ワクチン
本発明は、抗原と複合体化された、Gb3受容体に結合することができる志賀毒素のBサブユニットまたはその免疫学的な機能的等価物を含み、さらにアジュバントを含むワクチン組成物であって、但し該アジュバントが金属塩のみである場合にはそれは約50%以下の抗原が該金属塩上に吸着されるような方法で製剤化されている、前記組成物を提供する。そのような組成物は、アジュバントを含まずに抗原と複合体化させた志賀毒素またはその免疫学的な機能的等価物、またはアジュバントを含む抗原単独と比較して、改善された免疫応答を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は改良されたワクチン組成物、その作製方法および医学におけるその使用を提供する。特に、本発明は志賀毒素のBサブユニットまたはその免疫学的な機能的等価物、およびアジュバントと共に製剤化された抗原を含むアジュバント化されたワクチン組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6,613,882号は、式:B--X(式中、Bは志賀毒素のB断片またはその機能的等価物を表し、Xは治療上重要な1種以上のポリペプチドを表し、該ポリペプチドはBにより媒介される逆輸送と適合し、Xのプロセッシングもしくは正確な位置指定(addressing)を確実にする)のキメラポリペプチドを開示する。
【0003】
WO02/060937は、Gb3受容体に対して直接的もしくは間接的に標的化するための、式 STxB-Z(n)-Cys (式中、StxBは志賀毒素Bサブユニットであり、Zはスルフヒドリル基を含まないアミノ酸リンカーであり、nは0、1、2、またはポリペプチドであり、Cysはシステインである)を有する汎用ポリペプチド担体を開示する出願である。
【0004】
細胞性応答の優勢な誘導を必要とするワクチンの開発は依然として課題を残している。細胞性免疫応答の主要なエフェクター細胞であるCD8+ T細胞は、病原体に感染した細胞中で合成される抗原を認識するので、ワクチン接種の成功には該ワクチン接種受容者の細胞中での免疫原性抗原の合成が必要である。これは弱毒化生ワクチンを用いて達成することができるが、しかしながら、これらには大きな限界も存在する。第1に、ワクチン接種受容者が免疫抑制される場合であれ、病原体自身が免疫抑制を誘導することができる場合(例えば、ヒト免疫不全ウイルス)であれ、感染の危険性が存在する。第2に、ある種の病原体は細胞培養で増殖させることが困難であるか、または不可能である(例えば、C型肝炎ウイルス)。不活化全細胞ワクチンまたは明礬アジュバント化された組換えタンパク質サブユニットワクチンなどの他の既存のワクチンはほとんどCD8応答を誘導しない。
【0005】
これらの理由のため、次のような代替的な手法が開発中である:生ベクター化ワクチン、プラスミドDNAワクチン、合成ペプチドまたは特異的アジュバント。生ベクター化ワクチンは強力な細胞性応答を誘導する上で優れているが、該ベクターに対する、予め存在する(例えば、アデノウイルス)かまたはワクチンにより誘導される免疫は、追加のワクチン用量の効力を損なう可能性がある(Casimiroら、JOURNAL OF VIROLOGY, 2003年6月, p. 6305-6313)。プラスミドDNAワクチンはまた、細胞性応答を誘導することができるが(Casimiroら、JOURNAL OF VIROLOGY, 2003年6月, p. 6305-6313)、それはヒトにおいては依然として弱く(Mc Conkeyら、Nature Medicine 9, 729-735, 2003)、抗体応答は非常に貧弱である。さらに、合成ペプチドが臨床試験において現在評価されているが(Knongら、J Immunother 2004; 27: 472-477)、限定された数のT細胞エピトープをコードするそのようなワクチンの有効性は、ワクチンエスケープ突然変異体の出現またはHLA適合患者のための第1選択の必要性により妨げられる可能性がある。
【0006】
細菌毒素などの非生ベクターを用いる抗原送達に基づく代替的手法も記載されてきた。志賀Bベクター化系(STxB)は志賀毒素の非毒性Bサブユニットに基づく。この分子は抗原提示のためのベクターとしてそれを利用しやすくするように見えるいくつかの特徴を有する:すなわち毒性の不在、低い免疫原性、CD77受容体を介した標的化および積載抗原をMHCクラス1拘束性抗原提示経路に導入する能力(Haicheurら(2003) Int. Immunol 15 pp 1161-1171)。特に、志賀毒素のBサブユニットへの抗原の物理的結合はマウスモデルにおいて検出可能なCD8応答を誘導することが示された(Haicheurら、2000 Journal of Immunology 165 pp 3301-3308; Haicheurら、2003 Int. Immunol 15 pp 1161-1171)。しかしながら、この応答は大量の抗原(最大80μg、Haicheurら、2003 Int. Immunol 15 pp 1161-1171)の3回の注射を必要とし、腹腔内投与した場合、フロイント不完全アジュバントと混合することにより改善することができなかった(Haicheurら、2000 Journal of Immunology 165 pp 3301-3308)。
【発明の開示】
【0007】
ワクチン抗原および送達系のこれらの制限は、新規ワクチン組成物の探索を正当化する。本発明者らは、志賀毒素のBサブユニットまたはその免疫学的な機能的等価物を含む組成物中へのアジュバントの含有は、得られる免疫応答、特に、CD8特異的応答に対して有益な効果を有し得ることを見出した。
【0008】
従って、本発明は、抗原と複合体化された、Gb3受容体に結合することができる志賀毒素のBサブユニットまたはその免疫学的な機能的等価物を含み、さらにアジュバントを含むワクチン組成物であって、但し、このアジュバントが金属塩のみである場合にはそれは約60%以下の抗原が該金属塩上に吸着されるような方法で製剤化されている前記組成物を提供する。
【0009】
具体的なアジュバントは、金属塩、水中油乳濁液、Toll様受容体アゴニスト(特に、Toll様受容体2アゴニスト、Toll様受容体3アゴニスト、Toll様受容体4アゴニスト、Toll様受容体7アゴニスト、Toll様受容体8アゴニストおよびToll様受容体9アゴニスト)、サポニンまたはそれらの組合せからなる群より選択されるものであり、但し金属塩は、それを約60%以下の抗原が該金属塩上に吸着されるような方法で製剤化しない限りは別のアジュバントと組合わせてのみ使用され、単独では使用されない。約50%以下、例えば、40%の抗原が前記金属塩上に吸着されるのが好ましく、一実施形態においては、約30%以下の抗原が前記金属塩上に吸着される。金属塩上に吸着される抗体のレベルは、実施例1.5に記載する方法などの当業界で周知の技術により決定することができる。遊離抗原のレベルは、例えば、リン酸緩衝生理食塩水などのリン酸イオンの存在下で前記組成物を製剤化するか、または金属塩に対する抗原の比率を増加させることにより、増加させることができる。一実施形態においては、アジュバントは唯一のアジュバントとして金属塩を含まない。一実施形態においては、アジュバントは金属塩を含まない。従来技術で明示された状況とは対照的に、本発明者らは、志賀毒素(または免疫学的な機能的等価物)および抗原の効果をそのような組成物を筋肉内投与しない場合に増大させる不完全フロイントアジュバントの能力を示した。さらに、CD8応答のこの改善は、単回注射後、およびより低用量の抗原を用いる場合に、容易に観察される。
【0010】
志賀毒素のBサブユニットおよびその免疫学的な機能的等価物を、本明細書では本発明のタンパク質と呼ぶ。志賀毒素のBサブユニットの免疫学的な機能的等価物は、限定するものではないが、Gb3受容体に結合することができる毒素、毒素サブユニットまたはその機能的断片などのタンパク質として定義する。そのような結合能は、実施例1.2で説明するアッセイプロトコルに従うことにより決定することができる。Gb3結合は、目的の抗原の適切な輸送を誘導し、それによってそのMHCクラス1提示を促進すると考えられる。一実施形態においては、そのようなタンパク質は、志賀毒素のBサブユニットの成熟形態に対して、アミノ酸レベルで少なくとも50%のアミノ酸配列同一性、好ましくは60%、70%、80%、90%または95%の同一性を有する。
【0011】
そのような免疫学的な機能的等価物としては、種々の赤痢菌(Shigella)種、特に、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)から単離された毒素のBサブユニットが挙げられる。さらに、志賀毒素のBサブユニットの免疫学的な機能的等価物は、他の細菌に由来するGb3受容体に結合することができる相同毒素であって、好ましくは志賀毒素のBサブユニットに対して少なくとも50%のアミノ酸配列同一性を有する前記毒素を包含する。例えば、大腸菌(E.coli)に由来するベロ毒素-1(VT1)のBサブユニットは志賀毒素のBサブユニットと同一である。大腸菌由来のVT1およびVT2はGb3受容体に結合することが知られており、本発明の内容において、他の細菌により産生される他の志賀様毒素と同様に用いることができる。本発明の内容においては、用語「毒素」は、これらがヒトに対してはもはや毒性がないように無毒化された毒素、またはヒトにおける毒性活性を実質的に欠いている毒素サブユニットもしくはその断片を意味すると意図される。
【0012】
本発明のワクチン組成物はCD8特異的免疫応答を改善することができる。改善は、アジュバントを含まずに本発明のタンパク質と複合体化させた抗原を含む組成物に対する応答、またはアジュバントを含む抗原を含む製剤に対する応答と比較した場合の、本発明のタンパク質と複合体化した抗原およびアジュバントを含む本発明の組成物に対する応答を調べることにより、測定する。改善は、免疫応答のレベルの増加、より低用量の抗原を用いた同等な免疫応答の生成、免疫応答の質の向上、免疫応答の持続性の増加、または上記のいずれかの組合せとして定義されうる。そのような改善を、初回の免疫後に認めるか、および/またはその後の免疫後に認めることができる。
【0013】
本発明の一実施形態においては、低用量の抗原(マウス1匹あたり抗原8 ngの低量)を用いてそのような免疫応答を惹起することができる。この実施形態においては、アジュバント化された、本発明のタンパク質と複合体化された抗原は、本発明のタンパク質と複合体化されていないアジュバント化された抗原、またはアジュバントを含まないが本発明のタンパク質と複合体化された抗原(これは持続的応答を惹起することができない)と比較して、持続的である一次CD8応答(テトラマー染色、細胞内サイトカイン染色およびin vivo細胞傷害活性により測定される)を誘導することができる。
【0014】
CD8免疫応答は時間と共に徐々に弱くなる。すなわち、ピーク後、ほとんどのエフェクター細胞が死ぬが、記憶細胞は生存している収縮期が存在する。この応答性記憶T細胞集団の確立は、抗原特異的細胞の長期間の検出およびその追加免疫される能力の両方により、認識される。
【0015】
アジュバントは、サポニン、リピドAもしくはその誘導体、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、アルキルグルコサミニドリン酸、またはそれらの組合せからなる群より選択するのが好ましい。さらに好ましいアジュバントは、別のアジュバントと組合わせた金属塩である。アジュバントはToll様受容体アゴニスト、特に、Toll様受容体2、3、4、7、8もしくは9のアゴニスト、またはサポニン、特にQs21であるのが好ましい。アジュバント系は上記列挙からの2種以上のアジュバントを含むのがさらに好ましい。特に、この組合せはサポニン(特にQs21)アジュバントおよび/またはCpG含有免疫刺激性オリゴヌクレオチドなどのToll様受容体9アゴニストを含むのが好ましい。他の好ましい組合せは、サポニン(特にQs21)およびモノホスホリルリピドAもしくはその3脱アシル化誘導体、3D-MPLなどのToll様受容体4アゴニスト、またはサポニン(特にQS21)およびアルキルグルコサミニドリン酸などのToll様受容体4リガンドを含む。
【0016】
特に好ましいアジュバントは、3D-MPLおよびQS21の組合せ(EP 0 671 948 B1)、3D-MPLおよびQS21を含む水中油乳濁液(WO 95/17210, WO 98/56414)、または他の担体と共に製剤化された3D-MPL(EP 0 689 454 B1)である。他の好ましいアジュバント系は、3D-MPL、QS21および米国特許第6,558,670号、同第6,544,518号に記載のCpGオリゴヌクレオチドの組合せを含む。
【0017】
一実施形態においては、アジュバントはToll様受容体(TLR)4リガンド、好ましくはリピドA誘導体、特にモノホスホリルリピドAなどのアゴニスト、またはより具体的には3脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)である。
【0018】
3D-MPLはCorixa社により商標MPL(R)の元で販売されており、IFN-g(Th1)表現型を有するCD4+T細胞応答を主に促進する。それはGB 2 220 211 Aに開示された方法に従って製造することができる。化学的には、それは3-脱アシル化モノホスホリルリピドAと3、4、5または6アシル化鎖との混合物である。好ましくは、本発明の組成物においては、小粒子3D-MPLを用いる。小粒子3D-MPLは、それを0.22μmのフィルターを通して滅菌濾過することができるような粒子径を有する。そのような調製物は国際特許出願WO 94/21292に記載されている。リピドAの合成誘導体は公知であり、限定されるものではないが、以下のようなものを始めとするTLR4アゴニストであると考えられる:
OM174 (2-デオキシ-6-o-[2-デオキシ-2-[(R)-3-ドデカノイルオキシテトラ-デカノイルアミノ]-4-o-ホスホノ-β-D-グルコピラノシル]-2-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]-α-D-グルコピラノシルジヒドロゲンホスフェート)(WO 95/14026)、
OM294 DP (3S,9R)-3--[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9(R)-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール、1,10-ビス(ジヒドロゲノホスフェート)(WO99/64301およびWO00/0462)、
OM197 MP-Ac DP (3S,9R)-3-[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール、1-ジヒドロゲノホスフェート10-(6-アミノヘキサノエート)(WO 01/46127)。
【0019】
用いることができる他のTLR4リガンドは、WO9850399もしくは米国特許第6,303,347号(AGPの製造方法も開示されている)に開示されたものなどのアルキルグルコサミニドリン酸(AGP)、または米国特許第6,764,840号に開示されたAGPの製薬上許容し得る塩である。いくつかのAGPはTLR4アゴニストであり、いくつかはTLR4アンタゴニストである。双方ともアジュバントとして有用であると考えられる。
【0020】
本発明における使用のための別の好ましい免疫刺激剤はQuil Aおよびその誘導体である。Quil Aは南アメリカの樹木Quilaja Saponaria Molinaから単離されたサポニン調製物であり、Dalsgaardら、1974 (“Saponin adjuvants”, Archiv. fur die gesamte Virusforschung, Vol. 44, Springer Verlag, Berlin, p243-254)によりアジュバント活性を有するものとして初めて記載された。Quil Aと関連する毒性を有さないアジュバント活性を保持するQuil Aの精製断片、例えば、QS7およびQS21(QA7およびQA21としても知られる)が、HPLCにより単離された(EP 0 362 278)。QS-21は、CD8+細胞傷害性T細胞(CTL)、Th1細胞および優勢IgG2a抗体応答を誘導するQuillaja saponaria Molinaの樹皮から誘導された天然のサポニンであり、本発明の内容において好ましいサポニンである。
【0021】
特に好ましいQS21の特定の製剤が記載されてきたが、これらの製剤はステロールをさらに含む(WO96/33739)。本発明の一部を構成するサポニンは、ミセル、混合ミセルの形態で分離していてもよく(優先的に、但し胆汁塩を伴うものに限らない)、あるいはISCOMマトリックス(EP 0 109 942 B1)、リポソームまたはワーム様もしくは環様多量体複合体などの関連コロイド構造または脂質/層化構造ならびにコレステロールおよび脂質を用いて製剤化する場合のラメラの形態であってもよく、あるいは水中油乳濁液の形態(例えば、WO95/17210)であってもよい。サポニンを水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムなどの金属塩と結合させるのが好ましい(WO98/15287)。好ましくは、サポニンをリポソーム、ISCOMまたは水中油乳濁液の形態で提供する。
【0022】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドまたは任意の他のToll様受容体(TLR)9アゴニストを用いることもできる。本発明のアジュバントまたはワクチンにおける使用にとって好ましいオリゴヌクレオチドは、CpG含有オリゴヌクレオチド、好ましくは、少なくとも3個、より好ましくは少なくとも6個またはそれ以上のヌクレオチドにより分離された2個またはそれ以上のジヌクレオチドCpGモチーフを含むCpG含有オリゴヌクレオチドである。CpGモチーフはシトシンヌクレオチドの後ろにグアニンヌクレオチドが続く。本発明のCpGオリゴヌクレオチドは、典型的にはデオキシヌクレオチドである。好ましい実施形態においては、オリゴヌクレオチド中のヌクレオチド間はホスホロジチオエート、またはより好ましくはホスホロチオエート結合であり、但しホスホジエステルおよび他のヌクレオチド間結合も本発明の範囲内にある。また、混合ヌクレオチド間結合を有するオリゴヌクレオチドも本発明の範囲内に含まれる。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドまたはホスホロジチオエートの製造方法は米国特許第5,666,153号、同第5,278,302号およびWO95/26204に記載されている。
【0023】
好ましいオリゴヌクレオチドの例は以下の配列を有する。この配列はホスホロチオエート修飾ヌクレオチド間結合を含むのが好ましい。
オリゴ1(配列番号1): TCC ATG ACG TTC CTG ACG TT (CpG 1826)
オリゴ2 (配列番号2): TCT CCC AGC GTG CGC CAT (CpG 1758)
オリゴ3(配列番号3): ACC GAT GAC GTC GCC GGT GAC GGC ACC ACG
オリゴ4 (配列番号4): TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT (CpG 2006)
オリゴ5 (配列番号5): TCC ATG ACG TTC CTG ATG CT (CpG 1668)
オリゴ6 (配列番号6): TCG ACG TTT TCG GCG CGC GCC G (CpG 5456)。
【0024】
あるいは、CpGオリゴヌクレオチドは、これらがその中に重要でない欠失または付加を有する上記の好ましい配列を含んでもよい。本発明において用いられるCpGオリゴヌクレオチドを当業界で公知の任意の方法により合成することができる(例えば、EP 468520を参照)。便利には、そのようなオリゴヌクレオチドを自動化合成装置を用いて合成することができる。
【0025】
TLR2アゴニストの例としては、ペプチドグリカンまたはリポタンパク質が挙げられる。イミキモッドおよびレシキモッド(Resiquimod)などのイミダゾキノリンが公知のTLR7アゴニストである。一本鎖RNAも公知のTLRアゴニストであるが(ヒトにおけるTLR8およびマウスにおけるTLR7)、二本鎖RNAおよびポリIC(ポリイノシン-ポリシチジル酸−ウイルスRNAの市販の合成模倣物質)がTLR3アゴニストの例である。3D-MPLはTLR4アゴニストの例であるが、CPGはTLR9アゴニストの例である。
【0026】
一実施形態においては、志賀毒素のBサブユニットまたはその免疫学的な機能的等価物と抗原とを一緒に複合体化する。複合体化するとは、志賀毒素のBサブユニットまたはその免疫学的な機能的等価物と抗原とを、例えば、静電気的もしくは疎水的相互作用または共有結合により、物理学的に結びつけることを意味する。好ましい実施形態においては、志賀毒素のBサブユニットと抗原を融合タンパク質として共有結合させるか(Haicheurら、2000 Journal of Immunology 165 pp 3301-3308)、またはWO02/060937(上掲)に記載された方法でシステイン残基を介して結合させる。本発明の実施形態においては、1つの毒素Bあたり2、3、4、5、6個の抗原分子というように、2個以上の抗原を各毒素B分子に結合させる。2個以上の抗原が存在する場合、これらの抗原は全て同じであってもよく、1個またはそれ以上のものが互いに異なっていてもよく、または全ての抗原が互いに異なっていてもよい。
【0027】
抗原自身はペプチド、または1種またはそれ以上の目的のエピトープを含むタンパク質であってもよい。本発明で意図される様式で製剤化する場合、抗原がHIV、結核菌、クラミジア、HBV、HCV、およびインフルエンザ菌などの細胞内病原体に対する免疫を提供するように、抗原を選択するのが好ましい実施形態である。本発明はまた、良性疾患および癌などの増殖性疾患に対する適切な免疫応答を惹起することができる抗原を用いる有用性も提供する。
【0028】
好ましくは、本発明のワクチン製剤はヒト病原体に対する免疫応答を引き出すことができる抗原または抗原性組成物を含むものであり、この抗原または抗原性組成物は、HIV-1(p24、tat、nefなどのgagもしくはその断片、gp120もしくはgp160などのエンベロープ、またはこれらのいずれかの断片)、ヒトヘルペスウイルス、例えば、gDもしくはその誘導体またはHSV1もしくはHSV2由来のICP27などの極初期タンパク質、サイトメガロウイルス((特にヒト)(gBもしくはその誘導体など))、ロタウイルス抗原、エプスタイン・バーウイルス(gp350もしくはその誘導体など)、水痘帯状疱疹ウイルス(gpI、IIおよびIE63など)に由来するか、またはB型肝炎ウイルスなどの肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎表面抗原もしくはその誘導体)に由来するか、またはA型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスおよびE型肝炎ウイルス由来の抗原であるか、またはパラミクソウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(F、GおよびNタンパク質もしくはその誘導体など)、パラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス(例えば、HPV6、11、16、18)、フラビウイルス(例えば、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス)またはインフルエンザウイルス精製もしくはその組換えタンパク質、例えば、HA、NP、NA、もしくはMタンパク質、またはそれらの組合せ)などの他のウイルス病原体に由来するか、またはN. gonorrheaおよびN. meningitidis (例えば、トランスフェリン結合タンパク質、ラクトフェリン結合タンパク質、PilC、アドへシン)などのナイセリア属種; S. pyogenes (例えば、Mタンパク質もしくはその断片、C5Aプロテアーゼ)、S. agalactiae、S. mutans; H. ducreyi; Branhamella catarrhalisとしても知られるM catarrhalis (例えば、高および低分子量アドヘシンおよびインベーシン)などのMoraxella属種; B. pertussis (例えば、ペルタクチン、ペルツシス毒素もしくはその誘導体、繊維状ヘマグルチニン、アデニル酸シクラーゼ、線毛), B. parapertussisおよびB. bronchisepticaなどのボルデテラ属種; M. tuberculosis (例えば、ESAT6、抗原85A、-Bもしくは-C)、M. bovis、M. leprae、M. avium、M. paratuberculosis、M. smegmatisなどのミコバクテリア属種; L. pneumophilaなどのレジオネラ属種; エンテロトキシン産生性大腸菌(例えば、定着因子、熱不安定性毒素もしくはその誘導体、熱安定性毒素もしくはその誘導体)、腸管出血性大腸菌、腸病原性大腸菌などのエシェリシア属種; V. cholera (例えば、コレラ毒素もしくはその誘導体)などのビブリオ属種; S. sonnei、S. dysenteriae、S. flexneriiなどのシゲラ属種; Y. enterocolitica (例えば、Yopタンパク質)、Y. pestis、Y. pseudotuberculosisなどのエルジニア属種; C. jejuni (例えば、毒素、アドヘシンおよびインベーシン)およびC. coliなどのカンピロバクター属種; S. typhi、S. paratyphi、S. choleraesuis、S. enteritidisなどのサルモネラ属種; L. monocytogenesなどのリステリア属種; H. pylori (例えば、ウレアーゼ、カタラーゼ、細胞空胞化毒素)などのヘリコバクター属種; P. aeruginosaなどのシュードモナス属種; S. aureus、S. epidermidisなどのスタフィロコッカス属種; E. faecalis、E. faeciumなどのエンテロコッカス属種; C. tetani (例えば、テタヌス毒素およびその誘導体)、C. botulinum (例えば、ボツリヌス毒素およびその誘導体)、C. difficile (例えば、クロストリジウム毒素AもしくはBおよびその誘導体)などのクトストリジウム属種; B. anthracis (例えば、ボツリヌス毒素およびその誘導体)などのバチルス属種; C. diphtheriae (例えば、ジフテリア毒素およびその誘導体)などのコリネバクテリウム属種; B. burgdorferi (例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B. garinii (例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B. afzelii (例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B. andersonii (例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B. hermsiiなどのボレリア属種; E. equiおよびヒト顆粒球性エールリヒア症の病原因子などのエールリヒア属種; R. rickettsiiなどのリケッチア属種; C. trachomatis (例えば、MOMP、ヘパリン結合タンパク質)、C. pneumoniae (例えば、MOMP、ヘパリン結合タンパク質)、C. psittaciなどのクラミジア属種; L. interrogansなどのレプトスピラ属種; T. pallidum (例えば、希少外膜タンパク質)、T. denticola、T. hyodysenteriaeなどのトレポネマ属種などの細菌病原体に由来するか; またはP. falciparumなどのプラスモジウム属種; T. gondii (例えば、SAG2、SAG3、Tg34)などのトキソプラズマ属種; E. histolyticaなどのエントアメーバ属種; B. microtiなどのバベシア属種; T. cruziなどのトリパノソーマ属種; G. lambliaなどのジアルジア属種; L. majorなどのレーシュマニア属種; P. cariniiなどのニューモシスティス属種; T. vaginalisなどのトリコモナス属種; S. mansoniなどの住血吸虫属種などの寄生虫に由来するか、C. albicansなどのカンジダ属種; C. neoformansなどのクリプトコッカス属種などの酵母に由来する。
【0029】
M.tuberculosisに対する他の好ましい特異的抗原は、例えば、Tb Ra12、Tb H9、Tb Ra35、Tb38-1、Erd 14、DPV、MTI、MSL、mTTC2およびhTCC1(WO 99/51748)である。M.tuberculosisのためのタンパク質としては、M.tuberculosisの少なくとも2個、好ましくは3個のポリペプチドがより大きいタンパク質へと融合された融合タンパク質およびその変異体も挙げられる。好ましい融合体としては、Ra12-TbH9-Ra35、Erd14-DPV-MTI、DPV-MTI-MSL、Erd14-DPV-MTI-MSL-mTCC2、Erd14-DPV-MTI-MSL、DPV-MTI-MSL-mTCC2、TbH9-DPV-MTI (WO 99/51748)が挙げられる。
【0030】
クラミジアに対する最も好ましい抗原としては、例えば、高分子量タンパク質(HMW)(WO 99/17741)、ORF3(EP 366 412)、および推定上の膜タンパク質(Pmp)が挙げられる。ワクチン製剤の他のクラミジア抗原を、WO 99/28475に記載の群より選択することができる。
【0031】
好ましい細菌性ワクチンは、S.pneumoniae(例えば、PsaA、PspA、ストレプトリシン、コリン結合タンパク質)などのストレプトコッカス属種に由来する抗原、およびタンパク質抗原ニューモリシン(Biochem Biophys Acta, 1989, 67, 1007; Rubinsら、Microbial Pathogenesis, 25, 337-342)、およびその無毒化変異誘導体(WO 90/06951; WO 99/03884)を含む。他の好ましい細菌性ワクチンは、B型インフルエンザ菌、不定型インフルエンザ菌などのヘモフィルス属種に由来する抗原、例えば、OMP26、高分子量アドヘシン、P5、P6、プロテインDおよびリポタンパク質D、ならびにフィンブリンおよびフィンブリン由来ペプチド(米国特許第5,843,464号)またはその多コピー変異体もしくは融合タンパク質を含む。
【0032】
B型肝炎表面抗原の誘導体は当業界で周知であり、特に、欧州特許出願EP-A-414374;EP-A-0304578、およびEP 198-474に記載のPreS1、PreS2のS抗原が挙げられる。1つの好ましい態様においては、本発明のワクチン製剤は特にCHO細胞中で発現される場合のHIV-1抗原、gp120を含む。さらなる実施形態においては、本発明のワクチン製剤は上記で定義されたgD2tを含む。
【0033】
本発明の好ましい実施形態においては、請求項に記載されたアジュバントを含むワクチンは、生殖器疣の原因となると考えられるヒトパピローマウイルス(HPV)(HPVまたはHPV11など)、ならびに子宮頚癌の原因となるHPVウイルス(HPV16、HPV18など)に由来する抗原を含む。
【0034】
特に好ましい形態の生殖器疣予防用または治療用ワクチンは、L1タンパク質、ならびにHPVタンパク質E1、E2、E5、E6、E7、L1およびL2から選択される1種またはそれ以上の抗原を含む融合タンパク質を含む。
【0035】
最も好ましい形態の融合タンパク質は、WO 96/26277に開示されたL2E7、およびWO 99/10375に開示されたタンパク質D(1/3)-E7である。
【0036】
好ましいHPVによる子宮頚部の感染もしくは癌の予防用または治療用ワクチン組成物はHPV16抗原またはHPV18抗原を含んでよい。
【0037】
特に好ましいHPV16抗原は、HPV16由来のタンパク質D-E6もしくはE7融合体を形成するようにタンパク質D担体と融合した初期タンパク質E6もしくはE7、またはそれらの組合せ、またはE6もしくはE7とL2との組合せ(WO 96/26277)を含む。
【0038】
あるいは、HPV16または18の初期タンパク質E6およびE7は、単一の分子、好ましくはタンパク質D-E6/E7融合体として提供することができる。そのようなワクチンは、HPV18に由来するE6およびE7タンパク質のいずれかまたは両方を、好ましくはタンパク質D-E6もしくはタンパク質D-E7融合タンパク質またはタンパク質D-E6/E7融合タンパク質の形態で、必要に応じて含んでもよい。
【0039】
本発明のワクチンはさらに、他のHPV株、好ましくはHPV31または33株に由来する抗原を含んでもよい。
【0040】
本発明のワクチンはさらに、マラリアを引き起こす寄生虫から誘導された抗原、例えば、プラスモジア・ファルシパルム(Plasmodia falciparum)由来の抗原、例えば、スポロゾイト周囲タンパク質(CSタンパク質)、RTS、S、MSP1、MSP3、LSA1、LSA3、AMA1およびTRAPを含む。RTSはB型肝炎ウイルス表面抗原のpreS2部分の4個のアミノ酸を介してB型肝炎ウイルスの表面(S)抗原に連結されたP.falciparumのスポロゾイト周囲(CS)タンパク質の実質的に全てのC末端部分を含むハイブリッドタンパク質である。その完全な構造は英国特許出願第9124390.7号に対する優先権を主張するWO 93/10152の元で公開された国際特許出願番号PCT/EP92/02591に開示されている。酵母中で発現される場合、RTSはリポタンパク質粒子として産生され、それがHBVからS抗原と共に同時発現される場合、それはRTS,Sとして知られる混合粒子を産生する。TRAP抗原はWO 90/01496の元で公開された国際特許出願番号PCT/GB89/00895に記載されている。多段階マラリアワクチンの成分となりうる候補であるプラスモジア抗原は、P.falciparumのMSP1、AMA1、MSP3、EBA、GLURP、RAP1、RAP2、セクエストリン、PfEMP1、PF332、LSA1、LSA3、STARP、SALSA、PfEXP1、Pfs25、Pfs28、PFS27/25、Pfs16、Pfs48/45、Pfs230およびプラスモジウム属種のおけるそれらの類似体である。本発明の一実施形態は、抗原調製物が、1種以上のさらなるマラリア抗原と組合わせてRTS,SもしくはCSタンパク質またはその断片、例えば、RTS,SのCS部分を含み、そのいずれかまたは両方を本発明に従って志賀毒素Bサブユニットに結合させてもよい、マラリアワクチンである。1種またはそれ以上のさらなるマラリア抗原を、例えば、MPS1、MSP3、AMA1、LSA1またはLSA3からなる群より選択することができる。
【0041】
前記製剤は抗腫瘍抗原を含んでもよく、癌の免疫治療的処置にとって有用である。例えば、アジュバント製剤は前立腺癌、乳癌、結腸癌、肺癌、膵臓癌、腎臓癌または黒色腫癌腫に対するものなどの腫瘍拒絶抗原と共に用いる際に有用である。抗原の例としては、MAGE1およびMAGE3もしくは他のMAGE抗原(黒色腫の治療のため)、PRAME、BAGE、またはGAGE(RobbinsおよびKawakami, 1996, Current Opinions in Immunology 8, pps 628-636; Van den Eyndeら、International Journal of Clinical & Laboratory Research(1997年提出);Correaleら(1997), Journal of the National Cancer Institute 89, p293)が挙げられる。実際、これらの抗原は黒色腫、肺癌、肉腫および膀胱癌などの様々な腫瘍型において発現される。他の腫瘍特異的抗原は本発明のアジュバントと共に使用する場合に好適であり、限定されるものではないが、腫瘍特異的ガングリオシド、前立腺特異的抗原(PSA)またはHer-2/neu、KSA(GA733)、PAP、マンマグロビン、MUC-1、癌胎児性抗原(CEA)が挙げられる。従って、本発明の一態様においては、本発明によるアジュバント組成物および腫瘍拒絶抗原を含むワクチンが提供される。
【0042】
ワクチンが前立腺癌、乳癌、結腸癌、肺癌、膵臓癌、腎臓癌、卵巣癌または黒色腫などの腫瘍抗原を含むのが本発明の特に好ましい態様である。従って、前記製剤は腫瘍関連抗原、ならびに腫瘍支持機構(例えば、血管新生、腫瘍浸潤)と関連する抗原を含んでもよい。従って、癌の治療におけるワクチン用に特に適切な抗原としてはまた、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、チロシナーゼ、サバイビン、NY-ESO1、プロスターゼ、PS108(WO 98/50567)、RAGE、LAGE、HAGEが挙げられる。さらに前記抗原は多くの癌の治療、または免疫去勢において有用である、全長ゴナドトロフィンホルモン放出ホルモン(GnRH、WO 95/20600)、短い10個のアミノ酸長のペプチドなどの自己ペプチドホルモンであってよい。
【0043】
本発明のワクチンは、アレルギーの予防または治療に有用であり得る。そのようなワクチンは、例えば、Der p1などのアレルゲン特異的抗原を含むであろう。
【0044】
各ワクチン用量中の抗原の量は、典型的なワクチン接種受容者において顕著で有害な副作用を示さない免疫防御応答を誘導する量として選択する。そのような量は、どのような特定の免疫原を用いるか、またそれを提供する方法に依存して変化するであろう。組成物が唯一のアジュバントとして金属塩を含む場合、遊離抗原のレベル(例えば、実施例1.5に記載の方法により測定される)は免疫防御を決定づける量であることは当業者には理解されるであろう。
【0045】
一般的には、それぞれのヒト用量は0.1〜1000μgの抗原、好ましくは0.1〜500μg、好ましくは0.1〜100μg、最も好ましくは0.1〜50μgの抗原を含むことが予想される。特定のワクチンのための最適量は、ワクチン接種された被験体における適切な免疫応答の観察を伴う標準的な試験により確認することができる。最初のワクチン接種の後、被験体は適切に間隔を空けた1回または数回の追加免疫を受けることもありうる。そのようなワクチン製剤を初回もしくは追加のワクチン接種計画において哺乳動物の粘膜表面に適用するか、またはあるいは、例えば、経皮、皮下もしくは筋肉内経路により、全身投与することができる。筋肉内投与が好ましい。
【0046】
用いる3D-MPLの量は一般的には少ないが、ワクチン製剤に応じて、1〜1000μg/用量、好ましくは1〜500μg/用量、およびより好ましくは1〜100μg/用量の範囲内でもよい。
【0047】
本発明のアジュバントまたはワクチン中のCpGまたは免疫刺激性オリゴヌクレオチドの量は一般的には少ないが、ワクチン製剤に依存して、1〜1000μg/用量、好ましくは1〜500μg/用量、およびより好ましくは1〜100μg/用量の範囲内でもよい。
【0048】
本発明のアジュバントに使用するためのサポニンの量は1〜1000μg/用量、好ましくは1〜500μg/用量、より好ましくは1〜250μg/用量、および最も好ましくは1〜100μg/用量の範囲内であってよい。
【0049】
本発明の製剤を、予防および治療目的の両方に用いることができる。従って、本発明は医学における使用のための本明細書に記載のワクチン組成物を提供する。
【0050】
さらなる実施形態においては、実質的に本明細書に記載の組成物の投与による、疾患に罹りやすいか、または罹患している個体の治療方法を提供する。
【0051】
また、個体が、感染性の細菌性およびウイルス性疾患、寄生虫疾患、特に、細胞内病原体疾患、前立腺癌、乳癌、結腸癌、肺癌、膵臓癌、腎臓癌、卵巣癌もしくは黒色腫などの増殖性疾患、非癌性慢性疾患、アレルギーからなる群より選択される疾患に罹ることを防止する方法であって、該個体に、実質的に本明細書に記載の組成物を投与することを含む、前記方法も提供する。
【0052】
さらに、哺乳動物においてCD8+抗原特異的免疫応答を誘導する方法であって、該哺乳動物に本発明の組成物を投与することを含む、前記方法も記載する。さらに、抗原を、志賀毒素のBサブユニットまたはその免疫学的な機能的等価物と共にアジュバントと混合することを含む、ワクチンの製造方法も提供する。
【0053】
本発明の組合せ物における使用のために好適な製薬上許容し得る賦形剤の例としては、特に、水、リン酸緩衝生理食塩水、等張性緩衝溶液が挙げられる。
【0054】
本明細書に引用される、限定されるものではないが特許および特許出願を含む全ての刊行物は、それぞれの刊行物が完全に記載されるのと同様に本明細書に参照により組み入れられるべきことが具体的かつ個別的に示されていた場合と同様に、参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【0055】
本発明を以下の実施例および図面を参照することにより例示する。全ての図面において、アデノ-ova(OVAタンパク質含有アデノウイルスベクター)を最初の注射において陽性対照として用いた。P/B(初回/追加)はアデノ-Ovaの最初の注射、およびAS A(図6BではAS H)中のOvaタンパク質の2回目に当たる追加免疫注射を用いる陽性対照である。
【実施例】
【0056】
1. 試薬および培地
1.1 アジュバント化STxB-Ovaの調製
完全長ニワトリオボアルブミンに結合したSTxB: STxB中の規定のアクセプター部位にタンパク質を化学的に結合させるために、システインをその野生型タンパク質のC末端に加えてSTxB-Cysを得た。組換え変異体STxB-Cysタンパク質を、以前に記載のように作製した(Haicheurら、2000, J. Immunol. 165, 3301)。Limulusアッセイ試験により決定された内毒素濃度は0.5 EU/ml未満であった。STxB-ovaは以前に記載されており(Haicheurら、2003, Int. Immunol., 15, 1161-1171)、Ludger JohannesおよびEric Tartour (Curie Institute)の厚意により提供された。完全長ニワトリオボアルブミンに結合したStxBを、以下に記載のアジュバント系の各々において製剤化した。
【0057】
1.2 ガラビオース結合アッセイ
志賀毒素のBサブユニットにより選択的に認識されるGb3受容体は、細胞表面のスフィンゴ糖脂質、グロボトリアオシルセラミド(Galα1-4Galβ1-4グルコシルセラミド;式中、Galはガラクトースである)である。以下に記載の方法は、Tarrago-Trani(Protein Extraction and Purification 38, pp 170-176, 2004)により記載されたものに基づいており、市販のガラビオース結合アガロースゲル(calbiochem)上でのアフィニティクロマトグラフィーを伴う。ガラビオース(Galα1->4Gal)はGb3のオリゴ糖成分の末端炭水化物部分であり、志賀毒素のBサブユニットにより認識される最小構造を表すと考えられる。この方法を成功裏に用いて、大腸菌溶解物から直接志賀毒素が精製されてきた。従って、この成分に結合するタンパク質はGb3受容体に結合すると考えられる。
【0058】
目的のタンパク質を含むPBSバッファー(500μl)を、予め同じバッファー中で平衡化した100μlの固定化ガラビオース樹脂(Calbiochem)と混合し、回転ホイール上、4℃にて30分〜1時間インキュベートする。5000 rpmで1分間の1回目の遠心分離後、ペレットをPBSで2回洗浄する。次いで、結合した材料を、100 mMグリシンpH 2.5の500μl x 2中に最後のペレットを再懸濁することにより2回溶出する。次いで、流出物に対応するサンプル、プールした洗浄液およびプールした溶出液を、SDS Page、クーマシー染色およびウェスタンブロッティングにより分析する。これらの分析技術により、タンパク質がガラビオースに結合し、従ってGb3受容体に結合するかどうかを同定することができる。
【0059】
1.3 アジュバント系における使用のための水中油乳濁液の調製
水中油乳濁液の調製はWO 95/17210に記載のプロトコルに従った。この乳濁液は、5%スクアレン、5%トコフェロール、2.0% tween 80を含み、粒子径は180 nmである。
【0060】
水中油乳濁液の調製(2倍濃度)
Tween 80をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に溶解して、PBS中の2%溶液を得た。100 mlの2倍濃度乳濁液を提供するために、5 gのDLαトコフェロールおよび5 mlのスクアレンを、完全に混合されるまでボルテックスにかけた。90 mlのPBS/Tween溶液を添加し、完全に混合した。次いで、得られた乳濁液をシリンジに通し、M110S微小流体装置を用いることにより最終的に微小流体化した。得られた油滴は約180 nmの大きさを有する。
【0061】
1.4 アジュバント系の調製
1.4.1 アジュバント系A:QS21および3D-MPL
有機溶媒中の脂質(卵黄もしくは合成由来ホスファチジルコリンなど)およびコレステロールおよび3D-MPLの混合物を、減圧下(または不活性ガス流下)で乾燥させた。次いで、水溶液(リン酸緩衝生理食塩水など)を加え、脂質が全て懸濁されるまで容器を攪拌した。次いで、この懸濁液を、リポソームの大きさが約100 nmに減少するまで微小流体化した後、0.2μmフィルターを通して滅菌濾過した。押出または超音波処理をこの工程と置き換えることも可能であった。
【0062】
典型的には、コレステロール:ホスファチジルコリン比は1:4(w/w)であり、水溶液を加えて、5〜50 mg/mlの最終コレステロール濃度を得た。
【0063】
リポソームは100 nmの規定の大きさを有し、これをSUV(小単ラメラ小胞)と呼ぶ。リポソームはそれ自体で長時間に渡って安定であり、融合能を持たない。SUVの滅菌バルクを、最終濃度10、20または100μg/mlの3D-MPLに達するようにPBSに加えた。PBSの組成はNa2HPO4:9 mM; KH2PO4:48 mM; NaCl: 100 mM pH 6.1であった。QS21の水溶液をSUVに加えた。この混合物をDQMPLinと呼ぶ。次いで、Stx-OVAを加えた。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。pHを調べ、必要に応じてNaOHまたはHClでpHを6.1±0.1に調整した。
【0064】
以下の3.1節に記載の実験においては、StxB-Ovaは4、10、20または100μg/mlの濃度であり、3D-MPLおよびQS21は10μg/mlの濃度であった。これらの場合においては、50μlの注射量は0.2〜5μgのSTxB-OVAならびに0.5μgの3D-MPLおよびQS21に対応した。0.2μgのSTxB-OVAの注射に関する結果を図1〜10に示す。また、50μlの注射量が0.5、1および5μgのSTxB-OVAに対応する実験も行った。これらの実験により、図1〜10に示されるものと同等の結果が得られた。
【0065】
他の実験においては、StxB-OVAは20もしくは40μg/mlの濃度であり、3D-MPLおよびQS21は20もしくは100μg/mlの濃度であった。これらの実験においては、25μlの注射量は、0.5μgのSTXB-OVAならびに0.5μgの3D-MPLおよびQS21(図12Aおよび12Bに示される)または1μgのSTxB-OVAおよび各2.5μgの3D-MPLおよびQS21(図11および20に示される)に対応していた。
【0066】
1.4.2 アジュバント系B:QS21
1.4.2.1:アジュバント系B1
アジュバントを、アジュバント系Aについて用いた方法に従って、但し3D-MPLを除いて調製した。StxB-OVAおよびQS21を10または20μg/mlの濃度に調整した。25または50μlの注射量は0.5μgのStxB-OVAおよび0.5μgのQS21(図12A、12Bおよび17に示される)に対応していた。
【0067】
1.4.2.2:アジュバント系B2
QS21をPBS pH 6.8中に100μg/mlの濃度に希釈した後、最終抗原濃度が40μg/mlに達するようにStxB-OVAを加えた。25μlの注射量は1μgのStxB-OVAおよび2.5μgのQS21(図16に示される)に対応していた。
【0068】
1.4.3 アジュバント系C:3D-MPL
1.4.3.1: アジュバント系C1
3D-MPLの滅菌バルクを、スクロース溶液中で100または200μg/mlに希釈し、最終濃度9.25%にした。20または40μg/mlの抗原濃度に達するようにStxB-OVAを加えた。
25μlの注射量は、1μgのStxB-OVAおよび5μgの3D-MPL(図16に認められる)または0.5μgのStxB-OVAおよび2.5μgの3D-MPL(結果は示さないが、同等である)に対応していた。
【0069】
1.4.3.2: アジュバント系C2
アジュバントを、アジュバント系Aについて用いた方法に従って、但しQS21を除いて調製した。
StxB-OVAおよびMPLを10μg/mlの濃度に調整した。
50μlの注射量は0.5μgのStxB-OVAおよび0.5μgのMPLに対応していた。
【0070】
1.4.4 アジュバント系D:水中油乳濁液中の3D-MPLおよびQS21
実施例1.3に記載のように調製された滅菌バルク乳濁液を、1ml当たり乳濁液250または500μlの最終濃度(v/v)に達するようにPBSに加えた。次いで、3D-MPLを最終濃度50または100μg/mlに達するように加えた。次いで、QS21を最終濃度50または100μg/mlに達するように加えた。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。次いで、StxB-OVAを最終濃度10または40μg/mlに達するように加えた。15分後、pHを調べ、必要に応じてNaOHまたはHClでpHを6.8±0.1に調整した。
25または50μlの注射量は、0.5または1μgのSTxB-Ova、2.5μgの3D-MPLおよびQS21、12.5μlまたは25μlの乳濁液に対応していた。50μlの注射量を用いる実験を図11に示す。25μlの注射量を用いる実験により、同等の結果が得られた。
【0071】
1.4.5 アジュバント系E:水中油乳濁液中の高用量3D-MPLおよびQS21
実施例1.3に記載のように調製された滅菌バルク乳濁液を、1ml当たり乳濁液500μlの最終濃度(v/v)に達するようにPBSに加えた。200μgの3D-MPLおよび200μgのQS21を加えた。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。次いで、StxB-OVAを最終濃度40μg/mlに達するまで加えた。15分後、pHを調べ、必要に応じてNaOHまたはHClでpHを6.8±0.1に調整した。
25μlの注射量は1μgのSTxB-Ova、5μgの両免疫刺激物質および12.5μlの乳濁液に対応していた。
【0072】
1.4.6 アジュバント系F:低水中油乳濁液中の3D-MPLおよびQS21
水中油乳濁液は実施例1.3に記載のものにコレステロールを加えたものであり、その有機相にコレステロールを加えて、1%スクアレン、1%トコフェロール、0.4%tween 80、および0.05%コレステロールの最終組成物となるようにしたものであった。乳濁液の形成後、3D-MPLを最終濃度100μg/mlに達するように加えた。次いで、QS21を加えて、最終濃度100μg/mlを達成した。成分の各添加の間、中間生成物を5分間攪拌した。次いで、StxB-OVAを最終濃度40μg/mlに達するように加えた。15分後、pHを調べ、必要に応じてNaOHまたはHClでpHを6.8±0.1に調整した。25μlの注射量は1μgのSTxB-Ova、2.5μgの3D-MPLおよびQS21、2.5μl乳濁液に対応していた。
【0073】
1.4.7 アジュバント系G:CpG2006
滅菌バルクCpGをPBSまたはNaClの150 mM溶液に加えて、最終濃度100または200μg/mlとした。次いで、StxB-OVAを最終濃度10または20μg/mlに達するように加えた。用いたCpGは以下の配列 5’-TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT-3’(配列番号4)を有する24マーであった。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。pHを調べ、必要に応じてNaOHまたはHClでpHを6.8±0.1に調整した。
50μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ovaおよび5μgのCpGに対応していた(図12A、12Bおよび21)。実験を、25μlの注射量(0.5μgのSTxB-Ovaおよび5μgのCpGに対応する)を用いて行った。結果は示さないが同等であった。
【0074】
1.4.8 アジュバント系H:QS21、3D-MPLおよびCpG2006
滅菌バルクCpGをPBS溶液に加えて、最終濃度100μg/mlとした。PBSの組成はNa2HPO4:9 mM; KH2PO4: 48 mM; NaCl: 100 mM pH 6.1であった。次いで、StxB-OVAを最終濃度20μg/mlに達するように加えた。最後に、QS21および3D-MPLを、DQMPLinと呼ばれる、3D-MPLおよびQS21を含む滅菌バルクSUVのプレミックスとして加えて、最終的な3D-MPLおよびQS21の濃度を10μg/mlとした。
【0075】
用いたCpGは以下の配列5’-TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT-3’(配列番号4)を有する24マーであった。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。pHを調べ、必要に応じてNaOHまたはHClでpHを6.1±0.1に調整した。
【0076】
50μlの注射量は1μgのSTxB-Ova、0.5μgの3D-MPLおよびQS21ならびに5μgのCpGに対応していた。次いで、この製剤を3D-MPL/QS21およびCpGの溶液(それぞれ10、10および100μg/mlの濃度)中に希釈して、0.2、0.04および0.008μgの用量のStxB-OVAを得た(これらの製剤は図1〜10および13に示される実験に用いた)。
【0077】
図12Aおよび12Bに示される実験において、CpGは100μg/mlの濃度であり、3D-MPLおよびQS21は10μg/mlの濃度であり、StxB-OVAは10μg/mlの濃度であった。
50μlの注射量は0.5μgのStxB-OVA、0.5μgの3D-MPLおよびQS21ならびに5μgのCpGに対応していた。
1つのさらなる実験においては、CpGは1000μg/mlの濃度であり、3D-MPLおよびQS21は100μg/mlの濃度であり、StxB-OVAは40μg/mlの濃度であった。25μlの注射量は1μgのStxB-OVA、2.5μgの3D-MPLおよびQS21ならびに25μgのCpGに対応していた。この実験から得られた結果は示さないが、他の成分濃度を用いて認められた結果と同等である。
【0078】
1.4.9 アジュバント系I:QS21およびCpG2006
滅菌バルクCpGをPBSまたはNaClの150 mM溶液に加えて、最終濃度100または200μg/mlとした。PBS組成はPO4 10mM、NaCl 150 mM pH 7.4またはNa2HPO4:9 mM; KH2PO4: 48 mM; NaCl: 100 mM pH 6.1であった。次いで、StxB-OVAを10または20μg/mlの最終濃度に達するように加えた。最後に、QS21を滅菌バルクSUVおよびQS21のプレミックス(DQと呼び、実施例1.3.14に記載のように調製)として加えて、10または20μg/mlの最終QS21濃度とした。
【0079】
用いたCpGは以下の配列5’-TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT-3’(配列番号4)を有する24マーであった。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。pHを調べ、必要に応じてNaOHまたはHClでpHを6.1または7.4±0.1に調整した。
【0080】
50μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ova、0.5μgのQS21および5μgのCpGに対応していた(図12Aおよび12B)。
また、実験を、25μlの注射量(0.5μgのSTxB-Ova、0.5μgのQS21および5μgのCpGに対応する)を用いて行った。結果は示さないが、同等であった。
【0081】
1.4.10 アジュバント系J:不完全フロイントアジュバント(IFA)
IFAはCALBIOCHEMから取得した。IFAを、1分間ボルテックスを用いてある容量の抗原と共に乳化した。
【0082】
STxB-ovaをPBS pH 6.8または7.4中で40μg/mlの濃度に希釈し、500μl/mlのIFA(そのまま用いたものと、PBS中に20倍希釈した後のもののいずれか)と混合した。
25μlの注射量は1μgのSTxB-ovaおよび12.5または0.625μlのIFAに対応していた(図14に示される)。
【0083】
他の実験においては、StxB-OVAをPBS pH 6.8または7.4中、10μg/mlに希釈し、500または250μl/mlのIFAと混合した。50μlの注射量は0.5μgのStxB-OVAおよび12.5または25μlのIFAに対応していた。これらの実験により、図14に示されるものと同等の結果が得られた。
【0084】
1.4.11 アジュバント系K:水中油乳濁液
1.4.11.1 アジュバント系K1
滅菌バルク乳濁液を、3D-MPLおよびQS21を排除した以外は実施例1.3と同様に調製した。
25μlの注射量は1μgのStxB-OVAおよび12.5μlの乳濁液に対応していた。結果を図16中にアジュバント系Kとして示す。
【0085】
1.4.11.2 アジュバント系K2
滅菌バルク乳濁液を、3D-MPLおよびQS21を排除した以外はアジュバント系Fと同様にして調製した。
25μlの注射量は1μgのStxB-OVAおよび2.5μlのコレステロール含有乳濁液に対応していた。
結果は示さないが、アジュバント系K1について認められるものと同等であった。
【0086】
1.4.12 アジュバント系L:ポリI:C
ポリI:C(ポリイノシン酸-ポリシチジル酸)はAmershamから市販されているウイルスRNAの合成模倣物質(mimetic)である。いくつかの実験において、StxB-OVAを20μg/mlの最終濃度に達するようにNaCl 150 mM中に希釈した。次いで、滅菌バルクポリI:Cを、最終濃度20μg/mlに達するように加えた。
【0087】
成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。
25μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ovaおよび0.5μgのポリI:Cに対応していた(図15および21に示される)。
他の実験においては、StxB-OVAは10μg/mlの濃度であり、ポリI:Cは20または100μg/mlの濃度であった。
50μlの注射量は0.5μgのStxB-OVAおよび1または5μgのポリI:Cに対応していた。
これらの実験により、図15および21に示されるものと同等の結果が得られた。
【0088】
1.4.13 アジュバント系M:CpG5456
StxB-OVAをNaCl 150 mM中に希釈して、20μg/mlの最終濃度とした。次いで、滅菌バルクCpGを200μg/mlの最終濃度に達するように加えた。
用いたCpGは配列5’- TCG ACG TTT TCG GCG CGC GCC G-3’(CpG 5456)を有する22マーであった。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。
25μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ovaおよび5μgのCpGに対応していた。
【0089】
1.4.14 アジュバント系N:QS21およびポリI:C
有機溶媒中の脂質(卵黄または合成由来のホスファチジルコリンなど)とコレステロールの混合物を、減圧下(または不活性ガス流下)で乾燥させた。次いで、水溶液(リン酸緩衝生理食塩水など)を加え、脂質が全て懸濁されるまで容器を攪拌した。次いで、この懸濁液を、リポソームの大きさが約100 nmに減少するまで微小流体化した後、0.2μmのフィルターを通して滅菌濾過した。押出または超音波処理をこの工程と置き換えることができた。
【0090】
典型的には、コレステロール:ホスファチジルコリン比は1:4(w/w)であり、次いで、水溶液を加えて、5〜50 mg/mlの最終コレステロール濃度を得た。
【0091】
リポソームは100 nmの規定サイズを有し、これをSUV(小単ラメラ小胞)と呼ぶ。リポソームはそれ自体で長時間に渡って安定であり、融合能を持たない。
【0092】
SUVの滅菌バルクをPBSに加えて、MPLの最終濃度を100μg/mlとした。QS21の水溶液をそのSUVに加えて、最終QS21濃度を100μg/mlとした。このリポソームとQS21との混合物をDQと呼ぶ。
【0093】
滅菌バルクポリI:C(Amersham、前述)を20μg/mlの最終濃度に達するようにNaCl 150 mM中に希釈した後、DQを加えて、QS21における最終濃度を20μg/mlとした。次いで、StxB-OVAを20μg/mlの最終濃度に達するように加えた。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。
25μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ova、0.5μgのQS21および0.5μgのポリI:Cに対応していた。
【0094】
1.4.15 アジュバント系O:CpG2006および水中油乳濁液
水中油乳濁液を実施例1.3に記載のように調製した。
【0095】
滅菌バルク乳濁液をPBSに加えて、1ml当たり500μlの乳濁液の最終濃度(v/v)とした。次いで、CpGを200μg/mlの最終濃度に達するように加えた。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。次いで、StxB-OVAを20μg/mlの最終濃度に達するように加えた。15分後、pHを調べ、必要に応じてNaOHまたはHClを用いてpHを6.8±0.1に調整した。
【0096】
用いたCpGは以下の配列5’-TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT-3’(配列番号4)を有する24マーであった。
25μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ova、5μgのCpGおよび12.5μlの乳濁液に対応していた。
【0097】
1.4.16 アジュバント系P:CpG2006および水中油乳濁液
水中油乳濁液を、Chiron Behring FluAdワクチンに含まれる説明冊子で公表された処方に従って調製した。
クエン酸バッファーを、200 mlのH2O中で36.67 mgのクエン酸と627.4 mgのクエン酸ナトリウム・2H2Oとを混合することにより調製した。別途、3.9 gのスクアレンおよび470 mgのSpan 85を磁気攪拌下で混合した。
【0098】
470 mgのTween 80を、クエン酸バッファーと混合した。得られた混合物をスクアレン/Span 85混合物に加え、磁気攪拌を用いて「激しく」混合した。最終容量は100 mlであった。
【0099】
次いで、混合物をM110S微小流体装置(Microfluidicsから入手)中に置いて、油滴の大きさを低下させた。z平均で145 nmを、0.06の多分散性で取得した。この大きさを、以下の技術的条件:
-レーザー波長:532 nm(Zeta3000HS)
-レーザー出力:50 mW(Zeta3000HS)
-散乱光を90°で検出(Zeta3000HS)
-温度:25℃
-期間:ソフトによる自動決定
-数:3回の連続した測定
-z平均直径:キュムラント分析による
を用いてZetasizer 3000HS(Malvernから入手)で取得した。
【0100】
得られた乳濁液の滅菌バルクをPBSに加えて、1ml当たり乳濁液500μlの最終濃度 (v/v)とした。次いで、CpGを、200μg/mlの最終濃度に達するように加えた。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。次いで、StxB-OVAを20μg/mlの最終濃度となるように加えた。15分後、pHを調べ、必要に応じてNaOHまたはHClを用いてpHを6.8±0.1に調整した。
【0101】
用いたCpGは以下の配列5’-TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT-3’(配列番号4)を有する24マーであった。
25μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ova、5μgのCpGおよび12.5μlの乳濁液に対応していた。
【0102】
1.4.17 アジュバント系Q:CpG2006およびIFA油中水乳濁液
CALBIOCHEMから入手したIFAをPBSに加えて、1ml当たり乳濁液500μlの最終濃度(v/v)とした。次いで、CpGを、200μg/mlの最終濃度となるように加えた。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。次いで、StxB-OVAを20μg/mlの最終濃度となるように加えた。15分後、pHを調べ、必要に応じてNaOHまたはHClを用いてpHを7.4±0.1に調整した。
【0103】
用いたCpGは以下の配列5’-TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT-3’(配列番号4)を有する24マーであった。
25μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ova、5μgのCpGおよび12.5μlの乳濁液に対応していた。
【0104】
1.4.18 アジュバント系R:CpG2006およびAl(OH)3
Brentagから入手したAl(OH)3を、注射用水に最終濃度1 mg/ml(Al+++)で希釈した。StxB-OVAを、30分間、20μg/mlの濃度でAl+++上に吸着させた。CpGを200μg/mlの濃度になるように加えて、30分間インキュベートした後、NaClを150 mMの最終濃度となるように加えた。全てのインキュベーションを、軌道振とう下、室温にて行った。
【0105】
用いたCpGは以下の配列5’-TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT-3’(配列番号4)を有する24マーであった。
25μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ova、5μgのCpGおよび25μgのAl+++に対応していた。
【0106】
1.4.19 アジュバント系S:CpG2006およびAlPO4
Brentagから入手したAlPO4を、注射用水に最終濃度1 mg/ml(Al+++)で希釈した。StxB-OVAを、30分間、20μg/mlの濃度でAl+++上に吸着させた。CpGを200μg/mlの濃度になるように加えて、30分間インキュベートした後、NaClを150 mMの最終濃度になるように加えた。全てのインキュベーションを、軌道振とう下、室温にて行った。
【0107】
用いたCpGは以下の配列5’-TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT-3’(配列番号4)を有する24マーであった。
25μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ova、5μgのCpGおよび25μgのAl+++に対応していた。
【0108】
1.4.20 アジュバント系T:3D-MPLおよびAl(OH)3
Brentagから入手したAl(OH)3を、注射用水に最終濃度1 mg/ml(Al+++)に希釈した。StxB-OVAを、30分間、40または20μg/mlの濃度でAl+++上に吸着させた。3D-MPLを100μg/mlの濃度になるように加えて、30分間インキュベートした後、NaClを150 mMの最終濃度になるように加えた。全てのインキュベーションを、軌道振とう下、室温にて行った。
【0109】
25μlの注射量は1または0.5μgのSTxB-Ova、2.5μgの3D-MPLおよび25μgのAl+++に対応していた。1μgのSTxB-Ovaについての結果を図16に示す。0.5μgのSTxB-Ovaを注射した実験は示さないが、図16に示されるものと同等の結果が得られた。
【0110】
1.4.21 アジュバント系U:TLR2-リガンド
用いたTLR2リガンドは、TLR2特異的であることが知られている、Microcollectionsから購入した細菌リポペプチドである合成Pam3CysSerLys4であった。StxB-OVAをNaCl 150 mMまたはPBS pH 7.4中に希釈して、10または20μg/mlの最終濃度とした。次いで、滅菌バルクPam3CysSerLys4を、40、100および200μg/mlの最終濃度になるように加えた。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。
【0111】
50μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ovaおよび5または10μgのPam3CysSerLys4に対応していた(5μgについての結果を図21に示す。他の用量のTLR2を用いた結果の考察については3.2.9節を参照)。
他の実験においては、25μlの注射量は0.5μgのStxB-OVAおよび1μgのPam3CysSerLys4に対応していた。
【0112】
1.4.22 アジュバント系V:TLR7/8リガンド
用いたTLR7/8リガンドはレシキモッド(resiquimod)またはR-848(Cayla)として知られるイミキモッド誘導体であった。R-848は動物モデルにおいて強力な抗ウイルス特性および抗腫瘍特性を有するイミダゾキノリンファミリーの低分子量化合物である。イミキモッドの活性はIFN-αおよびIL-12などのサイトカインの誘導を通じて優先的に媒介される。R-848はイミキモッドのより強力な類似体である(Akira,S.およびHemmi,H.;IMMUNOLOGY LETTER, 85, (2003), 85-95)。
【0113】
STxB-OVAをPBS pH 7.4中に希釈して、10または20μg/mlの最終濃度とした。次いで、滅菌バルクR-848を20および100μg/mlの最終濃度になるように加えた。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。
【0114】
50μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ovaおよび1または5μgのR-848に対応していた。他の実験においては、25μlの注射量は0.5μgのSTxB-OVAおよび0.5μgのR-848に対応していた。
【0115】
1.4.22 アジュバント系W:AlPO4
1.4.22.1 アジュバント系W1
Brentagから入手したAlPO4を、注射用水に最終濃度0.5 mg/ml(Al+++)に希釈した。StxB-OVAを、30分間、10μg/mlの濃度でAl+++上に吸着させた後、NaClを150 mMの最終濃度になるように加えた。全てのインキュベーションを、軌道振とう下、室温にて行った。50μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ovaおよび25μgのAl+++に対応していた。
【0116】
1.4.22.2 アジュバント系W2
Brentagから入手したAlPO4を、PBS pH 7.4中に最終濃度0.5 mg/ml(Al+++)に希釈した。StxB-OVAを、30分間、10μg/mlの濃度でAl+++上に吸着させた。全てのインキュベーションを、軌道振とう下、室温にて行った。50μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ova、5μgのCpGおよび25μgのAl+++に対応していた。XXXXXに記載のSDS-PAGEによる試験により、約70%の抗原がALPPO4上に吸着されなかったことが示された。
【0117】
1.5 抗原/金属塩複合体中に吸着された抗原のレベルの測定
目的の製剤を6500 gで6分間遠心分離する。得られた上清のサンプルを95℃で5分間変性させ、還元性サンプルバッファー中、SDS-PAGEゲル上にロードする。アジュバントを含まない抗原のサンプルもロードする。次いで、ゲルを200V、200 mAで1時間泳動に供する。次いで、ゲルをDaichi法に従って銀染色する。製剤中の遊離抗原のレベルを、アジュバント化された製剤からのサンプルと、アジュバントを含まない抗原とを比較することにより測定する。ウェスタンブロッティングなどの当業界で周知の他の技術も用いることができる。
【0118】
実施例2:本発明のワクチンを用いるC57/B6マウスのワクチン接種
上記の様々な製剤を用いて、6〜8週齢のC57BL/B6雌マウス(10匹/群)をワクチン接種した。マウスには1回または14日間隔で2回の注射を施し、第1、2、3および8週中に採血した(実際の採血日については個別の実施例を参照)。マウスを筋肉内にワクチン接種した(25μlまたは50μlの最終容量の左腓腹筋への注射)。オボアルブミン組換えアデノウイルスを5×107〜108VPの様々な用量で注射した。
【0119】
ex vivoでのPBL刺激を、5%FCS(Harlan、Holland)、1μg/mlの各抗マウス抗体CD49dおよびCD28(BD、Biosciences)、2 mM L-グルタミン、1 mMピルビン酸ナトリウム、10μg/ml硫酸ストレプトマイシン、10ユニット/mlペニシリンGナトリウム(Gibco)、10μg/mlストレプトマイシン、50μM B-MEメルカプトエタノールおよび100倍希釈非必須アミノ酸(これらの添加物は全てGibco Life technologiesから入手)を補給したRPMI1640(Biowitaker)である完全培地中で行った。ペプチド刺激は常に37℃、5%CO2で行った。
【0120】
2.1 免疫学的アッセイ:
2.1.1 抗原特異的T細胞の検出
PBLの単離およびテトラマーの染色。血液を後眼窩静脈から取得し(マウス1匹当たり50μl、1群当たり10匹のマウス)、RPMI+ヘパリン(LEO)培地中に直接希釈した。PBLをlymphoprep勾配(CEDERLANE)を通して単離した。次いで、細胞を洗浄し、計数し、および最後に1〜5×105個の細胞を、1/50の最終濃度(f.c.)でCD16/CD32抗体(BD Biosciences)を含む50μlのFACSバッファー(PBS, FCS1%, 0.002%NaN3)中に再懸濁した。10分後、50μlのテトラマーミックスを細胞懸濁液に加えた。テトラマーミックスは、入手可能性によりそれぞれImmunosourceまたはImmunomics Coulterから入手した0.2μlまたは1μlのsiinfekl-H2Kbテトラマー-PEを含む。抗CD8a-PercP(1/100 f.c.)および抗CD4-APC(1/200 f.c.)(BD Biosciences)抗体もこの試験に加えた。次いで、細胞を室温にて45分間(Immunosourceのテトラマーについて)または37℃で10分間(Immunomics Coulterのテトラマーについて)静置した後、1回洗浄し、CELLQuest(商標)ソフトウェアを含むFACS Calibur(商標)を用いて分析した。
【0121】
2.1.2 細胞内サイトカイン染色(ICS)
ICSを、2.1.1節に記載のように取得した血液サンプルについて行った。5〜10×105個のPBLを、1μg/mlのsiinfeklぺプチドまたはそれぞれ1μg/mlの濃度で存在する17もしくは15マーのOvaペプチド(11種のMHCクラスI拘束性ペプチドおよび6種のMHCクラスII拘束性ペプチド)のプールを補給した完全培地、あるいはそれらを含まない完全培地中に再懸濁した。2時間後、1μg/mlのBrefeldin-A(BD、Biosciences)を16時間添加し、細胞を合計18時間後に回収した。細胞を1回洗浄した後、抗マウス抗体(全てBD、Biosciencesで購入)を用いて染色した;さらなる工程は全て氷上で行った。最初に、細胞を50μlのCD16/32溶液(1/50 f.c., FACSバッファー)中で10分間インキュベートした。50μlのT細胞表面マーカーミックスを添加し(1/100 CD8a perCp, 1/100 CD4 PE)、細胞を20分間インキュベートした後、洗浄した。細胞を固定し、200μlの浸透/固定溶液(BD、Biosciences)中で浸透させ、浸透/洗浄バッファー(BD、Biosciences)中で1回洗浄した後、抗IFNg-APCおよび抗IL2-FITCを用いて4℃で2時間または一晩染色した。データをCELLQuest(商標)ソフトウェア備えたFACS Calibur(商標)を用いて分析した。
【0122】
図14Bにおいては、抗CD4抗体をAPC Cy7で標識し、抗CD8をPercP Cy5.5で標識し、および抗TNFa-PE抗体をサイトカイン染色工程に含めた。
【0123】
2.1.3 in vivoで検出される細胞媒介性細胞傷害活性(in vivoでのCMC)
siinfekl特異的細胞傷害性を評価するために、免疫化されたマウスおよび対照マウスに、2つの差別してCFSE標識された同系脾臓細胞およびリンパ節の集団からなる標的混合物に1 nM siinfeklペプチドを加えたもの、または加えないものを注射した。差別標識のために、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE;Molecular Probes- Palmoskiら、2002, J. Immunol. 168, 4391-4398)を0.2μMまたは2.5μMの濃度で用いた。両方の種類の標的を1/1の比でプールし、108個の標的/mlの濃度で再懸濁した。マウス1匹あたり200μlの標的混合物を1回目の注射の15日後に尾静脈に注射した。細胞傷害性を、異なる時点(標的注射の4、18または24時間後)で、殺した動物から取得した吸引リンパ節または血液(頸静脈)についてFACSR分析により評価した。siinfeklを加えた標的細胞の平均溶解率を、下記式を用いて、抗原陰性対照と比較して算出した:
注射前の標的細胞=in vivo注射の前にFACSにより得られた、ペプチドパルスされた標的(proinj.+)とパルスされていない標的(proinj.-)との混合物。
補正した標的(+)=注射前の混合物中のproinj.+細胞の数を考慮するために補正した、in vivo注射の後にFACSにより得られた、ペプチドパルスされた標的の数(上記を参照)
【0124】
2.1.4 Ag特異的抗体力価(総IgGの個々の分析):ELISA
血清学的分析を2回目の注射の15日および40日後に評価した。マウス(10匹/群)から後眼窩穿刺により採血した。抗ova総IgGをELISAにより測定した。96ウェルプレート(NUNC, 免疫吸着プレート)を抗原を用いて4℃にて一晩被覆した(ウェルあたり50μlのova溶液(ova 10μg/ml, PBS))。次いで、プレートを洗浄バッファー(PBS/0.1%Tween 20(Merck))中で洗浄し、100μlの飽和バッファー(PBS/0.1%Tween 20/1%BSA/10%FCS)を用いて37℃にて1時間飽和させた。洗浄バッファー中でさらに3回洗浄した後、100μlの希釈したマウス血清を添加し、37℃で90分間インキュベートした。さらに3回洗浄した後、プレートを、飽和バッファー中に1000倍希釈したビオチン化抗マウス総IgGと共に37℃でさらに1時間インキュベートした。飽和後、96ウェルプレートを上記のように再度洗浄した。飽和バッファー中に1000倍希釈したストレプトアビジンペルオキシダーゼ(Amersham)の溶液を、1ウェルあたり50μl添加した。最後の洗浄は洗浄バッファー中での5段階の洗浄であった。最後に、1ウェルあたり50μlのTMB(酸性バッファー中の3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン。H2O2の濃度は0.01%である。BIORAD)を添加し、そのプレートを室温にて10分間暗所で保持した。反応を停止させるため、1ウェルあたり50μlのH2SO4 0.4Nを添加した。吸光度を450/630 nmの波長で、BIORADから入手したElisaプレートリーダーにより読み取った。結果をsoftmax-proソフトウェアを用いて算出した。
【0125】
2.1.5 B細胞Elispot
脾臓細胞および骨髄細胞を2回目の注射の78日後に回収し、それを3μg/mlのCpG 2006および50 U/mlのrhIL-2を補給した完全培地中、37℃で5日間培養して、記憶B細胞を抗体産生プラズマ細胞に分化させた。5日後、96ウェルフィルタープレートを、70%エタノールと共に10分間インキュベートし、洗浄し、そしてオボアルブミン(50μg/ml)またはヤギ抗マウスIg抗血清で被覆した。次いで、これらを完全培地で飽和させた。細胞を収集し、洗浄し、さらに37℃で1時間、2 x 105個の細胞/ウェルにてプレート上に広げた。次いで、プレートを4℃で一晩保存した。次の日、PBS Tween 20 0.1%でプレートを洗浄することにより細胞を廃棄した。次いで、ウェルを、PBS中に1/500希釈した抗IgGビオチン化抗体と共に37℃で1時間インキュベートし、洗浄し、エクストラビジン-西洋わさびペルオキシダーゼ(4μg/ml)と共に1時間インキュベートした。洗浄工程の後、アミノエチルカルバゾール(AEC)およびH2O2の溶液と共に10分間インキュベートすることによりスポットを出現させ、プレートを水道水で洗浄することにより固定した。IgGまたはOva特異的IgGを分泌した細胞はそれぞれ赤いスポットとして出現する。この結果を、総IgGスポット100個あたりのova特異的IgGスポットの頻度として表す。
【0126】
3. 結果
以下に記載の結果は、CD8応答を誘導する際のSTxB系の効率が、それを様々なアジュバント系またはそれらの成分のいくつかと組合わせることにより劇的に改善されたことを示した。
【0127】
3.1 アジュバント系AおよびHを用いたデータ
3.1.1 AS AおよびAS Hを用いた一次応答の評価
得られた結果は、アジュバントの非存在下でSTxB-ovaを用いる低用量(0.2μg)の免疫化はex vivoで検出することができる強力なCD8 T細胞免疫応答を誘導しないことを示している。対照的に、STXB-OVAをアジュバント系AまたはHのいずれかと組合わせる場合、強力な免疫応答が観察される。さらに、アジュバント化されたタンパク質を超える明確な利点が証明される。
【0128】
アジュバント系AまたはHでアジュバント化されたSTxB-ovaは、強力で持続的な一次応答の誘導に有効である。それは抗原特異的CD8 T細胞を高頻度に誘導する(図1-注射は0.2μgのSTxB-OVA、0.5μgの3D-MPLおよびQS21、ならびにAS Hについては5μgのCPGを含んでいた)。方法は上記の2.1.1に記載のように実施し、マウスから1回目の注射の7日後に採血した。さらに、図2(注射は0.2μgのSTxB-OVA、0.5μgの3D-MPLおよびQS21、ならびにAS Hについては5μgのCPGを含んでいた。方法は上記の2.1.1に記載のように実施し、マウスから1回目の注射の14日後に採血した)は、このsiinfekl特異的CD8応答が注射後7日目と14日目の間、依然として増加することを示している。これはアジュバント化されたタンパク質を用いるワクチン接種の際には観察されないが、アデノウイルスなどの生ベクターにより誘導される一次応答にはむしろ特徴的である。誘導されたCD8 T細胞は容易にエフェクターT細胞に分化し、これは免疫優性ペプチド、またはovaペプチドのプール(それぞれ図3および4に示される、注射は0.2μgのSTxB-OVA、0.5μgの3D-MPLおよびQS21、ならびにAS Hについては5μgのCPGを含んでいた。方法は上記の2.1.2に記載のように実施し、マウスから1回目の注射の14日後に採血した)のいずれを用いて刺激を実施する場合でも、IFNγを産生する。ペプチドプールを用いる再刺激に際して観察される応答性CD8 T細胞がより高頻度であることは、一次CD8 T細胞レパートリーがクラスI免疫優性エピトープに限定されないことを示唆している。さらに、高い細胞傷害活性は、STxB-ovaをアジュバント化する場合にのみ、in vivoで検出することができる(図5-注射は0.2μgのSTxB-OVA、0.5μgの3D-MPLおよびQS21、ならびにAS Hについては5μgのCPGを含んでいた。方法は標的注射の18時間後に上記の2.1.3に記載のように実施した)。
【0129】
最後に、AS Hアジュバント化されたSTxB-ovaにより誘導された一次応答は、図6Bに例示されるように強く持続性である(注射は0.2μgのSTxB-OVA、0.5μgの3D-MPLおよびQS21、ならびに5μgのCPGを含んでいた。方法は上記の2.1.1に記載のように実施し、マウスから様々な時点で採血した)。
【0130】
3.1.2 AS AおよびAS Hを用いる二次応答の評価
STxB毒素送達系を強力なアジュバントと組合わせることも、二次免疫応答の大きさおよび持続性を改善する。これは、追加免疫の47日後に応答を評価することにより最も良く例示される。重要なことに、アジュバント化されたSTxB-OVAにより誘導された高いCD8応答は、組換えアデノウイルス初回免疫/アジュバント化タンパク質追加免疫法により誘導されるものと類似する強度および持続性のものである(図6A-注射は0.2μgのSTxB-OVA、0.5μgの3D-MPLおよびQS21、ならびにAS Hについては5μgのCPGを含んでいた。方法は上記の2.1.1に記載のように実施し、マウスから2回目の注射の47日後に採血した)。エフェクターT細胞集団に関して、サイトカイン産生T細胞はCD4およびCD8 T細胞区分の両方において依然として検出される(図7および8-注射は0.2μgのSTxB-OVA、0.5μgの3D-MPLおよびQS21、ならびにAS Hについては5μgのCPGを含んでいた。方法は上記の2.1.2に記載のように実施し、マウスから2回目の注射の47日後に採血し、PBLをovaペプチドのプールを用いて刺激した)。さらに、この遅い時点で、細胞傷害活性を、標的注射の4時間後(データは示さない)および24時間後(図9-注射は0.2μgのSTxB-OVA、0.5μgの3D-MPLおよびQS21、ならびにAS Hについては5μgのCPGを含んでいた。方法は上記の2.1.3に記載のように実施した)にin vivoで依然として検出することができる。
【0131】
体液性応答を追加免疫の15日後および40日後に調べた(図10a-注射は0.2μgのSTxB-OVA、0.5μgの3D-MPLおよびQS21、ならびにAS Hについては5μgのCPGを含んでいた。方法は上記の2.1.4に記載のように実施し、結果は10匹のマウスからなる各群についての幾何平均計算によって示された)。アジュバントの非存在下では、STxB-ova単独ではいかなるB細胞応答も誘導することができない。対照的に、アジュバント化されたタンパク質をSTxBに結合させても結合させなくても、試験した両方の時点で同等の抗体力価が検出される。
【0132】
図10B(注射は0.2μgのSTxB-OVA、0.5μgの3D-MPLおよびQS21、ならびに5μgのCPGを含んでいた。方法は上記の2.1.5に記載のように実施した)において、抗ova記憶B細胞頻度は注射の78日後のものを示す。2つの注射の15および40日後に検出された抗体力価は同等であるが、STxB-ovaをアジュバント化する場合にはアジュバント化タンパク質と比較してより高い頻度の記憶B細胞が検出されるため、記憶B細胞応答の質は異なる。STxB-ova単独では、それ自身で記憶B細胞を誘導することができない。
【0133】
興味深いことに、初回免疫および追加免疫を14日ではなく42日間隔で施す場合(図20-注射は0.5μgのSTXB-OVAならびに0.5μgの3D-MPLおよびQS21を含んでいた。方法は上記の2.1.4に記載のように実施した)、STxB-OVA AS Aにより誘導される体液性応答はOVA AS Aよりも高く、このことは、アジュバント化と組合わせた場合、ベクター化はより高頻度でB細胞記憶細胞を誘導し得ることをさらに示唆している。
【0134】
3.1.3 As Hアジュバント系と組合わせた低用量のSTxB-OVAにより誘導される免疫応答の評価
図13(注射は0.008、0.04、0.2または1μgのSTxB-OVA、0.5μgの3D-MPLおよびQS21、ならびに5μgのCPGを含んでいた。方法は上記の2.1.1に記載のように実施し、マウスから1回目の注射の14日後に採血した)は、AS H中に製剤化した、4 ngの抗原に対応する8 ngのSTxB-ovaという低用量の単回注射の14日後にもsiinfekl特異的CD8集団を依然として検出することができることを示している。これらの結果は、アジュバントとSTxB系を組合わせた使用により、誘導されるT細胞応答を減少させることなく、抗原用量を有意に低下させることができたことを示している。
【0135】
3.2 他のアジュバント系と組合わせたSTxB-OVAにより誘導される免疫応答の評価
本発明者らは次に、AS AまたはAS H以外のアジュバント系もSTxBベクター化系と相乗作用することができるかどうかを見出そうとした。
【0136】
3.2.1 AS A、F、DまたはE STxB ovaワクチンを用いるワクチン接種後の免疫応答の評価
一次応答の評価は、試験するアジュバント系にかかわらず、アジュバント化されたSTxB-ovaは抗原特異的T CD8を高頻度に誘導することを明確に示している(図11-方法は上記の2.1.1に記載のように実施し、マウスから1回目の注射の13日後に採血した)。注目すべきことに、これは、アジュバント化されたタンパク質を用いる1回の免疫化後に通常は検出可能なCD8応答が検出されないAS DおよびAS Eを用いる場合でさえ認められる。アジュバント化されたSTxB-ovaは、CD8 T細胞を強力に誘導し、そのCD8 T細胞はサイトカインを分泌するエフェクターT細胞に容易に分化する(データは示さない)。
【0137】
3.2.2 アジュバント系の個々の成分(3D-MPL -AS C2、QS21 -AS B、CpG2006 -AS G)と組合わせたSTxB-OVAにより誘導される免疫応答の評価
本発明者らは次に、in vivoで以前のアジュバント系の異なる成分を評価した。図12A(方法は上記の2.1.1に記載のように実施し、マウスから1回目の注射の15日後に採血した)は、STxB-ovaをQS21などの単一の免疫刺激剤またはCpGなどのTLR9リガンドを用いて、およびより少ない程度ではあるが3D-MPL(AS C2)などのTLR-4リガンドを用いてアジュバント化すると、siinfekl特異的CD8集団を検出することができ、この後者の免疫刺激剤は、図16に記載のようにより高い用量(AS C1)を用いる場合により有効であったことを示している。上記のように、これらの誘導されたCD8 T細胞はサイトカインを分泌するエフェクター細胞に容易に分化する(データは示さない)。それぞれのアジュバント成分単独により誘導される二次CD8応答は同等だが、QS21と少なくとも1種のTLRリガンドとの組合せを用いてSTxB-ovaをアジュバント化する場合にはより高い応答が観察される(図12B-方法は上記の2.1.1に記載のように実施し、マウスから2回目の注射の6日後に採血した)。
【0138】
3.2.3 アジュバントJまたはアジュバントKと組合わせたSTxB-OVAにより誘導される免疫応答の評価
以前に公表された観察結果とは対照的に、STxB-OVAをIFAなどの乳濁液と組合わせた場合にはCD8応答の増加も観察される。油中水乳濁液であるIFAを含む製剤は用量依存的様式でCD8応答を増加させる。
【0139】
siinfekl特異的CD8 T細胞の頻度の増加(図14A)は、サイトカイン産生(図14B)および細胞傷害活性(図14C)などのCD8エフェクター機能の改善に相当する。同様の結果はSTxB-ovaを水中油乳濁液と組合わせた場合に観察される。
【0140】
3.2.4 アジュバント系C1、B、K、FまたはTと組合わせたSTxB-ovaにより誘導される免疫応答の評価
本発明者らは次に、AS Tおよびアジュバント系Fの様々な成分を評価した。図16は、STxB-OVAと組合わせる場合、各成分はsiinfekl特異的CD8 T応答を増加させることができることを示す。しかしながら、最も高い応答は前記成分を前記製剤中で結び付ける場合に観察される。
【0141】
3.2.5 アジュバント系L、GまたはMと組合わせたSTxB-ovaにより誘導される免疫応答の評価
図15は、STX-B-OVAと、カテゴリーBおよびCを代表するポリI:C(TLR3)またはCpG配列(TLR9)などのTLRリガンドとの組合せが、siinfekl特異的CD8応答の大きさを有意に増加させることを示している。
【0142】
3.2.6 アジュバント系B、NまたはIと組合わせたSTxB-ovaにより誘導される免疫応答の評価
図17は、STxB-OVAにより誘導されるCD8応答が、QS21のみ、またはTLR3リガンド(ポリI:C)もしくはTLR9リガンド(CpG)と組合わせたQS21を用いてアジュバント化した場合に、明確に改善されることを示している。
【0143】
3.2.7 アジュバント系G、O、PまたはQと組合わせたSTxB-ovaにより誘導される免疫応答の評価
図18は、STxB-OVAにより誘導されるCD8応答が、CpGのみ、またはIFAもしくは異なる水中油乳濁液と組合せたCpGを用いてアジュバント化した場合に、明確に改善されることを示している。
【0144】
3.2.8 アジュバント系G、RまたはSと組合わせたSTxB-ovaにより誘導される免疫応答の評価
図19は、STxB-OVAにより誘導されるCD8応答が、CpGのみ、またはAl(OH)3もしくはAlPO4と組合せたCpGを用いてアジュバント化した場合に明確に改善されることを示している。
【0145】
3.2.9 アジュバント系G、L、UまたはVと組合わせたSTxB-ovaにより誘導される免疫応答の評価
図21は、TLR9および3つのリガンドに加えて、STX-B-OVAとTLR2およびTLR7/8リガンドとの組合せも、siinfekl特異的CD8 T応答の大きさを有意に増加させることを示している。TLR2リガンドを、0.2〜10μgの用量範囲で試験した。5μg未満の用量では増加は認められなかった。興味深いことに、用量を10μgに増やした場合、応答の低下が認められた。これはIL-10などの調節分子を誘導するTLR2リガンドの能力により説明することができる。
【0146】
3.2.10 アジュバント系W1またはW2と組合わせたSTxB-ovaにより誘導される免疫応答の評価
図22は、STxB-OvaとAS W1(抗原をアルミニウム塩上に吸着させた製剤中にリン酸アルミニウムを含む)との組合せは、アジュバント化されていないSTxB-ovaペプチドを用いて認められる免疫応答を超えるような免疫応答の改善をほとんどもたらさないことを示している。しかしながら、例えば、AS W2に認められるようなリン酸緩衝生理食塩水中に溶解されたアルミニウム塩を用いて吸着を実施することにより、抗原のうちのいくらか(この場合では約70%)をアルミニウム塩上に吸着させないように、該組成物を製剤化する場合には、アジュバントを含まないSTxB-Ovaにより得られるものを超える免疫応答の改善が認められる。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】AS A STxB OvaおよびAS H STxB Ovaワクチンを用いる初回注射の7日後のPBLにおけるSiinfekl特異的CD8の頻度を示す。
【図2】AS A STxB OvaおよびAS H STxB Ovaワクチンを用いる初回注射の14日後のPBLにおけるSiinfekl特異的CD8の頻度を示す。
【図3】AS A STxB OvaおよびAS H STxB Ovaワクチンを用いる初回注射の15日後のsiinfekl特異的サイトカイン産生CD8 T細胞を通じてPBLにおいて評価されるエフェクターT細胞応答持続性を示す。
【図4】AS A STxB OvaおよびAS H STxB Ovaワクチンを用いる初回注射の15日後の抗原特異的サイトカイン産生CD8 T細胞を通じてPBLにおいて評価されるエフェクターT細胞応答持続性を示す。
【図5】AS A STxB OvaおよびAS H STxB Ovaワクチンを用いる初回注射の15日後にin vivoで検出される細胞傷害活性により評価されるエフェクターT細胞応答を示す。
【図6】(A) AS A STxB OvaおよびAS H STxB Ovaワクチンを用いる2回目の注射の47日後のPBLにおけるSiinfekl特異的CD8頻度を示す。(B) 0日目〜98日目のPBLにおけるSiinfekl特異的CD8頻度の動態を示す。
【図7】AS AおよびAS H STxB Ovaワクチンを用いる2回目の注射の47日後のPBLにおける抗原特異的サイトカイン産生CD4 T細胞を通じて評価されるエフェクターT細胞応答を示す。
【図8】AS AおよびAS H STxB Ovaワクチンを用いる2回目の注射の47日後のPBLにおける抗原特異的サイトカイン産生CD8 T細胞を通じて評価されるエフェクターT細胞応答を示す。
【図9】AS A STxB OvaおよびAS H STxB Ovaワクチンを用いる2回目の注射の47日後にin vivoで検出される細胞傷害活性により評価されるエフェクターT細胞応答を示す。
【図10】図10A:AS A STxB OvaおよびAS H STxB Ovaワクチンを用いる2回目の注射の15日および40日後の体液性応答を示す。図10B:ASH STxB-OVAの2回目の注射の78日後の脾臓において評価される抗Ova記憶B細胞頻度を示す。
【図11】初回注射の13日後のAS A、AS F、AS D、AS E、STxB-ovaを用いたPBLにおけるSiinfekl特異的CD8の頻度を示す。
【図12A】1回目の注射の15日後の、AS A、AS B、AS C、AS G、AS IおよびAS H STxB-ovaワクチンを用いたPBLにおけるSiinfekl特異的CD8の頻度を示す。
【図12B】2回目の注射の6日後の、AS A、AS B、AS C、AS G、AS IおよびAS H STxB-ovaワクチンを用いたPBLにおけるSiinfekl特異的CD8の頻度を示す。
【図13】同じ用量のAS Hと共に製剤化した様々な用量のSTxB-ovaワクチンについてのPBLにおけるSiinfekl特異的CD8の頻度を示す。
【図14】1回目の注射の14日後のPBLにおいて測定されるAS J(2用量)またはAS Kを用いるSTxB-ovaによりin vivoで誘導される免疫応答の評価を示す。(A) Siinfekl特異的CD8の頻度を示す。(B) 抗原特異的サイトカイン産生CD8の頻度を示す。(C) in vivoで検出されたSiinfekl特異的溶解を示す。
【図15】1回目の注射の14日後のAS L、AS G、AS M STxB-ovaワクチンを用いたPBLにおけるSiinfekl特異的CD8の頻度を示す。
【図16】1回目の注射の14日後のAS B、AS C、AS K、AS FまたはAS T STxB-ovaワクチンを用いたPBLにおけるSiinfekl特異的CD8の頻度を示す。
【図17】1回目の注射の14日後のAS B、AS N、AS I STxB-ovaワクチンを用いたPBLにおけるSiinfekl特異的CD8の頻度を示す。
【図18】AS G、AS O、AS P、AS Q STxB-ovaワクチンを用いた1回目の注射の14日後のPBLにおけるSiinfekl特異的CD8の頻度を示す。
【図19】AS G、AS R、AS S STxB-ovaワクチンを用いた1回目の注射の14日後のPBLにおけるSiinfekl特異的CD8の頻度を示す。
【図20】AS A STxB-ovaワクチンを用いた1回目の注射の14日または42日後に実施された2回目の注射の15日後に検出された体液性応答を示す。
【図21】AS G、AS L、AS U、AS V STxB-ovaワクチンを用いた1回目の注射の14日後のPBLにおけるSiinfekl特異的CD8の頻度を示す。
【図22】ASW1、ASW2-ovaワクチンを用いた1回目の注射の14日後のPBLにおけるSiinfekl特異的CD8の頻度を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は改良されたワクチン組成物、その作製方法および医学におけるその使用を提供する。特に、本発明は志賀毒素のBサブユニットまたはその免疫学的な機能的等価物、およびアジュバントと共に製剤化された抗原を含むアジュバント化されたワクチン組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第6,613,882号は、式:B--X(式中、Bは志賀毒素のB断片またはその機能的等価物を表し、Xは治療上重要な1種以上のポリペプチドを表し、該ポリペプチドはBにより媒介される逆輸送と適合し、Xのプロセッシングもしくは正確な位置指定(addressing)を確実にする)のキメラポリペプチドを開示する。
【0003】
WO02/060937は、Gb3受容体に対して直接的もしくは間接的に標的化するための、式 STxB-Z(n)-Cys (式中、StxBは志賀毒素Bサブユニットであり、Zはスルフヒドリル基を含まないアミノ酸リンカーであり、nは0、1、2、またはポリペプチドであり、Cysはシステインである)を有する汎用ポリペプチド担体を開示する出願である。
【0004】
細胞性応答の優勢な誘導を必要とするワクチンの開発は依然として課題を残している。細胞性免疫応答の主要なエフェクター細胞であるCD8+ T細胞は、病原体に感染した細胞中で合成される抗原を認識するので、ワクチン接種の成功には該ワクチン接種受容者の細胞中での免疫原性抗原の合成が必要である。これは弱毒化生ワクチンを用いて達成することができるが、しかしながら、これらには大きな限界も存在する。第1に、ワクチン接種受容者が免疫抑制される場合であれ、病原体自身が免疫抑制を誘導することができる場合(例えば、ヒト免疫不全ウイルス)であれ、感染の危険性が存在する。第2に、ある種の病原体は細胞培養で増殖させることが困難であるか、または不可能である(例えば、C型肝炎ウイルス)。不活化全細胞ワクチンまたは明礬アジュバント化された組換えタンパク質サブユニットワクチンなどの他の既存のワクチンはほとんどCD8応答を誘導しない。
【0005】
これらの理由のため、次のような代替的な手法が開発中である:生ベクター化ワクチン、プラスミドDNAワクチン、合成ペプチドまたは特異的アジュバント。生ベクター化ワクチンは強力な細胞性応答を誘導する上で優れているが、該ベクターに対する、予め存在する(例えば、アデノウイルス)かまたはワクチンにより誘導される免疫は、追加のワクチン用量の効力を損なう可能性がある(Casimiroら、JOURNAL OF VIROLOGY, 2003年6月, p. 6305-6313)。プラスミドDNAワクチンはまた、細胞性応答を誘導することができるが(Casimiroら、JOURNAL OF VIROLOGY, 2003年6月, p. 6305-6313)、それはヒトにおいては依然として弱く(Mc Conkeyら、Nature Medicine 9, 729-735, 2003)、抗体応答は非常に貧弱である。さらに、合成ペプチドが臨床試験において現在評価されているが(Knongら、J Immunother 2004; 27: 472-477)、限定された数のT細胞エピトープをコードするそのようなワクチンの有効性は、ワクチンエスケープ突然変異体の出現またはHLA適合患者のための第1選択の必要性により妨げられる可能性がある。
【0006】
細菌毒素などの非生ベクターを用いる抗原送達に基づく代替的手法も記載されてきた。志賀Bベクター化系(STxB)は志賀毒素の非毒性Bサブユニットに基づく。この分子は抗原提示のためのベクターとしてそれを利用しやすくするように見えるいくつかの特徴を有する:すなわち毒性の不在、低い免疫原性、CD77受容体を介した標的化および積載抗原をMHCクラス1拘束性抗原提示経路に導入する能力(Haicheurら(2003) Int. Immunol 15 pp 1161-1171)。特に、志賀毒素のBサブユニットへの抗原の物理的結合はマウスモデルにおいて検出可能なCD8応答を誘導することが示された(Haicheurら、2000 Journal of Immunology 165 pp 3301-3308; Haicheurら、2003 Int. Immunol 15 pp 1161-1171)。しかしながら、この応答は大量の抗原(最大80μg、Haicheurら、2003 Int. Immunol 15 pp 1161-1171)の3回の注射を必要とし、腹腔内投与した場合、フロイント不完全アジュバントと混合することにより改善することができなかった(Haicheurら、2000 Journal of Immunology 165 pp 3301-3308)。
【発明の開示】
【0007】
ワクチン抗原および送達系のこれらの制限は、新規ワクチン組成物の探索を正当化する。本発明者らは、志賀毒素のBサブユニットまたはその免疫学的な機能的等価物を含む組成物中へのアジュバントの含有は、得られる免疫応答、特に、CD8特異的応答に対して有益な効果を有し得ることを見出した。
【0008】
従って、本発明は、抗原と複合体化された、Gb3受容体に結合することができる志賀毒素のBサブユニットまたはその免疫学的な機能的等価物を含み、さらにアジュバントを含むワクチン組成物であって、但し、このアジュバントが金属塩のみである場合にはそれは約60%以下の抗原が該金属塩上に吸着されるような方法で製剤化されている前記組成物を提供する。
【0009】
具体的なアジュバントは、金属塩、水中油乳濁液、Toll様受容体アゴニスト(特に、Toll様受容体2アゴニスト、Toll様受容体3アゴニスト、Toll様受容体4アゴニスト、Toll様受容体7アゴニスト、Toll様受容体8アゴニストおよびToll様受容体9アゴニスト)、サポニンまたはそれらの組合せからなる群より選択されるものであり、但し金属塩は、それを約60%以下の抗原が該金属塩上に吸着されるような方法で製剤化しない限りは別のアジュバントと組合わせてのみ使用され、単独では使用されない。約50%以下、例えば、40%の抗原が前記金属塩上に吸着されるのが好ましく、一実施形態においては、約30%以下の抗原が前記金属塩上に吸着される。金属塩上に吸着される抗体のレベルは、実施例1.5に記載する方法などの当業界で周知の技術により決定することができる。遊離抗原のレベルは、例えば、リン酸緩衝生理食塩水などのリン酸イオンの存在下で前記組成物を製剤化するか、または金属塩に対する抗原の比率を増加させることにより、増加させることができる。一実施形態においては、アジュバントは唯一のアジュバントとして金属塩を含まない。一実施形態においては、アジュバントは金属塩を含まない。従来技術で明示された状況とは対照的に、本発明者らは、志賀毒素(または免疫学的な機能的等価物)および抗原の効果をそのような組成物を筋肉内投与しない場合に増大させる不完全フロイントアジュバントの能力を示した。さらに、CD8応答のこの改善は、単回注射後、およびより低用量の抗原を用いる場合に、容易に観察される。
【0010】
志賀毒素のBサブユニットおよびその免疫学的な機能的等価物を、本明細書では本発明のタンパク質と呼ぶ。志賀毒素のBサブユニットの免疫学的な機能的等価物は、限定するものではないが、Gb3受容体に結合することができる毒素、毒素サブユニットまたはその機能的断片などのタンパク質として定義する。そのような結合能は、実施例1.2で説明するアッセイプロトコルに従うことにより決定することができる。Gb3結合は、目的の抗原の適切な輸送を誘導し、それによってそのMHCクラス1提示を促進すると考えられる。一実施形態においては、そのようなタンパク質は、志賀毒素のBサブユニットの成熟形態に対して、アミノ酸レベルで少なくとも50%のアミノ酸配列同一性、好ましくは60%、70%、80%、90%または95%の同一性を有する。
【0011】
そのような免疫学的な機能的等価物としては、種々の赤痢菌(Shigella)種、特に、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)から単離された毒素のBサブユニットが挙げられる。さらに、志賀毒素のBサブユニットの免疫学的な機能的等価物は、他の細菌に由来するGb3受容体に結合することができる相同毒素であって、好ましくは志賀毒素のBサブユニットに対して少なくとも50%のアミノ酸配列同一性を有する前記毒素を包含する。例えば、大腸菌(E.coli)に由来するベロ毒素-1(VT1)のBサブユニットは志賀毒素のBサブユニットと同一である。大腸菌由来のVT1およびVT2はGb3受容体に結合することが知られており、本発明の内容において、他の細菌により産生される他の志賀様毒素と同様に用いることができる。本発明の内容においては、用語「毒素」は、これらがヒトに対してはもはや毒性がないように無毒化された毒素、またはヒトにおける毒性活性を実質的に欠いている毒素サブユニットもしくはその断片を意味すると意図される。
【0012】
本発明のワクチン組成物はCD8特異的免疫応答を改善することができる。改善は、アジュバントを含まずに本発明のタンパク質と複合体化させた抗原を含む組成物に対する応答、またはアジュバントを含む抗原を含む製剤に対する応答と比較した場合の、本発明のタンパク質と複合体化した抗原およびアジュバントを含む本発明の組成物に対する応答を調べることにより、測定する。改善は、免疫応答のレベルの増加、より低用量の抗原を用いた同等な免疫応答の生成、免疫応答の質の向上、免疫応答の持続性の増加、または上記のいずれかの組合せとして定義されうる。そのような改善を、初回の免疫後に認めるか、および/またはその後の免疫後に認めることができる。
【0013】
本発明の一実施形態においては、低用量の抗原(マウス1匹あたり抗原8 ngの低量)を用いてそのような免疫応答を惹起することができる。この実施形態においては、アジュバント化された、本発明のタンパク質と複合体化された抗原は、本発明のタンパク質と複合体化されていないアジュバント化された抗原、またはアジュバントを含まないが本発明のタンパク質と複合体化された抗原(これは持続的応答を惹起することができない)と比較して、持続的である一次CD8応答(テトラマー染色、細胞内サイトカイン染色およびin vivo細胞傷害活性により測定される)を誘導することができる。
【0014】
CD8免疫応答は時間と共に徐々に弱くなる。すなわち、ピーク後、ほとんどのエフェクター細胞が死ぬが、記憶細胞は生存している収縮期が存在する。この応答性記憶T細胞集団の確立は、抗原特異的細胞の長期間の検出およびその追加免疫される能力の両方により、認識される。
【0015】
アジュバントは、サポニン、リピドAもしくはその誘導体、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、アルキルグルコサミニドリン酸、またはそれらの組合せからなる群より選択するのが好ましい。さらに好ましいアジュバントは、別のアジュバントと組合わせた金属塩である。アジュバントはToll様受容体アゴニスト、特に、Toll様受容体2、3、4、7、8もしくは9のアゴニスト、またはサポニン、特にQs21であるのが好ましい。アジュバント系は上記列挙からの2種以上のアジュバントを含むのがさらに好ましい。特に、この組合せはサポニン(特にQs21)アジュバントおよび/またはCpG含有免疫刺激性オリゴヌクレオチドなどのToll様受容体9アゴニストを含むのが好ましい。他の好ましい組合せは、サポニン(特にQs21)およびモノホスホリルリピドAもしくはその3脱アシル化誘導体、3D-MPLなどのToll様受容体4アゴニスト、またはサポニン(特にQS21)およびアルキルグルコサミニドリン酸などのToll様受容体4リガンドを含む。
【0016】
特に好ましいアジュバントは、3D-MPLおよびQS21の組合せ(EP 0 671 948 B1)、3D-MPLおよびQS21を含む水中油乳濁液(WO 95/17210, WO 98/56414)、または他の担体と共に製剤化された3D-MPL(EP 0 689 454 B1)である。他の好ましいアジュバント系は、3D-MPL、QS21および米国特許第6,558,670号、同第6,544,518号に記載のCpGオリゴヌクレオチドの組合せを含む。
【0017】
一実施形態においては、アジュバントはToll様受容体(TLR)4リガンド、好ましくはリピドA誘導体、特にモノホスホリルリピドAなどのアゴニスト、またはより具体的には3脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)である。
【0018】
3D-MPLはCorixa社により商標MPL(R)の元で販売されており、IFN-g(Th1)表現型を有するCD4+T細胞応答を主に促進する。それはGB 2 220 211 Aに開示された方法に従って製造することができる。化学的には、それは3-脱アシル化モノホスホリルリピドAと3、4、5または6アシル化鎖との混合物である。好ましくは、本発明の組成物においては、小粒子3D-MPLを用いる。小粒子3D-MPLは、それを0.22μmのフィルターを通して滅菌濾過することができるような粒子径を有する。そのような調製物は国際特許出願WO 94/21292に記載されている。リピドAの合成誘導体は公知であり、限定されるものではないが、以下のようなものを始めとするTLR4アゴニストであると考えられる:
OM174 (2-デオキシ-6-o-[2-デオキシ-2-[(R)-3-ドデカノイルオキシテトラ-デカノイルアミノ]-4-o-ホスホノ-β-D-グルコピラノシル]-2-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]-α-D-グルコピラノシルジヒドロゲンホスフェート)(WO 95/14026)、
OM294 DP (3S,9R)-3--[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9(R)-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール、1,10-ビス(ジヒドロゲノホスフェート)(WO99/64301およびWO00/0462)、
OM197 MP-Ac DP (3S,9R)-3-[(R)-ドデカノイルオキシテトラデカノイルアミノ]-4-オキソ-5-アザ-9-[(R)-3-ヒドロキシテトラデカノイルアミノ]デカン-1,10-ジオール、1-ジヒドロゲノホスフェート10-(6-アミノヘキサノエート)(WO 01/46127)。
【0019】
用いることができる他のTLR4リガンドは、WO9850399もしくは米国特許第6,303,347号(AGPの製造方法も開示されている)に開示されたものなどのアルキルグルコサミニドリン酸(AGP)、または米国特許第6,764,840号に開示されたAGPの製薬上許容し得る塩である。いくつかのAGPはTLR4アゴニストであり、いくつかはTLR4アンタゴニストである。双方ともアジュバントとして有用であると考えられる。
【0020】
本発明における使用のための別の好ましい免疫刺激剤はQuil Aおよびその誘導体である。Quil Aは南アメリカの樹木Quilaja Saponaria Molinaから単離されたサポニン調製物であり、Dalsgaardら、1974 (“Saponin adjuvants”, Archiv. fur die gesamte Virusforschung, Vol. 44, Springer Verlag, Berlin, p243-254)によりアジュバント活性を有するものとして初めて記載された。Quil Aと関連する毒性を有さないアジュバント活性を保持するQuil Aの精製断片、例えば、QS7およびQS21(QA7およびQA21としても知られる)が、HPLCにより単離された(EP 0 362 278)。QS-21は、CD8+細胞傷害性T細胞(CTL)、Th1細胞および優勢IgG2a抗体応答を誘導するQuillaja saponaria Molinaの樹皮から誘導された天然のサポニンであり、本発明の内容において好ましいサポニンである。
【0021】
特に好ましいQS21の特定の製剤が記載されてきたが、これらの製剤はステロールをさらに含む(WO96/33739)。本発明の一部を構成するサポニンは、ミセル、混合ミセルの形態で分離していてもよく(優先的に、但し胆汁塩を伴うものに限らない)、あるいはISCOMマトリックス(EP 0 109 942 B1)、リポソームまたはワーム様もしくは環様多量体複合体などの関連コロイド構造または脂質/層化構造ならびにコレステロールおよび脂質を用いて製剤化する場合のラメラの形態であってもよく、あるいは水中油乳濁液の形態(例えば、WO95/17210)であってもよい。サポニンを水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムなどの金属塩と結合させるのが好ましい(WO98/15287)。好ましくは、サポニンをリポソーム、ISCOMまたは水中油乳濁液の形態で提供する。
【0022】
免疫刺激性オリゴヌクレオチドまたは任意の他のToll様受容体(TLR)9アゴニストを用いることもできる。本発明のアジュバントまたはワクチンにおける使用にとって好ましいオリゴヌクレオチドは、CpG含有オリゴヌクレオチド、好ましくは、少なくとも3個、より好ましくは少なくとも6個またはそれ以上のヌクレオチドにより分離された2個またはそれ以上のジヌクレオチドCpGモチーフを含むCpG含有オリゴヌクレオチドである。CpGモチーフはシトシンヌクレオチドの後ろにグアニンヌクレオチドが続く。本発明のCpGオリゴヌクレオチドは、典型的にはデオキシヌクレオチドである。好ましい実施形態においては、オリゴヌクレオチド中のヌクレオチド間はホスホロジチオエート、またはより好ましくはホスホロチオエート結合であり、但しホスホジエステルおよび他のヌクレオチド間結合も本発明の範囲内にある。また、混合ヌクレオチド間結合を有するオリゴヌクレオチドも本発明の範囲内に含まれる。ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドまたはホスホロジチオエートの製造方法は米国特許第5,666,153号、同第5,278,302号およびWO95/26204に記載されている。
【0023】
好ましいオリゴヌクレオチドの例は以下の配列を有する。この配列はホスホロチオエート修飾ヌクレオチド間結合を含むのが好ましい。
オリゴ1(配列番号1): TCC ATG ACG TTC CTG ACG TT (CpG 1826)
オリゴ2 (配列番号2): TCT CCC AGC GTG CGC CAT (CpG 1758)
オリゴ3(配列番号3): ACC GAT GAC GTC GCC GGT GAC GGC ACC ACG
オリゴ4 (配列番号4): TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT (CpG 2006)
オリゴ5 (配列番号5): TCC ATG ACG TTC CTG ATG CT (CpG 1668)
オリゴ6 (配列番号6): TCG ACG TTT TCG GCG CGC GCC G (CpG 5456)。
【0024】
あるいは、CpGオリゴヌクレオチドは、これらがその中に重要でない欠失または付加を有する上記の好ましい配列を含んでもよい。本発明において用いられるCpGオリゴヌクレオチドを当業界で公知の任意の方法により合成することができる(例えば、EP 468520を参照)。便利には、そのようなオリゴヌクレオチドを自動化合成装置を用いて合成することができる。
【0025】
TLR2アゴニストの例としては、ペプチドグリカンまたはリポタンパク質が挙げられる。イミキモッドおよびレシキモッド(Resiquimod)などのイミダゾキノリンが公知のTLR7アゴニストである。一本鎖RNAも公知のTLRアゴニストであるが(ヒトにおけるTLR8およびマウスにおけるTLR7)、二本鎖RNAおよびポリIC(ポリイノシン-ポリシチジル酸−ウイルスRNAの市販の合成模倣物質)がTLR3アゴニストの例である。3D-MPLはTLR4アゴニストの例であるが、CPGはTLR9アゴニストの例である。
【0026】
一実施形態においては、志賀毒素のBサブユニットまたはその免疫学的な機能的等価物と抗原とを一緒に複合体化する。複合体化するとは、志賀毒素のBサブユニットまたはその免疫学的な機能的等価物と抗原とを、例えば、静電気的もしくは疎水的相互作用または共有結合により、物理学的に結びつけることを意味する。好ましい実施形態においては、志賀毒素のBサブユニットと抗原を融合タンパク質として共有結合させるか(Haicheurら、2000 Journal of Immunology 165 pp 3301-3308)、またはWO02/060937(上掲)に記載された方法でシステイン残基を介して結合させる。本発明の実施形態においては、1つの毒素Bあたり2、3、4、5、6個の抗原分子というように、2個以上の抗原を各毒素B分子に結合させる。2個以上の抗原が存在する場合、これらの抗原は全て同じであってもよく、1個またはそれ以上のものが互いに異なっていてもよく、または全ての抗原が互いに異なっていてもよい。
【0027】
抗原自身はペプチド、または1種またはそれ以上の目的のエピトープを含むタンパク質であってもよい。本発明で意図される様式で製剤化する場合、抗原がHIV、結核菌、クラミジア、HBV、HCV、およびインフルエンザ菌などの細胞内病原体に対する免疫を提供するように、抗原を選択するのが好ましい実施形態である。本発明はまた、良性疾患および癌などの増殖性疾患に対する適切な免疫応答を惹起することができる抗原を用いる有用性も提供する。
【0028】
好ましくは、本発明のワクチン製剤はヒト病原体に対する免疫応答を引き出すことができる抗原または抗原性組成物を含むものであり、この抗原または抗原性組成物は、HIV-1(p24、tat、nefなどのgagもしくはその断片、gp120もしくはgp160などのエンベロープ、またはこれらのいずれかの断片)、ヒトヘルペスウイルス、例えば、gDもしくはその誘導体またはHSV1もしくはHSV2由来のICP27などの極初期タンパク質、サイトメガロウイルス((特にヒト)(gBもしくはその誘導体など))、ロタウイルス抗原、エプスタイン・バーウイルス(gp350もしくはその誘導体など)、水痘帯状疱疹ウイルス(gpI、IIおよびIE63など)に由来するか、またはB型肝炎ウイルスなどの肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎表面抗原もしくはその誘導体)に由来するか、またはA型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスおよびE型肝炎ウイルス由来の抗原であるか、またはパラミクソウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(F、GおよびNタンパク質もしくはその誘導体など)、パラインフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス(例えば、HPV6、11、16、18)、フラビウイルス(例えば、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、ダニ媒介脳炎ウイルス、日本脳炎ウイルス)またはインフルエンザウイルス精製もしくはその組換えタンパク質、例えば、HA、NP、NA、もしくはMタンパク質、またはそれらの組合せ)などの他のウイルス病原体に由来するか、またはN. gonorrheaおよびN. meningitidis (例えば、トランスフェリン結合タンパク質、ラクトフェリン結合タンパク質、PilC、アドへシン)などのナイセリア属種; S. pyogenes (例えば、Mタンパク質もしくはその断片、C5Aプロテアーゼ)、S. agalactiae、S. mutans; H. ducreyi; Branhamella catarrhalisとしても知られるM catarrhalis (例えば、高および低分子量アドヘシンおよびインベーシン)などのMoraxella属種; B. pertussis (例えば、ペルタクチン、ペルツシス毒素もしくはその誘導体、繊維状ヘマグルチニン、アデニル酸シクラーゼ、線毛), B. parapertussisおよびB. bronchisepticaなどのボルデテラ属種; M. tuberculosis (例えば、ESAT6、抗原85A、-Bもしくは-C)、M. bovis、M. leprae、M. avium、M. paratuberculosis、M. smegmatisなどのミコバクテリア属種; L. pneumophilaなどのレジオネラ属種; エンテロトキシン産生性大腸菌(例えば、定着因子、熱不安定性毒素もしくはその誘導体、熱安定性毒素もしくはその誘導体)、腸管出血性大腸菌、腸病原性大腸菌などのエシェリシア属種; V. cholera (例えば、コレラ毒素もしくはその誘導体)などのビブリオ属種; S. sonnei、S. dysenteriae、S. flexneriiなどのシゲラ属種; Y. enterocolitica (例えば、Yopタンパク質)、Y. pestis、Y. pseudotuberculosisなどのエルジニア属種; C. jejuni (例えば、毒素、アドヘシンおよびインベーシン)およびC. coliなどのカンピロバクター属種; S. typhi、S. paratyphi、S. choleraesuis、S. enteritidisなどのサルモネラ属種; L. monocytogenesなどのリステリア属種; H. pylori (例えば、ウレアーゼ、カタラーゼ、細胞空胞化毒素)などのヘリコバクター属種; P. aeruginosaなどのシュードモナス属種; S. aureus、S. epidermidisなどのスタフィロコッカス属種; E. faecalis、E. faeciumなどのエンテロコッカス属種; C. tetani (例えば、テタヌス毒素およびその誘導体)、C. botulinum (例えば、ボツリヌス毒素およびその誘導体)、C. difficile (例えば、クロストリジウム毒素AもしくはBおよびその誘導体)などのクトストリジウム属種; B. anthracis (例えば、ボツリヌス毒素およびその誘導体)などのバチルス属種; C. diphtheriae (例えば、ジフテリア毒素およびその誘導体)などのコリネバクテリウム属種; B. burgdorferi (例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B. garinii (例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B. afzelii (例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B. andersonii (例えば、OspA、OspC、DbpA、DbpB)、B. hermsiiなどのボレリア属種; E. equiおよびヒト顆粒球性エールリヒア症の病原因子などのエールリヒア属種; R. rickettsiiなどのリケッチア属種; C. trachomatis (例えば、MOMP、ヘパリン結合タンパク質)、C. pneumoniae (例えば、MOMP、ヘパリン結合タンパク質)、C. psittaciなどのクラミジア属種; L. interrogansなどのレプトスピラ属種; T. pallidum (例えば、希少外膜タンパク質)、T. denticola、T. hyodysenteriaeなどのトレポネマ属種などの細菌病原体に由来するか; またはP. falciparumなどのプラスモジウム属種; T. gondii (例えば、SAG2、SAG3、Tg34)などのトキソプラズマ属種; E. histolyticaなどのエントアメーバ属種; B. microtiなどのバベシア属種; T. cruziなどのトリパノソーマ属種; G. lambliaなどのジアルジア属種; L. majorなどのレーシュマニア属種; P. cariniiなどのニューモシスティス属種; T. vaginalisなどのトリコモナス属種; S. mansoniなどの住血吸虫属種などの寄生虫に由来するか、C. albicansなどのカンジダ属種; C. neoformansなどのクリプトコッカス属種などの酵母に由来する。
【0029】
M.tuberculosisに対する他の好ましい特異的抗原は、例えば、Tb Ra12、Tb H9、Tb Ra35、Tb38-1、Erd 14、DPV、MTI、MSL、mTTC2およびhTCC1(WO 99/51748)である。M.tuberculosisのためのタンパク質としては、M.tuberculosisの少なくとも2個、好ましくは3個のポリペプチドがより大きいタンパク質へと融合された融合タンパク質およびその変異体も挙げられる。好ましい融合体としては、Ra12-TbH9-Ra35、Erd14-DPV-MTI、DPV-MTI-MSL、Erd14-DPV-MTI-MSL-mTCC2、Erd14-DPV-MTI-MSL、DPV-MTI-MSL-mTCC2、TbH9-DPV-MTI (WO 99/51748)が挙げられる。
【0030】
クラミジアに対する最も好ましい抗原としては、例えば、高分子量タンパク質(HMW)(WO 99/17741)、ORF3(EP 366 412)、および推定上の膜タンパク質(Pmp)が挙げられる。ワクチン製剤の他のクラミジア抗原を、WO 99/28475に記載の群より選択することができる。
【0031】
好ましい細菌性ワクチンは、S.pneumoniae(例えば、PsaA、PspA、ストレプトリシン、コリン結合タンパク質)などのストレプトコッカス属種に由来する抗原、およびタンパク質抗原ニューモリシン(Biochem Biophys Acta, 1989, 67, 1007; Rubinsら、Microbial Pathogenesis, 25, 337-342)、およびその無毒化変異誘導体(WO 90/06951; WO 99/03884)を含む。他の好ましい細菌性ワクチンは、B型インフルエンザ菌、不定型インフルエンザ菌などのヘモフィルス属種に由来する抗原、例えば、OMP26、高分子量アドヘシン、P5、P6、プロテインDおよびリポタンパク質D、ならびにフィンブリンおよびフィンブリン由来ペプチド(米国特許第5,843,464号)またはその多コピー変異体もしくは融合タンパク質を含む。
【0032】
B型肝炎表面抗原の誘導体は当業界で周知であり、特に、欧州特許出願EP-A-414374;EP-A-0304578、およびEP 198-474に記載のPreS1、PreS2のS抗原が挙げられる。1つの好ましい態様においては、本発明のワクチン製剤は特にCHO細胞中で発現される場合のHIV-1抗原、gp120を含む。さらなる実施形態においては、本発明のワクチン製剤は上記で定義されたgD2tを含む。
【0033】
本発明の好ましい実施形態においては、請求項に記載されたアジュバントを含むワクチンは、生殖器疣の原因となると考えられるヒトパピローマウイルス(HPV)(HPVまたはHPV11など)、ならびに子宮頚癌の原因となるHPVウイルス(HPV16、HPV18など)に由来する抗原を含む。
【0034】
特に好ましい形態の生殖器疣予防用または治療用ワクチンは、L1タンパク質、ならびにHPVタンパク質E1、E2、E5、E6、E7、L1およびL2から選択される1種またはそれ以上の抗原を含む融合タンパク質を含む。
【0035】
最も好ましい形態の融合タンパク質は、WO 96/26277に開示されたL2E7、およびWO 99/10375に開示されたタンパク質D(1/3)-E7である。
【0036】
好ましいHPVによる子宮頚部の感染もしくは癌の予防用または治療用ワクチン組成物はHPV16抗原またはHPV18抗原を含んでよい。
【0037】
特に好ましいHPV16抗原は、HPV16由来のタンパク質D-E6もしくはE7融合体を形成するようにタンパク質D担体と融合した初期タンパク質E6もしくはE7、またはそれらの組合せ、またはE6もしくはE7とL2との組合せ(WO 96/26277)を含む。
【0038】
あるいは、HPV16または18の初期タンパク質E6およびE7は、単一の分子、好ましくはタンパク質D-E6/E7融合体として提供することができる。そのようなワクチンは、HPV18に由来するE6およびE7タンパク質のいずれかまたは両方を、好ましくはタンパク質D-E6もしくはタンパク質D-E7融合タンパク質またはタンパク質D-E6/E7融合タンパク質の形態で、必要に応じて含んでもよい。
【0039】
本発明のワクチンはさらに、他のHPV株、好ましくはHPV31または33株に由来する抗原を含んでもよい。
【0040】
本発明のワクチンはさらに、マラリアを引き起こす寄生虫から誘導された抗原、例えば、プラスモジア・ファルシパルム(Plasmodia falciparum)由来の抗原、例えば、スポロゾイト周囲タンパク質(CSタンパク質)、RTS、S、MSP1、MSP3、LSA1、LSA3、AMA1およびTRAPを含む。RTSはB型肝炎ウイルス表面抗原のpreS2部分の4個のアミノ酸を介してB型肝炎ウイルスの表面(S)抗原に連結されたP.falciparumのスポロゾイト周囲(CS)タンパク質の実質的に全てのC末端部分を含むハイブリッドタンパク質である。その完全な構造は英国特許出願第9124390.7号に対する優先権を主張するWO 93/10152の元で公開された国際特許出願番号PCT/EP92/02591に開示されている。酵母中で発現される場合、RTSはリポタンパク質粒子として産生され、それがHBVからS抗原と共に同時発現される場合、それはRTS,Sとして知られる混合粒子を産生する。TRAP抗原はWO 90/01496の元で公開された国際特許出願番号PCT/GB89/00895に記載されている。多段階マラリアワクチンの成分となりうる候補であるプラスモジア抗原は、P.falciparumのMSP1、AMA1、MSP3、EBA、GLURP、RAP1、RAP2、セクエストリン、PfEMP1、PF332、LSA1、LSA3、STARP、SALSA、PfEXP1、Pfs25、Pfs28、PFS27/25、Pfs16、Pfs48/45、Pfs230およびプラスモジウム属種のおけるそれらの類似体である。本発明の一実施形態は、抗原調製物が、1種以上のさらなるマラリア抗原と組合わせてRTS,SもしくはCSタンパク質またはその断片、例えば、RTS,SのCS部分を含み、そのいずれかまたは両方を本発明に従って志賀毒素Bサブユニットに結合させてもよい、マラリアワクチンである。1種またはそれ以上のさらなるマラリア抗原を、例えば、MPS1、MSP3、AMA1、LSA1またはLSA3からなる群より選択することができる。
【0041】
前記製剤は抗腫瘍抗原を含んでもよく、癌の免疫治療的処置にとって有用である。例えば、アジュバント製剤は前立腺癌、乳癌、結腸癌、肺癌、膵臓癌、腎臓癌または黒色腫癌腫に対するものなどの腫瘍拒絶抗原と共に用いる際に有用である。抗原の例としては、MAGE1およびMAGE3もしくは他のMAGE抗原(黒色腫の治療のため)、PRAME、BAGE、またはGAGE(RobbinsおよびKawakami, 1996, Current Opinions in Immunology 8, pps 628-636; Van den Eyndeら、International Journal of Clinical & Laboratory Research(1997年提出);Correaleら(1997), Journal of the National Cancer Institute 89, p293)が挙げられる。実際、これらの抗原は黒色腫、肺癌、肉腫および膀胱癌などの様々な腫瘍型において発現される。他の腫瘍特異的抗原は本発明のアジュバントと共に使用する場合に好適であり、限定されるものではないが、腫瘍特異的ガングリオシド、前立腺特異的抗原(PSA)またはHer-2/neu、KSA(GA733)、PAP、マンマグロビン、MUC-1、癌胎児性抗原(CEA)が挙げられる。従って、本発明の一態様においては、本発明によるアジュバント組成物および腫瘍拒絶抗原を含むワクチンが提供される。
【0042】
ワクチンが前立腺癌、乳癌、結腸癌、肺癌、膵臓癌、腎臓癌、卵巣癌または黒色腫などの腫瘍抗原を含むのが本発明の特に好ましい態様である。従って、前記製剤は腫瘍関連抗原、ならびに腫瘍支持機構(例えば、血管新生、腫瘍浸潤)と関連する抗原を含んでもよい。従って、癌の治療におけるワクチン用に特に適切な抗原としてはまた、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、チロシナーゼ、サバイビン、NY-ESO1、プロスターゼ、PS108(WO 98/50567)、RAGE、LAGE、HAGEが挙げられる。さらに前記抗原は多くの癌の治療、または免疫去勢において有用である、全長ゴナドトロフィンホルモン放出ホルモン(GnRH、WO 95/20600)、短い10個のアミノ酸長のペプチドなどの自己ペプチドホルモンであってよい。
【0043】
本発明のワクチンは、アレルギーの予防または治療に有用であり得る。そのようなワクチンは、例えば、Der p1などのアレルゲン特異的抗原を含むであろう。
【0044】
各ワクチン用量中の抗原の量は、典型的なワクチン接種受容者において顕著で有害な副作用を示さない免疫防御応答を誘導する量として選択する。そのような量は、どのような特定の免疫原を用いるか、またそれを提供する方法に依存して変化するであろう。組成物が唯一のアジュバントとして金属塩を含む場合、遊離抗原のレベル(例えば、実施例1.5に記載の方法により測定される)は免疫防御を決定づける量であることは当業者には理解されるであろう。
【0045】
一般的には、それぞれのヒト用量は0.1〜1000μgの抗原、好ましくは0.1〜500μg、好ましくは0.1〜100μg、最も好ましくは0.1〜50μgの抗原を含むことが予想される。特定のワクチンのための最適量は、ワクチン接種された被験体における適切な免疫応答の観察を伴う標準的な試験により確認することができる。最初のワクチン接種の後、被験体は適切に間隔を空けた1回または数回の追加免疫を受けることもありうる。そのようなワクチン製剤を初回もしくは追加のワクチン接種計画において哺乳動物の粘膜表面に適用するか、またはあるいは、例えば、経皮、皮下もしくは筋肉内経路により、全身投与することができる。筋肉内投与が好ましい。
【0046】
用いる3D-MPLの量は一般的には少ないが、ワクチン製剤に応じて、1〜1000μg/用量、好ましくは1〜500μg/用量、およびより好ましくは1〜100μg/用量の範囲内でもよい。
【0047】
本発明のアジュバントまたはワクチン中のCpGまたは免疫刺激性オリゴヌクレオチドの量は一般的には少ないが、ワクチン製剤に依存して、1〜1000μg/用量、好ましくは1〜500μg/用量、およびより好ましくは1〜100μg/用量の範囲内でもよい。
【0048】
本発明のアジュバントに使用するためのサポニンの量は1〜1000μg/用量、好ましくは1〜500μg/用量、より好ましくは1〜250μg/用量、および最も好ましくは1〜100μg/用量の範囲内であってよい。
【0049】
本発明の製剤を、予防および治療目的の両方に用いることができる。従って、本発明は医学における使用のための本明細書に記載のワクチン組成物を提供する。
【0050】
さらなる実施形態においては、実質的に本明細書に記載の組成物の投与による、疾患に罹りやすいか、または罹患している個体の治療方法を提供する。
【0051】
また、個体が、感染性の細菌性およびウイルス性疾患、寄生虫疾患、特に、細胞内病原体疾患、前立腺癌、乳癌、結腸癌、肺癌、膵臓癌、腎臓癌、卵巣癌もしくは黒色腫などの増殖性疾患、非癌性慢性疾患、アレルギーからなる群より選択される疾患に罹ることを防止する方法であって、該個体に、実質的に本明細書に記載の組成物を投与することを含む、前記方法も提供する。
【0052】
さらに、哺乳動物においてCD8+抗原特異的免疫応答を誘導する方法であって、該哺乳動物に本発明の組成物を投与することを含む、前記方法も記載する。さらに、抗原を、志賀毒素のBサブユニットまたはその免疫学的な機能的等価物と共にアジュバントと混合することを含む、ワクチンの製造方法も提供する。
【0053】
本発明の組合せ物における使用のために好適な製薬上許容し得る賦形剤の例としては、特に、水、リン酸緩衝生理食塩水、等張性緩衝溶液が挙げられる。
【0054】
本明細書に引用される、限定されるものではないが特許および特許出願を含む全ての刊行物は、それぞれの刊行物が完全に記載されるのと同様に本明細書に参照により組み入れられるべきことが具体的かつ個別的に示されていた場合と同様に、参照により本明細書に組み入れられるものとする。
【0055】
本発明を以下の実施例および図面を参照することにより例示する。全ての図面において、アデノ-ova(OVAタンパク質含有アデノウイルスベクター)を最初の注射において陽性対照として用いた。P/B(初回/追加)はアデノ-Ovaの最初の注射、およびAS A(図6BではAS H)中のOvaタンパク質の2回目に当たる追加免疫注射を用いる陽性対照である。
【実施例】
【0056】
1. 試薬および培地
1.1 アジュバント化STxB-Ovaの調製
完全長ニワトリオボアルブミンに結合したSTxB: STxB中の規定のアクセプター部位にタンパク質を化学的に結合させるために、システインをその野生型タンパク質のC末端に加えてSTxB-Cysを得た。組換え変異体STxB-Cysタンパク質を、以前に記載のように作製した(Haicheurら、2000, J. Immunol. 165, 3301)。Limulusアッセイ試験により決定された内毒素濃度は0.5 EU/ml未満であった。STxB-ovaは以前に記載されており(Haicheurら、2003, Int. Immunol., 15, 1161-1171)、Ludger JohannesおよびEric Tartour (Curie Institute)の厚意により提供された。完全長ニワトリオボアルブミンに結合したStxBを、以下に記載のアジュバント系の各々において製剤化した。
【0057】
1.2 ガラビオース結合アッセイ
志賀毒素のBサブユニットにより選択的に認識されるGb3受容体は、細胞表面のスフィンゴ糖脂質、グロボトリアオシルセラミド(Galα1-4Galβ1-4グルコシルセラミド;式中、Galはガラクトースである)である。以下に記載の方法は、Tarrago-Trani(Protein Extraction and Purification 38, pp 170-176, 2004)により記載されたものに基づいており、市販のガラビオース結合アガロースゲル(calbiochem)上でのアフィニティクロマトグラフィーを伴う。ガラビオース(Galα1->4Gal)はGb3のオリゴ糖成分の末端炭水化物部分であり、志賀毒素のBサブユニットにより認識される最小構造を表すと考えられる。この方法を成功裏に用いて、大腸菌溶解物から直接志賀毒素が精製されてきた。従って、この成分に結合するタンパク質はGb3受容体に結合すると考えられる。
【0058】
目的のタンパク質を含むPBSバッファー(500μl)を、予め同じバッファー中で平衡化した100μlの固定化ガラビオース樹脂(Calbiochem)と混合し、回転ホイール上、4℃にて30分〜1時間インキュベートする。5000 rpmで1分間の1回目の遠心分離後、ペレットをPBSで2回洗浄する。次いで、結合した材料を、100 mMグリシンpH 2.5の500μl x 2中に最後のペレットを再懸濁することにより2回溶出する。次いで、流出物に対応するサンプル、プールした洗浄液およびプールした溶出液を、SDS Page、クーマシー染色およびウェスタンブロッティングにより分析する。これらの分析技術により、タンパク質がガラビオースに結合し、従ってGb3受容体に結合するかどうかを同定することができる。
【0059】
1.3 アジュバント系における使用のための水中油乳濁液の調製
水中油乳濁液の調製はWO 95/17210に記載のプロトコルに従った。この乳濁液は、5%スクアレン、5%トコフェロール、2.0% tween 80を含み、粒子径は180 nmである。
【0060】
水中油乳濁液の調製(2倍濃度)
Tween 80をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に溶解して、PBS中の2%溶液を得た。100 mlの2倍濃度乳濁液を提供するために、5 gのDLαトコフェロールおよび5 mlのスクアレンを、完全に混合されるまでボルテックスにかけた。90 mlのPBS/Tween溶液を添加し、完全に混合した。次いで、得られた乳濁液をシリンジに通し、M110S微小流体装置を用いることにより最終的に微小流体化した。得られた油滴は約180 nmの大きさを有する。
【0061】
1.4 アジュバント系の調製
1.4.1 アジュバント系A:QS21および3D-MPL
有機溶媒中の脂質(卵黄もしくは合成由来ホスファチジルコリンなど)およびコレステロールおよび3D-MPLの混合物を、減圧下(または不活性ガス流下)で乾燥させた。次いで、水溶液(リン酸緩衝生理食塩水など)を加え、脂質が全て懸濁されるまで容器を攪拌した。次いで、この懸濁液を、リポソームの大きさが約100 nmに減少するまで微小流体化した後、0.2μmフィルターを通して滅菌濾過した。押出または超音波処理をこの工程と置き換えることも可能であった。
【0062】
典型的には、コレステロール:ホスファチジルコリン比は1:4(w/w)であり、水溶液を加えて、5〜50 mg/mlの最終コレステロール濃度を得た。
【0063】
リポソームは100 nmの規定の大きさを有し、これをSUV(小単ラメラ小胞)と呼ぶ。リポソームはそれ自体で長時間に渡って安定であり、融合能を持たない。SUVの滅菌バルクを、最終濃度10、20または100μg/mlの3D-MPLに達するようにPBSに加えた。PBSの組成はNa2HPO4:9 mM; KH2PO4:48 mM; NaCl: 100 mM pH 6.1であった。QS21の水溶液をSUVに加えた。この混合物をDQMPLinと呼ぶ。次いで、Stx-OVAを加えた。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。pHを調べ、必要に応じてNaOHまたはHClでpHを6.1±0.1に調整した。
【0064】
以下の3.1節に記載の実験においては、StxB-Ovaは4、10、20または100μg/mlの濃度であり、3D-MPLおよびQS21は10μg/mlの濃度であった。これらの場合においては、50μlの注射量は0.2〜5μgのSTxB-OVAならびに0.5μgの3D-MPLおよびQS21に対応した。0.2μgのSTxB-OVAの注射に関する結果を図1〜10に示す。また、50μlの注射量が0.5、1および5μgのSTxB-OVAに対応する実験も行った。これらの実験により、図1〜10に示されるものと同等の結果が得られた。
【0065】
他の実験においては、StxB-OVAは20もしくは40μg/mlの濃度であり、3D-MPLおよびQS21は20もしくは100μg/mlの濃度であった。これらの実験においては、25μlの注射量は、0.5μgのSTXB-OVAならびに0.5μgの3D-MPLおよびQS21(図12Aおよび12Bに示される)または1μgのSTxB-OVAおよび各2.5μgの3D-MPLおよびQS21(図11および20に示される)に対応していた。
【0066】
1.4.2 アジュバント系B:QS21
1.4.2.1:アジュバント系B1
アジュバントを、アジュバント系Aについて用いた方法に従って、但し3D-MPLを除いて調製した。StxB-OVAおよびQS21を10または20μg/mlの濃度に調整した。25または50μlの注射量は0.5μgのStxB-OVAおよび0.5μgのQS21(図12A、12Bおよび17に示される)に対応していた。
【0067】
1.4.2.2:アジュバント系B2
QS21をPBS pH 6.8中に100μg/mlの濃度に希釈した後、最終抗原濃度が40μg/mlに達するようにStxB-OVAを加えた。25μlの注射量は1μgのStxB-OVAおよび2.5μgのQS21(図16に示される)に対応していた。
【0068】
1.4.3 アジュバント系C:3D-MPL
1.4.3.1: アジュバント系C1
3D-MPLの滅菌バルクを、スクロース溶液中で100または200μg/mlに希釈し、最終濃度9.25%にした。20または40μg/mlの抗原濃度に達するようにStxB-OVAを加えた。
25μlの注射量は、1μgのStxB-OVAおよび5μgの3D-MPL(図16に認められる)または0.5μgのStxB-OVAおよび2.5μgの3D-MPL(結果は示さないが、同等である)に対応していた。
【0069】
1.4.3.2: アジュバント系C2
アジュバントを、アジュバント系Aについて用いた方法に従って、但しQS21を除いて調製した。
StxB-OVAおよびMPLを10μg/mlの濃度に調整した。
50μlの注射量は0.5μgのStxB-OVAおよび0.5μgのMPLに対応していた。
【0070】
1.4.4 アジュバント系D:水中油乳濁液中の3D-MPLおよびQS21
実施例1.3に記載のように調製された滅菌バルク乳濁液を、1ml当たり乳濁液250または500μlの最終濃度(v/v)に達するようにPBSに加えた。次いで、3D-MPLを最終濃度50または100μg/mlに達するように加えた。次いで、QS21を最終濃度50または100μg/mlに達するように加えた。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。次いで、StxB-OVAを最終濃度10または40μg/mlに達するように加えた。15分後、pHを調べ、必要に応じてNaOHまたはHClでpHを6.8±0.1に調整した。
25または50μlの注射量は、0.5または1μgのSTxB-Ova、2.5μgの3D-MPLおよびQS21、12.5μlまたは25μlの乳濁液に対応していた。50μlの注射量を用いる実験を図11に示す。25μlの注射量を用いる実験により、同等の結果が得られた。
【0071】
1.4.5 アジュバント系E:水中油乳濁液中の高用量3D-MPLおよびQS21
実施例1.3に記載のように調製された滅菌バルク乳濁液を、1ml当たり乳濁液500μlの最終濃度(v/v)に達するようにPBSに加えた。200μgの3D-MPLおよび200μgのQS21を加えた。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。次いで、StxB-OVAを最終濃度40μg/mlに達するまで加えた。15分後、pHを調べ、必要に応じてNaOHまたはHClでpHを6.8±0.1に調整した。
25μlの注射量は1μgのSTxB-Ova、5μgの両免疫刺激物質および12.5μlの乳濁液に対応していた。
【0072】
1.4.6 アジュバント系F:低水中油乳濁液中の3D-MPLおよびQS21
水中油乳濁液は実施例1.3に記載のものにコレステロールを加えたものであり、その有機相にコレステロールを加えて、1%スクアレン、1%トコフェロール、0.4%tween 80、および0.05%コレステロールの最終組成物となるようにしたものであった。乳濁液の形成後、3D-MPLを最終濃度100μg/mlに達するように加えた。次いで、QS21を加えて、最終濃度100μg/mlを達成した。成分の各添加の間、中間生成物を5分間攪拌した。次いで、StxB-OVAを最終濃度40μg/mlに達するように加えた。15分後、pHを調べ、必要に応じてNaOHまたはHClでpHを6.8±0.1に調整した。25μlの注射量は1μgのSTxB-Ova、2.5μgの3D-MPLおよびQS21、2.5μl乳濁液に対応していた。
【0073】
1.4.7 アジュバント系G:CpG2006
滅菌バルクCpGをPBSまたはNaClの150 mM溶液に加えて、最終濃度100または200μg/mlとした。次いで、StxB-OVAを最終濃度10または20μg/mlに達するように加えた。用いたCpGは以下の配列 5’-TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT-3’(配列番号4)を有する24マーであった。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。pHを調べ、必要に応じてNaOHまたはHClでpHを6.8±0.1に調整した。
50μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ovaおよび5μgのCpGに対応していた(図12A、12Bおよび21)。実験を、25μlの注射量(0.5μgのSTxB-Ovaおよび5μgのCpGに対応する)を用いて行った。結果は示さないが同等であった。
【0074】
1.4.8 アジュバント系H:QS21、3D-MPLおよびCpG2006
滅菌バルクCpGをPBS溶液に加えて、最終濃度100μg/mlとした。PBSの組成はNa2HPO4:9 mM; KH2PO4: 48 mM; NaCl: 100 mM pH 6.1であった。次いで、StxB-OVAを最終濃度20μg/mlに達するように加えた。最後に、QS21および3D-MPLを、DQMPLinと呼ばれる、3D-MPLおよびQS21を含む滅菌バルクSUVのプレミックスとして加えて、最終的な3D-MPLおよびQS21の濃度を10μg/mlとした。
【0075】
用いたCpGは以下の配列5’-TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT-3’(配列番号4)を有する24マーであった。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。pHを調べ、必要に応じてNaOHまたはHClでpHを6.1±0.1に調整した。
【0076】
50μlの注射量は1μgのSTxB-Ova、0.5μgの3D-MPLおよびQS21ならびに5μgのCpGに対応していた。次いで、この製剤を3D-MPL/QS21およびCpGの溶液(それぞれ10、10および100μg/mlの濃度)中に希釈して、0.2、0.04および0.008μgの用量のStxB-OVAを得た(これらの製剤は図1〜10および13に示される実験に用いた)。
【0077】
図12Aおよび12Bに示される実験において、CpGは100μg/mlの濃度であり、3D-MPLおよびQS21は10μg/mlの濃度であり、StxB-OVAは10μg/mlの濃度であった。
50μlの注射量は0.5μgのStxB-OVA、0.5μgの3D-MPLおよびQS21ならびに5μgのCpGに対応していた。
1つのさらなる実験においては、CpGは1000μg/mlの濃度であり、3D-MPLおよびQS21は100μg/mlの濃度であり、StxB-OVAは40μg/mlの濃度であった。25μlの注射量は1μgのStxB-OVA、2.5μgの3D-MPLおよびQS21ならびに25μgのCpGに対応していた。この実験から得られた結果は示さないが、他の成分濃度を用いて認められた結果と同等である。
【0078】
1.4.9 アジュバント系I:QS21およびCpG2006
滅菌バルクCpGをPBSまたはNaClの150 mM溶液に加えて、最終濃度100または200μg/mlとした。PBS組成はPO4 10mM、NaCl 150 mM pH 7.4またはNa2HPO4:9 mM; KH2PO4: 48 mM; NaCl: 100 mM pH 6.1であった。次いで、StxB-OVAを10または20μg/mlの最終濃度に達するように加えた。最後に、QS21を滅菌バルクSUVおよびQS21のプレミックス(DQと呼び、実施例1.3.14に記載のように調製)として加えて、10または20μg/mlの最終QS21濃度とした。
【0079】
用いたCpGは以下の配列5’-TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT-3’(配列番号4)を有する24マーであった。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。pHを調べ、必要に応じてNaOHまたはHClでpHを6.1または7.4±0.1に調整した。
【0080】
50μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ova、0.5μgのQS21および5μgのCpGに対応していた(図12Aおよび12B)。
また、実験を、25μlの注射量(0.5μgのSTxB-Ova、0.5μgのQS21および5μgのCpGに対応する)を用いて行った。結果は示さないが、同等であった。
【0081】
1.4.10 アジュバント系J:不完全フロイントアジュバント(IFA)
IFAはCALBIOCHEMから取得した。IFAを、1分間ボルテックスを用いてある容量の抗原と共に乳化した。
【0082】
STxB-ovaをPBS pH 6.8または7.4中で40μg/mlの濃度に希釈し、500μl/mlのIFA(そのまま用いたものと、PBS中に20倍希釈した後のもののいずれか)と混合した。
25μlの注射量は1μgのSTxB-ovaおよび12.5または0.625μlのIFAに対応していた(図14に示される)。
【0083】
他の実験においては、StxB-OVAをPBS pH 6.8または7.4中、10μg/mlに希釈し、500または250μl/mlのIFAと混合した。50μlの注射量は0.5μgのStxB-OVAおよび12.5または25μlのIFAに対応していた。これらの実験により、図14に示されるものと同等の結果が得られた。
【0084】
1.4.11 アジュバント系K:水中油乳濁液
1.4.11.1 アジュバント系K1
滅菌バルク乳濁液を、3D-MPLおよびQS21を排除した以外は実施例1.3と同様に調製した。
25μlの注射量は1μgのStxB-OVAおよび12.5μlの乳濁液に対応していた。結果を図16中にアジュバント系Kとして示す。
【0085】
1.4.11.2 アジュバント系K2
滅菌バルク乳濁液を、3D-MPLおよびQS21を排除した以外はアジュバント系Fと同様にして調製した。
25μlの注射量は1μgのStxB-OVAおよび2.5μlのコレステロール含有乳濁液に対応していた。
結果は示さないが、アジュバント系K1について認められるものと同等であった。
【0086】
1.4.12 アジュバント系L:ポリI:C
ポリI:C(ポリイノシン酸-ポリシチジル酸)はAmershamから市販されているウイルスRNAの合成模倣物質(mimetic)である。いくつかの実験において、StxB-OVAを20μg/mlの最終濃度に達するようにNaCl 150 mM中に希釈した。次いで、滅菌バルクポリI:Cを、最終濃度20μg/mlに達するように加えた。
【0087】
成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。
25μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ovaおよび0.5μgのポリI:Cに対応していた(図15および21に示される)。
他の実験においては、StxB-OVAは10μg/mlの濃度であり、ポリI:Cは20または100μg/mlの濃度であった。
50μlの注射量は0.5μgのStxB-OVAおよび1または5μgのポリI:Cに対応していた。
これらの実験により、図15および21に示されるものと同等の結果が得られた。
【0088】
1.4.13 アジュバント系M:CpG5456
StxB-OVAをNaCl 150 mM中に希釈して、20μg/mlの最終濃度とした。次いで、滅菌バルクCpGを200μg/mlの最終濃度に達するように加えた。
用いたCpGは配列5’- TCG ACG TTT TCG GCG CGC GCC G-3’(CpG 5456)を有する22マーであった。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。
25μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ovaおよび5μgのCpGに対応していた。
【0089】
1.4.14 アジュバント系N:QS21およびポリI:C
有機溶媒中の脂質(卵黄または合成由来のホスファチジルコリンなど)とコレステロールの混合物を、減圧下(または不活性ガス流下)で乾燥させた。次いで、水溶液(リン酸緩衝生理食塩水など)を加え、脂質が全て懸濁されるまで容器を攪拌した。次いで、この懸濁液を、リポソームの大きさが約100 nmに減少するまで微小流体化した後、0.2μmのフィルターを通して滅菌濾過した。押出または超音波処理をこの工程と置き換えることができた。
【0090】
典型的には、コレステロール:ホスファチジルコリン比は1:4(w/w)であり、次いで、水溶液を加えて、5〜50 mg/mlの最終コレステロール濃度を得た。
【0091】
リポソームは100 nmの規定サイズを有し、これをSUV(小単ラメラ小胞)と呼ぶ。リポソームはそれ自体で長時間に渡って安定であり、融合能を持たない。
【0092】
SUVの滅菌バルクをPBSに加えて、MPLの最終濃度を100μg/mlとした。QS21の水溶液をそのSUVに加えて、最終QS21濃度を100μg/mlとした。このリポソームとQS21との混合物をDQと呼ぶ。
【0093】
滅菌バルクポリI:C(Amersham、前述)を20μg/mlの最終濃度に達するようにNaCl 150 mM中に希釈した後、DQを加えて、QS21における最終濃度を20μg/mlとした。次いで、StxB-OVAを20μg/mlの最終濃度に達するように加えた。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。
25μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ova、0.5μgのQS21および0.5μgのポリI:Cに対応していた。
【0094】
1.4.15 アジュバント系O:CpG2006および水中油乳濁液
水中油乳濁液を実施例1.3に記載のように調製した。
【0095】
滅菌バルク乳濁液をPBSに加えて、1ml当たり500μlの乳濁液の最終濃度(v/v)とした。次いで、CpGを200μg/mlの最終濃度に達するように加えた。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。次いで、StxB-OVAを20μg/mlの最終濃度に達するように加えた。15分後、pHを調べ、必要に応じてNaOHまたはHClを用いてpHを6.8±0.1に調整した。
【0096】
用いたCpGは以下の配列5’-TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT-3’(配列番号4)を有する24マーであった。
25μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ova、5μgのCpGおよび12.5μlの乳濁液に対応していた。
【0097】
1.4.16 アジュバント系P:CpG2006および水中油乳濁液
水中油乳濁液を、Chiron Behring FluAdワクチンに含まれる説明冊子で公表された処方に従って調製した。
クエン酸バッファーを、200 mlのH2O中で36.67 mgのクエン酸と627.4 mgのクエン酸ナトリウム・2H2Oとを混合することにより調製した。別途、3.9 gのスクアレンおよび470 mgのSpan 85を磁気攪拌下で混合した。
【0098】
470 mgのTween 80を、クエン酸バッファーと混合した。得られた混合物をスクアレン/Span 85混合物に加え、磁気攪拌を用いて「激しく」混合した。最終容量は100 mlであった。
【0099】
次いで、混合物をM110S微小流体装置(Microfluidicsから入手)中に置いて、油滴の大きさを低下させた。z平均で145 nmを、0.06の多分散性で取得した。この大きさを、以下の技術的条件:
-レーザー波長:532 nm(Zeta3000HS)
-レーザー出力:50 mW(Zeta3000HS)
-散乱光を90°で検出(Zeta3000HS)
-温度:25℃
-期間:ソフトによる自動決定
-数:3回の連続した測定
-z平均直径:キュムラント分析による
を用いてZetasizer 3000HS(Malvernから入手)で取得した。
【0100】
得られた乳濁液の滅菌バルクをPBSに加えて、1ml当たり乳濁液500μlの最終濃度 (v/v)とした。次いで、CpGを、200μg/mlの最終濃度に達するように加えた。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。次いで、StxB-OVAを20μg/mlの最終濃度となるように加えた。15分後、pHを調べ、必要に応じてNaOHまたはHClを用いてpHを6.8±0.1に調整した。
【0101】
用いたCpGは以下の配列5’-TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT-3’(配列番号4)を有する24マーであった。
25μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ova、5μgのCpGおよび12.5μlの乳濁液に対応していた。
【0102】
1.4.17 アジュバント系Q:CpG2006およびIFA油中水乳濁液
CALBIOCHEMから入手したIFAをPBSに加えて、1ml当たり乳濁液500μlの最終濃度(v/v)とした。次いで、CpGを、200μg/mlの最終濃度となるように加えた。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。次いで、StxB-OVAを20μg/mlの最終濃度となるように加えた。15分後、pHを調べ、必要に応じてNaOHまたはHClを用いてpHを7.4±0.1に調整した。
【0103】
用いたCpGは以下の配列5’-TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT-3’(配列番号4)を有する24マーであった。
25μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ova、5μgのCpGおよび12.5μlの乳濁液に対応していた。
【0104】
1.4.18 アジュバント系R:CpG2006およびAl(OH)3
Brentagから入手したAl(OH)3を、注射用水に最終濃度1 mg/ml(Al+++)で希釈した。StxB-OVAを、30分間、20μg/mlの濃度でAl+++上に吸着させた。CpGを200μg/mlの濃度になるように加えて、30分間インキュベートした後、NaClを150 mMの最終濃度となるように加えた。全てのインキュベーションを、軌道振とう下、室温にて行った。
【0105】
用いたCpGは以下の配列5’-TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT-3’(配列番号4)を有する24マーであった。
25μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ova、5μgのCpGおよび25μgのAl+++に対応していた。
【0106】
1.4.19 アジュバント系S:CpG2006およびAlPO4
Brentagから入手したAlPO4を、注射用水に最終濃度1 mg/ml(Al+++)で希釈した。StxB-OVAを、30分間、20μg/mlの濃度でAl+++上に吸着させた。CpGを200μg/mlの濃度になるように加えて、30分間インキュベートした後、NaClを150 mMの最終濃度になるように加えた。全てのインキュベーションを、軌道振とう下、室温にて行った。
【0107】
用いたCpGは以下の配列5’-TCG TCG TTT TGT CGT TTT GTC GTT-3’(配列番号4)を有する24マーであった。
25μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ova、5μgのCpGおよび25μgのAl+++に対応していた。
【0108】
1.4.20 アジュバント系T:3D-MPLおよびAl(OH)3
Brentagから入手したAl(OH)3を、注射用水に最終濃度1 mg/ml(Al+++)に希釈した。StxB-OVAを、30分間、40または20μg/mlの濃度でAl+++上に吸着させた。3D-MPLを100μg/mlの濃度になるように加えて、30分間インキュベートした後、NaClを150 mMの最終濃度になるように加えた。全てのインキュベーションを、軌道振とう下、室温にて行った。
【0109】
25μlの注射量は1または0.5μgのSTxB-Ova、2.5μgの3D-MPLおよび25μgのAl+++に対応していた。1μgのSTxB-Ovaについての結果を図16に示す。0.5μgのSTxB-Ovaを注射した実験は示さないが、図16に示されるものと同等の結果が得られた。
【0110】
1.4.21 アジュバント系U:TLR2-リガンド
用いたTLR2リガンドは、TLR2特異的であることが知られている、Microcollectionsから購入した細菌リポペプチドである合成Pam3CysSerLys4であった。StxB-OVAをNaCl 150 mMまたはPBS pH 7.4中に希釈して、10または20μg/mlの最終濃度とした。次いで、滅菌バルクPam3CysSerLys4を、40、100および200μg/mlの最終濃度になるように加えた。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。
【0111】
50μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ovaおよび5または10μgのPam3CysSerLys4に対応していた(5μgについての結果を図21に示す。他の用量のTLR2を用いた結果の考察については3.2.9節を参照)。
他の実験においては、25μlの注射量は0.5μgのStxB-OVAおよび1μgのPam3CysSerLys4に対応していた。
【0112】
1.4.22 アジュバント系V:TLR7/8リガンド
用いたTLR7/8リガンドはレシキモッド(resiquimod)またはR-848(Cayla)として知られるイミキモッド誘導体であった。R-848は動物モデルにおいて強力な抗ウイルス特性および抗腫瘍特性を有するイミダゾキノリンファミリーの低分子量化合物である。イミキモッドの活性はIFN-αおよびIL-12などのサイトカインの誘導を通じて優先的に媒介される。R-848はイミキモッドのより強力な類似体である(Akira,S.およびHemmi,H.;IMMUNOLOGY LETTER, 85, (2003), 85-95)。
【0113】
STxB-OVAをPBS pH 7.4中に希釈して、10または20μg/mlの最終濃度とした。次いで、滅菌バルクR-848を20および100μg/mlの最終濃度になるように加えた。成分の各添加の間に、中間生成物を5分間攪拌した。
【0114】
50μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ovaおよび1または5μgのR-848に対応していた。他の実験においては、25μlの注射量は0.5μgのSTxB-OVAおよび0.5μgのR-848に対応していた。
【0115】
1.4.22 アジュバント系W:AlPO4
1.4.22.1 アジュバント系W1
Brentagから入手したAlPO4を、注射用水に最終濃度0.5 mg/ml(Al+++)に希釈した。StxB-OVAを、30分間、10μg/mlの濃度でAl+++上に吸着させた後、NaClを150 mMの最終濃度になるように加えた。全てのインキュベーションを、軌道振とう下、室温にて行った。50μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ovaおよび25μgのAl+++に対応していた。
【0116】
1.4.22.2 アジュバント系W2
Brentagから入手したAlPO4を、PBS pH 7.4中に最終濃度0.5 mg/ml(Al+++)に希釈した。StxB-OVAを、30分間、10μg/mlの濃度でAl+++上に吸着させた。全てのインキュベーションを、軌道振とう下、室温にて行った。50μlの注射量は0.5μgのSTxB-Ova、5μgのCpGおよび25μgのAl+++に対応していた。XXXXXに記載のSDS-PAGEによる試験により、約70%の抗原がALPPO4上に吸着されなかったことが示された。
【0117】
1.5 抗原/金属塩複合体中に吸着された抗原のレベルの測定
目的の製剤を6500 gで6分間遠心分離する。得られた上清のサンプルを95℃で5分間変性させ、還元性サンプルバッファー中、SDS-PAGEゲル上にロードする。アジュバントを含まない抗原のサンプルもロードする。次いで、ゲルを200V、200 mAで1時間泳動に供する。次いで、ゲルをDaichi法に従って銀染色する。製剤中の遊離抗原のレベルを、アジュバント化された製剤からのサンプルと、アジュバントを含まない抗原とを比較することにより測定する。ウェスタンブロッティングなどの当業界で周知の他の技術も用いることができる。
【0118】
実施例2:本発明のワクチンを用いるC57/B6マウスのワクチン接種
上記の様々な製剤を用いて、6〜8週齢のC57BL/B6雌マウス(10匹/群)をワクチン接種した。マウスには1回または14日間隔で2回の注射を施し、第1、2、3および8週中に採血した(実際の採血日については個別の実施例を参照)。マウスを筋肉内にワクチン接種した(25μlまたは50μlの最終容量の左腓腹筋への注射)。オボアルブミン組換えアデノウイルスを5×107〜108VPの様々な用量で注射した。
【0119】
ex vivoでのPBL刺激を、5%FCS(Harlan、Holland)、1μg/mlの各抗マウス抗体CD49dおよびCD28(BD、Biosciences)、2 mM L-グルタミン、1 mMピルビン酸ナトリウム、10μg/ml硫酸ストレプトマイシン、10ユニット/mlペニシリンGナトリウム(Gibco)、10μg/mlストレプトマイシン、50μM B-MEメルカプトエタノールおよび100倍希釈非必須アミノ酸(これらの添加物は全てGibco Life technologiesから入手)を補給したRPMI1640(Biowitaker)である完全培地中で行った。ペプチド刺激は常に37℃、5%CO2で行った。
【0120】
2.1 免疫学的アッセイ:
2.1.1 抗原特異的T細胞の検出
PBLの単離およびテトラマーの染色。血液を後眼窩静脈から取得し(マウス1匹当たり50μl、1群当たり10匹のマウス)、RPMI+ヘパリン(LEO)培地中に直接希釈した。PBLをlymphoprep勾配(CEDERLANE)を通して単離した。次いで、細胞を洗浄し、計数し、および最後に1〜5×105個の細胞を、1/50の最終濃度(f.c.)でCD16/CD32抗体(BD Biosciences)を含む50μlのFACSバッファー(PBS, FCS1%, 0.002%NaN3)中に再懸濁した。10分後、50μlのテトラマーミックスを細胞懸濁液に加えた。テトラマーミックスは、入手可能性によりそれぞれImmunosourceまたはImmunomics Coulterから入手した0.2μlまたは1μlのsiinfekl-H2Kbテトラマー-PEを含む。抗CD8a-PercP(1/100 f.c.)および抗CD4-APC(1/200 f.c.)(BD Biosciences)抗体もこの試験に加えた。次いで、細胞を室温にて45分間(Immunosourceのテトラマーについて)または37℃で10分間(Immunomics Coulterのテトラマーについて)静置した後、1回洗浄し、CELLQuest(商標)ソフトウェアを含むFACS Calibur(商標)を用いて分析した。
【0121】
2.1.2 細胞内サイトカイン染色(ICS)
ICSを、2.1.1節に記載のように取得した血液サンプルについて行った。5〜10×105個のPBLを、1μg/mlのsiinfeklぺプチドまたはそれぞれ1μg/mlの濃度で存在する17もしくは15マーのOvaペプチド(11種のMHCクラスI拘束性ペプチドおよび6種のMHCクラスII拘束性ペプチド)のプールを補給した完全培地、あるいはそれらを含まない完全培地中に再懸濁した。2時間後、1μg/mlのBrefeldin-A(BD、Biosciences)を16時間添加し、細胞を合計18時間後に回収した。細胞を1回洗浄した後、抗マウス抗体(全てBD、Biosciencesで購入)を用いて染色した;さらなる工程は全て氷上で行った。最初に、細胞を50μlのCD16/32溶液(1/50 f.c., FACSバッファー)中で10分間インキュベートした。50μlのT細胞表面マーカーミックスを添加し(1/100 CD8a perCp, 1/100 CD4 PE)、細胞を20分間インキュベートした後、洗浄した。細胞を固定し、200μlの浸透/固定溶液(BD、Biosciences)中で浸透させ、浸透/洗浄バッファー(BD、Biosciences)中で1回洗浄した後、抗IFNg-APCおよび抗IL2-FITCを用いて4℃で2時間または一晩染色した。データをCELLQuest(商標)ソフトウェア備えたFACS Calibur(商標)を用いて分析した。
【0122】
図14Bにおいては、抗CD4抗体をAPC Cy7で標識し、抗CD8をPercP Cy5.5で標識し、および抗TNFa-PE抗体をサイトカイン染色工程に含めた。
【0123】
2.1.3 in vivoで検出される細胞媒介性細胞傷害活性(in vivoでのCMC)
siinfekl特異的細胞傷害性を評価するために、免疫化されたマウスおよび対照マウスに、2つの差別してCFSE標識された同系脾臓細胞およびリンパ節の集団からなる標的混合物に1 nM siinfeklペプチドを加えたもの、または加えないものを注射した。差別標識のために、カルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE;Molecular Probes- Palmoskiら、2002, J. Immunol. 168, 4391-4398)を0.2μMまたは2.5μMの濃度で用いた。両方の種類の標的を1/1の比でプールし、108個の標的/mlの濃度で再懸濁した。マウス1匹あたり200μlの標的混合物を1回目の注射の15日後に尾静脈に注射した。細胞傷害性を、異なる時点(標的注射の4、18または24時間後)で、殺した動物から取得した吸引リンパ節または血液(頸静脈)についてFACSR分析により評価した。siinfeklを加えた標的細胞の平均溶解率を、下記式を用いて、抗原陰性対照と比較して算出した:
注射前の標的細胞=in vivo注射の前にFACSにより得られた、ペプチドパルスされた標的(proinj.+)とパルスされていない標的(proinj.-)との混合物。
補正した標的(+)=注射前の混合物中のproinj.+細胞の数を考慮するために補正した、in vivo注射の後にFACSにより得られた、ペプチドパルスされた標的の数(上記を参照)
【0124】
2.1.4 Ag特異的抗体力価(総IgGの個々の分析):ELISA
血清学的分析を2回目の注射の15日および40日後に評価した。マウス(10匹/群)から後眼窩穿刺により採血した。抗ova総IgGをELISAにより測定した。96ウェルプレート(NUNC, 免疫吸着プレート)を抗原を用いて4℃にて一晩被覆した(ウェルあたり50μlのova溶液(ova 10μg/ml, PBS))。次いで、プレートを洗浄バッファー(PBS/0.1%Tween 20(Merck))中で洗浄し、100μlの飽和バッファー(PBS/0.1%Tween 20/1%BSA/10%FCS)を用いて37℃にて1時間飽和させた。洗浄バッファー中でさらに3回洗浄した後、100μlの希釈したマウス血清を添加し、37℃で90分間インキュベートした。さらに3回洗浄した後、プレートを、飽和バッファー中に1000倍希釈したビオチン化抗マウス総IgGと共に37℃でさらに1時間インキュベートした。飽和後、96ウェルプレートを上記のように再度洗浄した。飽和バッファー中に1000倍希釈したストレプトアビジンペルオキシダーゼ(Amersham)の溶液を、1ウェルあたり50μl添加した。最後の洗浄は洗浄バッファー中での5段階の洗浄であった。最後に、1ウェルあたり50μlのTMB(酸性バッファー中の3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン。H2O2の濃度は0.01%である。BIORAD)を添加し、そのプレートを室温にて10分間暗所で保持した。反応を停止させるため、1ウェルあたり50μlのH2SO4 0.4Nを添加した。吸光度を450/630 nmの波長で、BIORADから入手したElisaプレートリーダーにより読み取った。結果をsoftmax-proソフトウェアを用いて算出した。
【0125】
2.1.5 B細胞Elispot
脾臓細胞および骨髄細胞を2回目の注射の78日後に回収し、それを3μg/mlのCpG 2006および50 U/mlのrhIL-2を補給した完全培地中、37℃で5日間培養して、記憶B細胞を抗体産生プラズマ細胞に分化させた。5日後、96ウェルフィルタープレートを、70%エタノールと共に10分間インキュベートし、洗浄し、そしてオボアルブミン(50μg/ml)またはヤギ抗マウスIg抗血清で被覆した。次いで、これらを完全培地で飽和させた。細胞を収集し、洗浄し、さらに37℃で1時間、2 x 105個の細胞/ウェルにてプレート上に広げた。次いで、プレートを4℃で一晩保存した。次の日、PBS Tween 20 0.1%でプレートを洗浄することにより細胞を廃棄した。次いで、ウェルを、PBS中に1/500希釈した抗IgGビオチン化抗体と共に37℃で1時間インキュベートし、洗浄し、エクストラビジン-西洋わさびペルオキシダーゼ(4μg/ml)と共に1時間インキュベートした。洗浄工程の後、アミノエチルカルバゾール(AEC)およびH2O2の溶液と共に10分間インキュベートすることによりスポットを出現させ、プレートを水道水で洗浄することにより固定した。IgGまたはOva特異的IgGを分泌した細胞はそれぞれ赤いスポットとして出現する。この結果を、総IgGスポット100個あたりのova特異的IgGスポットの頻度として表す。
【0126】
3. 結果
以下に記載の結果は、CD8応答を誘導する際のSTxB系の効率が、それを様々なアジュバント系またはそれらの成分のいくつかと組合わせることにより劇的に改善されたことを示した。
【0127】
3.1 アジュバント系AおよびHを用いたデータ
3.1.1 AS AおよびAS Hを用いた一次応答の評価
得られた結果は、アジュバントの非存在下でSTxB-ovaを用いる低用量(0.2μg)の免疫化はex vivoで検出することができる強力なCD8 T細胞免疫応答を誘導しないことを示している。対照的に、STXB-OVAをアジュバント系AまたはHのいずれかと組合わせる場合、強力な免疫応答が観察される。さらに、アジュバント化されたタンパク質を超える明確な利点が証明される。
【0128】
アジュバント系AまたはHでアジュバント化されたSTxB-ovaは、強力で持続的な一次応答の誘導に有効である。それは抗原特異的CD8 T細胞を高頻度に誘導する(図1-注射は0.2μgのSTxB-OVA、0.5μgの3D-MPLおよびQS21、ならびにAS Hについては5μgのCPGを含んでいた)。方法は上記の2.1.1に記載のように実施し、マウスから1回目の注射の7日後に採血した。さらに、図2(注射は0.2μgのSTxB-OVA、0.5μgの3D-MPLおよびQS21、ならびにAS Hについては5μgのCPGを含んでいた。方法は上記の2.1.1に記載のように実施し、マウスから1回目の注射の14日後に採血した)は、このsiinfekl特異的CD8応答が注射後7日目と14日目の間、依然として増加することを示している。これはアジュバント化されたタンパク質を用いるワクチン接種の際には観察されないが、アデノウイルスなどの生ベクターにより誘導される一次応答にはむしろ特徴的である。誘導されたCD8 T細胞は容易にエフェクターT細胞に分化し、これは免疫優性ペプチド、またはovaペプチドのプール(それぞれ図3および4に示される、注射は0.2μgのSTxB-OVA、0.5μgの3D-MPLおよびQS21、ならびにAS Hについては5μgのCPGを含んでいた。方法は上記の2.1.2に記載のように実施し、マウスから1回目の注射の14日後に採血した)のいずれを用いて刺激を実施する場合でも、IFNγを産生する。ペプチドプールを用いる再刺激に際して観察される応答性CD8 T細胞がより高頻度であることは、一次CD8 T細胞レパートリーがクラスI免疫優性エピトープに限定されないことを示唆している。さらに、高い細胞傷害活性は、STxB-ovaをアジュバント化する場合にのみ、in vivoで検出することができる(図5-注射は0.2μgのSTxB-OVA、0.5μgの3D-MPLおよびQS21、ならびにAS Hについては5μgのCPGを含んでいた。方法は標的注射の18時間後に上記の2.1.3に記載のように実施した)。
【0129】
最後に、AS Hアジュバント化されたSTxB-ovaにより誘導された一次応答は、図6Bに例示されるように強く持続性である(注射は0.2μgのSTxB-OVA、0.5μgの3D-MPLおよびQS21、ならびに5μgのCPGを含んでいた。方法は上記の2.1.1に記載のように実施し、マウスから様々な時点で採血した)。
【0130】
3.1.2 AS AおよびAS Hを用いる二次応答の評価
STxB毒素送達系を強力なアジュバントと組合わせることも、二次免疫応答の大きさおよび持続性を改善する。これは、追加免疫の47日後に応答を評価することにより最も良く例示される。重要なことに、アジュバント化されたSTxB-OVAにより誘導された高いCD8応答は、組換えアデノウイルス初回免疫/アジュバント化タンパク質追加免疫法により誘導されるものと類似する強度および持続性のものである(図6A-注射は0.2μgのSTxB-OVA、0.5μgの3D-MPLおよびQS21、ならびにAS Hについては5μgのCPGを含んでいた。方法は上記の2.1.1に記載のように実施し、マウスから2回目の注射の47日後に採血した)。エフェクターT細胞集団に関して、サイトカイン産生T細胞はCD4およびCD8 T細胞区分の両方において依然として検出される(図7および8-注射は0.2μgのSTxB-OVA、0.5μgの3D-MPLおよびQS21、ならびにAS Hについては5μgのCPGを含んでいた。方法は上記の2.1.2に記載のように実施し、マウスから2回目の注射の47日後に採血し、PBLをovaペプチドのプールを用いて刺激した)。さらに、この遅い時点で、細胞傷害活性を、標的注射の4時間後(データは示さない)および24時間後(図9-注射は0.2μgのSTxB-OVA、0.5μgの3D-MPLおよびQS21、ならびにAS Hについては5μgのCPGを含んでいた。方法は上記の2.1.3に記載のように実施した)にin vivoで依然として検出することができる。
【0131】
体液性応答を追加免疫の15日後および40日後に調べた(図10a-注射は0.2μgのSTxB-OVA、0.5μgの3D-MPLおよびQS21、ならびにAS Hについては5μgのCPGを含んでいた。方法は上記の2.1.4に記載のように実施し、結果は10匹のマウスからなる各群についての幾何平均計算によって示された)。アジュバントの非存在下では、STxB-ova単独ではいかなるB細胞応答も誘導することができない。対照的に、アジュバント化されたタンパク質をSTxBに結合させても結合させなくても、試験した両方の時点で同等の抗体力価が検出される。
【0132】
図10B(注射は0.2μgのSTxB-OVA、0.5μgの3D-MPLおよびQS21、ならびに5μgのCPGを含んでいた。方法は上記の2.1.5に記載のように実施した)において、抗ova記憶B細胞頻度は注射の78日後のものを示す。2つの注射の15および40日後に検出された抗体力価は同等であるが、STxB-ovaをアジュバント化する場合にはアジュバント化タンパク質と比較してより高い頻度の記憶B細胞が検出されるため、記憶B細胞応答の質は異なる。STxB-ova単独では、それ自身で記憶B細胞を誘導することができない。
【0133】
興味深いことに、初回免疫および追加免疫を14日ではなく42日間隔で施す場合(図20-注射は0.5μgのSTXB-OVAならびに0.5μgの3D-MPLおよびQS21を含んでいた。方法は上記の2.1.4に記載のように実施した)、STxB-OVA AS Aにより誘導される体液性応答はOVA AS Aよりも高く、このことは、アジュバント化と組合わせた場合、ベクター化はより高頻度でB細胞記憶細胞を誘導し得ることをさらに示唆している。
【0134】
3.1.3 As Hアジュバント系と組合わせた低用量のSTxB-OVAにより誘導される免疫応答の評価
図13(注射は0.008、0.04、0.2または1μgのSTxB-OVA、0.5μgの3D-MPLおよびQS21、ならびに5μgのCPGを含んでいた。方法は上記の2.1.1に記載のように実施し、マウスから1回目の注射の14日後に採血した)は、AS H中に製剤化した、4 ngの抗原に対応する8 ngのSTxB-ovaという低用量の単回注射の14日後にもsiinfekl特異的CD8集団を依然として検出することができることを示している。これらの結果は、アジュバントとSTxB系を組合わせた使用により、誘導されるT細胞応答を減少させることなく、抗原用量を有意に低下させることができたことを示している。
【0135】
3.2 他のアジュバント系と組合わせたSTxB-OVAにより誘導される免疫応答の評価
本発明者らは次に、AS AまたはAS H以外のアジュバント系もSTxBベクター化系と相乗作用することができるかどうかを見出そうとした。
【0136】
3.2.1 AS A、F、DまたはE STxB ovaワクチンを用いるワクチン接種後の免疫応答の評価
一次応答の評価は、試験するアジュバント系にかかわらず、アジュバント化されたSTxB-ovaは抗原特異的T CD8を高頻度に誘導することを明確に示している(図11-方法は上記の2.1.1に記載のように実施し、マウスから1回目の注射の13日後に採血した)。注目すべきことに、これは、アジュバント化されたタンパク質を用いる1回の免疫化後に通常は検出可能なCD8応答が検出されないAS DおよびAS Eを用いる場合でさえ認められる。アジュバント化されたSTxB-ovaは、CD8 T細胞を強力に誘導し、そのCD8 T細胞はサイトカインを分泌するエフェクターT細胞に容易に分化する(データは示さない)。
【0137】
3.2.2 アジュバント系の個々の成分(3D-MPL -AS C2、QS21 -AS B、CpG2006 -AS G)と組合わせたSTxB-OVAにより誘導される免疫応答の評価
本発明者らは次に、in vivoで以前のアジュバント系の異なる成分を評価した。図12A(方法は上記の2.1.1に記載のように実施し、マウスから1回目の注射の15日後に採血した)は、STxB-ovaをQS21などの単一の免疫刺激剤またはCpGなどのTLR9リガンドを用いて、およびより少ない程度ではあるが3D-MPL(AS C2)などのTLR-4リガンドを用いてアジュバント化すると、siinfekl特異的CD8集団を検出することができ、この後者の免疫刺激剤は、図16に記載のようにより高い用量(AS C1)を用いる場合により有効であったことを示している。上記のように、これらの誘導されたCD8 T細胞はサイトカインを分泌するエフェクター細胞に容易に分化する(データは示さない)。それぞれのアジュバント成分単独により誘導される二次CD8応答は同等だが、QS21と少なくとも1種のTLRリガンドとの組合せを用いてSTxB-ovaをアジュバント化する場合にはより高い応答が観察される(図12B-方法は上記の2.1.1に記載のように実施し、マウスから2回目の注射の6日後に採血した)。
【0138】
3.2.3 アジュバントJまたはアジュバントKと組合わせたSTxB-OVAにより誘導される免疫応答の評価
以前に公表された観察結果とは対照的に、STxB-OVAをIFAなどの乳濁液と組合わせた場合にはCD8応答の増加も観察される。油中水乳濁液であるIFAを含む製剤は用量依存的様式でCD8応答を増加させる。
【0139】
siinfekl特異的CD8 T細胞の頻度の増加(図14A)は、サイトカイン産生(図14B)および細胞傷害活性(図14C)などのCD8エフェクター機能の改善に相当する。同様の結果はSTxB-ovaを水中油乳濁液と組合わせた場合に観察される。
【0140】
3.2.4 アジュバント系C1、B、K、FまたはTと組合わせたSTxB-ovaにより誘導される免疫応答の評価
本発明者らは次に、AS Tおよびアジュバント系Fの様々な成分を評価した。図16は、STxB-OVAと組合わせる場合、各成分はsiinfekl特異的CD8 T応答を増加させることができることを示す。しかしながら、最も高い応答は前記成分を前記製剤中で結び付ける場合に観察される。
【0141】
3.2.5 アジュバント系L、GまたはMと組合わせたSTxB-ovaにより誘導される免疫応答の評価
図15は、STX-B-OVAと、カテゴリーBおよびCを代表するポリI:C(TLR3)またはCpG配列(TLR9)などのTLRリガンドとの組合せが、siinfekl特異的CD8応答の大きさを有意に増加させることを示している。
【0142】
3.2.6 アジュバント系B、NまたはIと組合わせたSTxB-ovaにより誘導される免疫応答の評価
図17は、STxB-OVAにより誘導されるCD8応答が、QS21のみ、またはTLR3リガンド(ポリI:C)もしくはTLR9リガンド(CpG)と組合わせたQS21を用いてアジュバント化した場合に、明確に改善されることを示している。
【0143】
3.2.7 アジュバント系G、O、PまたはQと組合わせたSTxB-ovaにより誘導される免疫応答の評価
図18は、STxB-OVAにより誘導されるCD8応答が、CpGのみ、またはIFAもしくは異なる水中油乳濁液と組合せたCpGを用いてアジュバント化した場合に、明確に改善されることを示している。
【0144】
3.2.8 アジュバント系G、RまたはSと組合わせたSTxB-ovaにより誘導される免疫応答の評価
図19は、STxB-OVAにより誘導されるCD8応答が、CpGのみ、またはAl(OH)3もしくはAlPO4と組合せたCpGを用いてアジュバント化した場合に明確に改善されることを示している。
【0145】
3.2.9 アジュバント系G、L、UまたはVと組合わせたSTxB-ovaにより誘導される免疫応答の評価
図21は、TLR9および3つのリガンドに加えて、STX-B-OVAとTLR2およびTLR7/8リガンドとの組合せも、siinfekl特異的CD8 T応答の大きさを有意に増加させることを示している。TLR2リガンドを、0.2〜10μgの用量範囲で試験した。5μg未満の用量では増加は認められなかった。興味深いことに、用量を10μgに増やした場合、応答の低下が認められた。これはIL-10などの調節分子を誘導するTLR2リガンドの能力により説明することができる。
【0146】
3.2.10 アジュバント系W1またはW2と組合わせたSTxB-ovaにより誘導される免疫応答の評価
図22は、STxB-OvaとAS W1(抗原をアルミニウム塩上に吸着させた製剤中にリン酸アルミニウムを含む)との組合せは、アジュバント化されていないSTxB-ovaペプチドを用いて認められる免疫応答を超えるような免疫応答の改善をほとんどもたらさないことを示している。しかしながら、例えば、AS W2に認められるようなリン酸緩衝生理食塩水中に溶解されたアルミニウム塩を用いて吸着を実施することにより、抗原のうちのいくらか(この場合では約70%)をアルミニウム塩上に吸着させないように、該組成物を製剤化する場合には、アジュバントを含まないSTxB-Ovaにより得られるものを超える免疫応答の改善が認められる。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】AS A STxB OvaおよびAS H STxB Ovaワクチンを用いる初回注射の7日後のPBLにおけるSiinfekl特異的CD8の頻度を示す。
【図2】AS A STxB OvaおよびAS H STxB Ovaワクチンを用いる初回注射の14日後のPBLにおけるSiinfekl特異的CD8の頻度を示す。
【図3】AS A STxB OvaおよびAS H STxB Ovaワクチンを用いる初回注射の15日後のsiinfekl特異的サイトカイン産生CD8 T細胞を通じてPBLにおいて評価されるエフェクターT細胞応答持続性を示す。
【図4】AS A STxB OvaおよびAS H STxB Ovaワクチンを用いる初回注射の15日後の抗原特異的サイトカイン産生CD8 T細胞を通じてPBLにおいて評価されるエフェクターT細胞応答持続性を示す。
【図5】AS A STxB OvaおよびAS H STxB Ovaワクチンを用いる初回注射の15日後にin vivoで検出される細胞傷害活性により評価されるエフェクターT細胞応答を示す。
【図6】(A) AS A STxB OvaおよびAS H STxB Ovaワクチンを用いる2回目の注射の47日後のPBLにおけるSiinfekl特異的CD8頻度を示す。(B) 0日目〜98日目のPBLにおけるSiinfekl特異的CD8頻度の動態を示す。
【図7】AS AおよびAS H STxB Ovaワクチンを用いる2回目の注射の47日後のPBLにおける抗原特異的サイトカイン産生CD4 T細胞を通じて評価されるエフェクターT細胞応答を示す。
【図8】AS AおよびAS H STxB Ovaワクチンを用いる2回目の注射の47日後のPBLにおける抗原特異的サイトカイン産生CD8 T細胞を通じて評価されるエフェクターT細胞応答を示す。
【図9】AS A STxB OvaおよびAS H STxB Ovaワクチンを用いる2回目の注射の47日後にin vivoで検出される細胞傷害活性により評価されるエフェクターT細胞応答を示す。
【図10】図10A:AS A STxB OvaおよびAS H STxB Ovaワクチンを用いる2回目の注射の15日および40日後の体液性応答を示す。図10B:ASH STxB-OVAの2回目の注射の78日後の脾臓において評価される抗Ova記憶B細胞頻度を示す。
【図11】初回注射の13日後のAS A、AS F、AS D、AS E、STxB-ovaを用いたPBLにおけるSiinfekl特異的CD8の頻度を示す。
【図12A】1回目の注射の15日後の、AS A、AS B、AS C、AS G、AS IおよびAS H STxB-ovaワクチンを用いたPBLにおけるSiinfekl特異的CD8の頻度を示す。
【図12B】2回目の注射の6日後の、AS A、AS B、AS C、AS G、AS IおよびAS H STxB-ovaワクチンを用いたPBLにおけるSiinfekl特異的CD8の頻度を示す。
【図13】同じ用量のAS Hと共に製剤化した様々な用量のSTxB-ovaワクチンについてのPBLにおけるSiinfekl特異的CD8の頻度を示す。
【図14】1回目の注射の14日後のPBLにおいて測定されるAS J(2用量)またはAS Kを用いるSTxB-ovaによりin vivoで誘導される免疫応答の評価を示す。(A) Siinfekl特異的CD8の頻度を示す。(B) 抗原特異的サイトカイン産生CD8の頻度を示す。(C) in vivoで検出されたSiinfekl特異的溶解を示す。
【図15】1回目の注射の14日後のAS L、AS G、AS M STxB-ovaワクチンを用いたPBLにおけるSiinfekl特異的CD8の頻度を示す。
【図16】1回目の注射の14日後のAS B、AS C、AS K、AS FまたはAS T STxB-ovaワクチンを用いたPBLにおけるSiinfekl特異的CD8の頻度を示す。
【図17】1回目の注射の14日後のAS B、AS N、AS I STxB-ovaワクチンを用いたPBLにおけるSiinfekl特異的CD8の頻度を示す。
【図18】AS G、AS O、AS P、AS Q STxB-ovaワクチンを用いた1回目の注射の14日後のPBLにおけるSiinfekl特異的CD8の頻度を示す。
【図19】AS G、AS R、AS S STxB-ovaワクチンを用いた1回目の注射の14日後のPBLにおけるSiinfekl特異的CD8の頻度を示す。
【図20】AS A STxB-ovaワクチンを用いた1回目の注射の14日または42日後に実施された2回目の注射の15日後に検出された体液性応答を示す。
【図21】AS G、AS L、AS U、AS V STxB-ovaワクチンを用いた1回目の注射の14日後のPBLにおけるSiinfekl特異的CD8の頻度を示す。
【図22】ASW1、ASW2-ovaワクチンを用いた1回目の注射の14日後のPBLにおけるSiinfekl特異的CD8の頻度を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原と複合体化された、Gb3受容体に結合することができる志賀毒素のBサブユニットまたはその免疫学的な機能的等価物を含み、さらにアジュバントを含むワクチン組成物であって、但し該アジュバントが金属塩のみである場合にはそれが約50%以下の抗原が該金属塩上に吸着されるような方法で製剤化されている、前記ワクチン組成物。
【請求項2】
志賀毒素のBサブユニットの免疫学的な機能的等価物が、志賀毒素のBサブユニットに対して少なくとも50%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項3】
ベクターが志賀毒素のBサブユニットまたはその機能的な断片である、請求項2に記載のワクチン組成物。
【請求項4】
ベクターがベロ毒素-1のBサブユニットまたはその機能的な断片である、請求項2に記載のワクチン組成物。
【請求項5】
アジュバントが金属塩、水中油乳濁液、Toll様受容体アゴニスト、サポニンまたはそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項6】
アジュバントがToll様受容体アゴニストである、請求項5に記載のワクチン組成物。
【請求項7】
抗原とBサブユニットが共有結合している、請求項1〜6のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項8】
抗原が、システイン残基を介して毒素に結合している、請求項7に記載のワクチン組成物。
【請求項9】
アジュバントが、金属塩、サポニン、リピドAもしくはその誘導体、アルキルグルコサミニドリン酸、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、またはそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項10】
サポニンが、リポソーム、Iscom、または水中油乳濁液の形態で提供されている、請求項9に記載のワクチン組成物。
【請求項11】
サポニンがQS21である、請求項9または10に記載のワクチン組成物。
【請求項12】
リピドA誘導体が、モノホスホリルリピドA、3-脱アシル化モノホスホリルリピドA、OM 174、OM 197、OM 294から選択される、請求項9、10または11に記載のワクチン組成物。
【請求項13】
アジュバントが下記群:
i) サポニン、
ii) Toll様受容体4アゴニスト、および
iii) Toll様受容体9アゴニスト、
のうちの2つに由来する少なくとも1つずつの代表例の組合せである、請求項1〜12のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項14】
サポニンがQS21であり、Toll様受容体4アゴニストが3-脱アシル化モノホスホリルリピドAであり、Toll様受容体9がCpG含有免疫刺激性オリゴヌクレオチドである、請求項13に記載のワクチン組成物。
【請求項15】
抗原が、細胞内病原体または増殖性疾患から選択される疾患群に対する免疫を提供する抗原群から選択される、請求項1〜14のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項16】
志賀毒素のBサブユニットまたはその免疫学的な機能的等価物を、抗原および医薬上の使用のためのアジュバントと共に含む、ワクチン組成物。
【請求項17】
疾患の予防または治療用のワクチンの製造のための、志賀毒素のBサブユニットまたはその免疫学的な機能的等価物ならびに抗原およびアジュバントの使用。
【請求項18】
抗原特異的CD8応答の惹起のための請求項17に記載の使用。
【請求項19】
疾患に罹患している患者または疾患に罹患しやすい患者に、請求項1〜15のいずれか1項に記載のワクチン組成物を投与することを含む、疾患の治療または予防方法。
【請求項20】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のワクチンの患者への投与を含む、抗原特異的CD8免疫応答を惹起する方法。
【請求項21】
抗原を、志賀毒素のBサブユニットまたはその免疫学的な機能的等価物と共にアジュバントと混合する、請求項1〜15のいずれか1項に記載のワクチンの製造方法。
【請求項1】
抗原と複合体化された、Gb3受容体に結合することができる志賀毒素のBサブユニットまたはその免疫学的な機能的等価物を含み、さらにアジュバントを含むワクチン組成物であって、但し該アジュバントが金属塩のみである場合にはそれが約50%以下の抗原が該金属塩上に吸着されるような方法で製剤化されている、前記ワクチン組成物。
【請求項2】
志賀毒素のBサブユニットの免疫学的な機能的等価物が、志賀毒素のBサブユニットに対して少なくとも50%のアミノ酸配列同一性を有する、請求項1に記載のワクチン組成物。
【請求項3】
ベクターが志賀毒素のBサブユニットまたはその機能的な断片である、請求項2に記載のワクチン組成物。
【請求項4】
ベクターがベロ毒素-1のBサブユニットまたはその機能的な断片である、請求項2に記載のワクチン組成物。
【請求項5】
アジュバントが金属塩、水中油乳濁液、Toll様受容体アゴニスト、サポニンまたはそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項6】
アジュバントがToll様受容体アゴニストである、請求項5に記載のワクチン組成物。
【請求項7】
抗原とBサブユニットが共有結合している、請求項1〜6のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項8】
抗原が、システイン残基を介して毒素に結合している、請求項7に記載のワクチン組成物。
【請求項9】
アジュバントが、金属塩、サポニン、リピドAもしくはその誘導体、アルキルグルコサミニドリン酸、免疫刺激性オリゴヌクレオチド、またはそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項10】
サポニンが、リポソーム、Iscom、または水中油乳濁液の形態で提供されている、請求項9に記載のワクチン組成物。
【請求項11】
サポニンがQS21である、請求項9または10に記載のワクチン組成物。
【請求項12】
リピドA誘導体が、モノホスホリルリピドA、3-脱アシル化モノホスホリルリピドA、OM 174、OM 197、OM 294から選択される、請求項9、10または11に記載のワクチン組成物。
【請求項13】
アジュバントが下記群:
i) サポニン、
ii) Toll様受容体4アゴニスト、および
iii) Toll様受容体9アゴニスト、
のうちの2つに由来する少なくとも1つずつの代表例の組合せである、請求項1〜12のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項14】
サポニンがQS21であり、Toll様受容体4アゴニストが3-脱アシル化モノホスホリルリピドAであり、Toll様受容体9がCpG含有免疫刺激性オリゴヌクレオチドである、請求項13に記載のワクチン組成物。
【請求項15】
抗原が、細胞内病原体または増殖性疾患から選択される疾患群に対する免疫を提供する抗原群から選択される、請求項1〜14のいずれか1項に記載のワクチン組成物。
【請求項16】
志賀毒素のBサブユニットまたはその免疫学的な機能的等価物を、抗原および医薬上の使用のためのアジュバントと共に含む、ワクチン組成物。
【請求項17】
疾患の予防または治療用のワクチンの製造のための、志賀毒素のBサブユニットまたはその免疫学的な機能的等価物ならびに抗原およびアジュバントの使用。
【請求項18】
抗原特異的CD8応答の惹起のための請求項17に記載の使用。
【請求項19】
疾患に罹患している患者または疾患に罹患しやすい患者に、請求項1〜15のいずれか1項に記載のワクチン組成物を投与することを含む、疾患の治療または予防方法。
【請求項20】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のワクチンの患者への投与を含む、抗原特異的CD8免疫応答を惹起する方法。
【請求項21】
抗原を、志賀毒素のBサブユニットまたはその免疫学的な機能的等価物と共にアジュバントと混合する、請求項1〜15のいずれか1項に記載のワクチンの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2007−538044(P2007−538044A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517101(P2007−517101)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005555
【国際公開番号】WO2005/112991
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(397062700)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (37)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2005/005555
【国際公開番号】WO2005/112991
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(397062700)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (37)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]