ローラ、搬送装置、および印字装置
【課題】 プラテンローラの周面に対する台紙なしラベルの粘着剤層の接触面積率を適正な範囲に設定して、台紙なしラベルの滑りを生じにくくして印字伸縮を抑止しつつ、プラテンローラに巻き込まれてしまう事態を防止できるようにする。
【解決手段】 裏面2に粘着剤層4を有した帯状の台紙なしラベルLをプラテンローラ20の周面21で支持しサーマルヘッド12により印字を行うことのできる印字装置Sにおいて、プラテンローラ20を、シリコーンゴムで形成し、その硬度Hを、40°≦H≦60°に設定し、プラテンローラ20の周面21に、その円周方向に沿う溝23を、プラテンローラ20の軸方向に沿って等間隔で複数設け、溝のピッチPを、0.5mm≦P≦3mmに設定し、且つ、台紙なしラベルLの裏面を支持する周面における該裏面が接触する接触面の接触面積率Sxを、60%≦Sx≦80%_設定した。
【解決手段】 裏面2に粘着剤層4を有した帯状の台紙なしラベルLをプラテンローラ20の周面21で支持しサーマルヘッド12により印字を行うことのできる印字装置Sにおいて、プラテンローラ20を、シリコーンゴムで形成し、その硬度Hを、40°≦H≦60°に設定し、プラテンローラ20の周面21に、その円周方向に沿う溝23を、プラテンローラ20の軸方向に沿って等間隔で複数設け、溝のピッチPを、0.5mm≦P≦3mmに設定し、且つ、台紙なしラベルLの裏面を支持する周面における該裏面が接触する接触面の接触面積率Sxを、60%≦Sx≦80%_設定した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の台紙なしラベルを使用可能なローラ、搬送装置、および印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、図12(a)(b)に示すように、帯状の台紙なしラベルL(ノンセパラベル、ライナレスラベルなどとも言われる)は、ロール状に巻回されたロールRとして用いられる。この台紙なしラベルLには、例えば一定間隔でミシン目Lmが形成されており、ミシン目Lmで区切られた部分が単体ラベルLaとして構成されている。
また、この台紙なしラベルLは、上層より透明なシリコン等からなる非粘着剤層1と、サーマルヘッドの加熱により発色する感熱発色層2と、該感熱発色層2の裏面に印字装置が図示外の光センサにより検知し帯状の台紙なしラベルLの搬送を制御するためのマーク3と、ホットメルト糊やエマルジョン糊等からなる透明な粘着剤層4とから構成されている。
【0003】
上記の構成により、帯状の台紙なしラベルLの特性は、上層の非粘着剤層1に粘着剤層4が接しながらロール状に巻回されたロールRとして用いられ、これを印字装置で使用する場合に、非粘着剤層1の非粘着力が強く粘着剤層4の粘着力が弱い場合は、帯状の台紙なしラベルLの繰り出しはスムーズになるが、ロール状に巻回した状態を維持することが難しくなる。また、非粘着剤層1の非粘着力が弱く粘着剤層4の粘着力が強い場合は、帯状の台紙なしラベルLの繰り出しが困難となる。
また、帯状の台紙なしラベルLに印字する際は、サーマルヘッドの発熱体が帯状の台紙なしラベルLの表面(非粘着剤層1)に接し、非粘着剤層1を介して感熱発色層2が加熱されることにより発色し、ヒューマン文字やバーコード等の印字がなされるため、非粘着剤層1の層が厚過ぎると印字が掠れ印字品質が損なわれる原因となる。
よって、非粘着剤層1の非粘着力と粘着剤層4の粘着力のバランスが要求されるものであり、通常の台紙があるラベルとはその特性が異なるものである。
【0004】
従来、この種の台紙なしラベルLに印字を行うことのできる印字装置としては、例えば、特許文献1(特開2000−335791号公報)に掲載されたものが知られている。図13に示すように、この印字装置100は、台紙なしラベルLのロールRをロール収納部101に収納し、ロールRから繰り出された台紙なしラベルLの裏面を円柱状のプラテンローラ102の周面で支持し、このプラテンローラ102の回転軸103を回転させて台紙なしラベルLを搬送し、この台紙なしラベルLの搬送過程で台紙なしラベルLの表面にサーマルヘッド104を当接させて印字を行い、印字が終了した台紙なしラベルLから順次外部に排出する。印字が終了したならば、外部に排出された台紙なしラベルLを引張する等して、ミシン目から切断して単体ラベルLaを取り出す。
【0005】
ところで、帯状の台紙なしラベルLにおいては、粘着剤層4をプラテンローラ102に対してある程度剥がれ易くなるように選択しているが、上記の従来の印字装置100においては、印字した台紙なしラベルLを切断して取り出した後、残された最先端のラベルは、プラテンローラ102上に停止し、次の印字まで待機させられると、図14に示すように、次に、印字して搬送,排出する際に、台紙なしラベルLの粘着剤層4がプラテンローラ102にくっついたままになってプラテンローラ102に巻き付いてジャムが発生してしまうことがあり、その場合には、巻き付いた台紙なしラベルLを取り除いて再び印字を行わなくてはならないので、作業性を損ねるという欠点があった。
このような欠点を解消するために、例えば、プラテンローラの周面に、その円周方向に沿う溝を、プラテンローラの軸方向に沿って複数設け、プラテンローラの台紙なしラベルに対する接触面積を減らし、粘着剤層による粘着力を弱めて、台紙なしラベルを搬送することも考えられる。プラテンローラに溝を形成する技術は、その目的を異にするが、例えば、特許文献2(特開2005−231218号公報)に掲載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−335791号公報
【特許文献2】特開2005−231218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献2記載の技術において、プラテンローラに溝を形成するのは、サーマルヘッドからの熱を受けて記録媒体から放出される放出物が記録媒体とプラテンローラローラとの接触部に滞留してしまわないように、この放出物を溝内に排出して吸収することを目的にしており、そのため、この技術を直ちに適用して考えることはできない。
仮に適用して考えても、単位長さ当たりの溝の幅が大きかったり溝の数が多くなって、プラテンローラの周面に対する台紙なしラベルの粘着剤層の接触面積率が小さくなりすぎてしまうと、その場合には、サーマルヘッドによる押さえが低下して、プラテンローラに対して台紙なしラベルの滑りが生じやすくなるので、台紙なしラベルが正しく搬送されず印字伸縮等が生じ、印字品質を損なう。
【0008】
一方、単位長さ当たりの溝の幅が小さかったり溝の数が少なくなって、プラテンローラの周面に対する台紙なしラベルの粘着剤層の接触面積率が大きくなりすぎてしまうと、台紙なしラベルの粘着剤層のプラテンローラに対する粘着力が実質的に強くなるので、プラテンローラに巻き込まれてしまう事態をしばしば生じさせてしまう。
さらに、小型でハンディ型の上記印字装置では、台紙なしラベルの搬送機構がプラテンローラのみとなるため、上記の不具合が顕著に発生する問題があった。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、プラテンローラの周面に対する台紙なしラベルの粘着剤層の接触面積率を適正な範囲に設定して、プラテンローラに対する台紙なしラベルの滑りを生じにくくして印字品質の低下を抑止しつつ、台紙なしラベルの粘着剤層がプラテンローラに粘着してプラテンローラに巻き込まれてしまう事態を防止できるようにしたローラ、搬送装置、および印字装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のローラは、台紙なしラベルと接触する円柱状のローラであって、 周面に、その円周方向に沿う溝を複数設け、且つ、上記台紙なしラベルとの接触面の接触面積率Sxを、60%≦Sx≦80%としたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明のローラは、裏面に粘着剤層を有した帯状の台紙なしラベルを搬送し、この搬送過程で該台紙なしラベルの裏面を回転軸を中心に回転可能な円柱状の周面で支持するローラであって、
上記周面に、その円周方向に沿う溝を、軸方向に沿って複数設け、且つ、上記台紙なしラベルの裏面を支持する周面における該裏面が接触する接触面の接触面積率Sxを、60%≦Sx≦80%に設定したことを特徴とする。
そして、必要に応じ、上記複数の溝を等間隔に設け、該溝のピッチPを、0.5mm≦P≦3mmにしたことを特徴とする。
そして、必要に応じ、シリコーンゴムで形成され、硬度Hが、40°≦H≦60°であることを特徴とする。
そして、必要に応じ、上記溝の深さDを、0.1mm≦D≦0.3mmにしたことを特徴とする。
そして、必要に応じ、上記溝を傾斜する鏡面対称の一対の側面を有したV字状に形成し、該一対の側面がなす角度αを、80°≦α≦100°にしたことを特徴とする。
そして、必要に応じ、上記記載のローラを有する搬送装置を特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の印字装置は、裏面に粘着剤層を有した帯状の台紙なしラベルを搬送し、この搬送過程で該台紙なしラベルの裏面を回転軸を中心に回転可能な円柱状のプラテンローラの周面で支持するとともに、上記台紙なしラベルの表面にサーマルヘッドを当接させて印字を行うことのできる印字装置において、
上記プラテンローラの周面に、その円周方向に沿う溝を、該プラテンローラの軸方向に沿って複数設け、且つ、上記台紙なしラベルの裏面を支持する周面における該裏面が接触する接触面の接触面積率Sxを、60%≦Sx≦80%に設定したことを特徴とする印字装置。
そして、必要に応じ、上記複数の溝を上記プラテンローラの軸方向に沿って等間隔に設け、該溝のピッチPを、0.5mm≦P≦3mmにしたことを特徴とする。
そして、必要に応じ、上記プラテンローラを、シリコーンゴムで形成し、該プラテンローラの硬度Hを、40°≦H≦60°にしたことを特徴とする。
そして、必要に応じ、上記溝の深さDを、0.1mm≦D≦0.3mmにしたことを特徴とする。
そして、必要に応じ、上記溝を傾斜する鏡面対称の一対の側面を有したV字状に形成し、該一対の側面がなす角度αを、80°≦α≦100°にしたことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の印字装置は、裏面に粘着剤層を有した帯状の台紙なしラベルと、上記台紙なしラベルを搬送し、この搬送過程で該台紙なしラベルの裏面と接触するプラテンローラと、上記台紙なしラベルの表面に当接して印字を行うサーマルヘッドと、を有する印字装置であって、
上記プラテンローラの周面に、その円周方向に沿う溝を複数設け、且つ、上記台紙なしラベルと上記プラテンローラの接触面の接触面積率Sxを、60%≦Sx≦80%としたことを特徴とする。
そして、必要に応じ、上記台紙なしラベルの厚さは、0.1μm以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プラテンローラの周面に対する台紙なしラベルの粘着剤層の接触面積率が適正な範囲に設定されることになり、プラテンローラに対する台紙なしラベルの滑りを生じにくくして印字品質の低下を抑止しつつ、台紙なしラベルの粘着剤層がプラテンローラに粘着してプラテンローラに巻き込まれてしまう事態を防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る印字装置を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る印字装置のプラテンローラを示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る印字装置のプラテンローラを示す図2中B部拡大図である。
【図4】接触面積率の異なるプラテンローラ(硬度H=50°)における実験例1(接着力実験)及び実験例2(転がり角度実験)の結果を示す表図である。
【図5】接触面積率の異なるプラテンローラ(硬度H=70°)における実験例1(接着力実験)及び実験例2(転がり角度実験)の結果を示す表図である。
【図6】接触面積率の異なるプラテンローラ(硬度H=50°)における実験例3(印字伸縮実験)の結果を示す表図である。
【図7】接触面積率の異なるプラテンローラ(硬度H=70°)における実験例3(印字伸縮実験)の結果を示す表図である。
【図8】接触面積率の異なるプラテンローラ(硬度H=50°)における実験例4(巻き込み実験)の結果を示す表図である。
【図9】接触面積率の異なるプラテンローラ(硬度H=70°)における実験例4(巻き込み実験)の結果を示す表図である。
【図10】接触面積率の異なるプラテンローラ(硬度H=50°)における実験例5(印字精度実験)の結果を示す表図である。
【図11】接触面積率の異なるプラテンローラ(硬度H=70°)における実験例5(印字精度実験)の結果を示す表図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る印字装置に用いられる台紙なしラベルの一例を示し、(a)は台紙なしラベルをロール状に巻回したロールの状態を示す斜視図、(b)は(a)のA−Aで切断した台紙なしラベルの拡大横断面図である。
【図13】従来の印字装置の一例を示す図である。
【図14】従来の印字装置の不具合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る印字装置について説明する。図1乃至図3に示すように、本発明の実施の形態に係る印字装置Sは、ハンディ型で、台紙なしラベルLに印字を行うことのできるものであり、帯状の台紙なしラベルLをロール状に巻回されたロールRが装着される。
尚、本実施の形態の台紙なしラベルLは、図12(a)(b)に示したものを用いて説明するため、その詳細を省略する。
【0017】
本発明の実施の形態に係る印字装置Sは、図1乃至図3、図12に示すように、プリンタ本体10と、このプリンタ本体10に設けられ帯状の台紙なしラベルLをロール状に巻回したロールRを収納するロール収納部11とを備えている。また、プリンタ本体10には、台紙なしラベルLに印字するための円柱状のプラテンローラ20とサーマルヘッド12が備えられている。プラテンローラ20は、左右に突出する回転軸22を備え、ロールRから繰り出された台紙なしラベルLの裏面(粘着剤層4)をその周面21で支持し、このプラテンローラ20の回転軸22を図示外の駆動機構により回転させて台紙なしラベルLを搬送する。サーマルヘッド12は、台紙なしラベルLの搬送過程でプラテンローラ20の周面21上の台紙なしラベルLの表面(非粘着剤層1)に当接して印字を行う。プラテンローラ20は、印字が終了した台紙なしラベルLを外部に排出し、図示外の光センサによる台紙なしラベルLのマーク3の検知に基づいて、駆動機構を停止させ台紙なしラベルLを所定位置に位置決めして、ミシン目Lmを切断することにより先端の単体ラベルLaの分離を可能となっている。
【0018】
また、本実施の形態に係る印字装置Sのプラテンローラ20は、溝付きプラテンローラ20であり、詳しくは、図2及び図3に示すように、このプラテンローラ20の硬度Hは、JISスプリング式硬さ試験機A型による硬度で、40°≦H≦60°、望ましくは、45°≦H≦55°、より望ましくは、48°≦H≦52°に設定されている。
プラテンローラの硬度Hが40°に満たないと、プラテンローラに台紙なしラベルが巻き付きやすくなる。
逆に、プラテンローラの硬度Hが60°を越えると硬くなりすぎて、プラテンローラと台紙なしラベルとの摩擦係数が少なくなり、グリップ力が低下して滑りが生じやすくなる。また、プラテンローラとサーマルヘッドの発熱体との接触面積が少なくなるため、印字が正しくされるポイントが小さくなることから、台紙なしラベルの厚さや基材が変わる度にサーマルヘッドの発熱体とプラテンローラの当たり角度の調整が必要となるなどの煩雑さが生じる。
実施の形態では、H=50°に設定されている。
【0019】
また、プラテンローラ20において、プラテンローラ20の周面21には、円周方向に沿う溝23が、プラテンローラ20の軸方向に沿って複数設けられている。
溝23は、傾斜する鏡面対称の一対の側面を有したV字状に形成されており、この一対の側面がなす角度αは、80°≦α≦100°、望ましくは、85°≦α≦95°に設定されている。
プラテンローラ20の溝23は、溝形状として凹型、U型、または波形等が考えられるが、印字を鮮明に行うためにサーマルヘッド12をプラテンローラ20に向けヘッド圧をかけた場合、上記プラテンローラ20の硬度Hの範囲、溝23のV字状、および角度αの範囲により、台紙なしラベル裏面の粘着剤層4がプラテンローラ20の周面21である溝23に入り込むことが無く、また、ヘッド圧により溝23が変形されにくいため、適度な摩擦係数となり、台紙なしラベルの搬送と印字を適切に行うことができる。
実施の形態ではα=90°に設定されている。
【0020】
また、溝23の深さDは、0.1mm≦D≦0.3mm、望ましくは、0.15mm≦D≦0.2mmに設定されている。
プラテンローラ20の溝23の深さDが0.1mmに満たないと、浅すぎて台紙なしラベルLの粘着剤層4が溝23に粘着し易くなり、0.3mmを越えるとプラテンローラ20の硬度Hが保てなくなる。
実施の形態では、D=0.15mmに設定されている。
【0021】
更に、この複数の溝23は、プラテンローラ20の軸方向に沿って等間隔に設けられており、溝23のピッチPは、0.5mm≦P≦3mm、望ましくは、1mm≦P≦2mmに設定されている。
溝23のピッチPが0.5mmに満たないと、接着面が多くなりプラテンローラに台紙なしラベルが巻き付きやすくなる。溝23のピッチPが3mmを越えると、溝23の幅が少なくなりすぎ、プラテンローラと台紙なしラベルとの摩擦係数が少なくなり、グリップ力が低下して滑りが生じやすくなる。これにより、溝23と接触面との分散の仕方が適正になる。
実施の形態では、P=1mmに設定されている。
【0022】
そしてまた、この溝23の形成により、台紙なしラベルLの裏面2を支持する周面21における該裏面2が接触する接触面24の接触面積率Sxは、60%≦Sx≦80%、望ましくは、65%≦Sx≦75%、より望ましくは、68%≦Sx≦72%に設定されている。
接触面積率Sxは、例えば、1ピッチ(P=1mm)当たり接触面24の幅Eを0.4mmに設定した場合にSx=40%、幅Eを0.5mmに設定した場合にSx=50%、幅Eを0.6mmに設定した場合にSx=60%、幅Eを0.7mmに設定した場合にSx=70%、幅Eを0.8mmに設定した場合にSx=80%、幅Eを0.9mmに設定した場合にSx=90%、幅Eを1.0mmに設定した場合にSx=100%(溝なし)となる。
接触面積率Sxが60%に満たないと、プラテンローラ20の周面21に対する台紙なしラベルLの粘着剤層4の接触面積率が小さくなりすぎてしまい、その場合には、サーマルヘッド12による押さえが低下して、プラテンローラ20に対して台紙なしラベルLの滑りが生じやすくなるので、台紙なしラベルが正しく搬送されず印字伸縮等が生じ、印字品質を損なう。
一方、接触面積率Sxが80%を超えると、プラテンローラ20の周面21に対する台紙なしラベルLの粘着剤層4の接触面積率が大きくなりすぎてしまい、台紙なしラベルLの粘着剤層4のプラテンローラ20に対する粘着力が実質的に強くなるので、プラテンローラ20に巻き込まれてしまう事態をしばしば生じさせてしまう。
これにより、プラテンローラ20の周面21に対する台紙なしラベルLの粘着剤層4の接触面積率が適正な範囲に設定されることになる。
実施の形態では、1ピッチ(P=1mm)当たり接触面24の幅EがE=0.7mmに設定され、これにより、Sx=70%に設定されている。
【0023】
尚、図1に示すように、本実施の形態に係る印字装置Sは、台紙なしラベルLのみならず、台紙付きラベルにも対応できるようになっている。即ち、プリンタ本体10には、プラテンローラ20に隣接して、断面三角形状の剥離バー13が設けられており、この剥離バー13により、台紙とラベルとを分離できるようにして、台紙付きラベルにも対応できるようにしている。
【0024】
従って、本実施の形態に係る印字装置Sによって、台紙なしラベルLに対して印字するときは、以下のようになる。
駆動機構を駆動して、プラテンローラ20を回転させ、ロールRから台紙なしラベルLを搬送して繰り出し、この繰り出された台紙なしラベルLの裏面(粘着剤層4)をこのプラテンローラ20の周面21で支持し、プラテンローラ20の周面21上の台紙なしラベルLの表面(非粘着剤層1)に当接させたサーマルヘッド12により印字を行う。プラテンローラ20は、印字が終了した台紙なしラベルLを外部に排出し、図示外の光センサによる台紙なしラベルLのマーク3の検知に基づいて、駆動機構を停止させ、台紙なしラベルLを所定位置に位置決めする。この状態で、ミシン目Lmを切断することにより先端の単体ラベルLaを分離する。印字した台紙なしラベルLを切断して取り出した後、残された最先端のラベルは、プラテンローラ20上に停止し、次の印字まで待機させられる。
【0025】
そして、次に、単体ラベルLaを取り出すときは、上記と同様、駆動機構を駆動して、プラテンローラ20を回転させる。この場合、本実施の形態では、台紙なしラベルLの粘着剤層4がプラテンローラ20にくっついたままになってプラテンローラ20に巻き付いてジャムが発生してしまう事態が防止される。即ち、本実施の形態では、プラテンローラ20は、直径φ=10.1mm、硬度H=50°、溝23の一対の側面がなす角度α=90°、溝23の深さD=0.15mm、溝23のピッチP=1mm、接触面24の幅E=0.7mmに設定されている。このため、台紙なしラベルLの粘着剤層4が接触する接触面24の接触面積率SxがSx=70%に設定していることから、プラテンローラ20の周面21に対する台紙なしラベルLの粘着剤層4の接触面積率Sxが適正な範囲に設定されることになり、プラテンローラ20に対する台紙なしラベルLの滑りを生じにくくして印字伸縮を抑止しつつ、台紙なしラベルLの粘着剤層4がプラテンローラ20に粘着してプラテンローラ20に巻き込まれてしまう事態を防止できるようになる。特に、プラテンローラ20の硬度が適正になり、プラテンローラ20の溝23の深さDが適正になり、この溝23と接触面24との分散の仕方が適正になることから、上記の接触面積率Sxと相まって相乗効果を発揮し、この点でも、プラテンローラ20に対する台紙なしラベルLの滑りを生じにくくして印字品質の低下を抑止しつつ、台紙なしラベルLの粘着剤層4がプラテンローラ20に粘着してプラテンローラ20に巻き込まれてしまう事態を防止できるようになる。
【0026】
<実験例>
次に、実験例について示す。この実験例では、図2および図3に示すように、シリコーンゴム製のプラテンローラ20の素材として、直径φ=10.1mm、周面21のある部分の長さMが47mmのもので、硬度Hは、硬度H=50°(重量12.5g)と、H=70°(重量13.0g)のものを用意し、上記の各硬度Hのプラテンに対し、角度α=90°、深さD=0.15mmの溝23を、種々のピッチPに形成して、接触面積率Sxを、40%,50%,60%,70%,80%,90%,100%(溝なし)のものを作成し、これらについて、各種実験を行った。
また、帯状の台紙なしラベルLとして、一般に用いられ、粘着剤層4が粘着力の比較的低い弱糊と比較的強い強糊との2種のものを使用した。
【0027】
(実験例1)転がり角度実験
これは、台板上に弱糊の台紙なしラベルLの粘着剤層4を上面にして露出させ固定し、この粘着剤層4に、各プラテンローラ20を、2Kgで15秒間荷重をかけて接着させ、それから台板を傾斜させて、各プラテンローラ20が転動し始めるときの転がり角度θを測定した。気温条件は25℃、湿度条件は40%であった。
結果を、図4(硬度H=50°)及び図5(硬度H=70°)に示す。
【0028】
(実験例2)プラテン接着力実験
これは、固定台上に弱糊及び強糊の台紙なしラベルLの粘着剤層4を上面にして露出させ固定し、この粘着剤層4に、各プラテンローラ20を、2Kgで15秒間荷重をかけて接着させ、回転軸22の両端から5mmのところを持ち上げて、粘着剤層4から離脱するときの荷重を測定した。気温条件は25℃、湿度条件は40%であった。
結果を、図4(硬度H=50°)及び図5(硬度H=70°)に示す。
【0029】
上記実験例1および実験例2の結果から、溝なしプラテンローラに比べ溝付きプラテンローラ(接触面積率Sx=40%〜90%)の方が、台紙なしラベルLの粘着剤層4との離反性が良いことが明らかである。その中で、注目すべきは、硬度H=50°および硬度H=70°ともに接触面積率Sxが50%と60%との粘着力の差が大きく、また、80%と90%との粘着力の差が大きいことが判る。
【0030】
(実験例3)印字伸縮実験
各プラテンローラ20を、上記の印字装置Sに装着し、夫々において、印字を行い、印字の伸縮率を測定した。条件は低温(気温0℃)、常温(気温25℃、湿度40%)、高温(気温35℃、湿度75%)の3条件下で行った。結果を、図6(硬度H=50°)及び図7(硬度H=70°)に示す。
【0031】
この結果から、接触面積率Sxが60%に満たないと、プラテンローラ20に対して台紙なしラベルLの滑りが生じやすくなり、印字伸縮が生じ、印字品質を損なうことが判る。また、硬度H=50°に比べ硬度H=70°の方が印字伸縮が生じている。
【0032】
(実験例4)巻き込み実験
これは、接触面積率Sxが60%,70%,80%,90%,100%(溝なし)のプラテンローラ(硬度H=50°及び硬度H=70°)について、先ず、台紙なしラベルLの先端をプラテンローラ20とサーマルヘッド12で挟持し、所定時間、所定の環境で放置する。所定時間は、30分,1時間,3時間,6時間,12時間,24時間とした。所定の環境としては、低温(気温0℃),常温(気温25℃、湿度40%),高温(気温35℃、湿度75%))の3条件とした。
そして、この各所定時間の後、台紙なしラベルのフィード動作を行い、巻き込み等のジャムが無いかを見た。結果を、図8(硬度H=50°)及び図9(硬度H=70°)に示す。図中、○印は、正常に用紙がフィードされたことを示し、×印は、巻き込み等のジャムが発生したことを示す。
【0033】
この結果から、接触面積率Sxが90%を超えると、印字精度(実験例3)は良いものの、巻き込み等のジャムの発生頻度が高いことが判る。また、接触面積率Sxが80%のものでは一部巻き込み等のジャムが発生したが、接触面積率Sxが60%,70%のものでは、巻き込み等のジャムの発生は見られない。
そのため、接触面積率Sxが、60%≦Sx≦80%の範囲において適正であると考えられた。また、硬度H=50°に比べ硬度H=70°の方が離反性が良いことが判る。
【0034】
(実験例5)印字精度実験
これは、各接触面積率Sxのものにおいて、所定の厚さの台紙なしラベルLにバーコードを印字し、印字結果をバーコード検証機にかけ、読み取り率を見てランク分けした。所定の厚さとしては、0.06μm,0.08μm,0.10μm,0.12μm,0.14μm,0.16μm,0.18μmの7種類を用意した。結果を、図10(硬度H=50°)及び図11(硬度H=70°)に示す。図中、A,B,C,Dは読み取り率のランク順を示し、Aランクは最高で、Dランクが最低になる。
【0035】
この結果から、台紙なしラベルLが薄くなるに従って、腰が無いことから、プラテンローラ20の溝23に入り込みやすくなり、印字不良が生じやすくなって、ランクが低くなることが分かった。硬度H=50°のプラテンローラ20においては、接触面積率Sxが60%≦Sx≦80%の範囲では、台紙なしラベルLの厚さは、0.1μm以上であることが有効である。0.1μmに満たないと、台紙なしラベルLが薄くなりすぎ、腰が無いことから、プラテンローラ20の溝に入り込みやすくなり、印字不良が生じやすくなる。
【0036】
また、プラテンローラ20の硬度の高い方(硬度H=70°)は、低い方(硬度H=50°)に比較して、溝の条件が同じでも、ランクが低くなることが分かった。これは、プラテンローラ20と搬送するラベルの摩擦係数が少なくなり、グリップ力が低下する。また、プラテンローラ20とサーマルヘッド12の発熱体との接触面積が少なくなるため、印字が正しくされるポイントが小さくなるためである。
よって、プラテンローラ20の硬度は、高い方(硬度H=70°)より低い方(硬度H=50°)が良いことが判った。
【0037】
上記実験例の結果、プラテンローラ20の接触面積率Sxは、実験例3において触面積率Sxが60%未満では印字伸縮が大きく、実験例4において触面積率Sxが80%以上では台紙なしラベルの巻き込みが起こりやすい。また、実験例5において触面積率Sxが60%未満では印字精度が良くないことが判る。よって、接触面積率Sxは、60%≦Sx≦80%の範囲が適正値であることが判る。
【0038】
プラテンローラ20の溝23のピッチPは、実験例3において触面積率Sxが60%未満では印字伸縮が大きいことから、溝23のピッチPが大きすぎると同様な傾向であることが判る。また、実験例4において触面積率Sxが80%以上では台紙なしラベルの巻き込みが起こりやすいことから、溝23のピッチPが小さすぎると同様な傾向であることが判る。よって、溝23のピッチPは、0.5mm≦P≦3mmの範囲が適正値であることが判る。
【0039】
プラテンローラ20の硬度Hは、実験例5において硬度H=70°では印字精度が悪く、硬度H=50°では印字精度が良かった。よって、硬度Hは、40°≦H≦60°の範囲が適正値であることが判る。
【0040】
プラテンローラ20の深さDは、実験例1および2において、プラテンローラ20に対し2Kgで15秒間荷重をかけて接着させても溝23の変形がなく、また、実験例4においても溝23の変形がなかった。よって、深さDは、0.1mm≦D≦0.3mmの範囲が適正値であることが判る。
【0041】
プラテンローラ20の溝23の角度αは、実験例1および2において、プラテンローラ20に対し2Kgで15秒間荷重をかけて接着させても溝23の変形がなく、また、実験例4においても溝23の変形がなかった。よって、溝23の一対の側面がなす角度αは、80°≦α≦100°の範囲が適正値であることが判る。
【0042】
溝付きプラテンローラ20を用いる場合、実験例5の結果から、台紙なしラベルLの厚さは、0.1μm以上であることが有効である。
【0043】
尚、上記の実施の形態では、サーマルヘッド12とプラテンローラ20により、台紙なしラベルLを挟持し搬送する印字装置Sを用いて説明したが、これに限定するものではなく、上記のプラテンローラ20と同様な溝付きローラを用い、該溝付きローラと対向する溝無しローラで台紙無しラベルLを挟持し搬送する搬送装置に用いても、同様な効果を得ることができることは言うまでもない。
【0044】
さらに、上記実施の形態において、上記プラテンローラの直径、周面のある部分の長さ、重量、および溝の数等の条件は、必ずしもこれに限定されるものではなく、適宜変更して差し支えない。
【符号の説明】
【0045】
S 印字装置
L 台紙なしラベル
La 単体ラベル
Lm ミシン目
R ロール
1 非粘着剤層
2 感熱発色層
3 マーク
4 粘着剤層
10 プリンタ本体
11 ロール収納部
12 サーマルヘッド
13 剥離バー
20 プラテンローラ
21 周面
22 回転軸
23 溝
24 接触面
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の台紙なしラベルを使用可能なローラ、搬送装置、および印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、図12(a)(b)に示すように、帯状の台紙なしラベルL(ノンセパラベル、ライナレスラベルなどとも言われる)は、ロール状に巻回されたロールRとして用いられる。この台紙なしラベルLには、例えば一定間隔でミシン目Lmが形成されており、ミシン目Lmで区切られた部分が単体ラベルLaとして構成されている。
また、この台紙なしラベルLは、上層より透明なシリコン等からなる非粘着剤層1と、サーマルヘッドの加熱により発色する感熱発色層2と、該感熱発色層2の裏面に印字装置が図示外の光センサにより検知し帯状の台紙なしラベルLの搬送を制御するためのマーク3と、ホットメルト糊やエマルジョン糊等からなる透明な粘着剤層4とから構成されている。
【0003】
上記の構成により、帯状の台紙なしラベルLの特性は、上層の非粘着剤層1に粘着剤層4が接しながらロール状に巻回されたロールRとして用いられ、これを印字装置で使用する場合に、非粘着剤層1の非粘着力が強く粘着剤層4の粘着力が弱い場合は、帯状の台紙なしラベルLの繰り出しはスムーズになるが、ロール状に巻回した状態を維持することが難しくなる。また、非粘着剤層1の非粘着力が弱く粘着剤層4の粘着力が強い場合は、帯状の台紙なしラベルLの繰り出しが困難となる。
また、帯状の台紙なしラベルLに印字する際は、サーマルヘッドの発熱体が帯状の台紙なしラベルLの表面(非粘着剤層1)に接し、非粘着剤層1を介して感熱発色層2が加熱されることにより発色し、ヒューマン文字やバーコード等の印字がなされるため、非粘着剤層1の層が厚過ぎると印字が掠れ印字品質が損なわれる原因となる。
よって、非粘着剤層1の非粘着力と粘着剤層4の粘着力のバランスが要求されるものであり、通常の台紙があるラベルとはその特性が異なるものである。
【0004】
従来、この種の台紙なしラベルLに印字を行うことのできる印字装置としては、例えば、特許文献1(特開2000−335791号公報)に掲載されたものが知られている。図13に示すように、この印字装置100は、台紙なしラベルLのロールRをロール収納部101に収納し、ロールRから繰り出された台紙なしラベルLの裏面を円柱状のプラテンローラ102の周面で支持し、このプラテンローラ102の回転軸103を回転させて台紙なしラベルLを搬送し、この台紙なしラベルLの搬送過程で台紙なしラベルLの表面にサーマルヘッド104を当接させて印字を行い、印字が終了した台紙なしラベルLから順次外部に排出する。印字が終了したならば、外部に排出された台紙なしラベルLを引張する等して、ミシン目から切断して単体ラベルLaを取り出す。
【0005】
ところで、帯状の台紙なしラベルLにおいては、粘着剤層4をプラテンローラ102に対してある程度剥がれ易くなるように選択しているが、上記の従来の印字装置100においては、印字した台紙なしラベルLを切断して取り出した後、残された最先端のラベルは、プラテンローラ102上に停止し、次の印字まで待機させられると、図14に示すように、次に、印字して搬送,排出する際に、台紙なしラベルLの粘着剤層4がプラテンローラ102にくっついたままになってプラテンローラ102に巻き付いてジャムが発生してしまうことがあり、その場合には、巻き付いた台紙なしラベルLを取り除いて再び印字を行わなくてはならないので、作業性を損ねるという欠点があった。
このような欠点を解消するために、例えば、プラテンローラの周面に、その円周方向に沿う溝を、プラテンローラの軸方向に沿って複数設け、プラテンローラの台紙なしラベルに対する接触面積を減らし、粘着剤層による粘着力を弱めて、台紙なしラベルを搬送することも考えられる。プラテンローラに溝を形成する技術は、その目的を異にするが、例えば、特許文献2(特開2005−231218号公報)に掲載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−335791号公報
【特許文献2】特開2005−231218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の特許文献2記載の技術において、プラテンローラに溝を形成するのは、サーマルヘッドからの熱を受けて記録媒体から放出される放出物が記録媒体とプラテンローラローラとの接触部に滞留してしまわないように、この放出物を溝内に排出して吸収することを目的にしており、そのため、この技術を直ちに適用して考えることはできない。
仮に適用して考えても、単位長さ当たりの溝の幅が大きかったり溝の数が多くなって、プラテンローラの周面に対する台紙なしラベルの粘着剤層の接触面積率が小さくなりすぎてしまうと、その場合には、サーマルヘッドによる押さえが低下して、プラテンローラに対して台紙なしラベルの滑りが生じやすくなるので、台紙なしラベルが正しく搬送されず印字伸縮等が生じ、印字品質を損なう。
【0008】
一方、単位長さ当たりの溝の幅が小さかったり溝の数が少なくなって、プラテンローラの周面に対する台紙なしラベルの粘着剤層の接触面積率が大きくなりすぎてしまうと、台紙なしラベルの粘着剤層のプラテンローラに対する粘着力が実質的に強くなるので、プラテンローラに巻き込まれてしまう事態をしばしば生じさせてしまう。
さらに、小型でハンディ型の上記印字装置では、台紙なしラベルの搬送機構がプラテンローラのみとなるため、上記の不具合が顕著に発生する問題があった。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みて為されたもので、プラテンローラの周面に対する台紙なしラベルの粘着剤層の接触面積率を適正な範囲に設定して、プラテンローラに対する台紙なしラベルの滑りを生じにくくして印字品質の低下を抑止しつつ、台紙なしラベルの粘着剤層がプラテンローラに粘着してプラテンローラに巻き込まれてしまう事態を防止できるようにしたローラ、搬送装置、および印字装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のローラは、台紙なしラベルと接触する円柱状のローラであって、 周面に、その円周方向に沿う溝を複数設け、且つ、上記台紙なしラベルとの接触面の接触面積率Sxを、60%≦Sx≦80%としたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明のローラは、裏面に粘着剤層を有した帯状の台紙なしラベルを搬送し、この搬送過程で該台紙なしラベルの裏面を回転軸を中心に回転可能な円柱状の周面で支持するローラであって、
上記周面に、その円周方向に沿う溝を、軸方向に沿って複数設け、且つ、上記台紙なしラベルの裏面を支持する周面における該裏面が接触する接触面の接触面積率Sxを、60%≦Sx≦80%に設定したことを特徴とする。
そして、必要に応じ、上記複数の溝を等間隔に設け、該溝のピッチPを、0.5mm≦P≦3mmにしたことを特徴とする。
そして、必要に応じ、シリコーンゴムで形成され、硬度Hが、40°≦H≦60°であることを特徴とする。
そして、必要に応じ、上記溝の深さDを、0.1mm≦D≦0.3mmにしたことを特徴とする。
そして、必要に応じ、上記溝を傾斜する鏡面対称の一対の側面を有したV字状に形成し、該一対の側面がなす角度αを、80°≦α≦100°にしたことを特徴とする。
そして、必要に応じ、上記記載のローラを有する搬送装置を特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の印字装置は、裏面に粘着剤層を有した帯状の台紙なしラベルを搬送し、この搬送過程で該台紙なしラベルの裏面を回転軸を中心に回転可能な円柱状のプラテンローラの周面で支持するとともに、上記台紙なしラベルの表面にサーマルヘッドを当接させて印字を行うことのできる印字装置において、
上記プラテンローラの周面に、その円周方向に沿う溝を、該プラテンローラの軸方向に沿って複数設け、且つ、上記台紙なしラベルの裏面を支持する周面における該裏面が接触する接触面の接触面積率Sxを、60%≦Sx≦80%に設定したことを特徴とする印字装置。
そして、必要に応じ、上記複数の溝を上記プラテンローラの軸方向に沿って等間隔に設け、該溝のピッチPを、0.5mm≦P≦3mmにしたことを特徴とする。
そして、必要に応じ、上記プラテンローラを、シリコーンゴムで形成し、該プラテンローラの硬度Hを、40°≦H≦60°にしたことを特徴とする。
そして、必要に応じ、上記溝の深さDを、0.1mm≦D≦0.3mmにしたことを特徴とする。
そして、必要に応じ、上記溝を傾斜する鏡面対称の一対の側面を有したV字状に形成し、該一対の側面がなす角度αを、80°≦α≦100°にしたことを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の印字装置は、裏面に粘着剤層を有した帯状の台紙なしラベルと、上記台紙なしラベルを搬送し、この搬送過程で該台紙なしラベルの裏面と接触するプラテンローラと、上記台紙なしラベルの表面に当接して印字を行うサーマルヘッドと、を有する印字装置であって、
上記プラテンローラの周面に、その円周方向に沿う溝を複数設け、且つ、上記台紙なしラベルと上記プラテンローラの接触面の接触面積率Sxを、60%≦Sx≦80%としたことを特徴とする。
そして、必要に応じ、上記台紙なしラベルの厚さは、0.1μm以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、プラテンローラの周面に対する台紙なしラベルの粘着剤層の接触面積率が適正な範囲に設定されることになり、プラテンローラに対する台紙なしラベルの滑りを生じにくくして印字品質の低下を抑止しつつ、台紙なしラベルの粘着剤層がプラテンローラに粘着してプラテンローラに巻き込まれてしまう事態を防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る印字装置を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る印字装置のプラテンローラを示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る印字装置のプラテンローラを示す図2中B部拡大図である。
【図4】接触面積率の異なるプラテンローラ(硬度H=50°)における実験例1(接着力実験)及び実験例2(転がり角度実験)の結果を示す表図である。
【図5】接触面積率の異なるプラテンローラ(硬度H=70°)における実験例1(接着力実験)及び実験例2(転がり角度実験)の結果を示す表図である。
【図6】接触面積率の異なるプラテンローラ(硬度H=50°)における実験例3(印字伸縮実験)の結果を示す表図である。
【図7】接触面積率の異なるプラテンローラ(硬度H=70°)における実験例3(印字伸縮実験)の結果を示す表図である。
【図8】接触面積率の異なるプラテンローラ(硬度H=50°)における実験例4(巻き込み実験)の結果を示す表図である。
【図9】接触面積率の異なるプラテンローラ(硬度H=70°)における実験例4(巻き込み実験)の結果を示す表図である。
【図10】接触面積率の異なるプラテンローラ(硬度H=50°)における実験例5(印字精度実験)の結果を示す表図である。
【図11】接触面積率の異なるプラテンローラ(硬度H=70°)における実験例5(印字精度実験)の結果を示す表図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る印字装置に用いられる台紙なしラベルの一例を示し、(a)は台紙なしラベルをロール状に巻回したロールの状態を示す斜視図、(b)は(a)のA−Aで切断した台紙なしラベルの拡大横断面図である。
【図13】従来の印字装置の一例を示す図である。
【図14】従来の印字装置の不具合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る印字装置について説明する。図1乃至図3に示すように、本発明の実施の形態に係る印字装置Sは、ハンディ型で、台紙なしラベルLに印字を行うことのできるものであり、帯状の台紙なしラベルLをロール状に巻回されたロールRが装着される。
尚、本実施の形態の台紙なしラベルLは、図12(a)(b)に示したものを用いて説明するため、その詳細を省略する。
【0017】
本発明の実施の形態に係る印字装置Sは、図1乃至図3、図12に示すように、プリンタ本体10と、このプリンタ本体10に設けられ帯状の台紙なしラベルLをロール状に巻回したロールRを収納するロール収納部11とを備えている。また、プリンタ本体10には、台紙なしラベルLに印字するための円柱状のプラテンローラ20とサーマルヘッド12が備えられている。プラテンローラ20は、左右に突出する回転軸22を備え、ロールRから繰り出された台紙なしラベルLの裏面(粘着剤層4)をその周面21で支持し、このプラテンローラ20の回転軸22を図示外の駆動機構により回転させて台紙なしラベルLを搬送する。サーマルヘッド12は、台紙なしラベルLの搬送過程でプラテンローラ20の周面21上の台紙なしラベルLの表面(非粘着剤層1)に当接して印字を行う。プラテンローラ20は、印字が終了した台紙なしラベルLを外部に排出し、図示外の光センサによる台紙なしラベルLのマーク3の検知に基づいて、駆動機構を停止させ台紙なしラベルLを所定位置に位置決めして、ミシン目Lmを切断することにより先端の単体ラベルLaの分離を可能となっている。
【0018】
また、本実施の形態に係る印字装置Sのプラテンローラ20は、溝付きプラテンローラ20であり、詳しくは、図2及び図3に示すように、このプラテンローラ20の硬度Hは、JISスプリング式硬さ試験機A型による硬度で、40°≦H≦60°、望ましくは、45°≦H≦55°、より望ましくは、48°≦H≦52°に設定されている。
プラテンローラの硬度Hが40°に満たないと、プラテンローラに台紙なしラベルが巻き付きやすくなる。
逆に、プラテンローラの硬度Hが60°を越えると硬くなりすぎて、プラテンローラと台紙なしラベルとの摩擦係数が少なくなり、グリップ力が低下して滑りが生じやすくなる。また、プラテンローラとサーマルヘッドの発熱体との接触面積が少なくなるため、印字が正しくされるポイントが小さくなることから、台紙なしラベルの厚さや基材が変わる度にサーマルヘッドの発熱体とプラテンローラの当たり角度の調整が必要となるなどの煩雑さが生じる。
実施の形態では、H=50°に設定されている。
【0019】
また、プラテンローラ20において、プラテンローラ20の周面21には、円周方向に沿う溝23が、プラテンローラ20の軸方向に沿って複数設けられている。
溝23は、傾斜する鏡面対称の一対の側面を有したV字状に形成されており、この一対の側面がなす角度αは、80°≦α≦100°、望ましくは、85°≦α≦95°に設定されている。
プラテンローラ20の溝23は、溝形状として凹型、U型、または波形等が考えられるが、印字を鮮明に行うためにサーマルヘッド12をプラテンローラ20に向けヘッド圧をかけた場合、上記プラテンローラ20の硬度Hの範囲、溝23のV字状、および角度αの範囲により、台紙なしラベル裏面の粘着剤層4がプラテンローラ20の周面21である溝23に入り込むことが無く、また、ヘッド圧により溝23が変形されにくいため、適度な摩擦係数となり、台紙なしラベルの搬送と印字を適切に行うことができる。
実施の形態ではα=90°に設定されている。
【0020】
また、溝23の深さDは、0.1mm≦D≦0.3mm、望ましくは、0.15mm≦D≦0.2mmに設定されている。
プラテンローラ20の溝23の深さDが0.1mmに満たないと、浅すぎて台紙なしラベルLの粘着剤層4が溝23に粘着し易くなり、0.3mmを越えるとプラテンローラ20の硬度Hが保てなくなる。
実施の形態では、D=0.15mmに設定されている。
【0021】
更に、この複数の溝23は、プラテンローラ20の軸方向に沿って等間隔に設けられており、溝23のピッチPは、0.5mm≦P≦3mm、望ましくは、1mm≦P≦2mmに設定されている。
溝23のピッチPが0.5mmに満たないと、接着面が多くなりプラテンローラに台紙なしラベルが巻き付きやすくなる。溝23のピッチPが3mmを越えると、溝23の幅が少なくなりすぎ、プラテンローラと台紙なしラベルとの摩擦係数が少なくなり、グリップ力が低下して滑りが生じやすくなる。これにより、溝23と接触面との分散の仕方が適正になる。
実施の形態では、P=1mmに設定されている。
【0022】
そしてまた、この溝23の形成により、台紙なしラベルLの裏面2を支持する周面21における該裏面2が接触する接触面24の接触面積率Sxは、60%≦Sx≦80%、望ましくは、65%≦Sx≦75%、より望ましくは、68%≦Sx≦72%に設定されている。
接触面積率Sxは、例えば、1ピッチ(P=1mm)当たり接触面24の幅Eを0.4mmに設定した場合にSx=40%、幅Eを0.5mmに設定した場合にSx=50%、幅Eを0.6mmに設定した場合にSx=60%、幅Eを0.7mmに設定した場合にSx=70%、幅Eを0.8mmに設定した場合にSx=80%、幅Eを0.9mmに設定した場合にSx=90%、幅Eを1.0mmに設定した場合にSx=100%(溝なし)となる。
接触面積率Sxが60%に満たないと、プラテンローラ20の周面21に対する台紙なしラベルLの粘着剤層4の接触面積率が小さくなりすぎてしまい、その場合には、サーマルヘッド12による押さえが低下して、プラテンローラ20に対して台紙なしラベルLの滑りが生じやすくなるので、台紙なしラベルが正しく搬送されず印字伸縮等が生じ、印字品質を損なう。
一方、接触面積率Sxが80%を超えると、プラテンローラ20の周面21に対する台紙なしラベルLの粘着剤層4の接触面積率が大きくなりすぎてしまい、台紙なしラベルLの粘着剤層4のプラテンローラ20に対する粘着力が実質的に強くなるので、プラテンローラ20に巻き込まれてしまう事態をしばしば生じさせてしまう。
これにより、プラテンローラ20の周面21に対する台紙なしラベルLの粘着剤層4の接触面積率が適正な範囲に設定されることになる。
実施の形態では、1ピッチ(P=1mm)当たり接触面24の幅EがE=0.7mmに設定され、これにより、Sx=70%に設定されている。
【0023】
尚、図1に示すように、本実施の形態に係る印字装置Sは、台紙なしラベルLのみならず、台紙付きラベルにも対応できるようになっている。即ち、プリンタ本体10には、プラテンローラ20に隣接して、断面三角形状の剥離バー13が設けられており、この剥離バー13により、台紙とラベルとを分離できるようにして、台紙付きラベルにも対応できるようにしている。
【0024】
従って、本実施の形態に係る印字装置Sによって、台紙なしラベルLに対して印字するときは、以下のようになる。
駆動機構を駆動して、プラテンローラ20を回転させ、ロールRから台紙なしラベルLを搬送して繰り出し、この繰り出された台紙なしラベルLの裏面(粘着剤層4)をこのプラテンローラ20の周面21で支持し、プラテンローラ20の周面21上の台紙なしラベルLの表面(非粘着剤層1)に当接させたサーマルヘッド12により印字を行う。プラテンローラ20は、印字が終了した台紙なしラベルLを外部に排出し、図示外の光センサによる台紙なしラベルLのマーク3の検知に基づいて、駆動機構を停止させ、台紙なしラベルLを所定位置に位置決めする。この状態で、ミシン目Lmを切断することにより先端の単体ラベルLaを分離する。印字した台紙なしラベルLを切断して取り出した後、残された最先端のラベルは、プラテンローラ20上に停止し、次の印字まで待機させられる。
【0025】
そして、次に、単体ラベルLaを取り出すときは、上記と同様、駆動機構を駆動して、プラテンローラ20を回転させる。この場合、本実施の形態では、台紙なしラベルLの粘着剤層4がプラテンローラ20にくっついたままになってプラテンローラ20に巻き付いてジャムが発生してしまう事態が防止される。即ち、本実施の形態では、プラテンローラ20は、直径φ=10.1mm、硬度H=50°、溝23の一対の側面がなす角度α=90°、溝23の深さD=0.15mm、溝23のピッチP=1mm、接触面24の幅E=0.7mmに設定されている。このため、台紙なしラベルLの粘着剤層4が接触する接触面24の接触面積率SxがSx=70%に設定していることから、プラテンローラ20の周面21に対する台紙なしラベルLの粘着剤層4の接触面積率Sxが適正な範囲に設定されることになり、プラテンローラ20に対する台紙なしラベルLの滑りを生じにくくして印字伸縮を抑止しつつ、台紙なしラベルLの粘着剤層4がプラテンローラ20に粘着してプラテンローラ20に巻き込まれてしまう事態を防止できるようになる。特に、プラテンローラ20の硬度が適正になり、プラテンローラ20の溝23の深さDが適正になり、この溝23と接触面24との分散の仕方が適正になることから、上記の接触面積率Sxと相まって相乗効果を発揮し、この点でも、プラテンローラ20に対する台紙なしラベルLの滑りを生じにくくして印字品質の低下を抑止しつつ、台紙なしラベルLの粘着剤層4がプラテンローラ20に粘着してプラテンローラ20に巻き込まれてしまう事態を防止できるようになる。
【0026】
<実験例>
次に、実験例について示す。この実験例では、図2および図3に示すように、シリコーンゴム製のプラテンローラ20の素材として、直径φ=10.1mm、周面21のある部分の長さMが47mmのもので、硬度Hは、硬度H=50°(重量12.5g)と、H=70°(重量13.0g)のものを用意し、上記の各硬度Hのプラテンに対し、角度α=90°、深さD=0.15mmの溝23を、種々のピッチPに形成して、接触面積率Sxを、40%,50%,60%,70%,80%,90%,100%(溝なし)のものを作成し、これらについて、各種実験を行った。
また、帯状の台紙なしラベルLとして、一般に用いられ、粘着剤層4が粘着力の比較的低い弱糊と比較的強い強糊との2種のものを使用した。
【0027】
(実験例1)転がり角度実験
これは、台板上に弱糊の台紙なしラベルLの粘着剤層4を上面にして露出させ固定し、この粘着剤層4に、各プラテンローラ20を、2Kgで15秒間荷重をかけて接着させ、それから台板を傾斜させて、各プラテンローラ20が転動し始めるときの転がり角度θを測定した。気温条件は25℃、湿度条件は40%であった。
結果を、図4(硬度H=50°)及び図5(硬度H=70°)に示す。
【0028】
(実験例2)プラテン接着力実験
これは、固定台上に弱糊及び強糊の台紙なしラベルLの粘着剤層4を上面にして露出させ固定し、この粘着剤層4に、各プラテンローラ20を、2Kgで15秒間荷重をかけて接着させ、回転軸22の両端から5mmのところを持ち上げて、粘着剤層4から離脱するときの荷重を測定した。気温条件は25℃、湿度条件は40%であった。
結果を、図4(硬度H=50°)及び図5(硬度H=70°)に示す。
【0029】
上記実験例1および実験例2の結果から、溝なしプラテンローラに比べ溝付きプラテンローラ(接触面積率Sx=40%〜90%)の方が、台紙なしラベルLの粘着剤層4との離反性が良いことが明らかである。その中で、注目すべきは、硬度H=50°および硬度H=70°ともに接触面積率Sxが50%と60%との粘着力の差が大きく、また、80%と90%との粘着力の差が大きいことが判る。
【0030】
(実験例3)印字伸縮実験
各プラテンローラ20を、上記の印字装置Sに装着し、夫々において、印字を行い、印字の伸縮率を測定した。条件は低温(気温0℃)、常温(気温25℃、湿度40%)、高温(気温35℃、湿度75%)の3条件下で行った。結果を、図6(硬度H=50°)及び図7(硬度H=70°)に示す。
【0031】
この結果から、接触面積率Sxが60%に満たないと、プラテンローラ20に対して台紙なしラベルLの滑りが生じやすくなり、印字伸縮が生じ、印字品質を損なうことが判る。また、硬度H=50°に比べ硬度H=70°の方が印字伸縮が生じている。
【0032】
(実験例4)巻き込み実験
これは、接触面積率Sxが60%,70%,80%,90%,100%(溝なし)のプラテンローラ(硬度H=50°及び硬度H=70°)について、先ず、台紙なしラベルLの先端をプラテンローラ20とサーマルヘッド12で挟持し、所定時間、所定の環境で放置する。所定時間は、30分,1時間,3時間,6時間,12時間,24時間とした。所定の環境としては、低温(気温0℃),常温(気温25℃、湿度40%),高温(気温35℃、湿度75%))の3条件とした。
そして、この各所定時間の後、台紙なしラベルのフィード動作を行い、巻き込み等のジャムが無いかを見た。結果を、図8(硬度H=50°)及び図9(硬度H=70°)に示す。図中、○印は、正常に用紙がフィードされたことを示し、×印は、巻き込み等のジャムが発生したことを示す。
【0033】
この結果から、接触面積率Sxが90%を超えると、印字精度(実験例3)は良いものの、巻き込み等のジャムの発生頻度が高いことが判る。また、接触面積率Sxが80%のものでは一部巻き込み等のジャムが発生したが、接触面積率Sxが60%,70%のものでは、巻き込み等のジャムの発生は見られない。
そのため、接触面積率Sxが、60%≦Sx≦80%の範囲において適正であると考えられた。また、硬度H=50°に比べ硬度H=70°の方が離反性が良いことが判る。
【0034】
(実験例5)印字精度実験
これは、各接触面積率Sxのものにおいて、所定の厚さの台紙なしラベルLにバーコードを印字し、印字結果をバーコード検証機にかけ、読み取り率を見てランク分けした。所定の厚さとしては、0.06μm,0.08μm,0.10μm,0.12μm,0.14μm,0.16μm,0.18μmの7種類を用意した。結果を、図10(硬度H=50°)及び図11(硬度H=70°)に示す。図中、A,B,C,Dは読み取り率のランク順を示し、Aランクは最高で、Dランクが最低になる。
【0035】
この結果から、台紙なしラベルLが薄くなるに従って、腰が無いことから、プラテンローラ20の溝23に入り込みやすくなり、印字不良が生じやすくなって、ランクが低くなることが分かった。硬度H=50°のプラテンローラ20においては、接触面積率Sxが60%≦Sx≦80%の範囲では、台紙なしラベルLの厚さは、0.1μm以上であることが有効である。0.1μmに満たないと、台紙なしラベルLが薄くなりすぎ、腰が無いことから、プラテンローラ20の溝に入り込みやすくなり、印字不良が生じやすくなる。
【0036】
また、プラテンローラ20の硬度の高い方(硬度H=70°)は、低い方(硬度H=50°)に比較して、溝の条件が同じでも、ランクが低くなることが分かった。これは、プラテンローラ20と搬送するラベルの摩擦係数が少なくなり、グリップ力が低下する。また、プラテンローラ20とサーマルヘッド12の発熱体との接触面積が少なくなるため、印字が正しくされるポイントが小さくなるためである。
よって、プラテンローラ20の硬度は、高い方(硬度H=70°)より低い方(硬度H=50°)が良いことが判った。
【0037】
上記実験例の結果、プラテンローラ20の接触面積率Sxは、実験例3において触面積率Sxが60%未満では印字伸縮が大きく、実験例4において触面積率Sxが80%以上では台紙なしラベルの巻き込みが起こりやすい。また、実験例5において触面積率Sxが60%未満では印字精度が良くないことが判る。よって、接触面積率Sxは、60%≦Sx≦80%の範囲が適正値であることが判る。
【0038】
プラテンローラ20の溝23のピッチPは、実験例3において触面積率Sxが60%未満では印字伸縮が大きいことから、溝23のピッチPが大きすぎると同様な傾向であることが判る。また、実験例4において触面積率Sxが80%以上では台紙なしラベルの巻き込みが起こりやすいことから、溝23のピッチPが小さすぎると同様な傾向であることが判る。よって、溝23のピッチPは、0.5mm≦P≦3mmの範囲が適正値であることが判る。
【0039】
プラテンローラ20の硬度Hは、実験例5において硬度H=70°では印字精度が悪く、硬度H=50°では印字精度が良かった。よって、硬度Hは、40°≦H≦60°の範囲が適正値であることが判る。
【0040】
プラテンローラ20の深さDは、実験例1および2において、プラテンローラ20に対し2Kgで15秒間荷重をかけて接着させても溝23の変形がなく、また、実験例4においても溝23の変形がなかった。よって、深さDは、0.1mm≦D≦0.3mmの範囲が適正値であることが判る。
【0041】
プラテンローラ20の溝23の角度αは、実験例1および2において、プラテンローラ20に対し2Kgで15秒間荷重をかけて接着させても溝23の変形がなく、また、実験例4においても溝23の変形がなかった。よって、溝23の一対の側面がなす角度αは、80°≦α≦100°の範囲が適正値であることが判る。
【0042】
溝付きプラテンローラ20を用いる場合、実験例5の結果から、台紙なしラベルLの厚さは、0.1μm以上であることが有効である。
【0043】
尚、上記の実施の形態では、サーマルヘッド12とプラテンローラ20により、台紙なしラベルLを挟持し搬送する印字装置Sを用いて説明したが、これに限定するものではなく、上記のプラテンローラ20と同様な溝付きローラを用い、該溝付きローラと対向する溝無しローラで台紙無しラベルLを挟持し搬送する搬送装置に用いても、同様な効果を得ることができることは言うまでもない。
【0044】
さらに、上記実施の形態において、上記プラテンローラの直径、周面のある部分の長さ、重量、および溝の数等の条件は、必ずしもこれに限定されるものではなく、適宜変更して差し支えない。
【符号の説明】
【0045】
S 印字装置
L 台紙なしラベル
La 単体ラベル
Lm ミシン目
R ロール
1 非粘着剤層
2 感熱発色層
3 マーク
4 粘着剤層
10 プリンタ本体
11 ロール収納部
12 サーマルヘッド
13 剥離バー
20 プラテンローラ
21 周面
22 回転軸
23 溝
24 接触面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台紙なしラベルと接触する円柱状のローラであって、
周面に、その円周方向に沿う溝を複数設け、且つ、上記台紙なしラベルとの接触面の接触面積率Sxを、60%≦Sx≦80%としたことを特徴とするローラ。
【請求項2】
裏面に粘着剤層を有した帯状の台紙なしラベルを搬送し、この搬送過程で該台紙なしラベルの裏面を回転軸を中心に回転可能な円柱状の周面で支持するローラであって、
上記周面に、その円周方向に沿う溝を、軸方向に沿って複数設け、且つ、上記台紙なしラベルの裏面を支持する周面における該裏面が接触する接触面の接触面積率Sxを、60%≦Sx≦80%に設定したことを特徴とするローラ。
【請求項3】
上記複数の溝を等間隔に設け、該溝のピッチPを、0.5mm≦P≦3mmにしたことを特徴とする請求項1乃至2何れかに記載のローラ。
【請求項4】
シリコーンゴムで形成され、硬度Hが、40°≦H≦60°であることを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載のローラ。
【請求項5】
上記溝の深さDを、0.1mm≦D≦0.3mmにしたことを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載のローラ。
【請求項6】
上記溝を傾斜する鏡面対称の一対の側面を有したV字状に形成し、該一対の側面がなす角度αを、80°≦α≦100°にしたことを特徴とする請求項1乃至5何れかに記載のローラ。
【請求項7】
請求項1乃至6何れかに記載のローラを有することを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
裏面に粘着剤層を有した帯状の台紙なしラベルを搬送し、この搬送過程で該台紙なしラベルの裏面を回転軸を中心に回転可能な円柱状のプラテンローラの周面で支持するとともに、上記台紙なしラベルの表面にサーマルヘッドを当接させて印字を行うことのできる印字装置において、
上記プラテンローラの周面に、その円周方向に沿う溝を、該プラテンローラの軸方向に沿って複数設け、且つ、上記台紙なしラベルの裏面を支持する周面における該裏面が接触する接触面の接触面積率Sxを、60%≦Sx≦80%に設定したことを特徴とする印字装置。
【請求項9】
上記複数の溝を上記プラテンローラの軸方向に沿って等間隔に設け、該溝のピッチPを、0.5mm≦P≦3mmにしたことを特徴とする請求項8記載の印字装置。
【請求項10】
上記プラテンローラを、シリコーンゴムで形成し、該プラテンローラの硬度Hを、40°≦H≦60°にしたことを特徴とする請求項8乃至9何れかに記載の印字装置。
【請求項11】
上記溝の深さDを、0.1mm≦D≦0.3mmにしたことを特徴とする請求項8乃至10何れかに記載の印字装置。
【請求項12】
上記溝を傾斜する鏡面対称の一対の側面を有したV字状に形成し、該一対の側面がなす角度αを、80°≦α≦100°にしたことを特徴とする請求項8乃至11何れかに記載の印字装置。
【請求項13】
裏面に粘着剤層を有した帯状の台紙なしラベルと、
上記台紙なしラベルを搬送し、この搬送過程で該台紙なしラベルの裏面と接触するプラテンローラと、
上記台紙なしラベルの表面に当接して印字を行うサーマルヘッドと、を有する印字装置であって、
上記プラテンローラの周面に、その円周方向に沿う溝を複数設け、且つ、上記台紙なしラベルと上記プラテンローラの接触面の接触面積率Sxを、60%≦Sx≦80%としたことを特徴とする印字装置。
【請求項14】
上記台紙なしラベルの厚さは、0.1μm以上であることを特徴とする請求項13に記載の印字装置。
【請求項1】
台紙なしラベルと接触する円柱状のローラであって、
周面に、その円周方向に沿う溝を複数設け、且つ、上記台紙なしラベルとの接触面の接触面積率Sxを、60%≦Sx≦80%としたことを特徴とするローラ。
【請求項2】
裏面に粘着剤層を有した帯状の台紙なしラベルを搬送し、この搬送過程で該台紙なしラベルの裏面を回転軸を中心に回転可能な円柱状の周面で支持するローラであって、
上記周面に、その円周方向に沿う溝を、軸方向に沿って複数設け、且つ、上記台紙なしラベルの裏面を支持する周面における該裏面が接触する接触面の接触面積率Sxを、60%≦Sx≦80%に設定したことを特徴とするローラ。
【請求項3】
上記複数の溝を等間隔に設け、該溝のピッチPを、0.5mm≦P≦3mmにしたことを特徴とする請求項1乃至2何れかに記載のローラ。
【請求項4】
シリコーンゴムで形成され、硬度Hが、40°≦H≦60°であることを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載のローラ。
【請求項5】
上記溝の深さDを、0.1mm≦D≦0.3mmにしたことを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載のローラ。
【請求項6】
上記溝を傾斜する鏡面対称の一対の側面を有したV字状に形成し、該一対の側面がなす角度αを、80°≦α≦100°にしたことを特徴とする請求項1乃至5何れかに記載のローラ。
【請求項7】
請求項1乃至6何れかに記載のローラを有することを特徴とする搬送装置。
【請求項8】
裏面に粘着剤層を有した帯状の台紙なしラベルを搬送し、この搬送過程で該台紙なしラベルの裏面を回転軸を中心に回転可能な円柱状のプラテンローラの周面で支持するとともに、上記台紙なしラベルの表面にサーマルヘッドを当接させて印字を行うことのできる印字装置において、
上記プラテンローラの周面に、その円周方向に沿う溝を、該プラテンローラの軸方向に沿って複数設け、且つ、上記台紙なしラベルの裏面を支持する周面における該裏面が接触する接触面の接触面積率Sxを、60%≦Sx≦80%に設定したことを特徴とする印字装置。
【請求項9】
上記複数の溝を上記プラテンローラの軸方向に沿って等間隔に設け、該溝のピッチPを、0.5mm≦P≦3mmにしたことを特徴とする請求項8記載の印字装置。
【請求項10】
上記プラテンローラを、シリコーンゴムで形成し、該プラテンローラの硬度Hを、40°≦H≦60°にしたことを特徴とする請求項8乃至9何れかに記載の印字装置。
【請求項11】
上記溝の深さDを、0.1mm≦D≦0.3mmにしたことを特徴とする請求項8乃至10何れかに記載の印字装置。
【請求項12】
上記溝を傾斜する鏡面対称の一対の側面を有したV字状に形成し、該一対の側面がなす角度αを、80°≦α≦100°にしたことを特徴とする請求項8乃至11何れかに記載の印字装置。
【請求項13】
裏面に粘着剤層を有した帯状の台紙なしラベルと、
上記台紙なしラベルを搬送し、この搬送過程で該台紙なしラベルの裏面と接触するプラテンローラと、
上記台紙なしラベルの表面に当接して印字を行うサーマルヘッドと、を有する印字装置であって、
上記プラテンローラの周面に、その円周方向に沿う溝を複数設け、且つ、上記台紙なしラベルと上記プラテンローラの接触面の接触面積率Sxを、60%≦Sx≦80%としたことを特徴とする印字装置。
【請求項14】
上記台紙なしラベルの厚さは、0.1μm以上であることを特徴とする請求項13に記載の印字装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−49146(P2013−49146A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187020(P2011−187020)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(307010993)株式会社サトー知識財産研究所 (588)
【出願人】(000130581)サトーホールディングス株式会社 (1,153)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(307010993)株式会社サトー知識財産研究所 (588)
【出願人】(000130581)サトーホールディングス株式会社 (1,153)
【Fターム(参考)】
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