説明

ロープ入り袋

【課題】 袋の強力を向上させると共に、別の部材を用いることなく自由に緊締しうるロープ入り袋を提供する。
【解決手段】 この袋は、長手方向に直列に配置している袋群1,1,1・・・を備えている。隣り合う袋1,1間は、封止領域2によって区画されている。各袋1,1,1・・・の収納部及び各封止領域2,2,2・・・内には、連続ロープ3が挿通されている。連続ロープ3は、各封止領域2,2,2・・・内で固定されている。そして、連続ロープ3は端末から露出している。袋の素材は熱可塑性合成繊維を構成繊維とする不織布が好ましい。この熱可塑性合成繊維の融着固化によって、封止領域2が形成されていると共に、連続ロープ3が固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋の補強のため及び袋の緊締のために、袋にロープを結合したロープ入り袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、図1に示すような、長手方向に直列に配置している袋1,1,1・・・群を備えた長尺状の袋を種々提案している(特許文献1〜4)。この長尺状の袋は、袋1が長手方向に直列に配置されており、隣り合う袋1,1間には、各袋1を区画する封止領域2が設けられてなるものである。封止領域2は、袋の素材である不織布を融着固化させて形成させたものである。そして、袋1内に金属製錘や砂等を収納して重錘体として使用したり(特許文献1〜3)、肥料を収納して施肥体として使用する(特許文献4)ことを提案している。
【0003】
かかる長尺状の袋は、種々の方法で使用されるが、たとえばカラス避けネットの重錘体として使用する場合、長尺状の袋を編組体で被覆して重錘体紐とし、カラス避けネット本体の周辺に縫着して使用されている。また、たとえば海苔養殖の際の施肥体として使用する場合、長尺状の袋をネット袋に収納して、このネット袋の口縁に設けた紐で、海苔網本体の周辺に緊締して使用されている。
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3122593号公報
【特許文献2】実用新案登録第3123822号公報
【特許文献3】実用新案登録第3131413号公報
【特許文献4】実用新案登録第3145475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、長尺状の袋を編組体で被覆して重錘紐を得るには、長尺状の袋を芯として、糸で編組体を編み込みながら製造するため、長尺状の袋の長手方向に大きな張力が負荷され、長尺状の袋が切断するという恐れがあった。また、海苔養殖の施肥体として使用する場合には、長尺状の袋とは別にネット袋を準備して、このネット袋に長尺状の袋を収納乃至は挿入しネット袋に設けられた紐で緊締しなければならず、施肥体の設置が煩わしいということがあった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、袋の強力を向上させると共に、別の部材を用いることなく自由に緊締しうる袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は新規な方法で袋に連続ロープを結合したものである。すなわち、本発明は、袋と、該袋の両端に設けられた封止領域と、該袋の収納部及び該封止領域内に挿通されている連続ロープとよりなり、該連続ロープは該封止領域内で固定されていると共に、該袋の両端から外部に露出していることを特徴とするロープ入り袋に関するものである。また、長手方向に直列に配置している袋群と、各袋の両端に設けられた封止領域群と、各袋の収納部及び各封止領域内に挿通されている連続ロープとよりなり、該連続ロープは各封止領域内で固定されていると共に、端末から外部に露出していることを特徴とするロープ入り袋に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るロープ入り袋は、連続ロープが袋の収納部及び封止領域内に挿通されているので、袋の引張強力が連続ロープによって補強されることになり、袋の引張強力が向上するという効果を奏する。また、連続ロープは、袋の外部に露出しているので、この露出部分を用いて任意の箇所に袋を緊締することができ、袋の緊締のために別の部材を準備する必要がなくなるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】特許文献1〜4に記載されている長尺状の袋の平面図である。
【図2】本発明の一例に係るロープ入り袋の平面図である。
【図3】本発明の他の例に係るロープ入り袋の平面図である。
【図4】本発明の他の例に係るロープ入り袋の平面図である。
【図5】本発明の他の例に係るロープ入り袋の平面図である。
【図6】本発明の他の例に係るロープ入り袋の平面図である。
【図7】図3に示したロープ入り袋のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、本発明を構成する袋の素材について説明する。袋の素材は限定するものではないが、一般的に熱可塑性繊維よりなる布帛が用いられる。特に、熱可塑性繊維を構成繊維の主体とする不織布を採用するのが好ましい。熱可塑性繊維を用いる理由は、当該熱可塑性繊維の融着固化によって袋1を形成又は区画する封止領域2が形成でき、かつ、連続ロープ3を固定できるからである。熱可塑性繊維としては、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等が用いられる。不織布は熱可塑性繊維のみからなっていてもよいし、熱可塑性繊維の他に、レーヨン繊維やコットン繊維等の非熱可塑性繊維が若干量混合されていてもよい。熱可塑性繊維相互間は、熱可塑性繊維自体の溶融又は軟化によって結合しており、不織布としての形態を維持しているのが好ましい。また、熱可塑性繊維として、低融点成分と高融点成分とからなる複合繊維を用いてもよい。具体的には、低融点成分を鞘成分とし高融点成分を芯成分となる芯鞘型複合繊維や、断面半月状の低融点成分と高融点成分とが貼り合わされてなるサイドバイサイド型複合繊維を用いてもよい。そして、各複合繊維相互間が、低融点成分の溶融又は軟化によって結合されて不織布としての形態を維持しているものであってもよい。低融点成分と高融点成分の組み合わせとしては、ポリエチレン−ポリエステル、低融点ポリエステル−高融点ポリエステル、ポリエチレン−ポリプロピレン、ポリプロピレン−ポリエステル等が挙げられる。なお、熱可塑性繊維は長繊維でも短繊維でもよい。特に本発明においては、ポリエチレンとポリエステルからなる芯鞘型複合長繊維で構成された、ユニチカ株式会社製のスパンボンド不織布「エルベス」(登録商標)等を用いるのが最も好ましい。
【0011】
不織布の目付は任意であるが、一般的に30〜200g/m2程度のものを採用する。低目付のものは、単位面積当たりの繊維量が少ないため、構成繊維相互間の間隙が大きくなる。したがって、本発明に係るロープ入り袋を施肥体として使用した場合には、袋1の収納部に収納した肥料が漏出しやすくなり、施肥体の寿命が短くなる傾向が生じる。また、袋1の収納部に砂を収納して重錘体とした場合には、砂が漏出する恐れが生じる。一方、高目付のものは、単位面積当たりの繊維量が多いため、構成繊維相互間の間隙が小さくなる。したがって、袋1の収納部に収納した肥料が漏出しにくくなり、肥料が外部に出にくくなる傾向が生じる。
【0012】
上記素材を用いて本発明に係るロープ入り袋を得るには、たとえば、筒状布帛素材の中空部に長手方向に沿って連続ロープ3を挿入しておき、袋群1,1,1・・・に対応する箇所以外の箇所に熱及び圧力を付加して、布帛素材中の熱可塑性繊維を溶融又は軟化させ、その箇所を融着固化させればよい(図2)。この場合には、熱及び圧力を付加した箇所、すなわち融着固化した箇所が封止領域群2,2,2・・・となり、その他の箇所が袋群1,1,1・・・となる。そして、封止領域2の融着固化によって、挿入されている連続ロープ3が固定される。また、連続ロープ3を挟んで、一枚の幅広の布帛素材を長手方向に沿って二つ折りして重合し、袋群1,1,1・・・に対応する箇所以外の箇所に、熱及び圧力を付加して、布帛素材中の熱可塑性繊維を溶融又は軟化させ、その箇所を融着固化させてもよい(図3)。この場合には、熱及び圧力を付加して融着固化した箇所は、封止領域群2,2,2・・・となると共に、折り目に対向する端縁が融着区域4となる。そして、その他の箇所が袋群1,1,1・・・となる。連続ロープ3は、封止領域2の融着固化によって固定される。なお、一般的に、連続ロープ3は袋の長手方向に沿って略中央に挿通されているのが好ましい。これは、袋1に被収納部を収納した場合に、片寄りが少なくバランスを取りやすいためである。しかし、連続ロープ3の位置が若干ずれて、融着区域4内に存在する場合があるが、何ら問題はない。さらに、連続ロープ3を挟んで二枚のテープ状布帛素材を重合し、袋群1,1,1・・・に対応する以外の箇所に、熱及び圧力を付加して、布帛素材中の熱可塑性繊維を溶融又は軟化させ、その箇所を融着固化させてもよい(図4)。この場合には、熱及び圧力を付加して融着固化した箇所は、封止領域群2,2,2・・・となると共に、長手方向に沿った両端縁が融着区域4となる。そして、その他の箇所が袋群1,1,1・・・となる。連続ロープ3は、封止領域2の融着固化によって固定される。なお、前記の場合と同様に、連続ロープ3は袋の長手方向に沿って略中央に挿通されているのが好ましいが、連続ロープ3の位置が若干ずれて、融着区域4内に存在していても、何ら問題はない。
【0013】
前記した方法で得られたロープ入り袋は、袋群1,1,1・・・が長手方向に直列に配置された形状となっているが、袋は一個であってもよい(図5)。図5は、図3に示されたロープ入り袋において、袋を一個にしたものであるが、図2及び図4に示されたロープ入り袋において、袋を一個にしてもよい。また、前記した方法で得られたロープ入り袋は、隣り合う袋1,1間が全て封止領域2となっているが、図6に示すように、隣り合う袋1,1間が各々の封止領域2,2と露出した連続ロープ3とからなっていてもよい。図6は、図3に示されたロープ入り袋において、隣り合う袋1,1が各々封止領域2,2を持っており、各々の封止領域2,2は離れて、その間に連続ロープ3が露出しているものである。同様に、図2及び図4に示されたロープ入り袋においても、このような形状となっていてもよい。また、図6では、袋1の収納部内に挿通されている連続ロープ3は、収納部の中央に位置せずに、その端に位置している。これは、収納部に一個のペットボトルの如き大きな被収納物を収納した場合は、連続ロープ3が被収納物によって押し退けられたためである。本発明においては、連続ロープ3がかかる状態となっていても差し支えない。また、図2〜図5に示したロープ入り袋の場合も、かかる状態となっていても差し支えない。
【0014】
連続ロープ3としては、長尺状の紐状又は帯状のものであれば、従来公知のどのようなものでも採用しうる。特に、前記した製造方法からも明らかなように、熱可塑性合成繊維製ロープであるのが好ましい。すなわち、連続ロープ3は封止領域2において、布帛素材の融着固化によって固定されるため、布帛素材と親和性が良好で密着性に優れたものであるのが好ましく、この観点から熱可塑性合成繊維製ロープが好ましいのである。また、封止領域2において、連続ロープ3が溶融して切断するのを防止するため、布帛素材が融着固化する温度では溶融しない融点を持つ熱可塑性合成繊維製ロープであるのが特に好ましい。たとえば、布帛素材としてポリエチレン成分を備えた構成繊維よりなる不織布を採用した場合、ポリプロピレン繊維製ロープであるのが好ましい。
【0015】
また、封止領域2は圧力を付加して形成されるため、連続ロープ3は断面が偏平なものであるのが好ましい。断面が円形のロープでは、封止領域2においてロープと布帛との密着性が不十分となって、袋1の形成及び区画が不十分となり、袋1に粉状又は粉状の肥料や砂を収納した場合には、袋1から肥料や砂が漏出したり、袋1,1,1・・・間で肥料や砂が移動する恐れがある。特に、連続ロープ3として、中空ロープを採用するのは好ましいことである。なぜなら、圧力を付加する封止領域2では偏平となり、その他の箇所で中空で断面が円形となっており、高強力を維持しうるからである。かかる中空ロープとしては、ポリプロピレンストランドの如き熱可塑性合成繊維ストランドを編組して得られたものが好ましい。なお、編組されていることから、その表面には多数の凹凸が存在し、封止領域2における密着性乃至は接着性にも優れており、強固な固定が可能となる。かかる中空ロープは、工事現場等で緊締紐として使用されているものであり、緊締しやすく高強力なものである。
【0016】
本発明に係るロープ入り袋の袋1の収納部には、所望の用途に応じて、各種の被収納物を収納することができる。たとえば、ロープ入り袋を重錘体として使用する場合は、袋1に金属や砂等を収納する。また、施肥体として使用する場合は、肥料等を収納する。さらに、浮きとして使用する場合、袋1に発泡体や使用済みのペットボトル等を収納する。かかる被収納物を収納するには、前記した製造方法において、封止領域2を形成しながら、順次、被収納物を収納してゆけばよい(特許文献1〜4を参照)。
【0017】
本発明に係るロープ入り袋は、袋に連続ロープが結合固定され、連続ロープ3は袋の両端乃至は端末から露出している。したがって、この露出した連続ロープ3の部位を用いて各種支持体乃至は本体に緊締して用いる。また、ロープ入り袋同士の露出した連続ロープ3,3間を緊締し、所望長さのロープ入り袋にして、各種支持体乃至は本体に緊締して用いる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明に係るロープ入り袋は、袋に各種の被収納物を収納し、カラス避けネット本体の端縁に沿って緊締することにより重錘体として、又は海苔網本体の端縁に沿って緊締することにより施肥体として、又は牡蠣養殖用筏に垂下させて緊締することにより施肥体として、又は網の端縁に沿って緊締したり或いは海岸の支柱に緊締することにより、浮きとして使用することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 袋
2 封止領域
3 連続ロープ
4 融着区域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋と、該袋の両端に設けられた封止領域と、該袋の収納部及び該封止領域内に挿通されている連続ロープとよりなり、該連続ロープは該封止領域内で固定されていると共に、該袋の両端から外部に露出していることを特徴とするロープ入り袋。
【請求項2】
長手方向に直列に配置している袋群と、各袋の両端に設けられた封止領域群と、各袋の収納部及び各封止領域内に挿通されている連続ロープとよりなり、該連続ロープは各封止領域内で固定されていると共に、端末から外部に露出していることを特徴とするロープ入り袋。
【請求項3】
袋の素材が、熱可塑性繊維を構成繊維の主体とする不織布であって、封止領域は、該熱可塑性繊維の融着固化によって連続ロープを固定している請求項1又は2記載のロープ入り袋。
【請求項4】
熱可塑性繊維が低融点成分と高融点成分とからなる複合繊維である請求項3記載のロープ入り袋。
【請求項5】
連続ロープが熱可塑性合成繊維製ロープである請求項1又は2記載のロープ入り袋。
【請求項6】
連続ロープが熱可塑性合成繊維ストランドを編組して得られた中空ロープである請求項1又は2記載のロープ入り袋。
【請求項7】
袋に、金属,砂,肥料,発泡体及び使用済みペットボトルよりなる群から選ばれた被収納物が収納されている請求項1又は2記載のロープ入り袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−230780(P2011−230780A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100567(P2010−100567)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(506118641)株式会社三和製作所 (2)
【Fターム(参考)】