説明

ローレットピンの成形方法及びその装置

【課題】成形装置への軸状部材の供給とローレットピンの端部の処理を手数を要することなく短時間で行うことができるローレットピンの成形方法及びその装置を提供すること。
【解決手段】軸状部材Wの周面にローレット部を形成するために、対向する面10a、10bにローレット形成部12a、12bを備えた対となる転造ダイス1a、1bと、一端部に軸径より大径の頭部Wbを有する軸状部材Wを前記転造ダイス1に供給する供給機構2とからなり、前記転造ダイス1a、1bの対向する面10a、10bに、転造ダイス1a、1bを相対的に移動させることによって漸次接近して軸状部材Wの頭部Wbを切除する刃部13a、13bを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローレットピンの成形方法及びその装置に関し、特に、ローレット部の形成と併せて、ローレットピンの端部の処理を手数を有することなく行うことができるローレットピンの成形方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、部材を揺動可能に取り付ける枢軸として、軸状部材の周面にローレット部を形成したローレットピンが汎用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このローレットピンは、図4に示すように、通常、一端側にローレット部31を形成し、他端側の端部32に、曲面又は面取り加工を施すようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−283390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のローレットピンは、ローレット部を形成した後、又は、ローレット部を形成する成形装置への供給前に、一端側の端部に、曲面又は面取り加工を施すようにしている。
そして、ローレット部を形成した後に端部の加工を行う場合は、ローレット部を形成したローレットピンの方向を正しく並べて加工する必要がある。
また、ローレット部を形成する成形装置への供給前に端部の加工を行う場合には、図4(b)に示すように、対となる転造ダイス41a、41bを備えた成形装置40への軸状部材W’の供給時に、ローレット部31を形成しない他端側の端部32を同じ方向となるように方向を選別して供給する供給機構42が必要となる。
このように、いずれの場合もローレットピン30の成形に手数及び時間を要するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来のローレットピンの成形方法及びその装置の有する問題点に鑑み、例えば、ローレット部を形成しない側の端部に曲面又は面取り加工を施す必要のあるローレットピンの成形を行うに際して、成形装置への軸状部材の供給とローレットピンの端部の処理を手数を要することなく短時間で行うことができるローレットピンの成形方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のローレットピンの成形方法は、軸状部材の周面にローレット部を形成するローレットピンの成形方法において、対となる転造ダイスの上面で一端部に軸径より大径の頭部を有する軸状部材の頭部の下面を支持し、転造ダイスの対向する面に備えたローレット形成部によって軸状部材の周面にローレット部を形成するとともに、転造ダイスの対向する面に備えた、転造ダイスを相対的に移動させることによって漸次接近する刃部によって前記頭部を切除するようにしたことを特徴とする。
【0008】
この場合において、前記刃部の下面を、頭部を切除した軸状部材の端部が曲面となるように円弧形状とした転造ダイスを用いて成形することができる。
【0009】
また、上記方法に使用する本発明のローレットピンの成形装置は、軸状部材の周面にローレット部を形成するローレットピンの成形装置において、対向する面にローレット形成部を備えた対となる転造ダイスと、一端部に軸径より大径の頭部を有する軸状部材を前記転造ダイスに供給する供給機構とからなり、前記転造ダイスの対向する面に、転造ダイスを相対的に移動させることによって漸次接近して軸状部材の頭部を切除する刃部を備えたことを特徴とする。
【0010】
この場合において、前記刃部の下面を、頭部を切除した軸状部材の端部が曲面となるように円弧形状とすることができる。
【0011】
さらにこれらの場合において、前記供給機構を、頭部を支持して軸状部材を順次供給するレール部材と、該レール部材の端部において、該端部及び前記転造ダイスの上面で頭部を支持された軸状部材を対向する転造ダイス間まで移動させる押圧部材とから構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のローレットピンの成形方法及びその装置によれば、軸径より大径の頭部を有する軸状部材を供給することにより、成形装置への軸状部材の供給に際して方向の選別を容易に行うことができ、成形装置への供給に手数を要することがない。
また、転造ダイスの対向面に設けた刃部によって、ローレット部の形成と併せて、頭部の切除によるローレットピンの端部の処理を同時に行うことができるローレットピンの成形方法及びその装置を提供することができる。
【0013】
また、前記刃部の下面を、頭部を切除した軸状部材の端部が曲面となるように円弧形状とすることにより、頭部の切除とともに、切除側の端部の曲面仕上げを同時に行うことができる。
【0014】
また、前記供給機構を、頭部を支持して軸状部材を順次供給するレール部材と、該レール部材の端部において、該端部及び前記転造ダイスの上面で頭部を支持された軸状部材を対向する転造ダイス間まで移動させる押圧部材とから構成することにより、軸径より大径の頭部を支持して、簡単に軸状部材を転造ダイス間の成形を開始する位置まで供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明のローレットピンの成形方法及びその装置の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0016】
図1〜図2に、本発明のローレットピンの成形装置Sの一実施例を示す。
このローレットピンの成形装置Sは、軸状部材Wの周面にローレット部を形成するために、対向する面10a、10bにローレット形成部12a、12bを備えた対となる転造ダイス1a、1bと、一端部に軸径より大径の頭部Wbを有する軸状部材Wを前記転造ダイス1a、1bに供給する供給機構2とからなり、前記転造ダイス1a、1bの対向する面10a、10bに、転造ダイス1a、1bを相対的に移動させることによって漸次接近して軸状部材Wの頭部Wbを切除する刃部13a、13bを備えるようにしている。
【0017】
刃部13a、13bは、図1(a)に示すように、刃先を平面視直線状に形成して、転造ダイス1a、1bを相対的に移動させることによって漸次接近するように構成するほか、図1(d)に示すように、刃先を平面視曲線状に形成することもできる。
これによって、軸部の切断時に生じる負荷を低減し、刃先の摩耗を防止することができる。
【0018】
また、刃部13a、13bは、特に限定されるものではないが、本実施例においては、下面14a、14bを、頭部Wbを切除した軸状部材Wの端部が曲面となるように円弧形状としている。
なお、下面14a、14bの円弧形状は、図1(c)に示すように、全体を円弧形状とするほか、図1(e)に示すように、隅部のみを円弧形状とすることもできる。
下面14a、14bを円弧形状とすることによって、軸状部材Wの頭部Wbの切除とともに、ローレットを形成しない側の端部の曲面仕上げを同時に行うことができる。
【0019】
この場合、刃部13a、13bの下面14a、14bは、図1(f)に示すように、面10a、10b(転造ダイス1a、1bの対向する面10a、10b)へ向かって、途中から下降する直線状の傾斜面としたり、図1(g)に示すように、刃先から下降する直線状の傾斜面とすることによって、軸状部材Wの切除側の端部の仕上げを面取り仕上げとすることもできる。
【0020】
また、転造ダイス1a、1bの大きさは、特に限定されず、例えば、図1に示す、転造ダイス1のA寸法は、ローレット形成部12が軸状部材Wの周面Waにローレット部を形成するためには、軸状部材Wの軸部の円周長さの1倍以上が必要となるが、十分な深さを有するローレット部を形成するといった観点から数倍〜十数倍程度の長さとすることが好ましい。
【0021】
供給機構2は、一端部に軸径より大径の頭部Wbを有する軸状部材Wを、転造ダイス1a、1b間の成形を開始する位置まで供給するものであれば、その構成を特に限定されるものではないが、本実施例においては、軸状部材Wの頭部Wbを支持して軸状部材Wを順次供給するレール部材20と、該レール部材20の端部(例えば、一方のレール20bの端部)において、該端部と転造ダイス1a、1bの上面11a、11bとで頭部Wbを支持された軸状部材Wを対向する転造ダイス1a、1b間まで移動させる押圧部材22、23とから構成するようにしている。
【0022】
レール部材20は、軸状部材Wの頭部Wbを支持するレール20a、20bと、該レール20a、20bに挟まれて軸状部材Wの軸部の通過を許容する溝部21とからなり、転造ダイス1a、1b間に向かって傾斜して配設され、転造ダイス1a、1bの作動に合わせて軸状部材Wを1個ずつ供給するように構成されている。
レール20a、20bは、一方のレール20bの端部を転造ダイス1a、1b間の近傍まで延設するようにし、他方のレール20aは、軸状部材Wが一方のレール20bの端部に到達したときに頭部Wbが掛からない状態となる位置に配設するようにしている。
【0023】
押圧部材22は、第1の押圧部材として、転造ダイス1a、1b間の近傍まで端部を延設した一方のレール20bと一方の転造ダイス1aの上面11aとに支持された状態の軸状部材W(図2(a)の二点鎖線参照)を、他方の転造ダイス1bの上面11bに到達する位置(図2(a)の実線参照)まで移動させるもので、シリンダ等の押圧手段によって構成されている。
【0024】
押圧部材23は、第2の押圧部材として、両方の転造ダイス1a、1bの上面11a、11bに支持された状態の軸状部材W(図2(b)の二点鎖線参照)を、成形を開始する位置(図2(b)の実線参照)まで移動させるもので、押圧部材22と同様、シリンダ等の押圧手段によって構成されている。
【0025】
なお、レール部材20の配設位置を、図3に示すように、レール部材20の端部に到達した軸状部材Wの軸部が、一方の転造ダイス1bの他方の転造ダイス1aに対して対向する面10bに当接する位置(図2(a)の実線で示す、押圧部材22によって移動させた位置)となるようにするときは、第1の押圧部材である押圧部材22を省略し、供給機構2を、レール部材20と押圧部材23とによって構成することもできる。
【0026】
次に、上記構成のローレットピンの成形装置Sを用いたローレットピンPの成形方法について説明する。
【0027】
まず、軸状部材Wを供給機構2によって成形を開始する位置に供給し、対となる転造ダイス1a、1bの上面11a、11bで、一端部に軸径より大径の頭部Wbを有する軸状部材Wの頭部Wbの下面を支持する。
そして、転造ダイス1a、1bを相対的に移動させる。
この場合、供給機構2の押圧部材23の移動と同期して転造ダイス1a、1bを相対的に移動させるようにすることができる。
ところで、本実施例においては、図2に示すように、転造ダイス1aを固定ダイス、転造ダイス1bを移動ダイスとしているが、これに限られることはなく、例えば、両方の転造ダイス1a、1bを移動させるようにすることもできる。
これによって、転造ダイス1a、1bの対向する面10a、10bに備えたローレット形成部12a、12bによって軸状部材Wの周面Waにローレット部を形成するとともに、転造ダイス1a、1bの対向する面10a、10bに備えた刃部13a、13bによって頭部Wbが切除される。
【0028】
このとき、刃部13a、13bの下面14a、14bを、頭部Wbを切除した軸状部材Wの端部が曲面となるように円弧形状としているから、軸状部材Wの周面Waへのローレット部の形成、軸状部材Wの頭部Wbの切除及びローレットを形成しない側の端部の端部の曲面仕上げを同時に行うことができる。
【0029】
そして、頭部Wbが切除されることによって転造ダイス1a、1bから落下したローレットピンP及び頭部Wbは、選別機(図示省略)により選別して回収される。
選別機は、特に、その構成を限定するものではなく、例えば、2本のローラを並列に設置して回転させ、ローラ間の隙間の間隔を利用して被選別物の大小の選別を行うようにしたローラ選別機等を利用することができる。
【0030】
以上、本発明のローレットピンの成形方法及びその装置について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のローレットピンの成形方法及びその装置は、成形装置への軸状部材の供給とローレットピンの端部の処理を手数を要することなく短時間で行うことができるという特性を有していることから、例えば、ローレットを形成しない側の端部に曲面又は面取り加工を施す必要のあるローレットピンの成形の用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のローレットピンの成形装置の一実施例を示し、(a)は成形開始位置における軸状部材を支持した状態の平面図、(b)は(a)のI−I線の正面図、(c)は同側面図、(d)は刃部の別の実施例を示す平面図、(e)は刃部の下面の別の実施例を示す側面図、(f)は同じく別の実施例を示す側面図、(g)は同じく別の実施例を示す側面図である。
【図2】本発明のローレットピンの成形装置を用いた成形方法の手順を示す説明図で、(a)は供給機構から供給された軸状部材を第1の押圧部材で移動させる平面図、(b)は図2(a)の位置から第2の押圧部材で成形開始位置まで移動させる平面図、(c)はローレット成形中及び頭部切除中の平面図、(d)は成形が完了し、頭部が切除されローレットピンが完成した状態を示す平面図である。
【図3】同成形方法の別の手順を示す説明図で、(a)は供給機構から供給された軸状部材の軸部が転造ダイスの対向する面に当接している状態を示す平面図、(b)は図3(a)の位置から押圧部材で成形開始位置まで移動させる平面図、(c)はローレット成形及び頭部切除中の平面図である。
【図4】(a)ローレットピンの正面図、(b)は従来のローレットピンの成形装置を示す概略図である。
【符号の説明】
【0033】
1a 転造ダイス
1b 転造ダイス
10a 対向する面
10b 対向する面
11a 上面
11b 上面
12a ローレット形成部
12b ローレット形成部
13a 刃部
13b 刃部
14a 下面
14b 下面
2 供給機構
20 レール部材
20a レール
20b レール
21 溝部
22 押圧部材
23 押圧部材
S 成形装置
W 軸状部材
P ローレットピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸状部材の周面にローレット部を形成するローレットピンの成形方法において、対となる転造ダイスの上面で一端部に軸径より大径の頭部を有する軸状部材の頭部の下面を支持し、転造ダイスの対向する面に備えたローレット形成部によって軸状部材の周面にローレット部を形成するとともに、転造ダイスの対向する面に備えた、転造ダイスを相対的に移動させることによって漸次接近する刃部によって前記頭部を切除するようにしたことを特徴とするローレットピンの成形方法。
【請求項2】
前記刃部の下面を、頭部を切除した軸状部材の端部が曲面となるように円弧形状とした転造ダイスを用いて成形するようにしたことを特徴とする請求項1記載のローレットピンの成形方法。
【請求項3】
軸状部材の周面にローレット部を形成するローレットピンの成形装置において、対向する面にローレット形成部を備えた対となる転造ダイスと、一端部に軸径より大径の頭部を有する軸状部材を前記転造ダイスに供給する供給機構とからなり、前記転造ダイスの対向する面に、転造ダイスを相対的に移動させることによって漸次接近して軸状部材の頭部を切除する刃部を備えたことを特徴とするローレットピンの成形装置。
【請求項4】
前記刃部の下面を、頭部を切除した軸状部材の端部が曲面となるように円弧形状としたことを特徴とする請求項3記載のローレットピンの成形装置。
【請求項5】
前記供給機構を、頭部を支持して軸状部材を順次供給するレール部材と、該レール部材の端部において、該端部及び前記転造ダイスの上面で頭部を支持された軸状部材を対向する転造ダイス間まで移動させる押圧部材とから構成したことを特徴とする請求項3又は4記載のローレットピンの成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−131603(P2010−131603A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306929(P2008−306929)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(308037041)新日本ファスナー工業株式会社 (1)