説明

ロールのブラシ装置

【課題】酸洗ラインに設置されたスキンパスミル等のロールの表面を的確に美麗化することができるブラシ装置を提供する。
【解決手段】ブラシ装置20は、回転ブラシ部21と直線ブラシ部27を備えていて、回転ブラシ部21は、回転ブラシ22とその回転ブラシ22をロール11の表面に向かって移動(前進・後退)させる回転ブラシ移動用シリンダ23とを有しており、直線ブラシ部27は、直線ブラシ28とその直線ブラシ28をロール11の表面に向かって移動(前進・後退)させる直線ブラシ移動用シリンダ29とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール(例えば、スキンパスミルのロール)の表面を美麗化するためのブラシ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続式酸洗ラインは前後の材料を溶接機で接合する事で効率良く材料を払出し、酸洗作業を行なう。
【0003】
1970年〜1990年、酸洗ラインは圧延後の材料表層の黒皮スケール層の除去を主目的に活用されてきた。その後、生産性向上の要求を背景に、材料表層のスケール層に亀裂を与え、脱スケール能力を向上させて、酸洗性を促進させる技術が開発されてきた。脱スケール能力を向上できる設備としては、スキンパスミルやテンションレベラーが知られている。
【0004】
2000年に入ると、自動車業界を中心に、省エネルギー(車両の軽量化)に対する要求が高まり、高張力鋼材(TS≧60kg/mm)の製造比率が増加した。これら高張力鋼材が増加することで、酸洗ラインは酸洗性だけでなく、高い形状矯正能力が求められるようになり、結果として、形状矯正設備としてのスキンパスミルの圧延荷重の増加やテンションレベラーでの伸率の増加などの操業条件の変化を経た。
【0005】
これらの対応の結果、酸洗性の向上や形状矯正能力の向上を達成する一方で、酸洗槽の入側に設置された脱スケール設備(スキンパスミル、テンションレベラー)によって材料(母材)から飛散する剥離スケールの量が増加したこともあって、脱スケール設備のロールへの異物噛込み(異物付着)に起因する製品表裏面の品質不良の懸念が増加してきた。ロールに噛込む異物(付着する異物)としては、(a)剥離した比較的大きなスケール片、(b)微粉体状の粉、(c)粘着質な油脂などが代表的である。
【0006】
そこで、脱スケール設備のロール表面を美麗化する技術が発展してきた(特許文献1〜4参照)。例えば、図14に示すように、スキンパスミル10のロール(上ワークロール11、上バックアップロール12、下ワークロール13、下バックアップロール14)について、反ロール回転方向に回転する回転ブラシ18でロール表面を美麗化する方法である。また、図15に示すように、上記の回転ブラシ18に代えて、直線ブラシ(非回転ブラシ)19を用いる場合もある。直線ブラシ19は、歯ブラシ状であってロールに押し当てる構造のブラシである。
【0007】
ここで、回転ブラシがブラッシング(掻き取り)動作でロールを美麗化するのに対して、直線ブラシはワイピング(拭き取り)動作でロールを美麗化する。
【0008】
そして、回転ブラシは、上記の異物のうち、(b)微粉体状の粉に有効に働く(除去できる)のに対して、直線ブラシは、上記の異物のうち、(a)剥離した比較的大きなスケール片と(c)粘着質な油脂とに有効に働く(除去できる)ことが、経験的ではあるが知られている。
【0009】
そのようなこともあって、従来、酸洗槽の入側に設置されたスキンパスミルのロールに対しては、(a)剥離した比較的大きなスケール片に有効に働く直線ブラシを用いることが多かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−254610号公報
【特許文献2】特開2005−254294号公報
【特許文献3】特表2007−533454号公報
【特許文献4】特表2009−502519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年、高張力鋼材の製造の増加を受け、酸洗ラインではSi系の高張力鋼材(Si≧0.3質量%)が増えてきた。
【0012】
しかし、Si系高張力鋼材(Si≧0.3質量%)は、表面に粉体状の赤スケールが無数に生成しており、スキンパスミルのロールを直線ブラシによってワイピング(拭き取り)を行った場合は、前述したように、直線ブラシは微粉体状の粉の除去には適していないこともあって、粉体状の赤スケールがスキンパスミルのロールに噛み込み(付着し)、Si系高張力鋼材(Si≧0.3質量%)の通板を開始した初期には、製品表面に1mm×1mm程度のロール疵が発生し、継続してSi系高張力鋼材(Si≧0.3質量%)を通板すると、製品表面に無数のロール疵が発生することが分かってきた。
【0013】
そこで、Si系高張力鋼材(Si≧0.3質量%)については、酸洗ラインに設置されたスキンパスミルによる形状矯正やスケール層の亀裂付与を行わず、別ラインのスキンパスミルで形状矯正やスケール層の亀裂付与を行い、酸洗ラインではスキンパスミルを使用せずに酸洗槽に装入する運用になっていた。その結果、Si系高張力鋼材(Si≧0.3質量%)は、複数のラインを通板することになり、歩留と作業費用が定常的に劣位であった。
【0014】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、酸洗ラインに設置されたスキンパスミル等のロールの表面を的確に美麗化することができるブラシ装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
【0016】
[1]ロールの表面を美麗化するためのブラシ装置であって、回転ブラシと直線ブラシの両方を備えていることを特徴とするロールのブラシ装置。
【0017】
[2]回転ブラシを有する回転ブラシ部と、前記回転ブラシ部を前記ロールの表面に向かって前進・後退させる回転ブラシ部移動用シリンダと、該回転ブラシ部移動用シリンダのロッドの延伸位置を所定位置にて停止・保持するためのストッパ機構と、直線ブラシと該直線ブラシを前記ロールの表面に向かって前進・後退させる直線ブラシ移動用シリンダとを有する直線ブラシ部とを備えており、前記直線ブラシ部が前記回転ブラシ部に取り付けられていることを特徴とする前記[1]に記載のロールのブラシ装置。
【0018】
[3]前記回転ブラシの回転中心が前進・後退する延長線上に前記ロールの中心が位置するように設置されていることを特徴とする前記[1]または[2]に記載のロールのブラシ装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明においては、酸洗ラインに設置されたスキンパスミル等のロールの表面を的確に美麗化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態1におけるブラシ装置を示す図である。
【図2】本発明の実施形態1におけるブラシの配置の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態1におけるブラシの配置の他の例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態2におけるブラシ装置を示す図である。
【図5】本発明の実施形態2におけるブラシ装置の動作を示す図である。
【図6】本発明の実施形態2におけるブラシ装置の動作を示す図である。
【図7】本発明の実施形態2におけるブラシ装置の動作を示す図である。
【図8】本発明の実施形態2におけるブラシ装置の動作を示す図である。
【図9】本発明の実施形態3におけるブラシ装置を示す図である。
【図10】本発明の実施形態3におけるブラシ装置の動作を示す図である。
【図11】本発明の実施形態3におけるブラシ装置の動作を示す図である。
【図12】本発明の実施形態3におけるブラシ装置の動作を示す図である。
【図13】本発明の実施形態3におけるブラシ装置の動作を示す図である。
【図14】従来技術(回転ブラシ)を示す図である。
【図15】従来技術(直線ブラシ)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
前述したように、スキンパスミル等のロールに噛込む異物(付着する異物)としては、(a)剥離した比較的大きなスケール片、(b)微粉体状の粉、(c)粘着質な油脂などがあり、回転ブラシは、上記の異物のうち、(b)微粉体状の粉に有効に働く(除去できる)のに対して、直線ブラシは、上記の異物のうち、(a)剥離した比較的大きなスケール片と(c)粘着質な油脂に有効に働く(除去できる)。
【0022】
そこで、本発明においては、ロールの表面を美麗化するためのブラシ装置として、回転ブラシと直線ブラシの両方を備えるようにして、ロールの表面に付着する異物の種類に応じて、回転ブラシと直線ブラシを適宜使い分けることによって、ロールの表面を的確に美麗化することができるようにしている。
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、ここでは、スキンパスミルの上ワークロールに適用する場合を例にしている。
【0024】
[実施形態1]
図1は、本発明の実施形態1におけるブラシ装置20を示す図である。
【0025】
図1に示すように、この実施形態1におけるブラシ装置20は、回転ブラシ部21と直線ブラシ部27を備えている。そして、回転ブラシ部21は、回転ブラシ22とその回転ブラシ22をロール11の表面に向かって移動(前進・後退)させる回転ブラシ移動用シリンダ23とを有しており、直線ブラシ部27は、直線ブラシ28とその直線ブラシ28をロール11の表面に向かって移動(前進・後退)させる直線ブラシ移動用シリンダ29とを有している。
【0026】
ここで、回転ブラシ部21と直線ブラシ部27の設置位置については、図2に示すように、回転ブラシ22の回転中心が前進・後退する方向線の延長線上(すなわち、回転ブラシ移動用シリンダ23が延伸する方向線の延長線上)にロール11の中心Oが位置するようにし、直線ブラシ28の中央部が前進・後退する方向線(すなわち、直線ブラシ移動用シリンダ29が延伸する方向線)は、回転ブラシ22の回転中心が前進・後退する方向線(すなわち、回転ブラシ移動用シリンダ23が延伸する方向線)と平行になるようにするか、または、図3に示すように、直線ブラシ28の中央部が前進・後退する方向線の延長線上(すなわち、直線ブラシ移動用シリンダ29が延伸する方向線の延長線上)にロール11の中心Oが位置するようにし、回転ブラシ22の回転中心が前進・後退する方向線(すなわち、回転ブラシ移動用シリンダ23が延伸する方向線)は、直線ブラシ28の中央部が前進・後退する方向線(すなわち、直線ブラシ移動用シリンダ29が延伸する方向線)と平行になるようにすることが考えられる。
【0027】
これについては、回転ブラシ22がブラッシング(掻き取り)動作でロール11を美麗化し、直線ブラシ28がワイピング(拭き取り)動作でロール11を美麗化することを考慮すれば、図2に示したように、回転ブラシ22の回転中心が前進・後退する方向線の延長線上(回転ブラシ移動用シリンダ23が延伸する方向線の延長線上)にロール11の中心Oが位置するようにするのが好適である。その際に、直線ブラシ28が前進・後退する方向線(直線ブラシ移動用シリンダ29が延伸する方向線)が、回転ブラシ22の回転中心が前進・後退する方向線(回転ブラシ移動用シリンダ23が延伸する方向線)から離れる距離(オフセット量)δは、160mm以下とすることが好ましい。
【0028】
そして、上記のように構成されたブラシ装置20においては、ロール11に噛込む異物(付着する異物)の種類に応じて、回転ブラシ22と直線ブラシ27を使い分けるようにしている。
【0029】
すなわち、ロール11を通過する鋼材が、例えば、Si含有量が0.3質量%以上の高張力鋼材のように、ロール11に噛込む異物として、微粉体状の粉が多い場合には、それに有効に働く回転ブラシ22を用いることとし、回転ブラシ移動用シリンダ23を延伸させて、回転ブラシ22をロール11表面に押し当て、ロール11表面のブラッシング(掻き取り)を行う。
【0030】
一方、ロール11を通過する鋼材が、例えば、Si含有量が0.3質量%未満の高張力鋼材のように、ロール11に噛込む異物として、剥離した比較的大きなスケール片が多い場合には、それに有効に働く直線ブラシ28を用いることとし、直線ブラシ移動用シリンダ29を延伸させて、直線ブラシ28をロール11表面に押し当て、ロール11表面のワイピング(拭き取り)を行う。
【0031】
また、ロール11に噛込む異物として、微粉体状の粉と剥離した比較的大きなスケール片の両方ともが多い場合や、さらに粘着質な油脂も多い場合には、回転ブラシ22と直線ブラシ28の両方を用いることとし、回転ブラシ移動用シリンダ23を延伸させて、回転ブラシ22をロール11表面に押し当て、ロール11表面のブラッシング(掻き取り)を行うとともに、直線ブラシ移動用シリンダ29を延伸させて、直線ブラシ28をロール11表面に押し当て、ロール11表面のワイピング(拭き取り)を行う。
【0032】
このようにして、この実施形態1においては、ロール11の表面を的確に美麗化することができる。
【0033】
[実施形態2]
図1〜図3に示した本発明の実施形態1におけるブラシ装置20は、回転ブラシ移動用シリンダ23と直線ブラシ移動用シリンダ29の2本の独立した移動用シリンダを平行に配置した構造となっているが、スキンパスミル10の上ワークロール11に対して設置する場合に、他の装置(例えば、上ワークロール11の組替レール、上バックアップロール12のチョック)と干渉して、独立した2本の移動用シリンダを平行に設置するスペースを確保できない場合がある。
【0034】
そこで、この実施形態2においては、装置を小型化して、他の装置との干渉を回避するようにしている。
【0035】
図4は、本発明の実施形態2におけるブラシ装置30を示す図である。
【0036】
図4に示すように、この実施形態2におけるブラシ装置30は、回転ブラシ32とその回転ブラシ32を保持する保持部材33とからなる回転ブラシ部31と、その回転ブラシ部31をロール11の表面に向かって移動(前進・後退)させる回転ブラシ部移動用シリンダ34と、回転ブラシ部移動用シリンダ34をロール11の表面に向かって移動(前進・後退)させる全体移動用シリンダ35と、直線ブラシ38とその直線ブラシ38をロール11の表面に向かって移動(前進・後退)させる直線ブラシ移動用シリンダ39とからなる直線ブラシ部37を備えている。そして、直線ブラシ移動用シリンダ39は保持部材33に取り付けられている。
【0037】
ここで、回転ブラシ部31と直線ブラシ部37の設置位置については、回転ブラシ32の回転中心が前進・後退する方向線の延長線上(すなわち、回転ブラシ部移動用シリンダ34および全体移動用シリンダ35が延伸する方向線の延長線上)にロール11の中心Oが位置するようにし、直線ブラシ38の中央部が前進・後退する方向線(すなわち、直線ブラシ移動用シリンダ39が延伸する方向線)は、回転ブラシ32の回転中心が前進・後退する方向線(すなわち、回転ブラシ部移動用シリンダ34および全体移動用シリンダ35が延伸する方向線)と平行になるようにするか、または、直線ブラシ38の中央部が前進・後退する方向線の延長線上(すなわち、直線ブラシ移動用シリンダ39が延伸する方向線の延長線上)にロール11の中心Oが位置するようにし、回転ブラシ32の回転中心が前進・後退する方向線(すなわち、回転ブラシ部移動用シリンダ34および全体移動用シリンダ35が延伸する方向線)は、直線ブラシ38の中央部が前進・後退する方向線(すなわち、直線ブラシ移動用シリンダ39が延伸する方向線)と平行になるようにすることが考えられる。
【0038】
これについては、前述した実施形態1において述べたと同様に、回転ブラシ32がブラッシング(掻き取り)動作でロール11を美麗化し、直線ブラシ38がワイピング(拭き取り)動作でロール11を美麗化することを考慮して、この実施形態2では、回転ブラシ32の回転中心が前進・後退する方向線の延長線上(回転ブラシ部移動用シリンダ34および全体移動用シリンダ35が延伸する方向線の延長線上)にロール11の中心Oが位置するようにしている。その際に、直線ブラシ38が前進・後退する方向線(直線ブラシ移動用シリンダ39が延伸する方向線)が、回転ブラシ32の回転中心が前進・後退する方向線(回転ブラシ移動用シリンダ34および全体移動用シリンダ35が延伸する方向線)から離れる距離(オフセット量)δは、160mm以下とすることが好ましい。
【0039】
そして、上記のように構成されたブラシ装置30においては、以下のような動作によって、ロール11表面の美麗化を行う。
【0040】
まず、ロール11の組替を行う際には、回転ブラシ32と直線ブラシ38を図4に示した待機位置に位置させる。すなわち、回転ブラシ部移動用シリンダ34をその後退限まで後退させるとともに、全体移動用シリンダ35をその後退限まで後退させる。なお、直線ブラシ移動用シリンダ39もその後退限まで後退させておく。
【0041】
次に、ロール11の組替が終了したら、回転ブラシ32と直線ブラシ38を図5に示した準備位置に位置させる。すなわち、回転ブラシ部移動用シリンダ34をその後退限まで後退させた状態のまま、全体移動用シリンダ35をその前進限まで前進させる。なお、直線ブラシ移動用シリンダ39はその後退限まで後退させた状態のままである。
【0042】
その後、図5に示した準備位置に位置した状態から、ロール11に噛込む異物(付着する異物)の種類に応じて、回転ブラシ32と直線ブラシ38を使い分けるようにする。
【0043】
すなわち、ロール11を通過する鋼材が、例えば、Si含有量が0.3質量%以上の高張力鋼材のように、ロール11に噛込む異物として、微粉体状の粉が多い場合には、それに有効に働く回転ブラシ32を用いることとし、図6に示すように、回転ブラシ部移動用シリンダ34を延伸させて、回転ブラシ32をロール11表面に押し当て、ロール11表面のブラッシング(掻き取り)を行う。
【0044】
一方、ロール11を通過する鋼材が、例えば、Si含有量が0.3質量%未満の高張力鋼材のように、ロール11に噛込む異物として、剥離した比較的大きなスケール片が多い場合には、それに有効に働く直線ブラシ38を用いることとし、図7に示すように、直線ブラシ移動用シリンダ39を延伸させて、直線ブラシ38をロール11表面に押し当て、ロール11表面のワイピング(拭き取り)を行う。
【0045】
また、ロール11に噛込む異物として、微粉体状の粉と剥離した比較的大きなスケール片の両方ともが多い場合や、さらに粘着質な油脂も多い場合には、回転ブラシ32と直線ブラシ38の両方を用いることとし、図8に示すように、回転ブラシ部移動用シリンダ34を延伸させて、回転ブラシ32をロール11表面に押し当てた後、直線ブラシ移動用シリンダ39を延伸させて、直線ブラシ38をロール11表面に押し当てる。これによって、回転ブラシ32でロール11表面のブラッシング(掻き取り)を行うとともに、直線ブラシ38でロール11表面のワイピング(拭き取り)を行う。
【0046】
このようにして、この実施形態2においては、他の装置(例えば、上ワークロール11の組替レール、上バックアップロール12のチョック)との干渉を回避しながら、ロール11の表面を的確に美麗化することができる。
【0047】
[実施形態3]
図4〜図8に示した本発明の実施形態2におけるブラシ装置30は、回転ブラシ部移動用シリンダ34と全体移動用シリンダ35の2本の移動用シリンダを直列に配置した構造となっているが、スキンパスミル10の上ワークロール11に対して設置する場合に、2本の移動用シリンダのガイドフレーム(図示せず)を保持する機構が重厚になって小型化・軽量化できない場合がある。
【0048】
そこで、この実施形態3においては、回転ブラシ部移動用シリンダ34と全体移動用シリンダ35の2本の移動用シリンダによる動作を1本の移動用シリンダで行わせることによって、装置の小型化・軽量化を図るようにしている。
【0049】
図9は、本発明の実施形態3におけるブラシ装置40を示す図である。
【0050】
図9に示すように、この実施形態3におけるブラシ装置40は、回転ブラシ42とその回転ブラシ42を保持する保持部材43とからなる回転ブラシ部41と、その回転ブラシ部41をロール11の表面に向かって移動(前進・後退)させる回転ブラシ部移動用シリンダ44と、回転ブラシ部移動用シリンダ44のロッドの延伸位置を所定位置にて停止・保持するためのストッパ機構(ストッパ部45、ストッパ受け部材46)と、直線ブラシ48とその直線ブラシ48をロール11の表面に向かって移動(前進・後退)させる直線ブラシ移動用シリンダ49とからなる直線ブラシ部47を備えている。そして、直線ブラシ移動用シリンダ49は保持部材43に取り付けられている。
【0051】
なお、上記のストッパ機構については、ストッパ部45がストッパ45aとそのストッパ45aを回転ブラシ部移動用シリンダ44に向かって移動(前進・後退)させるストッパ移動用シリンダ45bとを有しており、ストッパ受け部材46が回転ブラシ部移動用シリンダ44のロッドの延伸と一緒に移動するように取り付けられていて、ストッパ受け部材46の先端がストッパ受け46aになっている。
【0052】
ここで、回転ブラシ部41と直線ブラシ部47の設置位置については、回転ブラシ42の回転中心が前進・後退する方向線の延長線上(すなわち、回転ブラシ部移動用シリンダ44が延伸する方向線の延長線上)にロール11の中心Oが位置するようにし、直線ブラシ48の中央部が前進・後退する方向線(すなわち、直線ブラシ移動用シリンダ49が延伸する方向線)は、回転ブラシ42の回転中心が前進・後退する方向線(すなわち、回転ブラシ部移動用シリンダ44が延伸する方向線)と平行になるようにするか、または、直線ブラシ48の中央部が前進・後退する方向線の延長線上(すなわち、直線ブラシ移動用シリンダ49が延伸する方向線の延長線上)にロール11の中心Oが位置するようにし、回転ブラシ42の回転中心が前進・後退する方向線(すなわち、回転ブラシ部移動用シリンダ44が延伸する方向線)は、直線ブラシ48の中央部が前進・後退する方向線(すなわち、直線ブラシ移動用シリンダ49が延伸する方向線)と平行になるようにすることが考えられる。
【0053】
これについては、前述した実施形態1、2において述べたと同様に、回転ブラシ42がブラッシング(掻き取り)動作でロール11を美麗化し、直線ブラシ48がワイピング(拭き取り)動作でロール11を美麗化することを考慮して、この実施形態3でも、回転ブラシ42の回転中心が前進・後退する方向線の延長線上(回転ブラシ部移動用シリンダ44が延伸する方向線の延長線上)にロール11の中心Oが位置するようにしている。その際に、直線ブラシ48が前進・後退する方向線(直線ブラシ移動用シリンダ49が延伸する方向線)が、回転ブラシ42の回転中心が前進・後退する方向線(回転ブラシ移動用シリンダ44が延伸する方向線)から離れる距離(オフセット量)δは、160mm以下とすることが好ましい。
【0054】
そして、上記のように構成されたブラシ装置40においては、以下のような動作によって、ロール11表面の美麗化を行う。
【0055】
まず、ロール11の組替を行う際には、回転ブラシ42と直線ブラシ48を図9に示した待機位置に位置させる。すなわち、回転ブラシ部移動用シリンダ44をその後退限まで後退させる。その際、ストッパ移動用シリンダ45bを後退させて、ストッパ45aがストッパ受け46aに接触しない状態にしておく。また、直線ブラシ移動用シリンダ49もその後退限まで後退させておく。
【0056】
次に、ロール11の組替が終了したら、回転ブラシ42と直線ブラシ48を図10に示した準備位置に位置させる。すなわち、回転ブラシ部移動用シリンダ44を所定位置(準備位置)まで前進させる。そして、ストッパ移動用シリンダ45bを前進させて、ストッパ45aをストッパ受け46aに接触させて、回転ブラシ部移動用シリンダ44のロッドをその位置(準備位置)で停止・保持する。なお、直線ブラシ移動用シリンダ49はその後退限まで後退させた状態のままである。
【0057】
その後、図10に示した準備位置に位置した状態から、ロール11に噛込む異物(付着する異物)の種類に応じて、回転ブラシ42と直線ブラシ48を使い分けるようにする。
【0058】
すなわち、ロール11を通過する鋼材が、例えば、Si含有量が0.3質量%以上の高張力鋼材のように、ロール11に噛込む異物として、微粉体状の粉が多い場合には、それに有効に働く回転ブラシ42を用いることとし、図11に示すように、回転ブラシ部移動用シリンダ44を延伸させて、回転ブラシ42をロール11表面に押し当て、ロール11表面のブラッシング(掻き取り)を行う。
【0059】
一方、ロール11を通過する鋼材が、例えば、Si含有量が0.3質量%未満の高張力鋼材のように、ロール11に噛込む異物として、剥離した比較的大きなスケール片が多い場合には、それに有効に働く直線ブラシ48を用いることとし、図12に示すように、直線ブラシ移動用シリンダ49を延伸させて、直線ブラシ48をロール11表面に押し当て、ロール11表面のワイピング(拭き取り)を行う。
【0060】
また、ロール11に噛込む異物として、微粉体状の粉と剥離した比較的大きなスケール片の両方ともが多い場合や、さらに粘着質な油脂も多い場合には、回転ブラシ42と直線ブラシ48の両方を用いることとし、図13に示すように、回転ブラシ部移動用シリンダ44を延伸させて、回転ブラシ42をロール11表面に押し当てた後、直線ブラシ移動用シリンダ49を延伸させて、直線ブラシ48をロール11表面に押し当てる。これによって、回転ブラシ42でロール11表面のブラッシング(掻き取り)を行うとともに、直線ブラシ48でロール11表面のワイピング(拭き取り)を行う。
【0061】
このようにして、この実施形態3においては、装置の小型化・軽量化を図りながら、ロール11の表面を的確に美麗化することができる。
【0062】
なお、上記の実施形態1〜3においては、回転ブラシを上方に配置し、直線ブラシを下方に配置しているが、場合によっては、直線ブラシを上方に配置し、回転ブラシを下方に配置するようにしてもよい。
【0063】
また、上記の実施形態2、3においては、回転ブラシ部に直線ブラシ部を取り付けるようにしているが、場合によっては、直線ブラシ部に回転ブラシ部を取り付けるようにしてもよい。
【0064】
そして、上記の実施形態1〜3においては、スキンパスミルの上ワークロールに適用する場合を例にしているが、その他のロールに対しても同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
10 スキンパスミル
11 上ワークロール
12 上バックアップロール
13 下ワークロール
14 下バックアップロール
18 回転ブラシ
19 直線ブラシ
20 ブラシ装置
21 回転ブラシ部
22 回転ブラシ
23 回転ブラシ移動用シリンダ
27 直線ブラシ部
28 直線ブラシ
29 直線ブラシ移動用シリンダ
30 ブラシ装置
31 回転ブラシ部
32 回転ブラシ
33 保持部材
34 回転ブラシ部移動用シリンダ
35 全体移動用シリンダ
37 直線ブラシ部
38 直線ブラシ
39 直線ブラシ移動用シリンダ
40 ブラシ装置
41 回転ブラシ部
42 回転ブラシ
43 保持部材
44 回転ブラシ部移動用シリンダ
45 ストッパ部
45a ストッパ
45b ストッパ移動用シリンダ
46 ストッパ受け部材
46a ストッパ受け(ストッパ受け部材の先端)
47 直線ブラシ部
48 直線ブラシ
49 直線ブラシ移動用シリンダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールの表面を美麗化するためのブラシ装置であって、回転ブラシと直線ブラシの両方を備えていることを特徴とするロールのブラシ装置。
【請求項2】
回転ブラシを有する回転ブラシ部と、前記回転ブラシ部を前記ロールの表面に向かって前進・後退させる回転ブラシ部移動用シリンダと、該回転ブラシ部移動用シリンダのロッドの延伸位置を所定位置にて停止・保持するためのストッパ機構と、直線ブラシと該直線ブラシを前記ロールの表面に向かって前進・後退させる直線ブラシ移動用シリンダとを有する直線ブラシ部とを備えており、前記直線ブラシ部が前記回転ブラシ部に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のロールのブラシ装置。
【請求項3】
前記回転ブラシの回転中心が前進・後退する延長線上に前記ロールの中心が位置するように設置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のロールのブラシ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−13927(P2013−13927A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149383(P2011−149383)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)