説明

ローラガイドのローラ間隔制御装置

【課題】作業者が安全にローラ間隔調整作業を行うことができ、作業者の作業負担を大幅に軽減することができるローラガイドのローラ間隔制御装置を提供する。
【解決手段】ローラ間隔制御装置は、圧延機のローラガイドにおけるローラをローラ間隔が変化する方向に移動可能なローラ移動機構と、ローラ移動機構に連結されており、ローラ間隔を単位変位量だけ変化させる単位送り動作を行う定寸送り機構とを備えている。この定寸送り機構による単位送り動作が必要回数実施可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延機におけるローラガイドのローラ間隔を精度良く制御可能なローラ間隔制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ローラガイドのローラ間隔を正確に調整して圧延材を案内することが、寸法精度の高い圧延材を製造するために必要であることは、周知の通りである。
【0003】
本願出願人は圧延材の寸法に合わせてローラ間隔を正確に調整するための、スキンパス装置におけるローラ芯間調整装置を提案している(特許文献1)。
【0004】
このローラ芯間調整装置は、スキンパス装置の枠本体に回動変位可能に設けた1対の支持軸に対して偏心させた偏心軸に一対のローラをそれぞれ回転自在に設け、枠本体上に設けた複数段のウォームとウォームホイルとの組み合わせによる手動操作によって、ローラ芯間の距離(ローラ間隔)を微調整可能とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭61−82709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたローラ芯間の調整装置によれば、複数段のウォームとウォームホイルとの組み合わせにより、ローラ間隔を、5/100〜5/1000mmの単位で微調整することが可能である。
【0007】
しかしながら、このローラ芯間調整装置によると、ローラ間隔の調整を作業者が手動操作で行う必要があるため、特に、圧延材通過中に調整を行う場合には、作業者が危険にさらされるという問題があった。さらに、微調整を可能にするために複数段のピニオンとギアホイルとを組み合わせていることから、ローラ間隔を最大値から最小値に調整する場合には、ローラ芯間調整装置の調整軸を約700回転も手動により回転させる必要があり、作業者に多大な負担がかかるという問題もあった。
【0008】
従って本発明の目的は、作業者が安全にローラ間隔調整作業を行うことができるローラガイドのローラ間隔制御装置を提供することにある。
【0009】
本発明の他の目的は、作業者の作業負担を大幅に軽減することができるローラガイドのローラ間隔制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、ローラ間隔制御装置は、圧延機のローラガイドにおけるローラをローラ間隔が変化する方向に移動可能なローラ移動機構と、ローラ移動機構に連結されており、ローラ間隔を単位変位量だけ変化させる単位送り動作を行う定寸送り機構とを備えている。この定寸送り機構による単位送り動作が必要回数実施可能に構成されている。
【0011】
ローラ移動機構により、圧延機のローラガイドにおけるローラは、ローラ間隔が変化する方向(パスラインPLに対して近づく方向又は遠ざかる方向)に移動する。定寸送り機構とローラ移動機構との動作により、単位送り動作におけるローラの変位量が所定値に規定される。従って、この定寸送り機構による単位送り動作を必要回数実施することによって、ローラ間隔は所望の値に精度良く制御される。手動ではなく、油圧による自動で制御可能であるため、作業者はローラガイド本体に近づくことなく離れた場所から安全にローラ間隔調整を行うことできる。また、人力による手動操作のローラ間隔調整作業を不要にできるから、必要とされる調整量が多い場合であっても作業者の作業負担を軽減することができる。
【0012】
精密な位置決めを行う部品を必要としないので、構造が非常に簡単となり、製造コストを低減化することができる。また、定寸送り機構による単位送り動作を必要回数実施することにより間隔調整しているので、位置制御手段、制御盤及びサーボモータ等が不要であり、機器取り付け工事、配線及び配管工事が不要となるので、その意味でも製造コストを低減化することができる。さらに、外形寸法を大幅に小さくすることもできる。
【0013】
定寸送り機構は、単位角度の変位を規定可能な変位規定機構と、変位規定機構とローラ移動機構とを機械的に嵌合及び脱離することが可能な嵌脱機構とを備えており、嵌脱機構によって変位規定機構とローラ移動機構とを嵌合させた状態で変位規定機構を単位角度の変位を規定することによりローラ間隔を単位変位量だけ変化させ、嵌脱機構によって変位規定機構をローラ移動機構から脱離させた状態で変位規定機構の角度変位の規定化処理を初期化するように構成されていることが好ましい。
【0014】
この場合、変位規定機構は、単位角度の定角送り枠を規定する送り枠部材と、送り枠部材の定角送り枠内で定角送り枠と同軸で回転可能に挿入された定角送りレバーと、定角送りレバーを原点位置に初期化可能な弾性部材とを備えており、定角送りレバーが原点位置から定角送り枠内を角度変位することにより単位変位量が設定されることがより好ましい。
【0015】
さらに、この場合、定寸送り機構は、嵌脱機構を介して変位規定機構に連結可能な油圧モータをさらに備えており、嵌脱機構は、変位規定機構に機械的に連結された第1の嵌合面と、油圧モータ及びローラ移動機構に機械的に連結されており、第1の嵌合面に対向する第2の嵌合面とを備えており、第1の嵌合面及び第2の嵌合面が嵌脱可能に構成されていることも好ましい。
【0016】
定寸送り機構は、互いに相対する2方向のいずれの方向にも角度変位可能に構成されていることも好ましい。
【0017】
ローラ移動機構は、定寸送り機構の前記単位送り動作によって回動する1対の回動軸と、1対の回動軸にそれぞれ一体化されていると共に1対の回動軸の軸線から偏心した軸線をそれぞれ有しており1対のローラが回転自在に同軸にそれぞれ設けられた1対の偏心軸とを備えており、1対の回動軸の回動により1対のローラのローラ間隔が変化するように構成されていることも好ましい。
【0018】
ローラ間隔を検出可能な移動量検出機構をさらに備えたことも好ましい。
【0019】
本発明によれば、さらに、ローラガイドのローラ間隔制御装置は、ガイドボックスと、ガイドボックスに取り付けられており、圧延機のローラガイドにおける1対のローラをローラ間隔が変化する方向に移動可能なローラ移動機構と、ガイドボックスに取り付けられていると共にローラ移動機構に連結されており、ローラ間隔を単位変位量だけ変化させる単位送り動作を行う定寸送り機構とを備えている。ローラ移動機構は、ガイドボックスに回動可能に取り付けられた1対の回動軸と、1対の回動軸にそれぞれ一体化されていると共に1対の回動軸の軸線から偏心した軸線をそれぞれ有しており圧延機のローラガイドにおける1対のローラが回転自在にそれぞれ同軸に設けられた1対の偏心軸と、ガイドボックスに回動可能に取り付けられたピニオンシャフトと、ピニオンシャフトの両端部に同軸に設けられ、1対の回動軸の回動軸歯車とそれぞれ噛合した1対のピニオン歯車と、ピニオンシャフトの中央部に同軸に設けられたネジ歯車とを備えている。定寸送り機構は、油圧モータと、駆動力伝達機構と、単位角度の変位を規定可能な変位規定機構と、変位規定機構と油圧モータ及び駆動力伝達機構とを機械的に嵌合及び脱離することが可能な嵌脱機構とを備えており、嵌脱機構によって変位規定機構と油圧モータ及び駆動力伝達機構とを嵌合させた状態で変位規定機構により単位角度の変位を規定することによりローラ間隔を単位変位量だけ変化させ、嵌脱機構によって変位規定機構をローラ移動機構から脱離させた状態で変位規定機構の角度変位の規定化処理を初期化するように構成されている。変位規定機構は、単位角度の定角送り枠を規定する送り枠部材と、送り枠部材の定角送り枠内で定角送り枠と同軸に回転可能に挿入された定角送りレバーと、定角送りレバーを原点位置に初期化可能な弾性部材とを備えており、定角送りレバーが原点位置から定角送り枠内を角度変位することにより単位変位量が設定されるように構成されている。嵌脱機構は、変位規定機構に機械的に連結された第1の嵌合面と、油圧モータ及び前記駆動力伝達機構に機械的に連結されており、第1の嵌合面に対向する第2の嵌合面とを備えており、第1の嵌合面及び第2の嵌合面が嵌脱可能に構成されている。駆動力伝達機構は、駆動シャフトと、駆動シャフトに同軸に取り付けられており、油圧モータのモータ用歯車に噛合した駆動シャフト用歯車と、駆動シャフトに同軸に取り付けられており、ピニオンシャフトの上述のネジ歯車に噛合した駆動シャフト用ネジ歯車とを備えている。定寸送り機構による単位送り動作が必要回数実施可能に構成されている。
【0020】
ローラ移動機構により、圧延機のローラガイドにおけるローラは、ローラ間隔が変化する方向(パスラインPLに対して近づく方向又は遠ざかる方向)に移動する。定寸送り機構とローラ移動機構との動作により、単位送り動作におけるローラの変位量が所定値に規定される。従って、この定寸送り機構による単位送り動作を必要回数実施することによって、ローラ間隔は所望の値に精度良く制御される。手動ではなく、油圧モータによる自動で制御可能であるため、作業者はローラガイド本体に近づくことなく離れた場所から安全にローラ間隔調整を行うことできる。また、人力による手動操作のローラ間隔調整作業を不要にできるから、必要とされる調整量が多い場合であっても作業者の作業負担を軽減することができる。
【0021】
精密な位置決めを行う部品を必要としないので、構造が非常に簡単となり、製造コストを低減化することができる。また、定寸送り機構による単位送り動作を必要回数実施することにより間隔調整しているので、位置制御手段、制御盤及びサーボモータ等が不要であり、機器取り付け工事、配線及び配管工事が不要となるので、その意味でも製造コストを低減化することができる。さらに、外形寸法を大幅に小さくすることもできる。
【0022】
定寸送り機構は、互いに相対する2方向のいずれの方向にも角度変位可能に構成されていることが好ましい。
【0023】
駆動力伝達機構の駆動シャフトには、ローラ間隔を検出可能な移動量検出機構が取り付けられていることも好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ローラ間隔を所望の値に精度良く制御することができる。手動ではなく、油圧モータによる自動で制御可能であるため、作業者はローラガイド本体に近づくことなく離れた場所から安全にローラ間隔調整を行うことできる。また、人力による手動操作のローラ間隔調整作業を不要にできるから、必要とされる調整量が多い場合であっても作業者の作業負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のローラガイドのローラ間隔制御装置の一実施形態の要部構成を概略的に示す正面図である。
【図2】図1のローラ間隔制御装置の要部構成を示す平面図である。
【図3】図1のローラ間隔制御装置の定寸送り機構の構成を拡大して示す正面図である。
【図4】図3の示す定寸送り機構を拡大して示す正面図である。
【図5】図4のV−V線に沿った面を示す矢視図である。
【図6】図1のローラ間隔制御装置の油圧回路の構成を概略的に示す図である。
【図7】図1のローラ間隔制御装置の動作を概略的に説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は本発明のローラガイドのローラ間隔制御装置の一実施形態の要部構成を概略的に示しており、図2は図1のローラ間隔制御装置の要部構成を示しており、図3は図1のローラ間隔制御装置の定寸送り機構の構成を拡大して示しており、図4は図3の示す定寸送り機構を拡大して示しており、図5は図4のV−V線に沿った面を示している。
【0027】
これらの図において、10はローラガイド、11は1対の圧延ロールをそれぞれ示している。ローラガイド10は、図示しない圧延材を1対の圧延ロール11の所望位置(圧延ロールカリバーの位置)に案内するためのものである。
【0028】
ローラガイド10は、エントリガイド12とガイドボックス13とを備えている。ガイドボックス13内には、1対の偏心軸14に対してその回りを回転自在にそれぞれ装着された1対のローラ15が設けられている。本実施形態のローラ間隔制御装置は、この回転自在の1対のローラ15の間隔を制御するためのものである。
【0029】
ガイドボックス13内には、さらに、1対の偏心軸14とそれぞれ一体的に構成されている1対の回動軸16が設けられている。この1対の回動軸16は1対の軸受17によってそれぞれ軸支されており、後述する駆動力伝達機構の駆動によって互いに逆方向に回動するように構成されている。ただし、1対の偏心軸14の軸線14aは、1対の回動軸16の軸線16aから距離eだけ偏心している。1対の回動軸16が回動する際に、これと一体化された1対の偏心軸14もその1対の回動軸16の軸線16aの回りを回動することとなり、これによって1対の偏心軸14間の間隔、従って1対のローラ15間の間隔が変化することとなる。これら1対の回動軸16の上端部には、1対の回動軸歯車18がこれら1対の回動軸16とそれぞれ同軸に装着されている。
【0030】
ガイドボックス13の上部には、ペデスタル19を介してピニオンシャフト20が回動可能に軸支されており、このピニオンシャフト20の中央部にはネジ歯車21が、両端部にはそれぞれ1対のピニオン歯車22がこのピニオンシャフト20と同軸に装着されている。ネジ歯車21はペデスタル19の中央部を挿通して取り付けられている。1対のピニオン歯車22は1対の回動軸歯車18にそれぞれ噛合しており、ピニオンシャフト20の回動に応じて1対の回動軸歯車18が互いに逆方向に回動するように構成されている。
【0031】
以上述べた1対の偏心軸14、1対の回動軸16、1対の軸受17、1対の回動軸歯車18、ピニオンシャフト20、ネジ歯車21、及び1対のピニオン歯車22は、本発明のローラ移動機構を構成している。
【0032】
ガイドボックス13の上面には、定寸送り機構23が取り付けられている。この定寸送り機構23は、図3に示されているように、油圧モータ24と、駆動力伝達機構25と、単位角度の変位を規定可能な変位規定機構26と、変位規定機構26と油圧モータ24及び駆動力伝達機構25とを機械的に嵌合及び脱離することが可能な嵌脱機構27と、移動量検出機構を構成するエンコーダ28とを備えている。
【0033】
油圧モータ24の回転軸29にはモータ用歯車30が同軸に装着されている。この回転軸29は嵌脱機構27を介して変位規定機構26に同軸に連結可能となっている。
【0034】
駆動力伝達機構25は、回転軸29と平行に伸長しており回転軸29と共に回動可能な駆動シャフト31と、この駆動シャフト31に同軸に固着されており、モータ用歯車30に噛合した駆動シャフト歯車32と、この駆動シャフト31に同軸に固着されており、ネジ歯車21に噛合した駆動シャフトネジ歯車33とを備えている。従って、後述するように変位規定機構26によって規制される油圧モータ24の回転は、油圧モータ24→回転軸29→モータ用歯車30→駆動シャフト歯車32→駆動シャフト31→駆動シャフトネジ歯車33→ネジ歯車21→ピニオンシャフト20→1対のピニオン歯車22→1対の回動軸歯車18→1対の回動軸16と伝達されて、これら1対の回動軸16を回動させ、これにより1対の偏心軸14に軸支されている1対のローラ15の間隔を変化させる。
【0035】
駆動シャフト31には、エンコーダ28が同軸に固着されている。従って、エンコーダ28は油圧モータ31の回転角度又は駆動シャフト31の回転角度を検出することができ、これにより最終的にローラ間隔を検出することができる。検出した回転角度又はローラ間隔は図示しない表示装置に表示される。
【0036】
本実施形態における変位規定機構26は、図5に詳細に示されているように、2つの端面50a及び50bで構成される定角送り枠を有する送り枠部材50と、油圧モータ24の回転軸29と同軸に回動するように定角送り枠内に挿入されており、この定角送り枠内で送り枠部材50に対して相対的に角度移動可能な定角送りレバー51と、この定角送りレバー51を原点位置に初期化可能な弾性部材である原点復帰用バネ52とを備えている。
【0037】
定角送りレバー51は、原点位置(図5に示す中立位置)から回動して定角送り枠の一方の端面50a又は50bに当接することによってその回動が停止し、これによって単位角度だけ変位するように構成されている。定角送りレバー51は、油圧モータ24から脱離した状態で、原点復帰用バネ52によって押圧されて原点位置に戻される。
【0038】
嵌脱機構27は、図4に詳細に示すように、定角送りレバー51に機械的に連結されており、環状の凹凸表面を有する第1の嵌合面53と、油圧モータ24のモータ用歯車30と一体成形されており、この第1の嵌合面53に同軸で対向しており、環状の凹凸表面を有する第2の嵌合面54と、第1の嵌合面53を第2の嵌合面54の方向(図4にて右方向)へ駆動し、この第1の嵌合面53を第2の嵌合面54に噛合わせて嵌合状態とするための嵌脱用油圧ピストン55と、この嵌脱用油圧ピストン55を押し戻して脱離状態とするための嵌脱用バネ56とを備えている。なお、定角送りレバー51と嵌脱用油圧ピストン55とは、定角送りレバー51の雄スプライン部(図示なし)と嵌脱用油圧ピストン55の雌スプライン部(図示なし)とを嵌合させ、さらにボルト57で固定することにより、互いに同軸に一体的に固着されている。なお、嵌脱用バネが嵌合状態とするために作動し、嵌脱用油圧ピストンがこの嵌脱用バネを押し戻して脱離状態とするために作動するように構成しても良い。
【0039】
図6は本実施形態におけるローラ間隔制御装置の油圧回路の構成を概略的に示している。
【0040】
同図において、60は油圧モータ用電磁切換弁、61は油圧モータ用流量制御弁、62は油圧モータ用圧力制御弁、63は嵌脱油圧ピストン用電磁切換弁、64は嵌脱油圧ピストン用圧力制御弁をそれぞれ示している。これらの弁を適宜制御することにより、油圧モータ24及び嵌脱用油圧ピストン55の作動が制御される。
【0041】
次に、本実施形態におけるロール間隔制御装置の動作を説明する。
【0042】
圧延材を圧延ロール11に案内するローラガイド10における1対のローラ15のパスラインPLを挟むローラ間隔を正確に調整する動作について、図7に示すフローチャートをも参照して以下詳細に説明する。
【0043】
〔ステップS1〕まず、油圧モータ24の駆動力を定角送りレバー51に伝達可能とするために、嵌脱油圧ピストン用電磁切換弁63を操作して嵌脱機構27の嵌脱用油圧ピストン55に油圧力を印加する。これにより、嵌脱用油圧ピストン55が嵌脱用バネ56の押圧力に抗して、図4の右方向に駆動され、第1の嵌合面53と第2の嵌合面54とが同軸の嵌合状態となり、油圧モータ24の駆動力が定角送りレバー51に伝達されることとなる。
【0044】
〔ステップS2〕この状態で、油圧モータ24を一方向に回転させると、定角送りレバー51が原点位置(図5に示す中立位置)から回動して定角送り枠の一方の端面50a又は50bに当接することによってその回動が停止する。これによって、油圧モータ24は単位角度だけ変位する。油圧モータ24のモータ用歯車30は駆動シャフト歯車32に噛合しており、従って、油圧モータ24の単位角度変位は駆動シャフト31の単位角度変位となる。駆動シャフト31の単位角度変位は、駆動シャフトネジ歯車33からネジ歯車21に伝わり、さらにピニオンシャフト20から1対のピニオン歯車22に伝わり、さらには、1対の回動軸歯車18を介して1対の回動軸16の単位角度変位となる。この1対の回動軸16の単位角度変位が、1対の偏心軸14に軸支されている1対のローラ15の間隔の単位変位量の変化となる。
【0045】
〔ステップS3〕次いで、嵌脱油圧ピストン用電磁切換弁63を操作して嵌脱機構27の嵌脱用油圧ピストン55に印加される油圧力を除去すると、嵌脱用バネ56の押圧力により、第1の嵌合面53と第2の嵌合面54との嵌合が解除され、これにより、定角送りレバー51は、油圧モータ24から脱離した状態となって、原点復帰用バネ52によって押圧されて原点位置に戻される。
【0046】
〔ステップS4〕次いで、1対のローラ15の間隔が所望の値となったかどうか判別し、所望の値となっていない場合(NOの場合)は、ステップS1〜S3の処理を繰り返す。このように、ステップS1〜S3の処理を行うことにより、1サイクルの送りがなされて、ローラ間隔は単位変位量だけ変化する。必要とする変位量が得られるまでこのサイクルを繰り返すことにより、最終的に所望のローラ間隔が得られることとなる。なお、駆動シャフト31に連結しているため、エンコーダ28は油圧モータ24の回転角度を検出することができ、従ってローラ間隔の実際の変位量を表示装置に表示することができる。このステップS4において、ローラ間隔が所望の値となったと判別した場合(YESの場合)は、ローラ間隔の制御動作が終了となる。
【0047】
以上説明したように本実施形態によれば、定寸送り機構23の変位規定機構26及び嵌脱機構27により、単位角度送り動作におけるローラ間隔の変位量が所定値に規定される。従って、この定寸送り機構23による単位角度送り動作を必要回数実施することによって、ローラ間隔は精度良く制御される。このように、本実施形態によれば、手動ではなく、油圧による自動で制御可能であるため、作業者はローラガイド本体に近づくことなく離れた場所から安全にローラ間隔調整を行うことできる。また、人力による手動操作のローラ間隔調整作業を不要にできるから、必要とされる調整量が多い場合であっても作業者の作業負担を軽減することができる。
【0048】
精密な位置決めを行う部品を必要としないので、構造が非常に簡単となり、製造コストを低減化することができる。また、定寸送り機構23による単位送り動作を必要回数実施することにより間隔調整しているので、位置制御手段、制御盤及びサーボモータ等が不要であり、機器取り付け工事、配線及び配管工事が不要となるので、その意味でも製造コストを低減化することができる。さらに、外形寸法を大幅に小さくすることもできる。
【0049】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【符号の説明】
【0050】
10 ローラガイド
11 1対の圧延ロール
12 エントリガイド
13 ガイドボックス
14 1対の偏心軸
14a、16a 軸線
15 1対のローラ
16 1対の回動軸
17 1対の軸受
18 1対の回動軸歯車
19 ペデスタル
20 ピニオンシャフト
21 ネジ歯車
22 1対のピニオン歯車
23 定寸送り機構
24 油圧モータ
25 駆動力伝達機構
26 変位規定機構
27 嵌脱機構
28 エンコーダ
29 回転軸
30 モータ用歯車
31 駆動シャフト
32 駆動シャフト歯車
33 駆動シャフトネジ歯車
50 送り枠部材
50a、50b 端面
51 定角送りレバー
52 原点復帰用バネ
53 第1の嵌合面
54 第2の嵌合面
55 嵌脱用油圧ピストン
56 嵌脱用バネ
57 ボルト
60 油圧モータ用電磁切換弁
61 油圧モータ用流量制御弁
62 油圧モータ用圧力制御弁
63 嵌脱油圧ピストン用電磁切換弁
64 嵌脱油圧ピストン用圧力制御弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延機のローラガイドにおけるローラをローラ間隔が変化する方向に移動可能なローラ移動機構と、該ローラ移動機構に連結されており、前記ローラ間隔を単位変位量だけ変化させる単位送り動作を行う定寸送り機構とを備えており、前記定寸送り機構による単位送り動作が必要回数実施可能に構成されていることを特徴とするローラガイドのローラ間隔制御装置。
【請求項2】
前記定寸送り機構は、単位角度の変位を規定可能な変位規定機構と、該変位規定機構と前記ローラ移動機構とを機械的に嵌合及び脱離することが可能な嵌脱機構とを備えており、該嵌脱機構によって前記変位規定機構と前記ローラ移動機構とを嵌合させた状態で前記変位規定機構により単位角度の変位を規定することにより前記ローラ間隔を単位変位量だけ変化させ、前記嵌脱機構によって前記変位規定機構を前記ローラ移動機構から脱離させた状態で前記変位規定機構の前記角度変位の規定化処理を初期化するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のローラ間隔制御装置。
【請求項3】
前記変位規定機構は、前記単位角度の定角送り枠を規定する送り枠部材と、該送り枠部材の前記定角送り枠内で該定角送り枠と同軸で回転可能に挿入された定角送りレバーと、該定角送りレバーを原点位置に初期化可能な弾性部材とを備えており、前記定角送りレバーが前記原点位置から前記定角送り枠内を角度変位することにより前記単位変位量が設定されることを特徴とする請求項2に記載のローラ間隔制御装置。
【請求項4】
前記定寸送り機構は、前記嵌脱機構を介して前記変位規定機構に連結可能な油圧モータをさらに備えており、前記嵌脱機構は、前記変位規定機構に機械的に連結された第1の嵌合面と、前記油圧モータ及び前記ローラ移動機構に機械的に連結されており、前記第1の嵌合面に対向する第2の嵌合面とを備えており、前記第1の嵌合面及び前記第2の嵌合面が嵌脱可能に構成されていることを特徴とする請求項2又は3に記載のローラ間隔制御装置。
【請求項5】
前記定寸送り機構は、互いに相対する2方向のいずれの方向にも角度変位可能に構成されていることを特徴とする請求項2から4のいずれか1項に記載のローラ間隔制御装置。
【請求項6】
前記ローラ移動機構は、前記定寸送り機構の前記単位送り動作によって回動する1対の回動軸と、該1対の回動軸にそれぞれ一体化されていると共に該1対の回動軸の軸線から偏心した軸線をそれぞれ有しており1対の前記ローラが回転自在に同軸にそれぞれ設けられた1対の偏心軸とを備えており、前記1対の回動軸の回動により前記1対のローラの前記ローラ間隔が変化するように構成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のローラ間隔制御装置。
【請求項7】
前記ローラ間隔を検出可能な移動量検出機構をさらに備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のローラ間隔制御装置。
【請求項8】
ガイドボックスと、
該ガイドボックスに取り付けられており、圧延機のローラガイドにおける1対のローラをローラ間隔が変化する方向に移動可能なローラ移動機構と、
前記ガイドボックスに取り付けられていると共に前記ローラ移動機構に連結されており、前記ローラ間隔を単位変位量だけ変化させる単位送り動作を行う定寸送り機構と
を備えており、
前記ローラ移動機構は、前記ガイドボックスに回動可能に取り付けられた1対の回動軸と、該1対の回動軸にそれぞれ一体化されていると共に該1対の回動軸の軸線から偏心した軸線をそれぞれ有しており前記1対のローラが回転自在にそれぞれ同軸に設けられた1対の偏心軸と、前記ガイドボックスに回動可能に取り付けられたピニオンシャフトと、該ピニオンシャフトの両端部に同軸に設けられ、前記1対の回動軸の回動軸歯車とそれぞれ噛合した1対のピニオン歯車と、前記ピニオンシャフトの中央部に同軸に設けられたネジ歯車とを備えており、
前記定寸送り機構は、油圧モータと、駆動力伝達機構と、単位角度の変位を規定可能な変位規定機構と、該変位規定機構と前記油圧モータ及び前記駆動力伝達機構とを機械的に嵌合及び脱離することが可能な嵌脱機構とを備えており、該嵌脱機構によって前記変位規定機構と前記油圧モータ及び前記駆動力伝達機構とを嵌合させた状態で前記変位規定機構により単位角度の変位を規定することにより前記ローラ間隔を単位変位量だけ変化させ、前記嵌脱機構によって前記変位規定機構を前記ローラ移動機構から脱離させた状態で前記変位規定機構の前記角度変位の規定化処理を初期化するように構成されており、
前記変位規定機構は、前記単位角度の定角送り枠を規定する送り枠部材と、該送り枠部材の前記定角送り枠内で該定角送り枠と同軸に回転可能に挿入された定角送りレバーと、該定角送りレバーを原点位置に初期化可能な弾性部材とを備えており、前記定角送りレバーが前記原点位置から前記定角送り枠内を角度変位することにより前記単位変位量が設定されるように構成されており、
前記嵌脱機構は、前記変位規定機構に機械的に連結された第1の嵌合面と、前記油圧モータ及び前記駆動力伝達機構に機械的に連結されており、前記第1の嵌合面に対向する第2の嵌合面とを備えており、前記第1の嵌合面及び前記第2の嵌合面が嵌脱可能に構成されており、
前記駆動力伝達機構は、駆動シャフトと、該駆動シャフトに同軸に取り付けられており、前記油圧モータのモータ用歯車に噛合した駆動シャフト用歯車と、前記駆動シャフトに同軸に取り付けられており、前記ピニオンシャフトの前記ネジ歯車に噛合した駆動シャフト用ネジ歯車とを備えており、
前記定寸送り機構による単位送り動作が必要回数実施可能に構成されていることを特徴とするローラガイドのローラ間隔制御装置。
【請求項9】
前記定寸送り機構は、互いに相対する2方向のいずれの方向にも角度変位可能に構成されていることを特徴とする請求項8に記載のローラ間隔制御装置。
【請求項10】
前記駆動力伝達機構の前記駆動シャフトには、前記ローラ間隔を検出可能な移動量検出機構が取り付けられていることを特徴とする請求項8又は9に記載のローラ間隔制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−55913(P2012−55913A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199755(P2010−199755)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000182476)寿産業株式会社 (47)