説明

ロールの排液方法と、この排液方法に使用するロール

【課題】長期間に亘って、被洗浄面に付着した液体を確実に除去、搾取、洗浄、及び被洗浄面に液体を塗布することができるロールの排液方法と、コストを抑えて前記ロールを安価にて提供する。
【解決手段】本体部7、及び前記本体部7の両端に連接される継ぎ手部A8及び継ぎ手部B9を有する台座3、及び前記本体部7の外周に不織布からなるロール部2が形成されたロール1と、前記継ぎ手部A8あるいは前記継ぎ手部B9の少なくとも一方に配管10を介して連通されるコンプレッサー11とを有して構成される排液機能を備えたロール1の排液方法で、前記ロール1の排液方法は、前記コンプレッサー11により圧縮流体を前記台座3に送出し、前記圧縮流体の圧力を利用して前記ロール部2に吸収された液体を、前記圧縮流体と共に外部に排出するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体の除去、搾取、洗浄、及び前記被洗浄面に水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を塗布する為のロールの排液方法と、この排液方法に使用するロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のロールに関しては、不織布ロール、ゴムロール等が一般的に使用され、例えば、不織布ロールに関しては、極細繊維が立体的に絡合された不織布の空隙部に高分子弾性体が多孔質構造で充填された繊維質シートからなるディスク状物を多数枚重畳してなる吸液ロール(特許文献1)がある。
【0003】
特許文献1の吸液ロールは、吸液に必要な外部装置を備えていない為、不織布層からなるロール部が徐々に吸液飽和状態となる。吸液に必要な外部装置を備えていないロールにおける液体除去機能は、ロールにコンプレッサー等を介してエアー圧、油圧等の一定の圧力がかかりながら回転することにより、液体を被洗浄面の両端部から流し去るダム機能と、ロールが回転しながら圧力により圧縮される圧縮ゾーンにおいて、ロール部の空隙部に吸収された液体を被洗浄面に一旦放出し、次いでロールが圧力による圧縮から開放される開放ゾーンにおいて、不織布を形成する繊維質の毛細管現象により被洗浄面の液体がロール部に吸い上げられ、ロール部の空隙部に放出される吸排機能とから構成されている。前記ダム機能はゴムロール等にも発現する機能であるが、前記吸排機能は不織布ロールに特有の機能である。すなわち、不織布に充填された高分子弾性体が弾性変形する為、ロール部の空隙率が前記圧縮ゾーンで0%となり、前記開放ゾーンで元の空隙率に復元することにより発現する。しかし、液体がロール部の空隙部に吸収、及び空隙部から排出されることを繰り返すと、高分子弾性体は液体と接触することにより、徐々に膨潤して弾性率が低下し、前記開放ゾーンで元の空隙率に復元することができなくなる。その為、空隙率が減少したロール部の空隙部には、繊維質の毛細管現象により吸い上げられた液体の全量を放出することができず、ロール部は吸液飽和状態となり、液体除去機能が長期間に亘って持続しないという問題を有していた。なお、高分子弾性体の弾性率と膨潤度の関係は、弾性率は膨潤度の3/5乗に反比例するというフローリーのゴム弾性の理論が知られている。
【0004】
上記問題を解決するために、吸液機能を備えた軸本体、及びこの軸本体に圧着重畳された不織布シートで構成する不織布ロールと、当該不織布ロールと配管を介し連通される真空ポンプとで構成される、送出、吸液機能を備えた不織布ロールを利用する吸液方法であって、この吸液方法は、吸引抵抗による真空値、及び毛細管の機能を高めることを意図して、前記不織布部をウエットな吸液状態にして使用し、かつこの使用状態で前記軸本体に多数千鳥状等に開設した透孔を介して、前記吸液状態にある不織布部内部に於いて、不織布ロール外表面方向に向かってほぼ倒円錐形状に有効な吸液、送液毛細管部を作用せしめるとともに、前記真空吸引力の一部が前記不織布ロールの外表面に於いて重畳作用するように構成したことにより、前記真空吸引力を当該不織布ロールの外表面で均一作用させる構成とした不織布ロールを利用する吸液方法と、この吸液方法に使用する吸液ロール装置(特許文献2)が考案されている。
【0005】
また、透孔、及び空洞部を備えた軸本体と、この軸本体に設けた毛細管作用及び吸水作用をなすポーラス孔を多数有するロール本体と、前記軸本体の連通孔に設けた真空接続配管系とを備えた吸液ロールを利用して被処理物の流体を真空吸引排液する排液方法において、この空洞部の内壁面に形成される水膜、層状の水膜、水壁等の遮蔽流域を、外部気体の間欠的な強制導入による増速吸引で崩し、前記内壁面の透孔を開口して、真空吸引による排液機能を回復する構成とした高速対応吸液ロールの排液機能回復方法と、その排液装置(特許文献3)がある。
【0006】
【特許文献1】特開昭61−262586号公報
【特許文献2】特開平7−120145号公報
【特許文献3】特許第3224461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の不織布ロールを利用する吸液方法と、この吸液方法に使用する吸液ロール装置は、不織布ロールの有するダム機能と吸排機能に加えて、ロール部に吸収された液体は、吸引ポンプにより、透孔、空洞部、貫通孔を介して不織布ロール外部に排出されるので、吸液に必要な外部装置を備えていない不織布ロールに比べて、ロール部の吸液飽和状態は抑制され、液体除去機能は長期間に亘って持続される。しかしながら、新たに吸引ポンプ等の外部装置を導入する必要があり、設備投資コストが高くなるという課題を有していた。
【0008】
また、不織布ロール外部に排出された液体は、吸引ポンプ装置側に吸引されることになる。排出された液体は、フィルター等により吸引ポンプ装置への流入を防いでいるものの、排出された液体の一部はフィルター等を通過して吸引ポンプ装置に流入し、徐々に真空吸引力が低下すると共に、吸引ポンプが故障しやすくなる為、吸引ポンプのメンテナンス費用、あるいは修理費用等のロールにかかるランニングコストが嵩むという課題も有していた。
【0009】
特許文献3の高速対応吸液ロールの排液機能回復方法と、その排液装置は、軸本体の空洞部に収れん部を備えるか、傘状のスペーサー等を設ける必要があり、軸本体の構成が複雑となることから、軸本体の製作が難しく、且つ手間取るので、ロール本体のコスト高につながるという課題を有していた。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、長期間に亘って、被洗浄面に付着した液体を確実に除去、搾取、洗浄、及び被洗浄面に液体を塗布することができるロールの排液方法と、コストを抑えて前記ロールを安価にて提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決する為に、請求項1の発明のロールの排液方法は、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体の除去、搾取、洗浄、及び前記被洗浄面に水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を塗布する為のロールにおいて、本体部、及び前記本体部の両端に連接される継ぎ手部A及び継ぎ手部Bを有する台座、及び前記本体部の外周に不織布からなるロール部が形成されたロールと、前記継ぎ手部Aあるいは前記継ぎ手部Bの少なくとも一方に配管を介して連通されるコンプレッサーとを有して構成される排液機能を備えたロールの排液方法で、前記ロールの排液方法は、前記コンプレッサーにより圧縮流体を前記台座に送出し、前記圧縮流体の圧力を利用して前記ロール部に吸収された液体を、前記圧縮流体と共に外部に排出する方法であって、前記配管が装着される前記継ぎ手部A及び/又は前記継ぎ手部B、及び前記本体部には中空部が形成されてあり、前記圧縮流体は、前記コンプレッサーから前記配管を介して、前記継ぎ手部A及び/又は前記継ぎ手部B、前記本体部の順に前記中空部に流入し、前記本体部の外周に前記中空部に連通するよう形成された孔部を介して前記ロール部に流出すると共に、前記ロール部に吸収された液体と共に外部に排出される構成とした前記ロールを使用するもので、例えば、ロールの非稼動時に、コンプレッサーから中空部に向かって圧縮流体を噴射し、中空部に圧縮流体が充満すると、圧縮流体は、本体部の外周に形成された孔部からロール部に向けて流出する。そして、ロール部に吸収された液体は、圧縮流体と共にロールの外部に排出される。従って、不織布からなるロール部は、ロールの吸排機能により吸い上げられる液体を、吸収する空隙が常に確保されるので、ロール部の吸液飽和状態が抑制され、ロールは長期間に亘って、被洗浄面に付着した液体を、確実に除去、搾取、洗浄することができる。
【0012】
なお、被洗浄面に液体を塗布する場合には、ロールの稼動時に、コンプレッサーから中空部に圧縮流体を送出することにより、ロール部から液体を排出すれば、被洗浄面に確実に液体を塗布することができる。
【0013】
また、ロール部の表面に高粘度の液体及び/又は鉄粉、アルミ粉等の金属粉の異物が付着し、ロール部の表面が目詰まりを起こして、吸排機能に支障をきたした場合においても、ロール部の内部から排出される圧縮流体、及び液体と共に、ロール部の表面に付着した高粘度の液体及び/又は鉄粉、アルミ粉等の金属粉の異物も、ロール部の表面から除去される。すなわち、高粘度の液体は、ロール部から排出される液体に溶解すると共に押し流され、金属粉は圧縮流体の噴霧する力により取り除かれる。その為、ロールは長期間に亘って、吸排機能を発揮することができるので、ロールの耐用年数の向上につながる。
【0014】
また、中空部に噴射される圧縮流体は、ロールにエアー圧、油圧等の圧力を加えるシリンダーに連結されるコンプレッサーから導入すればよい。その為、吸引ポンプ等の外部装置を、新規に用意する必要がないので、設備投資コストの低減につながり、安価にてロールを提供することができる。
【0015】
請求項2の発明のロールは、特に、請求項1のロールの排液方法に使用するロールにおいて、本体部の外周に流体排出拡大溝部が形成されてあると共に、前記流体排出拡大溝部に孔部が形成されてあるもので、中空部から孔部を介してロール部に流出する圧縮流体は、流体排出拡大溝部を通してロール部に流れ込む。その為、本体部の外周に流体排出拡大溝部が形成されておらず、孔部のみが形成されている形態の台座が用いられている場合に比べ、均一に圧縮流体がロール部に流入するので、ロール部からの液体の排出機能が向上する。
【0016】
また、均一に圧縮流体がロール部に流入することから、ロール部に吸収された液体が、外部に排出される際の時間を短縮できると共に、ロール部の液体を、ロール部の全域に亘って、より均一に排出できる。
【0017】
請求項3の発明のロールは、特に、請求項2のロールにおいて、ロール部は本体部の外周に不織布からなる複数の概円環状のロール片が積層されて形成されてあるもので、ロールの使用目的に応じて、ロール片の本体部にたいする積層枚数を調整することにより、ロール部の表面の硬度を任意に設定することができる。すなわち、ロール片の積層枚数が多ければ硬度は高くなり、少なければ硬度は低くなる。なお、硬度とは物質の硬さを表わし、JISK6253加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法に記載のデュロメータ硬さ試験により測定した硬度である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明のロールの排液方法は、ロールは長期間に亘って、被洗浄面に付着した液体を、確実に除去、搾取、洗浄、及び被洗浄面に確実に液体を塗布することができる。また、ロールの耐用年数の向上を図ることができる。さらに、安価にてロールを提供することができる。
【0019】
請求項2の発明のロールは、ロール部からの液体の排出機能が向上すると共に、ロール部からの液体の排出時間を短縮することができる。
【0020】
請求項3の発明のロールは、ロールの使用目的に応じて、ロール片の本体部にたいする積層枚数を調整することにより、ロール部の表面の硬度を任意に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)
図1は、本発明の第1の実施例におけるロールの排液方法に用いられる排液装置の正面図、図2(a)は、台座を構成する本体部の部分正面図、図2(b)は、ロール片を前面側から見た斜視図、図3は、本発明の第1の実施例におけるロールの断面図である。
【0023】
図1において、ロール1は、台座3、止め金具5、プレート6、及び複数のロール片4からなるロール部2より構成されている。台座3は、鉄等の金属材料からなり、外周にロール部2が形成されてある本体部7、及び本体部7の一方の端部に連接される継ぎ手部A8は中空状であり、本体部7の他方の端部に連接される継ぎ手部B9は中実状である。ロール部2は、複数のロール片4が台座3を構成する本体部7の外周に積層されると共に、重ね合わされて形成されてあり、両側から止め金具5、及びプレート6にて挟み付けられて形成されてある。止め金具5には、スナップリングが使用されている。
【0024】
継ぎ手部A8の一方の端部には、ロータリージョイント12が接続され、ロータリージョイント12にはコンプレッサー11に接続された配管10が装着され、本発明のロール1の排液方法に用いられる排液装置が構成される。なお、ロータリージョイント12を設けずに、コンプレッサー11に接続された配管10を直接、継ぎ手部A8及び/又は継ぎ手部B9の一方の端部に接続する形態も採用できる。
【0025】
図2(a)、及び図3において、台座3を構成する本体部7は、外周に傾斜方向の異なる2本の流体排出拡大溝部14が螺旋状に巻き回されて形成されてあると共に、2本の流体排出拡大溝部14の交点に、千鳥状をなして複数の円形の孔部13が設けられている。孔部13は、本体部7の有する中空部19に連通している。また、継ぎ手部A8は、中空部19が設けられてあると共に、一方の端部には、ロータリージョイント12が接続されるネジ部20が形成されてあり、他方は本体部7の一方の端部に連接されている。中実状の継ぎ手部B9の一方の端部も本体部7の他方の端部に連接し、台座3が構成されている。
【0026】
なお、流体排出拡大溝部14の本体部7の外周にたいする形態は、螺旋状に限定されることなく、例えば、台座3の軸心方向に略平行、あるいは円環状等に形成されてあっても構わない。また、圧縮流体が送出するのであれば、孔部13の設定位置は、2本の流体排出拡大溝部14の交点に限らず、流体排出拡大溝部14の任意の位置に設けることができ、孔部13の形状も円形以外にも、概三角形、概四角形等の多角形状、星型、十字型等の異形断面形状であってもよい。
【0027】
また、本体部7の外周に流体排出拡大溝部14を形成することなく、孔部13のみを設けてもよい。本体部7の外周に孔部13のみが形成されている場合、流体排出拡大溝部14を形成する必要がないので、本体部7の製作が容易となり、ロール1の製作コストの低減を図ることができる。
【0028】
図2(b)において、ロール片4は、中心部に穴部17、外周に端部18が形成された概円環状の不織布15からなる。不織布15は、複数本の繊維16を有する。なお、ロール部2は、ロール1に使用する総数のロール片4より形成される。また、特に図示しないが、台座3にたいするロール片4の位置ズレを防止する為に、ロール片4の内周部に凹状の溝部を形成すると共に、台座3を構成する本体部7の軸心方向の外周に凸状のキーを装着して、前記凹状の溝部を凸状のキーに嵌合挿入することにより、ロール片4を、本体部7の外周に積層してもよい。
【0029】
次に、ロール1の製作方法について説明する。
【0030】
最初に、外周に孔部13、流体排出拡大溝部14が形成された中空部19を有する略円筒形状の本体部7を用意する。次いで、中空部19を有する中空状の継ぎ手部A8、及び中実状の継ぎ手部B9を、本体部7の両端部に挿入し、圧入、あるいは焼きばめすると共に、溶接して台座3を形成する。本体部7と継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9の連接方法は、ネジ止め、ボルト締め等の方法であっても構わない。
【0031】
次に、複数本の繊維16を有する平板状の不織布15を用意し、不織布15をトムソン型、あるいはレーザーカッター等を用いて、穴部17、及び端部18を有する概円環状のロール片4に打ち抜く。次いで、ロール片4を複数重ね合わせて、穴部17を台座3にたいして貫通させ、本体部7の外周に積層する。そして、台座3の長手方向からプレス機にて所定長さだけ圧縮させた後、止め金具5、及びプレート6にて複数のロール片4を挟み付けて固定する。次に、所定時間放置することにより、重ね合わせた複数のロール片4の内部応力を均一化させ、端部18を切削加工及び研磨加工し、台座3を構成する本体部7の外周にロール部2を形成してロール1が製作される。
【0032】
ロール部2の表面の硬度は、40°〜95°程度に設定されるのが望ましい。硬度が40°未満の場合、硬度が低すぎて、被洗浄面の端面が繰り返しロール部2に当接すると、早期にロール部2が摩耗する。また、硬度が95°を超えると、硬度が高すぎて、ロール1の弾力性が劣り、効果的にダム機能、及び吸排機能を発揮することが難しくなる。なお、硬度とは物質の硬さを表わし、JISK6253加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法に記載のデュロメータ硬さ試験により測定した硬度である。
【0033】
また、ロール部2は、複数の概円環状のロール片4を、台座3を構成する本体部7の外周に積層して形成する以外にも、平板状の不織布15を、本体部7の外周に巻き付けて形成することもできる。
【0034】
孔部13の外径、流体排出拡大溝部14の幅、深さについては、特に限定されるものではないが、例えば、孔部13の外径は1〜8mm程度、流体排出拡大溝部14の幅は2〜10mm程度、深さは0.1〜3mm程度に設定されるのが望ましい。孔部13の外径が1mm未満の場合、径が小さすぎて効率よく圧縮流体をロール部2に流出することができず、8mmを超える場合、径が大きすぎて一孔あたりの圧縮流体の噴出する力が弱くなる。また、流体排出拡大溝部14の幅が2mm未満の場合、幅が狭すぎて効率よく圧縮流体が流れることができず、10mmを超える場合、広すぎて流体排出拡大溝部14を形成するのが難しくなる。流体排出拡大溝部14の深さが0.1mm未満の場合、浅すぎて効率よく圧縮流体が流れることができず、3mmを超える場合、深すぎて流体排出拡大溝部14を形成するのに手間取る。
【0035】
次に、ロール片4を構成する不織布15の製造方法について、いくつか述べる。
【0036】
第1の方法は、複数本の繊維16を、平板状に集積させて布状体を形成し、前記布状体を複数枚、重ね合わせた後、特殊な針を突き刺して、3次元に絡合された不織布15を得る。前記の製造方法は、一般的には、ニードルパンチングと呼ばれている。また、布状体はウエッブと呼ばれている。得られた不織布15は、ポリウレタン溶液中に含浸され、不織布15にポリウレタンを充填させる。次いで、ポリウレタンを充填させた不織布15を、水中に浸漬させると共に、水中に二酸化炭素を注入し、炭酸発泡させることにより、不織布15、及び極微細な気泡を有する多孔質化されたポリウレタンよりなる平板状の二重構造体を形成する。なお、不織布15を形成する繊維16には、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、別名ウレタン弾性糸とも呼ばれるスパンデックス繊維等が単独使用、あるいは併用される。
【0037】
第2の方法は、複数本の繊維16を、平板状に集積させて布状体となるウエッブを形成し、ニードルパンチングにより3次元に絡合された不織布15を得る。得られた不織布15にたいして、架橋剤を配合した高分子弾性体をスプレー、浸漬、含浸等の方法を用いて付着させ、加熱することにより不織布15を形成する繊維16の間を結合させるもので、前記の製造方法により得られた不織布15は、一般的にケミカルボンド法不織布と呼ばれている。なお、不織布15を形成する繊維16には、綿、レーヨン、セルロース等の天然繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル等の合成樹脂繊維が単独使用、あるいは併用される。また、高分子弾性体には、ニトリルゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、ウレタンゴム、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等が単独使用、あるいは併用される。また、架橋剤は、前記高分子弾性体の分子間に橋架け構造を形成し、一段と優れた弾力性を高分子弾性体に付与する目的で配合されるものであり、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメラミン樹脂、ブロックイソシアネート等のイソシアネート樹脂、脂肪族エポキシ等のエポキシ樹脂を単独、あるいは併用して用いることができる。
【0038】
第3の方法は、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂を溶融紡糸すると共に、得られた熱可塑性樹脂繊維にたいして100〜150kgf程度の高圧水流を噴射することにより、繊維16を絡合させる。次いで、架橋剤を配合した高分子弾性体をスプレー、浸漬、含浸等の方法を用いて繊維16に付着させ、加熱することにより不織布15を形成するもので、前記の製造方法により得られた不織布15は、一般的に水流絡合法不織布と呼ばれている。
【0039】
上記に示した不織布15の製造方法は代表的な例であり、上記以外にも、例えば、熱溶融した合成樹脂を連続的に紡糸して繊維16を形成し、繊維16を延伸しながら捕集ネット上に集積して熱ロールで加圧することにより繊維16を結合して不織布15を形成するスパンボンド法、熱溶融した合成樹脂を紡糸口から吐出する際、高温エアーで紡出し、捕集ネット上で加熱された繊維16を結合させて不織布15を形成するメルトブロー法、塩化メチレン、フロン等の低沸点溶剤中に合成樹脂を溶解し、紡糸口から加熱、加圧状態で繊維16を紡糸すると同時に、前記低沸点溶剤を揮発させ、繊維16を捕集ネット上に集積し、熱ロールで加圧して繊維16を結合して不織布15を形成するフラッシュ紡糸法、融点の異なる複数の合成樹脂を溶融して融点の高い方の合成樹脂を紡糸して繊維16を形成し、溶融された融点の低い方の合成樹脂をバインダーとして繊維16を接着させて不織布15を形成するファイバーボンド法やサーマルボンド法等により製造された不織布15を用いても構わない。なお、不織布15は、ロール1に形成された場合、被洗浄面の繰り返しの当接に強く、繊維16がほつれ難く、織布、編物等の他の布帛をロール1に用いた場合に比べて、ロール1の耐久性の向上につながる。
【0040】
ロール片4に用いられる不織布15の選択については、ロール1が使用される雰囲気温度等の使用条件、コスト等を考慮して、適宜、決定されるものである。
【0041】
次に、図1、及び図3を用いて、本発明の第1の実施例におけるロール1の排液方法と、この排液方法に使用するロール1の動作、作用について説明する。なお、ロール1は、鋼板に付着した油分除去用として用いられるものとする。
【0042】
ロール1は、箱形の鋼板洗浄機(図示せず)に上下一対で設置され、コンプレッサー11から配管10を介して圧縮流体が、台座3の両端部、すなわち継ぎ手部A8、及び継ぎ手部B9に設置されたシリンダー(図示せず)に送出され、一定の圧力が加えられて回転駆動し、上下のロール1の間を、表面に油分が付着した鋼板が通過する。なお、圧縮流体は、ロール1の稼動時には、前記シリンダーに送出されるよう設定されており、ロール1の稼動の休息時に、ロール部2から油分を排出する際に、配管10の中途に設けられたコック(図示せず)を用いて、圧縮流体の送出経路が変更され、中空部19に送出されるよう設定されている。油分が付着した鋼板はロール部2と接触し、ロール部2を構成する不織布15からなるロール片4が有する繊維16の毛細管現象により、鋼板表面の油分はロール部2に吸い上げられると共に、ロール部2の空隙部に放出される。前記の如くの動作を繰り返す内に、ロール部2は弾性変形することが難しくなり、吸排機能が低下すると共に、内部には徐々に油分が溜まり、吸液飽和状態に近づき、油分除去性能が低下することになる。
【0043】
ロール部2の油分除去性能が低下してきたら、ロール1の稼動の休息時に、配管10の中途に設けられたコック(図示せず)を用いて、圧縮流体の送出経路を変更し、コンプレッサー11から配管10を介して、図3に示すように、圧縮流体を矢印の如く、中空部19に向けて噴射し、送出する。中空部19に圧縮流体が充満すると、圧縮流体は、本体部7の外周に形成された孔部13、及び流体排出拡大溝部14を介して、ロール部2に流出する。そして、ロール部2に吸収された油分は、圧縮流体と共にロール1の外部に排出される。従って、不織布15からなるロール部2は、ロール1の吸排機能により吸い上げられる油分を、吸収する空隙が常に確保されるので、ロール部2の吸液飽和状態が解消され、ロール1は長期間に亘って、鋼板に付着した油分を、確実に除去することができる。
【0044】
また、ロール部2の表面に高粘度の油分及び/又は鉄粉が付着し、ロール部2の表面が目詰まりを起こして、吸排機能に支障をきたした場合においても、ロール部2の内部から排出される圧縮流体、及び油分と共に、ロール部2の表面に付着した高粘度の油分及び/又は鉄粉も、ロール部2の表面から除去される。すなわち、高粘度の油分は、ロール部2から排出される油分に溶解すると共に、押し流され、鉄粉は圧縮流体の噴霧する力により取り除かれる。その為、ロール1は長期間に亘って、吸排機能を発揮することができるので、ロール1の耐用年数の向上につながる。
【0045】
また、中空部19に噴射される圧縮流体は、ロール1にエアー圧力を加えるシリンダー(図示せず)に連結されるコンプレッサー11から導入される。その為、吸引ポンプ等の外部装置を、新規に用意する必要がないので、設備投資コストの低減につながり、安価にてロール1を提供することができる。
【0046】
さらに、中空部19から孔部13を介してロール部2に流出する圧縮流体は、流体排出拡大溝部14を通してロール部2に流れ込む。その為、均一に圧縮流体がロール部2に流入するので、ロール部2からの油分の排出機能が向上する。
【0047】
また、均一に圧縮流体がロール部2に流入することから、ロール部2に吸収された油分が、外部に排出される際の時間の短縮につながる。
【0048】
また、ロール部2は本体部7の外周に不織布15からなる複数の概円環状のロール片4が積層されて形成されてあるので、ロール1の使用目的に応じて、ロール片4の本体部7にたいする積層枚数を調整することにより、ロール部2の表面の硬度を任意に設定することができる。
【0049】
次に、本発明のロール1のロール部2からの油分排出性能について、下記要領にて試験した。
【0050】
最初に、外径が50mm、内径が30mm、全長が190mmの鉄からなる略円筒形状の中空部19を有する本体部7を用意し、本体部7の外周に幅3mm、深さ1mmの流体排出拡大溝部14を2本、傾斜方向が異なるよう螺旋状に巻き回して形成すると共に、流体排出拡大溝部14の交点に、千鳥状をなすよう外径2mmの孔部13を複数個、設けた。次いで、本体部7の両端部に中空部19を有する中空状の継ぎ手部A8と、中実状の継ぎ手部Bを焼きばめ、及び溶接により連接し、一体化して全長が326mmとなる台座3を形成した。
【0051】
次に、見掛け密度が0.45g/cmの不織布から、外径が130mm、内径が50mmの概円環状のロール片4を複数枚、抜き取った。そして、ロール片4が有する穴部17を、上記の如く構成された台座3を構成する本体部7に積層し、ロール片4の端部18を、片肉5mmずつ切削加工、及び研磨加工して、外径が120mm、内径が50mm、全長が190mmのロール部2を有するロール1を1本製作した。なお、ロール部2の表面の硬度は60°に設定した。
【0052】
上記の如く構成されたロール1を、スギムラ化学工業製の洗浄油プレトンR−303Pに24時間、浸漬させ、ロール部2を吸液飽和状態とした。ロール部2には、約600ccの洗浄油が吸収された。
【0053】
次に、継ぎ手部Aの端部にロータリージョイント12を連接すると共に、ロータリージョイント12にコンプレッサー11から配された配管10を接続し、圧縮流体を中空部19に噴射した。そして、1時間後のロール1の重量を測定することにより、ロール部2からロール1の外部に放出された洗浄油の量を算出した。
【0054】
上記試験の結果、圧縮流体は、中空部19に充満すると、本体部7の外周に形成された孔部13、及び流体排出拡大溝部14を通してロール部2に流入し、ロール部2に吸収された洗浄油を、ロール1の外部に排出した。排出された洗浄油の量は、約590ccで、ロール部2に吸収されたほぼ全量の洗浄油が、ロール1の外部に排出されたことになり、本発明のロール1は、非常に優れた油分排出性能を有するものであった。
【0055】
(実施例2)
図4は、本発明の第2の実施例におけるロールの断面図である。なお、上記第1の実施例と同一部材については、詳しい説明を省略する。
【0056】
図4において、ロール21は、台座23、止め金具25、プレート26、及び複数のロール片24からなるロール部22より構成されている。台座23は、鉄等の金属材料からなり、外周にロール部22が形成される本体部27は中空部39を有する略円筒形状であり、本体部27の両端部に連接される継ぎ手部A28、及び継ぎ手部B29は中空部39を有する中空状であると共に、それぞれの一方の端部にはロータリージョイントが連接される為、ネジ部40が形成されている。ロール部22は、複数のロール片24が台座23を構成する本体部27の外周に積層されると共に、重ね合わされて形成されてあり、両側から止め金具25、及びプレート26にて挟み付けられて形成されてある。止め金具25には、スナップリングが使用されている。
【0057】
台座23を構成する本体部27の外周には、流体排出拡大溝部34が形成されてあると共に、流体排出拡大溝部34には円形の複数の孔部33が千鳥状に配されている。
【0058】
上記の如く構成されたロール21の動作、作用は下記の通りである。
【0059】
ロール21は、本体部27に連接する継ぎ手部A28、及び継ぎ手部B29が共に中空部39を有する中空状であり、コンプレッサーから配管を介して圧縮流体を、継ぎ手部A28、及び継ぎ手部B29の両方から本体部27の中空部39に向けて送出することができる。その為、本体部27に形成された中空部39に、圧縮流体が迅速に流入するので、ロール部22から液体が外部に排出される時間の大幅な短縮につながる。
【0060】
また、一層、効率よく確実にロール部22から液体を、ロール21の外部に排出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明のロールは、鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体の除去、搾取、洗浄、及び前記被洗浄面に水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を塗布する目的以外にも、優れた耐久性を必要とするロールとして、広く好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施例におけるロールの排液方法に用いられる排液装置の正面図
【図2】(a)台座を構成する本体部の部分正面図、(b)ロール片を前面側から見た斜視図
【図3】本発明の第1の実施例におけるロールの断面図
【図4】本発明の第2の実施例におけるロールの断面図
【符号の説明】
【0063】
1、21 ロール
2、22 ロール部
3、23 台座
4、24 ロール片
5、25 止め金具
6、26 プレート
7、27 本体部
8、28 継ぎ手部A
9、29 継ぎ手部B
10 配管
11 コンプレッサー
12 ロータリージョイント
13、33 孔部
14、34 流体排出拡大溝部
15 不織布
16 繊維
17 穴部
18 端部
19、39 中空部
20、40 ネジ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板、非鉄金属板、樹脂板、あるいはフィルム状からなる被洗浄面に付着した水分、油分、あるいは薬品成分等の液体の除去、搾取、洗浄、及び前記被洗浄面に水分、油分、あるいは薬品成分等の液体を塗布する為のロールにおいて、本体部、及び前記本体部の両端に連接される継ぎ手部A及び継ぎ手部Bを有する台座、及び前記本体部の外周に不織布からなるロール部が形成されたロールと、前記継ぎ手部Aあるいは前記継ぎ手部Bの少なくとも一方に配管を介して連通されるコンプレッサーとを有して構成される排液機能を備えたロールの排液方法で、前記ロールの排液方法は、前記コンプレッサーにより圧縮流体を前記台座に送出し、前記圧縮流体の圧力を利用して前記ロール部に吸収された液体を、前記圧縮流体と共に外部に排出する方法であって、前記配管が装着される前記継ぎ手部A及び/又は前記継ぎ手部B、及び前記本体部には中空部が形成されてあり、前記圧縮流体は、前記コンプレッサーから前記配管を介して、前記継ぎ手部A及び/又は前記継ぎ手部B、前記本体部の順に前記中空部に流入し、前記本体部の外周に前記中空部に連通するよう形成された孔部を介して前記ロール部に流出すると共に、前記ロール部に吸収された液体と共に外部に排出される構成とした前記ロールを使用することを特徴とするロールの排液方法。
【請求項2】
請求項1記載の構成よりなるロールの排液方法に使用するロールにおいて、本体部の外周に流体排出拡大溝部が形成されてあると共に、前記流体排出拡大溝部に孔部が形成されてあることを特徴とするロール。
【請求項3】
請求項2記載の構成よりなるロールにおいて、ロール部は本体部の外周に不織布からなる複数の概円環状のロール片が積層されて形成されてあることを特徴とするロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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