説明

ロール紙プリンター及びロール紙プリンターのカバー開閉方法

【課題】ロール紙の飛び出しを防ぎつつロール紙の交換作業の容易化を図ることが可能なロール紙プリンター及びロール紙プリンターのカバー開閉方法を提供する。
【解決手段】プリンター1は、ロール紙11をその回転軸が横向きになる向きで転動可能に収容するロール紙収容部12と、回動することによりロール紙収容部12を開閉するロール紙カバー3と、ロール紙カバー3の回動に伴い変位するテンションローラー35と、を備え、ロール紙収容部12は、ロール紙カバー3の回動に伴いロール紙カバー3の回動方向に回動するように支持され、テンションローラー35は、ロール紙カバー3が開方向へ回動することに伴い、ロール紙収容部12が回動する方向の逆向きにロール紙11を付勢する位置に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙を繰り出して印刷するロール紙プリンター及びロール紙を装着する際に開閉されるロール紙プリンターのカバー開閉方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、POS(Point−Of−Sale)システムなどでは、ロール状の記録紙に印刷を施すレシートプリンター等のロール紙プリンターが用いられている。
このロール紙プリンターとしては、前面に設けられた開口部と、開口部を覆うと共に開閉自在に取り付けられたフロントカバーと、を有するケースを備え、フロントカバーを開くことにより、ロール紙のセットや交換を、プリンターの前方から行うことを可能としたものがある(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3376232号公報
【特許文献2】特開2009−78414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ロール紙は、ケースの内部に収納されるため、フロントカバーを開いても、ロール紙の交換に手間を要していた。
この場合、フロントカバーを開くことにより、ロール紙が前方側へ移動するような構造とすれば、ロール紙の取り出しが容易となるが、フロントカバーを開いた際に、前方へ移動するロール紙が、その慣性によって転がり落ちてしまうおそれがあった。
【0005】
本発明の目的は、ロール紙の飛び出しを防ぎつつロール紙の交換作業の容易化を図ることが可能なロール紙プリンター及びロール紙プリンターのカバー開閉方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することのできる本発明に係るロール紙プリンターは、ロール紙をその回転軸が横向きになる向きで転動可能に収容するロール紙収容部と、
回動することにより前記ロール紙収容部を開閉する開閉カバーと、
前記開閉カバーの回動に伴い変位する付勢部材と、を備え、
前記ロール紙収容部は、前記開閉カバーの回動に伴い前記開閉カバーの回動方向に回動するように支持され、
前記付勢部材は、前記開閉カバーが開方向へ回動することに伴い、前記ロール紙収容部が回動する方向の逆向きに前記ロール紙を付勢する位置に配置されることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、ロール紙収容部が開閉カバーの回動方向に回動されるので、開閉カバーを開くことにより、ロール紙収容部に対するロール紙の取り出し及び装填を容易に行うことができる。
また、開閉カバーが開方向へ回動してロール紙収容部が回動すると、ロール紙収容部に収容されているロール紙が付勢部材によってロール紙収容部の回動する方向と逆向きに付勢される。これにより、ロール紙収容部の回動に伴って慣性によって回動する方向へ飛び出そうとするロール紙の飛び出しを付勢部材によって防止することができる。
つまり、ロール紙の飛び出しを防ぎつつロール紙の交換作業の容易化を図ることができる。
【0008】
本発明のロール紙プリンターにおいて、前記付勢部材は、ロール紙を前記ロール紙収容部に押し付ける方向に付勢することが好ましい。
この構成によれば、ロール紙収容部の回動に伴って慣性によって回動する方向へ飛び出そうとするロール紙を、付勢部材によってロール紙収容部へ押し付け、確実に保持することができる。これにより、ロール紙の飛び出しをより効果的に防止することができる。
【0009】
本発明のロール紙プリンターにおいて、前記ロール紙収容部に収容されたロール紙をシート状に繰り出す繰り出しローラーと、
前記繰り出しローラーの搬送方向下流側に設けられシート状のロール紙を狭持して搬送する搬送ローラーとを備え、
前記付勢部材は、前記繰り出しローラーから前記搬送ローラーまでの搬送路に、前記搬送ローラーに対するロール紙の張力を一定に保つように支持されたテンションローラーであることが好ましい。
この構成によれば、テンションローラーによってロール紙に張力を付与して搬送ローラーにかかる張力を一定に保って紙送り精度を安定させることができる。また、このテンションローラーを、ロール紙の飛び出しを防止する付勢部材としているので、別個の構造を付加することによるコストアップを招くことなく、ロール紙の飛び出し防止を実現することができる。
【0010】
本発明のロール紙プリンターにおいて、前記搬送ローラーと前記テンションローラーが共通の搬送ユニットに設けられており、
前記開閉カバーの開方向への回動開始に伴って前記搬送ユニットが前記開方向に移動して、前記テンションローラーが前記ロール紙収容部内のロール紙に接触可能な位置に変位し、さらに前記開閉カバーが開方向へ回動されることに伴って前記ロール紙収容部が回動されつつ前記ロール紙が前記テンションローラーによって付勢されることが好ましい。
この構成によれば、開閉カバーを開くことにより、搬送ユニットを移動させ、テンションローラーによってロール紙を付勢し、ロール紙の飛び出しを防止することができる。
【0011】
本発明のロール紙プリンターにおいて、前記付勢部材は、前記開閉カバーが完全に開いた状態で前記ロール紙収容部における前記開閉カバー側の端部より上方に配置されることが好ましい。
この構成によれば、ロール紙が飛び出そうとしても、ロール紙収容部における開閉カバー側の端部よりも上方に配置された付勢部材によってロール紙の飛び出しを確実に防止することができる。
【0012】
本発明のロール紙プリンターにおいて、前記開閉カバーの回動により変位してロール紙の移動を規制する移動規制部材を備え、
前記移動規制部材は、前記開閉カバーを閉じた状態では前記ロール紙収容部の上方に配置されるとともに、前記開閉カバーを開いた状態では前記ロール紙収容部より前記開閉カバー側の位置に配置されることが好ましい。
この構成によれば、開閉カバーを開いた際に、ロール紙が慣性によって飛び出そうとしても、ロール紙収容部よりも開閉カバー側の位置に配置される移動規制部材によってロール紙の飛び出しを防止することができる。
【0013】
また、本発明のロール紙プリンターのカバー開閉方法は、ロール紙をその回転軸が横向きになる向きで転動可能に収容するロール紙収容部と、
回動することにより前記ロール紙収容部を開閉する開閉カバーと、を備えたロール紙プリンターのカバー開閉方法であって、
前記開閉カバーを開く工程は、前記ロール紙収容部が前記開閉カバーの開く方向に回転する時に、
前記ロール紙収容部に収容されたロール紙を、前記開閉カバーの開閉動作に伴い変位する付勢部材によって前記開閉カバーの開方向の逆向きに付勢する付勢工程を含むことを特徴とする。
【0014】
この方法によれば、開閉カバーを開方向へ回動してロール紙収容部を回動する際に、ロール紙収容部に収容されているロール紙を付勢部材によってロール紙収容部の回動する方向と逆向きに付勢するので、ロール紙収容部の回動に伴って慣性によって回動する方向へ飛び出そうとするロール紙の飛び出しを付勢部材によって確実に防止することができる。
【0015】
本発明のロール紙プリンターのカバー開閉方法において、前記付勢工程は、前記付勢部材によってロール紙を前記ロール紙収容部に押し付ける動作を含むことが好ましい。
この方法によれば、ロール紙収容部の回動に伴って慣性によって回動する方向へ飛び出そうとするロール紙を、付勢部材によってロール紙収容部へ押し付け、確実に保持することができる。これにより、ロール紙の飛び出しをより効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るロール紙プリンターの一実施形態の外観斜視図である。
【図2】図1のプリンターからプリンターケースを取り外した状態の側面図である。
【図3】図1のプリンターのロール紙カバーを開いた状態の側断面図である。
【図4】図1のプリンターの搬送機構の概略構成を示す概略側面図である。
【図5】図1のプリンターのロール紙カバーを開く動きを説明する側断面図である。
【図6】図1のプリンターのロール紙カバーを開く動きを説明する側断面図である。
【図7】図1のプリンターのロール紙カバーを開く動きを説明する側断面図である。
【図8】図1のプリンターのロール紙カバーを開く動きを説明する側断面図である。
【図9】図1のプリンターのロール紙カバーを開く動きを説明する側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るロール紙プリンター及びロール紙プリンターのカバー開閉方法の実施形態の例を、図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、インクジェットプリンター1は、複数種のカラーインクを使用してロール紙の繰り出された一部にカラー印刷するロール紙プリンターであり、プリンター本体を覆うプリンターケース2の前面中央には、ロール紙カバー(開閉カバー)3が開閉自在に設けられている。ロール紙カバー3の横にはインクカートリッジ挿入口8が設けられ、その内側にインクカートリッジ4が挿入されて収容されている。更に、プリンターケース2の前面には、電源スイッチ5と共にフィードスイッチ6やインジケーター7等も配置されている。
【0018】
図2に示すように、印刷される媒体であるロール紙11は、ロール紙収容部12に収容されており、ロール紙カバー3を開くと、ロール紙11を収容したロール紙収容部12が開放され、ロール紙11の交換が可能になる。
【0019】
ロール紙カバー3はその下端を中心に手前側に回動可能である。ロール紙カバー3の上部には手前側に印刷後のロール紙が排出される排紙部9が設けられ、排紙部9の手前側先端には手前側に摺動可能な開閉スライダ10が設けられる。
【0020】
図3に示すように、開閉スライダ10に指をかけて前方に引くと、開閉スライダ10が前方に移動してロックが解除される。この状態で、さらに開閉スライダ10を手前に引くと、ロール紙カバー3が下端を中心に回動して開き、ロール紙カバー3の奥に設けられたロール紙収容部12が露出され、ロール紙収容部12にロール紙を投入できるように構成されている。
【0021】
図4に示すように、ロール紙収容部12の後方上部には、ロール紙収容部12に収容されたロール紙11をシート状に繰り出す繰り出しローラー34が設けられている。そして、ロール紙収容部12及び繰り出しローラー34から、ロール紙11をシート状に繰り出して供給するロール紙供給装置39が構成されている。
【0022】
この繰り出しローラー34の下流側には、ロール紙11を挟持して搬送するメイン送りローラー(搬送ローラー)36が設けられている。また、繰り出しローラー34からメイン送りローラー36までの搬送路には、メイン送りローラー36に対するロール紙11の張力を一定に保つように、装置後方へ付勢されたテンションローラー(付勢部材)35が設けられている。
【0023】
さらに、メイン送りローラー36の下流側には、ロール紙11を挟持して搬送するフロント送りローラー37が設けられ、メイン送りローラー36とフロント送りローラー37との間には、プラテン26が設けられている。また、排紙部9には、印刷されたロール紙11を切断するカッター38が設けられている。
【0024】
ロール紙11は、ロール紙収容部12から引き出され、繰り出しローラー34、テンションローラー35、メイン送りローラー36、プラテン26、フロント送りローラー37を経て、排紙部9から排出される。これらの搬送ローラーは、歯車またはベルトプーリー機構といった伝達機構を介して繰り出しモーターまたは紙送りモーターにより駆動される。
【0025】
繰り出しローラー34は、ロール紙収容部12に収容されたロール紙11をシート状に引き出して紙送り力を発生させている。メイン送りローラー36は、高精度に回転制御されるもので、ロール紙11を高精度な紙送りピッチで搬送させている。テンションローラー35は、メイン送りローラー36にかかる負荷を一定に保つことで紙送り精度を安定させ、かつロール紙11の弛みを一定量保持することで高速送りを実現させている。
【0026】
さらに、フロント送りローラー37は、一対の円筒状のローラーからなるもので、シート状のロール紙11を十分な挟持力によって挟持しながら排紙部9へ送り出す。これにより、例えば、排紙部9に印刷されて排紙されたロール紙11を引き切った際にも、プラテン26上での紙浮きが防止され、その後も紙浮きによるジャム障害なく良好に印刷が行われる。
【0027】
プリンターケース2内のロール紙収容部12の上方には、インクジェットヘッド(印刷ヘッド)21を搭載したキャリッジ22が設けられている。キャリッジ22は、ロール紙11の幅方向に沿って延在するガイド部材23によって用紙幅方向に移動自在に支持されると共に、ロール紙11の幅方向に延在する無端ベルト(図示省略)と無端ベルトを駆動するキャリッジモーターとによって、プラテン26の上方をロール紙11の幅方向に往復移動可能になっている。キャリッジ22には、インクカートリッジにつながる可撓性を有するインクチューブ27が接続されており、このインクチューブ27を介してインクカートリッジ4からキャリッジ22のインクジェットヘッド21へインクが供給される。
【0028】
インクジェットプリンター1の幅方向の一方側は、往復移動するキャリッジ22の待機位置(ホームポジション)となっている。この待機位置の下方には、キャリッジ22の下面に露出するインクジェットヘッド21の各インクノズル内のインクを吸引するインク吸引機構(図示省略)が設けられている。
【0029】
そして、上記のインクジェットプリンター1では、往復移動するキャリッジ22のインクジェットヘッド21からロール紙11の繰り出された一部に対してインクを吐出して印刷処理を行う。
【0030】
図2及び図3に示すように、ロール紙収容部12は、樹脂製のロール紙ホルダー40を有している。このロール紙ホルダー40は、側面視略円弧状に形成された底板41を有しており、底板41にロール紙11が載置される。これによりロール紙11は、その回転軸が横向きになる向きで転動可能にロール紙収容部12に収容される。
このロール紙収容部12は、ケース2内のブラケット42に対して連結ピン43によって回動可能に連結されている。
【0031】
また、ロール紙収容部12の側部には、リンク機構が設けられている。このリンク機構は、第1リンク部材51及び第2リンク部材52が、ピン節点53を介して直列に連結された前方複合リンクAと、第3リンク部材61及び第4リンク部材62が、ピン節点63を介して直列に連結された後方複合リンクBとを備えている。前方複合リンクAは、第1リンク部材51からなる第1リンクAuと、第2リンク部材52からなる第2リンクAlとを有しており、後方複合リンクBは、第3リンク部材61からなる第3リンクBuと、第4リンク部材62からなる第4リンクBlとを有している。
【0032】
また、これらの前方複合リンクA及び後方複合リンクBには、ピン節点53,63に連結リンク部材(図示省略)が架け渡されており、これにより、前方複合リンクA及び後方複合リンクBが連結リンク部材からなる連結リンクCを介して互いに連結されている。
そして、前方複合リンクA、後方複合リンクB及び連結リンクCからリンク機構が構成されている。
【0033】
前方複合リンクA及び後方複合リンクBの下端は、それぞれインクジェットプリンター1の底部に、連結ピン81,82によって回動可能に連結されている。また、前方複合リンクA及び後方複合リンクBの上端は、先端に開閉スライダ10が設けられたプラテンユニット(搬送ユニット)85に、連結ピン83,84によって回動可能に連結されている。このプラテンユニット85は、プラテン26、テンションローラー35、メイン送りローラー36及びフロント送りローラー37の下方側のローラー等が設けられたユニットである。
【0034】
このプラテンユニット85には、ロール紙収容部12側に、複数のガードピン(移動規制部材)86が設けられており、これらのガードピン86によってロール紙11のプラテンユニット85側への移動が規制され、ロール紙11がプラテンユニット85の機構部分へ干渉することによる不具合が防止されている。
【0035】
ロール紙カバー3は、プラテンユニット82に対して回動可能に連結されたカバー部3aと、インクジェットプリンター1の底部に対して回動可能に連結されたフレーム部3bとを有している。これらのカバー部3aとフレーム部3bとは、互いにスライド可能に連結されており、これにより、ロール紙カバー3は、伸縮可能とされている。
【0036】
次に、ロール紙収容部12にロール紙11が収容された状態において、ロール紙カバー3を開く場合について説明する。
図2に示すように、ロール紙カバー3が閉じた状態において、開閉スライダ10に指をかけて前方に引くと、開閉スライダ10が前方に移動してロックが解除される。この状態で、さらに開閉スライダ10を手前に引くと、図5に示すように、ロール紙カバー3が下端を中心に回動して開き、プラテンユニット85が前方へ引き出される。
【0037】
このとき、プラテンユニット85は、6節リンク状態のリンク機構によって姿勢が水平に保持された状態で直線的に前方へ移動するので、インクジェットヘッド21またはロール紙11に干渉することなく、前方へ引き出される。
【0038】
さらに、開閉スライダ10を手前に引くと、図6に示すように、プラテンユニット85が直線的に前方へ引き出され、リンク機構の前方複合リンクAの第1リンクAuと第2リンクAlとが直線状となり、同様に、後方複合リンクBの第3リンクBuと第4リンクBlとが直線状となる。これにより、リンク機構は、前方複合リンクAと後方複合リンクBとからなる4節リンク状態となり、その後は、直線状の前方複合リンクA及び後方複合リンクBからなる4節リンク状態の平行リンク機構が構成され、プラテンユニット85が水平を維持しながら円弧状に移動することとなる。また、ロール紙カバー3は、カバー部3aとフレーム部3bとが互いにスライドすることにより伸ばされる。
【0039】
その後、リンク機構は、前方複合リンクA及び後方複合リンクBが直線的に伸びきった4節リンク状態(最大のリンク長の状態)で前方に旋回するので、開閉スライダ10は、曲率半径の大きな円弧状の移動軌跡に沿って移動する。すると、図7に示すように、プラテンユニット85の後方において突出したテンションローラー35が、ロール紙11に接触する。
【0040】
この状態から、さらにプラテンユニット85が移動すると、図8に示すように、ロール紙収容部12が、連結ピン43によって連結されたブラケット42との連結箇所を中心としてプラテンユニット85とともに回動される。
【0041】
また、このとき、ロール紙収容部12に保持されているロール紙11に対して当接されたテンションローラー35がプラテンユニット85側へ向かって押し込まれる。これにより、ロール紙11は、テンションローラー35からの反力を受け、このテンションローラー35と、ロール紙収容部12の後端12aとによって挟み込まれた状態でロール紙収容部12内に保持される。
【0042】
なお、このとき、ロール紙11は、ロール紙収容部12内において回転可能に保持され、しかも、テンションローラー35自体も回転可能なローラーである。したがって、ロール紙11とテンションローラー35とが接触したとしても、これらのロール紙11とテンションローラー35とが互いに回転することとなり、プラテンユニット85の移動時の負荷となることなく、ロール紙カバー3の開動作が円滑に行われる。
【0043】
さらに、プラテンユニット85が移動すると、図9に示すように、テンションローラー35とロール紙収容部12の後端12aとが、ロール紙11を挟持した状態でロール紙収容部12も回動し、ロール紙収容部12の後端12aがテンションローラー35よりも上方に配置される。そして、テンションローラー35は、ロール紙11によってさらにプラテンユニット85側へ押し込まれる。
【0044】
また、この状態では、ロール紙収容部12がブラケット42との連結箇所を中心として回動することより、ロール紙11が持ち上げられながらインクジェットプリンター1の前方側へ移動される。したがって、ロール紙11には、インクジェットプリンター1の前方側への移動の慣性によってプラテンユニット85を乗り越えて転出する力が生じる。
【0045】
しかし、この状態において、テンションローラー35は、ロール紙収容部12の底部よりも高い位置に配置されているため、ロール紙11は、テンションローラー35によってプラテンユニット85側への飛び出しが防止される。
【0046】
また、テンションローラー35が回転可能であるので、ロール紙11が慣性によってテンションローラー35を乗り越えようとすると、テンションローラー35も回転することとなり、ロール紙11の慣性力がテンションローラー35の回転によって相殺され、このことからも、ロール紙11の飛び出しが防止される。
【0047】
図3に示すように、ロール紙カバー3が完全に開かれると、ロール紙収容部12がブラケット42との連結箇所を中心として回動することより、ロール紙11がインクジェットプリンター1の前方側へさらに移動される。また、プラテンユニット85が最下部に配置され、テンションローラー35もロール紙11の下方側に配置されるとともに引き込んだ状態に保持され、ロール紙収容部12の前方側が大きく開かれる。これにより、ロール紙収容部12からのロール紙11の取り出しを容易に行うことができ、また、ロール紙収容部12へのロール紙11の装填も容易に行うことができる。
【0048】
また、この状態では、テンションローラー35とロール紙収容部12の後端12aとによるロール紙11の挟持が解除される。また、この状態において、前述と同様に、インクジェットプリンター1の前方側への移動の慣性によってロール紙11が転出しようとしても、テンションローラー35が、ロール紙収容部12の底部よりも高い位置に配置され、また、テンションローラー35が回転してロール紙11の慣性力を相殺することとなる。よって、ロール紙11の飛び出しが防止される。
【0049】
また、この時点において、ガードピン86のうちの一つが、プラテンユニット85とテンションローラー35との間で上方へ突出した状態に配置される。これにより、このガードピン86によってもロール紙11の転出が防止される。
【0050】
このように、上記実施形態に係るロール紙プリンター及びロール紙プリンターのカバー開閉方法によれば、ロール紙収容部12のロール紙収容部12がロール紙カバー3の回動方向に回動されるので、ロール紙カバー3を開くことにより、ロール紙収容部12に対するロール紙11の取り出し及び装填を容易に行うことができる。
【0051】
また、ロール紙カバー3が開方向へ回動してロール紙収容部12が回動すると、ロール紙収容部12に収容されているロール紙11がテンションローラー35によってロール紙収容部12のロール紙ホルダー40の回動する方向と逆向きに付勢される。これにより、ロール紙収容部12の回動に伴って慣性によって回動する方向へ飛び出そうとするロール紙11の飛び出しをテンションローラー35によって防止することができる。
【0052】
インクジェットプリンター1の外形高さを抑えるためには、ロール紙カバー3を閉じた状態において、製品外形に対してロール紙11の位置を可能な限り低くする必要がある。一方、ロール紙11のセット性を向上させるためには、ロール紙カバー3の開時に、プラテンユニット85の上面位置近くまでロール紙11を持ち上げることが望まれる。
【0053】
特に、近年では、印刷高速化のためプラテンユニット85に複雑な機構を搭載することが要求されているため、プラテンユニット85の厚みが厚くなる傾向があり、よって、ロール紙カバー3を開いた状態におけるロール紙11の位置をより高くすることが望まれている。しかし、このように、ロール紙カバー3を開いた際に、ロール紙11を高い位置に配置させると、慣性力によるロール紙11の飛び出しが容易に生じてしまう。
【0054】
このような場合であっても、本実施形態のインクジェットプリンター1によれば、ロール紙11の飛び出しをテンションローラー35によって確実に防止することができる。つまり、ロール紙11の飛び出しを防ぎつつロール紙11の交換作業の容易化、装置の小型化を図ることができる。
【0055】
特に、ロール紙収容部12の回動に伴って、慣性によって回動する方向へ飛び出そうとするロール紙11を、テンションローラー35によってロール紙収容部12の後端12aへ押し付け、挟持した状態で確実に保持することができ、ロール紙11の飛び出しをより効果的に防止することができる。
【0056】
また、ロール紙11に張力を付与してメイン送りローラー36にかかる張力を一定に保って紙送り精度を安定させるテンションローラー35を、ロール紙11の飛び出しを防止する付勢部材としているので、別個の構造を付加することによるコストアップを招くことなく、ロール紙11の飛び出し防止を実現することができる。
【0057】
また、ロール紙カバー3を完全に開いた状態では、テンションローラー35が、ロール紙収容部12におけるロール紙カバー3側の端部より上方に配置されるので、テンションローラー35を乗り越えなければロール紙11が飛び出すことはないこととなる。よって、ロール紙カバー3の完全開状態においても、ロール紙11の飛び出しをテンションローラー35によって確実に防止することができる。
【0058】
しかも、ロール紙カバー3を開いた際に、ロール紙11が慣性によって飛び出そうとしても、ロール紙収容部12よりもロール紙カバー3側の位置に配置されるガードピン86によってロール紙11の飛び出しを防止することができる。
【0059】
また、ロール紙カバー3を開いた状態では、テンションローラー35がロール紙収容部12におけるロール紙カバー3側の端部より上方に配置され、しかも、ロール紙収容部12よりもロール紙カバー3側の位置にガードピン86が配置されるので、ロール紙11が小径であっても、その飛び出しを確実に防止することができる。
【0060】
前述の実施の形態では、被印刷体である媒体として、フィルム、布、金属薄板等を用いてもよい。
【0061】
前述の実施形態に係るインクジェットプリンターに、コンピューター本体、CRT等の表示装置、入力装置、フレキシブルディスクドライブ装置、及びCD−ROMドライブ装置がそれぞれ有する機能又は機構の一部を持たせてもよい。例えば、プリンターが、画像処理を行う画像処理部、各種の表示を行う表示部、及び、デジタルカメラ等により撮影された画像データーを記録した記録メディアを着脱するための記録メディア着脱部を有する構成としてもよい。
【0062】
本実施形態に係るプリンター、コンピューター本体、CRT等の表示装置、マウスやキーボード等の入力装置、フレキシブルドライブ装置、及びCD−ROMドライブ装置を備えたコンピューターシステムとすれば、システム全体として従来システムよりも優れたシステムとなる。
【0063】
上記各実施の形態では、印刷装置としてカラーインクジェットプリンターを用いたが、ロール紙に対して印刷処理できる印刷装置であれば、これに限られることなく、例えば、モノクロインクジェットプリンター、レーザプリンター、サーマルプリンター、ファクシミリ等に適用しても良い。
【符号の説明】
【0064】
1…インクジェットプリンター(ロール紙プリンター)、3…ロール紙カバー(開閉カバー)、11…ロール紙、12…ロール紙収容部、34…繰り出しローラー、35…テンションローラー(付勢部材)、36…メイン送りローラー(搬送ローラー)、85…プラテンユニット(搬送ユニット)、86…ガードピン(移動規制部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール紙をその回転軸が横向きになる向きで転動可能に収容するロール紙収容部と、
回動することにより前記ロール紙収容部を開閉する開閉カバーと、
前記開閉カバーの回動に伴い変位する付勢部材と、を備え、
前記ロール紙収容部は、前記開閉カバーの回動に伴い前記開閉カバーの回動方向に回動するように支持され、
前記付勢部材は、前記開閉カバーが開方向へ回動することに伴い、前記ロール紙収容部が回動する方向の逆向きに前記ロール紙を付勢する位置に配置されることを特徴とするロール紙プリンター。
【請求項2】
請求項1に記載のロール紙プリンターであって、
前記付勢部材は、ロール紙を前記ロール紙収容部に押し付ける方向に付勢することを特徴とするロール紙プリンター。
【請求項3】
請求項1または2に記載のロール紙プリンターであって、
前記ロール紙収容部に収容されたロール紙をシート状に繰り出す繰り出しローラーと、
前記繰り出しローラーの搬送方向下流側に設けられシート状のロール紙を狭持して搬送する搬送ローラーとを備え、
前記付勢部材は、前記繰り出しローラーから前記搬送ローラーまでの搬送路に、前記搬送ローラーに対するロール紙の張力を一定に保つように支持されたテンションローラーであることを特徴とするロール紙プリンター。
【請求項4】
請求項3に記載のロール紙プリンターであって、
前記搬送ローラーと前記テンションローラーが共通の搬送ユニットに設けられており、
前記開閉カバーの開方向への回動開始に伴って前記搬送ユニットが前記開方向に移動して、前記テンションローラーが前記ロール紙収容部内のロール紙に接触可能な位置に変位し、さらに前記開閉カバーが開方向へ回動されることに伴って前記ロール紙収容部が回動されつつ前記ロール紙が前記テンションローラーによって付勢されることを特徴とするロール紙プリンター。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載のロール紙プリンターであって、
前記付勢部材は、前記開閉カバーが完全に開いた状態で前記ロール紙収容部における前記開閉カバー側の端部より上方に配置されることを特徴とするロール紙プリンター。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載のロール紙プリンターであって、
前記開閉カバーの回動により変位してロール紙の移動を規制する移動規制部材を備え、
前記移動規制部材は、前記開閉カバーを閉じた状態では前記ロール紙収容部の上方に配置されるとともに、前記開閉カバーを開いた状態では前記ロール紙収容部より前記開閉カバー側の位置に配置されることを特徴とするロール紙プリンター。
【請求項7】
ロール紙をその回転軸が横向きになる向きで転動可能に収容するロール紙収容部と、
回動することにより前記ロール紙収容部を開閉する開閉カバーと、を備えたロール紙プリンターのカバー開閉方法であって、
前記開閉カバーを開く工程は、前記ロール紙収容部が前記開閉カバーの開く方向に回転する時に、
前記ロール紙収容部に収容されたロール紙を、前記開閉カバーの開閉動作に伴い変位する付勢部材によって前記開閉カバーの開方向の逆向きに付勢する付勢工程を含むことを特徴とするロール紙プリンターのカバー開閉方法。
【請求項8】
請求項7に記載のロール紙プリンターのカバー開閉方法であって、
前記付勢工程は、前記付勢部材によってロール紙を前記ロール紙収容部に押し付ける動作を含むことを特徴とするロール紙プリンターのカバー開閉方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−207548(P2011−207548A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75002(P2010−75002)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】