説明

ロール紙巻取り機構

【課題】簡単な制御でかつ安価な構成で、巻き取られたロール紙5cの量に応じた最適な摩擦力で巻き取り、弛んだまま巻き取って皺や折れが発生したり、張力が過剰となってロール紙5cが破損したりしないようにする。
【解決手段】ロール紙5aを繰り出すロール紙供給部5と、繰り出されたロール紙5aに所定の処理を施す処理部2と、処理後のロール紙5bを所定の排出速度で排出するロール紙排出部3と、前記排出されたロール紙5bをそれぞれ平行に配設された回転軸に軸支された巻取りローラ7により巻き取るロール紙巻取り部4を備えたロール紙巻取り機構1であって、前記巻取りローラ7により巻き取られたロール紙5cの量に応じて前記巻取りローラ7の摩擦力を切り替える摩擦係数切替手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状の媒体に印字等の処理を施し巻き取って収納するジャーナル記録装置等におけるロール紙巻取り機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のジャーナル記録装置等におけるロール紙巻取り機構101は、図8に示したように、ロール状に巻かれたロール紙5aを供給するロール紙供給部5と、印字等の所定の処理をロール紙5aに施す処理部2と、所定の処理が施されたロール紙5bを排出するロール紙排出部3と、排出されたロール紙5bを巻き取るロール紙巻取り部104とから構成される。
【0003】
そして、ロール紙供給部5より繰り出されたロール紙5aは、処理部2にて印字等の所定の処理を行いながらロール紙排出部3の排出ローラ6の回転により排出速度v1にて排出される。
【0004】
そして、排出されたロール紙5bは、ロール状に巻かれていたことによるカール癖を有しているため、カール癖に沿って矢印E方向に放出され、排出動作を続けると、ロール紙5bはカール癖を保持しつつ自重により位置を下げながら、ロール紙巻取り部104に到達する。
【0005】
ロール紙巻取り部104には、使用するロール紙の硬さや重さなどの特性を考慮し適切な位置としてロール紙の先端が落下する位置に巻取りローラ107が配設されている。巻取りローラ107はロール紙5bを巻き取れるように平行な2本の軸にそれぞれ設けられており、図示しないモータ等により前記軸を回転することにより矢印Cに回転する。
【0006】
すると、巻取りローラ107の上に乗ったロール紙5cは、巻取りローラ107から受ける摩擦力およびカール癖により、巻取り速度v2にて矢印Dのようにロール状に巻き取られる。
【0007】
ところで、巻き取られるロール紙5bの巻取り速度v2が、ロール紙排出部3よりロール紙5bを排出する排出速度v1より遅い場合は、図9に示したように、任意の時間内に排出されるロール紙5bの長さは、同一時間内に巻き取られたロール紙5cの長さより短くなり、その結果、図10(a)の最外周のロール紙5zのように前記長さの差だけ巻き取られずにロール紙排出部3とロール紙巻取り部104の間にて余長となり弛んで、張力も低くなる。
【0008】
この場合、巻取り時間が長くなるほど巻き取られずにたるむ長さが増大し、ロール紙5bを正常に巻き取ることができず、図10(b)の最外周のロール紙5zのように、弛んだまま巻き取ってしまい、皺、折れ等が発生することになる。
【0009】
一方、巻取り速度v2が排出速度v1より速い場合は、前述したようなたるみは発生することはないが、ロール紙排出部3とロール紙巻取り部104の間にてロール紙5bが引っ張られ、強い張力が発生し、ロール紙5bの張力に対して巻取りローラ107とロール紙5b間の静止摩擦力が小さければ、巻取り速度v2の超過分は巻取りローラ107の表面でロール紙5bが滑ることにより吸収され、正常な巻取りが行われる。
【0010】
巻取り速度v2が排出速度v1に対し等しい場合は、正常な巻取りが可能であるが、外乱等により一旦弛みが発生すると、自動除去することができない。
【0011】
従って、巻取り速度v2を排出速度v1に対し少し速くするようにすれば、正常にロール紙5bを巻き取ることができる。
【0012】
以上のように、巻取り速度v2を排出速度v1に対し少し速くするように制御するために、ロール紙の張力を検知する張力検知手段を備え、ロール紙の巻取張力の度合いに追従して、ファジイ制御によりロール紙の張力を最適にするロール紙巻取り機構はあった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平3−36145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記構成のロール紙巻取り機構においては、複雑な制御が必要であり、高速処理を行うCPUや張力を正確に検出するための機構等が必要であり、低コスト化の妨げの要因となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前述の課題を解決するために次の構成を採用する。すなわち、ロール紙を繰り出すロール紙供給部と、繰り出されたロール紙に所定の処理を施す処理部と、処理後のロール紙を所定の排出速度で排出するロール紙排出部と、前記排出されたロール紙をそれぞれ平行に配設された回転軸に軸支された巻取りローラにより巻き取るロール紙巻取り部を備えたロール紙巻取り機構であって、前記巻取りローラにより巻き取られたロール紙の量に応じて前記巻取りローラの摩擦力を切り替える摩擦係数切替手段を備えた。
【発明の効果】
【0016】
本発明のロール紙巻取り機構によれば、以上のように構成したので、簡単な制御でかつ安価な構成で、巻き取られたロール紙の量に応じた最適な摩擦力で巻き取れ、弛んだまま巻き取って皺や折れが発生したり、張力が過剰となってロール紙が破損したりすることがない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1のロール紙巻取り機構のロール紙巻取り部の構成図である。
【図2】実施例1のロール紙巻取り機構のロール紙巻取り部の動作説明図である。
【図3】実施例2のロール紙巻取り機構のロール紙巻取り部の構成図である。
【図4】実施例3のロール紙巻取り機構のロール紙巻取り部の構成図である。
【図5】実施例4のロール紙巻取り機構のロール紙巻取り部の構成図である。
【図6】実施例5のロール紙巻取り機構のロール紙巻取り部の構成図である。
【図7】実施例6のロール紙巻取り機構のロール紙巻取り部の構成図である。
【図8】従来のロール紙巻取り機構の構成図である。
【図9】従来のロール紙巻取り機構の動作説明図である。
【図10】従来のロール紙巻取り機構のロール紙巻取り部の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係わる実施の形態例を、図面を用いて説明する。図面に共通する要素には同一の符号を付す。なお、以下の説明では、ロール状の媒体としてロール紙を例として説明するが、ロール状の媒体であれば、ロール状フィルムやロール状シート等であってもよい。
【実施例1】
【0019】
(構成)
図1に実施例1のロール紙巻取り機構1の構成を示す。同図に示したように、実施例1のロール紙巻取り機構1では、ロール紙巻取り部4の構成が従来と異なり、巻取りローラ7を、同軸上に配置された静止摩擦係数の低い内側の巻取りローラ7aと静止摩擦係数の高い外側の巻取りローラ7bから構成して、駆動手段としてのアクチュエータ10を矢印F方向またはG方向に駆動することにより、リンク部10aを介して巻取りローラ7a、7bを矢印A方向または矢印B方向に移動可能とした摩擦係数切替手段を備えた構成となっている。
【0020】
また、図1(a)(b)右側に示したように、ロール紙検知手段として、ロール紙5bの直径を検知可能なロール紙検知センサ11を巻き取られたロール紙5cの上側に配置している。なお、ロール紙検知センサ11は互いに対向する発光・受光素子から構成し光が遮断されたかどうかでロール紙5bの直径を検知するようにすればよい。その他の構成は、図8の従来のロール紙巻取り機構の構成と同様であるので、簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0021】
(動作)
以上の構成により実施例1のロール紙巻取り機構1は、以下のように動作する。この動作を前出図1の構成図および図2の動作説明図を用いて以下詳細に説明する。
【0022】
ところで、矢印Cのように回転する巻取りローラ7により矢印Dのように回転しながら巻き取られるロール紙5bは一般に薄紙であり、単位面積当たりの質量は極めて軽量であり、巻取り始めにおいては軽量のロール紙5bに対し、巻取りローラ表面上にて滑りが発生しないよう摩擦力を与える必要があり、巻取りローラ7には高い摩擦係数が必要とされる。
【0023】
そして、巻き取られたロール紙5cの量が増加するに従い、図1(a)、図2(a)の状態から図1(b)、図2(b)の状態に推移し、巻き取られたロール紙5cの質量がWr1からWr2に増加する。
【0024】
そして、図2(c)に示したように、巻き取られたロール紙5cと巻取りローラ7との接点の静止摩擦係数をμとし、巻き取られたロール紙5cの中心と前記接点がなす角度をθとすると、前記接点における垂直抗力NはN=Wr・cosθとなるので、最外周のロール紙5zと巻取りローラ7との最大摩擦力fは、f=μ・Wr・cosθで表され、巻き取られたロール紙5cの質量Wrが増加するに従い最大摩擦力fはf1からf2に増加する。
【0025】
すなわち、巻き取られたロール紙5cが少ない場合は、最大摩擦力fが少なく、最外周のロール紙5zと巻取りローラ7が滑って巻取り速度v2が低下する。一方、巻き取られたロール紙5cが多い場合では、最大摩擦力fが増加し巻取り速度v2が増加し過ぎて張力が過剰に大きくなる。
【0026】
そこで、実施例1のロール紙巻取り機構1では、ロール紙検知センサ11により、巻き取られたロール紙5cの量が少ないと判定したときは、図1(a)のようにアクチュエータ10を矢印F方向に駆動し、巻取りローラ7a、7bを矢印Aのように内側に移動し両方の巻取りローラ7a、7bに最外周のロール紙5zが乗った状態にて巻取り動作を行う。
【0027】
その結果、最外周のロール紙5zと巻取りローラ7a、7bの間に発生する静止摩擦力fは、摩擦係数μの高い巻取りローラ7bが摩擦係数μの低い巻取りローラ7aとともに最外周のロール紙5zに当接するため、巻き取られたロール紙5cが少なく質量の少ない場合であっても、十分な静止摩擦力fが得られ、最外周のロール紙5zと巻取りローラ7a、7b間にすべりが発生せず、巻取り速度v2が排出速度v1より少し早い関係、すなわちv2≒v1かつv2>v1の関係を維持することができる。
【0028】
一方、巻き取られたロール紙5cの量が増加し、ロール紙検知センサ11により、巻き取られたロール紙5cの量が多いと判定したときは、図1(b)のようにアクチュエータ10を矢印G方向に駆動し、巻取りローラ7a、7bを矢印Bのように外側に移動し巻取りローラ7aのみに最外周のロール紙5zが乗った状態にて巻取り動作を行う。
【0029】
その結果、最外周のロール紙5zと巻取りローラ7aの間に発生する静止摩擦力fは、摩擦係数μの低い巻取りローラ7aのみが最外周のロール紙5zに当接するため、巻き取られたロール紙5cが多くなって質量大となっても、最外周のロール紙5zと巻取りローラ7a間の静止摩擦力fを低下させて適度な静止摩擦力fとすることができ、最外周のロール紙5zの張力が過剰にならないようにでき、巻取り速度v2が排出速度v1より少し早い関係、すなわちv2≒v1かつv2>v1の関係も維持することができる。
【0030】
なお、以上の実施例の説明では、巻取りローラ7a、7bを異なる静止摩擦係数μの巻取りローラとした例を示したが、巻取りローラ7a、7bを同じ静止摩擦係数μとし、巻き取られたロール紙5cの量により当接する面積を変化させるようにしてもよい。
【0031】
(実施例1の効果)
以上のように実施例1のロール紙巻取り機構によれば、巻取りローラを、同軸上に対称に配置された静止摩擦係数の低い巻取りローラと静止摩擦係数の巻取りローラから構成し、巻き取られたロール紙の量を検出するロール紙検知センサと、前記巻取りローラを回転軸方向に移動させるアクチュエータを備え、前記ロール紙検知センサの検知結果に基づいて前記巻取りローラを回転軸方向に移動させるようにしたので、簡単な制御かつ安価な構成で、巻き取られたロール紙の量に応じた最適な摩擦力で巻き取れ、弛んだまま巻き取って皺や折れが発生したり、張力が過剰となってロール紙が破損したりすることがない。
【実施例2】
【0032】
(構成)
図3に実施例2のロール紙巻取り機構1の構成を示す。同図に示したように、実施例2のロール紙巻取り機構では、ロール紙巻取り部4の構成が実施例1と異なり、摩擦係数切替手段として、矢印Cのように回転する異なる軸上に配置された静止摩擦係数の異なる2種の巻取りローラ13a、13bを備える。
【0033】
内側の巻取りローラ13bの静止摩擦係数μは外側の巻取りローラ13aの静止摩擦係数μより高くなっている。
【0034】
巻取りローラ13aおよび13bは、破線で示したようにロール紙5bが所定の直径d0になったときに巻取りローラ13aおよび13bが全て当接する位置に配置されている。その他の構成は実施例1のロール紙巻取り機構と同様であるので簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0035】
(動作)
以上の構成により、実施例2のロール紙巻取り機構1は、以下のように動作する。この動作を前出図3を用いて以下詳細に説明する。
【0036】
実施例2のロール紙巻取り機構1では、図3(a)のように、巻き取られたロール紙5cの直径dがd0より小さい場合は、最外周のロール紙5zは摩擦係数μの高い巻取りローラ13bにのみに当接し巻き取られる。
【0037】
そして、ロール紙5cの直径dがd0より大きくなった場合には、図3(b)のように、最外周のロール紙5zはより摩擦係数μの低い巻取りローラ13aのみに当接して巻き取られる。
【0038】
以上のように、巻き取られたロール紙5cが少なく、質量がWr1と軽く、最外周のロール紙5zと巻取りローラ13間の最大摩擦力fが低下するときは、摩擦係数μの高い巻取りローラ13bにて巻き取るので、十分な静止摩擦力fが得られ、最外周のロール紙5zと巻取りローラ13b間にすべりが発生せず、巻取り速度v2が排出速度v1より少し早い関係、すなわちv2≒v1かつv2>v1の関係を維持することができる。
【0039】
一方、巻き取られたロール紙5cが多く、質量がWr2と重く、最外周のロール紙5zと巻取りローラ13間の最大摩擦力fが高くなるときは、摩擦係数μの低い巻取りローラ13aにて巻き取るので、最外周のロール紙5zと巻取りローラ13a間の静止摩擦力fを低下させて適度な静止摩擦力fとすることができ、最外周のロール紙5zの張力が過剰にならないようにでき、巻取り速度v2が排出速度v1より少し早い関係、すなわちv2≒v1かつv2>v1の関係も維持することができる。
【0040】
なお、以上の実施例の説明では、巻取りローラを13a、13bそれぞれ2個づつ設けるように説明したが、巻き取られたロール紙5cの直径φ=d0にてすべてのローラが当接するようにすればよく、例えば、巻取りローラ13bを中央位置に1個だけ設ける構成としてもよいし、逆に同軸上に対称にさらに多くの巻取りローラを設ける構成としてもよい。
【0041】
(実施例2の効果)
以上のように、実施例2のロール紙巻取り機構によれば、異なる軸上に、静止摩擦係数の異なる2種の巻取りローラを備え、巻き取るロール紙が所定の直径になったときに全て巻取りローラが当接する位置に配置するようにしたので、簡単な制御で、ロール紙検出センサおよび巻取りローラを移動せるアクチュエータ等の機構部品も必要とせず、さらに安価な構成で、実施例1と同様の効果を得られる。
【実施例3】
【0042】
(構成)
図4に実施例3のロール紙巻取り機構1の構成を示す。同図に示したように、実施例3のロール紙巻取り機構では、ロール紙巻取り部4の構成が従来と異なり、実施例1の構成で、さらに巻取りローラ7を速い速度va1または遅い速度vb1のように回転数を変化させることができる構成としている。
【0043】
また、実施例3のロール紙巻取り機構1では、ロール紙検知手段として、矢印Dのように巻き取られたロール紙5cを検知するロール紙検知センサ11が配置されており、回転速度切替手段として、ステッピングモータ等により巻取りローラ7の回転速度を変化させるように制御できる制御手段を備えている。
【0044】
なお、ロール紙巻取り部4の構成は、上述のように、図1の実施例1の構成のように巻取りローラ7a、7bを巻き取られたロール紙5cの量に応じて軸方向に移動させる構成としてもよいし、従来のロール紙巻取り部4の構成としてもよい。その他の構成は実施例1のロール紙巻取り機構と同様であるので簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0045】
(動作)
以上の構成により、実施例3のロール紙巻取り機構1は、以下のように動作する。この動作を前出図4を用いて以下詳細に説明する。
【0046】
ところで、巻き取り開始時は、巻取り速度v2が速いほど、巻き始めのロール紙5cの直径を小さくすることができ、以降に巻き取られたロール紙5cの直径も小さく抑えることができるので、ロール紙巻取り部4を省スペース化することができる。
【0047】
しかしながら、巻き取られたロール紙5cが所定の量以上となっても、巻取り速度v2を速いままとすると、ロール紙の張力が過度になり過ぎ、ロール紙が破損してしまう場合があった。
【0048】
上記課題を解決するために、実施例3のロール紙巻取り機構では、ロール紙検知センサ11により、ロール紙5cが所定の量より少ないと判定したときは、図4(a)のように、巻取り速度v2を速い速度va1として高速に巻き取り、巻き始めのロール紙5cの直径を小さくする。
【0049】
そして、ロール紙検知センサ11により、ロール紙5cが所定の量以上になったと判定したときは、図4(b)のように、巻取り速度v2を遅い速度vb1とし、巻取り速度v2が排出速度v1より少し早い関係、すなわちv2≒v1かつv2>v1の関係を維持し、ロール紙5cにたるみが発生しない程度の張力とする。
【0050】
(実施例3の効果)
以上のように実施例3のロール紙巻取り機構によれば、巻取りローラの回転速度を変化させる制御手段と、巻き取られたロール紙の量を検知するロール紙検知センサを備え、巻取り開始時のように巻き取られたロール紙が少ないときは巻取りローラの回転速度を速くし、巻き取られたロール紙の量が多くなったときは巻取りローラの回転速度を排出速度より少し速くするようにしたので、実施例1の効果に加え、巻き取られたロール紙の径を小さくすることができ、ロール紙巻取り部のスペースを小さくすることができる。
【実施例4】
【0051】
(構成)
図5に実施例4のロール紙巻取り機構1の構成を示す。同図に示したように、実施例4のロール紙巻取り機構1では、ロール紙巻取り部4の巻取りローラ7a、7bの構成が実施例3と異なり、回転速度切替手段として、巻取りローラ14を異なる直径の組み合わせからなる段付き形状としている。その他の構成は、実施例1のロール紙巻取り機構の構成と同様であるので、簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0052】
(動作)
以上の構成により、実施例4のロール紙巻取り機構1は、以下のように動作する。この動作を前出図5を用いて以下詳細に説明する。
【0053】
実施例4のロール紙巻取り機構1では、実施例3と同様、巻き取り開始時は巻取り速度を速くして巻き始めのロール紙の直径を小さくするために、以下のように動作させる。
【0054】
すなわち、ロール紙検知センサ11により、巻取り開始時のように巻き取られたロール紙5cの量が少ないと判定したときは、図5(a)のように、アクチュエータ10を矢印Fのように駆動し、巻取りローラ14を矢印Aのように内側に移動させ、巻取りローラ14の径の大きい部分にて最外周のロール紙5zに当接させるようにする。
【0055】
すると、所定の回転速度で回転する巻取りローラ14の径の大きい部分にて最外周のロール紙5zに当接するため、巻取り速度v2は高速になり、巻き取られたロール紙5cの内径が小さくなる。
【0056】
そして、巻き取られたロール紙5cの量が多くなり、ロール紙検知センサ11により、巻き取られたロール紙5cが検出されると、図5(b)のように、アクチュエータ10を矢印Gのように駆動し、巻取りローラ14を矢印Bのように外側に移動させ、巻取りローラ14の径の小さい部分にて最外周のロール紙5zに当接させるようにする。
【0057】
すると、所定の回転速度で回転する巻取りローラ14の径の小さい部分にて最外周のロール紙5zに当接するため、巻取り速度v2は低速になり、巻取り速度v2が排出速度v1より少し早い関係、すなわちv2≒v1かつ度v2>v1の関係を維持し、ロール紙5cにたるみが発生しない程度の張力となる。
【0058】
(実施例4の効果)
以上のように実施例4のロール紙巻取り機構によれば、巻取りローラを異なる直径の組み合わせからなる段付き形状とし同軸上に対称に配置し、巻き取られたロール紙の量を検知するロール紙検知センサと、前記検出結果に基づいて巻取りローラを回転軸方向に内側または外側に移動させるアクチュエータを備え、巻取り開始時のように巻き取られたロール紙が少ないときは径の大きい部分にてロール紙に当接させ、巻き取られたロール紙が多くなったときは径の小さい部分にてロール紙に当接させ、巻取り速度が排出速度より少し早い関係となるようにしたので、実施例3のように巻き取られたロール紙の量に応じた巻取りローラの回転数を変化させるような複雑な制御をすることなく実施例3と同様の効果を得ることができる。
【実施例5】
【0059】
(構成)
図6に実施例5のロール紙巻取り機構1の構成を示す。同図に示したように、実施例5のロール紙巻取り機構では、ロール紙巻取り部4の巻取りローラ15の構成が実施例4と異なり、回転速度切替手段として、巻取りローラ15を内側ほど直径が小さくなる円錐台形状としている。その他の構成は、実施例4のロール紙巻取り機構の構成と同様であるので、簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0060】
(動作)
以上の構成により、実施例5のロール紙巻取り機構1は、以下のように動作する。この動作を前出図6を用いて以下詳細に説明する。
【0061】
実施例5のロール紙巻取り機構1では、実施例4と同様、巻き取り開始時は、巻取り速度を速くし巻き始めのロール紙の直径を小さくするために、以下のように動作させる。
【0062】
すなわち、ロール紙検知センサ11により、巻取り開始時のように巻き取られたロール紙5cの量が少ないと判定したときは、図6(a)のように、アクチュエータ10を矢印Fのように駆動し、巻取りローラ14を矢印Aのように内側に移動させ、巻取りローラ14の径の大きい部分にて最外周のロール紙5zに当接させるようにする。
【0063】
すると、所定の回転速度で回転する巻取りローラ14の径の大きい部分にて最外周のロール紙5zに当接しているため、巻取り速度v2は高速になり、巻き取られたロール紙5cの内径が小さくなる。
【0064】
そして、巻き取られたロール紙5cの量が多くなり、ロール紙検知センサ11により、巻き取られたロール紙5cが検出されると、図6(b)のように、アクチュエータ10を矢印Gのように徐々に駆動し、巻取りローラ14を矢印Bのように外側に徐々に移動させ、最外周のロール紙5zに当接する巻取りローラ14の径を徐々に小さくするようにする。
【0065】
すると、徐々に、所定の回転速度で回転する巻取りローラ14の径の小さい部分にて最外周のロール紙5zに当接するようになるため、巻取り速度v2は徐々に低速になり、巻取り速度v2が排出速度v1より少し早い関係、すなわちv2≒v1かつv2>v1の関係を維持し、ロール紙5cにたるみが発生しない程度の張力に徐々にすることができる。
【0066】
なお、以上の実施例の説明では、巻取りローラ15を内側ほど直径が小さくなる円錐台形状として説明したが、図6(c)のように、内側方向に段階的に徐々に径が小さくなる形状としてもよい。
【0067】
(実施例5の効果)
以上のように実施例5のロール紙巻取り機構によれば、巻き取られたロール紙の量を検知するロール紙検知センサと、前記検出結果に基づいて巻取りローラを回転軸方向に内側または外側に移動させるアクチュエータを備え、巻取りローラを内側ほど直径が小さくなる円錐台形状とし同軸上に対称に配置し、巻取り開始時のように巻き取られたロール紙が少ないと検知したときは巻取りローラの径の大きい部分にてロール紙に当接させ、巻き取られたロール紙が多くなったと判定したときは巻取りローラの径の小さい部分にてロール紙に当接させ、巻取り速度が排出速度より少し早い関係に徐々になるようにしたので、実施例4の効果に加え、巻取り速度を徐々に変化させてたるみの発生を精度よく抑えることができる。
【実施例6】
【0068】
(構成)
図7に実施例6のロール紙巻取り機構1の構成を示す。同図に示したように、実施例6のロール紙巻取り機構では、ロール紙巻取り部4の巻取りローラ15の構成が実施例5と異なり、回転速度切替手段として、ロール紙検知センサ11は設けず、巻取りローラ15を軸方向に駆動する駆動手段としてのアクチュエータ10とリンク部10aに替えて内側方向に付勢するばね16を設けている。その他の構成は、実施例4のロール紙巻取り機構の構成と同様であるので、簡略化のためにその詳細な説明は省略する。
【0069】
(動作)
以上の構成により、実施例6のロール紙巻取り機構1は、以下のように動作する。この動作を前出図7を用いて以下詳細に説明する。
【0070】
巻取りローラ15の表面が傾斜しているため、ロール紙5cの重さの軸方向成分が軸方向に作用し、この力とばねの弾性力が釣合うよう巻取りローラ15の位置が決定される。
【0071】
すなわち、巻取り開始時のように巻き取られたロール紙5cの量が少ない場合では、図7(a)のように巻取りローラ15は矢印Aのように内側方向に徐々に移動し巻取りローラ15の直径の大きい部分にロール紙5cが乗った状態で巻き取られ、巻取り速度v2は高速になり、巻き取られたロール紙5cの内径が小さくなる。
【0072】
そして、巻き取られたロール紙5cの量が増加するのに従い、巻取りローラ15がロール紙5cから受ける重力は大きくなり、巻取りローラ15の傾斜により軸方向の成分も増加し、巻取りローラ15は矢印Bのように外側方向に徐々に移動する。
【0073】
この外側への移動により最外周のロール紙5zと巻取りローラ15の当接位置が徐々に直径の小さい方向に滑りながら移動し、巻取りローラ15の回転速度が一定であるので、巻取り速度v2は徐々に低下し、巻取り速度v2が排出速度v1より少し早い関係、すなわちv2≒v1かつv2>v1の関係を維持し、ロール紙5cにたるみが発生しない程度の張力に徐々にすることができる。
【0074】
(実施例6の効果)
以上のように実施例6のロール紙巻取り機構によれば、巻取りローラを内側ほど直径が小さくなる円錐台形状とし同軸上に対称に配置し、前記巻取りローラを内側方向に付勢するばねを設けたので、実施例5の効果に加え、ロール紙検知センサ、アクチュエータおよびリンク部を設ける必要がなく、さらに安価な構成とすることができる。
【0075】
《その他の変形例》
なお、実施例1、実施例3、実施例4および実施例5のロール紙巻取り機構において、ロール紙検知手段として、ロール紙5cの直径を検知するためにロール紙検知センサ11を設け、当該検知結果によりロール紙5cの量の大小を判定するように説明したが、ロール紙検知手段を設けず、処理部2よりロール紙5bを排出する際、排出する回数をカウントし、1回の処理にて排出されるロール紙5bの長さとの積にて累積排出長を算出して巻き取られたロール紙5cの量を推定し、当該推定値によりロール紙5cの量の大小を判定するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上述べたように、本発明は、ロール紙巻取り機構を備え、ロール状の媒体に印字等の処理を施し巻き取って収納するジャーナル記録装置等に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0077】
1 ロール紙巻取り機構
2 処理部
3 ロール紙排出部
4、104 ロール紙巻取り部
5 ロール紙供給部
5a ロール紙
5b 排出されたロール紙
5c 巻き取られたロール紙
6 排出ローラ
7、7a、7b、13a、13b、14、15、15x、107 巻取りローラ
10 アクチュエータ
10a リンク部
11 ロール紙検知センサ
16 ばね
v1 排出速度
v2 巻取り速度
f 最大摩擦力
μ 静止摩擦係数
N 垂直抗力
Wr 質量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール紙を繰り出すロール紙供給部と、繰り出されたロール紙に所定の処理を施す処理部と、処理後のロール紙を所定の排出速度で排出するロール紙排出部と、前記排出されたロール紙をそれぞれ平行に配設された回転軸に軸支された巻取りローラにより巻き取るロール紙巻取り部を備えたロール紙巻取り機構であって、
前記巻取りローラにより巻き取られたロール紙の量に応じて前記巻取りローラの摩擦力を切り替える摩擦係数切替手段を備えたことを特徴とするロール紙巻取り機構。
【請求項2】
前記摩擦係数切替手段は、前記巻取りローラを、同軸上に対称に配置された静止摩擦係数の低い内側の巻取りローラ対と静止摩擦係数の高い外側の巻取りローラ対から構成し、
巻き取られたロール紙の量を検出するロール紙検知手段と、前記巻取りローラを回転軸方向に内側および外側に移動させる駆動手段を備え、
巻き取られたロール紙の量が少ないと検知したときは前記外側の巻取りローラ対を巻き取られたロール紙に当接させ、巻き取られたロール紙の量が多いと検知したときは前記内側の巻取りローラ対を巻き取られたロール紙に当接させるようにしたことを特徴とする請求項1記載のロール紙巻取り機構。
【請求項3】
前記摩擦係数切替手段は、異なる回転軸に軸支された静止摩擦係数の異なる複数種の巻取りローラを、巻き取られたロール紙が所定の直径以下のときは静止摩擦係数の高い巻取りローラに当該巻き取られたロール紙を当接させ、巻き取られたロール紙が所定の直径になったときは全ての巻取りローラに当該巻き取られたロール紙を当接させ、巻き取られたロール紙が所定の直径より大きくなったときは静止摩擦係数の低い巻取りローラに当該巻き取られたロール紙を当接させるように配置したことを特徴とする請求項1記載のロール紙巻取り機構。
【請求項4】
ロール紙を繰り出すロール紙供給部と、繰り出されたロール紙に所定の処理を施す処理部と、処理後のロール紙を所定の排出速度で排出するロール紙排出部と、前記排出されたロール紙をそれぞれ平行に配設された回転軸に軸支された巻取りローラにより巻き取るロール紙巻取り部を備えたロール紙巻取り機構であって、
前記巻取りローラにより巻き取られたロール紙の量に応じて前記巻取りローラの回転速度を切り替える回転速度切替手段を備えたことを特徴とするロール紙巻取り機構。
【請求項5】
前記回転速度切替手段は、前記巻取りローラの回転速度を変化させる制御手段と、巻き取られたロール紙の量を検知するロール紙検知手段を備え、
巻き取られたロール紙の量が少ないと検知したときは前記巻取りローラの回転速度を前記排出速度より速くし、巻き取られたロール紙の量が多いと検知したときは前記巻取りローラの回転速度を前記排出速度近傍で前記排出速度より速い程度に遅くするようにしたことを特徴とする請求項4記載のロール紙巻取り機構。
【請求項6】
前記回転速度切替手段は、前記巻取りローラを、異なる直径の組み合わせからなる段付き形状とし同軸上に対称に配置し、
巻き取られたロール紙の量を検知するロール紙検知手段と、前記検出結果に基づいて前記巻取りローラを回転軸方向に内側または外側に移動させる駆動手段を備え、
巻き取られたロール紙の量が少ないと検知したときは前記巻取りローラの径の大きい部分にてロール紙に当接させ、巻き取られたロール紙の量が多いと検知したときは前記巻取りローラの径の小さい部分にてロール紙に当接させ、前記巻取りローラの回転速度を前記排出速度近傍で前記排出速度より速い程度に遅くするようにしたことを特徴とする請求項4記載のロール紙巻取り機構。
【請求項7】
前記回転速度切替手段は、前記巻取りローラを、内側ほど直径が小さくなる円錐台形状とし同軸上に対称に配置したことを特徴とする請求項6記載のロール紙巻取り機構。
【請求項8】
前記回転速度切替手段は、前記巻取りローラを、内側ほど直径が小さくなる円錐台形状とし同軸上に対称に配置し、前記巻取りローラを内側方向に付勢するばねを設けたことを特徴とする請求項4記載のロール紙巻取り機構。
【請求項9】
前記ロール紙検知手段は、互いに対向する発光素子および受光素子から構成したことを特徴とする請求項2、請求項5、請求項6または請求項7記載のロール紙巻取り機構。
【請求項10】
前記ロール紙検知手段は、ロール紙を排出するときに、排出回数をカウントし、当該排出回数と1回の処理にて排出されるロール紙の長さとの積にて排出長を算出し、
前記算出した排出長から巻き取られたロール紙の量を算出するようにしたことを特徴とする請求項2、請求項5、請求項6または請求項7記載のロール紙巻取り機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−121674(P2012−121674A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273651(P2010−273651)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】