説明

ロープ牽引装置

【課題】ロープ牽引装置の下降時の制動による発熱を逃がして、下降時の制動発熱による故障を回避する。
【解決手段】ロープ牽引装置4の牽引装置ケース6の軸線方向一側8にモータ48を設け、牽引装置ケース6の軸線方向他側10にモータ48の回転を減速してシーブ14に伝達する減速機50を設け、モータ48のモータ軸52と入力軸54と減速機50の減速機軸56とを同一の軸線C上に配設し、シーブ14の回転を制動するブレーキ装置86として下降制御用の第1ブレーキ機構154と下降停止用の第2ブレーキ機構156とを設け、モータ48の上昇回転時にロープ牽引装置4を上昇させるように入力軸54から第1ブレーキ機構154及び第2ブレーキ機構156を切り離すワンウェイクラッチ機構を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はロープ牽引装置に係り、特に、下降時の制動による発熱をシーブからワイヤロープに逃がして熱による故障を回避することができ、下降時および停止時の夫々においてシーブの回転を適切に制動することができるロープ牽引装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴンドラやエレベータ等の建設荷役搬送に使用される昇降機械には、上下方向に垂設されたワイヤロープの途中をシーブに巻き掛け、このシーブを回転させて巻き掛けられたワイヤロープを牽引することによりワイヤロープに沿って移動するロープ牽引装置を設けているものがある。
【0003】
従来のロープ牽引装置には、シーブの外周にロープを挟持するロープ挟持溝を設け、このロープ挟持溝を形成するシーブ外周の両側壁部をシーブと一体的に弾性体で形成し、ロープ保持位置における両側壁部間の間隔をワイヤロープの直径よりも所定値だけ小さくなるように形成して、溝形状を変形可能としたものがある。(特許文献1)
【0004】
また、従来のロープ牽引装置には、シーブ外周のロープ挟持溝を両側面板により形成し、このロープ側面と接する両側面板を弾性体で構成し、両側面板間の間隔がワイヤロープの直径よりも所定値だけ小さくなるようにして、両側面板をシーブの円周方向において対向する位置において両側からボルトによりシーブに取り付けたものがある。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−33391号公報
【特許文献2】特開平5−32395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来のロープ牽引装置は、昇降機械の速度制御方法として、メカニカルブレーキを使用しているものがあるが、負荷に比例して要求されるブレーキ推力が変化することから、負荷が大きいとブレーキ推力が増大してブレーキライニングをブレーキプレートに強く押し付けるので、過度の発熱によりブレーキライニングに付着しているグリース等が変質・劣化して異音・異常振動等を発生し、故障の原因となる問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上下方向に垂設されたワイヤロープの途中をシーブに巻き掛け、このシーブを回転させて巻き掛けられたワイヤロープを牽引することによりワイヤロープに沿って移動するロープ牽引装置において、このロープ牽引装置の牽引装置ケース内部に前記シーブを水平方向に指向する軸線を中心に回転可能に軸支して設け、前記シーブの外周に前記ワイヤロープを挟持するロープ挟持溝を一体に設け、前記牽引装置ケース上部のロープ入口から内部に導入した前記ワイヤロープを前記ロープ挟持溝の径方向における水平方向一側から上下方向下側を通り他側を越えて上側に至るまで巻き掛けるとともに、前記ワイヤロープを前記ロープ挟持溝の径方向における上下方向上側から略水平方向一側に延伸させて前記ロープ挟持溝から取り出した後に下方に湾曲させて前記牽引装置ケース下部のロープ出口から外部に導出させて設け、前記牽引装置ケースの前記軸線方向一側にモータを設け、前記牽引装置ケースの前記軸線方向他側に前記モータの回転を減速して前記シーブに伝達する減速機を設け、前記モータのモータ軸と前記減速機の減速機軸とを入力軸を介して連絡するとともにこれらモータ軸と入力軸と減速機軸とを前記軸線上に配設し、前記シーブと前記入力軸との間にシーブの回転を制動するブレーキ装置を設け、このブレーキ装置は、前記モータの下降回転時に前記ロープ牽引装置の下降速度を制限するように前記シーブの回転を制動する第1ブレーキ機構と、前記モータの回転停止時に前記ロープ牽引装置の停止状態を維持するように前記第1ブレーキ機構と共働して前記シーブの回転を制動する第2ブレーキ機構とを設け、前記モータの上昇回転時に前記ロープ牽引装置を上昇させるように前記入力軸から前記第1ブレーキ機構及び第2ブレーキ機構を切り離すワンウェイクラッチ機構を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明のロープ牽引装置は、下降制御用の第1ブレーキ機構と下降停止用の第2ブレーキ機構とをモータ、シーブ、減速機とともに同一軸線上に配置していることによりコンパクトに構成することができ、下降時には第1ブレーキ機構のみにより制動させていることにより、第1ブレーキ機構の発熱を抑えることができ、ブレーキライニングをブレーキディスクを介してブレーキフランジに押圧していることにより、発熱をシーブからワイヤロープに逃がすことができ、グリースの変質等に起因する故障を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】ロープ牽引装置の実施例を示すシーブに巻き掛けられたワイヤロープと押し付け機構との概略側面図である。
【図2】図1のII−II線による拡大断面図である。
【図3】ロープ牽引装置の非常用ブレーキ装置を露出させた状態の正面図である。
【図4】図3のIV−IV線による断面図である。
【図5】減速機の拡大断面図である。
【図6】ブレーキ装置の拡大断面図である。
【図7】図6の矢視線VIIによる入力軸側接続体の背面図である。
【図8】図7のVIII−VIII線による断面図である。
【図9】図6の矢視線IXによるモータ軸側接続体の背面図である。
【図10】段付キーの平面図である。
【図11】段付キーの側面図である。
【図12】図6の矢視線XIIによるブレーキライニング及びブレーキディスクの背面図である。
【図13】ブレーキ解除ノブの平面図である。
【図14】ブレーキ解除ノブの正面図である。
【図15】ノブカバー及びブレーキ解除ハンドルの正面図である。
【図16】図3のXVI−XVI線による非常用ブレーキ装置の拡大断面図である。
【図17】図16のXVII−XVII線による非常用ブレーキ装置の断面図である。
【図18】図16のXVIII−XVIII線による非常用ブレーキ装置の断面図である。
【図19】速度検出ガバナの正面図である。
【図20】図19のXX−XX線による速度検出ガバナの断面図である。
【図21】速度検出ガバナの連動機構を示し、(A)は縮閉動作状態の速度検出ガバナの正面図、(B)は拡開動作状態の速度検出ガバナの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明のロープ牽引装置は、ブレーキ装置として下降制御用の第1ブレーキ機構と下降停止用の第2ブレーキ機構とを設け、ブレーキ装置の発熱を抑える目的を、下降時には第1ブレーキ機構のみにより制動させることで実現するものである。
以下、図面に基づいてこの発明の実施例を詳細且つ具体的に説明する。
【実施例】
【0011】
図1〜図21は、この発明の実施例を示すものである。図3・図4において、2はワイヤロープ、4はロープ牽引装置である。ロープ牽引装置4は、牽引装置ケース6を一側牽引装置ケース部8と他側牽引装置ケース部10とから構成して図示しない取付けボルトにより連結し、内部の牽引空間12にワイヤロープ2を巻き掛ける円環板形状のシーブ14を水平方向に指向する軸線Cを中心に回転可能に軸支して設けている。
【0012】
シーブ14は、外周にワイヤロープ2を挟持するロープ挟持溝16を一体に設け、軸線C方向両側に筒形状の軸受支持部18・20を突出させて設け、軸受支持部20側の内周にブレーキフランジ22を中心側に突出させて設けている。シーブ14は、軸受支持部18・20に支持した軸受24・26により牽引装置ケース6の一側牽引装置ケース部8と他側牽引装置ケース部10とに軸線Cを中心に回転可能に軸支して設けている。
【0013】
ロープ牽引装置4は、シーブ14のロープ挟持溝16の上下方向に指向する接線方向の牽引装置ケース6上部にロープ入口28を設けるとともに牽引装置ケース6下部にロープ出口30を設け、シーブ14のロープ挟持溝16の上下方向に指向する接線方向に隣接してロープ入口28とロープ出口30との間にロープ取出ガイド32とロープ湾曲ガイド34とを設けている。ロープ入口28は、牽引装置ケース6上部に一体に設けた後述する非常用ブレーキ装置200の非常用ブレーキケース198に設けている。
【0014】
ロープ牽引装置4は、牽引装置ケース6上部のロープ入口28から内部の牽引空間12に導入したワイヤロープ2をシーブ14のロープ挟持溝16の径方向における水平方向一側から上下方向下側を通り他側を越えて上側に至るまで巻き掛けるとともに、このワイヤロープ2をロープ挟持溝16の径方向における上下方向上側から略水平方向一側に延伸させてロープ取出ガイド32によりロープ挟持溝16から取り出した後に、ロープ湾曲ガイド34により下方に湾曲させて牽引装置ケース6下部のロープ出口30から外部に導出させて設けている。
【0015】
前記ロープ牽引装置4は、ロープ挟持溝16の径方向における上下方向上側に挟持されたワイヤロープ2をロープ挟持溝16側に押し付ける押し付け機構36を設けている。押し付け機構36は、図1・図2に示す如く、ロープ挟持溝16の径方向における水平方向一側の巻き始めから第1の設定巻き掛け角度θ1(例えば、約250度)の上下方向上側に位置するロープ挟持溝16に近接して設けられる。押し付け機構36は、上側に位置するロープ挟持溝16の幅方向両側において対向するように配設される2枚の揺動板38・40を設け、この2枚の揺動板38・40の間に素線(図示せず)をより合わせたワイヤロープ2の長手方向における素線の山と谷とのピッチに合わせた間隔Lで2つの押し付けローラ42・44を軸支して設け、2枚の揺動板38・40を2つの押し付けローラ42・44の間におけるロープ挟持溝16の幅方向に指向する揺動軸46により牽引装置ケース6に揺動可能に支持して設けている。
【0016】
ロープ牽引装置4は、牽引装置ケース6の軸線C方向一側の一側牽引装置ケース部8にモータ48を設け、牽引装置ケース6の軸線C方向他側の他側牽引装置ケース部10にモータ48の回転を減速してシーブ14に伝達する減速機50を設けている。モータ48は、駆動軸であるモータ軸52を牽引空間12内に突入させ、他端を入力軸54の一端に回動可能に挿入している。
【0017】
前記減速機50は、図5に示す如く、入力側の減速機軸56に入力軸54を貫通させてキー58により軸方向移動可能且つ周方向移動不可能に装着している。減速機軸56には、外周に複数の、この実施例では3つの偏心部60を設け、各偏心部60に軸受62により夫々曲線板64の内周を軸支している。3つの偏心部60に軸支された3枚の曲線板64は、外周の曲線歯部66を枠体68内周の前記曲線歯部66よりも1乃至2少ない外側ピン70に係合させ、径方向中間の各貫通孔72に内側ピン74を遊嵌させ、この内側ピン74を軸線C方向一側の出力側のフランジ部材76に固定している。
【0018】
減速機50は、軸線C方向他側を覆う減速機カバー78を設け、減速機軸56の軸線C方向一側をフランジ部材76に軸受80により軸支するとともに、減速機軸56の軸線C方向他側を減速機カバー78に軸受82により軸支している。減速機50は、フランジ部材76をフランジ取付けボルト83によりシーブ14のブレーキフランジ22に取り付け、減速機カバー78を枠体68とともに他側牽引装置ケース部10にカバー取付けボルト84により取り付けている。
【0019】
このように、モータ48と減速機50とは、モータ軸52と減速機軸56とを入力軸54を介して連絡するとともに、これらモータ軸52と入力軸54と減速機軸56とを軸線C上に配設している。減速機50は、モータ48の回転をモータ軸52から入力軸54を介して減速機軸56に入力し、減速機軸56の回転を偏心部60と曲線板64と外側ピン70とにより減速し、内側ピン74によりフランジ部材76を介してシーブ14に伝達する。
【0020】
ロープ牽引装置4は、図6〜図12に示す如く、シーブ14と入力軸54との間にシーブ14の回転を制動するブレーキ装置86を設けている。このブレーキ装置86は、図6に示す如く、入力軸54の軸線C方向一側に径大な入力軸側接続体88を一体に設けている。入力軸側接続体88は、径大な円筒形状の入力軸側ボス部90を設け、この入力軸側ボス部90内にモータ軸52が挿入されるモータ軸挿入孔92を設け、入力軸側ボス部90の軸線C方向一側端外周に入力軸側フランジ部94を設けている。
【0021】
入力軸側ボス部90には、軸線C方向一側からモータ軸挿入孔92にモータ軸52が挿入され、軸線C方向他側端に前記減速機軸56の軸線C方向一側端が当接される。入力軸側フランジ部94には、図7・図8に示す如く、周方向の等間隔位置に3つの円孔96を形成し、これら3つの円孔96の間の周方向の等間隔位置に周方向に延びる3つの長円孔98を形成し、軸線C方向一側面に3つの円孔96部分を最深部として周方向両側に延びる3つの略V字形状に窪む傾斜面100を形成している。
【0022】
このブレーキ装置86は、前記モータ軸52にモータ軸側接続体102を設けている。モータ軸側接続体102は、図9に示す如く、径大な円筒形状のモータ側ボス部104を設け、このモータ軸側ボス部104内にモータ軸52が挿入されるモータ軸挿入孔106を設け、モータ軸側ボス部104の軸線C方向他側端外周にモータ軸側フランジ部108を設けている。
【0023】
モータ軸側ボス部104は、軸線C方向一側からモータ軸挿入孔106にモータ軸52が挿入され、図10・図11に示す段付キー110によりモータ軸52に軸方向移動可能且つ周方向移動不可能に装着している。モータ軸側フランジ部108には、周方向の等間隔位置に前記3つの円孔96を中心とする3つの傾斜面100に夫々当接される3本の当接体112を軸線C方向他側面から突出させて取り付け、これら3本の当接体112の間の周方向の等間隔位置に前記3つの長円孔98に係合される3本の係合ピン114を軸線C方向他側面から突出させて取り付けている。
【0024】
モータ軸52と入力軸54とは、入力軸側フランジ部94の長円孔98に係合するモータ軸側フランジ部108の係合ピン114により、長円孔98の周方向長さだけ相対回転可能に連絡している。また、モータ軸側接続体102は、入力軸側フランジ部94の傾斜面100に当接するモータ軸側フランジ部108の当接体112により、モータ軸52と入力軸54との相対回転角度に応じて軸線C方向に移動される。
【0025】
前記ブレーキ装置86は、シーブ14のブレーキフランジ22の外周側の周方向等間隔位置に複数のブレーキボルト116を取り付けている。この実施例においては、ブレーキボルト116を6本設け、この6本のブレーキボルト116をブレーキフランジ22外周側の周方向等間隔位置に、シーブ14のブレーキフランジ22の軸線C方向他側から軸線C方向一側に突出させて取り付けている。
【0026】
ブレーキ装置86は、シーブ14のブレーキフランジ22と入力軸54の入力軸側接続体88との間に、複数枚のブレーキディスク118とブレーキライニング120とを交互に重ねて配設している。この実施例においては、3枚のブレーキディスク118の間に2枚のブレーキライニング120を交互に重ねて配設している。
【0027】
ブレーキディスク118は、図12に示す如く、外周の周方向等間隔位置に設けた6つの外周溝122をブレーキボルト116に係合し、ブレーキボルト116に対して軸線C方向にわずかに移動可能且つ回転不可能に設けている。ブレーキライニング120は、内周の周方向等間隔位置に設けた6つの内周窪部124を入力軸54の入力軸側ボス部90に装着したワンウェイクラッチ機構126のクラッチハウジング128の突部130に係合し、クラッチハウジング128に対して軸線C方向にわずかに移動可能且つ回転不可能に設けている。
【0028】
ワンウェイクラッチ機構130は、モータ48の上昇回転時に入力軸54の回転からブレーキライニング120を切り離し、モータ48の下降回転時に入力軸54の回転をブレーキライニング120に伝達する。
【0029】
ブレーキディスク118とブレーキライニング120とは、軸線C方向他側のシーブ14のブレーキフランジ22に対して、軸線C方向一側のブレーキ押圧体132により押圧される。ブレーキ押圧体132は、図6に示す如く、モータ軸側接続体102のモータ軸側ボス部104が挿通される円環板形状の内周部134と、この内周部134外縁からモータ軸側フランジ部108及び入力軸側フランジ部94を覆うように軸線C方向他側に延びる円筒形状の中間部136と、この中間部136の軸線C方向他側端外縁から径外方向に延びてブレーキディスク118に対向される円環板形状の外周部138とから、断面略ハット形状に形成されている。
【0030】
ブレーキ押圧体132は、外周部138の周方向等間隔位置に3つの切欠部140を設け、これら3つの切欠部140の間の周方向等間隔位置に3つの挿通孔142を設けている。ブレーキ押圧体132は、モータ軸側接続体102のモータ軸側ボス部104が挿通された内周部134をスラスト軸受144を介してモータ軸側フランジ部108に当接させ、外周部138の3つの切欠部140内に3本のブレーキボルト116を挿通させ、外周部138の3つの挿通孔142に残りの3本のブレーキボルト116を挿通させている。
【0031】
ブレーキ押圧体132の切欠部140内に挿通された3本のブレーキボルト116には、軸線C方向一側端にナット146を螺着してリテーナ148を固定し、このリテーナ148とブレーキディスク118との間に第1ブレーキスプリング150を圧縮して装着している。ブレーキ押圧体132の挿通孔142に挿通された残りの3本のブレーキボルト116には、軸線C方向一側端にナット146を螺着してリテーナ148を固定し、このリテーナ148とブレーキディスク118に対向する外周部138との間に第2ブレーキスプリング152を圧縮して装着している。
【0032】
ブレーキ装置86は、シーブ14のブレーキフランジ22とブレーキディスク118及びブレーキライニング120とワンウェイクラッチ機構126と3本のブレーキボルト116に装着された第1ブレーキスプリング150とにより第1ブレーキ機構154を構成し、シーブ14のブレーキフランジ22と入力軸側接続体88とモータ軸側接続体102とブレーキディスク118及びブレーキライニング120とワンウェイクラッチ機構126とブレーキ押圧体132と残りの3本のブレーキボルト116に装着された第2ブレーキスプリング152とにより第2ブレーキ機構156を構成する。
【0033】
このブレーキ装置86は、モータ48の上昇回転時に、ワンウェイクラッチ機構126により入力軸54からブレーキライニング120が切り離されることにより第1・第2ブレーキ機構154・156が切り離なされ、モータ48のモータ軸52の回転が入力軸54から減速機50の減速機軸56に伝達され、シーブ14を回転させる。
【0034】
このとき、ブレーキ装置86は、図7に示す如く、モータ軸側接続体102の係合ピン114が入力軸側接続体88の長円孔98内を移動して上昇回転方向の端部に当接し、モータ軸側フランジ部108の当接体112が入力軸側フランジ部94の傾斜面100の最深部側に移動しているが、ワンウェイクラッチ機構126により切り離されて、ブレーキデスク118とブレーキライニング120とが押圧されることがない。
【0035】
また、ブレーキ装置86は、モータ48の下降回転時に、ワンウェイクラッチ機構126により入力軸54とブレーキライニング120が結合されて一体となって回転し、第1ブレーキ機構154を構成する3つの第1ブレーキスプリング150により押圧されるブレーキデスク118とブレーキライニング120との回転差によりシーブ14の回転を制動する。
【0036】
さらに、ブレーキ装置86は、モータ48の下降回転時に、モータ軸52よりも入力軸54側の回転が速くなると、モータ軸側接続体102のモータ軸側フランジ108が入力軸側接続体88の入力軸側フランジ部94に対して回転差だけ移動して、モータ軸側フランジ部108の当接体112が入力軸側フランジ部94の傾斜面100の最深部側に移動することから、第2ブレーキスプリング152によりブレーキ押圧体132がブレーキデスク118側に移動される。
【0037】
これにより、ブレーキ装置86は、モータ48の下降回転時に、モータ軸52よりも入力軸54側の回転が速くなると、第1ブレーキ機構154を構成する3つの第1ブレーキスプリング150により押圧されるブレーキデスク118とブレーキライニング120とによる制動に併せて、第2ブレーキ機構156を構成する3つの第2ブレーキスプリング152により押圧されるブレーキデスク118とブレーキライニング120との回転差によりシーブ14の回転を制動し始める。
【0038】
さらにまた、ブレーキ装置86は、モータ48の停止時に、モータ軸52が回転しないので、第1ブレーキ機構154を構成する3つの第1ブレーキスプリング150により押圧されるブレーキデスク118とブレーキライニング120とによりシーブ14の回転を制動するとともに、モータ軸側接続体102の当接体112が入力軸側接続体88の傾斜面100の最深部に戻り、ブレーキ押圧体132がブレーキデスク118側に移動されるため、第2ブレーキ機構156を構成する3つ第2ブレーキスプリング152により押圧されるブレーキデスク118とブレーキライニング120とによりシーブ14の回転を制動する。
【0039】
このように、このブレーキ装置86は、モータ48の下降回転時にロープ牽引装置4の下降速度を制限するようにシーブ14の回転を制動する第1ブレーキ機構154と、モータ48の回転停止時にロープ牽引装置4の停止状態を維持するように前記第1ブレーキ機構154と共働してシーブ14の回転を制動する第2ブレーキ機構156とを設け、モータ48の上昇回転時にロープ牽引装置4を上昇させるように入力軸54から第1ブレーキ機構154及び第2ブレーキ機構156を切り離すワンウェイクラッチ機構126を設けている。
【0040】
前記ブレーキ装置86は、図5に示す如く、モータ48の回転停止時に制動動作を解除可能なブレーキ解除機構158を設けている。このブレーキ解除機構158は、減速機50の減速機軸56を貫通して軸線C方向他側に突出された入力軸54にブレーキ解除段部160を設け、このブレーキ解除段部160に軸受162により軸支されるブレーキ解除ノブ164を設けている。
【0041】
ブレーキ解除ノブ164は、図13・図14に示す如く、円筒形状に形成され、内周の貫通孔166の軸線C方向一側に軸支段部168を設けている。ブレーキ解除ノブ164は、軸支段部168を入力軸54のブレーキ解除段部160に軸受162により相対回転可能且つ軸方向移動不可能に軸支して設けている。このブレーキ解除ノブ164には、軸線C方向他側の端面の円周方向等間隔位置に周方向に延びる3つの略V字形状に窪む傾斜面170を設けている。
【0042】
ブレーキ解除ノブ164は、減速機カバー78に取付けボルト172により取り付けられるノブカバー174内に挿入される。ノブカバー174は、減速機カバー78に取り付けられる円環板形状の取付部176と、この取付部176内周からブレーキ解除ノブ164を覆うように軸線C方向他側に延びる円筒形状の延長部178と、この延長部178の軸線C方向他側端に中心方向に延びて傾斜面170に対向される円環板形状の端縁部180とから、断面略ハット形状に形成されている。
【0043】
ノブカバー174は、延長部178内にブレーキ解除ノブ164が挿入位置されるノブ挿入孔182を設け、延長部178下側にノブ挿入孔182に貫通して周方向に長い解除操作用孔部184を設け、端縁部180中央にノブ挿入孔182に貫通する手動操作用孔部186を設け、端縁部180外周の周方向等間隔位置にブレーキ解除ノブ164の傾斜面170に当接される3つの当接体188をノブ挿入孔182内に突出させて取り付けている。
【0044】
減速機カバー78に取付けボルト172により取り付けられたノブカバー174は、延長部178内のノブ挿入孔182にブレーキ解除ノブ164が挿入位置され、下方外部から解除操作用孔部184に挿通されたブレーキ解除ハンドル190の基端をブレーキ解除ノブ164に取り付け、解除ノブ164の傾斜面170に端縁部180の当接体188を当接させている。
【0045】
前記当接体188は、通常はブレーキ解除ノブ164の傾斜面170の最深部に当接され、ブレーキ解除ノブ164を軸線C方向他側に移動させている。当接体188は、ブレーキ解除ノブ164が周方向に回転されると、傾斜面170が移動して最浅部側に当接されることから、周方向に回転されるブレーキ解除ノブ164を軸線C方向一側に移動させる。
【0046】
前記ブレーキ解除ハンドル190は、図15に矢印で示す如く、レーキ解除ノブ164を操作角θ3の範囲で周方向に回転させると、当接体188に当接される傾斜面170が最深部から最浅部側に移動されることにより、ブレーキ解除ノブ164が軸線C方向一側に移動され、軸受162を介して入力軸54を軸線C方向一側に移動させる。
【0047】
これにより、ブレーキ解除機構158は、ブレーキ解除ハンドル190によりブレーキ解除ノブ164を周方向に回転させると、入力軸54の軸線C方向一側の入力軸側接続体88がモータ軸側接続体102を軸線C方向一側に移動させ、このモータ軸側接続体102を介してブレーキ押圧体132が第2ブレーキスプリング152に抗して軸線C方向一側に移動されることにより、第2ブレーキ機構156の制動動作を解除させる。
【0048】
前記ブレーキ装置86は、図5に示す如く、モータ48の回転停止時にシーブ14を手動により回転可能な手動駆動機構192を設けている。手動駆動機構192は、減速機50の減速機軸56を貫通して軸線C方向他側に突出された入力軸54の軸端の前記ブレーキ解除段部160に連続して手動ハンドル連結部194を設けている。手動ハンドル連結部194には、ノブカバー174の端縁部180中央の手動操作用孔部186から挿入した手動ハンドル196の取付部198が着脱可能に取り付けられる。
【0049】
手動駆動機構192は、入力軸54の軸端の手動ハンドル連結部194に取り付けた手動ハンドル196により入力軸54を回転させると、入力軸54に連絡された減速機軸56により減速機50を介してシーブ14を回転させることができ、ロープ牽引装置4を上昇・下降させることができる。
【0050】
前記ロープ牽引装置4は、牽引装置ケース6上部にワイヤロープ2の移動速度が設定値以上になるとワイヤロープ2の移動を制動する非常用ブレーキ装置200を設けている。この非常用ブレーキ装置200は、図4に示す如く、非常用ブレーキケース202を一側牽引装置ケース部8に一体に設けた一側非常用ブレーキケース部204と他側牽引装置ケース部10に一体に設けた他側非常用ブレーキケース部206とから構成し、非常用ブレーキケース202の内部に前記牽引空間12に連絡する非常用ブレーキ空間208を設け、他側非常用ブレーキケース部206に非常用ブレーキカバー210を取り付けて内部に非常用ブレーキ補助空間212を設けている。
【0051】
非常用ブレーキ装置200は、図16〜図18に示す如く、ロープ固定機構214と動作機構216と保持機構218と速度判定機構220とを設けている。
【0052】
前記ロープ固定機構214は、図16・図17に示す如く、非常用ブレーキ空間208のワイヤロープ2の径方向一側に位置させて非常用ブレーキケース202に固定側楔部材222を固定ボルト224により固定して設け、この固定側楔部材222と対向するようにワイヤロープ2の径方向他側に位置させて移動側楔部材226を動作機構216により上下方向に移動可能に設け、移動側楔部材226に対して固定側楔部材222の反対側に位置させて楔受け部材228を非常用ブレーキケース202に固定して設けている。
【0053】
固定側楔部材222と移動側楔部材226との対向する側には、夫々ワイヤロープ2の半径よりも浅い固定側ロープ固定溝230と移動側ロープ固定溝232とを設けている。移動側楔部材226と楔受け部材228との対向する側には、下側よりも上側が固定側楔部材222に近接するように傾斜する移動側傾斜面234と楔受け側傾斜面236とを夫々設けている。移動側傾斜面234と楔受け側傾斜面236とは、上方向へ移動する移動側楔部材226を固定側楔部材222に対して接近する方向に移動させ、下方向へ移動する移動側楔部材226を固定側楔部材222に対して離間する方向に移動させるように、互いに傾斜している。
【0054】
このように、ロープ固定機構214は、非常用ブレーキ空間208にワイヤロープ2を径方向両側から挟んで移動を阻止するように固定するとともにワイヤロープ2の移動を許容するように解放する、固定側楔部材222と移動側楔部材226と楔受け部材228とを設けている。
【0055】
前記動作機構216は、図16・図17に示す如く、楔受け部材228に貫通されて他側非常用ブレーキケース部206と非常用ブレーキカバー210とに軸支される軸線Cと平行な動作軸238を設けている。動作軸238には、非常用ブレーキ空間208内の楔受け部材228の幅方向両側に位置させて、一対の動作レバー240を取り付けている。動作レバー240は、先端に長円形状の動作穴242を設け、この動作穴242に前記移動側楔部材226から突出させた移動ピン244を摺動可能に係合させて設けている。
【0056】
動作軸238には、動作レバー240を図17において反時計回りに回転させて移動側楔部材226を上方向に移動させるように回転付勢する動作スプリング246を、非常用ブレーキ補助空間212内においてねじり圧縮して装着している。動作軸238は、非常用ブレーキカバー210から突出された外端に、非常用ブレーキ解除ノブ248を取り付けている。動作レバー240は、上方の解放位置と下方の固定位置との間の動作角θ4の範囲で回動される。
【0057】
動作機構216は、動作スプリング246の復元力によって動作レバー240を図17において下方の解放位置から反時計回りに上方の固定位置に回転させて、移動側楔部材226を上方向に移動させることにより、固定側楔部材222の固定側ロープ固定溝230と移動側楔部材226の移動側ロープ固定溝232との間にワイヤロープ2を径方向両側から挟んで移動を阻止するように、ロープ固定機構214を固定状態に動作させる。また、動作機構216は、動作スプリング246の復元力に抗して動作レバー240を図17において上方の固定位置から時計回りに下方の解放位置に回転させて、移動側楔部材226を下方向に移動させることにより、固定側楔部材222と移動側楔部材226とを離間させてワイヤロープ2の移動を許容するように、ロープ固定機構214を解放状態に動作させる。
【0058】
前記保持機構218は、図16・図18に示す如く、非常用ブレーキ補助空間212内の動作軸238に保持体250を取り付け、この保持体250に保持段部252を設けている。また、保持機構218は、保持体250の保持段部252に一端側を係合・解放される保持レバー254を設けている。保持レバー254は、非常用ブレーキ補助空間212内において他側非常用ブレーキケース部206と非常用ブレーキカバー210とに固定された軸線Cと平行なレバー軸256に揺動可能に軸支され、一端側に前記保持体250の保持段部252に係合・解放される係合端部258を設け、他端側に後述する速度判定機構220の速度検出ガバナ270により衝打されて係合端部258を保持段部252から解放させる衝打端部260を設けている。
【0059】
前記レバー軸256には、保持スプリング262をねじり圧縮して装着している。保持スプリング262は、保持レバー254を図18において時計回りに回転させて、係合端部258が保持体250の保持段部252に係合するように、保持レバー254を回転付勢する。
【0060】
これにより、保持機構218は、保持段部252に係合端部258を係合することにより、動作機構216の動作レバー240の解放位置から固定位置への動作を阻止して、ロープ固定機構214を解放状態に保持させるとともに、保持段部252から係合端部258を解放することにより、動作機構216の動作レバー240の解放位置から固定位置への動作阻止を解除してロープ固定機構214を固定状態に動作させる。
【0061】
前記速度判定機構220は、他側非常用ブレーキケース部206に軸受264により軸線Cと平行な水平方向に指向する速度検出軸266を軸支して設けている。速度検出軸266は、長手方向一側を非常用ブレーキ空間208に位置させ、長手方向他側を非常用ブレーキ補助空間212に位置させている。
【0062】
速度検出軸266には、長手方向一側の非常用ブレーキ空間208に位置させて単一の速度検出ローラ268を取り付けている。速度検出ローラ268は、図1に示す如く、シーブ14に設けたロープ挟持溝16の径方向における水平方向一側の巻き始めから第2の設定巻き掛け角度θ2(例えば、約270度)の上下方向上側に挟持されたワイヤロープ2に押し付けられる。
【0063】
速度検出軸266には、長手方向他側の非常用ブレーキ補助空間212に位置させて速度検出ガバナ270を取り付けている。速度検出ローラ268に連絡された速度検出ガバナ270は、図19・図20に示す如く、速度検出軸266の端部に円板形状のガバナ基板272のボス部274を取り付け、このガバナ基板272に略半円形状の一対の錘276の基端側を径方向において対称位置の回動ピン278により夫々ガバナ基板272の回転中心に対して拡開・縮閉可能に軸支して設けている。一対の錘276の拡開範囲は、ガバナ基板272に取り付けた規制ピン280が係合する各錘276の規制孔282の大きさにより規制される。
【0064】
一対の錘276は、一対のガバナスプリング284により縮閉する方向に付勢されている。一対のガバナスプリング284は、ガバナ基板272の回転中心に立設した固定軸286の途中に夫々一端側を掛止し、他端側を夫々一対の錘276に形成したスプリング用孔288に挿入して固定ピン290に掛止している。
【0065】
一対のガバナスプリング284は、ワイヤロープ2の移動速度が設定値未満となる回転速度では、一対の錘276を遠心力に抗して縮閉させて錘276の先端部292を保持レバー254の衝打端部260から離間させ、係合端部258が保持体250の保持段部252に係合した状態を継続させる。一方、一対のガバナスプリング284は、ワイヤロープ2の移動速度が設定値以上となる回転速度では、一対の錘276の遠心力による拡開を許容させて錘276の先端部292を保持レバー254の衝打端部260に衝打させ、係合端部258を保持体250の保持段部252から解放させる。
【0066】
これにより、速度判定機構220は、ワイヤロープ2の移動速度が設定値未満の場合には保持機構218による動作機構216の動作阻止を継続させてロープ固定機構214を解放状態に保持させるとともに、ワイヤロープ2の移動速度が設定値以上になると保持機構218による動作機構216の動作阻止を解除してロープ固定機構214を固定状態に動作させる。
【0067】
また、速度検出ガバナ270には、図21に示す如く、一対の錘276に連動機構294を設けている。連動機構294は、ガバナ基板272の回転中心に立設した固定軸286先端にリンクプレート296の中心を回転可能に軸支して設け、リンクプレート296の長手方向両端近傍に夫々長穴298を形成し、各長穴298に一対の錘276に夫々取り付けたリンクピン300を摺動可能に係合している。
【0068】
連動機構294は、図21(A)に示す如く、一方の錘276が縮閉動作すると、この一方の錘276の縮閉動作がリンクピン300によりリンクプレート296の一端側に伝達され、リンクプレート296の他端側を固定軸286を中心に一端側と同方向に回転させる。リンクプレート296は、この回転により他方の錘276をリンクピン300を介して一方の錘276と同方向に回転させ、縮閉動作させる。同様に、連動機構294は、図21(B)に示す如く、一方の錘276が拡開動作すると、この一方の錘276の拡開動作がリンクピン300及びリンクプレート296を介して他方の錘276のリンクピン300に伝達され、他方の錘276を一方の錘276と同方向に回転させて拡開動作させる。
【0069】
このように、連動機構294は、一方の錘276の拡開・縮閉動作と他方の錘276の拡開・縮閉動作とを連動させる。
【0070】
次に、この実施例の作用を説明する。
【0071】
ロープ牽引装置4は、牽引装置ケース6上部のロープ入口28から内部に導入したワイヤロープ2をシーブ14のロープ挟持溝16に4分の3周ほど巻き掛けてから取り出して、牽引装置ケース6下部のロープ出口30から外部に導出させている。ロープ挟持溝16の上側に挟持されたワイヤロープ2は、押し付け機構36の2つの押し付けローラ42・44によりロープ挟持溝16側に押し付けられている。
【0072】
ロープ牽引装置4は、牽引装置ケース6の軸線C方向一側に設けたモータ48のモータ軸52を入力軸54を介して減速機50の減速機軸56に連絡し、減速機50の出力部材であるフランジ部材76をシーブ14に連絡し、第1・第2ブレーキ機構154・156とワンウェイクラッチ機構126とからなるブレーキ装置86を設けている。
【0073】
このブレーキ装置86は、下降制御用の第1ブレーキ機構154と下降停止用の第2ブレーキ機構156とを、ワンウェイクラッチ機構126により上昇時はブレーキを作用させずに下降・停止時にのみブレーキを作用させ、更に入力軸側接続体88・モータ軸側接続体102によるブレーキ解放機能を共用させて、入力軸54の一軸上にまとめてコンパクトに構成している。
【0074】
前記モータ48の駆動力は、上昇回転時に、入力軸側接続体88の長円孔98に摺動可能に係合したモータ軸側接続体102の係合ピン114が、前記長円孔98との間に遊び設けずに端部に当接されて入力軸54に連結され、減速機50に伝達される。これにより、ロープ牽引装置4は、シーブ14によりワイヤロープ2を牽引して下方に巻き出し、ワイヤロープ2に沿って上昇する。
【0075】
一方、モータ48の駆動力は、下降回転時に、モータ軸側接続体102の係合ピン114が入力軸側接続体88の長円孔98内の遊び角を移動し、モータ軸側接続体102の当接体112が入力軸側接続体88の傾斜面100に接触してブレーキ押圧体132を第2ブレーキスプリング152が圧縮される方向に移動させ、第2ブレーキ機構156を開放させてから、モータ軸側接続体102の係合ピン114が前記長円孔98との間に遊び設けずに端部に当接されて入力軸54に伝達され、減速機50に伝達される。これにより、ロープ牽引装置4は、シーブ14によりワイヤロープ2を牽引して上方に巻き出し、ワイヤロープ2に沿って下降する。
【0076】
このロープ牽引装置4は、モータ48を上昇回転させると、ブレーキ装置86のワンウェイクラッチ機構126により入力軸54の回転がブレーキライニング120と切り離されるため、ブレーキディスク118はシーブ14とともに回転し、入力軸54はモータ48の回転を減速機50に伝達するのみで、シーブ14は制動されない。
【0077】
また、ロープ牽引装置4は、モータ48を下降回転させると、ブレーキ装置86のワンウェイクラッチ機構126により入力軸54とブレーキライニング120とが結合されて一体に回転するため、ブレーキディスク118及びブレーキライニング120の回転比と方向とが異なり、シーブ14を制動する。
【0078】
ロープ牽引装置4は、下降時に、第1ブレーキ機構152の3つの第1ブレーキスプリシグ150によりブレーキライニング120を押圧して、過速を制御するだけの制動力を発生する構造であるため、従来のブレーキ装置よりもブレーキライニングを押圧する力を小さくして発熱を抑えることができ、グリースの変質等に起因する故障を防止することができる。
【0079】
ロープ牽引装置4は、下降時に、原動側のモータ48の回転数より負荷側の入力軸54の回転数が速くなると、入力軸側接続体88の傾斜面100が原動側のモータ48と負荷側の入力軸54との回転差だけ移動し、モータ軸側接続体102の当接体112の先端が傾斜面100に接触しなくなるため、第2ブレーキスプリング152によりブレーキ押圧体132が移動されてブレーキライニング120を押圧するので、制動力を増加して下降速度を制御することができる。
【0080】
ロープ牽引装置4は、下降時に、シーブ14側に設けたブレーキディスク118の回転方向とブレーキ押圧体132側に設けられたブレーキライニング120の回転方向とが互いに逆方向になる構造であるため、制動した場合の制動力を増大させて制動距離を短くすることができる。
【0081】
ロープ牽引装置4は、停止時に、モータ軸52がフリーとなるため、モータ軸側接続体102が当接体112の先端を入力軸側接続体88の傾斜面100の最深部側に接触するように移動して、ブレーキ押圧体132が第2ブレーキスプリング152により押されて第2ブレーキ機構156が自動的に作動するので、第1ブレーキ機構154の制動力に第2ブレーキ機構156による制動力を加算して増大させることができる。
【0082】
ロープ牽引装置4は、停止時に、ブレーキ解除機構158のブレーキ解除ハンドル190を操作すると、ブレーキ解除ノブ164が回転して傾斜面170の最浅部側にノブカバー174に設けられた当接体188が接触することになり、ブレーキ解除ノブ164が軸線C方向一側に移動して軸受162を介して入力軸54を軸線C方向一側に移動させるため、入力軸側接続体88・モータ軸側接続体102を介してブレーキ押圧体132を軸線C方向一側に移動させ、第2ブレーキ機構156を解放動作させることができる。なお、第1ブレーキ機構154は、常時作用しているため、シーブ14の負荷による下降時の過速を防止することができる。
【0083】
ロープ牽引装置4は、停電等でモータ48の動力が遮断された場合でも、入力軸54の軸線C方向他側端に設けた手動ハンドル連結部194に手動ハンドル196を取り付けることにより、手動で入力軸54を回転させることができ、上昇・下降運転を手動で行うことができる。
【0084】
このロープ牽引装置4は、牽引装置ケース6上部のロープ入口28から内部に導入したワイヤロープ2をシーブ14のロープ挟持溝16に4分の3周ほど巻き掛けてから取り出して牽引装置ケース6下部のロープ出口30から外部に導出させており、シーブ14のロープ挟持溝16の径方向における上下方向上側に挟持されたワイヤロープ2をロープ挟持溝16側に押し付ける押し付け機構36として、素線をより合わせたワイヤロープ2の長手方向における素線の山と谷とのピッチに合わせた間隔Lで2枚の揺動板38・40に2つの押し付けローラ42・44を軸支し、2つの押し付けローラ42・44を軸支した2枚の揺動板38・40を揺動軸46により揺動可能に支持して設けている。
【0085】
これにより、このロープ牽引装置4は、ワイヤロープ2の長手方向の山と谷とのピッチに合わせて2つの押し付けローラ42・44が揺動して常にワイヤロープ2に接触させることができ、このため、ワイヤロープ2の浮き上がりによるスリップを簡単な構造により防止することができ、また、ワイヤロープ2の反発力を利用した小さな力でワイヤロープ2をロープ挟持溝16内に押し付けることができ、このため、2つの押し付けローラ423・44とワイヤロープ2とが接触する部分での素線の撓みを少なくして素線切れを減少させることができ、ワイヤロープ2の寿命を延長することができる。
【0086】
このロープ牽引装置4は、牽引装置ケース6の軸線C方向一側に設けたモータ48のモータ軸52と牽引装置ケース6の軸線C方向他側に設けた減速機50の減速機軸56とを入力軸54を介して連絡するとともにこれらモータ軸52と入力軸54と減速機軸56とを軸線C上に配設し、シーブ14と入力軸54との間にシーブ14の回転を制動するブレーキ装置86として、モータ48の下降回転時にシーブ14の回転を制動する第1ブレーキ機構154とモータ48の回転停止時に第1ブレーキ機構154と共働してシーブ14の回転を制動する第2ブレーキ機構156とを設け、モータ48の上昇回転時に入力軸54から第1ブレーキ機構154及び第2ブレーキ機構156を切り離すワンウェイクラッチ機構126を設けている。
【0087】
これにより、このロープ牽引装置4は、下降制御用の第1ブレーキ機構154と下降停止用の第2ブレーキ機構156とをモータ48、シーブ14、減速機50とともに同一軸線C上に配置していることによりコンパクトに構成することができ、下降時には第1ブレーキ機構154のみにより制動させていることにより、第1ブレーキ機構154の発熱を抑えることができ、ブレーキライニング120をブレーキディスク118を介してブレーキフランジ22に押圧していることにより、発熱をシーブ14からワイヤロープ2に逃がすことができ、グリースの変質等に起因する故障を防止することができる。
【0088】
前記ブレーキ装置86は、モータ48の回転停止時に制動動作を解除可能なブレーキ解除機構158として、減速機50の減速機軸56を貫通して軸線C方向他側に突出された入力軸54にブレーキ解除ノブ164を設け、ブレーキ解除ノブ164に傾斜面170を設け、この傾斜面170に当接させてブレーキ解除ノブ170を軸線方向一側に移動させる当接体188を設け、当接体188によりブレーキ解除ノブ164を介して入力軸54を軸線C方向一側に移動させ、第2ブレーキ機構156の制動動作を解除させるようにブレーキ解除ノブ164を周方向に回転可能なブレーキ解除ハンドル190を設けている。
【0089】
これにより、このロープ牽引装置4は、停電時等にモータ48への電力が遮断された場合に、ブレーキ解除ハンドル190の操作により入力軸54を介してブレーキ押圧体132を軸線C方向一側に移動させ、第2ブレーキ機構156の第2ブレーキスプリング152による制動動作を解除させて下降させることができる。
【0090】
また、前記ブレーキ装置86は、モータ48の回転停止時に、シーブ14を手動により回転可能な手動駆動機構192として、減速機50の減速機軸56を貫通して軸線C方向他側に突出された入力軸54の軸端に手動ハンドル連結部194を設け、入力軸54に連絡された減速機軸56により減速機50を介してシーブ14を回転させるように、手動ハンドル連結部194に着脱可能に取り付けられて入力軸54を回転可能な手動ハンドル196を設けている。
【0091】
これにより、このロープ牽引装置4は、停電時等にモータ48への電力が遮断された場合に、手動ハンドル196を回転操作することにより、上昇又は下降させることができる。
【0092】
このロープ牽引装置4は、牽引装置ケース6上部にワイヤロープ2の移動速度が設定値以上になるとワイヤロープ2の移動を制動する非常用ブレーキ装置200として、非常用ブレーキケース202内部にワイヤロープ2を径方向両側から挟んで移動を阻止するように固定するとともにワイヤロープ2の移動を許容するように解放するロープ固定機構214を設け、このロープ固定機構214を固定状態と解放状態とに動作させる動作機構216を設け、この動作機構216の動作を阻止してロープ固定機構214を解放状態に保持させるとともにこの動作機構216の動作阻止を解除してロープ固定機構214を固定状態に動作させる保持機構218を設け、ワイヤロープ2の移動速度が設定値未満の場合には保持機構218による動作機構216の動作阻止を継続させてロープ固定機構214を解放状態に保持させるとともにワイヤロープ2の移動速度が設定値以上になると保持機構218による動作機構216の動作阻止を解除してロープ固定機構214を固定状態に動作させる速度判定機構220を設けている。
【0093】
これにより、このロープ牽引装置4は、ワイヤロープ2の移動速度が設定値以上になると、ロープ固定機構214によりワイヤロープ2を径方向両側から挟んで移動を阻止するように固定して停止させることができる。
【0094】
前記ロープ固定機構214は、ワイヤロープ2の径方向一側に固定側楔部材222を設け、ワイヤロープ2の径方向他側に動作機構216により上下方向に移動可能な移動側楔部材226を設け、移動側楔部材226に対して固定側楔部材222の反対側に楔受け部材228を設け、固定側楔部材222と移動側楔部材226とに夫々固定側ロープ固定溝230と移動側ロープ固定溝232とを設け、移動側楔部材226と楔受け部材228との対向する側には下側よりも上側が固定側楔部材222に近接するように傾斜する移動側傾斜面234と楔受け側傾斜面236とを夫々設けている。
【0095】
これにより、このロープ牽引装置4は、ワイヤロープ2に対して移動側楔部材226が上下方向に平行に移動し、ワイヤロープ2に対して固定側楔部材222の固定側ロープ固定溝230と移動側ロープ固定溝232の移動側楔部材226とが平行に相対するため均一に圧力を作用させることができ、ワイヤロープ2の損傷を少なくすることができ、また、非常用ブレーキ装置200が作動してワイヤロープ2を固定した状態からモータ48を上昇回転させた場合には、移動側楔部材226が下方に移動してワイヤロープ2を解放するので、上昇を妨げることがなく、下降時のみワイヤロープ2を固定することができ、さらに、非常用ブレーキ装置200が作動してワイヤロープ2を固定した状態からモータ48を下降回転させた場合に、ワイヤロープ2が牽引装置ケース6内で繰り出されると、ワイヤロープ2がロープ挟持溝16から浮き上がってスリップするので、ワイヤロープ2が座屈することがない。
【0096】
前記速度判定機構220は、シーブ14のロープ挟持溝16の径方向における上下方向上側に挟持されたワイヤロープ2に押し付けられる速度検出ローラ268を設け、この速度検出ローラ268に連絡される速度検出ガバナ270は回転中心に対して拡開・縮閉可能な一対の錘276を設け、ワイヤロープ2の移動速度が設定値未満となる回転速度では一対の錘276を縮閉して保持機構218による動作機構216の動作阻止を継続するように付勢する一方で、ワイヤロープ2の移動速度が設定値以上となる回転速度では一対の錘276の拡開を許容して保持機構218による動作機構216の動作阻止を解除させる一対のガバナスプリング284を設けている。
【0097】
これにより、このロープ牽引装置4は、速度検出ローラ268によってワイヤロープ2の移動速度を速度検出ガバナ270に伝達して速度を検出し、ワイヤロープ2の移動速度が設定値以上となる回転速度では保持機構218と動作機構216とを介してロープ固定機構214によりワイヤロープ2を径方向両側から挟んで移動を阻止するように固定して停止させることができ、また、シーブ14のロープ挟持溝16に巻き掛けたワイヤロープ2に負荷が加わると、ワイヤロープ2の張力が減少するに従ってロープ挟持溝16から浮き上がる現象を利用し、速度検出ローラ268がワイヤロープ2に押し付けられる簡単な構造によって、ワイヤロープ2の移動にあわせて速度検出ローラ268を回転させることができ、従来のワイヤロープを挟んで一対のローラを設け、一方のローラに他方のローラをスプリングで押し付けてスリップを防ぐ構造に比べて、部品点数の削減と小型化とを図ることができる。
【0098】
前記速度検出ガバナ270には、一方の錘276の拡開・縮閉動作と他方の錘276の拡開・縮閉動作とを連動させる連動機構294を設けている。
【0099】
これにより、このロープ牽引装置4は、水平方向に指向する速度検出軸266を回転中心として回転する速度検出ガバナ270が遠心力により一対の錘276を拡開・縮閉する構造であり、ガバナスプリング284に常に重力が作用することから一対の錘276の上側に位置すると錘276と下側に位置する錘276とが均一に拡開・縮閉しない問題に対して、一対の錘276の上側に位置する錘276と下側に位置する錘276とを連動機構294によって連動させることで、均一に拡開・縮閉させることができ、動作を安定させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0100】
この発明のロープ牽引装置は、ブレーキ装置として下降制御用の第1ブレーキ機構と下降停止用の第2ブレーキ機構とを設け、下降時には第1ブレーキ機構のみにより制動させることでブレーキ装置の発熱を抑えるものであり、ゴンドラやエレベータ等の建設荷役搬送に使用される昇降機械に適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
2 ワイヤロープ
4 ロープ牽引装置
6 牽引装置ケース
14 シーブ
16 ロープ挟持溝
22 ブレーキフランジ
28 ロープ入口
30 ロープ出口
36 押し付け機構
38・40 揺動板
42・44 押し付けローラ
46 揺動軸
48 モータ
50 減速機
52 モータ軸
54 入力軸
56 減速機軸
86 ブレーキ装置
88 入力軸側接続体
102 モータ軸側接続体
116 ブレーキボルト
118 ブレーキディスク
120 ブレーキライニング
126 ワンウェイクラッチ機構
132 ブレーキ押圧体
150 第1ブレーキスプリング
152 第2ブレーキスプリング
154 第1ブレーキ機構
156 第2ブレーキ機構
158 ブレーキ解除機構
192 手動駆動機構
200 非常用ブレーキ装置
214 ロープ固定機構
216 動作機構
218 保持機構
220 速度判定機構


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に垂設されたワイヤロープの途中をシーブに巻き掛け、このシーブを回転させて巻き掛けられたワイヤロープを牽引することによりワイヤロープに沿って移動するロープ牽引装置において、このロープ牽引装置の牽引装置ケース内部に前記シーブを水平方向に指向する軸線を中心に回転可能に軸支して設け、前記シーブの外周に前記ワイヤロープを挟持するロープ挟持溝を一体に設け、前記牽引装置ケース上部のロープ入口から内部に導入した前記ワイヤロープを前記ロープ挟持溝の径方向における水平方向一側から上下方向下側を通り他側を越えて上側に至るまで巻き掛けるとともに、前記ワイヤロープを前記ロープ挟持溝の径方向における上下方向上側から略水平方向一側に延伸させて前記ロープ挟持溝から取り出した後に下方に湾曲させて前記牽引装置ケース下部のロープ出口から外部に導出させて設け、前記牽引装置ケースの前記軸線方向一側にモータを設け、前記牽引装置ケースの前記軸線方向他側に前記モータの回転を減速して前記シーブに伝達する減速機を設け、前記モータのモータ軸と前記減速機の減速機軸とを入力軸を介して連絡するとともにこれらモータ軸と入力軸と減速機軸とを前記軸線上に配設し、前記シーブと前記入力軸との間にシーブの回転を制動するブレーキ装置を設け、このブレーキ装置は、前記モータの下降回転時に前記ロープ牽引装置の下降速度を制限するように前記シーブの回転を制動する第1ブレーキ機構と、前記モータの回転停止時に前記ロープ牽引装置の停止状態を維持するように前記第1ブレーキ機構と共働して前記シーブの回転を制動する第2ブレーキ機構とを設け、前記モータの上昇回転時に前記ロープ牽引装置を上昇させるように前記入力軸から前記第1ブレーキ機構及び第2ブレーキ機構を切り離すワンウェイクラッチ機構を設けたことを特徴とするロープ牽引装置。
【請求項2】
前記ブレーキ装置は、前記モータの回転停止時に制動動作を解除可能なブレーキ解除機構を設け、このブレーキ解除機構は、前記減速機の減速機軸を貫通して軸線方向他側に突出された前記入力軸にブレーキ解除ノブを相対回転可能且つ軸方向移動不可能に軸支して設け、このブレーキ解除ノブの軸線方向他側に周方向に延びる傾斜面を設け、この傾斜面との当接により周方向に回転される前記ブレーキ解除ノブを軸線方向一側に移動させる当接体を設け、この当接体に傾斜面を当接する前記ブレーキ解除ノブを介して前記入力軸を軸線方向一側に移動させて前記第2ブレーキ機構の制動動作を解除させるように前記ブレーキ解除ノブを周方向に回転可能なブレーキ解除ハンドルを設けたことを特徴とする請求項1に記載のロープ牽引装置。
【請求項3】
前記ブレーキ装置は、前記モータの回転停止時に前記シーブを手動により回転可能な手動駆動機構を設け、手動駆動機構は、前記減速機の減速機軸を貫通して軸線方向他側に突出された前記入力軸の軸端に手動ハンドル連結部を設け、前記入力軸に連絡された減速機軸により前記減速機を介して前記シーブを回転させるように前記手動ハンドル連結部に着脱可能に取り付けられて入力軸を回転可能な手動ハンドルを設けたことを特徴とする請求項1に記載のロープ牽引装置。
【請求項4】
上下方向に垂設されたワイヤロープの途中をシーブに巻き掛け、このシーブを回転させて巻き掛けられたワイヤロープを牽引することによりワイヤロープに沿って移動するロープ牽引装置において、このロープ牽引装置の牽引装置ケース内部に前記シーブを水平方向に指向する軸線を中心に回転可能に軸支して設け、前記シーブの外周に前記ワイヤロープを挟持するロープ挟持溝を一体に設け、前記牽引装置ケース上部のロープ入口から内部に導入した前記ワイヤロープを前記ロープ挟持溝の径方向における水平方向一側から上下方向下側を通り他側を越えて上側に至るまで巻き掛けるとともに、前記ワイヤロープを前記ロープ挟持溝の径方向における上下方向上側から略水平方向一側に延伸させて前記ロープ挟持溝から取り出した後に下方に湾曲させて前記牽引装置ケース下部のロープ出口から外部に導出させて設け、前記牽引装置ケース上部に前記ワイヤロープの移動速度が設定値以上になるとワイヤロープの移動を制動する非常用ブレーキ装置を設け、この非常用ブレーキ装置は、非常用ブレーキケース内部に前記ワイヤロープを径方向両側から挟んで移動を阻止するように固定するとともに前記ワイヤロープの移動を許容するように解放するロープ固定機構を設け、このロープ固定機構を固定状態と解放状態とに動作させる動作機構を設け、この動作機構の動作を阻止して前記ロープ固定機構を解放状態に保持させるとともにこの動作機構の動作阻止を解除して前記ロープ固定機構を固定状態に動作させる保持機構を設け、前記ワイヤロープの移動速度が設定値未満の場合には前記保持機構による前記動作機構の動作阻止を継続させて前記ロープ固定機構を解放状態に保持させるとともに前記ワイヤロープの移動速度が設定値以上になると前記保持機構による前記動作機構の動作阻止を解除して前記ロープ固定機構を固定状態に動作させる速度判定機構を設けたことを特徴とするロープ牽引装置。
【請求項5】
前記ロープ固定機構は、前記ワイヤロープの径方向一側に位置させて前記非常用ブレーキケースに固定側楔部材を固定して設け、この固定側楔部材と対向するように前記ワイヤロープの径方向他側に位置させて移動側楔部材を前記動作機構により上下方向に移動可能に設け、前記移動側楔部材に対して前記固定側楔部材の反対側に位置させて楔受け部材を前記非常用ブレーキケースに固定して設け、前記固定側楔部材と移動側楔部材との対向する側には夫々固定側ロープ固定溝と移動側ロープ固定溝とを設け、前記移動側楔部材と楔受け部材との対向する側には下側よりも上側が固定側楔部材に近接するように傾斜する移動側傾斜面と楔受け側傾斜面とを夫々設けたことを特徴とする請求項4に記載のロープ牽引装置。
【請求項6】
前記速度判定機構は、前記シーブに設けたロープ挟持溝の径方向における上下方向上側に挟持された前記ワイヤロープに押し付けられる速度検出ローラを設け、この速度検出ローラを速度検出ガバナに連絡して設け、速度検出ガバナは回転中心に対して拡開・縮閉可能な一対の錘を設け、前記ワイヤロープの移動速度が設定値未満となる回転速度では前記一対の錘を縮閉して前記保持機構による前記動作機構の動作阻止を継続するように付勢する一方で、前記ワイヤロープの移動速度が設定値以上となる回転速度では前記一対の錘の拡開を許容して前記保持機構による前記動作機構の動作阻止を解除させる一対のガバナスプリングを設けたことを特徴とする請求項4に記載のロープ牽引装置。
【請求項7】
前記速度検出ガバナには、一方の錘の拡開・縮閉動作と他方の錘の拡開・縮閉動作とを連動させる連動機構を設けたことを特徴とする請求項4に記載のロープ牽引装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2011−63448(P2011−63448A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263500(P2010−263500)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【分割の表示】特願2005−272162(P2005−272162)の分割
【原出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(591147889)株式会社工業技術研究所 (2)