説明

ワッシャー並べ装置、ワッシャー配置システムおよびワッシャーの配置方法

【課題】被螺合部材たる複数の各スタッドボルトに対して、同時に効率よくワッシャーを配置するために用いるワッシャー並べ装置、ワッシャー配置システム、およびそのワッシャー配置システムを用いたワッシャーの配置方法を提供する。
【解決手段】ワッシャー並べ装置10は、複数のワッシャー53・53・・・を並べ位置αに位置決めするためのワッシャー配置部11と、該ワッシャー配置部11にワッシャー53・53・・・を供給するためのワッシャー供給部12と、を備え、ワッシャー供給部12は、該ワッシャー供給部12に投入されるワッシャー53・53・・・を留め置くための部位であって、水平な床部(基台部21の底面部21a)を有する留置部20と、ワッシャー配置部11の軸心を中心として底面部21a上を回転する、留置部20に留め置かれたワッシャー53・53・・・を底面部21aに対して平行な方向に押圧する回転羽根23と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスタッドボルトに対して、複数のワッシャーを同時に配置するための配置システムと、当該配置システムに用いられるワッシャーを並べるための装置である並べ装置、および当該配置システムを用いたワッシャーの配置方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのホイールを、ハブに対して複数のナットを用いて締結する場合のように、組み付け対象たるワークを被組み付け対象たる部位に対して複数の螺合部材(ボルト・ナット等)を用いて固定する場合がある。
例えば、ハブに対してナットを用いてホイールを固定する作業において、ナットを締め付けるときには、まず作業者がナットを一つずつ手作業でハブに植設されたスタッドボルトに数山だけ螺合させておき、その後、トルクレンチ等の工具を用いて、所定のトルクでナットを本締めするのが一般的である。
尚、以後本説明では、ナット・ボルト等の螺合部材を、本締めの前に数山だけスタッドボルト・ナット等の被螺合部材に螺合させておくことを「仮締め」と呼ぶものとする。
【0003】
しかしながら、作業者がナットを一つずつ手作業で仮締めしていると、時間と手間が掛かるため、仮締め作業を効率的に行うべく、複数のナットを同時に仮締めすることができる工具(所謂、多軸仮締め工具)が開発されるに至っており、例えば、以下に示す特許文献1にその技術が開示され公知となっている。
【0004】
特許文献1に示された従来技術に係る多軸仮締め工具は、駆動手段によって回転する駆動歯車と、複数の従動歯車と、駆動歯車および複数の従動歯車に巻き掛けられて、駆動歯車の回転を複数の従動歯車に伝達するための歯付ベルトと、複数の従動歯車に連結されるとともに、ボルトまたはナットに係合する複数のソケット部と、を有する構成としている。前記駆動歯車は多軸仮締め工具の本体部の中央に配置され、前記複数の従動歯車およびソケット部は前記本体部における前記駆動歯車の周囲に配置されている。
このような構成により、駆動歯車に回転力を入力することによって、複数のソケット部を同時に回転駆動することができ、複数のボルトまたはナット等を同時に仮締めすることが可能になる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に示された従来技術に係る多軸仮締め工具を用いてナットの仮締めを行う場合には、複数の各ソケット部にナットを予め配置しておかなければならないが、従来は、各ソケット部に対するナットの配置作業を作業者が手作業で行っていたため、仮締め作業に時間と手間が掛かっていた。
また、手作業でナットを配置するのと同様に、各ナットを螺合させるスタッドボルトに対してワッシャーを配置する場合には、複数のスタッドボルトに作業者が手作業でワッシャーを配置するのが一般的であり、ワッシャーの配置作業にも時間と手間が掛かっていた。
【0006】
また従来、ワッシャー等の姿勢を揃えて、所望する位置に供給するための装置が開発されるに至っており、例えば、以下に示す特許文献2にその技術が開示され公知となっている。
特許文献2に開示された従来技術に係るワッシャー等の供給装置(薄板状ワーク分離搬出装置)では、ホッパに傾斜する底面を設け、その最下部に隣接して昇降可能に分離シュートを設けて、該分離シュートを昇降させることにより、一個の薄板状ワークを係止して分離シュートおよび固定シュートを経て、自重によりホッパから順次移送する構成としている。
このようなワッシャー等の供給装置は、簡単な構成で、薄板状ワークを一個ずつ分離して搬出することができ、しかも、ホッパを振動させたり、薄板状ワークをスクレーパにより掻いたりすることがないので、振動等の騒音が抑制されて、作業環境の改善が図れるとともに、薄板状ワークの損傷を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−205274号公報
【特許文献2】特開平6−8072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に開示された供給装置のように、従来技術に係るワッシャー等の供給装置では、各スタッドボルトに対応した位置にワッシャーを配置する用途に用いることが困難であった。
そして、各スタッドボルトに対応した位置にワッシャーを効率よく配置することができる装置が存在していなかったため、各スタッドボルトに対するワッシャーの配置作業を作業者が手作業で行っており、仮締め作業に時間と手間が掛かっていた。
【0009】
本発明は、斯かる現状の課題を鑑みてなされたものであり、被螺合部材たる複数の各スタッドボルトに対して、同時に効率よくワッシャーを配置するために用いるワッシャー並べ装置、ワッシャー配置システム、およびそのワッシャー配置システムを用いたワッシャーの配置方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、請求項1においては、複数のワッシャーを所定の並べ位置に位置決めするための部位である、略リング状の形状を有するワッシャー配置部と、該ワッシャー配置部に前記複数のワッシャーを供給するための部位であって、前記ワッシャー配置部の内側に配置されるワッシャー供給部と、を備え、前記ワッシャー供給部は、該ワッシャー供給部に投入される前記複数のワッシャーを留め置くための部位であって、水平な床部を有する留置部と、前記ワッシャー配置部の軸心を中心として前記床部上を回転する、前記留置部に留め置かれた前記ワッシャーを前記床部に対して平行な方向に押圧するための羽根部材と、を備えるものである。
【0012】
請求項2においては、前記留置部は、底部を構成する、前記ワッシャー配置部に比して高い位置に形成される略円形の水平面である底面部と、該底面部の外周縁部において、水平方向に対して半径方向外側に向けて先下がりの傾斜部を形成する傾斜面と、を有する略円錐台形状の基台部と、前記羽根部材の回転軸心と軸心を一致させた状態で配置される略円筒状の部位であって、前記羽根部材と一体的に構成される筒部と、により構成され、前記筒部の前記底面部と対面する側の端部に、前記ワッシャーを排出するための開口部たるワッシャー出口を形成するものである。
【0013】
請求項3においては、前記ワッシャー配置部は、前記ワッシャーを配置するための所定の位置において、前記ワッシャーを嵌め込んで水平に保持するための該ワッシャーに対応した形状を有する凹部たる保持部を備え、また、前記保持部は、前記ワッシャーの下面を支持する支持部と、前記ワッシャーの外周面に沿わせる案内部と、を備え、さらに、前記案内部は、鉛直方向に変位可能であり、かつ、前記支持部に比して下方に変位可能に構成されるものである。
【0014】
請求項4においては、前記ワッシャー供給部は、前記筒部から半径方向外側に突設されるとともに、前記ワッシャー配置部に接する部位であって、前記ワッシャー配置部に供給された前記ワッシャーを、前記ワッシャー配置部上において、前記羽根部材の回転方向に押圧するための部位である第一の押圧部と、前記ワッシャー配置部に供給された前記ワッシャーを、前記保持部において、下方に押圧するための部位である第二の押圧部と、を備えるものである。
【0015】
請求項5においては、前記羽根部材は、鉛直方向視における前記ワッシャーと当接する面の延長線が、該羽根部材の回転中心からずれており、かつ、鉛直方向視における該羽根部材の幅が、該羽根部材の回転中心から外端部に向かうにしたがって狭くなるものである。
【0016】
請求項6においては、前記羽根部材は、上側の面を、半径方向外側に向けて先下がりとなる傾斜面により構成するものである。
【0017】
請求項7においては、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のワッシャー並べ装置と、前記ワッシャー配置部に設定された所定の並べ位置に対応する位置に配置される複数のソケット部を有し、前記ソケット部には、前記ワッシャーが嵌り込む形状の凹部である保持部が形成される、前記複数のワッシャーを同時にセットするための工具であるワッシャーセット工具と、を備えるものである。
【0018】
請求項8においては、請求項7に記載のワッシャー配置システムを用いたワッシャーの配置方法であって、前記ワッシャー並べ装置により、前記ワッシャー配置部の所定の並べ位置に、複数の前記ワッシャーを配置する工程と、前記所定の並べ位置に複数の前記ワッシャーが配置された状態である前記ワッシャー並べ装置に対して、各並べ位置の鉛直上方に、各ソケット部を配置するように、前記ワッシャーセット工具を配置し、該ワッシャーセット工具を、鉛直下方に変位させて、前記ワッシャー配置部の各並べ位置に配置されている各ワッシャーを、前記ワッシャーセット工具の各保持部に嵌め込む工程と、配置対象たる複数のスタッドボルトの鉛直上方に、各保持部において前記ワッシャーがはめ込まれた状態である前記ワッシャーセット工具の前記各ソケット部を配置するとともに、前記ワッシャーセット工具を鉛直下方に変位させて、各スタッドボルトに前記ワッシャーを配置する工程と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0020】
請求項1においては、回転する羽根部材で、床部上のワッシャーを、水平に、かつ、半径方向外側に向けて押圧して、留置部からワッシャーを排出することにより、ワッシャー配置部に前記ワッシャーを容易に供給することができる。
【0021】
請求項2においては、留置部に投入され底面部上に留め置かれたワッシャーを、回転する羽根部材によって水平方向に押圧して、ワッシャー出口から排出させるとともに、ワッシャー出口から排出されたワッシャーを、傾斜部に沿って滑落させることによって、ワッシャー配置部にワッシャーを供給することができる。
【0022】
請求項3においては、案内部が下方に変位することによって、ワッシャーセット工具に対するワッシャーの受渡しを容易にすることができる。
【0023】
請求項4においては、保持部に入りきらなかったワッシャーを、確実に保持部に嵌め込むことができる。
【0024】
請求項5においては、羽根部材の回転動作によって、ワッシャーを半径方向外側に押し出すことができる。
【0025】
請求項6においては、羽根部材の上にワッシャーが残ることを防止できる。
【0026】
請求項7においては、簡易な構成のワッシャー配置システムにより、複数のスタッドボルトに対して、同時に、かつ、確実にワッシャーを配置することができる。
【0027】
請求項8においては、簡易な構成のワッシャー配置システムにより、複数のスタッドボルトに対して、同時に、かつ、確実にワッシャーを配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態に係るワッシャー配置システムの適用対象たるワークを示す模式図、(a)ワークの全体構成を示す斜視模式図、(b)ワークにおける被螺合部材たるスタッドボルトの配置を示す部分斜視模式図。
【図2】本発明の一実施形態に係るワッシャー配置システムの全体構成を示す斜視模式図。
【図3】本発明の一実施形態に係るワッシャー並べ装置を示す斜視模式図。
【図4】本発明の一実施形態に係るワッシャー並べ装置を示す分解斜視模式図。
【図5】ワッシャー配置部および基台部を示す模式図、(a)平面模式図、(b)側面断面模式図。
【図6】ワッシャー配置部の保持部を示す拡大断面模式図、(a)ワッシャーの保持状態を示す模式図、(b)ワッシャーの保持を解除した状態を示す模式図。
【図7】ワッシャー並べ装置を構成する回転羽根および筒状部を示す模式図、(a)平面模式図、(b)側面模式図。
【図8】留置部からのワッシャーの排出状況を示す模式図、(a)平面模式図、(b)ワッシャー排出速度の調整方法を示す模式図。
【図9】回転羽根によるワッシャーの押圧状況を示す模式図。
【図10】回転羽根によるワッシャーの押し出し動作を示す説明図、(a)押圧面の延長線が回転中心を通る場合、(b)押圧面の延長線が回転中心を通らず、線分OAと線分BAの成す角度がθ1である場合、(c)押圧面の延長線が回転中心を通らず、線分OAと線分BAの成す角度がθ2(θ2>θ1)である場合。
【図11】拡散部を示す模式図、(a)正面模式図、(b)側面断面模式図。
【図12】移送経路における拡散部によるワッシャーの拡散状況を示す模式図。
【図13】押し込み部を示す模式図、(a)正面模式図、(b)側面断面模式図。
【図14】移送経路における保持部に対する押し込み部によるワッシャーの押し込み状況を示す模式図。
【図15】ワッシャーセット工具を示す模式図、(a)平面模式図、(b)側面断面模式図。
【図16】ソケット部を示す側面断面模式図。
【図17】ワッシャー並べ工具からワッシャーセット工具に対するワッシャーの受渡し状況(ワッシャーセット工具の配置時および受渡し中の状態)を示す模式図。
【図18】ワッシャー並べ工具からワッシャーセット工具に対するワッシャーの受渡し状況(受渡し完了後の状態)を示す模式図。
【図19】ワッシャーセット工具によるスタッドボルトに対するワッシャーの配置状況を示す模式図。
【図20】本発明の一実施形態に係るワッシャー配置システムによるワッシャーの配置方法を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず始めに、本発明の一実施形態に係るワッシャー配置システムの全体構成について、図1および図2を用いて説明をする。
本発明の一実施形態に係るワッシャー配置システム1は、例えば図1(a)に示すような、リアアクスルのアッシー51を組み立てる作業において使用される装置群である。
より詳しくは、アッシー51におけるデフキャリア(以下、ワーク50と呼ぶ)を組み付ける作業では、アッシー51に備えられた複数の被螺合部材たるスタッドボルト51a・51a・・・(図1(a)(b)参照)に対して、複数の螺合部材(本実施形態では複数のナット52・52・・・)を締結する前に、各スタッドボルト51a・51a・・・に対してそれぞれワッシャー53・53・・・を配置しておく必要がある。
ワッシャー配置システム1は、このような場合において、各スタッドボルト51a・51a・・・に対して、同時に効率よく複数のワッシャー53・53・・・を配置するために用いられるものである。
【0030】
図2に示す如く、本発明の一実施形態に係るワッシャー配置システム1は、ワッシャー並べ装置10とワッシャーセット工具30を備える構成としている。
ワッシャー並べ装置10は、ワッシャーセット工具30に対して、効率よく複数のワッシャー53・53・・・を装填することを可能にする装置であり、ワッシャーセット工具30は、アッシー51の各スタッドボルト51a・51a・・・に対して、効率よく複数のワッシャー53・53・・・を供給することを可能にする装置である。
【0031】
ワッシャーセット工具30は、アッシー51の各スタッドボルト51a・51a・・・の配置に対応した複数のソケット部33・33・・・を備えている。
そして、ワッシャー並べ装置10には、ワッシャーセット工具30の各ソケット部33・33・・・の配置(ひいては、各スタッドボルト51a・51a・・・の配置)に対応した複数の並べ位置α・α・・・が設定されている。
【0032】
ここで、本発明の一実施形態に係るワッシャー並べ装置の全体構成について、図3〜図14を用いて説明をする。
図3に示す如く、ワッシャー並べ装置10は、ワッシャーセット工具30が備える複数のソケット部33・33・・・の配置に対応する各並べ位置α・α・・・に、ワッシャー53をそれぞれ一つずつ配置することができる装置であって、ワッシャー配置部11、ワッシャー供給部12、駆動部13等を備える構成としている。
尚、本実施形態では、アッシー51において、スタッドボルト51aが10箇所設けられており、供給すべきワッシャー53の個数が10個である場合を例示しており、ワッシャー配置部11には、図4に示すように、並べ位置αとして、10箇所の各並べ位置α1〜α10を設定する構成としている。
【0033】
まず始めに、ワッシャー配置部11について、説明をする。
ワッシャー配置部11は、ワッシャー供給部12から供給される複数のワッシャー53・53・・・を、ワッシャーセット工具30が有する複数のソケット部33・33・・・の配置に対応した所定の並べ位置α1〜α10に並べるための部位であり、図4および図5(a)(b)に示す如く、上下一対のリング状部材である上部リング11aおよび下部リング11bからなる構成としている。
尚、ワッシャー配置部11は、ワッシャー並べ装置10の底部10aに対して図示しない支持部材等を介して固定支持されている。
【0034】
図4に示す如く、ワッシャー配置部11の内周側に形成されている孔11cには、ワッシャー供給部12が挿通されており、ワッシャー供給部12により、ワッシャー配置部11の内側から半径方向外側に向けて、複数のワッシャー53・53・・・が供給される構成としている。
【0035】
また、図4および図5(a)(b)に示す如く、上部リング11aは、外径寸法が下部リング11bと同一であり、また、内径寸法は下部リング11bよりも小さいため、下部リング11bと、上部リング11aの内周面11dおよびワッシャー供給部12によって囲まれた、リング状の凹部たる移送経路14を形成している。
【0036】
そして、ワッシャー配置部11は、移送経路14の底部において、ワッシャー53を保持するための凹部を形成する複数の保持部15・15・・・を備えている。
保持部15は、図6(a)(b)に示す如く、下部リング11bに形成された凹部11e内に収容されており、ガイド部材16、支持部材17、支持軸18、スプリング19等により構成されている。
【0037】
図5(a)(b)および図6(a)(b)に示す如く、ガイド部材16は、その外径寸法が、凹部11eの内径寸法に略一致している。また、ガイド部材16には、ワッシャー53の外形寸法に略一致する内径寸法のガイド孔16aが形成されている。
さらに、ガイド部材16の上端面には、ワッシャー53をガイド孔16aに滑り込みやすくさせるための、中央側へ向かって下降する略擂鉢状の傾斜面16bを形成している。
【0038】
ガイド孔16a内には、該ガイド孔16aに嵌り込んだワッシャー53の下面を支持するための部位である支持部材17を配置している。
そして、支持部材17は、下部リング11bにより固定され、かつ、ガイド部材16を貫通する支持軸18により固定支持されている。
【0039】
また、ガイド部材16の下面16cと凹部11eの間には、スプリング19を介装しており、ガイド部材16を凹部11eの軸心方向に向けて弾性的に変位させることができる構成としている。
このような構成により、ワッシャー53は、保持部15において、ガイド孔16aに嵌め込まれている状態では、ガイド部材16および支持部材17によって拘束されて位置決めされるが、この状態からガイド部材16を下方に変位させると、ガイド部材16による拘束から開放される。
【0040】
即ち、本発明の一実施形態に係るワッシャー並べ装置10において、ワッシャー配置部11は、ワッシャー53を配置するための所定の並べ位置α1〜α10において、ワッシャー53を嵌め込んで水平に保持するための該ワッシャー53に対応した形状を有する凹部たる保持部15を備え、また、保持部15は、ワッシャー53の下面を支持する支持部たる支持部材17と、ワッシャー53の外周面に沿わせる案内部たるガイド部材16と、を備え、さらに、ガイド部材16は、鉛直方向に変位可能であり、かつ、支持部材17に比して下方に変位可能に構成されるものである。
このような構成により、ガイド部材16が下方に変位することによって、ワッシャーセット工具30に対するワッシャー53の受渡しを容易にすることができる。
【0041】
次に、ワッシャー供給部12について、説明をする。
ワッシャー供給部12は、作業者がワッシャー53を投入するための部位であり、かつ、ワッシャー配置部11の全体にワッシャー53を行き渡らせつつ供給するための部位であって、図4に示す如く、基台部21、回転テーブル22、回転羽根23、筒状部24、拡散部25・25・・・、押し込み部26・26等を備える構成としている。
【0042】
基台部21は、図5(a)(b)および図7(b)に示す如く、筒状部24とともに、複数のワッシャー53・53・・・を一時的に留め置くための空間たる留置部20を形成するための略円盤状の部位であって、ワッシャー配置部11に対して一体的に固定されている。
基台部21の上面には、留置部20の底部を形成する底面部21aが形成されており、また底面部21aの外周縁部には、半径方向外側に向けて先下がりに傾斜する面である傾斜面21bが形成されている。
【0043】
さらに、図5(a)(b)に示す如く、円盤状である基台部21の軸心位置には、円形の孔部21cが形成されている。そして、孔部21cには、円盤状の部位であって、基台部21に対して相対回転可能な部位である回転テーブル22を配置する構成としている。
ここで、回転テーブル22の上面部22aは、基台部21の底面部21aに比して若干高くして、ワッシャー53の厚み未満の高低差を有する段差を形成するようにしている。
【0044】
回転テーブル22は、回転羽根23および筒状部24を支持するための部位であって、図5(b)に示すように、回転軸27の上端部27aに固定されている。
回転軸27は、図4に示す如く、ワッシャー並べ装置10の底部10aに固設される支持部27bによって、回転可能に支持されており、該回転軸27上に固定されている従動プーリ7に回転力が入力されることによって、回転される構成としている。
このため、回転テーブル22は、回転軸27が回転されるのに伴って、該回転軸27の軸心回りに回転される。
【0045】
図4および図7(a)(b)に示す如く、回転羽根23は、基台部21の底面部21a上に撒き散らされているワッシャー53を、掃くように水平方向に向けて押圧するための部材であり、回転テーブル22に対して固定され、底面部21aに対して相対回転可能に構成されている。
【0046】
回転羽根23は、平面視において略菱形状の形状を有しており、該回転羽根23の中心位置を回転テーブル22の軸心と一致させている。
また、回転羽根23の長さ方向における両端部には、端面23a・23aを形成しており、また、回転羽根23の幅方向における側部には、ワッシャー53を押圧するための面である押圧面23b・23b・・・を形成している。
【0047】
さらに、回転羽根23の上側の面は、長さ方向に引いた中心線の位置を境界とする二つの傾斜面23c・23cにより構成されており、回転羽根23の形状を、平面視において前記中心線の位置を基準として対称形をなし、かつ、側方視において前記中心線の位置を頂部とする山型の形状とする構成としている。
【0048】
回転テーブル22と底面部21aの間には段差を設けているため、回転テーブル22上に固設される回転羽根23は底面部21aに接触する(摺れる)ことはなく、そして、段差分の所定の隙間が保持された状態で、底面部21a上を(底面部21aから所定の距離だけ離間した位置で)回転するように構成されている。
【0049】
また、回転羽根23には、該回転羽根23を取り囲むような態様で、回転羽根23の長さと略同一の外形寸法を有する略円筒状の部材たる筒状部24が、回転羽根23の長さ方向における両側の端部である各端面23a・23aの近傍において、一体的に固定されている。
筒状部24は、回転羽根23と同様に、底面部21aから所定の隙間が保持された状態で、底面部21a上を(底面部21aから所定の距離だけ離間した位置で)回転するように構成されている。
【0050】
そして、ワッシャー供給部12では、図3および図4に示す如く、筒状部24の内側に形成される空隙部と底面部21aによって形成される略円筒状の空間によって、ワッシャー53を一時的に留め置くための部位である留置部20を形成する構成としている。
【0051】
また、図7(a)(b)に示す如く、筒状部24には、各端面23a・23aとの固定部の周囲において、2箇所の切欠き部たるワッシャー出口24a・24aが形成されている。ワッシャー出口24a・24aは、筒状部24の底面部21aと対面する側の端部に形成される、ワッシャー53を排出するための開口部である。
各ワッシャー出口24a・24aは、筒状部24の軸心方向視において、該筒状部24の軸心位置を基準として点対称の関係にある。
尚、本実施形態では、ワッシャー供給部12において、2箇所のワッシャー出口24a・24aを備える場合を例示しているが、ワッシャー出口24aの個数は任意に選択することが可能である。
【0052】
さらに、回転羽根23について詳述すると、図7(a)に示すように、押圧面23bとワッシャー出口24aの間に形成される隙間の最小寸法Wは、ワッシャー53の直径D以上の寸法を確保している(即ち、W>Dとしている)。
【0053】
そして、ワッシャー供給部12では、図8(a)に示すように、留置部20に留め置かれたワッシャー53を、回転羽根23で押圧することによって、底面部21a上を半径方向外側に向けて移送し、各ワッシャー出口24a・24aから、留置部20の外に排出する構成としている。
【0054】
また、ワッシャー供給部12では、図9に示すように、留置部20に複数のワッシャー53・53・・・が留め置かれた場合であっても、回転羽根23で押圧することによって、回転羽根23に沿わせつつ、底面部21a上を半径方向外側に向けて移送し、各ワッシャー出口24a・24aから、留置部20の外にワッシャー53を一枚ずつ排出する構成としている。
【0055】
尚、本実施形態では、回転羽根23の回転方向を、右回りまたは左回りのどちらも選択できる構成としているため、回転羽根23の幅方向における両端面に押圧面23b・23bを形成する場合を例示しているが、押圧面23bは、少なくとも回転羽根23の回転方向に対して前方にあたる側の面に形成されていればよい。
即ち、回転羽根23の回転方向が一定である場合には、回転羽根23の幅方向における端面のうち、該回転羽根23の回転方向に対する後方にあたる面に、押圧面23bを形成しない構成としてもよい。
【0056】
ここで、回転羽根23の回転に伴って、押圧面23bからワッシャー53に付与される応力について、図10を用いて説明をする。
回転羽根23の押圧面23bは、回転軸27を中心とした半径方向から所定の角度だけ傾斜させる構成としている。
尚、回転羽根23においては、図10(b)に示す如く、押圧面23bの端面23a側の端点を端点Aと規定し、押圧面23bの回転軸27側の端点を端点Bと規定する。この場合、端点Bは、回転軸27の軸心Oと一致していない。そして、線分ABと線分AO(半径方向)が成す角度を所定の角度θ1と規定している。
この場合押圧面23bは、常に線分AO(半径方向)に対して所定の角度θ1だけ傾斜した状態を保持しつつ、回転軸27回りに回転される構成としている。
【0057】
図10(a)に示す如く、仮に、線分ABが回転羽根23の回転中心Oを通過するように押圧面23bの角度が設定されている場合、押圧面23bとワッシャー53の接点Cにおいて、ワッシャー53に対して、押圧面23bにより回転接線方向に押圧力Pが付与される。
このとき、押圧力Pは押圧面23bと直交する方向に作用するため、半径方向外側に向けた分力が生じることはなく、ワッシャー53は回転接線方向に向けて変位される。
即ち、このときワッシャー53は、留置部20から排出されることなく、該留置部20内にとどまる。尚、本説明においては、ワッシャー53に作用する遠心力は考慮しない(以下同様)。
【0058】
図10(b)に示す如く、線分ABが回転羽根23の回転中心Oを通過せず、押圧面23bの角度θ1が設定されている場合、押圧面23bとワッシャー53の接点Cにおいて、ワッシャー53に対して、押圧面23bに直交する方向に押圧力Pが付与される。
このとき、押圧力Pは、回転羽根23の回転半径方向への分力Pxと、それに直交する回転接線方向への分力Pyに分けられるため、ワッシャー53は分力Pxに応じて半径方向外側に向けて変位される。
即ち、押圧面23bの角度θ1を設定する場合、ワッシャー53は、底面部21a上を半径方向外側に向けて(即ち、留置部20から排出される方向に)変位される。
【0059】
さらに、図10(c)に示す如く、線分ABが回転羽根23の回転中心Oを通過せず、押圧面23bの角度をさらに大きい角度θ2に設定するときを考える。
この場合、押圧面23bとワッシャー53の接点Cにおいて、ワッシャー53に対して、押圧面23bに直交する方向に押圧力Pが付与される。
このとき、回転羽根23の回転半径方向に向けた分力Pxが増大するとともに、回転接線方向に向けた分力Pyが減少する。
即ち、ワッシャー供給部12では、図8(b)に示すように、押圧面23bの角度を変更することによって、ワッシャー53の排出速度を調整することができる。
【0060】
即ち、本発明の一実施形態に係るワッシャー並べ装置10において、回転羽根23は、鉛直方向視におけるワッシャー53と当接する面たる押圧面23bの延長線が、該回転羽根23の回転中心からずれており、かつ、鉛直方向視における回転羽根23の幅が、該回転羽根の回転中心から外端部に向かうにしたがって狭くなるものである。
このような構成により、回転羽根23の回転動作によって、ワッシャー53を半径方向外側に押し出すことができる。
【0061】
また、本発明の一実施形態に係るワッシャー並べ装置10において、回転羽根23は、上側の面を、半径方向外側に向けて先下がりとなる傾斜面23cにより構成するものである。
このような構成により、留置部20に投入されたワッシャー53が、回転羽根23の上に残ることを防止できる。
【0062】
また、図3および図4に示す如く、筒状部24の外周面には、拡散部25および押し込み部26が固設されている。
図11(a)(b)に示す如く、拡散部25は、ワッシャー配置部11上の各ワッシャー53・・・を拡散させて、ワッシャー配置部11に形成された各保持部15・15に行き渡らせるべく、ワッシャー配置部11上を掻くために、筒状部24の外周面から、斜め下方に向けて突設される部位であり、基部25a、当接部25b、カラー25c、スプリング25d等を備えている。
【0063】
当接部25bは、基部25aに形成される孔25eにおいて、該孔25eの軸心回りに回転可能な状態で支持されており、また当接部25bには、カラー25cが固定されている。
そして、基部25aとカラー25cの間にはボルト25f・25fを介してスプリング25dが接続されており、当接部25bが軸回りに回転するときにスプリング25dが伸長され、該スプリング25dによって、当接部25bに対して、元の回転位置(スプリング25dが定常長さとなる位置)に復元する方向にバネ力を付勢する構成としている。
【0064】
図12に示す如く、拡散部25は、筒状部24の回転に伴って、当接部25bが移送経路14に接した状態で、回転され、移送経路14上に存在する各ワッシャー53・・・を回転方向に押圧する。
そして、ワッシャー53を保持部15に落としこませたり、あるいは、既にワッシャー53が嵌り込んでいる保持部15で滞っているワッシャー53を押圧して、別の保持部15に向けて拡散させたりすることができる。
【0065】
拡散部25において、当接部25bは、スプリング25dにより回転位置が復元される構成であり、孔25eの軸心回りに揺動可能であるため、移送経路14上の多少の段差等があっても、引っ掛かってしまうことなく、移送経路14上に接触しながら回転することができ、移送経路14上のワッシャー53を確実に押圧することができる。
【0066】
また、図13(a)(b)に示す如く、押し込み部26は、各保持部15に対する嵌り込み状態が不完全であるワッシャー53を、完全に当該保持部15に嵌り込ませるべく、ワッシャー53を略鉛直下方に押圧するための部位であり、基部26a、当接部26b、錘26c等を備えている。
【0067】
図14に示す如く、押し込み部26は、基部26aが筒状部24の外周面に固定されており、当接部26bおよび錘26cが軸部26dに沿って、上下に変位可能に構成されている。
そして、筒状部24の回転に伴って、当接部26bが移送経路14に接した状態で、回転され、保持部15に嵌り込みきらない状態であるワッシャー53を下方に向けて押圧する。尚、押し込み部26では、錘26cに作用する重力によって、ワッシャー53を保持部15に確実に押し込むのに要する応力を確保する構成としている。
【0068】
また、押し込み部26によっても、ワッシャー53を保持部15に落としこませたり、あるいは、既にワッシャー53が嵌り込んでいる保持部15で滞っているワッシャー53を押圧して、別の保持部15に向けて拡散させたりすることができる。
【0069】
即ち、本発明の一実施形態に係るワッシャー並べ装置10において、ワッシャー供給部12は、筒状部24から半径方向外側に突設されるとともに、ワッシャー配置部11に接する部位であって、ワッシャー配置部11に供給されたワッシャー53を、ワッシャー配置部11上の移送経路14において、回転羽根23の回転方向に押圧するための部位である第一の押圧部たる拡散部25と、ワッシャー配置部11に供給されたワッシャー53を、保持部15において、下方に押圧するための部位である第二の押圧部たる押し込み部26と、を備えるものである。
このような構成により、保持部15に入りきらなかったワッシャー53を、確実に保持部15に嵌め込むことができる。
【0070】
次に、駆動部13について、説明をする。
図4に示す如く、駆動部13は、ワッシャー供給部12における回転羽根23および筒状部24を回転させるべく、回転軸27に回転力を付与するための部位であり、モータ5等を備えている。
また、モータ5が有するモータ軸5aの端部には、駆動プーリ6が形成されており、該駆動プーリ6と、回転軸27上に固設される従動プーリ7の間にゴムリング8が巻回される構成としている。
【0071】
このような構成により、モータ5を起動し、モータ軸5a(即ち、駆動プーリ6)を回転駆動すると、ゴムリング8を介して従動プーリ7に回転力が伝達され、回転軸27を回転駆動することができる。
そして、ワッシャー並べ装置10では、駆動部13により回転軸27を回転駆動することによって、ワッシャー供給部12の回転羽根23および筒状部24を回転駆動する構成としている。
【0072】
即ち、本発明の一実施形態に係るワッシャー並べ装置10は、複数のワッシャー53・53・・・を所定の並べ位置α1〜α10に位置決めするための部位である、略リング状の形状を有するワッシャー配置部11と、該ワッシャー配置部11に複数のワッシャー53・53・・・を供給するための部位であって、ワッシャー配置部11の内側に配置するワッシャー供給部12と、を備え、ワッシャー供給部12は、該ワッシャー供給部12に投入される複数のワッシャー53・53・・・を留め置くための部位であって、水平な床部(即ち、基台部21の底面部21a)を有する留置部20と、ワッシャー配置部11の軸心を中心として底面部21a上を回転する、留置部20に留め置かれたワッシャー53を底面部21aに対して平行な方向に押圧するための羽根部材である回転羽根23と、を備えるものである。
このような構成により、回転羽根23で、底面部21a上のワッシャー53を、水平に、かつ、半径方向外側に向けて押圧して、留置部20からワッシャー53を排出することにより、ワッシャー配置部11にワッシャー53を容易に供給することができる。
【0073】
また、本発明の一実施形態に係るワッシャー並べ装置10において、留置部20は、ワッシャー配置部11に比して高い位置に形成される略円形の水平面である底面部20aと、該底面部20aの外周縁部において、水平方向に対して半径方向外側に向けて先下がりの傾斜部を形成する傾斜面20bと、を有する略円錐台形状の基台部21と、回転羽根23の回転軸心と軸心を一致させた状態で配置される略円筒状の部位であって、回転羽根23と一体的に構成される筒状部24と、により構成され、筒状部24の底面部20aと対面する側の端部に、ワッシャー53を排出するための開口部たるワッシャー出口24aを形成するものである。
このような構成により、留置部20に投入され底面部20a上に留め置かれたワッシャー53を、回転羽根23によって水平方向に押圧して、ワッシャー出口24aから排出させるとともに、ワッシャー出口24aから排出されたワッシャー53を、傾斜面20bに沿って滑落させることによって、ワッシャー配置部11にワッシャー53を供給することができる。
【0074】
次に、本発明の一実施形態に係るワッシャーセット工具について、図15〜図19を用いて説明をする。
本発明の一実施形態に係るワッシャー配置システム1を構成するワッシャーセット工具30は、アッシー51に備えられる被螺合部材たる複数のスタッドボルト51a・51a・・・に対して、同時に複数のワッシャー53・53・・・を供給する(図1(a)(b)参照)ための装置であり、図15(a)(b)に示す如く、本体部31、支持軸32・32・・・、ソケット部33・33・・・、ハンドル34・34等を備える構成としている。
【0075】
本体部31は、略リング状の形状を有する、複数のソケット部33・33・・・を支持するための部位である。
また、支持軸32は、ソケット部33において軸方向に変位可能な状態で支持される略ボルト状の軸部材であり、その先端部には磁石35を備えている。
【0076】
図16に示す如く、ソケット部33は、略円筒状の部材であるソケット33aを備えており、該ソケット33aの内部における軸心上において、略円柱状の空隙部たる凹部33bが形成されている。
また、凹部33bの開放側端部には、該凹部33bをさらに拡径した略円柱状の空隙部であって、ワッシャー53を保持するための凹部たる保持部33cが形成されている。
保持部33cの内径寸法は、ワッシャー53の外径寸法と略同一(但し、若干大きい)としている。
さらに、ソケット33aには、該ソケット33aを本体部31に対して固定するための部位であるステー部33dが形成されている。
【0077】
また、凹部33bには、略円筒形を有する磁石35が内蔵されている。
磁石35は磁力を有しており、該磁石35によって、保持部33cに配置されたワッシャー53を磁着することにより、保持部33cにおいてワッシャー53を保持する構成としている。
尚、ソケット33aは、支持軸32や磁石35の組み付け性を良くし、また、摩耗等した場合に容易に交換できるようにするため、複数の部材からなる分割可能な構成としている。
【0078】
磁石35の外径寸法は、凹部33bの内径寸法と略同一(但し、若干小さい)としており、磁石35は、凹部33b内において、該凹部33bの軸心方向に変位可能に構成されている。また、磁石35は、支持軸32によっても軸心方向に変位可能に支持されているため、凹部33bの内部において、磁石35が支持軸32の軸方向に安定して変位することができる構成としている。
【0079】
さらに、凹部33bと磁石35により形成される空間には、弾性部材たるスプリング36を介設しており、磁石35が上方に押圧されると、該磁石35はスプリング36によって下方に変位する方向に付勢され、上方への磁石35に対する押圧を止めると、スプリング36の弾性力によって磁石35が元の位置に復元する構成としている。
尚、磁石35は、定常時(上方に押圧されていない状態)において、該磁石35の下端面が、保持部33cの底面から突出するように配置されており、保持部33cに嵌め込まれたワッシャー53を磁石35で確実に磁着することができる構成としている。
【0080】
図17に示す如く、ソケット33aに形成された保持部33cを、ワッシャー53を保持した状態の保持部15の直上に、軸心同士を略一致させた状態で配置するとともに、ソケット部33を下降させると、ソケット33aの下端部によって、ガイド部材16を押圧して、該ガイド部材16を下方へ変位させることができる。
このとき、ワッシャー53は、ガイド部材16による拘束から開放された状態となっており、保持部15から保持部33cに対して、ワッシャー53を容易に受け渡すことができる状態となっている。
【0081】
また、それと同時に、保持部33cにワッシャー53が嵌め込まれ、該ワッシャー53を磁石35で着磁するため、ソケット部33によって、ワッシャー53を確実に保持することができる。
【0082】
そして、図18に示す如く、保持部33cにワッシャー53が装填された後に、ソケット部33を上方に変位させると、ソケット部33に対するワッシャー53の装填が完了する。
【0083】
図15(a)に示す如く、ワッシャーセット工具30には複数のソケット部33・33・・・が備えられているが、ワッシャー並べ装置10を用いることによって、各ソケット部33・33・・・に対して、同時にワッシャー53を装填することが可能になる。
即ち、各ソケット部33・33・・・を、ワッシャー並べ装置10の各保持部15・15・・・の鉛直上方に配置した状態から、ワッシャーセット工具30を下降させることによって、各ソケット部33・33・・・に対して、同時にワッシャー53・53・・・を装填することができる。
【0084】
図19に示す如く、保持部33cにワッシャー53を保持した状態のソケット部33を、スタッドボルト51aの直上に、軸心同士を略一致させた状態で配置するとともに、ソケット部33を下降させると、スタッドボルト51aがワッシャー53の孔53aに挿通され、さらに、該スタッドボルト51aにより、磁石35が上方に向けて押圧される。
【0085】
そして、磁石35が所定の距離で上方に変位したとき、磁石35の磁力がワッシャー53に及ばなくなり、ワッシャー53は、保持部33cから脱落する。
すると、ワッシャー53の孔53aにはスタッドボルト51aが挿通された状態であるため、ワッシャー53は、スタッドボルト51aに沿って落下して、所定の位置に配置される。
【0086】
図15(a)に示す如く、ワッシャーセット工具30には複数のソケット部33・33が備えられており、各ソケット部33・33・・・の各軸心を鉛直方向に向けた状態を保持しつつ、ワッシャーセット工具30を下降させることによって、複数のスタッドボルト51a・51a・・・に対して、同時にワッシャー53を供給することができる。
【0087】
次に、本発明の一実施形態に係るワッシャー配置システム1を用いたワッシャーの配置方法について、図12、図14、図17、図19および図20を用いて説明をする。
ここでは、ワーク50が、アッシー51に備えられる各スタッドボルト51a・51a・・・を鉛直上方に向けて突設させる状態で配置されている状態(図1(a)(b)参照)において、各スタッドボルト51a・51a・・・に対して、ワッシャー53を一つずつ供給する場合を例示して説明をする。
【0088】
図20に示す如く、ワッシャー配置システム1を用いて複数のワッシャー53・53・・・を配置する場合には、まず、ワッシャー並べ工程(STEP−1)を実行する。
ワッシャー並べ工程(STEP−1)では、まず始めに、10個のワッシャー53・53・・・を一まとめにして準備しておき、その10個のワッシャー53を、ワッシャー並べ装置10のワッシャー供給部12へ投入する(STEP−1−1)。
そして、ワッシャー並べ装置10の電源を入れ、起動する(STEP−1−2)。
【0089】
すると、回転羽根23により押し出されて留置部20から排出された複数のワッシャー53・53・・・は、基台部21の傾斜面21bを滑落して、ワッシャー配置部11に形成された移送経路14に送られる。
そして、図12に示すように、移送経路14に送られた複数のワッシャー53・53・・・は、拡散部25・25・・・によって円周方向に押圧され、移送経路14の底面に形成されたいずれかの保持部15・15・・・に一つずつ嵌り込む。
また、図14に示すように、保持部15に対して、完全に嵌り込んでいないワッシャー53は、押し込み部26・26によって下方に向けて押圧され、保持部15に対して完全に嵌め込まれる。
【0090】
そして、図20に示すように、やがて、全ての保持部15・15・・・に一つずつワッシャー53・53・・・が配置される(STEP−1−3)。
ワッシャー53・53・・・が全ての保持部15・15・・・に配置された状態に至った後に、ワッシャー並べ装置10を停止させて(STEP−1−4)、ワッシャー並べ工程(STEP−1)を完了する。
【0091】
そして、次にワッシャー装填工程(STEP−2)に移行する。
ワッシャー並べ装置10において、各並べ位置α1〜α10に並べられた各ワッシャー53・53・・・をワッシャーセット工具30に装填する。
このときの装填作業では、図17および図20に示すように、まず、ワッシャー並べ装置10の各保持部15・15・・・の直上にワッシャーセット工具30の各ソケット部33・33・・・が位置するように、該ワッシャーセット工具30を配置する(STEP−2−1)。
そして、この状態のまま、ワッシャーセット工具30を下降させて、各ソケット部33・33・・・を各保持部15・15・・・において保持されている各ワッシャー53・53・・・に接近させる。
【0092】
そして、各ソケット部33・33・・・と各ワッシャー53・53・・・の距離が所定の距離以下となると、各ソケット部33・33・・・に内蔵されている各磁石35・35・・・により各ワッシャー53・53・・・が磁着され、各ワッシャー53・53・・・が、各ソケット33a・33a・・・に形成された凹部(保持部33c)において挿嵌される。
【0093】
この状態では、各保持部33c・33c・・・において、各ワッシャー53・53・・・は、各磁石35・35・・・により磁着されているため、ワッシャーセット工具30を上昇させると、各保持部33c・33c・・・により保持されていた各ワッシャー53・53・・・は全て各ソケット部33・33に保持され、脱落等することがない。
このようにして、各スタッドボルト51a・51a・・・に供給すべき複数のワッシャー53・53・・・がワッシャーセット工具30に装填される(STEP−2−2)。
以上により、ワッシャー装填工程(STEP−2)を完了する。
【0094】
そして、次にワッシャー配置工程(STEP−3)に移行する。
図19および図20に示す如く、ワッシャー配置工程(STEP−3)では、複数のワッシャー53・53・・・が装填された状態のワッシャーセット工具30を用いて、複数のスタッドボルト51a・51a・・・を備えるアッシー51に対して、ワッシャー53・53・・・を配置する。
【0095】
このときの配置作業では、まず、アッシー51の各スタッドボルト51a・51a・・・の直上にワッシャーセット工具30の各ソケット部33・33・・・が位置するように、該ワッシャーセット工具30を配置する(STEP−3−1)。
そして、この状態のまま、ワッシャーセット工具30を下降させて、各ソケット部33・33・・・内に各スタッドボルト51a・51a・・・を入り込ませる。
【0096】
すると、各スタッドボルト51a・51a・・・が各ワッシャー53・53・・・の孔53a・53a・・・に挿通されるとともに、各スタッドボルト51a・51aによって、各磁石35・35・・・が上方に向けて押圧される。
【0097】
ここで、各ワッシャー53・53・・・は、各保持部33c・33c・・・において保持されており、上方に変位することがないため、各ワッシャー53・53・・・と磁石35・35・・・が離間するようになる。
そして、各ワッシャー53・53・・・と各磁石35・35・・・の離間距離が大きくなるに従って、各磁石35・35・・・により各ワッシャー53・53・・・に及ぼす磁着力が減少していく。
【0098】
そして、やがて各磁石35・35・・・による磁着力が各ワッシャー53・53・・・に作用する重力よりも小さくなると、各ワッシャー53・53・・・は落下する。
このようにして、各ワッシャー53・53・・・は、各孔53a・53a・・・にスタッドボルト51a・51a・・・が挿通された状態で、各スタッドボルト51a・51a・・・に供給される(STEP−3−2)。
そして、ワッシャーセット工具30による、アッシー51の各スタッドボルト51a・51a・・・に対するワッシャー53・53・・・の配置を完了する(STEP−3−3)。
以上により、ワッシャー配置工程(STEP−3)を完了し、ワッシャー配置システム1を用いた一連のワッシャー配置作業を完了する。
【0099】
即ち、ワッシャーセット工具30を用いることにより、ワッシャー53・53・・・が装填された状態のワッシャーセット工具30をアッシー51(より詳しくは、各スタッドボルト51a・51a・・・)に押圧するという簡単な操作を行うだけで、複数の各スタッドボルト51a・51a・・・に対して、同時にワッシャー53・53・・・を供給することが可能になり、ワッシャー53の配置作業を非常に効率的に行えるようになる。
【0100】
即ち、本発明の一実施形態に係るワッシャー配置システム1は、ワッシャー並べ装置10と、ワッシャー配置部11に設定された所定の並べ位置α1〜α10に対応する位置に配置される複数のソケット部33・33・・・を有し、各ソケット部33・33・・・には、ワッシャー53が嵌り込む形状の凹部である保持部33cが形成される、複数のワッシャー53・53・・・を同時にセットするための工具であるワッシャーセット工具30と、を備えるものである。
このような構成により、簡易な構成のワッシャー配置システム1で、複数のスタッドボルト51a・51a・・・に対して、同時に、かつ、確実にワッシャー53を配置することができる。
【0101】
また、本発明の一実施形態に係るワッシャー53の配置方法は、ワッシャー配置システム1を用いたものであって、ワッシャー並べ装置10により、ワッシャー配置部11の所定の並べ位置α1〜α10に、複数のワッシャー53・53・・・を配置する工程(STEP−1)と、所定の並べ位置α1〜α10に複数のワッシャー53・53・・・が配置された状態であるワッシャー並べ装置10に対して、各並べ位置α1〜α10の鉛直上方に、各ソケット部33・33・・・を配置するように、ワッシャーセット工具30を配置し、ワッシャーセット工具30を、鉛直下方に変位させて、ワッシャー配置部11の各並べ位置α1〜α10に配置されている各ワッシャー53・53・・・を、ワッシャーセット工具30の各保持部33c・33c・・・に嵌め込む工程と(STEP−2)、配置対象たる複数のスタッドボルト51a・51a・・・の鉛直上方に、各保持部33c・33c・・・においてワッシャー53がはめ込まれた状態であるワッシャーセット工具30の各ソケット部33・33・・・を配置するとともに、ワッシャーセット工具30を鉛直下方に変位させて、各スタッドボルト51a・51a・・・にワッシャー53を配置する工程(STEP−3)と、を備えるものである。
このような構成により、簡易な構成のワッシャー配置システム1により、複数のスタッドボルト51a・51a・・・に対して、同時に、かつ、確実にワッシャー53を配置することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 ワッシャー配置システム
10 ワッシャー並べ装置
11 ワッシャー配置部
12 ワッシャー供給部
15 保持部
16 ガイド部材
17 支持部材
20 留置部
21 基台部
23 回転羽根
24 筒状部
25 拡散部
26 押し込み部
30 ワッシャーセット工具
33 ソケット部
50 ワーク
53 ワッシャー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワッシャーを所定の並べ位置に位置決めするための部位である、略リング状の形状を有するワッシャー配置部と、
該ワッシャー配置部に前記複数のワッシャーを供給するための部位であって、前記ワッシャー配置部の内側に配置されるワッシャー供給部と、
を備え、
前記ワッシャー供給部は、
該ワッシャー供給部に投入される前記複数のワッシャーを留め置くための部位であって、水平な床部を有する留置部と、
前記ワッシャー配置部の軸心を中心として前記床部上を回転する、前記留置部に留め置かれた前記ワッシャーを前記床部に対して平行な方向に押圧するための羽根部材と、
を備える、
ことを特徴とするワッシャー並べ装置。
【請求項2】
前記留置部は、
底部を構成する、前記ワッシャー配置部に比して高い位置に形成される略円形の水平面である底面部と、該底面部の外周縁部において、水平方向に対して半径方向外側に向けて先下がりの傾斜部を形成する傾斜面と、を有する略円錐台形状の基台部と、
前記羽根部材の回転軸心と軸心を一致させた状態で配置される略円筒状の部位であって、前記羽根部材と一体的に構成される筒部と、
により構成され、
前記筒部の前記底面部と対面する側の端部に、前記ワッシャーを排出するための開口部たるワッシャー出口を形成する、
ことを特徴とする請求項1に記載のワッシャー並べ装置。
【請求項3】
前記ワッシャー配置部は、
前記ワッシャーを配置するための所定の位置において、
前記ワッシャーを嵌め込んで水平に保持するための該ワッシャーに対応した形状を有する凹部たる保持部を備え、
また、前記保持部は、
前記ワッシャーの下面を支持する支持部と、
前記ワッシャーの外周面に沿わせる案内部と、
を備え、
さらに、前記案内部は、
鉛直方向に変位可能であり、かつ、前記支持部に比して下方に変位可能に構成される、
ことを特徴とする請求項2に記載のワッシャー並べ装置。
【請求項4】
前記ワッシャー供給部は、
前記筒部から半径方向外側に突設されるとともに、前記ワッシャー配置部に接する部位であって、
前記ワッシャー配置部に供給された前記ワッシャーを、前記ワッシャー配置部上において、前記羽根部材の回転方向に押圧するための部位である第一の押圧部と、
前記ワッシャー配置部に供給された前記ワッシャーを、前記保持部において、下方に押圧するための部位である第二の押圧部と、
を備える、
ことを特徴とする請求項3に記載のワッシャー並べ装置。
【請求項5】
前記羽根部材は、
鉛直方向視における前記ワッシャーと当接する面の延長線が、
該羽根部材の回転中心からずれており、かつ、
鉛直方向視における該羽根部材の幅が、
該羽根部材の回転中心から外端部に向かうにしたがって狭くなる、
ことを特徴とする請求項4に記載のワッシャー並べ装置。
【請求項6】
前記羽根部材は、
上側の面を、
半径方向外側に向けて先下がりとなる傾斜面により構成する、
ことを特徴とする請求項5に記載のワッシャー並べ装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のワッシャー並べ装置と、
前記ワッシャー配置部に設定された所定の並べ位置に対応する位置に配置される複数のソケット部を有し、前記ソケット部には、前記ワッシャーが嵌り込む形状の凹部である保持部が形成される、前記複数のワッシャーを同時にセットするための工具であるワッシャーセット工具と、
を備える、
ことを特徴とするワッシャー配置システム。
【請求項8】
請求項7に記載のワッシャー配置システムを用いたワッシャーの配置方法であって、
前記ワッシャー並べ装置により、前記ワッシャー配置部の所定の並べ位置に、複数の前記ワッシャーを配置する工程と、
前記所定の並べ位置に複数の前記ワッシャーが配置された状態である前記ワッシャー並べ装置に対して、各並べ位置の鉛直上方に、各ソケット部を配置するように、前記ワッシャーセット工具を配置し、該ワッシャーセット工具を、鉛直下方に変位させて、前記ワッシャー配置部の各並べ位置に配置されている各ワッシャーを、前記ワッシャーセット工具の各保持部に嵌め込む工程と、
配置対象たる複数のスタッドボルトの鉛直上方に、各保持部において前記ワッシャーがはめ込まれた状態である前記ワッシャーセット工具の前記各ソケット部を配置するとともに、前記ワッシャーセット工具を鉛直下方に変位させて、各スタッドボルトに前記ワッシャーを配置する工程と、
を備える、
ことを特徴とするワッシャーの配置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−22680(P2013−22680A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159433(P2011−159433)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】