説明

ロール紙供給装置、及びこれを備えた画像記録装置

【課題】電力供給停止時に、可及的に小さな制動力でロール紙の回転を停止させる。
【解決手段】ロール紙供給装置3のロール紙5を回転可能に支持するロール紙支持機構22と、ロール紙5の回転を停止させるためのブレーキ機構27と、を有し、ブレーキ機構27は、本体装置1への電源の供給が停止したときロール紙5の外周面5bへ摩擦抵抗を付与してロール紙5の回転を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール紙を回転可能に支持し、画像記録装置の印刷部などに向けて供給するロール紙供給装置、及び当該ロール紙供給装置を備えた画像記録装置に関する。さらに詳しくは、電力供給停止時にロール紙の回転を可及的に小さな力で停止させることができるロール紙供給装置、及び当該ロール紙供給装置を備えた画像記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロール紙を回転可能に支持し、そのロール紙を印刷装置に供給する供給装置がある。このような供給装置には、印刷装置へのロール紙の供給を緊急停止するとき(電力供給停止時)に、ロール紙の回転を制動するためのブレーキ機構が設けられている。
【0003】
例えば、特許文献1では、巻取紙(ロール状連続紙)を支持するコーン軸にエアーブレーキを設け、このエアーブレーキにロール紙の巻径の変化に合せて圧力調整された圧縮空気を供給することによって、ロール紙の回転を停止させる構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平04−153159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されるロール紙の緊急停止は、ロール紙の中心に挿入された軸を使用して回転を停止させるようにしている。つまり、ロール紙の回転慣性力のトルクが最も大きく働く回転中心部でロール紙の回転を停止させるようにしている。そのため、ロール紙の回転を停止させるのには非常に大きなブレーキ力が必要となるという課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、電力供給停止時に可及的に小さな制動力でロール紙の回転を停止させることができるロール紙供給装置、及び当該ロール紙供給装置を備えた画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明のロール紙供給装置は、ロール紙を回転可能に支持するロール紙支持機構と、ロール紙の回転を停止させるためのブレーキ機構と、を有し、該ブレーキ機構は、本体装置への電源の供給が停止したときロール紙の外周面へ摩擦抵抗を付与してロール紙の回転を停止させる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、電力供給停止時に、可及的に小さな制動力でロール紙の回転を停止させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1に係るロール停止機構を有するロール紙供給装置を備えた画像記録装置の全体正面図である。
【図2】本発明の実施例1に係るロール紙供給装置の図1のX矢視図である。
【図3A】本発明の実施例1に係るロール紙供給装置のブレーキ機構の印刷時の状態を示す図である。
【図3B】本発明の実施例1に係るロール紙供給装置のブレーキ機構のブレーキ動作後の状態を示す図である。
【図4】本発明の実施例1に係るロール紙供給装置のブレーキ機構の一部分を詳細に示す図である。
【図5】本発明の実施例1に係るロール紙供給装置のブレーキ機構の側面図である。
【図6】本発明の実施例1に係るロール紙供給装置のロール紙が小さくなった場合の状態を示す図である。
【図7】本発明の実施例1の変形例に係るロール紙供給装置のブレーキ機構の側面図である。
【図8】本発明の実施例2に係るロール紙供給装置のブレーキ機構の正面拡大図である。
【図9】本発明の実施例2の変形例に係るロール紙供給装置のブレーキ機構の正面拡大図である。
【図10】本発明の実施例3に係るロール紙供給装置の全体正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の実施例1に係るロール停止機構を有するロール紙供給装置を備えた画像記録装置の全体正面図である。
【0012】
図2は、本発明の実施例1に係るロール紙供給装置の図1のX矢視図である。
図1に示すように、画像記録装置1は、プリンタ本体2とロール紙供給装置3と排出装置4とで構成されている。
【0013】
プリンタ本体2は、ロール紙供給装置3から供給されたロール紙5ロール紙5の巻き癖を除去するための巻き癖除去装置6と、ロール紙5にインクを吐出してロール紙5に画像を形成するヘッド部7(7a、7b)と、ヘッド部7の清掃を行なうクリーニング部8(8a、8b)と、ドラム9(9a、9b)及び複数のローラ10で構成されてロール紙5を搬送する搬送部と、を有している。
【0014】
なお、本発明の実施例では、ロール紙5の両面に画像記録を可能とするために、ヘッド部7、クリーニング部8、及びドラム9が、それぞれ2個(7a、7b、8a、8b、9a、9b)配置されている。これら各部はプリンタ本体2内の図示しないフレームに支持されている。
【0015】
排出装置4は、ロール紙5を所望の寸法に切断するカッターユニット11と、切断されたロール紙(切断後はシート状記録媒体)を収納する収納ユニット12と、で構成されている。
【0016】
ロール紙供給装置3は、架台13、架台13上に載直されたモータ14、ヒンジ15によって架台13に固着されたシリンダ16、シリンダ16に装着されたシリンダ軸17とで構成される直動式シリンダ機構18を有している。この直動式シリンダ機構18のシリンダ軸17は、モータ14により駆動されて図1中矢印A方向に進退する。
【0017】
この直動式シリンダ機構18のシリンダ軸17の先端は、ヒンジ19を介して回動桿A21の下端部に連結されている。回動桿A21の上端部は、ロール紙支持基台22の一方の縁部下面に固着されたヒンジ23に連結されている。
【0018】
また、ロール紙支持基台22の他方の縁部下面には、他のヒンジ24が固着されている。このヒンジ24には、回動桿B25が、その長手方向に形成されたスリット26を介して連結されている。
【0019】
また、回動桿B25には、後述するブレーキ機構27が設置されている。さらに、回動桿B25の下端部は、架台13に固着されたヒンジ28と連結されている。これにより、直動式シリンダ機構18が動作してシリンダ軸17が進退することにより、回動桿A21及び回動桿B25は、それぞれヒンジ19及び28を支点にして図1中矢印B方向及び矢印C方向に回動する。
【0020】
なお、回動桿B25には、回動桿A21の回動移動に追従することができるような長さに形成され且つその長さに応じたスリット26が形成されている。
【0021】
また、ロール紙支持基台22の縁部上面には、支持部31が固定して設けられている。この支持部31は、ロール紙5の中心に挿入された軸29を不図示のベアリングを介して上下から挟みつけて支持している。
【0022】
これによりロール紙5は、支持部31に回転可能に支持されている。また、軸29の一方の端部には、ギヤ32が固設され、ギヤ32と噛み合う位置に、他のギヤ33が設置されている。
【0023】
このギヤ33には、プリンタ本体2による印刷実行時においてロール紙5に適正な張力を与えるための不図示のパウダークラッチが連結されている。このパウダークラッチにより、軸29は回転を制御されている。なお、パウダークラッチに限ることなく、ベルトとプーリ等を介して軸29の回転を制御するようにしてもよい。
【0024】
また、軸29の他方の端部には、ロール紙5の外径を測定するための不図示のエンコーダが取り付けられている。本実施例では、ロール紙5を一定の速度で引き出して搬送し、このときのエンコーダから出力される信号に基づいて、ロール紙5の外径を測定している。
【0025】
勿論、ロール紙5の外径の測定は、エンコーダと限ることなく、例えば、ロール紙5の直径方向にセンサを配置し、このセンサの出力によってロール紙5の外径を測定するようにしてもよい。
【0026】
なお、本実施例の画像記録装置1には、特には図示しないが、ロール紙支持基台22を水平に保つための制御機構も搭載されている。
【0027】
次に、ブレーキ機構27について説明する。
図3Aは、ロール紙支持基台22にロール紙5が装着され、ロール紙5に対するプリンタ本体2による印刷が実行中のときにおける、ブレーキ機構27の待機状態を示す図である。
【0028】
図3Bは、ブレーキ機構27のブレーキ動作後の状態を示す図である。
図4は、図3Aを矢印Y方向に見た図である。
図5は、図3AのA−A´断面矢視図である。
【0029】
図3A、図3B、図4、図5に示すように、ブレーキ機構27は、スライドガイド34を介して回動桿B25を摺動するブレーキ基台35を有している。なお、スライドガイド34とブレーキ基台35は、磨耗したスライドガイド34の交換に備えて、それぞれ別部材を用いて一体化して構成されている。
【0030】
また、このブレーキ基台35には、トルクリミッタ36が配設されている。このトルクリミッタ36は、図4、図5に示すように、ブレーキローラ37の軸38と連結されている。また、ブレーキローラ37の軸38は、ベアリング39を介して回動桿B25のスリット26に嵌合している。
【0031】
なお、ブレーキローラ37は、ロール紙5の外周面5bと接触しても滑りにくいように表面加工されているか、又は滑りにくい材質で構成されている。
【0032】
また、ブレーキ基台35には、図3A、図3Bに示すように、バネポスト41が設けられている。このバネポスト41は、引きバネ42の一方の端部を係止している。引きバネ42の他方の端部は、ロール紙支持基台22の不図示のバネポストに係止している。
【0033】
これにより、ブレーキ基台35は、引きバネ42によって常に図3Aに示す矢印F方向へ付勢されている。つまり、このブレーキ基台35に保持されているブレーキローラ37は、常にロール紙5の外周面5bに向けて付勢されている。
【0034】
さらに、ブレーキ基台35には支持ピン43を支点にして回動可能に配置されたフック部材44が配設されている。フック部材44は、支持ピン43より下方の端部にフック部44aが形成され、支持ピン43より上方の端部には引きバネ45の一方の端部が係止している。
【0035】
そして、引きバネ45の他方の端部は、ブレーキ基台35に固設されたバネポスト46に係止している。この引きバネ45の引き付勢力により、図3A、図3Bにおいて、フック部材44を反時計回りに回動する方向に付勢されている。
【0036】
また、ブレーキ機構27は、回動桿B25のブレーキ基台35よりも下方の所定の位置に固着されたフック係合基台47を備えている。このフック係合基台47には(以下、図5も参照)、中空六面体の一方向に連続する三面を削除した形状(略コの字型)のブラケット48が、開口部側端部をフック係合基台47に固定されて配設されている。
【0037】
そして、このブラケット48の三面の中央面外側に、直動式電磁ソレノイド49が配設されている。直動式電磁ソレノイド49のピストン軸51は、ブラケット48の中央面を貫通して、ブラケット48の中空内を進退するように構成されている。
【0038】
すなわち、ロール紙供給装置3がプリンタ本体2にロール紙5を供給中でロール紙5が回転しいているときは、直動式電磁ソレノイド49は通電中であり、ピストン軸51がブラケット48の中空部に突出し、図3Aに示すように、フック部材44のフック部44aがピストン軸51に係合している。
【0039】
このとき、フック部材44は、引きバネ45の引き付勢力によって、ピストン軸51との係合が外れない方向に付勢されている。これにより、ブレーキ基台35はフック係合基台47に係合した状態で位置固定される。また、この状態で、ブレーキ基台35のブレーキローラ37は、ロール紙5の外周面5bから離間している。
【0040】
なお、直動式電磁ソレノイド49の通電でブラケット48の中空部に突出するピストン軸51には、不図示の付勢部材が係合しており、この付勢部材の付勢によって、直動式電磁ソレノイド49の非通電時にはピストン軸51はソレノイド内に引き込むようになっている。
【0041】
また、ブレーキ基台35には、手動用レバー52が配設されている。この手動用レバー52は、ブレーキ基台35を図3Bに示すブレーキ位置からを図3Aに示す非ブレーキ位置に戻す時に用いられる。
【0042】
すなわち、手動用レバー52を持ってブレーキ基台35を矢印d方向、つまりフック係合基台47方向に引き下げ、図3A、図5に示すように、ロール紙5の外周面5bとブレーキローラ37とを引き離すと共に、ブレーキ基台35のフック部材44をブラケット48の中空内に進出したフック係合基台47のピストン軸51と係合する。
【0043】
次に本実施例の動作について説明する。画像記録装置1に電源を通電してロール紙供給装置3に装着するロール紙5の大きさをプリンタ本体2またはロール紙供給装置3に設けた不図示の制御パネルから選択する。
【0044】
この制御パネルからの選択入力により、不図示の制御部からの制御により、図1に示す直動式シリンダ機構18のシリンダ軸17が移動し、この移動に連動して回動桿A21、回動桿B25およびロール紙支持基台22が移動して、ロール紙支持基台22に装着されるロール紙5の外径に合わせた最適位置に全体が移動する。
【0045】
画像記録開始指令により、ドラム9a、9b及び複数のローラ10により、ロール紙5を下流へと搬送すると共に、巻き癖除去装置6によって巻き癖が除去し、外部から与えられた画像情報に基づく画像が、ヘッド部7a及び7bによって記録される。
【0046】
画像を記録されたロール紙5は、カッターユニット11により所望の寸法に切断され、切断されたロール紙5を収納ユニット12に収納する。
【0047】
印刷された(画像が記録された)ロール紙5に、例えば白筋などのインク吐出不良箇所が発見された場合は、ヘッド部7aおよび7bが上昇し、ヘッド部7aおよび7bとドラム9aおよび9bの間に挿入されたクリーニング部8aおよび8bがヘッド部7aおよび7bに当接してノズル回復動作が実施される。
【0048】
印刷が実施されている間、ロール紙5は、軸29を中心に回転し、プリンタ本体2へロール紙5を供給している。軸29の端部に設けられたギヤ32とそれに噛みあうギヤ33およびギヤ33に固着されている不図示のパウダークラッチにより、ロール紙5には逐次検出されるロール紙5の外径に合わせた適正な張力が与えられている。
【0049】
図6は、ロール紙5への画像形成が継続され、ロール紙5の消費が進んでロール紙5の外径が逐次小さくなっていく場合の状態を示す図である。
【0050】
画像記録装置1における印刷が続き、ロール紙5の外径が小さくなると、ロール紙5の外径に合わせて、直動式シリンダ機構18のシリンダ軸17がモータ14によって矢印Aで示す図の右方向に移動し、シリンダ軸17の先端に固着されているヒンジ19が移動し、回動桿A21が矢印Bで示す架台13方向に回動する。
【0051】
ロール紙支持基台22に固着されているヒンジ24には回動桿B25のスリット26が嵌合しており、回動桿B25はヒンジ24に誘導され回動桿A21に連動して矢印Cで示すように架台13方向に回動する。
【0052】
これにより、支持部31やパウダークラッチなどが搭載されているロール紙支持基台22が矢印Dで示すように架台13方向に下降する。
【0053】
印刷時は、回動桿B25に固着されている図3A,図3B、図5に示す直動式電磁ソレノイド49のピストン軸51が繰り出された状態にあり、このピストン軸51に、ブレーキ基台35に配設されているフック部材44のフック部44aが係合し、引きバネ45で係合方向に付勢されていることにより、フック部44aとピストン軸51との係合が維持されている。
【0054】
また、ブレーキ基台35は、図3A及び図5に示したように、ブレーキ基台35とロール紙支持基台22とに両端が係止されている引きバネ42により、図3Aに矢印Yで示すように、ロール紙5の外周面5bに向けて引き付けられる付勢力を受けている。
【0055】
次に、電源の供給が停止したとき(電力供給停止時)の動作について説明する。ここで、電源の供給が停止したとき(電力供給停止時)とは、停電したとき、又は装置異常によって緊急停止ボタンが押されたときなどである。
【0056】
なお、本発明に係る画像記録装置1においては、緊急停止ボタンが押されたときは装置に電気を供給しないようにしている。つまり緊急停止ボタンが押されたとき、装置は停電時と同じ状態になる。
【0057】
電源の供給が停止したときには、画像記録装置1の全ての電源の供給が停止するため直動式電磁ソレノイド49も非通電状態になる。本実施例の直動式ソレノイド49は非通電時にはピストン軸51がソレノイド内に退入するため、図3Bに示したように、ピストン軸51とフック部材44との係合が解除される。
【0058】
これにより、引きバネ42の引き付勢力により、ロール紙支持基台22方向に付勢されていたブレーキ基台35がスライドガイド34を介して回動桿B25に沿ってロール紙5の方向へ移動する。
【0059】
ブレーキ基台35が移動すると、ブレーキ基台35にベアリング39を介して保持されているブレーキローラ37が回動桿B25のスリット26内を移動し、ロール紙5の外周面5bに当接する。ブレーキローラ37は当接後も引きバネ42により引張り付勢力を受けているため、ロール紙5の外周面5bに密着している。
【0060】
密着したブレーキローラ37は、引きバネ42の引張力とブレーキローラ37の端部に配設されているトルクリミッタ36によって回転力が抑制されているため、引きバネ42の引張力だけのときよりもロール紙5の回転を早く停止させることができる。
【0061】
トルクリミッタ36によるトルク抑止力の程度は、ロール紙5の外周面5bに傷や破断などを生じさせない設定になっている。これにより、ロール紙5は電源の供給停止時からロール紙5の1m以内の繰り出しの範囲で停止する。
【0062】
電源供給停止後のロール紙5の繰り出し量の1m以内という長さは、ロール紙5が床に擦れず、且つ装置の隙間に入り込まない長さであるが、この長さはロール紙供給装置3の大きさや構造によって決定される。
【0063】
電源が復帰すると、作業者が、図3Bに示した手動用レバー52を手に持って、ブレーキ基台35を、回動桿B25のスリット26に沿って矢印dで示す下方へ引きおろす。
【0064】
電源復帰により直動式電磁ソレノイド49に通電されたことにより、ピストン軸51がブラケット48の中空部に進出している。そのピストン軸51にブレーキ基台35のフック部材44のフック部44aが係合する。係合後は、引きバネ45の引張力により、フック部44aは常にピストン軸51に当て付いて係合が維持される。
【0065】
ブレーキローラ37およびブレーキ基台35が図3A及び図5に示した待機状態になると、印刷が開始可能となる。前述したが、図6に示したように、ロール紙5の外径が小さくなると、シリンダ軸17が矢印A方向に縮み、回動桿A21を回動させることによりロール紙支持基台22は矢印D方向に降下する。
【0066】
ロール紙支持基台22が矢印D方向に降下したことにより、ロール紙支持基台22とブレーキ基台35の間の距離がより近くなる。したがって、電源供給停止時にブレーキローラ37がロール紙5の外周面5bに当接したときのロール紙支持基台22とブレーキローラ37との間隔となる図3Aに示した距離Eも、ロール紙5の外径が大きかったときよりも小さくなる。
【0067】
つまり、引きバネ42の引張力が弱くなり、ブレーキローラ37がロール紙5の外周面5bを押さえる力も小さくなるため、ロール紙5の外径に合わせた最適な力でロール紙5の回転を停止させることができる。
【0068】
上述した実施例1の構成にあっては以下の効果を奏する。
ロール紙の中心(軸)で回転を停止させるのではなく、慣性トルクの一番弱いロールの外周面を押えるため、少ない押圧力でロールの回転を停止させることができる。
【0069】
ロールの外径の変化に応じて押圧力を変動させているので、常に適正な押圧力でロールの回転を停止させることができ、ロールの表面に発生しやすい皺や破れを低減させることができる。
【0070】
ロール紙の外径が小さくなるとロール紙支持基台が下降するので、次のロール紙の装着が容易になる。例えば、直径が50×2.54cmで重量が300kgもあるようなロール紙を装着するには、持ち上げるのは大変な作業であるが、ロール紙支持基台が下降しているとロール紙を床に転がしながらロール紙支持基台まで運び、ロール紙の中心に軸29を挿入してロール紙支持基台に装着することができる。
【0071】
ロール紙の回転を停止させるブレーキ機構に油圧や空気圧を使用しないので、電源供給停止時のために油圧や空気圧を蓄えておく貯留装置が不要であって装置全体の構成が簡便にできる。
【0072】
電磁ソレノイドと付勢部材のみでブレーキ機構を制御するため、コンデンサ等で電力を蓄えておく必要がなく、電気回りの部材を低減できる。
(実施例1の変形例)
【0073】
図7は、本発明の実施例1の変形例に係るロール紙供給装置のブレーキ機構の側面図である。なお、図7に示すブレーキ機構以外のロール紙供給装置の各部の構成及びその動作は、図1乃至図4及び図6に示した構成及び動作と同一である。また、図7には、実施例1の構成と同一構成部分には図1乃至図4及び図6に示した番号と同一の番号を付与して示している。
【0074】
図7に示すように、本変形例では、前述した実施例1のブレーキローラ37を分割して、ブレーキローラ37a及びブレーキローラ37bとし、これらのブレーキローラ37a及び37bにより、ロール紙5の印刷領域外となる外周面5c及び5dを押圧するようにしている。
【0075】
この実施例1の変形例によれば、実施例1の作用・効果に加えて、ロールの印刷領域外の外周面を押さえるので、印字領域部に埃や汚れなどが付着しないという効果を奏する。
【実施例2】
【0076】
図8は、本発明の実施例2に係るロール紙供給装置のブレーキ機構の正面拡大図である。なお、図8には、図3Aに示した構成と同一の構成部分には図3Aと同一の番号を付与して示している。また、図8に示すブレーキ機構以外のロール紙供給装置の各部の構成及びその動作は、図1、図2及び図6に示した構成及び動作と同一である。
【0077】
図8に示すように、実施例2に係るブレーキ機構27は、回動桿B25に固設されたフック係合基台47の構成及びこのフック係合基台47に係合又は係合解除されるブレーキ基台35aのフック部材44の構成は、実施例1の場合と同様である。
【0078】
ブレーキ基台35aが、図4に示したスライドガイド34を介して回動桿B25に摺動可能に配置されている点も実施例1の場合と同様であるが、ブレーキ基台35aそのものの構成は実施例1の場合とやや異なる。
【0079】
すなわち、この実施例2においては、2本のブレーキローラ53(53a、53b)がブレーキ基台35aの左右に分かれた形態で、回動支持部材54(54a、54b)の一端に軸支されるローラ軸55(55a、55b)により支持されている。
【0080】
回動支持部材54の他端は、ブレーキ基台35aに固着された共通の回動支点となる支持軸56に外嵌し、不図示のEリング等により脱落しないよう支持軸56に回動可能に保持されている。
【0081】
回動支持部材54(54a、54b)にはバネポスト57(57a、57b)が固着され、ブレーキ基台35aにはバネポスト58(58a、58b)が固着されている。バネポスト57とバネポスト58の間には、それぞれ引きバネ59(59a、59b)が掛け渡されている。この引きバネ59(59a、59b)は、回動支持部材54を、支持軸56を支点にして矢印Gで示す回動桿B25の中心線方向に回動するように付勢している。
【0082】
更に、ブレーキ基台35aには、電磁ソレノイド61(61a、61b)が配設され、この電磁ソレノイド61の図では陰になって見えないピストン軸によって回動支持部材54の動作が規制されている。また、ブレーキ基台35aは、引きバネ62によって常にロール紙支持基台22方向へ付勢されている。
【0083】
また、本実施例2においても、実施例1の場合と同様に、ブレーキローラ53の端部にトルクリミッタを配設するようにしても良い。
【0084】
続いて、本実施例2において電源の供給が停止したときの動作について説明する。電源の供給が停止したときには、実施例1の場合と同様に直動式電磁ソレノイド49のピストン軸51がソレノイド内に退入し、フック部44aがピルドン軸51から外れる。
【0085】
これにより、ブレーキ基台35aとフック係合基台47との係合が解除され、引きバネ62の引き付勢力によってロール紙支持基台22方向に付勢されていたブレーキ基台35が、スライドガイド34(図4、図7参照)を介して回動桿B25に沿って、矢印Yで示すロール紙支持基台22方向、すなわち、ロール紙5の方向へ移動する。
【0086】
これと同時に、ソレノイド61(61a、61b)のピストン軸がソレノイド内に退入し、回動支持部材54が規制を解除される。この規制の解除により、回動支持部材54は引きバネ59の付勢力により、支持軸56を支点にして回動桿B25の中心線方向に回動する。
【0087】
ブレーキローラ53(53a、53b)は、回動支持部材54に支持されて回動しても、お互いに接触することはなく、引きバネ59の付勢力がなくなる位置で停止する。そして、ブレーキ基台35aが引きバネ62によりロール紙5の方向に引かれているため、ブレーキローラ53はロール紙5方向に移動する。
【0088】
ブレーキローラ53は、ロール紙5の外周面5bに当接すると、ロール紙5の外周面5bに沿って開くように矢印G方向とは逆方向に回動し、ロール紙5の外周面5bに最適な付勢が掛けられる位置で停止する。
【0089】
引きバネ62の引張力は、ブレーキローラ53a及び53bがロール紙5の外周面5bに当接後、その外周面5bに沿って、引きバネ62の引張力に抗して広がることができるような引張力に設定されている。
【0090】
本実施例2の構成によれば、以下の効果を奏する。ロール紙の外周面に当接するブレーキローラを増やすことにより、ブレーキローラが1本のときよりも摩擦力が増し、ロール紙を停止し易くさせることができる。ブレーキローラによる当接力を2本に分散させることにより、ロール紙の外周面にある連続紙の損傷を低減させることができる。
(実施例2の変形例)
【0091】
図9は、本発明の実施例2の変形例に係るロール紙供給装置のブレーキ機構の側面図である。なお、図9に示すブレーキ機構以外のロール紙供給装置の各部の構成及びその動作は、図1、図2及び図6に示した構成及び動作と同一である。
【0092】
また、図9には、実施例2の構成と同一構成部分には、説明に必要な部分にのみ図8と同一の番号を付与して示し、他の部分への番号の付与は省略し、変形例として新たに付加された構成部分には新たな番号を付与して示している。
【0093】
図9に示すように、実施例2の変形例におけるブレーキローラ53a及び53bには、布などの伸縮性のある平坦なシート状の素材からなる無端ベルト63が掛け渡されている。この無端ベルト63は、2個のテンションローラ64によってテンションが掛けられている。
【0094】
これらのテンションローラ64の軸には、それぞれ引きバネ65の一端が係止し、引きバネ65の他端は、ブレーキ基台35aに固設された2個のバネポスト66にそれぞれ係止している。なお、テンションローラ64、バネ65、およびバネポスト66は回動支持部材54に干渉しない位置に設置されている。
【0095】
本変形例の動作では、ブレーキローラ53a及び53がロール紙5の外周面5aに当接すると同時に無端ベルト63の対向面がロール紙5の外周面5bに密着する。
【0096】
本変形例の構成にあっては、次の効果を奏する。実施例2の形態に比べて、無端ベルトとしてシート状のものをロール紙の外周面に当接させることでロール紙の外周面とブレーキ機構との接触面積が増し、ロール紙の回転をより停止し易くさせることができる。また、接触面積を増やすことにより、少ない当接力でロール紙の回転を停止させることができる。
【実施例3】
【0097】
図10は、本発明の実施例3に係るロール紙供給装置の全体正面図である。なお、本例において基本的な構成は図1及び図2に示した実施例1の場合と同様であり、ブレーキ機構の位置とブレーキ機構がロールへ当接する方法が実施例1の場合と異なるので、この相違点に絞って以下に説明する。
【0098】
直動式シリンダ機構18のモータ14を、電源の供給停止時にも動作させることができるように、コンデンサ等のバッテリを内蔵している電源ユニット67を配設する。また、ロール紙5の下方に、フレーム68(68a、68b)で支持されるローラ69(69a、69b)を配設する。
【0099】
さらに、これらのローラ間の中央下方に、押しバネ71で下方に付勢されているテンションローラ72を配設する。そして、2個のローラ69とテンションローラ72の3つのローラ間に無端ベルト73を掛け渡す。この無端ベルト73も布などの伸縮性のある平坦なシート状の素材からなる無端ベルトである。
【0100】
この実施例3における動作を説明する。先ず、電源の供給が停止すると、電源ユニット67に蓄えられていた電力によって、直動式シリンダ機構18のモータ14が動作し、シリンダ軸17を矢印Aで示す図の左方向に移動させる。
【0101】
シリンダ軸17が移動すると、シリンダ軸17に連結されている回動桿A21および回動桿A21にロール紙支持基台22を介して連結されている回動桿B25が、それぞれ矢印B及びCで示す架台13方向に回動する。
【0102】
この回動に従って、ロール紙支持基台22が下降する。すなわち、ロール紙支持基台22に保持されているロール紙5も同時に下降する。この下降量は、電源供給停止前に記憶したロール紙5の外径検出情報にもとづいて決定される。これにより、ロール紙5は、無端ベルト73に圧接する。
【0103】
本実施例3の構成にあっては、次の効果を奏する。先ず、ロール紙の外径と無端ベルトが密着し、摩擦抵抗が大きくなるため、ロール紙を小さい力で停止させることができる。また、ブレーキ機構の構成が簡単である。
【0104】
本発明の各実施例によれば、回転慣性のトルクが最も小さく働くロール紙の外径にブレーキローラを当てつけてロール紙の回転を停止させるので、小さい力でロール紙を停止させることができる。また、電源の供給停止のときのために圧縮空気生成装置や空気配管流路を配設する等の必要がないので、全体に簡単な構造でロール紙を停止させることができる。
【0105】
更に、ロール軸の周辺に回転停止用の部材を配設する必要がないため、ロールの交換作業の際に邪魔なものがなく、ロールの着脱が円滑に行えて作業効率の良いロール紙供給装置を提供することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明は、ロール紙を回転可能に支持し、画像記録装置の印刷部などに向けて供給するロール紙供給装置、及び当該ロール紙供給装置を備えた画像記録装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0107】
1 連続紙印刷装置
2 プリンタ本体
3 ロール紙供給装置
4 排出装置
5 ロール紙
5b、5c、5d ロール紙外周面
6 巻き癖除去装置
7(7a、7b) ヘッド部
8(8a、8b) クリーニング部
9(9a、9b) ドラム
10 ローラ
11 カッターユニット
12 収納ユニット
13 架台
14 モータ
15 ヒンジ
16 シリンダ
17 シリンダ軸
18 直動式シリンダ機構
19 ヒンジ
21 回動桿A
22 ロール紙支持基台
23、24 ヒンジ
25 回動桿B
26 スリット
27 ブレーキ機構
28 ヒンジ
31 支持部
32、33 ギア
34 スライドガイド
35、35a ブレーキ基台
36 トルクリミッタ
37 ブレーキローラ
38 軸
39 ベアリング
41 バネポスト
42 引きバネ
43 支持ピン
44 フック部材
44a フック部
45 引きバネ
46 バネポスト
47 フック係合基台
48 ブラケット
49 直動式電磁ソレノイド
51 ピストン軸
52 手動用レバー
53(53a、53b) ブレーキローラ
54(54a、54b) 回動支持部材
55(55a、55b) ローラ軸
56 支持軸
57(57a、57b) バネポスト
58(58a、58b) バネポスト
59(59a、59b) 引きバネ
61(61a、61b) 電磁ソレノイド
62 引きバネ
63 無端ベルト
64 テンションローラ
65 引きバネ
66 バネポスト
67 電源ユニット
68(68a、68b) フレーム
69(69a、69b) ローラ
71 押しバネ
72 テンションローラ
73 無端ベルト


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール紙を回転可能に支持するロール紙支持機構と、
前記ロール紙の回転を停止させるためのブレーキ機構と、
を有し、
該ブレーキ機構は、本体装置への電源の供給が停止したとき前記ロール紙の外周面へ摩擦抵抗を付与して前記ロール紙の回転を停止させる、
ことを特徴とするロール紙供給装置。
【請求項2】
前記ロール紙支持機構は、
前記ロール紙を支持するロール紙支持部と、
該ロール紙支持部に支持される前記ロール紙の変化する外径に応じて前記ロール紙支持部を昇降させる回動桿と、
を有し、
前記ブレーキ機構は、
前記回動桿に沿って昇降可能に配置された少なくとの1個のブレーキローラと、
該ブレーキローラを待機位置とブレーキ位置との間で前記ロール紙の変化する外径に応じた付勢力で前記ロール紙の外周面方向に付勢する付勢部材と、
前記ブレーキローラを、供給中は前記待機位置に停止させ、装置への電源の供給が停止したとき前記待機位置から開放するブレーキローラ制御機構と、
を有し、
前記ブレーキローラは、前記待機位置から開放されたとき、前記付勢部材の付勢力に応じて前記回動桿に沿って前記ブレーキ位置に移動し、前記ロール紙の外周面に圧接して前記ロール紙の回転を停止させる、
ことを特徴とする請求項1記載のロール紙供給装置。
【請求項3】
前記ブレーキローラ制御機構は、
前記回動桿の所定の位置に固定されたソレノイドと、
該ソレノイドの通電時は該ソレノイドの外方に進出し、該ソレノイドの非通電時は付勢部材の付勢力を受けてソレノイドの内方に退入するピンと、
前記ブレーキローラ側に配置され常に前記ピンと係合する方向へ付勢されているフック部材と、
を有し、
前記ピンを前記ソレノイドの外方に進出させて前記ピンと前記フック部材とを係合させて前記ブレーキローラを前記待機位置に停止させ、前記ピンを前記ソレノイドの内方に退入力させて前記ピンと前記フック部材との係合を解除して前記ブレーキローラを前記待機位置から開放する、
ことを特徴とする請求項2記載のロール紙供給装置。
【請求項4】
前記ブレーキローラは、前記ロール紙の画像形成される領域よりも外側の両縁部に対応して2個配置される、
ことを特徴とする請求項2又は3記載のロール紙供給装置。
【請求項5】
前記ブレーキローラは、前記ブレーキ機構の中央部を支点に回動可能に2個配置され、該2個のブレーキローラは、前記待機位置に停止しているときは係止部材により前記ブレーキ機構の外方に回動した状態で固定され、前記待機位置から開放されたときは付勢部材の付勢力により前記ブレーキ機構の内方に所定の位置まで回動する、
ことを特徴とする請求項2又は3記載のロール紙供給装置。
【請求項6】
前記2個のブレーキローラに掛け渡された無端ベルトと、
該無端ベルトを常にベルト外側に付勢して前記2個のブレーキローラ間に張設する付勢部材と、
を更に有することを特徴とする請求項5記載のロール紙供給装置。
【請求項7】
前記ロール紙支持機構は、前記ロール紙を支持するロール紙支持部と、該ロール支持部に支持される前記ロール紙の変化する外径に応じて前記ロール支持部を昇降させる回動桿と、該回動桿を電源非供給時において駆動可能は補助電源と、を少なくとも有し、
前記ブレーキ機構は、前記ロール支持機構により支持される前記ロール紙の下方に配置され、少なくとの2個のブレーキローラと、該2個のブレーキローラに掛け渡された無端ベルトと、該無端ベルトを常にベルト外側に付勢して前記2個のブレーキローラ間に張設する付勢部材と、を有し、
装置への電源が供給中で前記ロール紙が供給中であるときは、前記ロール紙支持機構は、前記ロール紙の下部外周面を前記2個のブレーキローラ間に張設された前記無端ベルトから離間した位置に維持するよう前記ロール紙を支持し、
装置への電源の供給が停止したときは、前記ロール紙支持機構は、前記補助電源により前記回動桿を駆動して前記ロール紙の下部外周面が前記無端ベルトに当接し、該無端ベルトを介して更に前記ロール紙の下部外周面が前記2個のブレーキローラに圧接するまで前記ロール紙支持部を降下させ、
前記ブレーキ機構は、前記無端ベルト及び前記2個のブレーキローラにより前記ロール紙の下部外周面に摩擦抵抗力を付与して前記ロール紙の回転を停止させる、
ことを特徴とする請求項1記載のロール紙供給装置。
【請求項8】
前記ブレーキローラはトルクリミッタ等により回転力を抑制制御される、ことを特徴とする請求項2乃至7のいずれか1項に記載のロール紙供給装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかの項に記載のロール紙供給装置を有していることを特徴とする画像記録装置。


【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−79651(P2011−79651A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234725(P2009−234725)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】