説明

ワックス及びワックス膜

【課題】疎水性と親水性とを兼ね備えたワックス膜を形成することができ、撥水性と防汚性との両立が可能なワックスを提供する。
【解決手段】ワックス中に、親水基Xと疎水基Rを併せ持つオリゴマー及び/又はオリゴマー複合体を、望ましくはワックス固形分に対して0.05〜50%の割合で含有させる。これらオリゴマー及び/又はオリゴマー複合体は、ワックス膜中において、含水液滴と接触しない基底状態においては疎水基Rがワックス膜の表面に配向する一方、含水液滴と接触した接液状態においては親水基Xが上記ワックス膜の表面に配向し、ワックス膜の表面が撥水性と親水性とに可逆的に切り替わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車ボディに施された塗膜の保護や艶出しに用いられるワックスに係わり、さらに詳しくは、撥水性と防汚性を兼ね備えたワックス膜と、このような膜を得ることができるワックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記したような塗膜の保護や艶出しを目的としたワックスには、洗車や降雨時の水はじきを目的とした撥水性ワックスと、防汚を目的とした親水性ワックスがある。
また、例えば、特許文献1には、親水性の低いワックス性微粉末の表面に親水性の高いシリカサイトを沈積させることによって、表面層の親水−疎水のバランスを変化させることが記載されている。
【特許文献1】特公平6−6532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、現在市販されているワックスは、疎水性及び親水性のいずれかを示すものであって、撥水性と防汚性を兼ね備えたものは見当たらない。
また、上記特許文献1に記載の変性ワックス性微粉末にしても、表面層の親水−疎水のバランスを変化できても、疎水性及び親水性のいずれかを示すに過ぎなく、疎水性に基づく撥水性と、親水性に基づく防汚性とを両立することはできない。
【0004】
本発明は、従来のワックスにおける上記課題を解決すべくなされたものであって、その目的とするところは、疎水性と親水性とを兼ね備えた膜を形成することができ、撥水性と防汚性との両立が可能なワックスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため、ワックスを構成する成分や添加成分などについて鋭意検討を重ねた結果、ワックス中に親水基と疎水基の両方を併せ持つオリゴマー、このようなオリゴマーにシリカネットワークを付加したオリゴマー複合体を配合し、ワックス膜中にこのようなオリゴマーやオリゴマー複合体を含有させることによって、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0006】
すなわち、本発明は上記知見に基づくものであって、本発明のワックスは、親水基と疎水基を併有するオリゴマー及び/又はオリゴマー複合体を含むことを特徴とする。
また、本発明のワックス膜は、上記オリゴマー及び/又はオリゴマー複合体を含み、該オリゴマー及び/又はオリゴマー複合体は、含水液滴と接触しない基底状態において、疎水基がワックス膜の表面に配向する一方、含水液滴と接触した接液状態においては、親水基が上記ワックス膜の表面に配向し、上記基底状態と接液状態とに可逆的に切り替わることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ワックス中に親水基と疎水基の双方を併有するオリゴマーやオリゴマー複合体を含有させたため、これによって得られるワックス膜の表面状態が親水性と疎水性とに切り替わり、親水性下における防汚・易洗浄性と、疎水性下における撥水性(水はじき)とを両立させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明のワックス及びワックス膜について、さらに詳細、かつ具体的に説明する。なお、本明細書中において、「%」は特記しない限り質量百分率を表わすものとする。
【0009】
本発明のワックスは、上記したように、親水基と疎水基とを併せ持つオリゴマー及び/又はオリゴマー複合体を含有している。
当該オリゴマーやオリゴマー複合体は、ワックス膜中において、含水液滴と接触しない基底状態では、その疎水基がワックス膜の表面に配向するのに対し、含水液滴と接触した接液状態では、その親水基がワックス膜の表面に配向する。
【0010】
すなわち、図1は、当該オリゴマーの挙動を模式図として表したものであって、例えば、フルオロアルキル基から成る疎水基Rと、スルホン酸基、カルボキシル基などの親水基Xを備えたオリゴマーは、含水液滴と接触しない基底状態(乾燥状態)では、その疎水基R がワックス膜の表面側に配向する。したがって、この状態で膜表面に水滴が付着したとしても、図1(a)に示すように、撥水性を発揮することになる。
一方、図1(b)に示すような接液状態では、オリゴマーの親水基Xがワックス膜の表面側に配向することによって、この膜が親水性を示すようになる。
【0011】
なお、含水液滴とは、水分を含有する液滴を意味し、雨滴を初めてとして、水に加えて泥や煤塵などを含有する液滴の外、油分や界面活性剤などを含有する液滴もこれに含まれる。
【0012】
その結果、含水液滴との接触状況に応じてワックス膜の表面が親水性と疎水性とに切り替わることになり、当該ワックス膜は、通常の基底状態においては疎水性を示し、少量の雨滴や短時間の降雨に対しては撥水性を発揮する。よって、少量の雨滴は風などによって吹き飛ばされるか又は乾燥して飛散するが、雨滴が吹き飛ばされた場合には、雨滴に含まれる汚れ成分はワックス膜の表面には殆ど残存せず、ワックス膜表面の清浄性が持続する。
一方、ある程度の量の雨滴や長時間の降雨に対しては親水性を発揮するので、雨滴に含まれる汚れ成分の一部はワックス膜の表面を流れ落ち、ワックス膜表面は比較的清浄な状態を保持する。
なお、雨滴付着量の多少や降雨時間の長短に拘わらず、雨滴が飛散・消失した後にワックス膜の表面に残存する汚れ成分は、シャワーリングなどにより水洗すれば、膜表面が親水性に変化して有効に流れ落ちるので、ワックス膜表面の洗浄作業を簡単に行うことができる。
【0013】
本発明において、親水基と疎水基を併有するオリゴマーやオリゴマー複合体としては、例えば次式(1)によって表される構造のオリゴマーや、次式(2)〜(4)によって表される構造を備えたオリゴマー複合体を用いることができる。なお、これら4種類のオリゴマーやオリゴマー複合体は、それぞれ単独で使用することも、2種以上のものを任意に組み合わせて使用するようにすることも可能である。
【0014】
【化5】

【0015】
【化6】

【0016】
【化7】

【0017】
【化8】

【0018】
上記各式(1)〜(4)において、鎖状オリゴマー部位の両末端に位置するRは、疎水基であって、2〜10個の炭素数と、119〜1000の分子量を有する修飾又は非修飾のフルオロアルキル基である。
なお、疎水基としての上記フルオロアルキル基の炭素数が2個に満たない場合には、フッ素による撥水効果が出なくなる一方、10個を超えると溶解性の低下という不具合が生じる可能性がある。また、当該フルオロアルキル基の分子量が119に満たないと、フッ素による撥水効果が出なくなり、1000を超えた場合には、溶解性が悪化する傾向がある。
【0019】
このようなフルオロアルキル基としては、パーフルオロアルキル基(CF(CF)g基(gは1〜9の整数を示す))を代表例として挙げることができるが、これに限定されないことは言うまでもない。
例えば、主骨格をフルオロアルキル基とし、フッ素原子、炭素原子、水素原子以外の他の原子、代表的には、酸素原子のようなヘテロ原子を含む官能基を含む修飾フルオロアルキル基とすることもできる。具体的には、エーテル結合を含むような含酸素フルオロアルキル基であるフルオロエーテル基(C(OCF(CF)CF)fOC(CF)F基(fは0〜3の整数を示す))などを挙げることができる。
【0020】
また、R’はそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基を示し、XはOH基、NCO基、NH基、NHR基(R:アルキル基)、COY基(Y:親水基)又はO=C−OY(Y:親水基)から成る親水基を示す。
なお、上記において、Yで示される親水基としては、例えば修飾又は非修飾のカルボキシル基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、アミノ基(一級〜三級)、四級アンモニウム塩基、イソシアネート、ヒドロキシル基(OH基)、モルホリン基(CON基)、ジメチルアミノ基((CHN基)、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)アミノ基(CHC(O)CHC(CHNH基)、スルホン基(SOH基)などを挙げることができる。
【0021】
そして、nは1〜10の整数を示し、mはn以下の整数を示す。
【0022】
上記式(2)〜(4)中におけるBは、酸素原子、O=C−O、O=C−OY(Y:親水基)、NH−C=O又はNR−C=O(R:アルキル基)を表し、式(3)及び(4)中におけるEは、Bと同一でも異なっていてもよく酸素原子、O=C−O、NH−C=O又はNR−C=O(R:アルキル基)を示す。
【0023】
また、上記式(3)中におけるGは、[(CHO)l−[Si(CHO]k−(CHO)l]、(CF)j又は(CFO)hを示し、ここでkは、1〜500の整数、lは、0〜10の整数、j及びhはそれぞれ1〜20の整数を表す。
【0024】
そして、式(4)中におけるLは、[(CHO)l−[Si(CHO]k−(CHO)l]−α、(CF)j−α又は(CFO)h−αを示し、この場合、αはXと同一でも異なっていてもよくCOY基(Y:親水基)、NCO基、NH基、NHR基(R:アルキル基)、R基(アルキル基)、OH基又は水素原子を表す。また、k、l、j及びhは、式(3)と同様の整数を意味する。
【0025】
上記各式(1)〜(4)で示されるオリゴマーやオリゴマー複合体においては、その鎖状オリゴマー部位、すなわちXやBを含み、シリカネットワーク部位を含まない直鎖状部分の分子量が252〜100,000の範囲であることが望ましい。すなわち、当該鎖状オリゴマー部位の分子量が252未満、あるいは100,000を超えた場合には、当該オリゴマーやオリゴマー複合体による撥水性−親水性のスイッチング作用が十分に得られないことがあることによる。
【0026】
本発明のワックスにおいては、親水基と疎水基とを併せ持つ上記オリゴマーやオリゴマー複合体をワックス固形分に対して、質量比で0.05〜50%の割合、より好ましくは1〜15%、さらに好ましくは3〜10%の割合で含有していることが望ましい。
すなわち、上記オリゴマーやオリゴマー複合体の添加量が0.05%に満たない場合には、撥水性−親水性のスイッチング機能が十分に発現せず、逆に50%を超えた場合には、添加されたオリゴマーやオリゴマー複合体の凝集によって、ワックス膜の平滑性が損なわれ、外観が低下する可能性があることによる。
【0027】
本発明のワックスは、透明ワックス、あるいは顔料を含んだ着色ワックスであって、固体タイプ、半練りタイプ、液体タイプとすることができ、天然ワックスであっても、合成ワックスであっても良い。例えば、カルナバワックス、木ろう、蜜蝋、アミド系ワックスなどを挙げることができる。
このとき、ふっ素系溶剤を用い、上記オリゴマーやオリゴマー複合体を予めこのふっ素系溶剤で溶解することによって、当該オリゴマーやオリゴマー複合体をワックス中に高度に分散させることができ、より平滑なワックス膜を形成することができるようになる。
【0028】
このようにして得られた本発明のワックス膜においては、親水基と疎水基とを併せ持つオリゴマーやオリゴマー複合体が含まれており、含水液滴と接触しない基底状態においては、その疎水基がワックス膜の表面側に配向する。一方、含水液滴と接触した接液状態では、これらオリゴマーやオリゴマー複合体の親水基がワックス膜の表面側に配向する結果、ワックス膜の表面が親水性と疎水性とに切り替わることになり、当該ワックス膜は、疎水性による撥水性と、親水性による防汚・易洗浄性を兼ね備えたものとなる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本発明は、これら実施例によって限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
式(1)に相当する構造を有し、その鎖状オリゴマー部位の分子量が異なる3種類のオリゴマーを用意し、IPA(イソプロピルアルコール)中に、各オリゴマーがそれぞれ10%となるように溶解した。
次いで、クリンビュー製液体ワックス(ニューボディークリン、ホワイトリキッド)に、上記により得られた各オリゴマー溶液を、各オリゴマーのワックス固形分に対する割合が表1に示す値となるように撹拌しながら混合し、都合7種類のワックスを調整した。
【0031】
なお、上記オリゴマーの具体的構造としては、次の(5)式に示すものとし、nを変化させることによって3種類の分子量となるように調整した。
【化9】

【0032】
〔ワックス膜の形成〕
りん酸亜鉛処理した幅70mm×長さ150mm×厚さ0.8mmのダル鋼板に、カチオン電着塗料(日本ペイント製商品名「パワートップU600M」)を用いて、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装した後、160℃で30分間焼き付け処理した。その後、日本ペイント製白色中塗り塗料(OP61M)を20μm塗装し、140℃で30分間焼き付けた。
次に、日本ペイント製白色ベースコート(スーパーラックM180)を10μmスプレー塗装したのち、ウエットオンウエットで、日本ペイント製クリヤー塗料(スーパーラックO−80)を30μmスプレー塗装したのち、140℃で30分間焼き付けた。
【0033】
このようにして得られた積層塗膜の表面上に、上記によって調整した本発明のワックス1.0gを乗せ、このワックスが均一になるようにネル布で数回引き伸ばしたのち、乾いたネル布によって拭取った。
【0034】
〔ワックス膜の評価方法〕
上記によって得られたワックス膜について、ワックス拭取り性、撥水−親水スイッチング性及び防汚性を下記要領によって評価した。この結果を表1に併せて示す。なお、表中の比較例としては、上記のようなオリゴマーを添加することなく、上記のクリンビュー製液体ワックスをそのまま、同様に塗布することによってられたワックス膜についての結果を示した。
【0035】
〔1〕ワックス拭取り性
上記積層塗膜の表面上に引き伸ばしたワックスを乾いたネル布で拭取るに際して、通常のワックスより容易に拭取り可能なものを「○」、通常のワックスと同等なものを「△」、通常のワックスよりも拭取りが困難なものを「×」と評価した。
【0036】
〔2〕撥水−親水スイッチング性
5μLのイオン交換水を静的に積層塗膜上のワックス膜上に滴下し、接触角測定機(株式会社アタゴ製「DR−M4/1550」)によって水滴の接触角θを1分毎に、20分まで測定した。さらに、水滴周囲を油性マジックでマーキングした後、80℃×5分間乾燥させた後、マーキング内側に、再度、同様に水滴を滴下し、水滴接触角θを同様に1分毎に20分まで測定した。
そして、乾燥前における最初の測定結果について、イオン交換水を滴下して30秒後の接触角θが70°以上であって、20分後の接触角θが5°以下の場合を「◎」、5°を超え20°以下の場合を「○」、20°を超え40°以下の場合を「△」、40°を超える場合を「×」と評価した。
【0037】
〔3〕防汚性
カーボンブラックに代表される泥成分を含んだ試験水を積層塗膜表面のワックス膜上にスプレー噴霧した後、乾燥させるサイクルを繰り返して汚れを付着させた後、スチーム洗浄機による高圧温水を試験片に噴霧し、汚れを除去した。そして、洗浄前後の明度差を色差計(村上色彩技術研究所製「ゴニオスペクトルメーターGSP−2」)にて測定した。
測定結果については、洗浄前後の明度差が3に満たない場合を「◎」、3以上10未満の場合を「○」、10以上15未満の場合を「△」、15を超える場合を「×」と評価した。
【0038】
【表1】

【0039】
表1の結果から明らかなように、式(1)に示すように疎水基と親水基とを併せ持つオリゴマーを含有する発明例のワックスにより得られたワックス膜においては、撥水−親水スイッチング機能が発現し、このようなオリゴマーを含有しない比較例ワックスによる膜に較べて、優れた防汚性能を示すことが確認された。
なお、図2は、代表例として発明例1のワックスによるワックス膜上に滴下された水滴の接触角の時間的推移、すなわち撥水−親水スイッチング機能を上記比較例と対比して示すグラフである。
【0040】
(実施例2)
実施例1に用いた上記3種類のオリゴマーが、同様の混合溶液中に同様の濃度で溶解されたオリゴマー溶液を調整し、当該オリゴマー溶液1.83gを撹拌しながら、これに日産化学製コロイダルシリカ(粒径10nm)70%メタノール溶液1.22gを加えた。さらに関東化学製テトラエトキシシラン(TEOS)0.46gを添加して撹拌し、その後0.2Nアンモニア水0.31gを添加し、式(2)で示す構造を有するオリゴマー複合体の溶液を得た。
次いで、こうして得られた各オリゴマー溶液を、クリンビュー製液体ワックス(ニューボディークリン、ホワイトリキッド)に、各オリゴマーのワックス固形分に対する割合が表2に示す値となるように撹拌しながら混合し、都合7種類(発明例8〜14)のワックスを調整した。
【0041】
次に、りん酸亜鉛処理した上記ダル鋼板に、上記実施例と同様に、電着塗装、白色中塗り塗装、白色ベースコート、クリヤー塗装を施して成る積層塗膜の表面に、各ワックスを塗布したのち、同様に拭取り、得られたワックス膜について、ワックス拭取り性、撥水−親水スイッチング性及び防汚性を上記同様の方法によって評価した。この結果を表2に併せて示す。
【0042】
【表2】

【0043】
表2の結果から明らかなように、疎水基と親水基とを併せ持つオリゴマー複合体を含有する各発明例のワックスにより得られたワックス膜においては、上記実施例1による結果と同様に、撥水−親水スイッチング機能を示し、優れた防汚性能を発揮することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】疎水基と親水基を併有するオリゴマーのワックス膜中における挙動を説明する模式図である。
【図2】本発明のワックスによるワックス膜上に滴下された水滴の接触角の時間的推移を比較例と対比して示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水基と疎水基を併有するオリゴマー及び/又はオリゴマー複合体を含むことを特徴とするワックス。
【請求項2】
上記オリゴマーが、次式(1)で表される構造を有することを特徴とする請求項1に記載のワックス。
【化1】

(式中のRは炭素数2〜10個で分子量119〜1000の修飾又は非修飾のフロオロアルキル基から成る疎水基、R’はそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基、Xはそれぞれ独立してOH基、NCO基、NH基、NHR基(R:アルキル基)COY基(Y:親水基)又はO=C−OY(Y:親水基)から成る親水基、nは1〜10の整数、mはn以下の整数を示す)
【請求項3】
上記オリゴマー複合体が、次式(2)で表される構造を有することを特徴とする請求項1に記載のワックス。
【化2】

(式中のRは炭素数2〜10個で分子量119〜1000の修飾又は非修飾のフロオロアルキル基から成る疎水基、R’はそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基、XはOH基、NCO基、NH基、NHR基(R:アルキル基)COY基(Y:親水基)又はO=C−OY(Y:親水基)から成る親水基、Bは酸素原子、O=C−O基、O=C−OY(Y:親水基)、NH−C=O基又はR−C=O基(R:アルキル基)、nは1〜10の整数、mはn以下の整数を示す)
【請求項4】
上記オリゴマー複合体が、次式(3)で表される構造を有することを特徴とする請求項1に記載のワックス。
【化3】

(式中のRは炭素数2〜10個で分子量119〜1000の修飾又は非修飾のフロオロアルキル基から成る疎水基、R’はそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基、XはOH基、NCO基、NH基、NHR基(R:アルキル基)COY基(Y:親水基)又はO=C−OY(Y:親水基)から成る親水基、Bは酸素原子、O=C−O基、O=C−OY(Y:親水基)、NH−C=O基又はNR−C=O基(R:アルキル基)、EはBと同一でも異なっていてもよくそれぞれ独立して酸素原子、O=C−O、NH−C=O又はNR−C=O(R:アルキル基)、Gは[(CHO)l−[Si(CHO]k−(CHO)l]、(CF)j又は(CFO)h、nは1〜10の整数、mはn以下の整数、kは1〜500の整数、lは0〜10の整数、jは0〜20の整数、hは1〜20の整数を示す)
【請求項5】
上記オリゴマー複合体が、次式(4)で表される構造を有することを特徴とする請求項1に記載のワックス。
【化4】

(式中のRは炭素数2〜10個で分子量119〜1000の修飾又は非修飾のフロオロアルキル基から成る疎水基、R’はそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基、XはOH基、NCO基、NH基、NHR基(R:アルキル基)COY基(Y:親水基)又はO=C−OY(Y:親水基)から成る親水基、Bは酸素原子、O=C−O、O=C−OY(Y:親水基)、NH−C=O又はNR−C=O(R:アルキル基)、EはBと同一でも異なっていてもよく酸素原子、O=C−O、NH−C=O又はNR−C=O(R:アルキル基)、Lは[(CHO)l−[Si(CHO]k−(CHO)l]−α、(CF)j−α又は(CFO)h−αを示し、この場合、αはXと同一でも異なっていてもよくCOY基(親水基)、NCO基、NH基、NHR基(R:アルキル基)、R基(アルキル基)、OH基又は水素原子、nは1〜10の整数、mはn以下の整数、kは1〜500の整数、lは0〜10の整数、jは0〜20の整数、hは1〜20の整数を示す)
【請求項6】
上記(1)〜(4)のいずれか1つの式で表されるオリゴマー又はオリゴマー複合体において、鎖状オリゴマー部位の分子量が252〜100,000であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つの項に記載のワックス。
【請求項7】
上記オリゴマー及び/又はオリゴマー複合体を、ワックス固形分に対して0.05〜50質量%の割合で含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載のワックス。
【請求項8】
固体、液体、半練り、又はエマルションタイプであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つの項に記載のワックス。
【請求項9】
透明ワックス又は顔料を含んだ着色ワックスであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つの項に記載のワックス。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか1つの項に記載のオリゴマー及び/又はオリゴマー複合体を含むワックス膜であって、
上記オリゴマー及び/又はオリゴマー複合体は、含水液滴と接触しない基底状態において、その疎水基がワックス膜表面に配向する一方、含水液滴と接触した接液状態においては、その親水基が上記ワックス膜表面に配向し、上記基底状態と接液状態とに可逆的に切り替わることを特徴とするワックス膜。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−280696(P2009−280696A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134026(P2008−134026)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】