の厚み方向に複数の長円状貫通孔2を穿設した起歪体3と、起歪体3に貼付される合計4枚の歪みゲージ4とを備えている。
【0004】
起歪体3は、貫通孔2の側方に設けられた一対の剛体部5,6と、貫通孔2の上下方向に設けられ、剛体部5,6間を連結する一対の上,下ビーム部7,8と、ビーム部7,8に設けられた薄肉部9とを有し、歪みゲージ4が各薄肉部9に対応して、その背面側となる起歪体3の上下端面に貼付されている。
【0005】
薄肉部9は、起歪体3に変形が起こり易くするために設けられ、歪みゲージ3は、各薄肉部9に対応するように貼付され、特許文献1の場合を含めて、周知技術の場合には、薄肉部9は、上,下ビーム部7,8で同じ厚み、ta=tbとなるように設定されていた。
【0006】
ところで、最大秤量値が、例えば、数百mmg程度の比較的計測秤量の小さいロードセルの場合には、起歪体3の薄肉部9の寸法が非常に薄くなり、起歪体3の変形に対して、歪みゲージ4が抵抗体となり、性能向上に限界があった。
【0007】
このような課題に対して、従来、特許文献2に開示されているように、薄肉部の厚みを上下で異ならせて、厚みの大きい薄肉部に対応して、歪みゲージを貼付した構造が提案されており、この構造では、厚みの小さい薄肉部で起歪体の曲げ易さを確保し、厚みの大きい薄肉部側に歪みゲージを貼付することで、歪みゲージの影響を低減させることが期待される。
【0008】
図4は、特許文献2に開示されているロードセル1aであり、同図に示したロードセル1aは、図2の場合と同様に、起歪体3aと歪みゲージ4aとを備えている。起歪体3aに設けられている薄肉部9aは、上ビーム7aと下ビーム部8aとで厚みが異なっていて、上ビーム部7aの方が下ビーム部8aよりも大きくなっている(ta>tb)。
【0009】
そして、歪みゲージ4aは、厚みの大きい上ビーム部7a側の薄肉部9aの背面側に4個配置されている。このような構成のロードセル1aによれば、起歪体3aの薄肉部9aが厚いので、変形に対して、歪みゲージ4aの影響が少なくなるが、以下に説明する技術的な課題があった。
【0010】
【特許文献1】特開昭61−96420号公報
【特許文献2】特開2006−47118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
すなわち、図4に示したロードセル1aでは、起歪体3aの幅方向の一端面に2枚の歪みゲージ4aを厚み方向沿って所定の間隔を隔てて並行に貼付し、かつ、長手方向に同じく2枚の歪みゲージ4aを貼付することになるので、起歪体3aの幅が大きくなるという問題があった。 本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、大型化を回避しつつ、起歪体の薄肉部の厚みをできるだけ大きくして、歪みゲージの影響を小さくすることで、性能の向上を図ることができるロードセルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、直方体形状の起歪体と、前記起歪体を厚み方向に貫通する貫通孔を形成し、当該貫通孔により形成された薄肉部に対応させて前記起歪体に貼付される歪みゲージとを備えたロードセルにおいて、前記貫通孔は、前記起歪体の長手方向に沿って4個設けられ、かつ、前記起歪体の幅方向の中心から偏心した位置にあって、前記薄肉部の厚みが上下で異なるように形成され、前記歪みゲージは、厚みの大きい前記薄肉部に対応するように、前記起歪体の長手方向に沿って一列状に配置するようにした。
【0013】
このように構成したロードセルによれば、貫通孔は、起歪体の長手方向に沿って4個設けられ、かつ、起歪体の幅方向の中心から偏心した位置にあって、薄肉部の厚みが上下で異なるように形成され、歪みゲージは、厚みの大きい薄肉部に対応するように、起歪体の長手方向に沿って一列状に配置するので、起歪体の幅は、歪みゲージの幅と概略同じ程度あればよく、幅方向の大型化を回避することができるとともに、歪みゲージは、厚みの大きい薄肉部に対応して貼付するので、歪みゲージの影響を小さくすることで、性能の向上を図ることができる。
【0014】
前記歪みゲージは、1枚の基板上に、一対の抵抗素子と、各抵抗素子の端部に接続された複数の端子とを備え、前記薄肉部の2箇所に1枚ずつ貼付することができる。
【0015】
この構成によれば、ゲージの貼付作業が容易になり、製造時間の時間の短縮を図れる。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかるロードセルによれば、大型化を回避しつつ、起歪体の薄肉部の厚みをできるだけ大きくして、歪みゲージの影響を小さくすることで、性能の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。図1および図2は、本発明にかかるロードセルの一実施例を示している。これらの図に示したロードセル10は、起歪体12と歪みゲージ14とを備えている。
【0018】
起歪体12は、直方体形状の金属ブロック体、例えば、アルミニウムの金属ブロックの厚み方向に複数の貫通孔16が穿設されている。本実施例の場合、貫通孔16は、上下方向に長径が配置された長円状のものであって、一対の長円孔の外周部分が、相互に部分的に重合するようになっていて、このような一対の長円孔が所定の間隔をおいて、起歪体12の長手軸方向に間隔をおいて配置されている。
【0019】
これらの長円孔は、中央部分が相互に連通されている。このような形状の起歪体12は、貫通孔16の側方に設けられた一対の剛体部18,20と、貫通孔16の上下方向に設けられ、剛体部18,20間を連結する一対の上,下ビーム部22,24と、各ビーム部22,24に設けられた薄肉部26a〜26dとを有している。
【0020】
剛体部18,20のいずれか一方は、上方から計測対象荷重が印加される部分となり、他方は、起歪体12の固定支持部分となる。薄肉部26a〜26dは、それぞれ厚みがta,tb,tc,tdとなっている。なお、図1に示した例では、左側の合計4個の薄肉部26a〜26dと、右側の合計4個の薄肉部26a〜26dとは、起歪体12の中心軸(水平および垂直)に対して、線対称となるように配置されている。
【0021】
薄肉部26a〜26dの厚みは、ta>tb,tc>tdとなるように設定されている。すなわち、本実施例の場合には、上ビーム部22側の薄肉部26a,26cが、下ビーム部24側の薄肉部26b,26dよりも大きくなるように設定されている。なおこの場合、厚みの差は、ta−tb=tc−tdとしてもよいし、ta−tb≠tc−tdであってもよい。
【0022】
歪みゲージ14は、厚みの大きい薄肉部26a,26cにのみ対応するように、起歪体12の長手方向に沿って、上端面に一列状に配置されている。このように構成した起歪体12では、1つの歪みゲージ14を貼付できる幅だけ確保すればいいので、起歪体12の幅方向の大型化を回避することができる。
【0023】
本実施例の場合、歪みゲージ14は、図2に示した構成のものが用いられている。同図に示した歪みゲージ14は、ポリイミド樹脂製のフィルム状基板14aと、基板14上に所定の間隔をおいて設けられた一対の抵抗素子14bと、各抵抗素子14bの端部に接続された複数の端子14cとを備え、二箇所の薄肉部26a,26cに対して1枚を貼付するようになっている。
【0024】
抵抗素子14bは、例えば、銅ニッケル合金などのような高抵抗金属材料で所定のパターン形状に形成されている。このような歪みゲージ14は、秤量に対応して幅がほぼ決まっていて、例えば、本実施例が対象とする秤量が数百mmgであれば、10mm程度になる。
【0025】
このような構造の歪みゲージ14を用いると、1つの起歪体12対して、2箇所貼付すればいいので、ゲージの貼付作業が容易になり、製造時間の時間の短縮を図れ、また、貼付位置のバラツキも小さくなる。
【0026】
また、この種のロードセルでは、クリープ特性を少なくするため、起歪体12に対して、最適な特性を備えた歪みゲージの選択が、試行錯誤的に行われるが、この際にも、本実施例のような歪みゲージ14を採用すると、その作業の効率化を図ることができる。
【0027】
さて、以上のように構成したロードセル10によれば、薄肉部26a〜26dは、上,下ビーム部22,24にそれぞれ4箇所設けられるとともに、かつ、上,下ビーム部22,24で厚みが異なるように形成され、厚みの大きい薄肉部26a,26cにのみ歪みゲージ14を、起歪体12の長手方向に沿って一列状に配置するので、起歪体12の幅方向の大型化を回避することができ、歪みゲージ14の影響を小さくすることで、性能の向上を図ることができる。
【0028】
なお、上記実施例では、1枚の基板14a上に、一対の抵抗素子14bと、各抵抗素子14bの端部に接続された複数の端子14cとを備えた歪みゲージ14を使用し、これらを薄肉部の2箇所に1枚ずつ貼付する構成を例示したが、本発明の実施はこれに限定されることはなく、抵抗素子14bが個別の設けられた歪みゲージを4個使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明にかかるロードセルによれば、起歪体の大型化を回避しつつ、性能の向上が図れるので、計量器の分野で技術を有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明にかかるロードセルの一実施例を示す外観斜視図である。
【図2】図1のロードセルに用いる歪みゲージの平面図である。
【図3】従来周知のロードセルの外観斜視図である。
【図4】従来のロードセルの外観斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
10 ロードセル
12 起歪体
14 歪みゲージ
16 貫通孔
18 剛体部
20 剛体部
22 上ビーム部
24 下ビーム部
26a〜26d 薄肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体形状の起歪体と、前記起歪体を厚み方向に貫通する貫通孔を形成し、当該貫通孔により形成された薄肉部に対応させて前記起歪体に貼付される歪みゲージとを備えたロードセルにおいて、
前記貫通孔は、前記起歪体の長手方向に沿って4個設けられ、かつ、前記起歪体の幅方向の中心から偏心した位置にあって、前記薄肉部の厚みが上下で異なるように形成され、
前記歪みゲージは、厚みの大きい前記薄肉部に対応するように、前記起歪体の長手方向に沿って一列状に配置することを特徴とするロードセル。
【請求項2】
前記歪みゲージは、1枚の基板上に、一対の抵抗素子と、各抵抗素子の端部に接続された複数の端子とを備え、前記薄肉部の2箇所に1枚ずつ貼付することを特徴とする請求項1記載のロードセル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate