説明

ワックス性質を持つバインダー樹脂を含むトナー及びその製造方法

ワックス性質を持つ樹脂を含むトナー及びその製造方法が開示される。開示されたトナーは、炭素数8〜60の高級脂肪酸成分及び炭素数8〜60の高級アルコール成分のうち、少なくとも一つの成分がエステル化反応により導入されたバインダー樹脂、着色剤及び少なくとも一つの添加剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー及びその製造方法に係り、より詳細には、ワックス性質を持つバインダー樹脂を含むトナー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷市場で高速印刷に適したトナー、特に、低温定着性と高温保管安定性とを同時に確保できるトナーへの要求が増大しつつある。
【0003】
一般的に、トナーは、バインダー樹脂として作用する熱可塑性樹脂に着色剤、帯電制御剤、染料、顔料、及び/またはワックスなどを添加することによって製造される。また、トナーに流動性を付与するか、あるいは帯電制御またはクリーニング性などの物性を向上させるために、シリカや酸化チタンなどの無機金属微粉末が外添剤としてトナーに添加されうる。
【0004】
かかるトナーの製造方法は、一般的にワックス−樹脂分散液を製造する工程を含む。
【0005】
ワックス−樹脂分散液は、ワックス乳化技術を利用して製造されうる。
【0006】
ワックス乳化技術としては、ホモミキサーや高圧ホモジナイザーなどの機械力によりワックスのエマルジョンを製造する方法が知られている(特開第2002−308994号公報)。前記方法は、500〜1,000kg/cmの高圧でワックスの乳化を進めることによって、過多なエネルギーコストが発生するという問題点がある。
【0007】
ワックスと樹脂とを有機溶媒に溶かして混合溶液を製造し、前記混合溶液を水などの極性溶媒に分散させてワックス−樹脂分散液を製造できる。かかるワックス−樹脂分散液では、樹脂がワックスの表面を包むようになって分散されたワックスの安定性及び耐久性などが向上するが、ワックスの含有量が所定の基準値を超過すれば、かかるワックスが樹脂内に存在せずに外部に抜け出るという問題点がある。
【0008】
以上のように、ワックス−樹脂分散液は多様な応用が可能であるが、これまで開発された技術は、ワックス−樹脂分散液の製造に過多なエネルギーを要求するなどの問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一具現例は、外部からワックスを全く添加しなくてもトナーにワックスの性質を付与できるトナー及びその製造方法を提供する。
【0010】
本発明の他の具現例は、コストダウンできるトナー及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面は、炭素数8〜60の高級脂肪酸成分、及び炭素数8〜60の高級アルコール成分のうち少なくとも一つの成分がエステル化反応により導入されたバインダー樹脂と、着色剤と、少なくとも一つの添加剤とを含むトナーを提供する。
【0012】
本発明の他の側面は、(a)分散媒を製造する工程と、(b)前記分散媒内に、炭素数8〜60の高級脂肪酸成分、及び炭素数8〜60の高級アルコール成分のうち少なくとも一つの成分がエステル化反応により導入されたバインダー樹脂、着色剤、及び少なくとも一つの添加剤を投入してトナー懸濁液を形成する工程と、(c)前記形成されたトナー懸濁液から有機溶剤を除去してトナー混合液を形成する工程と、を含むトナーの製造方法を提供する。
【0013】
前記バインダー樹脂は、ポリエステル樹脂に、前記高級脂肪酸成分及び高級アルコール成分のうち少なくとも一つの成分をエステル化反応により導入することによって製造されうる。
【0014】
前記ポリエステル樹脂は、酸成分及びジオール成分を重縮合反応させて製造されうる。
【0015】
前記高級脂肪酸成分及び前記高級アルコール成分の総含有量は、前記高級脂肪酸成分及び高級アルコール成分のうち少なくとも一つの成分が導入されたバインダー樹脂の総重量に対して1〜50重量%でありうる。
【0016】
前記着色剤は、着色顔料マスターバッチでありうる。
【0017】
前記着色顔料マスターバッチは、炭素数8〜60の高級脂肪酸成分、及び炭素数8〜60の高級アルコール成分のうち少なくとも一つの成分がエステル化反応により導入された樹脂、及び前記樹脂に分散された着色顔料を含みうる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の望ましい具現例によるトナー及びその製造方法について詳細に説明する。
【0019】
本発明の一具現例によるトナーは、炭素数8〜60、例えば、10〜55または12〜50の高級脂肪酸成分、及び炭素数8〜60、例えば、10〜55または12〜50の高級アルコール成分のうち少なくとも一つの成分がエステル化反応により導入されたバインダー樹脂と、着色剤及び少なくとも一つの添加剤とを含む。
【0020】
前記バインダー樹脂は、例えば、ポリエステル樹脂を含むことができる。
【0021】
前記ポリエステル樹脂は、2価の酸成分(二塩基酸成分)及びジオール成分などを重縮合反応させて製造できる。
【0022】
前記2価の酸成分としては、例えば、テレフタル酸またはイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;フタル酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、またはアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸;及びこれらの低級アルキルエステルまたは酸無水物などが使われうる。前記低級アルキルエステルとしては、モノメチルエステル、エチルエステル、ジメチルエステル、及びジエチルエステルなどが使われうる。これらのうち、芳香族ジカルボン酸は、ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)及び強度を増大させ、最終製品の耐ブロッキング性を向上させ、それが持つ疎水性のために耐水性を向上させることも可能である。
【0023】
前記ジオール成分としては、例えば、脂肪族ジオール成分及び/または芳香族ジオール成分が使われうる。前記脂肪族ジオール成分としては、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、及び/または水添ビスフェノールAなどが使われうる。前記芳香族ジオール成分としては、ポリオキシエチレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(2.8)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン−(3.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどの酸化エチレンを付加したビスフェノールA誘導体;ポリオキシプロピレン−(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(2.8)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン−(3.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどの酸化プロピレンを付加したビスフェノールA誘導体などが使われうる。
【0024】
前記脂肪族ジオール成分は、バインダー樹脂の重縮合反応速度を向上させるためのものである。かかる脂肪族ジオール成分の使用量は特別に制限されず、使用目的に合わせて適宜に選択されうる。
【0025】
前記芳香族ジオール成分は、ポリエステル樹脂のガラス転移温度及び樹脂強度を増大させ、ポリエステル樹脂の低分子量成分を減少させつつ最終製品の耐ブロッキング性などを向上させ、樹脂の反応性を制御するためのものである。かかる芳香族ジオール成分の使用量は特別に制限されず、使用目的に合わせて適宜に選択されうる。
【0026】
また、前記ポリエステル樹脂を構成する成分として、必要に応じて3価以上のカルボン酸及び/または3価以上の多価アルコール成分を使用できる。3価以上の多価カルボン酸及び/または3価以上の多価アルコール成分は、ポリエステル樹脂に強度を付与して分子量や分子量分布を調節しながら、最終製品の物性(例えば、トナーの定着性など)を向上させることができる。
【0027】
前記3価以上の多価カルボン酸としては、例えば、トリメリット酸、ピロメリット酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−へキサントリカルボン酸、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、またはこれらの酸無水物などが使われうる。
【0028】
前記3価以上の多価アルコールとしては、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−へキサンテトラオール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタトリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンなどが使われうる。これらのうち、例えば、トリメリット酸またはその酸無水物、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンなどが使われうる。
【0029】
かかる3価以上の多価カルボン酸及び/または3価以上の多価アルコール成分は、単独または2種以上が組み合わせられて使われうる。前記3価以上の多価カルボン酸及び/または3価以上の多価アルコール成分の使用量は、特別に制限されず、使用目的に合わせて適宜に選択されうる。
【0030】
また本発明において、ポリエステル樹脂の特性を損なわせない限り、前記以外のモノマーを使用してもよい。
【0031】
本発明の一具現例によるトナーの製造に使われるバインダー樹脂の酸価は3〜100mgKOH/gでありうる。前記酸価が3mgKOH/g未満ならば、分散液の製造が容易でなく、100mgKOH/gを超過する場合には、製造された分散液を使用して製造した最終製品の環境安定性が低下して、耐ブロッキング性、耐水性、密着性などの低下を誘発する恐れがある。前記酸価は、例えば、5〜80mgKOH/gでありうる。
【0032】
前記高級脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リシノレイン酸、
リノール酸、アラキジン酸、アラキドン酸、トリコサン酸、エルカ酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、及びネルボン酸などが使われうる。
【0033】
前記高級アルコールとしては、イソステアリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、及びラウリルアルコールなどが使われうる。
【0034】
前記高級脂肪酸及び高級アルコールの炭素数が8未満である場合には、これらをエステル化反応により前記バインダー樹脂に導入するとしても、前記バインダー樹脂の耐久性を低下させて保管安定性を劣化させるので、ワックスの役割を担うには不十分であり、炭素数が60を超過する場合には、これらを、エステル化反応を通じて前記バインダー樹脂に導入し難く、導入するとしても分散液の製造時に分散された粒径が大きく、粒径分布が悪くなりうる。前記高級脂肪酸成分及び前記高級アルコール成分の総含有量は、前記高級脂肪酸成分及び高級アルコール成分のうち少なくとも一つの成分が導入されたバインダー樹脂の総重量に対して1〜50重量%でありうる。前記含有量が1重量%未満ならば、分散された粒子がワックスの役割を担うには不十分であり、50重量%を超過すれば、バインダー樹脂の融点が低くなってバインダー樹脂の耐久性が低下し、分散液の製造時に分散された粒径が大きくて粒径分布が悪くなりうる。
【0035】
前記着色剤は、着色顔料そのものとして使われうるが、着色顔料が樹脂内に分散された着色顔料マスターバッチ形態として使われてもよい。このようにマスターバッチ形態として使用することによって、着色剤の表面露出を抑制してトナー粒子の帯電性能を向上させることができる。
【0036】
着色顔料マスターバッチに使われる樹脂としては、前述した炭素数8〜60の高級脂肪酸成分、及び炭素数8〜60の高級アルコール成分のうち少なくとも一つの成分がエステル化反応により導入された樹脂が使われてもよく、この他に、他の任意の公知の樹脂が使われてもよい。前記バインダー樹脂が、高級脂肪酸成分が導入された樹脂である場合には、着色顔料マスターバッチに使用する樹脂として、高級脂肪酸成分が導入された樹脂を使用できる。また、前記バインダー樹脂が、高級アルコール成分が導入された樹脂の場合には、着色顔料マスターバッチに使用する樹脂として高級アルコール成分が導入された樹脂を使用できる。また、前記バインダー樹脂が高級脂肪酸成分及び高級アルコール成分がいずれも導入された樹脂の場合には、着色顔料マスターバッチに使用する樹脂として高級脂肪酸成分及び高級アルコール成分がいずれも導入された樹脂を使用できる。着色顔料マスターバッチは、着色顔料が均一に分散された樹脂組成物をいい、これは、高温高圧下で着色顔料及び樹脂を混練するか、または樹脂を溶剤に溶解し、前記形成された溶液に着色顔料を添加した後、高いせん断力を加えて着色顔料を分散させる方法により製造されうる。本発明の一具現例によるトナーの製造に使用する着色顔料マスターバッチにおいて、着色顔料の含有量は、着色顔料マスターバッチ100重量部に対して10ないし70重量部、例えば、20ないし50重量部でありうる。前記含有量が10重量部未満ならば、製造されたトナーの顔料含有量が少なくて所望の色再現ができず、70重量部を超過すれば、マスターバッチ内の顔料分散が不均一となる可能性が高い。
前記着色顔料は、商業的によく使われる顔料であるブラック顔料、シアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料及びこれらの混合物から適宜に選択されて使われうる。
【0037】
かかる顔料の種類としては、下記の例を挙げることができる。すなわち、ブラック顔料には、酸化チタンまたはカーボンブラックなどが使われうる。シアン顔料には、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキン化合物、または塩基染料レート化合物などが使われうる。具体的にC.I.顔料ブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、または66などが使われうる。マゼンタ顔料には、縮合窒素化合物、アントラキン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レート化合物、ナフトール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、チオインジゴ化合物、またはペリレン化合物などが使われうる。具体的に、C.I.顔料レッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、または254などが使われうる。イエロー顔料としては、縮合窒素化合物、イソインドリノン化合物、アントラキン化合物、アゾ金属錯体、またはアリルイミド化合物などが使われうる。具体的に、C.I.顔料イエロー12、13、14、17、62、74、83、93、94、95、109、110、111、128、129、147、または168などが使われうる。
【0038】
前記着色剤の含有量は、トナーを着色して現像により可視画像を形成するのに十分な程度ならばよいが、例えば、樹脂100重量部を基準として3ないし15重量部でありうる。前記含有量が3重量部未満ならば、着色効果が不十分であり、15重量部を超過すれば、トナーの電気抵抗が低くなるため、十分な摩擦帯電量を得られなくて汚染を発生させる。
【0039】
一方、添加剤は、帯電制御剤、中和剤、増粘剤、またはこれらの混合物を含むことができる。
【0040】
帯電制御剤としては、負帯電性帯電制御剤及び正帯電性帯電制御剤がいずれも使われ、負帯電性帯電制御剤としては、クロム含有アゾ錯体またはモノアゾ金属錯体のような有機金属錯体またはキレート化合物;クロム、鉄、亜鉛などの金属含有サリチル酸化合物;及び芳香族ヒドロキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸との有機金属錯体が使われ、特別に制限されない。また、正帯電性帯電制御剤としては、ニグロシンとその脂肪酸金属塩などで改質された生成物、トリブチルベンジルアンモニウム1−ヒドロキシ−4−ナフトスルホン酸及びテトラブチルアンモニウムテトラフルオロホウ酸などの4級アンモニウム塩を含むオニウム塩などが単独、または2種以上混合されて使われうる。これらの帯電制御剤は、静電気力によりトナーを安定的に速い速度で帯電させて、前記トナーを現像ロール上に安定して支持させる。
【0041】
トナーに含まれる帯電制御剤の含有量は、トナー組成物100重量部に対して0.1重量部ないし10重量部の範囲以内でありうる。前記帯電制御剤の含有量が0.1重量部未満である場合には、トナーの帯電速度が遅く帯電量が多くなくて、帯電制御剤としての機能を発現するには足りなく、10重量部を超過する場合には、過度に帯電量が多くなって画像に歪曲が発生しうるという問題点がある。
【0042】
前記バインダー樹脂が酸基を持つ場合、酸基の中和に使用する塩基、すなわち、中和剤が使われうるが、かかる中和剤としては、例えば、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属の水酸化物;ナトリウム、カルシウム、リチウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;アルカリ金属の酢酸塩;アンモニア水、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン類などが使われうる。これらのうち、例えば、アルカリ金属の水酸化物が使われうる。
【0043】
前記中和剤の量は、酸基の1g当量に対して0.1〜3.0g当量、例えば、0.5〜2.0g当量でありうる。
【0044】
前記増粘剤はポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ゼラチン、キト酸及びアルギン酸ナトリウムなどから選択された1種以上であり、例えば、ポリビニルアルコールでありうる。
【0045】
また、前記添加剤は、高級脂肪酸や脂肪酸アミド、またはその金属塩などをさらに含むことができる。かかる高級脂肪酸、脂肪酸アミド、及びその金属塩は、現像特性の劣化を防止して高品質の画像を得るために適宜に使われうる。
【0046】
一方、前記トナーには外添剤がさらに添加されうる。外添剤は、トナーの流動性を向上させるか、または帯電特性を調節するためのものであって、大粒径シリカ、小粒径シリカ、及びポリマービーズを含むことができる。
【0047】
以下、前記バインダー樹脂としてポリエステル樹脂が使われる場合、高級脂肪酸成分及び/または高級アルコール成分が導入されたバインダー樹脂を含むトナーの製造方法について具体的に説明する。
【0048】
高級脂肪酸成分及び/または高級アルコール成分が導入されたポリエステル樹脂の製造
前述した酸成分及びジオール成分を反応器に投入した後、ジブチル酸化スズのような触媒をさらに投入する。次いで、反応器の内容物を攪拌しつつ反応器の温度を適正温度に高めて重縮合反応を進める。次いで、例えば、蒸留法により減圧下で、重縮合反応時に生成された副反応物を除去する。次いで、前述した高級脂肪酸成分及び/または高級アルコール成分を反応器にさらに投入し、反応器の内容物を攪拌しつつ加熱して、適正反応温度で前記樹脂とのエステル化反応を進めて、高級脂肪酸及び/または高級アルコール残基が導入されたバインダー樹脂を得る。しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、酸成分、ジオール成分、高級脂肪酸成分及び/または高級アルコール成分を反応器に同時に投入してエステル化反応及び重縮合反応させることによって、ワックス性質を持つポリエステル樹脂を製造してもよい。
【0049】
前記のように製造された高級脂肪酸成分及び/または高級アルコール成分が導入されたポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂の水酸基と脂肪酸/アルコールの酸基とが反応して形成されたエステル結合を備えるようになり、前記エステル結合がワックスの性質を発現させて、前記樹脂がワックスとして機能する。したがって、ワックス−樹脂分散液の製造時に別途のワックスが不要である。また、前記エステル結合は前記樹脂と一体化しているので、別途のワックスを多量添加してトナーなどの最終製品を製造する従来技術のように、ワックスが樹脂の表面に露出されて発生しうる耐ブロッキング性及び耐久性低下などの問題点を低減させることができる。
【0050】
分散媒の製造
反応器内に極性溶媒、界面活性剤、及び選択的に有機溶剤、中和剤及び/または増粘剤などを投入した後、攪拌させて分散媒を製造する。前記有機溶剤は、反応器内に投入された中和剤などの固形粉が前記極性溶媒に完全に溶解された後で投入されうる。前記分散媒の製造時に温度、圧力、及び攪拌速度は特別に制限されない。
【0051】
前記極性溶媒としては、水、グリセロール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、及びソルビトールから選択された1種以上が使われ、例えば、水が使われうる。
【0052】
前記界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、及び陽性界面活性剤から選択された1種以上が使われうる。
【0053】
前記非イオン性界面活性剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンノリルフェニルエーテル、エトキシレート、ホスファートノリルフェノール、トリトン、ジアルキルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールなどが使われ、陰イオン性界面活性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルナフタレン硫酸ナトリウム、ジアルキルベンゼンアルキル硫酸塩、スルホン酸塩などが使われ、陽イオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンジメチル塩化アンモニウム、アルキルトリメチル塩化アンモニウム、ジステアリール塩化アンモニウムなどが使われ、陽性界面活性剤としては、アミノ酸型陽性界面活性剤、ベタイン系陽性界面活性剤、レシチン、タウリンなどが使われうる。
【0054】
前述した界面活性剤は単独または2種以上が一定割合で混合されて使われうる。
【0055】
前記有機溶剤は揮発性で、前記極性溶媒より低い沸点を持って極性溶媒と混和されないものであって、例えば、メチルアセテートやエチルアセテートのようなエステル系;アセトンやメチルエチルケトンのようなケトン系;ジクロロメタンやトリクロロエタンのような炭化水素系;及びベンゼンのような芳香族炭化水素系などから選択された1種以上でありうる。
【0056】
高級脂肪酸成分及び/または高級アルコール成分が導入されたバインダー樹脂を含むトナー粒子の製造
分散媒が充填されている前記反応器に、前述した高級脂肪酸成分及び/または高級アルコール成分が導入されたバインダー樹脂、着色剤、及び帯電制御剤を順次に投入した後、反応器内容物を適正速度で攪拌しながら、還流状態で適宜な反応温度で適当な時間よく混合してトナー懸濁液を形成する。このように、前記高級脂肪酸成分及び/または高級アルコール成分が導入されたポリエステル樹脂を使用すれば、既存の高圧ホモジナイザーなどを使用しなくても体積平均粒径が4〜20μmであり、80%スパン値が0.9以下である、ワックスの性質を持つ樹脂を含むトナー懸濁液を製造できる。したがって、トナー懸濁液のコストを削減することができる。
【0057】
次いで、前記トナー懸濁液から有機溶剤を除去してトナー混合液を形成した後、前記反応器の温度を常温に冷却する。
【0058】
次いで、通常のろ過装置を利用して前記トナー混合液からトナー粒子を分離させた後、分離されたトナー粒子を洗浄して界面活性剤などの不純物をいずれも除去する。
【0059】
次いで、洗浄が完了したトナー粒子を乾燥し、乾燥されたトナー粒子を得る。
【0060】
前記製造方法に要求される攪拌速度、攪拌時間、反応温度、反応時間、及び有機溶剤除去条件などは、使われる酸/ジオール/脂肪酸/高級アルコールなどの反応物種類、使われる溶剤の種類などによって多様に変化できるという事実は、当業者に明らかであろう。
【0061】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0062】
<実施例>
(バインダー樹脂の製造)
製造例1:高級脂肪酸が導入されたポリエステル樹脂1の製造
攪拌器、温度計、及びコンデンサーが設けられた体積3Lの反応器を熱伝逹媒体であるオイル槽内に設けた。このように設けられた反応器内にいろいろなモノマー、すなわち、ジメチルテレフタレート50g、ジメチルイソフタレート47g、1,2−プロピレングリコール80g、及びトリメリット酸3gを投入し、触媒として、ジブチル酸化スズ0.09g(すなわち、モノマー全体重さに対して500ppm)をさらに投入した。次いで、150rpmの速度で反応器の内容物を攪拌しながら反応器の温度を150℃まで高めた。次いで、6時間反応を進めた後、反応器の温度を再び220℃まで高めた。次いで、副反応物を除去するために反応器を0.1torrに減圧し、前記圧力で15時間維持させた後、ステアリン酸20gを投入して220℃の温度で2時間攪拌しながらエステル化反応を進めて、高級脂肪酸が導入されたポリエステル樹脂1を得た。
【0063】
示差走査熱量計(DSC)を使用して前記製造されたポリエステル樹脂1のガラス転移温度(Tg)を測定した結果、その値は51℃であった。また、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を利用して(ポリスチレン基準試料を使用)前記ポリエステル樹脂1の数平均分子量及びPDIを測定した結果、その値は、それぞれ4,200及び3.5であった。また、滴定により前記ポリエステル樹脂1の酸価を測定した結果、その値は、14mgKOH/gであった。
【0064】
製造例2:高級脂肪酸が導入されたポリエステル樹脂2の製造
ステアリン酸の投入量を、20gの代りに120gに変更したことを除いては、製造例1と同じ方法で高級脂肪酸が導入されたポリエステル樹脂2を得た。
【0065】
前記製造されたポリエステル樹脂2のガラス転移温度(Tg)は42℃であり、数平均分子量は4,100であり、PDIは3.8であった。また、前記ポリエステル樹脂2の酸価は19mgKOH/gであった。
【0066】
製造例3:高級アルコールが導入されたポリエステル樹脂3の製造
ステアリン酸の代りにステアリルアルコールを投入したことを除いては、製造例1と同じ方法で高級アルコールが導入されたポリエステル樹脂3を得た。
【0067】
前記製造されたポリエステル樹脂3のガラス転移温度(Tg)は41℃であり、数平均分子量は4,000であり、PDIは3.7であった。また、前記ポリエステル樹脂3の酸価は10mgKOH/gであった。
【0068】
製造例4:高級脂肪酸及び高級アルコールが導入されたポリエステル樹脂4の製造
ステアリン酸20g代りにステアリン酸10g及びステアリルアルコール10gを投入したことを除いては、製造例1と同じ方法で高級脂肪酸及び高級アルコールが導入されたポリエステル樹脂4を得た。
【0069】
前記製造されたポリエステル樹脂4のガラス転移温度(Tg)は44℃であり、数平均分子量は4、200であり、PDIは3.5であった。また、前記ポリエステル樹脂4の酸価は12mgKOH/gであった。
【0070】
製造例5:高級脂肪酸及び高級アルコールが導入されていないポリエステル樹脂5の製造
ステアリン酸を投入しないことを除いては、製造例1と同じ方法でポリエステル樹脂5を得た。
前記製造されたポリエステル樹脂5のガラス転移温度(Tg)は60℃であり、数平均分子量は4,100であり、PDIは3.2であった。また、前記ポリエステル樹脂5の酸価は15mgKOH/gであった。
【0071】
(着色顔料マスターバッチの製造)
製造例6:シアン顔料マスターバッチ1の製造
製造例1で合成した高級脂肪酸が導入されたポリエステル樹脂1とブルー顔料(C.I.ピグメントブルー15:3、色指数(CI)No.74160、DIC社製品)を、重量基準として6:4の割合で混合した。次いで、ポリエステル樹脂100重量部に対してエチルアセテートを50重量部を添加し、前記混合物を約60℃に加熱した後、混練機で1時間混合した。次いで、前記混合物を真空装置が連結された二軸押出機を使用して50rpmの速度で混合しながら、真空装置を使用して溶媒であるエチルアセテートを除去することによって、シアン顔料マスターバッチを得た。
【0072】
製造例7:マゼンタ顔料マスターバッチの製造
製造例1で合成したポリエステル樹脂1とマゼンタ顔料(DIC社製品、Red122)とを、重量基準として6:4の割合で混合して使用したことを除いては、製造例6と同じ方法でマゼンタ顔料マスターバッチを製造した。
【0073】
製造例8:イエロー顔料マスターバッチの製造
製造例1で合成したポリエステル樹脂1とイエロー顔料(ドイツクラリアント社製品)とを、重量基準として6:4の割合で混合して使用したことを除いては、製造例6と同じ方法でイエロー顔料マスターバッチを製造した。
【0074】
製造例9:ブラック顔料マスターバッチの製造
製造例1で合成したポリエステル樹脂1とカーボンブラック顔料(ドイツのデグサ社製品、CB4)とを、重量基準として6:4の割合で混合して使用したことを除いては、製造例6と同じ方法でブラック顔料マスターバッチを製造した。
【0075】
製造例10:シアン顔料マスターバッチ2の製造
製造例1で合成したポリエステル樹脂1の代りに製造例2で合成したポリエステル樹脂2を使用したことを除いては、製造例6と同じ方法でシアン顔料マスターバッチ2を製造した。
【0076】
製造例11:シアン顔料マスターバッチ3の製造
製造例1で合成したポリエステル樹脂1の代りに製造例3で合成したポリエステル樹脂3を使用したことを除いては、製造例6と同じ方法でシアン顔料マスターバッチ3を製造した。
【0077】
製造例12:シアン顔料マスターバッチ4の製造
製造例1で合成したポリエステル樹脂1の代りに製造例4で合成したポリエステル樹脂4を使用したことを除いては、製造例6と同じ方法でシアン顔料マスターバッチ4を製造した。
【0078】
製造例13:シアン顔料マスターバッチ5の製造
製造例1で合成したポリエステル樹脂1の代りに製造例5で合成したポリエステル樹脂5を使用したことを除いては、製造例6と同じ方法でシアン顔料マスターバッチ5を製造した。
【0079】
(トナー粒子の製造)
実施例1
コンデンサー、温度計、及びインペラ型攪拌器が設けられて加圧の可能な体積1Lの反応器に、蒸溜水400g、ポリビニルアルコール(P−24:韓国のDC Chemical Co.製品)10g、及び陰イオン性界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム5g(米国のAldrich Chemical Company製品、)を投入し、70℃の温度で500rpmの攪拌速度で加熱及び攪拌して固形分を十分に溶解させた。結果として、分散媒を得た。前記分散媒内の固形分が完全に溶解されたことを確認した後、メチルエチルケトン(米国のAldrich Chemical Company製品)100gを投入して混合することによって、乳白色の液体組成物を得た。
【0080】
次いで、前記反応器に、製造例1で製造した高級脂肪酸が導入されたポリエステル樹脂160g、製造例6で製造したシアン顔料マスターバッチ140g、帯電制御剤2g(N−23;中国のHB Dinglong社製品)を順次に投入した後、1000rpmで攪拌しつつ還流状態で75℃の温度で5時間混合した。
【0081】
次いで、攪拌速度を300rpmに減速して反応器の温度を90℃に加熱しつつ100mmHgの減圧状態で、有機溶剤であるメチルエチルケトンを反応器から除去した後、コンデンサーを通じてこれを収集した。4時間経過後、収集されたメチルエチルケトンの量を確認して、添加されたメチルエチルケトンがいずれも除去されたことを確認した。次いで、反応器内の温度を60℃に冷却した。
【0082】
次いで、反応器内の温度を25℃に冷却し、通常のろ過装置を使用してトナー粒子を分離させた後、分離されたトナー粒子を1N塩酸水溶液で洗浄し、蒸溜水で5回再洗浄して界面活性剤などの不純物をいずれも除去した。次いで、洗浄が完了したトナー粒子を、流動層乾燥器で40℃の温度で5時間乾燥して、乾燥されたトナー粒子を得た。
【0083】
得られたトナー粒子を分析した結果、体積平均粒径は6.7μmであり、80%スパン値は0.55であり、円形度は0.982であった。
【0084】
実施例2
製造例6で得たシアン顔料マスターバッチ1の代りに製造例7で得たマゼンタ顔料マスターバッチを使用したことを除いては、実施例1と同じ方法でトナー粒子を製造した。
【0085】
得られたトナー粒子を分析した結果、体積平均粒径は6.8μmであり、80%スパン値は0.59であり、円形度は0.980であった。
【0086】
実施例3
製造例6で得たシアン顔料マスターバッチ1の代りに製造例8で得たイエロー顔料マスターバッチを使用したことを除いては、実施例1と同じ方法でトナー粒子を製造した。
【0087】
得られたトナー粒子を分析した結果、体積平均粒径は6.6μmであり、80%スパン値は0.61であり、円形度は0.978であった。
【0088】
実施例4
製造例6で得たシアン顔料マスターバッチ1の代りに製造例9で得たブラック顔料マスターバッチを使用したことを除いては、実施例1と同じ方法でトナー粒子を製造した。
【0089】
得られたトナー粒子を分析した結果、体積平均粒径は6.7μmであり、80%スパン値は0.56であり、円形度は0.982であった。
【0090】
実施例5
製造例1で得た高級脂肪酸が導入されたポリエステル樹脂1の代りに製造例2で得た高級脂肪酸が導入されたポリエステル樹脂2を使用し、製造例6で得たシアン顔料マスターバッチ1の代りに製造例10で得たシアン顔料マスターバッチ2を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法でトナー粒子を製造した。
【0091】
得られたトナー粒子を分析した結果、体積平均粒径は6.7μmであり、80%スパン値は0.59であり、円形度は0.989であった。
【0092】
実施例6
製造例1で得た高級脂肪酸が導入されたポリエステル樹脂1の代りに製造例3で得た高級アルコールが導入されたポリエステル樹脂3を使用し、製造例6で得たシアン顔料マスターバッチ1の代りに製造例11で得たシアン顔料マスターバッチ3を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法でトナー粒子を製造した。
【0093】
得られたトナー粒子を分析した結果、体積平均粒径は6.5μmであり、80%スパン値は0.61であり、円形度は0.979であった。
【0094】
実施例7
製造例1で得た高級脂肪酸が導入されたポリエステル樹脂1の代りに製造例4で得た高級脂肪酸及び高級アルコールが導入されたポリエステル樹脂4を使用し、製造例6で得られたシアン顔料マスターバッチ1の代りに製造例12で得たシアン顔料マスターバッチ4を使用するということを除いては、実施例1と同じ方法でトナー粒子を製造した。
【0095】
得られたトナー粒子を分析した結果、体積平均粒径は6.5μmであり、80%スパン値は0.62であり、円形度は0.975であった。
【0096】
比較例1
製造例1で得た高級脂肪酸が導入されたポリエステル樹脂1の代りに、製造例5で得た高級脂肪酸及び高級アルコールが導入されていないポリエステル樹脂5を使用し、製造例6で得たシアン顔料マスターバッチ1の代りに、製造例12で得たシアン顔料マスターバッチ4を使用し、帯電制御剤の投入後にカルナバワックス(SX−70;韓国のMax
Chemical製品)5gをさらに投入したことを除いては、実施例1と同じ方法でトナー粒子を製造した。
【0097】
得られたトナー粒子を分析した結果、体積平均粒径は6.5μmであり、80%スパン値は0.62であり、円形度は0.988であった。
【0098】
比較例2
カルナバワックスを投入しないことを除いては、比較例1と同じ方法でトナー粒子を製造した。
得られたトナー粒子を分析した結果、体積平均粒径は6.4μmであり、80%スパン値は0.61であり、円形度は0.981であった。
【0099】
前記製造例1〜5で製造したポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)及び酸価は、下記の方法で測定された。
【0100】
まず、ガラス転移温度(Tg、℃)は、示差走査熱量計(Netzsch社製品)を使用して、10℃/minの加熱速度で20℃から200℃まで昇温させた後、20℃/minの冷却速度で10℃まで急冷させた試料を再び10℃/minの加熱速度で昇温させて測定した。得られた吸熱曲線付近のベースラインとの各接線の中央値をガラス転移温度とした。
【0101】
酸価(mgKOH/g)は、樹脂をジクロロメタンに溶解させた後で冷却させて、0.1N KOHメチルアルコール溶液で滴定して測定した。
【0102】
評価例
以下、前記実施例及び比較例で製造したトナー粒子の物性を下記の方法で評価して、その結果を下記の表1に表した。
【0103】
前記実施例及び比較例で体積平均粒径は粒径測定装置(Coulter Multisizer3)で測定した。前記粒径測定装置において、開口(アパチャー)は100μmを利用し、電解液であるISOTON−II(Beckman Coulter社製造)50〜100mlに界面活性剤を適量添加し、これに測定試料10〜15mgを添加した後、超音波分散器で1分間分散処理することによって試料を製造した。
【0104】
また、80%スパン値は粒径分布を規定する指数であって、体積を基準に10%に該当する粒径、すなわち、粒径を測定して小粒子から体積を累積する場合、総体積の10%に該当する粒径をd10、50%に該当する粒径をd50、90%に該当する粒径をd90と定義し、下記の数式1によりその値を求めた。
【0105】
<数式1>
80%スパン値=(d90−d10)/d50
【0106】
ここで、80%スパン値が小さいほど狭い粒径分布を表し、大きいほど広い粒径分布を表す。
【0107】
また、円形度は、FPIA−3000(Sysmex社製品)を利用して測定した。FPIA−3000を利用した円形度の測定において、測定試料の製造は、蒸溜水50〜100mlに界面活性剤を適量添加し、これにトナー粒子10〜20mgを添加した後、超音波分散器で1分間分散処理することによって行われた。
【0108】
円形度は、下記の数式2によりFPIA−3000で自動的に求められる。
【0109】
<数式2>
円形度=2×(面積×π)1/2/周囲長
【0110】
前記式で面積(area)は、投影されたトナーの面積を意味し、周囲長(perimeter)は、投影されたトナーの周りの長さを意味する。この値は0〜1値を持つことができ、1に近いほど球形を意味する。
【0111】
(定着温度範囲)
前記各実施例または比較例で製造したトナー粒子9.75g、シリカ(TG 810G;米国のCabot社製品)0.2g、及びシリカ(RX50;ドイツのデグサ社製品)0.05gを混合して製造したトナー組成物を使用して、三星CLP−510プリンタで30mm×40mm固相の未定着画像を集めた。次いで、定着温度を任意に変更できるように改造された定着試験器で、定着ロールの温度を変化させながら前記未定着画像の定着性を評価した。ここで、定着性評価は次の通りである。すなわち、定着試験器を通過してから出た定着された画像上に3Mテープを50g/cmの圧力で押して付けた後、前記テープを再び徐々に剥がして、テープを付ける前とテープを付けてから剥がした後の画像濃度(ID)を測定し、後者の画像濃度(ID)を前者の画像濃度(ID)で割って得た、百分率80%以上の定着ロールの温度を定着温度範囲に含めた。
【0112】
前記画像濃度(ID)は、マクベス反射濃度計であるSpectroEye(スイスのGretagmacbeth社製品)で測定した。
【0113】
前記のような評価結果を下記の表1に示した。
【表1】

【0114】
前記表1を参照すれば、高級脂肪酸及び/または高級アルコールが導入されたポリエステル樹脂を使用して製造した本発明のトナー(実施例1〜7)は、ワックスを全く使用しなかったにもかかわらず、ポリエステル樹脂にワックスを含めて作ったトナー(比較例1)に比べて互いに類似したレベルの定着温度範囲を持ち、ワックスを含めていないトナー(比較例2)に比べては、顕著に広い定着温度範囲を持つと分かった。トナー粒子の体積平均粒径、80%スパン値、及び円形度は、実施例1〜7及び比較例1〜2のあらゆる場合において互いに類似していると分かった。
【0115】
以上、本発明による望ましい実施例が説明されたが、これは例示的なものに過ぎず、当業者ならば、これより多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の保護範囲は特許請求の範囲によって定められねばならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数8〜60の高級脂肪酸成分、及び炭素数8〜60の高級アルコール成分のうち少なくとも一つの成分がエステル化反応により導入されたバインダー樹脂と、
着色剤と、
少なくとも一つの添加剤と、を含むトナー。
【請求項2】
前記バインダー樹脂は、ポリエステル樹脂に、前記高級脂肪酸成分及び高級アルコール成分のうち少なくとも一つの成分をエステル化反応により導入することによって製造された請求項1に記載のトナー。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂は、酸成分及びジオール成分を重縮合反応させて製造された請求項2に記載のトナー。
【請求項4】
前記高級脂肪酸成分及び前記高級アルコール成分の総含有量は、前記高級脂肪酸成分及び高級アルコール成分のうち少なくとも一つの成分が導入されたバインダー樹脂の総重量に対して1〜50重量%である請求項1に記載のトナー。
【請求項5】
前記着色剤は、着色顔料マスターバッチである請求項1に記載のトナー。
【請求項6】
前記着色顔料マスターバッチは、炭素数8〜60の高級脂肪酸成分、及び炭素数8〜60の高級アルコール成分のうち少なくとも一つの成分がエステル化反応により導入された樹脂、及び前記樹脂に分散された着色顔料を含む請求項5に記載のトナー。
【請求項7】
(a)分散媒を製造する工程と、
(b)前記分散媒内に、炭素数8〜60の高級脂肪酸成分、及び炭素数8〜60の高級アルコール成分のうち少なくとも一つの成分がエステル化反応により導入されたバインダー樹脂、着色剤、及び少なくとも一つの添加剤を投入してトナー懸濁液を形成する工程と、
(c)前記形成されたトナー懸濁液から有機溶剤を除去してトナー混合液を形成する工程と、を含むトナーの製造方法。
【請求項8】
前記着色剤は、着色顔料マスターバッチである請求項7に記載のトナーの製造方法。
【請求項9】
前記着色顔料マスターバッチは、炭素数8〜60の高級脂肪酸成分、及び炭素数8〜60の高級アルコール成分のうち少なくとも一つの成分がエステル化反応により導入された樹脂、及び前記樹脂に分散された着色顔料を含む請求項8に記載のトナーの製造方法。

【公表番号】特表2011−521294(P2011−521294A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510420(P2011−510420)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【国際出願番号】PCT/KR2009/002641
【国際公開番号】WO2009/142432
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(508130188)サムスン ファイン ケミカルズ カンパニー リミテッド (28)
【Fターム(参考)】