説明

ワイプパターン生成装置

【課題】様々な形状のワイプパターンの発生を高速に実行することができ、小型化も可能なワイプパターン生成装置を提供する。
【解決手段】ワイプパターン生成装置100は、入力される角度データθからsinθを計算するsinθ計算手段101と、sinθの計算結果と第一係数とを乗算する第一乗算手段103と、角度データθからcosθを計算するcosθ計算手段102と、cosθの計算結果と第二係数とを乗算する第二乗算手段104と、前記第一乗算手段の出力と第二乗算手段の出力とを加算した結果を第三係数と乗算し、極座標の中心から表示画面上の任意の直線までの距離の逆数として出力する第三乗算手段106と、前記第三乗算手段の出力と、前記距離データrとを乗算する第四乗算手段107と、前記第四乗算手段の出力と第四係数とを比較する比較手段108とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像制作等に用いられるワイプパターン生成装置に関し、特に、多種類のワイプパターンを生成可能なワイプパターン生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、テレビジョン放送のような動画像として制作される映像においては、通常は時系列で連続する多数のフレーム画像を一定の時間間隔(例えば1/60秒のフレーム周期)で順次に切り替えて出力することになる。しかし、同一の番組内で場面を切り替える場合や、番組自体を切り替えるような場合には、順次に出力されるフレーム画像の連続性が突然途切れるため、不自然な感覚を視聴者に与える可能性がある。このような場合には、前の場面のフレーム画像から後の場面のフレーム画像に徐々に切り替えることにより、場面が遷移することを視聴者に明確に伝えることができる。
【0003】
また、切り替えの際に、同じ画面内に2つの領域を形成し、一方の領域には切り替え前の場面のフレーム画像を表示し、もう一方の領域には切り替え後の場面のフレーム画像を表示することにより、場面の切り替わりをより明確に視聴者に伝えることが可能になる。このような画面上の複数領域の境界としては、最も単純な例では直線を用いることが考えられるが、様々な形状の図形を選択的に用いることにより、効果的に場面を切り替えることができる。このような境界のパターンを生成するために、ワイプパターン生成装置が用いられる。
【0004】
従来のワイプパターン生成装置に関する技術としては、例えば特許文献1に開示された技術が知られている。この種のワイプパターン生成装置は、表示画面上の各位置を極座標で表現した座標情報を用いて、画面上の中心座標からの各画素位置の距離と閾値とを比較した結果の値に応じて、2つの映像入力を切り替えて表示する。
【0005】
従来のワイプパターン生成装置は、例えば図6に示すように、図形メモリ601と、乗算器602と、比較器604とを備えている。例えば図7に示すような表示画面000上を走査する場合、各画素位置は通常は水平方向の位置を表すx座標005と垂直方向の位置を表すy座標006との組み合わせにより表される。ワイプパターン生成装置においては、各画素位置を極座標で表現された情報として入力する。すなわち、予め定めた極座標原点003から各画素位置までの距離rと、各画素位置の方向を表す基準軸に対する角度θとの組み合わせで座標を表現する。
【0006】
図6に示すワイプパターン生成装置の入力には、各画素位置の極座標を表す距離r及び角度θの情報と、係数kとが入力される。図形メモリ601は、極座標原点003から生成するワイプパターンの輪郭上の各点までの距離を表す情報702を、角度θに対応付けられた各アドレスに保持している。従って、角度θの情報を与えることにより図形メモリ601から該当する距離を表す情報702を読み出すことができる。乗算器602は、生成するワイプパターンを拡大/縮小するために、図形メモリ601から読み出した距離情報702を係数kと乗算しその結果を出力する。比較器604は、乗算器602の出力と距離rとの比較を行いその結果をワイプパターン出力データ010として出力する。比較器604から出力されるワイプパターン出力データ010は、2値データであり、該当する画素位置がワイプパターン輪郭に対して内側と外側とのいずれの領域に存在するかを表す。
【0007】
例えば、図形メモリ601に、図7に示すような三角形ワイプパターン701を生成するための距離情報702を格納した場合、入力される極座標の角度情報θに応じて、三角形ワイプパターン701を生成するための距離情報702が図形メモリ601から読み出される。そして、比較器604は角度情報θと乗算器602から出力される値(距離情報702に相当)とを比較することにより、距離r及び角度θとして入力された画素位置が三角形ワイプパターン701の輪郭の内側か外側かを識別する。つまり、図8に示すように、三角形ワイプパターン701の輪郭を境界として表示画面000を2つの領域に区別することができる。
【0008】
【特許文献1】特開平10−65966号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のワイプパターン生成装置においては、生成するワイプパターン毎にそのパターンデータを図形メモリに保持しておく必要があるので、生成可能なワイプパターンの種類を増やすためには、図形メモリに大量のパターンデータを格納しておく必要があり、大容量の図形メモリを搭載することが不可欠であった。
【0010】
また、大容量の図形メモリとして大容量のROM(読み出し専用メモリ)を採用した場合には、データアクセスを高速で実行するのは困難である。しかし、近年は画像の高解像度化が進んでいるため、1画素あたりの処理に許容できる時間が非常に短くなっているのが実情である。従って、ワイプパターンの生成を高速に処理しないと、高解像度の表示画面にワイプパターンを適用することができない。そのため、大容量のROMを使用するのは困難である。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、様々な形状のワイプパターンの発生を高速に実行することができ、小型化が可能なワイプパターン生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のワイプパターン生成装置は、表示画面上の各画素に対応する位置情報が、角度データθと極座標の中心からの距離データrとの組み合わせで表現される極座標データとして入力され、前記極座標データと所定のパターン情報とを比較した結果を出力するワイプパターン生成装置であって、入力される前記角度データθからsinθを計算するsinθ計算手段と、前記sinθの計算結果と第一係数とを乗算する第一乗算手段と、前記角度データθからcosθを計算するcosθ計算手段と、前記cosθの計算結果と第二係数とを乗算する第二乗算手段と、前記第一乗算手段の出力と前記第二乗算手段の出力とを加算した結果を第三係数と乗算し、極座標の中心から表示画面上の任意の直線までの距離の逆数として出力する第三乗算手段と、前記第三乗算手段の出力と前記距離データrとを乗算する第四乗算手段と、前記第四乗算手段の出力と第四係数とを比較する比較手段とを備えるものである。
【0013】
上記構成では、入力される角度データθに基づいて、sinθの計算とcosθの計算と乗算と加算とを組み合わせて行うことにより、任意の直線で構成されるワイプパターンの輪郭位置を求め、ワイプパターンを生成する。また、第一係数と第二係数と第三係数とを適宜変更することにより、様々な直線パターンに対応したワイプパターンを生成することができる。従って、必要とされるメモリの容量を大幅に削減することができ、ワイプパターンの生成を高速で実行することも可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、様々な形状のワイプパターンの発生を高速に実行することができ、小型化が可能なワイプパターン生成装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本実施形態のワイプパターン生成装置は、従来のワイプパターン生成装置と同様に、映像処理装置等に用いられ、例えばテレビジョン放送のような動画像を画面に表示する場合に、画面上の領域を生成したパターンによって区分するために利用することができるものである。
【0016】
図1は本発明の実施形態に係るワイプパターン生成装置の構成を示すブロック図である。本実施形態のワイプパターン生成装置100は、sinθ生成部101と、cosθ生成部102と、乗算器103と、乗算器104と、加算器105と、乗算器106と、乗算器107と、比較器108とを備えて構成される。
【0017】
このワイプパターン生成装置100の入力には、表示画面上をx座標005方向及びy座標006方向に順次に走査して得られる各画素位置を極座標で表現した情報、すなわち角度情報θと距離情報rとが入力される。また、このほかに、生成するワイプパターンの特性を決定する係数R1、R2、R3、R4の数値がワイプパターン生成装置100に入力される。
【0018】
sinθ生成部101は、入力される極座標の角度情報θからsinθのデータを算出する。cosθ生成部102は、入力される極座標の角度情報θからcosθのデータを算出する。sinθ生成部101及びcosθ生成部102については、例えば予め計算結果のデータを保持するメモリを利用することにより実現できる。また補間回路を組み合わせることにより、メモリ容量を削減することもできる。
【0019】
乗算器103は、sinθ生成部101が出力するデータと係数R1とを乗算してその結果を出力する。乗算器104は、cosθ生成部102が出力するデータと係数R2とを乗算してその結果を出力する。加算器105は、乗算器103の出力値と乗算器104の出力値とを加算した結果を出力する。乗算器106は、加算器105の出力値と係数R3とを乗算してその結果を出力する。乗算器106が出力する値は、極座標原点003から表示画面000上の任意の直線までの距離情報の逆数に相当する。
【0020】
乗算器107は、乗算器106が出力する値とワイプパターン生成装置100に入力される距離情報rとを乗算してその結果を出力する。比較器108は、乗算器107が出力する値と係数R4とを比較してその結果をワイプパターン出力データ010として出力する。
【0021】
次に、本実施形態のワイプパターン生成装置100が実際のワイプパターンを生成する際の具体的な動作について説明する。図2は本実施形態における第一直線の生成手順を示す模式図、図3は図2中の第一直線に対応するワイプパターン出力データを表す模式図である。図4は本実施形態における第二直線の生成手順を示す模式図、図5は図4中の第二直線に対応するワイプパターン出力データを表す模式図である。
【0022】
なお、本実施形態では、図3や図5に示すような直線のワイプパターンを表示画面に適用する場合を想定している。図3及び図5においては、表示画面中の水平方向の画素位置をx座標005、垂直方向の画素位置をy座標006で表している。
【0023】
図2及び図3に示す第一直線の例では、x座標005、y座標006の位置(0,0)を極座標原点003に定め、第一直線201をワイプパターンとして生成する場合を想定している。ここで、第一直線201は(y=−(1/3)x+2/3)の関数で表される。
【0024】
図2に示すように、極座標原点003から第一直線201上の点までの距離rをrで表す場合には、距離rの逆数(1/r)は次の(1)式により求められる。
【0025】
【数1】

【0026】
従って、上記(1)式に相当する演算を図1のワイプパターン生成装置100で実行すれば、図2の第一直線201に相当するワイプパターンを生成することができる。実際には、(1)式の係数に従って、ワイプパターン生成装置100に与える係数R1に「3」、係数R2に「1」、係数R3に「1/2」をそれぞれ割り当てることにより、第一直線201に相当するワイプパターンを生成することができる。
【0027】
実際のワイプパターン出力データ010の生成条件は、係数R4に応じて定まる。すなわち、比較器108は、図3に示すように(r/r)とR4とを比較した結果をワイプパターン出力データ010として出力する。最も単純な例としては、係数R4に「1」を割り当てることが考えられる。
【0028】
従って、実際には図3に示すようなワイプパターン出力データ010が得られる。つまり、生成されたワイプパターンである第一直線201を境界として、表示画面上が2つの領域に区分される。ワイプパターン生成装置100に入力された極座標の位置が、2つの領域のどちらに属するかを表すのがワイプパターン出力データ010の内容(1または0)になる。
【0029】
また、図4及び図5に示す第二直線の例では、x座標005、y座標006の位置(0,0)を極座標原点003に定め、第一直線201とは傾きが異なる第二直線401をワイプパターンとして生成する場合を想定している。ここで、第二直線401は(y=tan(π/3)×x−tan(π/3))の関数で表される。
【0030】
図4に示すように、極座標原点003から第二直線401上の点までの距離rをrで表す場合には、距離rの逆数(1/r)は次の(2)式により求められる。
【0031】
【数2】

【0032】
従って、上記(2)式に相当する演算を図1のワイプパターン生成装置100で実行すれば、図4の第二直線401に相当するワイプパターンを生成することができる。実際には、(2)式の係数に従って、ワイプパターン生成装置100に与える係数R1に「1」、係数R2に「−tan(π/3)」、係数R3に「−1/(tan(π/3))」をそれぞれ割り当てることにより、第二直線401に相当するワイプパターンを生成することができる。
【0033】
実際のワイプパターン出力データ010の生成条件は、係数R4に応じて定まる。すなわち、比較器108は、図5に示すように(r/r)とR4とを比較した結果をワイプパターン出力データ010として出力する。最も単純な例としては、係数R4に「1」を割り当てることが考えられる。
【0034】
従って、実際には図5に示すようなワイプパターン出力データ010が得られる。つまり、生成されたワイプパターンである第二直線401を境界として、表示画面上が2つの領域に区分される。ワイプパターン生成装置100に入力された極座標の位置が、2つの領域のどちらに属するかを表すのがワイプパターン出力データ010の内容(1または0)になる。
【0035】
以上のように、本実施形態のワイプパターン生成装置100においては、大容量のメモリを用いることなく、計算により直線で構成されるワイプパターンを高速で生成することができる。また、入力する各係数を適宜変更することにより、様々なワイプパターンを生成できる。
【0036】
なお、上記実施形態では、x座標005が「0」、y座標006が「0」の位置を極座標原点003に定め、角度情報θを「0〜2/π」に限定して説明しているが、極座標原点003として割り当てる位置の違いによっては角度情報θの範囲も必要に応じて変更される。
【0037】
また、上記実施形態では、単純な直線である第一直線201または第二直線401を、ワイプパターンとする場合のみを説明したが、もう少し複雑なパターンも生成できる。例えば、入力される角度情報θの範囲を複数の領域に区分して、領域毎に生成する直線のパターンを折り返しするような処理を施すことにより、複数の対称な直線を組み合わせて多角形のワイプパターンを生成することも可能である。
【0038】
また、ワイプパターン生成装置100に入力する係数R1、R2、R3の値を変更することにより、前述の第一直線201及び第二直線401以外のパターンを生成することもできる。また、上記実施形態では係数R4の値が「1」の場合のみを説明したが、係数R4の値を変更することにより、極座標の原点を中心としてワイプパターンを拡大したり縮小することができる。
【0039】
上述した本実施形態のワイプパターン生成装置によれば、入力される角度データθに基づいてsinθの計算とcosθの計算と乗算と加算とを組み合わせて行うことにより、任意の直線で構成されるワイプパターンの輪郭位置を求め、ワイプパターンを生成することができる。また、各係数を適宜変更することにより、様々な直線パターンに対応したワイプパターンを生成することができる。このため、必要とされるメモリの容量を大幅に削減して小型化を図ることができ、ワイプパターンの発生を高速で実行することも可能になる。従って、本実施形態のワイプパターン生成装置は、小型化及び高速化が必要な環境において、要求される条件を満たしつつ、様々なワイプパターンを生成でき、映像・画像の制作・編集等が行われる各分野において広く利用することが可能である。
【0040】
以上、本発明の各種実施形態を説明したが、本発明は前記実施形態において示された事項に限定されず、この明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者がその構成や動作の一部分に変更を加えたり、応用することも可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、様々な形状のワイプパターンの発生を高速に実行することができ、小型化が可能となる効果を有し、映像制作等に用いられ、特に、多種類のワイプパターンを生成可能なワイプパターン生成装置等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係るワイプパターン生成装置の構成を示すブロック図
【図2】本実施形態における第一直線の生成手順を示す模式図
【図3】図2中の第一直線に対応するワイプパターン出力データを表す模式図
【図4】本実施形態における第二直線の生成手順を示す模式図
【図5】図4中の第二直線に対応するワイプパターン出力データを表す模式図
【図6】従来例のワイプパターン生成装置の構成を示すブロック図
【図7】従来例のワイプパターン生成装置の動作を示す模式図
【図8】ワイプパターン出力データの例を示す模式図
【符号の説明】
【0043】
000 表示画面
003 極座標原点
005 x座標
006 y座標
010 ワイプパターン出力データ
100 ワイプパターン生成装置
101 sinθ生成部
102 cosθ生成部
103、104 乗算器
105 加算器
106、107 乗算器
108 比較器
R1、R2、R3、R4 係数
r 距離情報
θ 角度情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示画面上の各画素に対応する位置情報が、角度データθと極座標の中心からの距離データrとの組み合わせで表現される極座標データとして入力され、前記極座標データと所定のパターン情報とを比較した結果を出力するワイプパターン生成装置であって、
入力される前記角度データθからsinθを計算するsinθ計算手段と、
前記sinθの計算結果と第一係数とを乗算する第一乗算手段と、
前記角度データθからcosθを計算するcosθ計算手段と、
前記cosθの計算結果と第二係数とを乗算する第二乗算手段と、
前記第一乗算手段の出力と前記第二乗算手段の出力とを加算した結果を第三係数と乗算し、極座標の中心から表示画面上の任意の直線までの距離の逆数として出力する第三乗算手段と、
前記第三乗算手段の出力と前記距離データrとを乗算する第四乗算手段と、
前記第四乗算手段の出力と第四係数とを比較する比較手段と
を備えるワイプパターン生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−129633(P2007−129633A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322280(P2005−322280)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】