説明

ロールスタンドにおけるロールを操作及び/又は搬送する装置

【課題】複数のワークロール及び/又は複数のバックアップロールを操作及び/又は搬送するための装置について、その構造及び構成部材を簡易化すること。
【解決手段】複数のワークロール2,3及び/又は複数のバックアップロール4,5を操作及び/又は搬送するための装置であって、ワークロール2,3及び/又はバックアップロール4,5が、搬送路7,8上で移動する台車9によりロールスタンド6からロール作業空間10へもたらされるよう構成された前記装置において、互いに異なる高さh1,h2に配置された少なくとも2つの搬送路7,8を設けるとともに、この搬送路7,8上でワークロール2,3及びバックアップロール4,5のうちいずれかを台車9により移動可能とし、台車9を各搬送路7,8へもたらすために、少なくとも2つの互いに異なる高さh1,h2へ台車9を昇降させる昇降台11を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のワークロール及び/又は複数のバックアップロールを操作及び/又は搬送するための装置であって、前記ワークロール及び/又は前記バックアップロールが、搬送路上で移動する台車によりロールスタンドからロール作業空間へもたらされるよう構成された前記装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような装置は、ロールがその寿命に達し、再加工のためにロール作業空間へ移動させる必要がある場合に、ロールスタンドにおけるロールを交換するのに用いられる。ロールスタンドから取り出されたロールは新しいロールと交換され、生産が継続される。
【0003】
上記のような装置は従来から公知である。特許文献1にはこのような装置が開示されており、この装置においては、ロールを収容するための支持構造が交換用台車を備えている。また、この支持構造はその上側にレールを備えており、このレール上に台車が載置されてこの台車がロール交換用の空間部に対して垂直に移動可能となっている。なお、これに類似したものが特許文献2〜7にも開示されている。
【0004】
特許文献8にはロール交換装置が開示されており、このロール交換装置は、ロールスタンドが上下に重ねられた2つのプラットフォームを備えている。また、これらプラットフォームはそれぞれ一対のワークロールを収容するものとなっているとともに、ロールスタンドが垂直方向に摺動可能となっている。したがって、各プラットフォームが、ワークロールの移送のために、それぞれ当該プラットフォームとワークロールの間及び当該プラットフォームとロールベアリング部の間に互いに異なる高さに配置される。これにより、交換用ロールが交換時までロールスタンド近傍に保持されることになる。しかしながら、このような構造は、比較的複雑かつコストのかかるものとなっている。
【0005】
特許文献9では上記のようなものの構造上の複雑さが認識されており、この複雑さを低減するために、ロールスタンドにおける第1のロールセットを第1の台車で交換し、第2のロールセットを第2の台車で交換することが提案されている。なお、第1の台車及び第2の台車は、同様のものとなっているとともに、レール上を移動するようになっている。しかしながら、このようなものにおいては、各ロールを台車に連結するために構造上比較的複雑なものとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第1954416号明細書
【特許文献2】欧州特許第1951452号明細書
【特許文献3】国際公開第2005/089972号
【特許文献4】国際公開第2007/080091号
【特許文献5】欧州特許第1951453号明細書
【特許文献6】国際公開第03/015949号
【特許文献7】独国特許第3123933号明細書
【特許文献8】独国特許出願公開第1527628号明細書
【特許文献9】国際公開第2007/080087号
【特許文献10】欧州特許第1951453号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題にかんがみてなされたもので、その目的とするところは、上記のような装置について、その構造及び構成部材を簡易化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、互いに異なる高さに配置された少なくとも2つの搬送路を設けるとともに、この搬送路上でワークロール及びバックアップロールのうちいずれかを台車により移動可能とし、前記台車を前記各搬送路へもたらすために、少なくとも2つの互いに異なる前記高さへ前記台車を昇降させる昇降台を設けたことを特徴としている。
【0009】
また、前記搬送路の1つの高さを、少なくとも1つの前記ワークロールをロールスタンドから移動させることができるよう設定するのが好ましい。
【0010】
また、前記搬送路の1つの高さを、少なくとも1つの前記バックアップロールをロールスタンドから移動させることができるよう設定するのも好ましい。
【0011】
また、前記昇降台を前記搬送路の端部に配置することが考えられるが、この昇降台を搬送路の近傍に配置してもよい。
【0012】
また、前記搬送路のうち少なくとも1つを、垂直方向移動台に接するか、又は該垂直方向移動台と交差するよう配置することが考えられる。ここで、垂直方向移動台に関して、基本的に以下の2つの配置が可能である。すなわち、前記垂直方向移動台を前記昇降台と前記ロールスタンドの間に配置するか、前記昇降台を前記垂直方向移動台と前記ロールスタンドの間に配置する。
【0013】
また、前記各搬送路に前記台車を移動させるためのレールを設けることが考えられ、搬送されるロールあるいはロールセットは、このレール上で直にスライドするようになっている。
【0014】
また、前記バックアップロールを収容するために、ロール交換用支持台を設けることが考えられる。
【0015】
また、前記台車の移動方向に見た前記昇降台の長さは、前記台車の長さと同じか、又はこれよりわずかに長い長さとなっている。これにより、全体の構造を短縮化することが可能である。
【0016】
さらに、高さ方向の位置制御部を含んで構成された昇降手段により前記昇降台を昇降させるよう構成とすることが考えられ、これにより、台車を昇降台から搬送路へ問題なく戻すことができる。このとき、前記昇降台を、少なくとも1つの油圧式ピストン−シリンダシステムによって昇降させるよう構成することが考えられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ロールスタンドにおけるすべてのロールの交換に対して1つのみの台車で足りる上、これらロールの操作時又は搬送時に、これらロールを快適に扱うことが可能である。そして、1つのみの台車で様々なロールを操作するための特殊な連結機構を設ける必要もない。なお、本発明においては、4段式のロールスタンドが好ましいが、これに限定して適用されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ロールスタンドにおけるロールを操作又は搬送するための装置の側面図である。
【図2】図1による装置の平面図である。
【図3】ロールの軸方向に見たロール交換用支持台を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施例による装置の平面図である。
【図5a】ロールの搬送がまだなされていない状態における図4に示す装置の側面図である。
【図5b】ワークロールの搬送時における図4に示す装置の側面図である。
【図5c】バックアップロールの搬送時における図4に示す装置の側面図である。
【図6a】ロールの搬送がまだなされていない状態における本発明の第2の実施例による装置の側面図である。
【図6b】ワークロールの搬送時における図6aに示す装置の側面図である。
【図6c】上バックアップロールの搬送時における図6aに示す装置の側面図である。
【図6d】下バックアップロールの搬送時における図6aに示す装置の側面図である。
【図7】比較的低出力の台車を用いた本発明の第3の実施例による装置の平面図である。
【図8a】ロールの搬送がまだなされていない状態における図7に示す装置の側面図である。
【図8b】ワークロールの搬送時における図7に示す装置の側面図である。
【図8c】上バックアップロールの搬送時における図7に示す装置の側面図である。
【図8d】下バックアップロールの搬送時における図7に示す装置の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0020】
図1及び図2における右側にはロール格納部14が示されており、このロール格納部14には、ロールスタンド6が配置されている。一方、図1及び図2における左側には、ロール作業空間10が形成されている。これらロール格納部14及びロール作業空間10は、不図示の壁によって互いに分離されている。
【0021】
ロールスタンド6には下ワークロール2、上ワークロール3、下バックアップロール4及び上バックアップロール5が配置されており、これら下ワークロール2、上ワークロール3、下バックアップロール4及び上バックアップロール5のうちいずれかについて寿命となると、これがロール支持体6から取り外されて例えば再研磨などの再加工のためにロール作業空間10へ運搬される。このとき、装置1が使用される。
【0022】
上記各ロール2,3,4,5をロール格納部14からロール作業空間10へ運搬し、また、これらロール2,3,4,5をロール作業空間10からロール格納部14へ運搬するために、台車9が使用される。この台車9は、搬送路7,8上においてロールあるいはロールセットを直接レール上へ引き出すか、押し出すものとなっている。この台車の移動方向は、図1及び図2においては双方向矢印15で図示されている。すなわち、2つの搬送路7,8が存在し、これら搬送路7,8は、それぞれ垂直方向Vにおいて異なる高さh1,h2において配置されている。
【0023】
搬送路7の高さである第1の高さh1は、下ワークロール2あるいは上下ワークロール2,3をロールスタンド6から引き出したり、あるいはロールスタンド6へ押し戻したりするのに合わせて設定されている。また、搬送路8の高さである第2の高さh2は、下バックアップロール4をロールスタンド6から引き出したり、あるいはロールスタンド6へ押し戻したりするのに合わせて第1の高さh1の下方に設定されている。
【0024】
なお、上下バックアップロール4,5の交換に関して、これら上下バックアップロール4,5の操作に使用されるロール交換用支持台13が図3に示されている。このようなロール交換用支持台は本出願人による特許文献2に詳細に記載されている。
【0025】
本質的なことは、上記すべてのロール2,3,4,5の交換に必要な移動を行うために、1つの台車9のみが使用される点にある。これについて、本発明においては、昇降台11が設けられている。この昇降台11は、これが台車9をそれぞれ高さh1及び高さh2の搬送路7,8へもたらすよう昇降可能に設定されている。なお、この昇降台11の昇降動作は、図1において双方向矢印16で示されている。この昇降台11の安全のために、下方の空洞部にロック部材18が設けられている。
【0026】
また、図2に示すように、垂直方向移動台12も設けられており、この垂直方向移動台12により、垂直方向、すなわちこの図2において双方向矢印17で示す方向への移動かなされることになる。このような垂直方向への移動についての技術は本出願人による特許文献10に詳細に記載されている。
【0027】
本発明によれば、ロールスタンド6における上記すべてのロール2,3,4,5を操作あるいは搬送するために、1つのみの台車9を使用すれば足りる。その上、この台車9は、常に最適、かつ特別な連結装置を用いることなく使用可能であるため、当該台車9の構造を簡易化することも可能である。
【0028】
図4〜図8には本発明における合計3つの具体的な実施例が示されており、これら3つの実施例においては、すべてにおいて本発明による基本概念に基づいている。すなわち、互いに異なる高さh1,h2において配置された(少なくとも)2つの搬送路が設けられ、この搬送路7,8上において台車9により上記各ロール2,3,4,5が移動可能であり、昇降台11が設けられ、台車9を各搬送路7,8へもたらすことができるよう、この昇降台が、台車9を少なくとも2つの異なる高さh1,h2へ昇降させるよう設定されている。
【0029】
図4及び図5に示す第1の実施例においては、垂直方向移動台12が搬送路7,8の近傍に配置されている。すなわち、この垂直方向移動台12は、搬送路7,8と交差している。また、昇降台11は搬送路7,8の端部に配置されており、台車9は比較的大きな出力で動作するようになっている。図5bに示すように、上下ワークロール2,3は、レールへ直接移動されるようになっている。また、図5cに示すように、台車9は、上下バックアップロール4,5をロール交換用支持台13へもたらすことができるようになっている(図5cには、上側の搬送路7は図示していない。)。
【0030】
図6a〜図6dに示す第2の実施例も、第1の実施例(図4及び図5)と類似のものとなっている。特に、垂直方向移動台12は、搬送路7,8の近傍に配置されている。第2の実施例における平面図は、第1の実施例に対応したものとなっている(図4)。なお、この第2の実施例においては、台車9はより小さな力で動作するようになっている。これに応じて、上下ワークロール2,3を対として移動させることも可能である。ただし、図6c及び図6dに示すように、上下バックアップロール4,5については、これらを別々に台車9で移動させる必要がある。
【0031】
図7及び図8に示す第3の実施例は、第2の実施例に基づくものである。すなわち、比較的小さな力で動作する台車9が使用されている。これに応じて、ここでも、上下バックアップロール4,5が別々に移動される(図8c及び図8d)。この第3の実施例は、上記他の実施例に比して、昇降台11が搬送路7,8の端部ではなくこれら搬送路7,8の近傍に配置されている点で異なっている。すなわち、搬送路7,8は、昇降台11の向こう側で、ロールスタンド6から離間する後方へ延在している。
【0032】
また、垂直方向移動台12を基本的に昇降台11とロールスタンド6の間に配置することが考えられる一方、図7及び図8に示すこの第3の実施例においては、垂直方向移動台12は、昇降台11の向こう側で、搬送路7,8におけるロールスタンド6から離間した領域に配置されている。なお、この第3の実施例においては、垂直方向移動台12が図4〜図6に示す実施例の場合よりも小さく設定されている。
【0033】
また、台車9によって牽引される交換用台車の通常の移動速度は、1つのワークロールの運搬の場合には約200〜400mm/sであり、1つのバックアップロールの運搬の場合にも同様である。一方、2つのバックアップロールを運搬する場合には、上記速度は約50〜100mm/sとなるのが通常である。
【符号の説明】
【0034】
1 装置
2 下ワークロール
3 上ワークロール
4 下バックアップロール
5 上バックアップロール
6 ロールスタンド
7,8 搬送路
9 台車
10 ロール作業空間
11 昇降台
12 垂直方向移動台
13 ロール交換用支持台
14 ロール格納部
18 ロック部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワークロール(2,3)及び/又は複数のバックアップロール(4,5)を操作及び/又は搬送するための装置であって、前記ワークロール(2,3)及び/又は前記バックアップロール(4,5)が、搬送路(7,8)上で移動する台車(9)によりロールスタンド(6)からロール作業空間(10)へもたらされるよう構成された前記装置において、
互いに異なる高さ(h1,h2)に配置された少なくとも2つの搬送路(7,8)を設けるとともに、この搬送路(7,8)上で前記ワークロール(2,3)及び前記バックアップロール(4,5)のうちいずれかを前記台車(9)により移動可能とし、
前記台車(9)を前記各搬送路(7,8)へもたらすために、少なくとも2つの互いに異なる前記高さ(h1,h2)へ前記台車(9)を昇降させる昇降台(11)を設けた
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記搬送路(7)の1つの高さ(h1)を、少なくとも1つの前記ワークロール(2,3)を前記ロールスタンド(6)から移動させることができるよう設定したことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記搬送路(8)の1つの高さ(h2)を、少なくとも1つの前記バックアップロール(4,5)を前記ロールスタンド(6)から移動させることができるよう設定したことを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記昇降台(11)を前記搬送路(7,8)の端部に配置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記昇降台(11)を前記搬送路(7,8)の近傍に配置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記搬送路(7,8)のうち少なくとも1つを、垂直方向移動台(12)に接するか、又は該垂直方向移動台(12)と交差するよう配置したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記垂直方向移動台(12)を、前記昇降台(11)と前記ロールスタンド(6)の間に配置したことを特徴とする請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記昇降台(11)を、前記垂直方向移動台(12)と前記ロールスタンド(6)の間に配置したことを特徴とする請求項6記載の装置。
【請求項9】
前記各搬送路(7,8)に、前記台車(9)を移動させるためのレールを設けたことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記バックアップロール(4,5)を交換するために、ロール交換用支持台(13)を設けたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記台車(9)の移動方向に見た前記昇降台(11)の長さを、前記台車(9)の長さと同じか、又はこれよりわずかに長い長さとしたことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
高さ方向の位置制御部を含んで構成された昇降手段により前記昇降台(11)を昇降させるよう構成したことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記昇降台(11)を、少なくとも1つの油圧式ピストン−シリンダシステムによって昇降させるよう構成したことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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【図6d】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【公表番号】特表2013−501624(P2013−501624A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524143(P2012−524143)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004904
【国際公開番号】WO2011/018215
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(390035426)エス・エム・エス・ジーマーク・アクチエンゲゼルシャフト (320)