説明

ロール状物、及びロール状物の製造方法

【課題】表面平滑性が高く、しかも搬送時の帯電が抑制された光学フィルムのロール状物、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】セルロースアシレートフィルムと、その上に、フッ素系化合物を含有する平均表面粗さ(Ra)が0.05μm以下である光学異方性層とを少なくとも有する、含水率が1.1〜4.0質量%である光学フィルムを、ロール状に巻き取ったロール状物である。また、少なくとも、基材フィルムと、その上に、光学異方性層とを有する光学フィルムをロール状に巻き取ったロール状物の製造方法であって、基材フィルム上に、少なくとも乾燥処理を経て、光学異方性層を形成して、光学フィルムを作製すること、光学フィルムを湿潤させること、及びその後、光学フィルムをロール状に巻き取ることを含むロール状物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続生産された光学補償フィルム及び偏光板等の光学フィルムを、ロール状に巻き取ったロール状物、及びこれらロール状物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材フィルム上に、塗布により光学異方性層を形成して作製された光学補償フィルム等の光学フィルムが種々提案されている(例えば、特許文献1〜5参照)。これらの光学フィルムの作製では、均一な塗布により高い平面平滑性を有する光学異方性層を形成することが望まれる。そのために、塗布液中に、表面エネルギーを低下させるフッ素系界面活性剤がしばしば添加されたり、光学異方性層の主原料そのものがフッ素原子を含有しているポリマーが用いられたりする(例えば、特許文献6、7及び8)。
これらの光学フィルムを工業的に生産するためには、長尺状の基材フィルム上に塗布液を連続的に塗布して光学異方性層を形成した後、保管もしくは搬送等のために、一旦ロール状に巻き取られるのが一般的である。その後、偏光膜等の他の機能膜と貼合したり、又は所望の形状に裁断等するために、再びロールから光学フィルムを送り出し、搬送しつつ、連続的に上記処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−214116号公報
【特許文献2】米国特許第5583679号明細書
【特許文献3】米国特許第5646703号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第3911620号明細書
【特許文献5】特開2003−315541号公報
【特許文献6】特開2002−129162号公報
【特許文献7】特開2005−272560号公報
【特許文献8】特開2006−16599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、塗布液中にフッ素系化合物が含まれることで、高い平面平滑性の層を形成可能であることは、上記した通りであるが、一方、フッ素系化合物を含有する層を有する光学フィルムを、ロールから送り出し搬送すると、フッ素系化合物を有する層と基材フィルム裏面(フッ素系化合物が形成されていない側の面)の帯電列の違いから、送り出し時の剥離の際に帯電し易いという問題があることが判明した。光学フィルムが帯電すると、埃・塵等の異物が付着して、光学フィルムの性能を損なう場合があり、改善が求められる。
本発明は、表面平滑性が高く、しかも搬送時の帯電が抑制された光学フィルムのロール状物、及びその製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、光学フィルムの帯電による汚れに起因した、黒表示時の輝点故障のない(又は少ない)液晶表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] セルロースアシレートフィルムと、その上に、フッ素系化合物を含有する平均表面粗さ(Ra)が0.05μm以下である光学異方性層とを少なくとも有する、含水率が1.1〜4.0質量%である光学フィルムを、ロール状に巻き取ったロール状物。
[2] 前記光学異方性層が、液晶性化合物を含む組成物から形成される層であることを特徴とする[1]のロール状物。
[3] 前記光学フィルムが、さらに、偏光子を有することを特徴とする[1]又は[2]のロール状物。
[4] [1]〜[3]のいずれかのロール状物から切り出された光学フィルムを有する液晶表示装置。
[5] 少なくとも、基材フィルムと、その上に、光学異方性層とを有する光学フィルムをロール状に巻き取ったロール状物の製造方法であって、
基材フィルム上に、少なくとも乾燥処理を経て、光学異方性層を形成して、光学フィルムを作製すること、
光学フィルムを湿潤させること、及び
その後、光学フィルムをロール状に巻き取ること、
を含むロール状物の製造方法。
[6] 光学フィルムを、加湿雰囲気中に滞留させることによって湿潤させることを特徴とする[5]の方法。
[7] 光学フィルムを、温度20〜50℃・相対湿度55〜80%RHに調整されている加湿雰囲気中に滞留させることによって湿潤させることを特徴とする[5]又は[6]の方法。
[8] 光学フィルムを、前記加湿雰囲気中に10秒間以上滞留させることを特徴とする[6]又は[7]の方法。
[9] 前記光学異方性層が、フッ素系化合物を含有し、その平均表面粗さRaが0.05μm以下であることを特徴とする[5]〜[8]のいずれかの方法。
[10] 液晶組成物を乾燥して配向させ、その配向状態を固定することによって光学異方性層を形成することを特徴とする[5]〜[9]のいずれかの方法。
[11] 光学フィルムをロール状に巻き取った後、再び送り出して、長尺状の偏光子と積層し、再びロール状に巻き取ることを含む[5]〜[10]のいずれかの方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、搬送時の帯電が抑制された光学フィルムのロール状物、及びその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、光学フィルムの帯電による汚れに起因した、黒表示時の輝点故障のない(又は少ない)液晶表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のロール状物の製造方法の一例の流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0009】
なお、本明細書において、「45゜」、「平行」あるいは「直交」とは、厳密な角度±5゜未満の範囲内であることを意味する。厳密な角度との誤差は、4゜未満であることが好ましく、3゜未満であることがより好ましい。また、角度について、「+」は時計周り方向を意味し、「−」は反時計周り方向を意味するものとする。また、「遅相軸」は、屈折率が最大となる方向を意味する。また、「可視光領域」とは、380〜780nmのことをいう。更に屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域のλ=550nmでの値である。
【0010】
また、本明細書において「偏光板」とは、特に断らない限り、長尺の偏光板及び液晶装置に組み込まれる大きさに裁断された(本明細書において、「裁断」には「打ち抜き」及び「切り出し」等も含むものとする)偏光板の両者を含む意味で用いられる。また、本明細書では、「偏光膜」及び「偏光板」を区別して用いるが、「偏光板」は「偏光膜」の少なくとも片面に該偏光膜を保護する透明保護膜を有する積層体を意味するものとする。
【0011】
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、及び厚さ方向のレターデーションを表す。Re(λ)は、KOBRA 21 ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。測定波長λnmの選択にあたっては、波長選択フィルターをマニュアルで交換するか、又は測定値をプログラム等で変換して測定するができる。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と、平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値とを基にKOBRA 21ADH又はWRが算出される。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値は、その符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出される。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の数式(I)及び式(II)よりRthを算出することもできる。
【0012】
【数1】

式中、Re(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。
また、nxは、面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表し、dは膜厚を表す。
【0013】
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法により、Rth(λ)は算出される。
Rth(λ)は、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と、平均屈折率の仮定値、及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出される。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学補償フィルムのカタログの値を使用することができる。
また、平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学補償フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADH又はWRは、nx、ny、nzを算出する。この算出されたnx,ny,nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
【0014】
本発明は、少なくとも、セルロースアシレートフィルムと、その上に、フッ素系化合物を含有する平均表面粗さ(Ra)が0.05μm以下である光学異方性層とを有する光学フィルムを、ロール状に巻き取ったロール状物に関する。光学異方性層は、フッ素系化合物の含有により、その表面の平滑性が改善され、平均表面粗さ(Ra)が0.05μm以下を達成可能であるが、一方で、帯電列上マイナス側に寄っているフッ素が層中に存在することにより、セルロースアシレートフィルムの裏面(光学異方性層が形成されていない側の面)と該光学異方性層の表面との間の帯電列差が生じ、光学フィルム全体として帯電し易いという問題がある。本発明者が鋭意検討した結果、この帯電は、光学フィルム全体の含水率を所定の範囲にすることで解決し得ることを見出した。本発明のロール状物は、偏光膜等の他の機能層と貼合される処理、及び所望の形状に裁断される処理等の加工処理のために連続的に送り出されても、光学フィルム全体の含水率が所定の範囲であるので、送り出し時に帯電してしまうことが抑制される。その結果、光学フィルムの表面等に、埃・塵等の異物が付着し難く、安定的に所望の光学特性の光学フィルムを提供することができる。
【0015】
上記帯電防止効果を得るためには、光学フィルムの含水率を、1.1質量%以上にする。好ましくは、1.4質量%以上、より好ましくは、2.0質量%以上である。帯電防止効果の点では、上限値については特に制限はないが、含水率が大き過ぎると、運搬時の結露の点で好ましくない。従って、運搬時の結露防止の観点では、光学フィルムの含水率は、4.0質量%以下であるのが好ましく、3.5質量%以下であるのがより好ましい。
なお、光学フィルムの含水率は、水分測定器(例えば、「CA−03」三菱化学(株)製)、及び試料乾燥装置(例えば、「VA−05」三菱化学(株)製)などを用いてカールフィッシャー法で測定することができる。具体的には、ロール状物から20mm×35mm程度の大きさのサンプルフィルムを切り出し、これをサンプルビンに封入し、該サンプルビン内に含まれる全水分量(フィルムと空気に含まれる水分量)をカールフィッシャー法で測定して水分量Aを得る。引き続き、サンプリング環境下でサンプルビンに封入した空気に含まれる水分量を同様に測定して水分量Bを得る。光学フィルムの含水率は、水分量Aから水分量Bを引いて、サンプルフィルムの質量で除した値として算出される。
【0016】
前記光学異方性層は、フッ素系化合物を少なくとも含有し、その平均表面粗さ(Ra)が0.05μm以下である。液晶表示装置に利用される光学補償フィルム、及び偏光板等の光学フィルムは、表示性能の低下の原因となる表示ムラ等を生じさせないために、高い表面平滑性が要求される。そのためには、塗布により形成される前記光学異方性層の平均表面粗さ(Ra)が、0.05μm以下であれば、上記用途においても満足いく表面平滑性であるといえる。より好ましくは、光学異方性層のRaは0.02μm以下であり、さらに好ましくは0.01μm以下である。
なお、光学異方性層の平均表面粗さ(Ra)は、JIS−B0601−2001に準じて測定することができる。
【0017】
本発明のロール状物では、光学異方性層を支持する基材フィルムは、セルロースアシレートフィルムである。帯電は一般的に高湿度雰囲気下より低湿度雰囲気下のほうが生じ易い。セルロースアシレートフィルムは、親水性が良好なフィルムなので、セルロースアシレートフィルムを用いると、低親水性のフィルムを基材フィルムとして用いるよりも、帯電が生じ難い。しかし、塗布によって光学異方性層を形成する場合は、塗布した後、少なくとも溶媒を除去するための乾燥工程を経るため、セルロースアシレートフィルム中の水分が失われ、帯電が抑制されなくなる。特に、硬化性液晶組成物を用いて塗布により光学異方性層を形成する場合は、塗布、乾燥、及び配向を経た後、硬化反応を進行させるので、その間、加熱下に曝され、セルロースアシレートフィルムの親水性が失われる程度が大きい。本発明では、光学フィルム全体の含水率を前記範囲とすることで、塗布により光学異方性層が形成され、乾燥のために加熱下に所定の時間曝された場合も、帯電防止効果を得ている。
【0018】
本発明に用いるセルロースアシレートフィルムは、セルロースアシレートを主原料(原料の総質量の50質量%以上の成分)とするフィルムである。セルロースの低級脂肪酸エステルが好ましい。低級脂肪酸とは、炭素原子数が6以下の脂肪酸を意味する。炭素原子数が2〜4のセルロースアシレートが好ましく、セルロースアセテートが更に好ましい。セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートのような混合脂肪酸エステルを用いてもよい。
【0019】
前記光学異方性層は、フッ素系化合物を少なくとも含有する層であり、少なくともフッ素系化合物を含有する塗布液を基材フィルム上に塗布することによって形成される層である。
前記フッ素系化合物の例には、前記塗布液に均一塗布性を付与するために添加されるフッ素系界面活性剤が含まれる。より具体的には、特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]に記載のフッ素系界面活性剤等を使用することができる。また、「メガファック F780」(大日本化学工業社製)等の市販品を利用することもできる。これらのフッ素系界面活性剤は、光学異方性層が液晶性化合物を硬化させて形成される場合に、液晶性化合物の配向を乱すことがなく、特に好適に用いられる。
また、前記フッ素系化合物の例には、光学異方性層の主原料として利用される、フッ素原子を有するポリイミド、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアミドイミド、又はポリエステルイミド等のポリマーが含まれる。これらのポリマーを有機溶媒中に溶解して調製された塗布液を、セルロースアシレートフィルムの表面に塗布して、乾燥して形成された層はそのまま光学異方性層として機能する場合もある。また、ポリマー層を形成した後、セルロースアシレートフィルムとともに、延伸処理を施すことで、光学異方性層として機能する場合もある。使用可能な前記ポリマーの例としては、特開2006−194924号公報の[0195]〜[0250]等に記載のポリマーが挙げられる。
【0020】
前記光学異方性層の作製には、ポリマー組成物及び液晶組成物のいずれを利用してもよい。
塗布により光学異方性層を形成可能なポリマー材料の例としては、ポリイミド、ポリアリールエーテルケトン、ポリアミド、ポリエステル、ポリアミドイミド、又はポリエステルイミド等が挙げられる。より具体的には、特開2006−194924号公報の[0195]〜[0250]に記載のポリマーを利用することができる。ポリマー組成物を利用した前記光学異方性層の製造方法については、同公報に詳細な記載があり、参照することができる。
【0021】
前記光学異方性層の作製に利用可能な液晶の例には、棒状液晶及び円盤状液晶の双方が含まれる。また、硬化性の重合性基を有する液晶化合物を用いるのが好ましい、
棒状液晶としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。なお、棒状液晶化合物には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶化合物を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも用いることができる。言い換えると、棒状液晶化合物は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
棒状液晶化合物については、季刊化学総説第22巻「液晶の化学(1994)日本化学会編」の第4章、第7章、及び第11章、及び液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。
ディスコティック液晶の例には、ベンゼン誘導体(C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載)、トルキセン誘導体(C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載)、シクロヘキサン誘導体(B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載)及びアザクラウン系又はフェニルアセチレン系のマクロサイクル(J.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)記載)が含まれる。
【0022】
また、前記光学異方性層の作製に利用可能なディスコティック液晶の好ましい例には、下記一般式(DI)で表わされる化合物が含まれる。さらに、特開2006−76992号公報明細書中の段落番号[0052]、及び特開2007−2220号公報明細書中の段落番号[0040]〜[0063]に記載の化合物、特開2005−301206号公報に記載の化合物も含まれる。特に、下記一般式(DI)で表される化合物、及びトリフェニレン液晶の双方を利用して形成される光学異方性層は、可視光域のレターデーションが、液晶セル中の液晶化合物の複屈折波長分散に近い波長分散性を示すので好ましい。
【0023】
【化1】

【0024】
上記一般式(DI)中、Y11、Y12、及びY13は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表す。
【0025】
11、Y12、及びY13がメチンの場合、メチンの水素原子は置換基によって置換されていてもよい。ここで、メチンとは、メタンから水素原子を3個除いて得られる原子団をいう。
メチンの炭素原子が有していてもよい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子及びシアノ基を好ましい例として挙げることができる。
これらの置換基の中では、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子及びシアノ基がより好ましく、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数2〜12アルコキシカルボニル基、炭素数2〜12アシルオキシ基、ハロゲン原子、及びシアノ基が更に好ましい。
11、Y12及びY13は、いずれもメチンであることがより好ましく、メチンは無置換であることが更に好ましい。
【0026】
上記一般式(DI)中、L1、L2、及びL3は、それぞれ独立に単結合、又は二価の連結基を表す。L1、L2、及びL3が、二価の連結基の場合、それぞれ独立に、−O−、−S−、−C(=O)−、−NR7−、−CH=CH−、−C≡C−、二価の環状基及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。
上記R7は炭素原子数1〜7のアルキル基又は水素原子であり、炭素原子数1〜4のアルキル基又は水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基、又は水素原子であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0027】
1、L2、及びL3における二価の環状基とは、少なくとも1種類の環状構造を有する二価の連結基(以下、環状基ということがある)である。環状基は5員環、6員環、又は7員環を有することが好ましく、5員環、又は6員環を有することがより好ましく、6員環を有することが更に好ましい。環状基に含まれる環は、縮合環であってもよい。ただし、縮合環よりも単環であることが好ましい。
また、環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、及び複素環のいずれでもよい。芳香族環としては、ベンゼン環、及びナフタレン環が好ましい例として挙げられる。
脂肪族環としては、シクロヘキサン環が好ましい例として挙げられる。
複素環としては、ピリジン環、及びピリミジン環が好ましい例として挙げられる。
環状基は、芳香族環、又は複素環がより好ましい。なお、環状基は、環状構造のみ(但し、置換基を含む)からなる2価の連結基であることがより好ましい。
【0028】
1、L2、及びL3で表される二価の環状基のうち、ベンゼン環を有する環状基としては、1,4−フェニレン基が好ましい。
ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン−1,5−ジイル基及びナフタレン−2,6−ジイル基が好ましい。
シクロヘキサン環を有する環状基としては、1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。
ピリジン環を有する環状基としては、ピリジン−2,5−ジイル基が好ましい。
ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン−2,5−ジイル基が好ましい。
【0029】
1、L2、及びL3で表される二価の環状基は、置換基を有していてもよい。該置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数が2〜16アルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲン置換アルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル基で置換されたカルバモイル基、及び炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。
【0030】
1、L2、及びL3としては、単結合、*−O−CO−、*−CO−O−、*−CH=CH−、*−C≡C−、*−二価の環状基−、*−O−CO−二価の環状基−、*−CO−O−二価の環状基−、*−CH=CH−二価の環状基−、*−C≡C−二価の環状基−、*−二価の環状基−O−CO−、*−二価の環状基−CO−O−、*−二価の環状基−CH=CH−、及び*−二価の環状基−C≡C−が好ましい。
この中でも、単結合、*−CH=CH−、*−C≡C−、*−二価の環状基−O−CO−、*−CH=CH−二価の環状基−、及び*−C≡C−二価の環状基−がより好ましく、単結合が更に好ましい。
ここで、上記「*」は、一般式(DI)中のY11、Y12、及びY13を含む6員環側に結合する位置を表す。
【0031】
1、H2、及びH3は、それぞれ独立に、下記一般式(DI−A)、又は下記一般式(DI−B)を表す。
【0032】
【化2】

【0033】
一般式(DI−A)中、YA1及びYA2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表す。YA1及びYA2は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が、窒素原子であることがより好ましい。XAは、酸素原子、硫黄原子、メチレン、又はイミノを表し、酸素原子が好ましい。
ここで、上記一般式(DI−A)中、「*」は上記一般式(DI)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し、「**」は上記一般式(DI)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す。また、前記イミノは、−NH−で表されるもの(Hが置換基で置換されているものを含む)をいう。
【0034】
【化3】

【0035】
上記一般式(DI−B)中、YB1及びYB2は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表す。YB1及びYB2は、少なくとも一方が窒素原子であることが好ましく、両方が、窒素原子であることがより好ましい。
XBは、酸素原子、硫黄原子、メチレン又はイミノを表し、酸素原子が好ましい。
ここで、上記一般式(DI−B)中、「*」は、上記一般式(DI)におけるL1〜L3側と結合する位置を表し、「**」は、上記一般式(DI)におけるR1〜R3側と結合する位置を表す。
【0036】
1、R2、及びR3は、それぞれ独立に下記一般式(DI−R)を表す。
【0037】
【化4】

【0038】
上記一般式(DI−R)中、「*」は、一般式(DI)におけるH1〜H3側と結合する位置を表す。
【0039】
また、上記一般式(DI−R)中、L21は、単結合、又は二価の連結基である。L21が二価の連結基の場合、−O−、−S−、−C(=O)−、−NR7−、−CH=CH−、及びC≡C−、並びにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R7は炭素原子数1〜7のアルキル基又は水素原子であり、炭素原子数1〜4のアルキル基又は水素原子であることが好ましく、メチル基、エチル基又は水素原子であることがより好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0040】
また、上記一般式(DI−R)中、L21は、単結合、並びに、***−O−CO−、***−CO−O−、***−CH=CH−、及び***−C≡C−(ここで、「***」は、一般式(DI−R)中の「*」側を表す)のいずれかが好ましく、単結合がより好ましい。
【0041】
また、上記一般式(DI−R)中、Q2は少なくとも1種類の環状構造を有する二価の基(環状基)を表す。このような環状基としては、5員環、6員環、又は7員環を有する環状基が好ましく、5員環又は6員環を有する環状基がより好ましく、6員環を有する環状基が特に好ましい。上記環状基に含まれる環状構造は、縮合環であってもよい。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。
また、環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、及び複素環のいずれでもよい。芳香族環としては、ベンゼン環、及びナフタレン環が好ましい例として挙げられる。
脂肪族環としては、シクロヘキサン環が好ましい例として挙げられる。
複素環としては、ピリジン環及びピリミジン環が好ましい例として挙げられる。
環状基は、芳香族環又は複素環がより好ましい。なお、環状基は、環状構造のみ(但し、置換基を含む)からなる2価の連結基であることがより好ましい。
【0042】
また、上記一般式(DI−R)中、Q2のうち、ベンゼン環を有する環状基としては、1,4−フェニレン基が好ましい。
また、ナフタレン環を有する環状基としては、ナフタレン−1,5−ジイル基、及びナフタレン−2,6−ジイル基が好ましい。
また、シクロヘキサン環を有する環状基としては、1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。
また、ピリジン環を有する環状基としては、ピリジン−2,5−ジイル基が好ましい。
また、ピリミジン環を有する環状基としては、ピリミジン−2,5−ジイル基が好ましい。これらの中でも、特に、1,4−フェニレン基、及び1,4−シクロへキシレン基が好ましい。
【0043】
また、上記一般式(DI−R)中、Q2は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基、及び炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。
これらの中でも、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲンで置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0044】
n1は、0〜4の整数を表す。n1としては、1〜3の整数が好ましく、1又は2が更に好ましい。
【0045】
22は、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−S−、*−N(R)−、**−CH2−、**−CH=CH−、又は**−C≡C−を表し、「**」は、Q2側と結合する位置を表す。
22は、好ましくは、**−O−、**−O−CO−、**−CO−O−、**−O−CO−O−、**−CH2−、**−CH=CH−、**−C≡C−であり、より好ましくは、**−O−、**−O−CO−、**−O−CO−O−、**−CH2−である。
【0046】
23は、−O−、−S−、−C(=O)−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−及びC≡C−、並びに、これらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表す。
ここで、−NH−、−CH2−、及び−CH=CH−の水素原子は、置換基で置換されていてもよい。
このような置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲンで置換されたアルキル基、炭素原子数1〜6のアルコキシ基、炭素原子数2〜6のアシル基、炭素原子数1〜6のアルキルチオ基、炭素原子数2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜6のアルキルで置換されたカルバモイル基、及び炭素原子数2〜6のアシルアミノ基が好ましい例として挙げられ、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基がより好ましい。
【0047】
23は、−O−、−C(=O)−、−CH2−、−CH=CH−、及びC≡C−、並びに、これらの組み合わせからなる群より選ばれることが好ましい。
23は、炭素原子を1〜20個含有することが好ましく、炭素原子を2〜14個を含有することがより好ましい。更に、L23は、−CH2−を1〜16個含有することが好ましく、−CH2−を2〜12個含有することが更に好ましい。
【0048】
1は、重合性基又は水素原子を表す。本発明で用いる液晶性化合物を位相差が熱により変化しないものが好ましい光学補償フィルム等に用いる場合には、Q1は重合性基であることが好ましい。
重合反応は、付加重合(開環重合を含む)、又は縮合重合であることが好ましい。すなわち、重合性基は、付加重合反応、又は縮合重合反応が可能な官能基であることが好ましい。当該重合性基の例を以下に示す。
【0049】
【化5】

【0050】
更に、重合性基は付加重合反応が可能な官能基であることが特に好ましい。そのような重合性基としては、重合性エチレン性不飽和基、又は開環重合性基が好ましい。
【0051】
重合性エチレン性不飽和基の例としては、下記の式(M−1)〜(M−6)が挙げられる。
【0052】
【化6】

【0053】
式(M−3)、(M−4)中、Rは、水素原子又はアルキル基を表し、その中でも、水素原子、又はメチル基が好ましい。
本発明の重合性エチレン性不飽和基は、上記式(M−1)〜(M−6)の中では、(M−1)、又は(M−2)が好ましく、(M−1)がより好ましい。
【0054】
開環重合性基は、環状エーテル基が好ましく、エポキシ基、又はオキセタニル基がより好ましく、エポキシ基が特に好ましい。
【0055】
本発明で用いる液晶性化合物としては、下記一般式(DII)で表される液晶性化合物が特に好ましい。
【0056】
【化7】

【0057】
一般式(DII)中、Y31、Y32、及びY33は、それぞれ独立にメチン又は窒素原子を表し、一般式(DI)中の、Y11、Y12、及びY13と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0058】
一般式(DII)中、R31、R32、及びR33は、それぞれ独立に下記一般式(DII−R)を表す。
【0059】
【化8】

【0060】
一般式(DII−R)中、A31及びA32は、それぞれ独立に、メチン又は窒素原子を表し、少なくとも一方が、窒素原子であることが好ましく、両方が窒素原子であることが更に好ましい。X3は、酸素原子、硫黄原子、メチレン、又はイミノを表し、その中でも酸素原子が好ましい。
【0061】
31は、6員環状構造を有する二価の連結基(以下、6員環環状基ということがある)を表す。
なお、この6員環は、縮合環であってもよい。ただし、縮合環よりも単環であることがより好ましい。
また、6員環環状基に含まれる環は、芳香族環、脂肪族環、及び複素環のいずれでもよい。芳香族環としては、ベンゼン環、及びナフタレン環が好ましい例として挙げられる。
脂肪族環としては、シクロヘキサン環が好ましい例として挙げられる。
複素環としては、ピリジン環、及びピリミジン環が好ましい例として挙げられる。
31は、6員環状構造のみからなる二価の連結基(但し、置換基を有していてもよい)であることが好ましい。
【0062】
31のうち、ベンゼン環を有する6員環環状基としては、1,4−フェニレン基、及び1,3−フェニレン基が好ましい。
ナフタレン環を有する環状構造としては、ナフタレン−1,5−ジイル基、及びナフタレン−2,6−ジイル基が好ましい。
シクロヘキサン環を有する環状構造としては、1,4−シクロへキシレン基であることが好ましい。
ピリジン環を有する環状構造としては、ピリジン−2,5−ジイル基が好ましい。
ピリミジン環を有する環状構造としては、ピリミジン−2,5−ジイル基が好ましい。これらの中でも、特に、1,4−フェニレン基、及び1,3−フェニレン基がより好ましい。
【0063】
31の環状構造は、置換基を有していてもよい。置換基の例には、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜16のアルキル基、炭素原子数2〜16のアルケニル基、炭素原子数2〜16のアルキニル基、炭素原子数1〜16のハロゲン原子で置換されたアルキル基、炭素原子数1〜16のアルコキシ基、炭素原子数2〜16のアシル基、炭素原子数1〜16のアルキルチオ基、炭素原子数2〜16のアシルオキシ基、炭素原子数2〜16のアルコキシカルボニル基、カルバモイル基、炭素原子数2〜16のアルキル置換カルバモイル基、及び炭素原子数2〜16のアシルアミノ基が含まれる。
6員環環状基の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロゲン原子で置換されたアルキル基が好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のハロゲン原子で置換されたアルキル基がより好ましく、ハロゲン原子、炭素原子数1〜3のアルキル基、トリフルオロメチル基が更に好ましい。
【0064】
n3は、1〜3の整数を表し、1又は2が好ましい。
【0065】
31は、*−O−、*−O−CO−、*−CO−O−、*−O−CO−O−、*−S−、*−N(R)−、*−CH2−、*−CH=CH−、又は*−C≡C−を表す。
なお、「*」は、Q31側と結合する位置を表し、具体的には、一般式(DI−R)中のL22と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0066】
32は、−O−、−S−、−C(=O)−、−NH−、−CH2−、−CH=CH−、及びC≡C−、並びにこれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基を表し、具体的には、一般式(DI−R)中のL23と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0067】
また、一般式(DII−R)中のQ32は、重合性基、又は水素原子を表し、具体的には、一般式(DI−R)中のQ1と同義であり、好ましい範囲も同義である。
【0068】
以下に、一般式(DI)で表される液晶性化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0069】
【化9】

【0070】
本発明で用いる液晶性化合物は、良好なモノドメイン性を示す液晶相を発現することが望ましい。モノドメイン性を良好なものとすることにより、得られる構造が、ポリドメインとなり、ドメイン同士の境界に配向欠陥が生じ、光を散乱するようになるのを効果的に防ぐことができる。更に、良好なモノドメイン性を示すと、位相差板がより高い光透過率を有するため好ましい。
【0071】
本発明で用いる液晶性化合物が発現する液晶相としては、カラムナー相、及びディスコティックネマチック相(ND相)を挙げることができる。これらの液晶相の中では、良好なモノドメイン性を示し、かつ、ハイブリッド配向が可能なディスコティックネマチック相(ND相)が特に好ましい。
【0072】
前記光学異方性層の厚さは、特に制限ないが、塗布によって形成される層の厚みは、一般的には、0.1〜20μm程度であることが好ましく、0.3〜10μmであることがより好ましく、0.5〜5μmであることが更に好ましい。
【0073】
前記光学フィルムは、基材フィルム、及び光学異方性層以外の層を有していてもよい。例えば、基材フィルムと光学異方性層との間には、光学異方性層を形成される際に利用されるポリビニルアルコール膜やポリイミド膜等からなる配向膜が配置されていてもよい。配向膜としては、所望によりその表面をラビング処理したものを用いることができる。
ラビング処理は、液晶表示装置の液晶配向処理工程として広く採用されているラビング処理方法を応用することができる。すなわち、膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維を用いて一定方向に擦ることにより配向を得る。一般には、長さ及び太さが均一な繊維を平均的に植毛した布を用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
【0074】
前記光学フィルムは、偏光子を有する偏光フィルムであってもよい。その場合には、前記基材フィルムの裏面(光学異方性層が形成されていない側の面)を、偏光子側にして貼り合わせるのが好ましい。偏光子は、配向型偏光膜又は塗布型偏光膜(Optiva Inc.製)のいずれであってもよい。配向型偏光膜は、バインダーとヨウ素もしくは二色性色素とからなる。ヨウ素及び二色性色素は、バインダー中で配向することで偏光性能を発現する。ヨウ素及び二色性色素は、バインダー分子に沿って配向するか、もしくは二色性色素が液晶のような自己組織化により一方向に配向することが好ましい。
市販の配向型偏光膜は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素、もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素をバインダー中に浸透させることで作製されている。また、市販の偏光膜は、ポリマー表面から4μm程度(両側合わせて8μm程度)に、ヨウ素もしくは二色性色素が分布しており、充分な偏光性能を得るためには、少なくとも10μmの厚みが必要である。浸透度は、ヨウ素、もしくは二色性色素の溶液濃度、浴槽温度及び浸漬時間により制御することができる。
偏光膜の厚みは、現在市販の偏光板(約30μm)以下であることが好ましく、25μm以下がより好ましく、20μm以下が特に好ましい。
【0075】
前記光学フィルムは、その他、防眩性層、光拡散性層、反射防止層等の他の機能層を有していてもよい。
【0076】
本発明のロール状物から送り出される、光学補償フィルム、及び偏光フィルム等の光学フィルムは、その後、所望の形状に裁断された後、液晶表示装置等の画像表示装置に用いられる。液晶表示装置の液晶モードについては制限はなく、TN(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、OCB(Optically Compensatory Bend)、VA(Vertically Alig
ned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、STN(Super Twisted Nematic)等、種々のモードの液晶表示装置に利用可能である。
【0077】
[ロール状物の製造方法]
本発明は、少なくとも、基材フィルムと、その上に、光学異方性層とを有する光学フィルムをロール状に巻き取ったロール状物の製造方法にも関する。
本発明の製造方法では、塗布により、少なくとも乾燥処理を経て形成された光学異方性層を有する光学フィルムを、巻き取る前に、湿潤させることを特徴とする。この湿潤工程を経ることにより、巻き取られた後に、種々の加工処理を目的として、再びロール状物から送り出される際に光学フィルムが帯電してしまうのを防止することができる。
【0078】
図1に、本発明の製造方法の一例の流れを示す模式図を示す。図1では、基材フィルム12が、第1の繰り出し部10から繰り出され、コータ部14にて、液晶組成物等の塗布液が塗工される。基材フィルムの表面に塗工された塗工物は、温度制御手段(乾燥手段)16に送られ、乾燥される。乾燥により溶媒が除去されるとともに、液晶は配向状態になる。その後、硬化手段18にて、UV照射及び/又は加熱が施され、硬化反応が進行して、光学異方性層が形成される。基材フィルム12上に光学異方性層を有する光学フィルム22は、その後、湿潤手段20により湿潤し、含水した後に、巻き取り部24にて巻き取られる。
【0079】
コータ部14の上流に、基材フィルム12の表面に配向膜用塗布液を塗布するためのコータ部、それを乾燥する乾燥手段、及びその表面をラビング処理するラビングロールをさらに有し、光学異方性層を形成する前に、基材フィルム12上に配向膜を形成することもできる。光学異方性層を液晶組成物から形成する態様では、配向膜を利用して光学異方性層を形成するのが好ましい。
また、乾燥手段16と湿潤手段20との間に、延伸手段を備え、光学フィルムに延伸処理を施すこともできる。ポリイミド等のポリマー組成物を利用して塗布により光学異方性層を形成する態様では、塗布及び乾燥して光学異方性層を形成した後、要求される光学特性を満足する光学異方性層とするために、延伸処理を施すことが好ましい。
【0080】
基材フィルム12の例としては、上記したセルロースアシレートフィルムの他、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート及び環状ポリオレフィンを主成分として含有するフィルムが挙げられる。中でもセルロースアシレートフィルム及び環状ポリオレフィンフィルムが好ましい。セルロースアシレートフィルムが主原料として含有するセルロースアシレートの例については上記した通りであり、好ましい範囲も同様である。セルロースアシレートフィルムは、溶液製膜法により製造されたものであるのが好ましい。溶液製膜法の詳細については、特開2007−286330号公報の[0166]〜[0176]に詳細な記載があり、参照することができる。一方、環状ポリオレフィンフィルムの主原料として用いられる環状ポリオレフィンの例としては、同公報の[0176]〜[0185]に例示されている環状ポリオレフィンが挙げられる。
上記した通り、帯電防止の観点では、親水性のポリマーフィルムが好ましく、セルロースアシレートフィルムが好ましい。
【0081】
次に、繰り出し部10から送り出された基材フィルム12の表面に、コータ部14から、塗布液を供給して、基材フィルム12の表面に塗布層を形成する。コータ部14による塗布方式については特に制限はない。種々の塗布方式が利用されるであろう。具体的には、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法などを利用することができる。
【0082】
コータ部14から供給される塗布液は、光学異方性層を形成するための原料が溶解した溶液である。光学異方性層の作製に利用可能な原料としては、上記したポリマー材料、及び液晶材料、ならびに所望により添加される添加剤が挙げられる。原料中に、フッ素系化合物が含まれると、塗布によって形成される光学異方性層の表面が平滑化され、平均表面粗さRaが0.05μm以下を達成できるので好ましい。フッ素系化合物の好ましい例についても上記した通りである。
【0083】
前記塗布液の調製に使用する溶媒は、有機溶媒が好ましい。有機溶媒の例には、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジン)、炭化水素(例えば、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライド及びケトンが好ましい。2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0084】
光学異方性層の原料として、硬化性組成物を利用する場合は、硬化性組成物中に、重合反応等の硬化反応を開始させる重合開始剤等を塗布液中に添加するのが好ましい。例えば、光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号明細書、及び米国特許第2367670号明細書に記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書に記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書に記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、及び米国特許第2951758号明細書に記載)、トリアリールイミダゾールダイマーと、p−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書に記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、及び米国特許第4239850号明細書に記載)、及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書に記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲にあることが更に好ましい。
【0085】
次に、塗布層を有する基材フィルム12は、搬送され、乾燥手段16によって乾燥される。乾燥手段16は、例えば、温度が調整された部屋であり、具体的には温度40〜130℃程度に調整された部屋である。この部屋を通過させることで、塗布層中の溶媒を蒸発乾燥させることができる。また、温度40〜130℃の温風を吹き付けることによって、塗布層中の溶媒を蒸発乾燥させることもできる。液晶組成物を利用する態様では、加熱により、溶媒が除去されるとともに、液晶が配向する。乾燥時間は、一般的には、30〜180秒程度であるのが好ましい。
【0086】
次に、硬化手段18によって、硬化性組成物の硬化反応を進行させて光学異方性層を形成し、光学フィルム22を作製する。例えば、光学異方性層の材料が、光硬化性組成物である態様では、塗布層を乾燥した後、光照射して、光硬化反応を進行させる。光照射には紫外線を利用するのが好ましい。照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2が好ましく、20〜5,000mJ/cm2がより好ましく、100〜800mJ/cm2が更に好ましい。光重合反応や光架橋反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。加熱する場合は、温度50〜130℃程度であるのが好ましい。
なお、光学異方性層の材料として、ポリマー組成物を利用する場合は、塗布層を乾燥するだけで、硬化反応を進行させなくても、充分強度のある光学異方性層となる場合もあるので、材料によっては、硬化手段はなくてもよい。
【0087】
上記のようにして作製された、基材フィルム12上に光学異方性層を有する光学フィルム22は、次に、湿潤手段20によって、湿潤される。例えば、光学フィルム22を、所定の温度及び湿度に調整された加湿雰囲気中に滞留させることで、湿潤させることができる。温度20〜50℃程度、及び相対湿度55〜80RH%の加湿雰囲気中で湿潤させるのが好ましく、温度25〜35℃程度、及び相対湿度60〜75RH%の加湿雰囲気中で湿潤させるのがより好ましい。光学フィルム22を前記加湿雰囲気中に、10秒間以上滞留されるのが好ましく、30秒間以上滞留させるのがより好ましい。帯電防止効果の点では、滞留時間はより長いほうが好ましいが、生産性の観点では短いほうが好ましく、その観点では、120秒程度以下であるのが好ましい。光学フィルム22は、作製の過程で、乾燥等のために加熱処理を施され、水分を失っているので、帯電し易い状態にある(特に光学異方性層がフッ素系化合物を含有する態様では、帯電し易い状態にある)が、この湿潤工程によって、含水率が増加し、帯電が抑制される。この湿潤処理後の光学フィルム22の含水率は、1.1〜4.0質量%であるのが好ましい。
【0088】
次に、光学フィルム22は、巻き取り部24によって、ロール状に巻き取られる。得られたロール状物は、その状態で保管及び搬送等された後、加工処理を施される。例えば、同様に巻き取られたロール状物から送り出される偏光膜等と積層するために、又は所望の大きさに切断するために、ロール状物から再び光学フィルム22が送り出される。上記湿潤手段によって、光学フィルム22の含水率が増加しているので、搬送の際に静電気が生じても、電荷が漏洩し帯電が抑制される。その結果、フィルム表面等に、埃及び塵が付着することなく、良好な性能の光学フィルムを安定的に製造することができる。
【実施例】
【0089】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらに限定されるものではない。
【0090】
(実施例1)
<ロール状光学フィルムの作製>
〔セルロースアシレートフィルムの作製〕
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、30℃に加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Aを調製した。
────────────────────────────────────
セルロースアシレート溶液A組成(質量部) 内層 外層
────────────────────────────────────
酢化度60.9%のセルロースアシレート 100 100
トリフェニルホスフェート(可塑剤) 7.8 7.8
ビフェニルジフェニルホスフェート(可塑剤) 3.9 3.9
メチレンクロライド(第1溶媒) 293 314
メタノール(第2溶媒) 71 76
1−ブタノール(第3溶媒) 1.5 1.6
シリカ微粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)
0 0.8
下記レターデーション上昇剤 1.7 0
────────────────────────────────────
【0091】
【化10】

【0092】
得られた内層用ドープ及び外層用ドープを、三層共流延ダイを用いて、0℃に冷却したドラム上に流延した。残留溶剤量が70質量%のフィルムをドラムから剥ぎ取り、両端をピンテンターにて固定して搬送方向のドロー比を110%として搬送しながら80℃で乾燥させ、残留溶剤量が10%となったところで、110℃で乾燥させた。その後、140℃の温度で30分間乾燥し、残留溶剤が0.3質量%のセルロースアシレートフィルム((C1)外層:3μm、内層:74μm、外層:3μm、長さ:2000m、幅:1340m、厚さ:80μm)を作製した。
【0093】
作製したセルロースアシレートフィルム(C1)について、レターデーションを測定したところ、厚み方向のレターデーションRthは90nm、面内のレターデーションReは7nmであった。
【0094】
[アルカリ鹸化処理]
セルロースアシレートフィルム(C1)を、温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フィルム表面温度を40℃に昇温した後に、フィルムの片面に下記に示す組成のアルカリ溶液を、ロッドコーターを用いて塗布量10cc/m2で塗布し、110℃に加熱した(株)ノリタケカンパニーリミテド製のスチーム式遠赤外ヒーターの下に、10秒間滞留させた。続いて、同じくロッドコーターを用いて、純水を3cc/m2塗布した。次いで、ファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返した後に、70℃の乾燥ゾーンに5秒間滞留させて乾燥し、鹸化処理したセルロースアシレートフィルムを作製した。
【0095】
{アルカリ溶液組成}
水酸化カリウム 9.4質量部
水 10.6質量部
イソプロパノール 64.8質量部
界面活性剤 1.0質量部
SF−1:C1429O(CH2CH2O)20
プロピレングリコール 14.9質量部
【0096】
[配向膜の形成]
前記のようにして鹸化処理したセルロースアシレートフィルムのアルカリ鹸化処理面の上に、下記の組成の配向膜形成用組成物塗布液(O1)を、ロッドコーターで28mL/m2の塗布量で塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。
次に、鹸化処理したセルロースアシレートフィルムの配向膜表面を長手方向にラビング処理を実施した。
【0097】
{配向膜形成用組成物塗布液(O1)の組成}
下記に示す変性ポリビニルアルコール 31質量部
下記に示すカルボン酸化合物(A−1) 0.6質量部
グルタルアルデヒド 1.6質量部
水 725質量部
メタノール 241質量部
【0098】
【化11】

【0099】
[光学異方性層の形成]
下記の組成の光学異方性層形成用組成物塗布液(DA1)を調製した。
284質量部のメチルエチルケトンに、ディスコティック液晶性化合物(D−521)87質量部、下記に示すディスコティック液晶性化合物(D−2)13質量部、下記に示すフルオロ脂肪族基含有ポリマー(F−1)0.75質量部、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)3質量部、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)1質量部を溶解して、塗布液(DA1)を調製した。
【0100】
【化12】

【0101】
【化13】

【0102】
上記ラビング処理を施したセルロースアシレートフィルムの配向膜面の上に、調製した光学異方性層形成用組成物の塗布液(DA1)を、#2.0のワイヤーバーコーターを用いて連続的に塗布した。フィルムの搬送速度は30m/minとした。室温から100℃に連続的に加温する工程で溶媒を乾燥させ、その後、115℃の乾燥ゾーンで90秒間加熱し、円盤状の液晶性化合物を配向させた。続いて、フィルムの温度を80℃に保持して、UV照射により液晶化合物の配向を固定化し、光学異方性層を形成した。
続いて、25℃、相対湿度70%RHに調湿した加湿ゾーンに1分間滞留させた後、巻き取り、長さ2000mのロール状光学補償フィルムを作製した。
得られた光学異方性層の、波長633nmで測定したReレターデーション値は44nmであった。
【0103】
<含水率の測定>
光学補償フィルム試料の含水率を水分測定器(CA−03、三菱化学(株)製)、試料乾燥装置(VA−05、三菱化学(株)製)を用いてカールフィッシャー法で測定した。
巻き取り後のロール状光学補償フィルムの含水率は、前記フィルムの外周を5周廃却後、速やかに20mm×35mm切り出し、これをサンプルビンに封入し、該サンプルビン内に含まれる全水分量(フィルムと空気に含まれる水分量)をカールフィッシャー法で測定して水分量Aを得た。
引き続き、サンプリング環境下でサンプルビンに封入した空気に含まれる水分量を同様に測定して水分量Bを得て、前記水分量Aから水分量Bを引いて試料質量で除した値をロール状光学補償フィルムの含水率として算出した。当該含水率は、2.2質量%であった。
【0104】
<表面電位の測定>
ロール状光学補償フィルムを25℃、50%RHに調湿した部屋に搬送し、フィルムを5m引き出した後のロールの幅方向中心部の表面電位を、電位測定器(STATIRON DX、シシド静電気(株)製)を用いて測定したところ、−0.5kVであり、実質的に帯電していなかった。
<塵埃の評価>
25℃、50%RHの条件下でロール状光学フィルムを5m引き出し、表面電位を測定した後にロールを1時間放置し、ロールに付着している塵埃の数を目視にて計測し、1m2当たりの数を塵埃の数とした。塵埃の数は0個/m2であり良好であった。
【0105】
<面状(ムラ)の評価>
ライトテーブル上でクロスニコルに配置した一対の偏光板の間にロール状光学フィルムを挿入し、目視でムラの有無を観察し、以下の基準を用いて評価した。
◎:ムラの発生が全く認められない(10人で評価し、一人も認識できないレベル)
○:ムラの発生がほとんど認められない(10人で評価し、1〜3人が認識するレベル)
×:ムラが弱く発生する(10人で評価し、4〜6人が認識するレベル)
××:ムラが強く発生する(10人で評価し、7人以上が認識するレベル)
得られたロール状光学フィルムの面状はムラの発生が認められず良好であった。
【0106】
<表面粗さの測定>
表面粗さ計(SE−3F、小坂研究所製)を用い、JIS−B0601−2001に準じて、光学異方性層の平均表面粗さ(中心線平均粗さ(Ra))を測定した。光学フィルムの光学異方性層の平均表面粗さRaは0.01μmであった。
【0107】
(実施例2)
上記実施例1において、光学異方性層を形成する際に用いる塗布液(DA1)のディスコティック液晶性化合物(D−521)を、ディスコティック液晶化合物(D−527)にかえ、フルオロ脂肪族基含有ポリマー(F−1)を、下記のフルオロ脂肪族基含有ポリマー(F−3)に代える以外は、実施例1と同様にしてロール状光学フィルム(2)を作製した。
【0108】
【化14】

【0109】
種々の特性を上記と同様にして測定した結果を表1に示す。表面電位の測定結果から、実質的に帯電しておらず、塵埃は認められなかった。
【0110】
(実施例3)
上記実施例1において、配向膜形成用組成物塗布液(O1)の代わりに下記の組成の配向膜形成用組成物塗布液(O2)を用いること、及び、光学異方性層を形成する際に用いる塗布液(DA1)のディスコティック液晶性化合物(D−521)を、ディスコティック液晶化合物(D−524)にかえ、フルオロ脂肪族基含有ポリマー(F−1)0.75質量部のうち0.49質量部を、上記フルオロ脂肪族基含有ポリマー(F−3)に置き換える以外は実施例1と同様にしてロール状光学フィルム(3)を作製した。
種々の特性を上記と同様にして測定した結果を表1に示す。表面電位の測定結果から、実質的に帯電しておらず、塵埃は認められなかった。
【0111】
{配向膜形成用組成物塗布液(O2)の組成}
変性ポリビニルアルコール 31質量部
光開始剤「イルガキュアー2959」チバガイギー社製 0.9質量部
グルタルアルデヒド 1.6質量部
水 725質量部
メタノール 241質量部
【0112】
(実施例4)
下記の組成の光学異方性層形成用組成物塗布液(DA2)を調製した。
ディスコティック液晶化合物(D−2) 9.1質量部
エチレンオキシド変性トリメチロールプロパンアクリレート
{"V#360"大阪有機化学(株)製} 0.9質量部
セルロースアセテートブチレート 0.2質量部
{"CAB551−0.2"イーストマンケミカル社製}
セルロースアセテートブチレート 0.05質量部
{"CAB531−1"イーストマンケミカル社製}
光重合開始剤 3.0質量部
「イルガキュアー907」{チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製}
光増感剤 1.0質量部
「カヤキュアーDETX」{日本化薬(株)製}
界面活性剤 0.4質量部
「メガファック F780」{大日本インキ化学工業(株)製}
メチルエチルケトン 25.9質量部
【0113】
実施例1で作製した、ラビング処理を施したセルロースアシレートフィルムの配向膜面の上に、調製した塗布液(DA2)を、#4.0のワイヤーバーコーターを用いて連続的に塗布した。フィルムの搬送速度は30m/minとした。室温から100℃に連続的に加温する工程で溶媒を乾燥させ、その後、130℃の乾燥ゾーンで90秒間加熱し、円盤状の液晶性化合物を配向させた。続いて、フィルムの温度を80℃に保持して、UV照射により液晶化合物の配向を固定化し、光学異方性層を形成した。
続いて、25℃、70%RHに調湿した加湿ゾーンに1分間滞留させた後、巻き取り、長さ2000mのロール状光学フィルムを作製した。
【0114】
得られた光学異方性層の、波長633nmで測定したReレターデーション値は44nmであった。
種々の特性を上記と同様にして測定した結果を表1に示す。表面電位の測定結果から、実質的に帯電しておらず、塵埃は認められなかった。
【0115】
(実施例5)
<セルロースアシレートフィルム(C2)の作製>
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Bを調製した。
セルロースアシレート溶液Bの組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
アセチル置換度2.94のセルロースアシレート 100.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 402.0質量部
メタノール(第2溶媒) 60.0質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0116】
平均粒径16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)を20質量部、メタノール80質量部を30分間よく攪拌混合してシリカ粒子分散液とした。この分散液を下記の組成物とともに分散機に投入し、さらに30分以上攪拌して各成分を溶解し、マット剤溶液を調製した。
マット剤溶液組成
―――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒径16nmのシリカ粒子分散液 10.0質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76.3質量部
メタノール(第2溶媒) 3.4質量部
セルロースアシレート溶液B 10.3質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0117】
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、各成分を溶解し、セルロースアシレート溶液Cを調製した。
添加剤溶液組成
――――――――――――――――――――――――――――――
下記の光学的異方性低下剤 49.3質量部
下記の波長分散調整剤 4.9質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 58.4質量部
メタノール(第2溶媒) 8.7質量部
セルロースアシレート溶液B 12.8質量部
――――――――――――――――――――――――――――――
【0118】
【化15】

【0119】
【化16】

【0120】
上記セルロースアセテート溶液Cを94.6質量部、マット剤溶液を1.3質量部、添加剤溶液4.1質量部それぞれを濾過後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。上記組成で光学的異方性を低下する化合物及び波長分散調整剤のセルロースアシレートに対する質量比はそれぞれ12%、1.2%であった。残留溶剤量30%でフィルムをバンドから剥離し、140℃で40分間乾燥させ、厚さ80μmの長尺状のセルロースアシレートフィルムC2を製造した。得られたフィルムの面内レターデーション(Re)は1nm(遅相軸はフィルム長手方向と直交方向)、厚み方向のレターデーション(Rth)は−1nmであった。
【0121】
セルロースアシレートフィルムC1に代えて、上記で作製した長尺状のセルロースアシレートフィルムC2を使用した以外は、実施例1と同様にしてロール状光学フィルムを作製した。
種々の特性を上記と同様にして測定した結果を表1に示す。
表面電位の測定結果から、実質的に帯電しておらず、塵埃は1個/m2であり少なく良好であった。
【0122】
(実施例6)
2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンと、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニルとから合成された質量平均分子量5.9万のポリイミドの15質量%シクロヘキサノン溶液を調製した。
この溶液を、実施例1で作製したセルロースアシレートフィルムC1上に、乾燥後の厚みが2.5μmとなるように連続的に塗布し、次に、150℃の乾燥ゾーンで10分間乾燥処理し、そのまま連続して150℃の雰囲気中でテンター延伸機で幅方向に17%延伸した。
その後、テンタークリップで把持した部分を含む両端を切り落として幅1340nmとして、端から2〜12mmの範囲にナーリングを付け、25℃、70%RHに調湿した加湿ゾーンに1分間滞留させた後、巻き取り、長さ2000mのロール状光学補償フィルムを作製した。
【0123】
このロール状光学フィルムについて、種々の特性を上記と同様に測定した結果を表1に示す。表面電位の測定結果から、実質的に帯電しておらず、塵埃は3個/m2であり少なく良好であった。
【0124】
(実施例7)
下記の組成の棒状液晶化合物を含む塗布液(N1)を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
下記の棒状液晶性化合物(I) 100質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製) 3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製) 1質量部
下記のフッ素系ポリマー 0.4質量部
下記のピリジニム塩 1質量部
メチルエチルケトン 172質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0125】
【化17】

【0126】
【化18】

【0127】
【化19】

【0128】
実施例1と同様にしてセルロースアシレートC1を作製し、その上に配向膜を形成し、膜表面にラビング処理を施した。このラビング処理面に、調製した塗布液N1を、#5.0のワイヤーバーで連続的に塗布した。フィルムの搬送速度は20m/minとした。室温から80℃に連続的に加温する工程で溶媒を乾燥させ、その後、80℃の乾燥ゾーンで90秒間加熱し、棒状液晶性化合物を配向させた。続いて、フィルムの温度を60℃に保持して、UV照射により液晶化合物の配向を固定化して光学異方性層を形成した。
その後、25℃、70%RHに調湿した加湿ゾーンに1分間滞留させた後、巻き取り、長さ2000mのロール状光学補償フィルムW1を作製した。
このロール状光学フィルムについて、種々の特性を上記と同様にして測定した結果を表1に示す。表面電位の測定結果から、実質的に帯電しておらず、塵埃は0個/m2であり良好であった。
【0129】
作製した光学補償フィルムW1から棒状液晶性化合物を含む光学異方性層のみを剥離し、自動複屈折率計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株)社製)を用いて光学特性を測定した。波長590nmで測定した光学異方性層のみのReは0nmであり、Rthは−260nmであった。又、棒状液晶分子がフィルム面に対して実質的に垂直に配向している光学異方性層が形成されたことが確認できた。
【0130】
(実施例8)
加湿ゾーンの調湿条件を25℃、60%RHにした以外は、実施例1と同様にしてロール状光学フィルムを作製した。
このロール状光学フィルムについて、種々の特性を上記と同様にして測定した結果を表1に示す。表面電位の測定結果から、実質的に帯電しておらず、塵埃は3個/m2であり、少なく良好であった。
【0131】
(実施例9)
加湿ゾーンの調湿条件を25℃、55%RHにした以外は、実施例1と同様にしてロール状光学フィルムを作製した。
このロール状光学補償フィルムについて、種々の特性を上記と同様にして測定した結果を表1に示す。表面電位の測定結果から、実質的に帯電しておらず、塵埃は5個/m2であり、実施例1と比べて多いが良好であった。
【0132】
(比較例1)
<環状オレフィン重合体の合成>
精製トルエン100質量部とノルボルネンカルボン酸メチルエステル100質量部を反応釜に投入した。次いでトルエン中に溶解したエチルヘキサノエート−Ni 25mmol%(対モノマー質量)、トリ(ペンタフルオロフェニル)ボロン0.225mol%(対モノマー質量)及びトルエンに溶解したトリエチルアルミニウム0.25mol%(対モノマー質量)を反応釜に投入した。室温で攪拌しながら18時間反応させた。反応終了後過剰のエタノール中に反応混合物を投入し、重合物沈殿を生成させた。沈殿を精製し得られた重合体(J1)を真空乾燥で65℃24時間乾燥した。
【0133】
<環状オレフィンフィルムの作製>
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した後、平均孔径34μmのろ紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
環状ポリオレフィン溶液 D1
―――――――――――――――――――――――――――――――――
環状ポリオレフィン(J1) 150質量部
ジクロロメタン 414質量部
メタノール 36質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0134】
次に、上記方法で調製した環状ポリオレフィン溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
マット剤分散液 M1
―――――――――――――――――――――――――――――――――
平均粒径16nmのシリカ粒子
(aerosil R972 日本アエロジル(株)) 2質量部
ジクロロメタン 81質量部
メタノール 7質量部
環状ポリオレフィン溶液(D1) 10質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0135】
上記環状ポリオレフィン溶液D1を100質量部、マット剤分散液M1を1.35質量を混合し、製膜用ドープを調製した。
上述のドープをバンド流延機により1400mm幅で流延した。残留溶剤量が約25質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムをフィルムに皺が入らないように保持しながらテンターを用いて140℃の熱風を当てながら幅方向に10%延伸した。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し、巻き取った。
その後、実施例1と同様にして、上記環状ポリオレフィンフィルムに対して鹸化処理、配向膜作製、光学異方性層作製を行い、長さ2000mのロール状光学フィルムを作製した。
【0136】
実施例1で使用したセルロースアシレートフィルムC1の代わりに、上記で作製した環状オレフィンフィルムを用いた以外は、実施例1と同様にしてロール状光学フィルムを作製した。
このロール状光学フィルムについて、種々の特性を上記と同様にして測定した結果を表1に示す。表面電位の測定結果から、帯電しており、塵埃は18個/m2であり非常に多かった。
【0137】
(比較例2)
下記の組成の光学異方性層形成用組成物塗布液(DA3)を調製した。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
メチルエチルケトン 270.0質量部
上記ディスコティック液晶性化合物(D−524) 87.0質量部
上記ディスコティック液晶性化合物(D−2) 13.0質量部
光開始剤「イルガキュア907」チバガイギー社製 1.0質量部
増感剤「カヤキュアーDETX」日本化薬社製 3.0質量部
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
実施例1で使用した光学異方性層形成用組成物塗布液DA1の代わりに、調製した塗布液(DA3)を用いた以外は、実施例1と同様にしてロール状光学フィルムを作製した。
このロール状光学フィルムについて、種々の特性を上記と同様にして測定した結果を表1に示す。表面電位の測定結果から、実質的に帯電してなく、塵埃は3個/m2であり少なく良好であったが、ムラが強く発生していた。
【0138】
(比較例3)
加湿ゾーンの調湿条件を25℃、40%RHにした以外は、実施例1と同様にしてロール状光学フィルムを作製した。
このロール状光学フィルムについて、種々の特性を上記と同様にして測定した結果を表1に示す。表面電位の測定結果から、帯電しており、塵埃は15個/m2であり非常に多かった。
【0139】
(比較例4)
加湿ゾーンの調湿条件を40℃、80%RHにし、加湿ゾーンでの滞留時間を60秒にする以外は、実施例1と同様にしてロール状光学フィルムを作製した。作製したフィルムの含水率は4.2質量%であった。
このロール状光学フィルムは、フィルム同士の密着が非常に強く送り出しを行うことができなかった。フィルムから蒸発した水がフィルム間に溜まり、フィルム同士の密着が強められたためと考えられる。
【0140】
【表1】

【0141】
(実施例10)
[偏光板の作製]
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製し、市販のセルロースアセテートフィルム(フジタックTD80UF、富士フイルム(株)製)に鹸化処理を行い、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、前記偏光膜の片面に貼り合せた。
更に、実施例1で作製したロール状光学補償フィルムに除塵処理を施し、鹸化処理を行い、光学異方性層と反対側の面を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、前記偏光膜の他方の面に除塵処理を行いながら貼り合せ、実施例10の偏光板を作製した。
【0142】
[点欠陥の評価]
上記作製した偏光板を10mにわたりライトテーブル上で面状検査を行った。すなわち、光学フィルムと偏光膜の間に存在し、20μm以上の塵埃に起因する点欠陥を調べた。上記作製した偏光板では、実質的に帯電のない実施例1のロール状光学フィルムを用いているために、塵埃に起因する点欠陥は確認されなかった。
【0143】
(比較例5)
実施例10で使用したロール状光学フィルムの代わりに、比較例3のロール状光学フィルムを使用した以外は、実施例10と同様にして偏光板を作製した。
実施例10と同様にして点欠陥の評価を行ったところ、比較例5の偏光板では、鹸化処理時及び偏光膜との貼り合わせ時に除塵処理を行ったにもかかわらず、帯電が大きい比較例3のロール状光学フィルムを用いているために、塵埃に起因する点欠陥が4個確認された。
【0144】
(実施例11)
[液晶表示装置の作製]
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(AL2216W、日本エイサー(株)製)に設けられている一対の偏光板を剥がし、代わりに実施例10の偏光板を、光学フィルムが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側及びバックライト側に一枚ずつ貼り合わせ、実施例11の液晶表示装置を作製した。このとき、観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とが直交するように配置した。
[輝点故障の評価]
上記作製した液晶表示装置で黒表示を行い、輝点の数を目視評価したところ、輝点は全く観察されなかった。また表示ムラが観察されず表示特性も良好であった。
(比較例6)
実施例11で使用した偏光板の代わりに、比較例5の偏光板を使用した以外は、実施例11と同様にして液晶表示装置を作製した。
実施例11と同様にして輝点故障の評価を行ったところ、偏光板の塵埃付着部分に対応した部分が輝点となっており、4個の輝点が観察された。
【0145】
(実施例12)
実施例1で作製したセルロースアシレートフィルムC1上に、実施例3で調製した配向膜形成用組成物塗布液(O2)を塗布して、同様にして配向膜を形成し、当該配向膜の表面を長手方向にラビング処理した。
【0146】
下記組成の光学異方性層形成用組成物塗布液(DA12)を調製した。
284質量部のメチルエチルケトンに、下記に示すディスコティック液晶性化合物(D−3)100質量部、下記に示すフルオロ脂肪族基含有ポリマー(F−4)0.75質量部、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)3質量部、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)1質量部を溶解して、塗布液(DA12)を調製した。
【0147】
【化20】

【0148】
【化21】

【0149】
上記塗布液(DA12)を使用して光学異方性層を形成したこと以外は、実施例1と同様にしてロール状光学フィルム(12)を作製した。
実施例1と同様にして、ロール状光学フィルム(12)を評価した、結果を下記表2に示す。
【0150】
ロール状光学フィルム(12)を用いた以外は、実施例10と同様にして、偏光板(12)を作製し、点欠陥評価を実施し、結果を表2に示した。
この偏光板(12)を用いた以外は、実施例11と同様にして、液晶表示装置(12)を作製し、上記と同様にして輝点故障の評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0151】
(実施例13)
実施例12で使用したディスコティック液晶性化合物(D−3)100質量部を、ディスコティック液晶性化合物(D−3)85質量部とディスコティック液晶性化合物(D−2)15質量部に置き換えて塗布液を調整し、当該塗布液を用いて光学異方性層を形成したこと以外は、実施例12と同様にロール状光学フィルム(13)を作製した。
実施例12と同様に、ロール状光学フィルム(13)の評価、光学フィルム(13)を用いて偏光板(13)の作製、及び偏光板(13)を用いて液晶表示装置(13)の作製を行い、同様に評価した。評価結果を下記表2に示す。
【0152】
(実施例14)
実施例13で使用したディスコティック液晶性化合物(D−3)85質量部を、下記に示すディスコティック液晶性化合物(D−4)に置き換えて塗布液を調製し、当該塗布液を用いて光学異方性層を形成したこと以外は、実施例10と同様にロール状光学フィルム(14)を作製した。
実施例13と同様に、ロール状光学フィルム(14)の評価、光学フィルム(14)を用いて偏光板(14)の作製、及び偏光板(14)を用いて液晶表示装置(14)の作製を行い、同様に評価した。評価結果を下記表2に示す。
【0153】
【化22】

【0154】
(実施例15)
実施例13で使用したディスコティック液晶性化合物(D−3)85質量部を下記に示すディスコティック液晶性化合物(D−5)に置き換えて塗布液を調製し、当該塗布液を用いて光学異方性層を形成したこと以外は、実施例13と同様に、ロール状光学フィルム(15)の作製、光学フィルム(15)を用いて偏光板(15)の作製、偏光板(15)を用いて液晶表示装置(15)の作製を行い、同様に評価した。評価結果を下記表2に示す。
【0155】
【化23】

【0156】
(実施例16)
実施例13で使用したディスコティック液晶性化合物(D−3)85質量部を下記に示すディスコティック液晶性化合物(D−6)に置き換え、及びフルオロ脂肪族基含有ポリマー(F−4)0.75質量部を下記に示すフルオロ脂肪族基含有ポリマー(F−5)に置き換えて塗布液を調製し、当該塗布液を用いて光学異方性層を形成したこと以外は、実施例13と同様に、ロール状光学フィルム(16)の作製、光学フィルム(16)を用いて偏光板(16)の作製、偏光板(16)を用いて液晶表示装置(16)の作製を行い、同様に評価した。評価結果を下記表2に示す。
【0157】
【化24】

【0158】
(実施例17)
実施例16で使用したディスコティック液晶性化合物(D−6)85質量部を下記に示すディスコティック液晶性化合物(D−7)に置き換えて塗布液を調製し、当該塗布液を用いて光学異方性層を形成したこと以外は、実施例16と同様に、ロール状光学フィルム(17)の作製、光学フィルム(17)を用いて偏光板(17)の作製、偏光板(17)を用いて液晶表示装置(17)の作製を行い、同様に評価した。評価結果を下記表2に示す。
【0159】
【化25】

【0160】
(実施例18)
実施例16で使用したディスコティック液晶性化合物(D−6)85質量部を下記に示すディスコティック液晶性化合物(D−8)に置き換えて塗布液を調製し、当該塗布液を用いて光学異方性層を形成したこと以外は実施例16と同様に、ロール状光学フィルム(18)の作製、光学フィルム(18)を用いて偏光板(18)の作製、偏光板(18)を用いて液晶表示装置(18)の作製を行い、同様に評価した。評価結果を下記表2に示す。
【0161】
【化26】

【0162】
【表2】

【0163】
以上説明したように、本発明のロール状光学フィルムは、帯電に起因する塵埃の付着が抑制されているとともに、ムラのない均一な面状を有する。
また、このようなロール状光学フィルムを用いることによって、点欠陥の発生が低減された偏光板、並びに黒表示時の輝点故障のない液晶表示装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0164】
10 繰り出し部
12 基材フィルム
14 コータ部
16 乾燥手段
18 硬化手段
20 湿潤手段
22 光学フィルム
24 巻き取り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースアシレートフィルムと、その上に、フッ素系化合物を含有する平均表面粗さ(Ra)が0.05μm以下である光学異方性層とを少なくとも有する、含水率が1.1〜4.0質量%である光学フィルムを、ロール状に巻き取ったロール状物。
【請求項2】
前記光学異方性層が、液晶性化合物を含む組成物から形成される層であることを特徴とする請求項1に記載のロール状物。
【請求項3】
前記光学フィルムが、さらに、偏光子を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のロール状物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のロール状物から切り出された光学フィルムを有する液晶表示装置。
【請求項5】
少なくとも、基材フィルムと、その上に、光学異方性層とを有する光学フィルムをロール状に巻き取ったロール状物の製造方法であって、
基材フィルム上に、少なくとも乾燥処理を経て、光学異方性層を形成して、光学フィルムを作製すること、
光学フィルムを湿潤させること、及び
その後、光学フィルムをロール状に巻き取ること、
を含むロール状物の製造方法。
【請求項6】
光学フィルムを、加湿雰囲気中に滞留させることによって湿潤させることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
光学フィルムを、温度20〜50℃・相対湿度55〜80%RHに調整されている加湿雰囲気中に滞留させることによって湿潤させることを特徴とする請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
光学フィルムを、前記加湿雰囲気中に10秒間以上滞留させることを特徴とする請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記光学異方性層が、フッ素系化合物を含有し、その平均表面粗さRaが0.05μm以下であることを特徴とする請求項5〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
液晶組成物を乾燥して配向させ、その配向状態を固定することによって光学異方性層を形成することを特徴とする請求項5〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
光学フィルムをロール状に巻き取った後、再び送り出して、長尺状の偏光子と積層し、再びロール状に巻き取ることを含む請求項5〜10のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−258661(P2009−258661A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45087(P2009−45087)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】