説明

ロール上の汚れ除去方法および除去装置

【課題】鋼帯等の金属板の処理設備において、金属板と接触するロールの表面に付着した汚れを作業性良く適切に除去することができる汚れ除去方法および除去装置を提供する。
【解決手段】鋼帯のアルカリ脱脂ラインのリンス設備において、上バックアップロール22Aの表面の汚れを除去するために、上バックアップロール22Aの表面に付着した汚れ50を掻き取るドクターナイフ31と、ドクターナイフ31で掻き取った汚れ50を受け止める受け樋32と、受け樋32内にリンス液35を噴射して、受け樋32内の汚れ50を鋼帯1の板道外に排出するリンス液噴射手段(ノズルヘッダ33、スプレーノズル34)とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼帯等の金属板の処理設備において、金属板と接触するロールの表面に付着した汚れを除去するための汚れ除去方法および除去装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷延鋼板等の鋼帯は、圧延油等の油脂に金属粉,その他汚れ等が付着した状態となっており、そのままでは次工程のめっきや塗装を行うことができないため、鋼帯等の金属板にめっき、塗装等の連続処理を行う処理設備では、脱脂,洗浄等の前処理を行うのが一般的である。このような汚れは、金属板の処理量が増えるに従って、濃化し、金属板と接触するロールの表面に濃化物(汚れ)が堆積する現象が知られている。こうした濃化物(汚れ)が堆積すると、濃化物(汚れ)が金属板に転写されて、欠陥が発生するようになる。
【0003】
例えば、図4は、鋼帯のアルカリ脱脂ラインを示すものである。このアルカリ脱脂ラインには、アルカリ脱脂設備10とリンス設備20が設置されており、リンス設備20は、アルカリ脱脂設備10で脱脂された鋼帯1の表面をリンス液でブラッシングするブラッシングロール21と、鋼帯1を挟んでブラッシングロール21と対向するように配置されたバックアップロール22(上バックアップロール22A、下バックアップロール22B)を備えているが、鋼帯1の処理量に従って、バックアップロール22の表面に汚れ50が堆積し、その汚れ50が鋼帯1に付着して、鋼帯1の品質低下や歩留低下を招いてしまう。また、バックアップロールをなくすと、汚れ除去効果が低下する問題がある。
【0004】
バックアップロール22上の汚れをラインから取り外すことなく除去するのは、下面バックアップロールの場合は困難であるが、上面バックアップロール22は、作業員がバックアップロール22の表面を人力で研磨する方法も考えられる。しかしながら、ロールを停止しての研磨では汚れ除去効果が不十分であり、一方、バックアップロール22を回転させたままでの研磨は、汚れ除去効果は若干向上するものの、効率が悪く、また、バックアップロール22への巻き込まれ等の作業上の危険性があった。
【0005】
これに対して、特許文献1では、ロールにブラシを押し当ててその部分に洗浄液を噴射することで、ロール上の汚れを除去するようにしたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−047705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の技術では、ブラシに汚れが堆積し、頻繁にブラシを交換しなければならないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、鋼帯等の金属板の処理設備において、金属板と接触するロールの表面に付着した汚れを作業性良く適切に除去することができる汚れ除去方法および除去装置を適用することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
【0010】
[1]金属板と接触するロールの表面に付着した汚れを除去するための汚れ除去方法であって、前記ロールの表面に付着した汚れをドクターナイフで掻き取り、前記ドクターナイフで掻き取った汚れを受け樋で受け止め、前記受け樋で受け止めた汚れに対して液体を噴射して金属板の存在範囲外に排出することを特徴とするロール上の汚れ除去方法。
【0011】
[2]金属板と接触するロールの表面に付着した汚れを除去するための汚れ除去装置であって、前記ロールの表面に付着した汚れを掻き取るドクターナイフと、前記ドクターナイフで掻き取った汚れを受け止める受け樋と、前記受け樋内に液体を噴射して、受け樋内の汚れを金属板の存在範囲外に排出する液体噴射手段とを備えていることを特徴とするロール上の汚れ除去装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明においては、鋼帯等の金属板の処理設備において、金属板と接触するロールの表面に付着した汚れを作業性良く適切に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態を示す正面図である。
【図2】本発明の一実施形態を示す側面図である。
【図3】本発明の一実施形態を示す正面図である。
【図4】鋼帯のアルカリ脱脂ラインを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、ここでは、図4に示した鋼帯のアルカリ脱脂ラインのリンス設備20において、上バックアップロール22Aの表面の汚れを除去する場合を例にして述べる。
【0015】
この実施形態においては、図1に正面図、図2に側面図を示すように、上バックアップロール22Aの表面に付着した汚れ50を掻き取るドクターナイフ(ドクターブレード)31と、ドクターナイフ31で掻き取った汚れ50を受け止める受け樋32と、受け樋32内にリンス液の一部を噴射して、受け樋32内の汚れ50を鋼帯1の板道外(存在範囲外)に排出するリンス液噴射手段(ノズルヘッダ33、スプレーノズル34)とを備えている。
【0016】
そして、図1、図2は、ドクターナイフ31で汚れ50を掻き取り、その汚れ50を受け樋32で受け止めた状態を示しているが、このままでは、受け樋32で受け止めた汚れ50が堆積して、鋼帯1上に落下してしまうので、図3に正面図を示すように、スプレーノズル34から受け樋32内に一部のリンス液35を噴射して、受け樋32内の汚れ50を一方向に押し流して鋼帯1の板道外に排出するようにしている。
【0017】
ここで、スプレーノズル34は、受け樋32内の汚れ50を一方向に押し流し易いように、一方向に傾斜して噴射する斜方型スプレーノズルを用いている。
【0018】
このようにして、この実施形態においては、鋼帯のアルカリ脱脂ラインのリンス設備20において、上バックアップロール22Aの表面の汚れを作業性良く適切に除去することができる。
【0019】
なお、上記の実施形態では、リンス液のノズル33を2方向ノズルとし、1方向は金属帯に噴射させ(図示せず)、1方向はドクターナイフ31から受け樋32内にリンス液の一部を噴射しているが、設置スペースに制約がない場合は、受け樋32に単独で他のノズルからリンス液を噴射させてもよい。また、上記の実施形態では受け樋32内の汚れを一方向に押し流すために斜方型スプレーノズルを用いたが、これに限るものではなく、例えば、受け樋内の汚れを吸引する構造としてもよい。
【0020】
そして、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、金属板の処理設備において、液体を噴射可能な環境で金属板と接触するロールの表面に付着した汚れを除去する場合に適用することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 鋼帯
10 アルカリ脱脂装置
20 リンス設備
21 ブラッシロール
22 バックアップロール
22A 上バックアップロール
22B 下バックアップロール
31 ドクターナイフ(ドクターブレード)
32 受け樋
33 ノズルヘッダ
34 スプレーノズル(斜方型スプレーノズル)
35 リンス液
50 汚れ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と接触するロールの表面に付着した汚れを除去するための汚れ除去方法であって、前記ロールの表面に付着した汚れをドクターナイフで掻き取り、前記ドクターナイフで掻き取った汚れを受け樋で受け止め、前記受け樋で受け止めた汚れに対して液体を噴射して金属板の存在範囲外に排出することを特徴とするロール上の汚れ除去方法。
【請求項2】
金属板と接触するロールの表面に付着した汚れを除去するための汚れ除去装置であって、前記ロールの表面に付着した汚れを掻き取るドクターナイフと、前記ドクターナイフで掻き取った汚れを受け止める受け樋と、前記受け樋内に液体を噴射して、受け樋内の汚れを金属板の存在範囲外に排出する液体噴射手段とを備えていることを特徴とするロール上の汚れ除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−253487(P2010−253487A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103491(P2009−103491)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)