説明

ロール紙の巻き癖防止機構付き印刷装置の紙送り構造

【課題】携帯可能な小型印刷装置において、ロール紙のロール部分から引き出される外周部分の径寸法を一定に保ち、印刷したロール紙に折り目を付けたり、印刷したロール紙を均したりして、印刷して投函するシートが丸まるのを防止することも可能とする。
【解決手段】ケース4に収納されたロール紙2のロール部分21に装着される軸棒10は、ロール部分21の最も中心側の紙の内周面を押圧し、ロール紙2の引き出し部分22の短手方向の中心部位は、ロール紙2よりも上方となるようにケース4内に収納された紙押さえ部11の逆三角状に突出した突出部11aで押さえられ、ケース4に開口した取出し口3は、紙押さえ部11の突出部11bを有する辺と同じ形状の開口縁を上下に有する中央口部31と、この中央口部31の両側から上方に向けて相対的に緩やかに傾斜した折代形成口部32とで成るものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、印刷用紙としてロール紙を使用した印刷装置の紙送り構造、特に携帯可能な小型の印刷装置の紙送り構造に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯用の小型の印刷装置においては、例えば特許文献1等に示されるように、コアレスロール紙を使用する場合があるが、少なくともこのようなコアレスロール紙にあっては、ロール紙のロール部分の外周がロール部分の中心側に近づくに従い、ロール紙の外面の径寸法が相対的に小さくなり、ロール部分から引き出される部分の巻き癖が強くなる傾向がある。この場合に、顧客に電力量の検針結果等を知らせるシートを携帯用の小型の印刷装置で印刷して郵便受け等に投函するときに、ロール部分の中心側に近づいた状態のロール紙に印刷したために、このロール紙を切り離したシートも丸まる。このように、丸まったシートが投函されてしまうと、顧客がシートに記載された電力量の検針結果等の情報を見るときに不便であり、更には、投函されたシートが丸く小さくなったために、他の郵便物に紛れてしまう危険性も生ずる。
【0003】
この投函したシートが丸まる不具合を防止するために、ロール部分の外周側がある程度ロール部分の中心側に近づいたときにロール紙を交換する方法や、印刷したシートに折り目を手作業にて付ける方法が考えられるが、前者のように残部があるのにロール紙を交換するのは非経済的であり、後者のように全ての印刷したシートに手作業にて折り目を付けるのは煩雑にすぎ、事実上不可能である。
【0004】
この点、特許文献2に示されるロール紙給紙装置及び画像記録装置においては、ロール紙にしごきを与えて巻き癖を矯正する矯正機構を備えた構成となっている。すなわち、このロール紙給紙装置及び画像記録装置の巻き癖矯正機構は、スプールとロール紙をセットするカラーの間にスプリングの内圧力を利用したトルクリミッタを設け、ロール紙に与える負荷(トルク)を一定にすることで、ロール紙の巻き癖を矯正しようというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−139192号公報
【特許文献2】特開平9−328247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に示されるロール紙給紙装置及び画像記録装置は、簡単な機構でロール紙に与える負荷を一定としてロール紙の巻き癖を矯正しようとするものであり、ロールのロール部分の外周側がロール部分の中心側に近づくに従いロール部分の外周の径寸法が相対的に小さくなるためにロール紙の引き出し部分の巻き癖が強くなる傾向があるとの不具合に対応していない。
【0007】
また、特許文献2に示されるロール紙給紙装置及び画像記録装置では、印刷したロール紙の印刷装置外への取出口の手前にて、投函したシートが丸まるのを防止するための有効な手段である、ロール紙に折り目を付けるための構造や、ロール紙の巻き癖を均すための構造も示されていない。
【0008】
そこで、本発明は、ロール紙のロール部分の最大外径寸法をロール部分の巻量が減少しても一定に保つことができ、且つ、印刷したロール紙に折り目を付けたり、印刷したロール紙を均したりして、投函するシートが丸まるのを防止することが可能なロール紙の巻き癖防止機構付き印刷装置の紙送り構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るロール紙の巻き癖防止機構付き印刷装置の紙送り構造は、印刷用紙が複数にわたって巻回してなるロール部分及びこのロール部分から引き出される引き出し部分を備えたロール紙がケースに収納され、このケースには印刷された前記ロール紙を外部に取り出すための取出し口が開口し、更に、前記ケース内には前記ロール紙の引き出し部分を前記取出し口まで案内するローラが収納されたロール紙の巻き癖防止機構付き印刷装置の紙送り構造において、前記ロール紙のロール部分の中心側にこのロール部分の軸方向に延びる軸棒が装着され、この軸棒は、前記ロール紙のロール部分の最も中心側の紙の内周面を径方向外側に向けて押圧し、前記ロール紙の引き出し部分の幅方向の中心部位を下方に突出した突出部にて押さえる紙押さえ部を、前記ロール紙よりも上方となるように前記ケース内に収納すると共に、前記取出し口は、前記紙押さえ部の突出部を有する辺と同じ形状の開口縁を上下に備えた中央口部と、この中央口部の両側から上方に向けて相対的に緩やかに傾斜した折代形成口部とで成ることを特徴としている(請求項1)。ロール紙は別部材の軸棒を挿入可能なように芯のないコアレスロール紙を用いるのが好適である。また、印刷装置は、携帯可能な小型のものが好適である。そして、紙押さえ部の突出部の突出形状は、例えば逆三角形状となっている。
【0010】
これにより、ロール紙のロール部分の中心に装着された軸棒は、ロール部分の最も内周側を暫時伸長していく押圧部によりロール部分の中心から外周側に向けて押圧し続けるため、ロール部分の巻量が減少しても、ロール部分の最も内周側の内径寸法が拡大して、ロール部分の最大外径寸法については略同じ寸法を保つことができる。また、ロール紙の引き出し部分は、ケースの取出し口までの間において紙押さえ部の突出した部位により丸まる方向と逆方向から押さえ付けられて均され且つその横幅方向の中心に折り目を付けられる。更に、ロール紙の引き出し部分は、ケースの取出し口を通過する際にも、取出し口の折り目部により横幅方向の両側に折り目を付けられると共に、取出し口の中央口部により紙押さえ部で形成された折り目で引っ掛かることがない。
【0011】
そして、この発明に係るロール紙の巻き癖防止機構付き印刷装置の紙送り構造では、前記軸棒の押圧部は、操作機構の操作部を操作することによりこの軸棒の中心側に収縮する収縮構造となっていることを特徴とする(請求項2)。操作機構の操作部を操作するとは、例えば操作部を押して操作部を軸棒の軸棒本体の空洞内に進入させることである。これにより、ロール紙の初期時にはロール部分の中心の空洞はその内径寸法が相対的に小さいが、このロール部分の空洞に軸棒を無理なく挿入し装着させることができる。
【0012】
そして、この発明に係るロール紙の巻き癖防止機構付き印刷装置の紙送り構造では、前記ローラに対して前記ロール紙の引き出し部分の引き出し方向の前方又は後方に、前記ロール紙の引き出し部分を前記取出し口に案内するためのローラを更に有するもことを特徴とする(請求項3)。これにより、ロール紙のロール部分から引き出された引き出し部分をケースの取出し口まで確実に案内することができる。特に、このローラにより巻き癖の方向と逆方向にロール紙の引き出し部分を巻回させることにより、ロール紙の巻き癖を弱めることが可能である。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、この発明によれば、ロール紙のロール部分の最も内周側が軸棒の暫時伸長していく押圧部によりロール部分の中心から外周側に向けて押圧され続けているため、ロール部分の巻量が減少しても、ロール部分の最も内周側の内径寸法が拡大してロール部分の最大外径寸法について略同じ寸法を保つことができることから、ロール紙が使用されて巻量が減少してロール部分の外径寸法が相対的に小さくなることがなく、よって、ロール紙の巻量の減少でロール紙の巻き癖が強くなることを防止することが可能である。このため、ロール紙のロール部分の巻量が相対的に減少した場合に、印刷して切り離したシートが丸まるのを防止するために、ロール部分に残量があるのにロール紙を交換する必要がなく、コストの削減を図ることが可能である。
【0014】
また、この発明によれば、ロール紙の引き出し部分について、ケースの取出し口までの間において紙押さえ部の突出した部位により丸まる方向と逆方向から押さえ付けられ且つその横幅方向の中心に折り面を付けられ、更に、ケースの取出し口を通過する際にも、取出し口の中央口部により横幅方向の中心に折り面を付けられると共に取出し口の折り目部により横幅方向の両側に折り目を付けられるので、取出し口から取出してシートにしてから折り目を付ける必要がなくなる。
【0015】
よって、ロール紙の引き出し部分が切断されてシートになったときに丸まり難くなり、郵便受け等に投函する場合に、シートに印刷された情報を読み難くなったり、他の郵便物等と紛れてしまったりするおそれが減少する。
【0016】
特に請求項2に記載の発明によれば、ロール紙の初期時にはロール部分の中心の空洞はその内径寸法が相対的に小さいが、このロール部分の空洞に押圧部を備えた軸棒を無理なく挿入し装着させることができるので、ロール紙のロール部分への軸棒の装着を簡易に行うことが可能となる。
【0017】
特に請求項3に記載の発明によれば、ロール紙のロール部分から引き出された引き出し部分をケースの取出し口まで確実に案内することができる。しかも、ロール紙の巻き癖の方向と逆方向にロール紙の引き出し部分をこのローラに巻回させることにより、ロール紙の巻き癖を弱めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、この発明に係るロール紙の巻き癖防止機構付き印刷装置の紙送り構造の一例を説明するための概略図である。
【図2】図2は、同上のロール紙の巻き癖防止機構付き印刷装置の紙送り構造を構成する軸棒の斜視図であり、図2(a)は、軸棒がロール紙のロール部分の内周を押すために押圧部が拡がった状態を示し、図2(b)は、軸棒をロール紙のロール部分の空洞に装着しやすいように押圧部が収縮した状態を示している。
【図3】図3は、同上のロール紙の巻き癖防止機構付き印刷装置の紙送り構造を構成する軸棒の断面であり、図3(a)は、図2(a)に対応して軸棒がロール紙のロール部分の内周を押すために押圧部が径方向外側に拡がるようにする構成を示し、図3(b)は図2(b)に対応して軸棒をロール紙のロール部分の空洞に装着しやすいように押圧部が径方向内側に収縮する構成を示している。
【図4】図4は、同上のロール紙の巻き癖防止機構付き印刷装置の紙送り構造を構成する紙押さえ部の特に突出部の形状を説明するためのもので、図1のA−A線断面図である。
【図5】図5は、同上のロール紙の巻き癖防止機構付き印刷装置の紙送り構造を構成する取出し口の開口形状を説明するためのもので、図1のB−B線断面図である。
【図6】図6は、図1に示されるロール紙の巻き癖防止機構付き印刷装置の紙送り構造に対する他の例として、ローラの配置が異なるロール紙の巻き癖防止機構付き印刷装置の紙送り構造を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1において、この発明が用いられる印刷装置1の一例の概略構成が示されている。この印刷装置1は、携帯可能な小型のもので、コアレス(芯なし)タイプのロール紙2を印刷用紙として使用しており、このロール紙2に電力量の検針結果等の情報を印刷した後、取出し口3から引き出して適宜な長さに切断して、顧客への電力量お知らせ紙等のシートを作成することが可能である。
【0021】
そして、印刷装置1は、この実施例では、ケース4内にロール紙2を収納するためのロール紙収納部5と、このロール紙2の後述する引き出し部分22に印刷を行う印刷ユニット6と、印刷された引き出し部分22を取出し口3まで案内するためのローラ7と、取出し口3から引き出された引き出し部分22を適宜な長さに切断するためのカッターデバイス8とを備えている。
【0022】
このうち、ケース4は、例えばプラスチック等の樹脂素材や鉄、アルミニウム等の金属素材により形成されているもので、ロール紙収納部5が載置される底面41及びこの底面41と対峙した開口部42を有するケース本体4aと、このケース本体4aにヒンジ43を介して連結されることにより、ケース本体4aに遠近する方向に可動してその開口部42を開閉可能なカバー4bとで構成されている。
【0023】
また、印刷ユニット6は、例えばサーマルヘッド61とプラテンローラ62とを有して構成されている。
【0024】
サーマルヘッド61は、ロール紙2の引き出し部分22の短手方向の幅に多数の発熱素子(図示せず。)を有しており、これらの発熱素子は、図示しない制御ユニットからの制御信号に基づいてそれぞれ発熱するように制御されている。このように、発熱素子の発熱を制御することで、各種文字や図形等を引き出し部分22の下面に印刷することが可能となっている。そして、このサーマルヘッド61は、図示しないコイルバネ等の弾性機構によりプラテンローラ62側に付勢されている。
【0025】
また、プラテンローラ62は、その外周面がサーマルヘッド61に引き出し部分22を挟んで接触するようにカバー4b側に配置されているもので、このプラテンローラ62はゴム等の弾性素材により形成されている。プラテンローラ62の一端側には、図示しない従動歯車が固定されて、この従動歯車がステップモータ等で回転する図示しない歯車機構の歯車に噛合している。これにより、ステップモータから出力される回転力が歯車機構の歯車から従動歯車に伝達されて、プラテンローラ62が回転し、引き出し部分22を取出し口3側に送り出すことが可能になっている。ステップモータも前記した図示しない制御ユニットからの制御信号で制御されている。
【0026】
そして、カッターデバイス8は、この実施例では、ケース本体4aの取出し口3よりも外側に配置されている。更に、カッターデバイス8は、この実施例では、取出し口3に対しカバー4b側に配置された切断刃81と、取出し口3に対しケース本体4aの底面41側に配置された切断刃82とが対峙することで構成されている。ここで、切断刃81は固定刃とし、切断刃82は図示しない制御ユニットからの制御信号に基づいて駆動する図示しないモータによって、切断刃81の基部側に向かってこの切断刃81と重なるようにスライドする可動刃としても良い。これにより、ロール紙2の引き出し部分22を自動的にシートになるように適宜切断することが可能となる。尚、切断刃82を固定刃とし、切断刃81をモータからの駆動力で切断刃81側にスライドする可動刃とすることも可能である。
【0027】
ところで、印刷装置1は、ロール紙の巻き癖防止機構付きの紙送り構造を有している。このロール紙の巻き癖防止機構付きの紙送り構造について、図1から図5に基づきその一例を示すと、ロール紙2のロール部分21に装着される軸棒10と、印刷ユニット6からローラ7までの範囲に配置された紙押さえ部11と、ローラ7とは別個にケース4内に存するローラ12と、取出し口3の開口形状とで成っている。
【0028】
このうち、軸棒10は、図2及び図3に示されるように、円柱状でロール紙2の軸方向寸法と略同じ軸方向寸法を有する軸棒本体101と、この軸棒本体101の円周面から放射状に延びた複数(この実施例では8)の押圧部102と、この押圧部102を操作するための操作機構103とを有している。
【0029】
軸棒本体101は、図3に示されるように、内部に空洞104を有するもので、長手方向の一方端に空洞104と連通する開口部105が形成されて、操作機構103の後述する操作部106がこの開口部105から空洞104内に出没自在にスライドすることを可能とし、更に後述する操作機構103の引っ張り用ケーブル111や弾性機構110も空洞104内に収納している。
【0030】
各押圧部102は、軸棒本体101の側面から突出した基部107と、押圧本体108とで構成されている。基部107は、軸棒本体101に一体的に形成されており、図3に示されるように、押圧本体108の立壁部108aが軸棒10の径方向に出没可能なように上方が開口している。押圧本体108は、図3に示されるように、基部107の開口内に挿入される立壁部108aと、この立壁部108aの先端に配された押板108bとが一体に形成されたものとなっている。そして、基部107の開口内にて押圧本体108の立壁部108aと基部107の底面との間には、図3に示されるように、コイルバネ等から成る弾性部材109が介在されている。
【0031】
これにより、操作部106を操作しない通常時において、弾性部材109による付勢力により、押圧本体108の立壁部108aが押されて、押圧本体108の押板108bがその外側にある被押体(ロール紙2のロール部分21)を常に図3(a)の矢印方向に押圧することができる。尚、弾性部材109による付勢力を一定にせずロール部分21の巻量に応じて変化させるようにしても良い。また、押圧本体108の押板108bは湾曲しており、その曲率は、隣り合う押板108b同士が当接した場合に、図2(b)に示されるように、全ての押板108bで円環を形成するものとしても良い。
【0032】
操作機構103は、軸棒本体101の空洞104内に大部分が収納された円柱状の操作部106と、軸棒本体101の空洞104内において開口部105側とは反対側に収納され、操作部106を開口部105から外部に押し出す方向に付勢している弾性機構110と、軸棒本体101及び押圧部100の押圧本体108を連結した引っ張り用ケーブル111とで構成されている。この引っ張り用ケーブル111は、この実施例では、図3に示されるように、一端が押圧本体108の押板108bの内側面に連結されていると共に、その途中部分は、基部107の底部に形成されて軸棒10の空洞104と連通した通孔を通って、他端が軸棒本体101の側面に連結されている。
【0033】
これにより、図3(b)に示されるように、操作機構103の操作部106を白抜き矢印の方向に押した場合には、操作部106が軸棒10の空洞104内を弾性部材109の付勢力に抗して弾性部材109側にスライドするため、引っ張り用ケーブル111の操作部106への連結部分も弾性部材109側に変位するので、引っ張り用ケーブル111は、図3(b)の太い矢印の方向として示すように、押圧本体108の押板108bを基部107側に引っ張ることとなる。このため、押圧本体108の立壁部108aも弾性部材109の付勢力に抗して基部107内に収納されていき、押圧部102全体としては収縮する。
【0034】
従って、ロール紙2のロール部分21の中心に位置する空洞内に軸棒10を装着する際には、操作機構103の操作部106を図3(b)の白抜き矢印の方向に押す操作が行なわれる。これにより、軸棒10の押圧本体108を構成する立壁部108aが軸棒10の軸棒本体101内に収められるので、軸棒10の一の押圧本体108の押板108bから他の一の押圧本体108の押板108bまでの最大寸法L2は、ロール部分21の中心に位置する空洞の内径寸法と等しくなるので、軸棒10をロール紙2のロール部分21に容易に挿入させて装着することができる。ここで、操作部106から手を離すのみで、操作部106に対し弾性機構110からの付勢力により元の位置に復帰する作用が働く。もっとも、図示しないが、操作機構103に操作部106の白抜き矢印の方向への動きを解除するロック解除装置を設けても良い。
【0035】
しかるに、ロール紙2のロール部分21に装着された軸棒10は、ロール部分21の巻量の減少に従って押圧部102の立壁部108bの軸棒本体101からの突出量が増加して、軸棒10の一の押圧本体108の押板108bから他の一の押圧本体108の押板108bまでの最大寸法L1も暫時大きくなっていく。このため、ロール部分21の巻量が減少してもロール部分21の最も内周側の内径寸法が大きくなる一方で、ロール部分21の最大外径寸法は初期時から略一定となる。よって、ロール部分21の最大外径寸法がロール部分の巻量の減少に伴い小さくなることがなく、ロール部分21から引き出された引き出し部分22の巻き癖がロール部分21の巻量の減少で強くなることもなくなる。
【0036】
また、紙押さえ部11は、図1に示されるように、印刷ユニット6よりも取出し口3側に位置していると共に、取出し口3側の端部がローラ7とほぼ一致したものとなるようにケース4内に収納されている。紙押さえ部11は、この実施例では、ロール紙2の引き出し部分22に対し上側に位置し、且つカバー4bを閉じる力を利用して押さえることが容易なように、ケース4のカバー4b側に取り付けられているが、ケース本体4a側に取り付けられていても良い。そして、この紙押さえ部11は、図4に示されるように、ロール紙2の引き出し部分22の短手方向の略中心側に向けて逆三角形状に突出した突出部11aを有している。
【0037】
しかるに、図4に示されるように、紙押さえ部11の突出部11aの下側面又はその頂部によりロール紙2の引き出し部分22をロール紙2の巻き癖が付いた方向と逆方向に押さえて均し、且つ突出部11aにより引き出し部分22に折り目を付けることができる。
【0038】
もっとも、軸棒10がロール紙2のロール部分21の最も内周側を押圧するための構造は、上記したものに限定されず、例えば図示しないが、軸棒本体101の側方周面において円弧状の板体を渦巻き状又はプロペラ状に複数装着し、通常時ではこの板体が展開した状態としてロール部分21の最も内周側を板体の先端で押圧し、操作部106を押すことで板体が軸棒本体101側に集約して、軸棒10の板体を含む最大外径寸法がロール部分21の空洞の内径寸法と略同じになるように収縮する構造としても良い。
【0039】
更に、ローラ12が図1に示されるように既存のローラ7よりも取出し口3側に配置されている。そして、この実施例では、取出し口3の開口位置がローラ7の位置よりも低いことに対応して、ローラ12はローラ7よりも低い位置になっている。これにより、紙押さえ部11とローラ7との間を抜けたロール紙2の引き出し部分22はローラ12側に下がり、ローラ12の円周の下側を回って取出し口3側に送られるので、ロール紙2の引き出し部分22は、ローラ12により巻き癖の方向とは反対に巻回されるので、ロール紙2の引き出し部分22の巻き癖が相対的に弱くなる。
【0040】
そして、取出し口3は、図5に示されるように、中央口部31とその両側の折代形成口部32とで開口形状を形成している。このうち、取出し口3の中央口部31は、紙押さえ部11の突出部11aの逆三角形状の下辺S1と略同じ形状の上縁辺S2及び下縁辺S3とを有して構成されている。また、折代形成口部32は、中央口部31の両側から上方に向けて相対的に緩やかに傾斜した形状となっている。
【0041】
しかるに、ロール紙2の引き出し部分22は、取出し口3を通過する際に、中央口部31があることにより、紙押さえ部11で形成された折り目が取出し口3の開口縁に引っ掛かることがなく、且つこの取出し口3でもロール紙2の引き出し部分22をロール紙2の巻き癖が付いた方向と逆方向に押さえて均し、且つ引き出し部分22の短手方向の中央に対して折り目をより確実に付けることができる。また、ロール紙2の引き出し部分22は、取出し口3を通過する際に、折代形成口部32があることにより、引き出し部分22の両側端が上方に向けて折り曲げることができる。
【0042】
以上のように、この印刷装置1では、軸棒10と、紙押さえ部11と、ローラ12と、取出し口3の開口形状とで成るロール紙の巻き癖防止機構付きの紙送り構造を有することにより、ロール紙2は、ロール部分21から引き出されるまでの時点で巻き癖が強くなってしまうことがなく、引き出し部分22も、紙押さえ部11、ローラ12、取出し口3を通過する際に巻き癖がある方向と反対側に均されたり巻かれたりし、或いは折り目を付けられたり両端が折り曲げられたりするので、引き出し部分22がカッターデバイス8で切断されてシートとなっても丸まり難くすることが可能である。
【0043】
図6において、ロール紙の巻き癖防止機構付きの紙送り構造の変形例が示されている。以下、このロール紙の巻き癖防止機構付きの紙送り構造の変形例について図6を用いて説明する。但し、先の実施例とほぼ同様の構成であるから、その構成の説明は同一の符号を付して省略し、ローラ7、12の配置を中心として以下に説明する。
【0044】
ローラ12は、ローラ7よりも印刷ユニット6側で且つローラ7と同じ高さに配置されている。これに伴い、ローラ7は、図1に示されるローラ7よりも取出し口3に近接した位置に配置されたものとなっている。しかるに、ローラ12とローラ7とが同じ高さに位置しているので、ローラ12によるロール紙2の引き出し部分22の巻回がおこなわれず、引き出し部分22がローラ12により巻き癖が付けられるおそれをなくすことができる。
【0045】
よって、この実施例の変形例でも、ロール紙2は、ロール部分21から引き出されるまでの時点で巻き癖が強くなってしまうことがなく、引き出し部分22も、紙押さえ部11、ローラ12、取出し口3を通過する際に巻き癖がある方向と反対側に均されたり巻かれたりし、或いは折り目を付けられたり両端が折り曲げられたりするので、引き出し部分22がカッターデバイス8で切断されてシートとなっても丸まり難くすることが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 印刷装置
2 ロール紙
3 取出し口
4 ケース
7 ローラ
8 カッターデバイス
10 軸棒
11 紙押さえ部
11a 紙押さえ部の突出部
12 ローラ
21 ロール紙のロール部分
22 ロール紙の引き出し部分
31 取出し口の中央口部
32 取出し口の折代形成口部
101 軸棒本体
102 押圧部
103 操作機構
104 軸棒本体の空洞
105 軸棒本体の開口部
106 操作部
107 基部
108 押圧本体
108a 立壁部
108b 押板
109 弾性部材
110 弾性機構
111 引っ張り用ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷用紙が複数にわたって巻回してなるロール部分及びこのロール部分から引き出される引き出し部分を備えたロール紙がケースに収納され、このケースには印刷された前記ロール紙を外部に取り出すための取出し口が開口し、更に、前記ケース内には前記ロール紙の引き出し部分を前記取出し口まで案内するローラが収納されたロール紙の巻き癖防止機構付き印刷装置の紙送り構造において、
前記ロール紙のロール部分の中心側にこのロール部分の軸方向に延びる軸棒が配置され、この軸棒は、前記ロール紙のロール部分の最も中心側の紙の内周面を径方向外側に向けて押圧する押圧部を有し、
前記ロール紙の引き出し部分の幅方向の中心部位を下方に突出した突出部にて押さえる紙押さえ部を、前記ロール紙よりも上方となるように前記ケース内に収納すると共に、
前記取出し口は、前記紙押さえ部の突出部を有する辺と同じ形状の開口縁を備えた中央口部と、この中央口部の両側から上方に向けて相対的に緩やかに傾斜した折代形成口部とで成ることを特徴とするロール紙の巻き癖防止機構付き印刷装置の紙送り構造。
【請求項2】
前記軸棒の押圧部は、操作機構の操作部を操作することによりこの軸棒の中心側に収縮する収縮構造となっていることを特徴とする請求項1に記載のロール紙の巻き癖防止機構付き印刷装置の紙送り構造。
【請求項3】
前記ローラに対して前記ロール紙の引き出し部分の引き出し方向の前方又は後方に、前記ロール紙の引き出し部分を前記取出し口に案内するためのローラを更に有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のロール紙の巻き癖防止機構付き印刷装置の紙送り構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−43764(P2013−43764A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183869(P2011−183869)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】