ワークの方向判別方法とその装置、および方向判別機能を備えているワーク
【課題】非接触式のICタグを備えているワークの通信機能をそのまま利用して、ワークの方向を判別できる方向判別方法を提供する。
【解決手段】表面の所定位置にパッシブタグ型のICタグ4が固定してあるワーク1を判別対象にして、その方向を方向判別装置11で判別する。ICタグ4は、基板5、ICモジュール6、および基板5に偏寄配置されるアンテナコイル7を備えている。方向判別装置11はICタグ4と通信するアンテナ14と、判定回路15とを備えている。以て、ワーク1と方向判別装置11とが所定の通信位置に位置する状態において、方向判別装置11のアンテナ14とICタグ4のアンテナコイル7との間で通信を行ない、通信時の通信強度の大小を判定回路15で判定してワーク1の方向を判別する。
【解決手段】表面の所定位置にパッシブタグ型のICタグ4が固定してあるワーク1を判別対象にして、その方向を方向判別装置11で判別する。ICタグ4は、基板5、ICモジュール6、および基板5に偏寄配置されるアンテナコイル7を備えている。方向判別装置11はICタグ4と通信するアンテナ14と、判定回路15とを備えている。以て、ワーク1と方向判別装置11とが所定の通信位置に位置する状態において、方向判別装置11のアンテナ14とICタグ4のアンテナコイル7との間で通信を行ない、通信時の通信強度の大小を判定回路15で判定してワーク1の方向を判別する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグを備えているワークの方向判別方法とその装置、および方向判別機能を備えているワークに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の方向判別方法に関していくつかの提案がある。例えば特許文献1では、チップコイルを判別対象にして、左右両端に設けた端子電極の方向を特定できるようにしている。チップコイルは、左右に長い長方形状のガラスセラミック基板と、基板の表面に形成される渦巻き状のコイルと、基板の左右辺部のそれぞれに形成される一対の端子電極とで構成してあり、コイル形成領域の外面がポリイミドでコーテイングしてある。チップコイルの方向を判別する必要性は次の理由による。端子電極は、コイルの外端から導出される端子電極と、コイルの内端から導出される端子電極とからなるが、これらの電極を常に一定の姿勢で回路基板等に実装して、実装状態における磁束の発生態様を一定化するためである。
【0003】
チップコイルの方向の判別は、基板の前後でコイルパターンが異なることを利用して行なう。具体的には、基板の前後幅方向の中央を通る中心線を想定し、中心線の前側と後ろ側との対象位置に同じ面積の領域を想定し、各領域に臨むコイルパターンを光学的に読み込み、読み込んだ画像を2値化処理して白ピクセル数を求め、得られた白ピクセル数の違いからチップコイルの左右方向を判別している。
【0004】
特許文献2のカード処理装置では、目視可能なデータ表示部を備えた非接触式のICカードを判別対象にして、ICカードがカード処理装置に対して表裏が正しく装填されたか、さらにICカードの装填始端方向が正しいか否かを判別できるようにしている。ICカードは、カード本体にICメモリとアンテナを組み込み、その表面に書き換え可能な感熱層からなるデータ表示部を設けて構成してある。また、カード本体の裏面には方向判別用のマークが設けてある。判別マークは印刷表示、バーコード、光コード、あるいは穴や切欠などで構成してあり、判別マークをカード処理装置の識別センサーで検知して、ICカードの装填方向の適否を判別している。
【0005】
因みにカード処理装置は、ICカードが表裏逆に装填された場合や、ICカードの装填始端方向が逆であっても、ICチップのデータを読み書きできる。しかし、データ表示部が表になる状態で、しかも装填始端方向が適正な状態でICカードをカード処理装置に装填しない限りは、データ表示部の表示内容を適正に書き換えできない。そのために、先のようにICカードの方向を判別している。
【0006】
上記のICカードと同様に方向判別用の識別子を備えているカートリッジメモリは、特許文献3に見ることができる。そこでは、長方形状の基板にICチップとループアンテナを組み込み、基板の長手方向の一端寄りに配置したICチップの表面に黒色の樹脂材をコーティングして、先の判別マークに相当する識別体としている。カートリッジメモリは、直線状の搬送路に沿って自動組立装置へ向かって搬送され、搬送途中に赤外線センサーで先の識別体の有無を検知して、搬送姿勢が適正であるか否かを判定する。搬送姿勢が適正でないカートリッジメモリには、エアーノズルの噴出空気が吹き付けられて搬送路の外へ排除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3339381号公報(段落番号0013〜0014、図1)
【特許文献2】特開2000−311227号公報(段落番号0025、図1)
【特許文献3】特開2005−041607号公報(段落番号0015、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の方向判別方法においては、予め設定された領域のコイルパターンを光学的に読んで画像を2値化処理し、得られた白ピクセル数の違いからチップコイルの方向を判別する。そのため、判別マークなどの識別体を省略できる分だけチップコイルを低コスト化できるうえ、識別体を設けることに伴なう製造過程でのチップコイルの特性変化を避けることができる。しかし、方向判別を行なうには、撮像機器や画像処理手段などが不可欠となるため、製造現場などで方向判別を行なうのには問題ないが、ユーザーレベルで方向判別を行なうのには適さない。また、コイルパターンと背景とを明確に識別できることが前提となるため、コイルパターンと背景とが同じ色調でコントラストが明確でない場合に、判別精度が極端に低下し適用できない。
【0009】
特許文献2・3の方向判別法では、判別マークや識別体をセンサーで検知して方向の適否を判別するので、撮像機器や画像処理手段を使用する先の判別法に比べて、より手軽に方向の判別を行なえる。ユーザーレベルでの方向判別も可能であろう。しかし、判別対象が繰り返し使用されるものである場合に、判別マークや識別体が汚損し劣化して方向判別を的確に行なえないおそれがある。例えば、識別体がバーコードで形成してあるような場合に、バーコードの一部が傷付けられ、あるいは異物が付着して、読み取り不能となるおそれがある。こうした事態を避けるには、判別マークや識別体が汚損し劣化するのを防ぐためのメンテナンスを行なう必要があり余分な手間が掛かる。
【0010】
本発明の目的は、判別マークや識別体などを設ける必要がなく、しかも、センサーや撮像機器などの識別手段を別途用意する必要もなくワークの方向を判別できる、方向判別方法と装置、および方向判別機能を備えたワークを提供することにある。
本発明の目的は、繰り返し使用されるワークに好適な方向判別方法と装置、および方向判別機能を備えたワークを提供することにある。
本発明の目的は、非接触式のICタグを備えているワークの通信機能をそのまま利用して高い信頼度で方向判別を行なえ、したがって、従来の方向判別法に比べて方向判別のための機材コストを削減し、ワークの方向の判別を的確に行なえるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の方向判別方法は、表面の所定位置にパッシブタグ型のICタグ4が固定してあるワーク1を判別対象にして、ワーク1の方向を方向判別装置11で判別する。ICタグ4は、基板5と、基板5に隣接配置されるICモジュール6およびアンテナコイル7を備えている。方向判別装置11はICタグ4と通信するアンテナ14と、判定回路15とを備えている。以て、ワーク1と方向判別装置11とが所定の通信位置に位置する状態において、方向判別装置11のアンテナ14とICタグ4のアンテナコイル7との間で通信を行ない、通信時の通信強度の大小を判定回路15で判定してワーク1の方向を判別することを特徴とする。
【0012】
所定の通信位置に位置するワーク1が正姿勢である場合には、ICタグ4に設けたアンテナコイル7を、方向判別装置11のアンテナ14の通信可能領域Zの内部に位置させる。また、所定の通信位置に位置するワーク1が逆姿勢である場合には、ICタグ4に設けたアンテナコイル7を、方向判別装置11のアンテナ14の通信可能領域Zの外部に位置させる。以て、正姿勢時のワーク1と逆姿勢時のワーク1の、通信時の通信強度の有無を判定回路15で判定してワーク1の方向を判別する。
【0013】
方向判別装置11は、タグリーダーに判定回路15を付加して構成する。タグリーダーのアンテナ14と、ICタグ4のアンテナコイル7との間で通信を行ない、判定回路15で通信時の通信強度の大小を判定してワーク1の方向を判定する。
【0014】
一定姿勢で所定間隔おきに隣接配置した一群のワーク1を、所定位置に設置した方向判別装置11へ向かって一方向へ搬送する。以て、ワーク1が所定の通信位置に到達するごとに、方向判別装置11とワーク1に設けたICタグ4との間で通信を行なって、ワーク1の方向判別を連続して行なう。
【0015】
本発明の方向判別装置は、表面の所定位置にパッシブタグ型のICタグ4が固定してあるワーク1を判別対象にして、ワーク1の方向を判別する。ICタグ4は、基板5と、基板5に隣接配置されるICモジュール6およびアンテナコイル7とを備えている。方向判別装置11は、アンテナコイル7を介してICタグ4と通信を行なうアンテナ14と、通信時の通信強度の大小を判定する判定回路15とを備えている。ワーク1と方向判別装置11とが所定の通信位置に位置する状態において、方向判別装置11のアンテナ14とICタグ4のアンテナコイル7との間で通信を行ない、通信時の通信強度の大小を判定回路15で判定して、ワーク1の方向を判別する。
【0016】
正姿勢に保持されたワーク1と方向判別装置11とが所定の通信位置に位置する状態において、方向判別装置11のアンテナ14の通信可能領域Zの一部が、ICタグ4に設けたアンテナコイル7の設置領域とのみ重なるように、アンテナ14を配置する。
【0017】
方向判別装置11は、通信強度の大小を判定する判定回路15を備えたタグリーダーで構成する。
【0018】
方向判別装置11のアンテナ14に隣接して、アンテナ14の漏洩磁束を減衰する磁性材料製の減磁体18を配置する。
【0019】
本発明に係るワークは、所定の通信位置において方向判別装置11と通信して、ワーク姿勢が正姿勢と逆姿勢とのいずれであるかを方向判別装置11で判定される。方向判別装置11はICタグ4と通信するアンテナ14と、通信時の通信強度の大小を判定する判定回路15とを備えている。ワーク1表面の所定位置には、方向判別装置11と通信できるICタグ4が固定してある。ICタグ4は、基板5と、基板5に隣接配置されるICモジュール6およびアンテナコイル7とを含んでパッシブタグ型に構成する。所定の通信位置におけるワーク1の姿勢の違いに基づき、アンテナコイル7と方向判別装置11のアンテナ14の通信可能領域Zとの通信距離が大小に異なるように、アンテナコイル7を基板5に偏寄配置する。
【0020】
所定の通信位置に位置するワーク1が正姿勢であるときにのみ、ICタグ4に設けたアンテナコイル7の全体が、方向判別装置11のアンテナ14の通信可能領域Zの内部に位置するように、アンテナコイル7を基板5の一側に偏寄配置する。
【0021】
ICタグ4に設けたアンテナコイル7の配置パターンを非矩形状に形成する。所定の通信位置に位置するワーク1が、正姿勢であるときと逆姿勢であるときとで、方向判別装置11のアンテナ14の通信可能領域Zと、アンテナコイル7との重合面積が大小に異なるように、アンテナコイル7を基板5に配置する。
【0022】
ICタグ4のアンテナコイル7に隣接して、アンテナ14の漏洩磁束を減衰する磁性材料製の減磁体18を配置する。
【0023】
2個の区室2・2を備えた直方体状のワーク1においては、ワーク1の上面の前後対称位置に各区室2・2用の出入口3・3を開口し、両出入口3・3の間にICタグ4を配置する。ICタグ4を構成する基板5の前後いずれか一側にアンテナコイル7を偏寄配置し、他側にICモジュール6を配置する。
【発明の効果】
【0024】
本発明においては、所定の通信位置において、方向判別装置11のアンテナ14と、ワーク1側に設けたICタグ4のアンテナコイル7との間で通信を行ない、通信時の通信強度の大小を判定回路15で判定してワーク1の方向を判別するので、従来の判別法において不可欠であった、判別マークや識別体などをワーク1に別途設ける必要がなく、さらに、センサーや撮像機器などの識別手段を別途用意する必要もなく、ワーク1の方向を判別できる。つまり、ワーク1に設けた非接触式のICタグ4の通信機能をそのまま利用して方向判別を行なうので、方向判別のための機材コストを削減でき、しかもワーク1のコストを削減できる。さらに、バーコードなどの識別体において避けられない汚損や劣化の心配がなく、とくに、繰り返し使用されるワーク1が判別対象である場合に、長期にわたって高い信頼度で方向判別を行なえる。ワーク1の形、表面の色、模様などに影響されることもなく方向判別を行なえる利点もある。
【0025】
基本的に、ワーク1の方向の判別は通信強度の大小を判定回路15で判定して行なう。しかし、ICタグ4に設けたアンテナコイル7が、方向判別装置11のアンテナ14の通信可能領域Zの内部にあるか、外部にあるか、つまり、通信強度の有無を判定回路15で判定してワーク1の方向を判別すると、判定結果をより明確して方向の判別をさらに的確に行なうことができ、判別結果の信頼性を向上できる。
【0026】
タグリーダーを利用して、これに判定回路15を付加して方向判別装置11を構成すると、既存のタグリーダーを利用する分だけ方向判別装置11を低コスト化できる。さらに、機器構造が簡単であるので、製造過程で方向判別を行なう場合はもちろん、ユーザーレベルで方向判別を行なう場合であっても、問題なく方向判別を行なえる。一群のワーク1を一方向へ搬送しながら、その方向判別を連続して行なうようにすると、方向判別を時間ロスのない状態で効率よく行なえる。
【0027】
方向判別装置11のアンテナ14に隣接して減磁体18を配置すると、アンテナ14の漏洩磁束を減磁体18で吸収し減衰して、アンテナ14の通信可能領域Zを適宜変形できる。したがって、ワーク1が逆姿勢にあるときのアンテナコイル7から遠ざかる向きに、通信可能領域Zを変形させることにより、アンテナ14とアンテナコイル7とをより接近させて確実に通信できる。ICタグ4側に減磁体18を配置する場合にも同様の作用効果を発揮できる。
【0028】
ワーク1に設けたICタグ4のアンテナコイル7を基板5に対して偏寄配置し、ワーク姿勢が正姿勢である場合と、逆姿勢である場合とで、方向判別装置11とICタグ4との間の通信強度を大小に異ならせるワーク1によれば、ICタグ4の通信機能をそのまま利用して、通信強度の違いから方向判別を行なえるので、判別マークや識別体などを別途設ける必要がなく、その分だけワーク1のコストを削減できる。方向判別のための機材コストも削減できる。例えば、バーコードなどの識別体において避けられない汚損や劣化の心配がなく、繰り返し使用されるワーク1が判別対象である場合でも、長期にわたって高い信頼度で方向判別を行なえる。
【0029】
ワーク1が正姿勢であるときにのみ、アンテナコイル7の全体が方向判別装置11のアンテナ14の通信可能領域Zの内部に位置するようにしてあると、ワーク1が正姿勢であるときと逆姿勢であるときとの通信強度が明確に異なる。したがって、判定回路15による判定結果をより明確して、方向判別をさらに的確に行なって、判別結果の信頼性を向上できる。
【0030】
ワーク1が正姿勢であるときと逆姿勢であるときとで、アンテナ14の通信可能領域Zとアンテナコイル7との重合面積が大小に異なるようにしてあると、ワーク1の姿勢の如何にかかわらず所定の通信位置にワーク1があることがわかる。これにより、例えばワーク1を連続して供給する場合などに、供給が途切れたことや、類似する形状ではあってもICタグ4を備えていない異質のワークが混入していることを判別できる。また、アンテナコイル7の配置パターンを非矩形状に形成することにより、基板5に対するアンテナコイル7の配置位置の自由度を向上でき、ワーク1の大きさや形状の違いに適合するICタグ4を容易に適合できる。
【0031】
上面の前後対称位置に出入口3・3を開口し、両出入口3・3の間に配置した基板5の前後いずれか一側にアンテナコイル7を偏寄配置する容器状のワーク1によれば、ワーク1が正姿勢であるときと逆姿勢であるときとで、方向判別装置11とアンテナコイル7との距離差を大きくできる。つまり、ワーク1が正姿勢であるときと逆姿勢であるときとの通信強度を明確に異ならせて、判定回路15による判定結果をより明確化し、方向判別を的確に行なうことができる。また、前後の出入口3・3をICタグ4で物理的に隔離するので、液充填時などに飛び跳ねた試薬液が隣の出入口3へ混入するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】方向判別装置とワークに設けたICタグの位置関係を示す平面図である。
【図2】方向判別機能を備えたワークの一例を示す斜視図である。
【図3】方向判別手順の概要を示す斜視図である。
【図4】方向判別装置とICタグとが通信するときの位置関係を示す平面図である。
【図5】方向判別装置とICタグとが通信するときの位置関係を示す側面図である。
【図6】ワークが位置ずれした時のアンテナの配置形状の違いに基づく通信可能領域を示す平面図である。
【図7】ICタグ側のアンテナコイルの別実施例を示す平面図である。
【図8】ICタグ側のアンテナコイルのさらに別の実施例を示す平面図である。
【図9】ICタグ側のアンテナコイルのさらに別の実施例を示す平面図である。
【図10】ICタグ側のアンテナコイルのさらに別の実施例を示す平面図である。
【図11】方向判別装置の別の実施例を示す平面図である。
【図12】図11に係る方向判別装置の側面図である。
【図13】ICタグの別の実施例を示す平面図である。
【図14】試験例1の試験形態を示す平面図である。
【図15】試験例2の試験形態を示す平面図である。
【図16】試験例3の試験形態を示す平面図である。
【図17】試験例4の試験形態を示す平面図である。
【図18】試験例5の試験形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(実施例) 図1ないし図6は本発明に係る方向判別方法とその装置、および方向判別の対象となるワークの実施例を示す。なお、以下の実施例においては、説明の便宜上図2において交差矢印と前後、左右、上下の表示で特定した方向を、前後方向、左右方向および上下方向として説明する。
【0034】
図2に示すように、ワーク1はプラスチック成形された直方体状の容器からなり、その内部に独立した前後一対の区室2・2を備えている。各区室2・2は、ワーク1の上面の前後対称位置で開口する出入口3・3を備えており、両出入口3・3の間の前後中央部分には、方向判別機能を発揮するICタグ4が接着固定してある。ICタグ4は、基板5と、基板5の前側肉壁内に埋設されるICモジュール6と、基板5の後部寄りに偏寄配置されるアンテナコイル7などでパッシブタグ型に構成する。ICモジュール6にはワーク1の固有番号(管理番号)が記録されており、後述する方向判別装置11でワーク1の方向の判別を行なうとき、データベースと照合されて、使用条件にマッチした記録内容がデータベースに追記される。例えば、試験を実施する日付や、試験内容、試験実施者の氏名などがデータベースに追記される。
【0035】
ワーク1の各区室2・2には、それぞれ異なる種類の試液、あるいは供試材液が所定量ずつ充填される。この状態のワーク1の外観は前後対称になっている。そのため、前後が正しい状態(以下、単に正姿勢という。)のワーク1と、前後が逆になった状態(以下、単に逆姿勢という。)のワーク1とが混在していたとしても、外観から各状態を判別することはできない。このような混乱を避けるために、アンテナコイル7がワーク1の上面後部側に位置する状態(図2に示す状態)を正姿勢として、逆姿勢になっているワーク1が試液、あるいは供試材液の充填位置へ搬送されるのを防止する。
【0036】
各区室2・2に試液や供試材液が充填されたワーク1は、図3に示すように各ワーク1が左右に小さな間隔を隔てて隣接する状態で搬送装置10に載置されて、矢印Aで示すように搬送装置10の一側に配置した方向判別装置11へ向かって断続的に搬送される。方向判別装置11の搬送方向下手側には、方向判別装置11によって逆姿勢であると判定されたワーク1を正姿勢に戻すための姿勢変更装置12が設けてある。正姿勢に揃えられたワーク1は、姿勢変更装置12の搬送方向下手側に設けた充填装置(図示していない)によって、各区室2に供試材や試薬が充填されたのち、搬送装置10から送出される。なお、使用後のワーク1は洗浄したうえで繰り返し使用される。
【0037】
方向判別装置11は、ICタグ4の記録内容を読み込みあるいは記録できるタグリーダーからなり、タグリーダーには、ICタグ4と通信を行なう渦巻き状のアンテナ14と、通信時の通信強度の大小を判定する判定回路15を含む制御部16などが設けてある。図3に示すように、ワーク1が方向判別装置11の真下の通信位置に到達すると、そのことを図示していないセンサーで検知して、検知信号が制御部16に出力され、方向判別装置11が下降してアンテナ14をICタグ4のアンテナコイル7に接近させ、両者間で通信を行なう。
【0038】
具体的には、制御部16から出力されたデータを含む搬送波がアンテナ14から発信され、ICタグ4のアンテナコイル7が受信する。搬送波を受信したICタグ4は、予めICモジュール6に記録されていた固有番号を反射波を介してアンテナ14へ返信する。このときの方向判別装置11とICタグ4との間の通信強度(返信された反射波の通信強度)の大小、あるいは通信強度の有無を判定回路15で判定することにより、ワーク1の姿勢が正姿勢であるか逆姿勢であるかを知ることができる。
【0039】
先に説明したように、ワーク1が正姿勢にあるときのICタグ4のアンテナコイル7は、基板5の後部寄りに偏寄配置してある。したがって、ワーク1が正姿勢にあるときのアンテナコイル7は、図1(a)に想像線で示すように、方向判別装置11のアンテナ14の通信可能領域Zの内部に位置していて適正な通信強度が得られる。しかし、ワーク1が逆姿勢にあるときのICタグ4のアンテナコイル7は、図1(b)に示すように、方向判別装置11のアンテナ14の真下より前方へ大きくずれた位置、即ちアンテナ14の通信可能領域Zの外部に位置しており、方向判別装置11とICタグ4とは通信不能な状態となって通信強度は殆どゼロとなる。
【0040】
上記のように、ICタグ4側のアンテナコイル7の前後位置の違いだけで、方向判別装置11とICタグ4との間の通信強度を明確に異ならせるには、ICタグ4が電磁誘導方式のパッシブタグ型であることが必要となる。電磁誘導方式のパッシブタグ型のICタグ4は、方向判別装置11のアンテナ14とICタグ4のアンテナコイル7とが磁束結合してエネルギー信号を伝達する関係で、通信可能な距離が数cm前後と極めて小さい特性がある。したがって、ICタグ4を電磁誘導方式のパッシブタグとして構成し、さらに方向判別装置11のアンテナ14を充分にICタグ4に接近させて、通信可能な搬送波の覆域を小さく絞り込むことにより、アンテナコイル7の前後位置の違いに応じて通信強度を明確に異ならせることができることとなる。アンテナ14とアンテナコイル7と上下方向の距離は、アンテナ14から発信される電磁波の強度にもよるが(0〜50)mmが好適である。因みに、電波方式のアクティブタグ型のICタグの場合には、通信可能な距離が数mにも達するため、アンテナコイル7の前後位置の違いだけで通信強度を明確に異ならせることは極めて困難となる。
【0041】
また、図6(a)に示すように、ワーク1を所定の通信位置へ搬送した状態において、ワーク1が所定の通信位置から僅かにずれた状態にあり、しかもその姿勢が逆姿勢である場合には、隣接するワーク1のICタグ4のアンテナコイル7が、方向判別装置11のアンテナ14による通信可能領域Zに入り込むおそれがある。その場合の通信強度が充分に小さい場合は問題ないが、通信強度が判別回路15に設定された閾値を僅かでも越える大きさである場合には、真の通信相手であるワーク1の姿勢が逆姿勢であることを特定できないことになる。
【0042】
こうした状況にも対処できるように、方向判別装置11のアンテナ14のコイルの左右幅L1を、同コイルの前後幅L2より小さくして、アンテナ14の通信可能領域Zの左右幅を制限している。因みに、図6(b)に示すように、アンテナ14のコイルの左右幅が、同コイルの前後幅より大きい場合には、アンテナ14の通信可能領域Zの左右幅が拡がるため、ワーク1が所定の通信位置から僅かにずれた状態にあるとき、隣接するワーク1のICタグ4との間で通信が可能となってしまう。
【0043】
上記のように構成した本発明の方向判別装置によれば、ワーク1の上面中央に配置したICタグ4と方向判別装置11との間で通信が可能であるか否かを判定するだけで、ワーク1が正姿勢で搬送されているか否かを的確に知ることができる。従来の方向判別手法とは異なり、ワーク1に判別マークや識別体などを別途設ける必要がないので、ワーク1を低コストで提供できる。また、センサーや撮像機器などの識別手段を別途用意する必要がなく、既存のタグリーダに判定回路15を付加して方向判別装置11とすることができるので、方向判別のための機材コストを削減できる。さらに、非接触式のICタグを備えているワーク1の通信機能をそのまま利用して高い信頼度で方向判別を行なえる。
【0044】
以下に、ICタグ4におけるアンテナコイル7の配置パターンと、各配置パターンに適合する方向判別装置11のアンテナ14の配置形態の別実施例を示す。以下の各実施例においては、先の実施例と異なる個所のみを説明し、先の実施例と同じ部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0045】
図7においては、ICタグ4をワーク1の上壁の前後中央に配置し、左右横長の基板5の左半部にアンテナコイル7を、右半部にICモジュール6を配置した。この状態がワーク1の正姿勢であり、ワーク1が逆姿勢になっている場合のアンテナコイル7は、基板5の右半部に位置することになる。また、正姿勢のワーク1が所定の通信位置にあるとき、方向判別装置11のアンテナ14の中心位置はワーク1の左辺部の近傍に位置しており、アンテナコイル7の後半側のみが通信可能領域Zに重なっている。ワーク1が逆姿勢になっている状態では、想像線で示すようにアンテナコイル7は通信可能領域Zの外にあり通信不能となる。
【0046】
図8においては、ICタグ4をワーク1の上壁の前後中央に配置し、左右横長の基板5の右半部の後隅に三角形状のアンテナコイル7を配置し、左半部前隅側にICモジュール6を配置した。この状態がワーク1の正姿勢であり、ワーク1が逆姿勢になっている場合のアンテナコイル7は、基板5の左半部前隅側に位置することになる。アンテナコイル7を三角形状に形成するのに伴ない、方向判別装置11のアンテナ14を傾斜配置して、その長辺部が三角形のアンテナコイル7の底辺部分と平行になるようにした。ワーク1が所定の通信位置において正姿勢にある状態では、アンテナコイル7の全体がアンテナ14の通信可能領域Zの内部に位置する。しかし、ワーク1が逆姿勢になっている状態では、想像線で示すようにアンテナコイル7は通信可能領域Zの外にあり通信不能となる。
【0047】
図9においては、ICタグ4をワーク1の上壁の前後中央に配置し、左右横長の基板5の後辺部および右辺部に沿って逆L字状の領域を確保し、この領域内にアンテナコイル7を逆L字形の渦巻き状に形成し、残る領域にICモジュール6を配置した。この状態がワーク1の正姿勢であり、ワーク1が逆姿勢になっている場合のアンテナコイル7は、想像線で示すように前辺部および左辺部に沿ってL字状の領域を占める。正姿勢のワーク1が所定の通信位置にあるとき、方向判別装置11のアンテナ14の中心位置はワーク1の右辺部の近傍に位置しており、アンテナコイル7の後右隅のみが通信可能領域Zに重なっている。ワーク1が逆姿勢になっている状態では、想像線で示すようにアンテナコイル7は通信可能領域Zの外にあり通信不能となる。
【0048】
図10においては、ICタグ4をワーク1の上壁の前後中央に配置し、正方形上の基板5の中央に正三角形状のアンテナコイル7を倒立する状態で配置した。この状態がワーク1の正姿勢であり、ワーク1が逆姿勢になっている場合のアンテナコイル7は、想像線で示すように正立する正三角形状となる。正姿勢のワーク1が所定の通信位置にあるとき、方向判別装置11のアンテナ14は、その長辺部が基板5の前後辺部と平行になる状態で配置してあり、アンテナコイル7の底辺部分のみが通信可能領域Zに重なっている。ワーク1が逆姿勢になっている状態では、想像線で示すようにアンテナコイル7の頂部のみが通信可能領域Zの内部にあり、両状態の通信強度の違いから、ワーク1の姿勢の正逆を知ることができる。
【0049】
図11および図12は、方向判別装置11のアンテナ14の前側に隣接して、漏洩磁束を減衰する減磁体18を配置し、通信可能な搬送波の覆域をアンテナ14の前側において小さく絞り込むようにした。減磁体18は、フェライトに代表される磁性材料で形成してある。このように、アンテナ14の通信可能領域Zを局部的に削減することにより、正姿勢のワーク1が所定の通信位置にあるとき、アンテナ14とアンテナコイル7とをより接近させて確実に通信できる。また、ワーク1が逆姿勢にあるときには、アンテナコイル7を通信可能領域Zの外に確実に位置させることができる。したがって、ワーク1が正姿勢にあるときと逆姿勢にあるときの、対称中心軸からアンテナコイル7までの間隔寸法をさらに小さくすることができる。
【0050】
上記の減磁体18は、図13(a)に示すようにICタグ4の側に設けることができる。その場合には、ワーク1が正姿勢にあるとき、基板5の後部にアンテナコイル7を配置し、基板5の前部に減磁体18を設ける。以て、図13(b)に示すように、ワーク1が逆姿勢にあるときに、アンテナ14の通信可能領域Zがアンテナコイル7から遠ざかる向きへ制限されるようにした。
【0051】
以上の説明から明らかな通り、本発明のワークと方向判別方法は以下の態様で実施することができる。
表面の所定位置にパッシブタグ型のICタグが固定してあるワークを判別対象にして、ワークの方向を方向判別装置で判別する方向判別方法であって、ICタグは、基板と、基板に隣接配置されるICモジュールおよびアンテナコイルを備えており、方向判別装置はICタグと通信するアンテナと、判定回路とを備えており、ワークと方向判別装置とが所定の通信位置に位置する状態において、方向判別装置のアンテナとICタグのアンテナコイルとの間で通信を行ない、通信時の通信強度の大小を判定回路で判定してワークの方向を判別することを特徴とするワークの方向判別方法。
【0052】
上記のワークの方向判別方法において、所定の通信位置に位置するワークが正姿勢である場合には、ICタグに設けたアンテナコイルが、方向判別装置のアンテナの通信可能領域Zの内部に位置し、所定の通信位置に位置するワークが逆姿勢である場合には、ICタグに設けたアンテナコイルが、方向判別装置のアンテナの通信可能領域Zの外部に位置しており、正姿勢時のワークと逆姿勢時のワークの、通信時の通信強度の有無を判定回路で判定してワークの方向を判別する。
【0053】
上記のワークの方向判別方法において、方向判別装置はタグリーダーに判定回路を付加して構成されており、タグリーダーのアンテナと、ICタグのアンテナコイルとの間で通信を行ない、判定回路で通信時の通信強度の大小を判定してワークの方向を判定する。
【0054】
上記のワークの方向判別方法において、一定姿勢で所定間隔おきに隣接配置した一群のワークを、所定位置に設置した方向判別装置へ向かって一方向へ搬送し、ワークが所定の通信位置に到達するごとに、方向判別装置とワークに設けたICタグとの間で通信を行なって、ワークの方向判別を連続して行なう。
【0055】
以下に、本発明の内容を確認するために行なった試験例1〜試験例5を説明する。
(試験例1) 図14(a)に示すように、縦横寸法が90×30mmの直方体からなるプラスチック製の試験片(ワーク)1を用意し、その上面の前後中央よりも前側へ偏寄した位置にICタグのアンテナコイル7を配置した(この状態を正姿勢とする)。偏寄寸法Gは10mm、アンテナコイル7の外周の前後寸法および左右寸法はそれぞれ20mmとした。タグリーダー側のアンテナ14の中心は、試験片1が正姿勢にあるとき、アンテナコイル7の中心の真上に位置するようにした。アンテナ14の外周の前後寸法および左右寸法はそれぞれ12mmとした。通信する電波の周波数は13.56MHzとした。図示していないがICモジュールは試験片の適所に埋設した。
【0056】
以上の試験条件下で、試験片1を正姿勢にした状態と、試験片1を逆姿勢にした状態とで、アンテナコイル7へのアクセスが可能か否かを確認した。その結果、試験片1を正姿勢にした状態では適正な通信強度が得られた。また、試験片1を逆姿勢にした状態では、アクセス不能(通信不能)であった。
さらに、図14(b)に示すように、所定の通信位置に試験片1が逆姿勢で位置し、その一側に別の試験片1Aが隣接しているときの干渉の有無を確認した。隣接する試験片1Aは正姿勢になっており、所定の通信位置にある試験片1との隣接間隔Eは40mmとした。因みに、隣接する試験片1Aのアンテナコイル7とタグリーダー側のアンテナ14の最外周の隣接間隔Fは24mmである。その結果、アンテナコイル7とアンテナ14の上下間隔を0〜50mmの範囲で変化させたが、いずれも隣接する試験片1Aに対するアクセスは不能であった。
【0057】
(試験例2) 図15(a)に示すように、試験片1の縦横寸法を90×20mmとし、その上面の前後中央に隣接する状態でICタグのアンテナコイル7を配置して、同コイル7の外辺部を試験片1の前後中央に位置させた(偏寄寸法Gは0mm)。他の試験条件は試験例1と同じにして、試験片1を正姿勢にした状態と、試験片1を逆姿勢にした状態とで、アンテナコイル7へのアクセスが可能か否かを確認した。
【0058】
その結果、試験片1を正姿勢にした状態では、適正な通信強度が得られた。このとき、アンテナコイル7とアンテナ14の上下間隔の最大値が40〜50mm以下の範囲で変化させたが、いずれの場合でも適正な通信強度が得られた。試験片1を逆姿勢にした状態では、アンテナコイル7とアンテナ14の上下間隔の最大値が20〜30mmの範囲内である場合に、適正な通信強度が得られアクセス可能であった。
さらに、図15(b)に示すように、所定の通信位置に試験片1が逆姿勢で位置し、その一側に別の試験片1Aが隣接しているときの干渉の有無を確認した。隣接する試験片1Aは正姿勢になっており、所定の通信位置にある試験片1との隣接間隔Eは20mmとした。隣接する試験片1Aのアンテナコイル7とタグリーダー側のアンテナ14の最外周の隣接間隔Fは4mmである。その結果、アンテナコイル7とアンテナ14の上下間隔の最大値が20〜30mmの範囲で、隣接する試験片1Aに対するアクセスが可能であった。
【0059】
(試験例3) 図16(a)に示すように、試験片1の縦横寸法を90×30mmとし、その上面の前後中央から前方へ僅かに偏寄した位置にICタグのアンテナコイル7を配置した。偏寄寸法Gは2.5mmとした。タグリーダー側のアンテナ14は、正姿勢にある試験片1の前後中央から前方へ偏寄した位置に配置した。その偏寄寸法Jは21.5mmとした。他の試験条件は試験例1と同じにして、試験片1を正姿勢にした状態と、試験片1を逆姿勢にした状態とで、アンテナコイル7へのアクセスが可能か否かを確認した。
【0060】
その結果、試験片1を正姿勢にした状態では、適正な通信強度が得られた。このとき、アンテナコイル7とアンテナ14の上下間隔の最大値が30〜40mm以下の範囲で変化させたが、いずれの場合でも適正な通信強度が得られた。試験片1を逆姿勢にした状態では、アンテナコイル7とアンテナ14の上下間隔を大小に変化させても、充分な通信強度が得られずアクセス不能であった。
さらに、図16(b)に示すように、所定の通信位置に試験片1が逆姿勢で位置し、その一側に別の試験片1Aが隣接しているときの干渉の有無を確認した。隣接する試験片1Aは正姿勢になっており、所定の通信位置にある試験片1との隣接間隔Eは40mmとした。隣接する試験片1Aのアンテナコイル7とタグリーダー側のアンテナ14の最外周の隣接間隔Fは24mmである。その結果、アンテナコイル7とアンテナ14の上下間隔を大小に変化させたが、隣接する試験片1Aに対してアクセス不能であった。
【0061】
(試験例4) 図17(a)に示すように、試験片1の縦横寸法を90×25mmとし、その上面の前後中央から前方へ僅かに偏寄した位置にICタグのアンテナコイル7を配置した。偏寄寸法Gは5mm、アンテナコイル7の外周の前後寸法および左右寸法はそれぞれ5×20mmとした。タグリーダー側のアンテナ14は、正姿勢にある試験片1の前後中央から前方へ偏寄した位置に配置した。その偏寄寸法Jは16.5mmとした。他の試験条件は試験例1と同じにして、試験片1を正姿勢にした状態と、試験片1を逆姿勢にした状態とで、アンテナコイル7へのアクセスが可能か否かを確認した。
【0062】
その結果、試験片1を正姿勢にした状態では、適正な通信強度が得られた。このとき、アンテナコイル7とアンテナ14の上下間隔の最大値が20〜30mm以下の範囲で変化させたが、いずれの場合でも適正な通信強度が得られた。試験片1を逆姿勢にした状態では、アンテナコイル7とアンテナ14の上下間隔を大小に変化させても、充分な通信強度が得られずアクセス不能であった。
さらに、図17(b)に示すように、所定の通信位置に試験片1が逆姿勢で位置し、その一側に別の試験片1Aが隣接しているときの干渉の有無を確認した。隣接する試験片1Aは正姿勢になっており、所定の通信位置にある試験片1との隣接間隔Eは30mmとした。隣接する試験片1Aのアンテナコイル7とタグリーダー側のアンテナ14の最外周の隣接間隔Fは14mmである。その結果、アンテナコイル7とアンテナ14の上下間隔を大小に変化させたが、隣接する試験片1Aに対してアクセス不能であった。
【0063】
(試験例5) 試験例4で使用したタグリーダーのアンテナ14を用いて、試験例1と同じ試験条件で、アンテナ14と試験片1側のアンテナコイル7との通信可能な距離分布を測定した。具体的には図18に示すように、アンテナコイル7の中心座標がX=0、Y=0である場合に、アンテナ14の中心のX座標およびY座標のずれと、アンテナコイル7とアンテナ14の上下間隔(Z座標)のずれがどのように影響するかを確認した。
図中符号Aで示すのは、アンテナ14の中心座標がアンテナコイル7の中心座標と一致している場合であり、Z座標の最大値が40〜50mm以下の範囲で適正にアクセス可能であった。
符号Bで示すのは、アンテナ14の中心座標が、X=30、Y=20である場合であり、Z座標の最大値が0〜10mm以下の範囲で適正にアクセス可能であった。
符号Cで示すのは、アンテナ14の中心座標が、X=0、Y=40である場合であり、Z座標を0としてもアクセス不能であった。
符号Dで示すのは、アンテナ14の中心座標が、X=−20、Y=−25である場合であり、Z座標の最大値が10〜20mm以下の範囲で適正にアクセス可能であった。
【0064】
以上の結果は、
Z座標が0〜10mmである場合には、アンテナコイル7の中心座標(X=0,Y=0)から半径が約28mmの範囲内にアンテナ14の中心座標があれば、確実に試験片1のアンテナコイル7にアクセスできる。
Z座標が10〜20mmである場合には、アンテナコイル7の中心座標(X=0,Y=0)から半径が約20mmの範囲内にアンテナ14の中心座標があれば、確実に試験片1のアンテナコイル7にアクセスできる。
Z座標が20〜30mmである場合には、アンテナコイル7の中心座標(X=0,Y=0)から半径が約15mmの範囲内にアンテナ14の中心座標があれば、確実に試験片1のアンテナコイル7にアクセスできる。
Z座標が30〜40mmである場合には、アンテナコイル7の中心座標(X=0,Y=0)から半径が約10mmの範囲内にアンテナ14の中心座標があれば、確実に試験片1のアンテナコイル7にアクセスできる。
Z座標が40〜50mmである場合には、アンテナコイル7の中心座標(X=0,Y=0)の真上にアンテナ14の中心座標があれば、確実に試験片1のアンテナコイル7にアクセスできる。
ことを意味しており、Z座標が大きいほど通信可能領域が小さくなることが判る。
【0065】
以上の試験例によって、ワーク1と方向判別装置11とが所定の通信位置に位置する状態において、方向判別装置11のアンテナ14とICタグ4のアンテナコイル7との間で通信を行ない、通信時の通信強度の大小を判定回路15で判定してワーク1の方向を判別できることを確認した。
【0066】
上記の実施例以外に、ICタグ4はワーク1の前後周面や左右周面に配置することができる。必要があればワーク1の底面側に設けることができる。ワーク1は実施例で説明した2液を個別に収容できる容器である必要はなく、前後対称形状のワークや左右対称形状のワークであってもよい。アンテナ14の形状は丸、三角、あるいは任意の幾何学形状に形成することができ、要はアンテナコイル7の形状との関係で選択すればよい。上記の実施例では、タグリーダーを利用して方向判別装置11を構成したがその必要はなく、タグリーダーとは別の専用の方向判別装置11を設けてワーク1の方向を判別することができる。
【0067】
搬送しながらワーク1の方向の判別を行なう場合には、ワーク1を断続搬送する必要はなく、連続搬送しながら方向の判別を行なってもよい。その場合には、逆姿勢であると判別されたワーク1に隣接する表示体を明滅させ、あるいは逆姿勢であると判別されたワーク1を搬送路から排除することができる。ワーク1の搬送軌跡は直線状である必要はなく、円または円弧状、あるいは蛇行状であってもよい。ワーク1の搬送は、実施例で説明した横方向である必要はなく、縦方向や、斜め方向であってもよい。アンテナコイル7は基板5の表面に露出する必要はないが、必要があれば基板5の表面に露出させてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 ワーク
4 ICタグ
5 基板
6 ICモジュール
7 アンテナコイル
11 方向判別装置
14 アンテナ
15 判別回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICタグを備えているワークの方向判別方法とその装置、および方向判別機能を備えているワークに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の方向判別方法に関していくつかの提案がある。例えば特許文献1では、チップコイルを判別対象にして、左右両端に設けた端子電極の方向を特定できるようにしている。チップコイルは、左右に長い長方形状のガラスセラミック基板と、基板の表面に形成される渦巻き状のコイルと、基板の左右辺部のそれぞれに形成される一対の端子電極とで構成してあり、コイル形成領域の外面がポリイミドでコーテイングしてある。チップコイルの方向を判別する必要性は次の理由による。端子電極は、コイルの外端から導出される端子電極と、コイルの内端から導出される端子電極とからなるが、これらの電極を常に一定の姿勢で回路基板等に実装して、実装状態における磁束の発生態様を一定化するためである。
【0003】
チップコイルの方向の判別は、基板の前後でコイルパターンが異なることを利用して行なう。具体的には、基板の前後幅方向の中央を通る中心線を想定し、中心線の前側と後ろ側との対象位置に同じ面積の領域を想定し、各領域に臨むコイルパターンを光学的に読み込み、読み込んだ画像を2値化処理して白ピクセル数を求め、得られた白ピクセル数の違いからチップコイルの左右方向を判別している。
【0004】
特許文献2のカード処理装置では、目視可能なデータ表示部を備えた非接触式のICカードを判別対象にして、ICカードがカード処理装置に対して表裏が正しく装填されたか、さらにICカードの装填始端方向が正しいか否かを判別できるようにしている。ICカードは、カード本体にICメモリとアンテナを組み込み、その表面に書き換え可能な感熱層からなるデータ表示部を設けて構成してある。また、カード本体の裏面には方向判別用のマークが設けてある。判別マークは印刷表示、バーコード、光コード、あるいは穴や切欠などで構成してあり、判別マークをカード処理装置の識別センサーで検知して、ICカードの装填方向の適否を判別している。
【0005】
因みにカード処理装置は、ICカードが表裏逆に装填された場合や、ICカードの装填始端方向が逆であっても、ICチップのデータを読み書きできる。しかし、データ表示部が表になる状態で、しかも装填始端方向が適正な状態でICカードをカード処理装置に装填しない限りは、データ表示部の表示内容を適正に書き換えできない。そのために、先のようにICカードの方向を判別している。
【0006】
上記のICカードと同様に方向判別用の識別子を備えているカートリッジメモリは、特許文献3に見ることができる。そこでは、長方形状の基板にICチップとループアンテナを組み込み、基板の長手方向の一端寄りに配置したICチップの表面に黒色の樹脂材をコーティングして、先の判別マークに相当する識別体としている。カートリッジメモリは、直線状の搬送路に沿って自動組立装置へ向かって搬送され、搬送途中に赤外線センサーで先の識別体の有無を検知して、搬送姿勢が適正であるか否かを判定する。搬送姿勢が適正でないカートリッジメモリには、エアーノズルの噴出空気が吹き付けられて搬送路の外へ排除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3339381号公報(段落番号0013〜0014、図1)
【特許文献2】特開2000−311227号公報(段落番号0025、図1)
【特許文献3】特開2005−041607号公報(段落番号0015、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の方向判別方法においては、予め設定された領域のコイルパターンを光学的に読んで画像を2値化処理し、得られた白ピクセル数の違いからチップコイルの方向を判別する。そのため、判別マークなどの識別体を省略できる分だけチップコイルを低コスト化できるうえ、識別体を設けることに伴なう製造過程でのチップコイルの特性変化を避けることができる。しかし、方向判別を行なうには、撮像機器や画像処理手段などが不可欠となるため、製造現場などで方向判別を行なうのには問題ないが、ユーザーレベルで方向判別を行なうのには適さない。また、コイルパターンと背景とを明確に識別できることが前提となるため、コイルパターンと背景とが同じ色調でコントラストが明確でない場合に、判別精度が極端に低下し適用できない。
【0009】
特許文献2・3の方向判別法では、判別マークや識別体をセンサーで検知して方向の適否を判別するので、撮像機器や画像処理手段を使用する先の判別法に比べて、より手軽に方向の判別を行なえる。ユーザーレベルでの方向判別も可能であろう。しかし、判別対象が繰り返し使用されるものである場合に、判別マークや識別体が汚損し劣化して方向判別を的確に行なえないおそれがある。例えば、識別体がバーコードで形成してあるような場合に、バーコードの一部が傷付けられ、あるいは異物が付着して、読み取り不能となるおそれがある。こうした事態を避けるには、判別マークや識別体が汚損し劣化するのを防ぐためのメンテナンスを行なう必要があり余分な手間が掛かる。
【0010】
本発明の目的は、判別マークや識別体などを設ける必要がなく、しかも、センサーや撮像機器などの識別手段を別途用意する必要もなくワークの方向を判別できる、方向判別方法と装置、および方向判別機能を備えたワークを提供することにある。
本発明の目的は、繰り返し使用されるワークに好適な方向判別方法と装置、および方向判別機能を備えたワークを提供することにある。
本発明の目的は、非接触式のICタグを備えているワークの通信機能をそのまま利用して高い信頼度で方向判別を行なえ、したがって、従来の方向判別法に比べて方向判別のための機材コストを削減し、ワークの方向の判別を的確に行なえるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の方向判別方法は、表面の所定位置にパッシブタグ型のICタグ4が固定してあるワーク1を判別対象にして、ワーク1の方向を方向判別装置11で判別する。ICタグ4は、基板5と、基板5に隣接配置されるICモジュール6およびアンテナコイル7を備えている。方向判別装置11はICタグ4と通信するアンテナ14と、判定回路15とを備えている。以て、ワーク1と方向判別装置11とが所定の通信位置に位置する状態において、方向判別装置11のアンテナ14とICタグ4のアンテナコイル7との間で通信を行ない、通信時の通信強度の大小を判定回路15で判定してワーク1の方向を判別することを特徴とする。
【0012】
所定の通信位置に位置するワーク1が正姿勢である場合には、ICタグ4に設けたアンテナコイル7を、方向判別装置11のアンテナ14の通信可能領域Zの内部に位置させる。また、所定の通信位置に位置するワーク1が逆姿勢である場合には、ICタグ4に設けたアンテナコイル7を、方向判別装置11のアンテナ14の通信可能領域Zの外部に位置させる。以て、正姿勢時のワーク1と逆姿勢時のワーク1の、通信時の通信強度の有無を判定回路15で判定してワーク1の方向を判別する。
【0013】
方向判別装置11は、タグリーダーに判定回路15を付加して構成する。タグリーダーのアンテナ14と、ICタグ4のアンテナコイル7との間で通信を行ない、判定回路15で通信時の通信強度の大小を判定してワーク1の方向を判定する。
【0014】
一定姿勢で所定間隔おきに隣接配置した一群のワーク1を、所定位置に設置した方向判別装置11へ向かって一方向へ搬送する。以て、ワーク1が所定の通信位置に到達するごとに、方向判別装置11とワーク1に設けたICタグ4との間で通信を行なって、ワーク1の方向判別を連続して行なう。
【0015】
本発明の方向判別装置は、表面の所定位置にパッシブタグ型のICタグ4が固定してあるワーク1を判別対象にして、ワーク1の方向を判別する。ICタグ4は、基板5と、基板5に隣接配置されるICモジュール6およびアンテナコイル7とを備えている。方向判別装置11は、アンテナコイル7を介してICタグ4と通信を行なうアンテナ14と、通信時の通信強度の大小を判定する判定回路15とを備えている。ワーク1と方向判別装置11とが所定の通信位置に位置する状態において、方向判別装置11のアンテナ14とICタグ4のアンテナコイル7との間で通信を行ない、通信時の通信強度の大小を判定回路15で判定して、ワーク1の方向を判別する。
【0016】
正姿勢に保持されたワーク1と方向判別装置11とが所定の通信位置に位置する状態において、方向判別装置11のアンテナ14の通信可能領域Zの一部が、ICタグ4に設けたアンテナコイル7の設置領域とのみ重なるように、アンテナ14を配置する。
【0017】
方向判別装置11は、通信強度の大小を判定する判定回路15を備えたタグリーダーで構成する。
【0018】
方向判別装置11のアンテナ14に隣接して、アンテナ14の漏洩磁束を減衰する磁性材料製の減磁体18を配置する。
【0019】
本発明に係るワークは、所定の通信位置において方向判別装置11と通信して、ワーク姿勢が正姿勢と逆姿勢とのいずれであるかを方向判別装置11で判定される。方向判別装置11はICタグ4と通信するアンテナ14と、通信時の通信強度の大小を判定する判定回路15とを備えている。ワーク1表面の所定位置には、方向判別装置11と通信できるICタグ4が固定してある。ICタグ4は、基板5と、基板5に隣接配置されるICモジュール6およびアンテナコイル7とを含んでパッシブタグ型に構成する。所定の通信位置におけるワーク1の姿勢の違いに基づき、アンテナコイル7と方向判別装置11のアンテナ14の通信可能領域Zとの通信距離が大小に異なるように、アンテナコイル7を基板5に偏寄配置する。
【0020】
所定の通信位置に位置するワーク1が正姿勢であるときにのみ、ICタグ4に設けたアンテナコイル7の全体が、方向判別装置11のアンテナ14の通信可能領域Zの内部に位置するように、アンテナコイル7を基板5の一側に偏寄配置する。
【0021】
ICタグ4に設けたアンテナコイル7の配置パターンを非矩形状に形成する。所定の通信位置に位置するワーク1が、正姿勢であるときと逆姿勢であるときとで、方向判別装置11のアンテナ14の通信可能領域Zと、アンテナコイル7との重合面積が大小に異なるように、アンテナコイル7を基板5に配置する。
【0022】
ICタグ4のアンテナコイル7に隣接して、アンテナ14の漏洩磁束を減衰する磁性材料製の減磁体18を配置する。
【0023】
2個の区室2・2を備えた直方体状のワーク1においては、ワーク1の上面の前後対称位置に各区室2・2用の出入口3・3を開口し、両出入口3・3の間にICタグ4を配置する。ICタグ4を構成する基板5の前後いずれか一側にアンテナコイル7を偏寄配置し、他側にICモジュール6を配置する。
【発明の効果】
【0024】
本発明においては、所定の通信位置において、方向判別装置11のアンテナ14と、ワーク1側に設けたICタグ4のアンテナコイル7との間で通信を行ない、通信時の通信強度の大小を判定回路15で判定してワーク1の方向を判別するので、従来の判別法において不可欠であった、判別マークや識別体などをワーク1に別途設ける必要がなく、さらに、センサーや撮像機器などの識別手段を別途用意する必要もなく、ワーク1の方向を判別できる。つまり、ワーク1に設けた非接触式のICタグ4の通信機能をそのまま利用して方向判別を行なうので、方向判別のための機材コストを削減でき、しかもワーク1のコストを削減できる。さらに、バーコードなどの識別体において避けられない汚損や劣化の心配がなく、とくに、繰り返し使用されるワーク1が判別対象である場合に、長期にわたって高い信頼度で方向判別を行なえる。ワーク1の形、表面の色、模様などに影響されることもなく方向判別を行なえる利点もある。
【0025】
基本的に、ワーク1の方向の判別は通信強度の大小を判定回路15で判定して行なう。しかし、ICタグ4に設けたアンテナコイル7が、方向判別装置11のアンテナ14の通信可能領域Zの内部にあるか、外部にあるか、つまり、通信強度の有無を判定回路15で判定してワーク1の方向を判別すると、判定結果をより明確して方向の判別をさらに的確に行なうことができ、判別結果の信頼性を向上できる。
【0026】
タグリーダーを利用して、これに判定回路15を付加して方向判別装置11を構成すると、既存のタグリーダーを利用する分だけ方向判別装置11を低コスト化できる。さらに、機器構造が簡単であるので、製造過程で方向判別を行なう場合はもちろん、ユーザーレベルで方向判別を行なう場合であっても、問題なく方向判別を行なえる。一群のワーク1を一方向へ搬送しながら、その方向判別を連続して行なうようにすると、方向判別を時間ロスのない状態で効率よく行なえる。
【0027】
方向判別装置11のアンテナ14に隣接して減磁体18を配置すると、アンテナ14の漏洩磁束を減磁体18で吸収し減衰して、アンテナ14の通信可能領域Zを適宜変形できる。したがって、ワーク1が逆姿勢にあるときのアンテナコイル7から遠ざかる向きに、通信可能領域Zを変形させることにより、アンテナ14とアンテナコイル7とをより接近させて確実に通信できる。ICタグ4側に減磁体18を配置する場合にも同様の作用効果を発揮できる。
【0028】
ワーク1に設けたICタグ4のアンテナコイル7を基板5に対して偏寄配置し、ワーク姿勢が正姿勢である場合と、逆姿勢である場合とで、方向判別装置11とICタグ4との間の通信強度を大小に異ならせるワーク1によれば、ICタグ4の通信機能をそのまま利用して、通信強度の違いから方向判別を行なえるので、判別マークや識別体などを別途設ける必要がなく、その分だけワーク1のコストを削減できる。方向判別のための機材コストも削減できる。例えば、バーコードなどの識別体において避けられない汚損や劣化の心配がなく、繰り返し使用されるワーク1が判別対象である場合でも、長期にわたって高い信頼度で方向判別を行なえる。
【0029】
ワーク1が正姿勢であるときにのみ、アンテナコイル7の全体が方向判別装置11のアンテナ14の通信可能領域Zの内部に位置するようにしてあると、ワーク1が正姿勢であるときと逆姿勢であるときとの通信強度が明確に異なる。したがって、判定回路15による判定結果をより明確して、方向判別をさらに的確に行なって、判別結果の信頼性を向上できる。
【0030】
ワーク1が正姿勢であるときと逆姿勢であるときとで、アンテナ14の通信可能領域Zとアンテナコイル7との重合面積が大小に異なるようにしてあると、ワーク1の姿勢の如何にかかわらず所定の通信位置にワーク1があることがわかる。これにより、例えばワーク1を連続して供給する場合などに、供給が途切れたことや、類似する形状ではあってもICタグ4を備えていない異質のワークが混入していることを判別できる。また、アンテナコイル7の配置パターンを非矩形状に形成することにより、基板5に対するアンテナコイル7の配置位置の自由度を向上でき、ワーク1の大きさや形状の違いに適合するICタグ4を容易に適合できる。
【0031】
上面の前後対称位置に出入口3・3を開口し、両出入口3・3の間に配置した基板5の前後いずれか一側にアンテナコイル7を偏寄配置する容器状のワーク1によれば、ワーク1が正姿勢であるときと逆姿勢であるときとで、方向判別装置11とアンテナコイル7との距離差を大きくできる。つまり、ワーク1が正姿勢であるときと逆姿勢であるときとの通信強度を明確に異ならせて、判定回路15による判定結果をより明確化し、方向判別を的確に行なうことができる。また、前後の出入口3・3をICタグ4で物理的に隔離するので、液充填時などに飛び跳ねた試薬液が隣の出入口3へ混入するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】方向判別装置とワークに設けたICタグの位置関係を示す平面図である。
【図2】方向判別機能を備えたワークの一例を示す斜視図である。
【図3】方向判別手順の概要を示す斜視図である。
【図4】方向判別装置とICタグとが通信するときの位置関係を示す平面図である。
【図5】方向判別装置とICタグとが通信するときの位置関係を示す側面図である。
【図6】ワークが位置ずれした時のアンテナの配置形状の違いに基づく通信可能領域を示す平面図である。
【図7】ICタグ側のアンテナコイルの別実施例を示す平面図である。
【図8】ICタグ側のアンテナコイルのさらに別の実施例を示す平面図である。
【図9】ICタグ側のアンテナコイルのさらに別の実施例を示す平面図である。
【図10】ICタグ側のアンテナコイルのさらに別の実施例を示す平面図である。
【図11】方向判別装置の別の実施例を示す平面図である。
【図12】図11に係る方向判別装置の側面図である。
【図13】ICタグの別の実施例を示す平面図である。
【図14】試験例1の試験形態を示す平面図である。
【図15】試験例2の試験形態を示す平面図である。
【図16】試験例3の試験形態を示す平面図である。
【図17】試験例4の試験形態を示す平面図である。
【図18】試験例5の試験形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(実施例) 図1ないし図6は本発明に係る方向判別方法とその装置、および方向判別の対象となるワークの実施例を示す。なお、以下の実施例においては、説明の便宜上図2において交差矢印と前後、左右、上下の表示で特定した方向を、前後方向、左右方向および上下方向として説明する。
【0034】
図2に示すように、ワーク1はプラスチック成形された直方体状の容器からなり、その内部に独立した前後一対の区室2・2を備えている。各区室2・2は、ワーク1の上面の前後対称位置で開口する出入口3・3を備えており、両出入口3・3の間の前後中央部分には、方向判別機能を発揮するICタグ4が接着固定してある。ICタグ4は、基板5と、基板5の前側肉壁内に埋設されるICモジュール6と、基板5の後部寄りに偏寄配置されるアンテナコイル7などでパッシブタグ型に構成する。ICモジュール6にはワーク1の固有番号(管理番号)が記録されており、後述する方向判別装置11でワーク1の方向の判別を行なうとき、データベースと照合されて、使用条件にマッチした記録内容がデータベースに追記される。例えば、試験を実施する日付や、試験内容、試験実施者の氏名などがデータベースに追記される。
【0035】
ワーク1の各区室2・2には、それぞれ異なる種類の試液、あるいは供試材液が所定量ずつ充填される。この状態のワーク1の外観は前後対称になっている。そのため、前後が正しい状態(以下、単に正姿勢という。)のワーク1と、前後が逆になった状態(以下、単に逆姿勢という。)のワーク1とが混在していたとしても、外観から各状態を判別することはできない。このような混乱を避けるために、アンテナコイル7がワーク1の上面後部側に位置する状態(図2に示す状態)を正姿勢として、逆姿勢になっているワーク1が試液、あるいは供試材液の充填位置へ搬送されるのを防止する。
【0036】
各区室2・2に試液や供試材液が充填されたワーク1は、図3に示すように各ワーク1が左右に小さな間隔を隔てて隣接する状態で搬送装置10に載置されて、矢印Aで示すように搬送装置10の一側に配置した方向判別装置11へ向かって断続的に搬送される。方向判別装置11の搬送方向下手側には、方向判別装置11によって逆姿勢であると判定されたワーク1を正姿勢に戻すための姿勢変更装置12が設けてある。正姿勢に揃えられたワーク1は、姿勢変更装置12の搬送方向下手側に設けた充填装置(図示していない)によって、各区室2に供試材や試薬が充填されたのち、搬送装置10から送出される。なお、使用後のワーク1は洗浄したうえで繰り返し使用される。
【0037】
方向判別装置11は、ICタグ4の記録内容を読み込みあるいは記録できるタグリーダーからなり、タグリーダーには、ICタグ4と通信を行なう渦巻き状のアンテナ14と、通信時の通信強度の大小を判定する判定回路15を含む制御部16などが設けてある。図3に示すように、ワーク1が方向判別装置11の真下の通信位置に到達すると、そのことを図示していないセンサーで検知して、検知信号が制御部16に出力され、方向判別装置11が下降してアンテナ14をICタグ4のアンテナコイル7に接近させ、両者間で通信を行なう。
【0038】
具体的には、制御部16から出力されたデータを含む搬送波がアンテナ14から発信され、ICタグ4のアンテナコイル7が受信する。搬送波を受信したICタグ4は、予めICモジュール6に記録されていた固有番号を反射波を介してアンテナ14へ返信する。このときの方向判別装置11とICタグ4との間の通信強度(返信された反射波の通信強度)の大小、あるいは通信強度の有無を判定回路15で判定することにより、ワーク1の姿勢が正姿勢であるか逆姿勢であるかを知ることができる。
【0039】
先に説明したように、ワーク1が正姿勢にあるときのICタグ4のアンテナコイル7は、基板5の後部寄りに偏寄配置してある。したがって、ワーク1が正姿勢にあるときのアンテナコイル7は、図1(a)に想像線で示すように、方向判別装置11のアンテナ14の通信可能領域Zの内部に位置していて適正な通信強度が得られる。しかし、ワーク1が逆姿勢にあるときのICタグ4のアンテナコイル7は、図1(b)に示すように、方向判別装置11のアンテナ14の真下より前方へ大きくずれた位置、即ちアンテナ14の通信可能領域Zの外部に位置しており、方向判別装置11とICタグ4とは通信不能な状態となって通信強度は殆どゼロとなる。
【0040】
上記のように、ICタグ4側のアンテナコイル7の前後位置の違いだけで、方向判別装置11とICタグ4との間の通信強度を明確に異ならせるには、ICタグ4が電磁誘導方式のパッシブタグ型であることが必要となる。電磁誘導方式のパッシブタグ型のICタグ4は、方向判別装置11のアンテナ14とICタグ4のアンテナコイル7とが磁束結合してエネルギー信号を伝達する関係で、通信可能な距離が数cm前後と極めて小さい特性がある。したがって、ICタグ4を電磁誘導方式のパッシブタグとして構成し、さらに方向判別装置11のアンテナ14を充分にICタグ4に接近させて、通信可能な搬送波の覆域を小さく絞り込むことにより、アンテナコイル7の前後位置の違いに応じて通信強度を明確に異ならせることができることとなる。アンテナ14とアンテナコイル7と上下方向の距離は、アンテナ14から発信される電磁波の強度にもよるが(0〜50)mmが好適である。因みに、電波方式のアクティブタグ型のICタグの場合には、通信可能な距離が数mにも達するため、アンテナコイル7の前後位置の違いだけで通信強度を明確に異ならせることは極めて困難となる。
【0041】
また、図6(a)に示すように、ワーク1を所定の通信位置へ搬送した状態において、ワーク1が所定の通信位置から僅かにずれた状態にあり、しかもその姿勢が逆姿勢である場合には、隣接するワーク1のICタグ4のアンテナコイル7が、方向判別装置11のアンテナ14による通信可能領域Zに入り込むおそれがある。その場合の通信強度が充分に小さい場合は問題ないが、通信強度が判別回路15に設定された閾値を僅かでも越える大きさである場合には、真の通信相手であるワーク1の姿勢が逆姿勢であることを特定できないことになる。
【0042】
こうした状況にも対処できるように、方向判別装置11のアンテナ14のコイルの左右幅L1を、同コイルの前後幅L2より小さくして、アンテナ14の通信可能領域Zの左右幅を制限している。因みに、図6(b)に示すように、アンテナ14のコイルの左右幅が、同コイルの前後幅より大きい場合には、アンテナ14の通信可能領域Zの左右幅が拡がるため、ワーク1が所定の通信位置から僅かにずれた状態にあるとき、隣接するワーク1のICタグ4との間で通信が可能となってしまう。
【0043】
上記のように構成した本発明の方向判別装置によれば、ワーク1の上面中央に配置したICタグ4と方向判別装置11との間で通信が可能であるか否かを判定するだけで、ワーク1が正姿勢で搬送されているか否かを的確に知ることができる。従来の方向判別手法とは異なり、ワーク1に判別マークや識別体などを別途設ける必要がないので、ワーク1を低コストで提供できる。また、センサーや撮像機器などの識別手段を別途用意する必要がなく、既存のタグリーダに判定回路15を付加して方向判別装置11とすることができるので、方向判別のための機材コストを削減できる。さらに、非接触式のICタグを備えているワーク1の通信機能をそのまま利用して高い信頼度で方向判別を行なえる。
【0044】
以下に、ICタグ4におけるアンテナコイル7の配置パターンと、各配置パターンに適合する方向判別装置11のアンテナ14の配置形態の別実施例を示す。以下の各実施例においては、先の実施例と異なる個所のみを説明し、先の実施例と同じ部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0045】
図7においては、ICタグ4をワーク1の上壁の前後中央に配置し、左右横長の基板5の左半部にアンテナコイル7を、右半部にICモジュール6を配置した。この状態がワーク1の正姿勢であり、ワーク1が逆姿勢になっている場合のアンテナコイル7は、基板5の右半部に位置することになる。また、正姿勢のワーク1が所定の通信位置にあるとき、方向判別装置11のアンテナ14の中心位置はワーク1の左辺部の近傍に位置しており、アンテナコイル7の後半側のみが通信可能領域Zに重なっている。ワーク1が逆姿勢になっている状態では、想像線で示すようにアンテナコイル7は通信可能領域Zの外にあり通信不能となる。
【0046】
図8においては、ICタグ4をワーク1の上壁の前後中央に配置し、左右横長の基板5の右半部の後隅に三角形状のアンテナコイル7を配置し、左半部前隅側にICモジュール6を配置した。この状態がワーク1の正姿勢であり、ワーク1が逆姿勢になっている場合のアンテナコイル7は、基板5の左半部前隅側に位置することになる。アンテナコイル7を三角形状に形成するのに伴ない、方向判別装置11のアンテナ14を傾斜配置して、その長辺部が三角形のアンテナコイル7の底辺部分と平行になるようにした。ワーク1が所定の通信位置において正姿勢にある状態では、アンテナコイル7の全体がアンテナ14の通信可能領域Zの内部に位置する。しかし、ワーク1が逆姿勢になっている状態では、想像線で示すようにアンテナコイル7は通信可能領域Zの外にあり通信不能となる。
【0047】
図9においては、ICタグ4をワーク1の上壁の前後中央に配置し、左右横長の基板5の後辺部および右辺部に沿って逆L字状の領域を確保し、この領域内にアンテナコイル7を逆L字形の渦巻き状に形成し、残る領域にICモジュール6を配置した。この状態がワーク1の正姿勢であり、ワーク1が逆姿勢になっている場合のアンテナコイル7は、想像線で示すように前辺部および左辺部に沿ってL字状の領域を占める。正姿勢のワーク1が所定の通信位置にあるとき、方向判別装置11のアンテナ14の中心位置はワーク1の右辺部の近傍に位置しており、アンテナコイル7の後右隅のみが通信可能領域Zに重なっている。ワーク1が逆姿勢になっている状態では、想像線で示すようにアンテナコイル7は通信可能領域Zの外にあり通信不能となる。
【0048】
図10においては、ICタグ4をワーク1の上壁の前後中央に配置し、正方形上の基板5の中央に正三角形状のアンテナコイル7を倒立する状態で配置した。この状態がワーク1の正姿勢であり、ワーク1が逆姿勢になっている場合のアンテナコイル7は、想像線で示すように正立する正三角形状となる。正姿勢のワーク1が所定の通信位置にあるとき、方向判別装置11のアンテナ14は、その長辺部が基板5の前後辺部と平行になる状態で配置してあり、アンテナコイル7の底辺部分のみが通信可能領域Zに重なっている。ワーク1が逆姿勢になっている状態では、想像線で示すようにアンテナコイル7の頂部のみが通信可能領域Zの内部にあり、両状態の通信強度の違いから、ワーク1の姿勢の正逆を知ることができる。
【0049】
図11および図12は、方向判別装置11のアンテナ14の前側に隣接して、漏洩磁束を減衰する減磁体18を配置し、通信可能な搬送波の覆域をアンテナ14の前側において小さく絞り込むようにした。減磁体18は、フェライトに代表される磁性材料で形成してある。このように、アンテナ14の通信可能領域Zを局部的に削減することにより、正姿勢のワーク1が所定の通信位置にあるとき、アンテナ14とアンテナコイル7とをより接近させて確実に通信できる。また、ワーク1が逆姿勢にあるときには、アンテナコイル7を通信可能領域Zの外に確実に位置させることができる。したがって、ワーク1が正姿勢にあるときと逆姿勢にあるときの、対称中心軸からアンテナコイル7までの間隔寸法をさらに小さくすることができる。
【0050】
上記の減磁体18は、図13(a)に示すようにICタグ4の側に設けることができる。その場合には、ワーク1が正姿勢にあるとき、基板5の後部にアンテナコイル7を配置し、基板5の前部に減磁体18を設ける。以て、図13(b)に示すように、ワーク1が逆姿勢にあるときに、アンテナ14の通信可能領域Zがアンテナコイル7から遠ざかる向きへ制限されるようにした。
【0051】
以上の説明から明らかな通り、本発明のワークと方向判別方法は以下の態様で実施することができる。
表面の所定位置にパッシブタグ型のICタグが固定してあるワークを判別対象にして、ワークの方向を方向判別装置で判別する方向判別方法であって、ICタグは、基板と、基板に隣接配置されるICモジュールおよびアンテナコイルを備えており、方向判別装置はICタグと通信するアンテナと、判定回路とを備えており、ワークと方向判別装置とが所定の通信位置に位置する状態において、方向判別装置のアンテナとICタグのアンテナコイルとの間で通信を行ない、通信時の通信強度の大小を判定回路で判定してワークの方向を判別することを特徴とするワークの方向判別方法。
【0052】
上記のワークの方向判別方法において、所定の通信位置に位置するワークが正姿勢である場合には、ICタグに設けたアンテナコイルが、方向判別装置のアンテナの通信可能領域Zの内部に位置し、所定の通信位置に位置するワークが逆姿勢である場合には、ICタグに設けたアンテナコイルが、方向判別装置のアンテナの通信可能領域Zの外部に位置しており、正姿勢時のワークと逆姿勢時のワークの、通信時の通信強度の有無を判定回路で判定してワークの方向を判別する。
【0053】
上記のワークの方向判別方法において、方向判別装置はタグリーダーに判定回路を付加して構成されており、タグリーダーのアンテナと、ICタグのアンテナコイルとの間で通信を行ない、判定回路で通信時の通信強度の大小を判定してワークの方向を判定する。
【0054】
上記のワークの方向判別方法において、一定姿勢で所定間隔おきに隣接配置した一群のワークを、所定位置に設置した方向判別装置へ向かって一方向へ搬送し、ワークが所定の通信位置に到達するごとに、方向判別装置とワークに設けたICタグとの間で通信を行なって、ワークの方向判別を連続して行なう。
【0055】
以下に、本発明の内容を確認するために行なった試験例1〜試験例5を説明する。
(試験例1) 図14(a)に示すように、縦横寸法が90×30mmの直方体からなるプラスチック製の試験片(ワーク)1を用意し、その上面の前後中央よりも前側へ偏寄した位置にICタグのアンテナコイル7を配置した(この状態を正姿勢とする)。偏寄寸法Gは10mm、アンテナコイル7の外周の前後寸法および左右寸法はそれぞれ20mmとした。タグリーダー側のアンテナ14の中心は、試験片1が正姿勢にあるとき、アンテナコイル7の中心の真上に位置するようにした。アンテナ14の外周の前後寸法および左右寸法はそれぞれ12mmとした。通信する電波の周波数は13.56MHzとした。図示していないがICモジュールは試験片の適所に埋設した。
【0056】
以上の試験条件下で、試験片1を正姿勢にした状態と、試験片1を逆姿勢にした状態とで、アンテナコイル7へのアクセスが可能か否かを確認した。その結果、試験片1を正姿勢にした状態では適正な通信強度が得られた。また、試験片1を逆姿勢にした状態では、アクセス不能(通信不能)であった。
さらに、図14(b)に示すように、所定の通信位置に試験片1が逆姿勢で位置し、その一側に別の試験片1Aが隣接しているときの干渉の有無を確認した。隣接する試験片1Aは正姿勢になっており、所定の通信位置にある試験片1との隣接間隔Eは40mmとした。因みに、隣接する試験片1Aのアンテナコイル7とタグリーダー側のアンテナ14の最外周の隣接間隔Fは24mmである。その結果、アンテナコイル7とアンテナ14の上下間隔を0〜50mmの範囲で変化させたが、いずれも隣接する試験片1Aに対するアクセスは不能であった。
【0057】
(試験例2) 図15(a)に示すように、試験片1の縦横寸法を90×20mmとし、その上面の前後中央に隣接する状態でICタグのアンテナコイル7を配置して、同コイル7の外辺部を試験片1の前後中央に位置させた(偏寄寸法Gは0mm)。他の試験条件は試験例1と同じにして、試験片1を正姿勢にした状態と、試験片1を逆姿勢にした状態とで、アンテナコイル7へのアクセスが可能か否かを確認した。
【0058】
その結果、試験片1を正姿勢にした状態では、適正な通信強度が得られた。このとき、アンテナコイル7とアンテナ14の上下間隔の最大値が40〜50mm以下の範囲で変化させたが、いずれの場合でも適正な通信強度が得られた。試験片1を逆姿勢にした状態では、アンテナコイル7とアンテナ14の上下間隔の最大値が20〜30mmの範囲内である場合に、適正な通信強度が得られアクセス可能であった。
さらに、図15(b)に示すように、所定の通信位置に試験片1が逆姿勢で位置し、その一側に別の試験片1Aが隣接しているときの干渉の有無を確認した。隣接する試験片1Aは正姿勢になっており、所定の通信位置にある試験片1との隣接間隔Eは20mmとした。隣接する試験片1Aのアンテナコイル7とタグリーダー側のアンテナ14の最外周の隣接間隔Fは4mmである。その結果、アンテナコイル7とアンテナ14の上下間隔の最大値が20〜30mmの範囲で、隣接する試験片1Aに対するアクセスが可能であった。
【0059】
(試験例3) 図16(a)に示すように、試験片1の縦横寸法を90×30mmとし、その上面の前後中央から前方へ僅かに偏寄した位置にICタグのアンテナコイル7を配置した。偏寄寸法Gは2.5mmとした。タグリーダー側のアンテナ14は、正姿勢にある試験片1の前後中央から前方へ偏寄した位置に配置した。その偏寄寸法Jは21.5mmとした。他の試験条件は試験例1と同じにして、試験片1を正姿勢にした状態と、試験片1を逆姿勢にした状態とで、アンテナコイル7へのアクセスが可能か否かを確認した。
【0060】
その結果、試験片1を正姿勢にした状態では、適正な通信強度が得られた。このとき、アンテナコイル7とアンテナ14の上下間隔の最大値が30〜40mm以下の範囲で変化させたが、いずれの場合でも適正な通信強度が得られた。試験片1を逆姿勢にした状態では、アンテナコイル7とアンテナ14の上下間隔を大小に変化させても、充分な通信強度が得られずアクセス不能であった。
さらに、図16(b)に示すように、所定の通信位置に試験片1が逆姿勢で位置し、その一側に別の試験片1Aが隣接しているときの干渉の有無を確認した。隣接する試験片1Aは正姿勢になっており、所定の通信位置にある試験片1との隣接間隔Eは40mmとした。隣接する試験片1Aのアンテナコイル7とタグリーダー側のアンテナ14の最外周の隣接間隔Fは24mmである。その結果、アンテナコイル7とアンテナ14の上下間隔を大小に変化させたが、隣接する試験片1Aに対してアクセス不能であった。
【0061】
(試験例4) 図17(a)に示すように、試験片1の縦横寸法を90×25mmとし、その上面の前後中央から前方へ僅かに偏寄した位置にICタグのアンテナコイル7を配置した。偏寄寸法Gは5mm、アンテナコイル7の外周の前後寸法および左右寸法はそれぞれ5×20mmとした。タグリーダー側のアンテナ14は、正姿勢にある試験片1の前後中央から前方へ偏寄した位置に配置した。その偏寄寸法Jは16.5mmとした。他の試験条件は試験例1と同じにして、試験片1を正姿勢にした状態と、試験片1を逆姿勢にした状態とで、アンテナコイル7へのアクセスが可能か否かを確認した。
【0062】
その結果、試験片1を正姿勢にした状態では、適正な通信強度が得られた。このとき、アンテナコイル7とアンテナ14の上下間隔の最大値が20〜30mm以下の範囲で変化させたが、いずれの場合でも適正な通信強度が得られた。試験片1を逆姿勢にした状態では、アンテナコイル7とアンテナ14の上下間隔を大小に変化させても、充分な通信強度が得られずアクセス不能であった。
さらに、図17(b)に示すように、所定の通信位置に試験片1が逆姿勢で位置し、その一側に別の試験片1Aが隣接しているときの干渉の有無を確認した。隣接する試験片1Aは正姿勢になっており、所定の通信位置にある試験片1との隣接間隔Eは30mmとした。隣接する試験片1Aのアンテナコイル7とタグリーダー側のアンテナ14の最外周の隣接間隔Fは14mmである。その結果、アンテナコイル7とアンテナ14の上下間隔を大小に変化させたが、隣接する試験片1Aに対してアクセス不能であった。
【0063】
(試験例5) 試験例4で使用したタグリーダーのアンテナ14を用いて、試験例1と同じ試験条件で、アンテナ14と試験片1側のアンテナコイル7との通信可能な距離分布を測定した。具体的には図18に示すように、アンテナコイル7の中心座標がX=0、Y=0である場合に、アンテナ14の中心のX座標およびY座標のずれと、アンテナコイル7とアンテナ14の上下間隔(Z座標)のずれがどのように影響するかを確認した。
図中符号Aで示すのは、アンテナ14の中心座標がアンテナコイル7の中心座標と一致している場合であり、Z座標の最大値が40〜50mm以下の範囲で適正にアクセス可能であった。
符号Bで示すのは、アンテナ14の中心座標が、X=30、Y=20である場合であり、Z座標の最大値が0〜10mm以下の範囲で適正にアクセス可能であった。
符号Cで示すのは、アンテナ14の中心座標が、X=0、Y=40である場合であり、Z座標を0としてもアクセス不能であった。
符号Dで示すのは、アンテナ14の中心座標が、X=−20、Y=−25である場合であり、Z座標の最大値が10〜20mm以下の範囲で適正にアクセス可能であった。
【0064】
以上の結果は、
Z座標が0〜10mmである場合には、アンテナコイル7の中心座標(X=0,Y=0)から半径が約28mmの範囲内にアンテナ14の中心座標があれば、確実に試験片1のアンテナコイル7にアクセスできる。
Z座標が10〜20mmである場合には、アンテナコイル7の中心座標(X=0,Y=0)から半径が約20mmの範囲内にアンテナ14の中心座標があれば、確実に試験片1のアンテナコイル7にアクセスできる。
Z座標が20〜30mmである場合には、アンテナコイル7の中心座標(X=0,Y=0)から半径が約15mmの範囲内にアンテナ14の中心座標があれば、確実に試験片1のアンテナコイル7にアクセスできる。
Z座標が30〜40mmである場合には、アンテナコイル7の中心座標(X=0,Y=0)から半径が約10mmの範囲内にアンテナ14の中心座標があれば、確実に試験片1のアンテナコイル7にアクセスできる。
Z座標が40〜50mmである場合には、アンテナコイル7の中心座標(X=0,Y=0)の真上にアンテナ14の中心座標があれば、確実に試験片1のアンテナコイル7にアクセスできる。
ことを意味しており、Z座標が大きいほど通信可能領域が小さくなることが判る。
【0065】
以上の試験例によって、ワーク1と方向判別装置11とが所定の通信位置に位置する状態において、方向判別装置11のアンテナ14とICタグ4のアンテナコイル7との間で通信を行ない、通信時の通信強度の大小を判定回路15で判定してワーク1の方向を判別できることを確認した。
【0066】
上記の実施例以外に、ICタグ4はワーク1の前後周面や左右周面に配置することができる。必要があればワーク1の底面側に設けることができる。ワーク1は実施例で説明した2液を個別に収容できる容器である必要はなく、前後対称形状のワークや左右対称形状のワークであってもよい。アンテナ14の形状は丸、三角、あるいは任意の幾何学形状に形成することができ、要はアンテナコイル7の形状との関係で選択すればよい。上記の実施例では、タグリーダーを利用して方向判別装置11を構成したがその必要はなく、タグリーダーとは別の専用の方向判別装置11を設けてワーク1の方向を判別することができる。
【0067】
搬送しながらワーク1の方向の判別を行なう場合には、ワーク1を断続搬送する必要はなく、連続搬送しながら方向の判別を行なってもよい。その場合には、逆姿勢であると判別されたワーク1に隣接する表示体を明滅させ、あるいは逆姿勢であると判別されたワーク1を搬送路から排除することができる。ワーク1の搬送軌跡は直線状である必要はなく、円または円弧状、あるいは蛇行状であってもよい。ワーク1の搬送は、実施例で説明した横方向である必要はなく、縦方向や、斜め方向であってもよい。アンテナコイル7は基板5の表面に露出する必要はないが、必要があれば基板5の表面に露出させてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 ワーク
4 ICタグ
5 基板
6 ICモジュール
7 アンテナコイル
11 方向判別装置
14 アンテナ
15 判別回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の所定位置にパッシブタグ型のICタグが固定してあるワークを判別対象にして、前記ワークの方向を方向判別装置で判別する方向判別方法であって、
前記ICタグは、基板と、前記基板に隣接配置されるICモジュールおよびアンテナコイルを備えており、
前記方向判別装置は前記ICタグと通信するアンテナと、判定回路とを備えており、
前記ワークと方向判別装置とが所定の通信位置に位置する状態において、前記方向判別装置の前記アンテナと前記ICタグの前記アンテナコイルとの間で通信を行ない、通信時の通信強度の大小を前記判定回路で判定して前記ワークの方向を判別することを特徴とするワークの方向判別方法。
【請求項2】
所定の通信位置に位置する前記ワークが正姿勢である場合には、前記ICタグに設けた前記アンテナコイルが、前記方向判別装置の前記アンテナの通信可能領域の内部に位置し、
所定の通信位置に位置する前記ワークが逆姿勢である場合には、前記ICタグに設けた前記アンテナコイルが、前記方向判別装置の前記アンテナの通信可能領域の外部に位置しており、
正姿勢時の前記ワークと逆姿勢時の前記ワークの、通信時の通信強度の有無を前記判定回路で判定して前記ワークの方向を判別する請求項1記載のワークの方向判別方法。
【請求項3】
前記方向判別装置が、タグリーダーに前記判定回路を付加して構成されており、
前記タグリーダーのアンテナと、前記ICタグの前記アンテナコイルとの間で通信を行ない、前記判定回路で通信時の通信強度の大小を判定して前記ワークの方向を判定する請求項1または2に記載のワークの方向判別方法。
【請求項4】
一定姿勢で所定間隔おきに隣接配置した一群の前記ワークが、所定位置に設置した前記方向判別装置へ向かって一方向へ搬送されており、
前記ワークが所定の通信位置に到達するごとに、前記方向判別装置と前記ワークに設けた前記ICタグとの間で通信を行なって、前記ワークの方向判別を連続して行なう請求項1、2または3に記載のワークの方向判別方法。
【請求項5】
表面の所定位置にパッシブタグ型のICタグが固定してあるワークを判別対象にして、前記ワークの方向を判別する方向判別装置であって、
前記ICタグは、基板と、前記基板に隣接配置されるICモジュールおよびアンテナコイルとを備えており、
方向判別装置は、前記アンテナコイルを介して前記ICタグと通信を行なうアンテナと、通信時の通信強度の大小を判定する判定回路とを備えており、
前記ワークと前記方向判別装置とが所定の通信位置に位置する状態において、前記方向判別装置の前記アンテナと前記ICタグの前記アンテナコイルとの間で通信を行ない、通信時の通信強度の大小を前記判定回路で判定して、前記ワークの方向を判別することを特徴とするワークの方向判別装置。
【請求項6】
正姿勢に保持された前記ワークと前記方向判別装置とが所定の通信位置に位置する状態において、前記方向判別装置の前記アンテナの通信可能領域の一部が、前記ICタグに設けた前記アンテナコイルの設置領域とのみ重なるように、前記アンテナが配置してある請求項5に記載のワークの方向判別装置。
【請求項7】
前記方向判別装置が、通信強度の大小を判定する前記判定回路を備えたタグリーダーで構成してある請求項5または6に記載のワークの方向判別装置。
【請求項8】
前記方向判別装置の前記アンテナに隣接して、前記アンテナの漏洩磁束を減衰する磁性材料製の減磁体が配置してある請求項5、6または7に記載のワークの方向判別装置。
【請求項9】
所定の通信位置において方向判別装置と通信して、ワーク姿勢が正姿勢と逆姿勢とのいずれであるかを方向判別装置で判定されるワークであって、
前記方向判別装置はICタグと通信するアンテナと、通信時の通信強度の大小を判定する判定回路とを備えており、
前記ワーク表面の所定位置には、前記方向判別装置と通信できる前記ICタグが固定されており、
前記ICタグは、基板と、前記基板に隣接配置されるICモジュールおよびアンテナコイルとを含んでパッシブタグ型に構成されており、
所定の通信位置における前記ワークの姿勢の違いに基づき、前記アンテナコイルと前記方向判別装置の前記アンテナの通信可能領域との通信距離が大小に異なるように、前記アンテナコイルが前記基板に偏寄配置してある、方向判別機能を備えているワーク。
【請求項10】
所定の通信位置に位置する前記ワークが正姿勢であるときにのみ、前記ICタグに設けた前記アンテナコイルの全体が、前記方向判別装置の前記アンテナの通信可能領域の内部に位置するように、前記アンテナコイルが前記基板の一側に偏寄配置してある請求項9に記載の方向判別機能を備えているワーク。
【請求項11】
前記ICタグに設けた前記アンテナコイルの配置パターンが非矩形状に形成されており、
所定の通信位置に位置する前記ワークが、正姿勢であるときと逆姿勢であるときとで、前記方向判別装置の前記アンテナの通信可能領域と、前記アンテナコイルとの重合面積が大小に異なるように、前記アンテナコイルが前記基板に配置してある請求項9に記載の方向判別機能を備えているワーク。
【請求項12】
前記ICタグの前記アンテナコイルに隣接して、前記アンテナの漏洩磁束を減衰する磁性材料製の減磁体が配置してある請求項9、10または11に記載の方向判別機能を備えているワーク。
【請求項13】
2個の区室を備えた直方体状のワークであって、
前記ワークの上面の前後対称位置に各区室用の出入口が開口されて、両出入口の間に前記ICタグが配置されており、
前記ICタグを構成する基板の前後いずれか一側に前記アンテナコイルが偏寄配置され、他側に前記ICモジュールが配置してある請求項9から12のいずれかに記載の方向判別機能を備えているワーク。
【請求項1】
表面の所定位置にパッシブタグ型のICタグが固定してあるワークを判別対象にして、前記ワークの方向を方向判別装置で判別する方向判別方法であって、
前記ICタグは、基板と、前記基板に隣接配置されるICモジュールおよびアンテナコイルを備えており、
前記方向判別装置は前記ICタグと通信するアンテナと、判定回路とを備えており、
前記ワークと方向判別装置とが所定の通信位置に位置する状態において、前記方向判別装置の前記アンテナと前記ICタグの前記アンテナコイルとの間で通信を行ない、通信時の通信強度の大小を前記判定回路で判定して前記ワークの方向を判別することを特徴とするワークの方向判別方法。
【請求項2】
所定の通信位置に位置する前記ワークが正姿勢である場合には、前記ICタグに設けた前記アンテナコイルが、前記方向判別装置の前記アンテナの通信可能領域の内部に位置し、
所定の通信位置に位置する前記ワークが逆姿勢である場合には、前記ICタグに設けた前記アンテナコイルが、前記方向判別装置の前記アンテナの通信可能領域の外部に位置しており、
正姿勢時の前記ワークと逆姿勢時の前記ワークの、通信時の通信強度の有無を前記判定回路で判定して前記ワークの方向を判別する請求項1記載のワークの方向判別方法。
【請求項3】
前記方向判別装置が、タグリーダーに前記判定回路を付加して構成されており、
前記タグリーダーのアンテナと、前記ICタグの前記アンテナコイルとの間で通信を行ない、前記判定回路で通信時の通信強度の大小を判定して前記ワークの方向を判定する請求項1または2に記載のワークの方向判別方法。
【請求項4】
一定姿勢で所定間隔おきに隣接配置した一群の前記ワークが、所定位置に設置した前記方向判別装置へ向かって一方向へ搬送されており、
前記ワークが所定の通信位置に到達するごとに、前記方向判別装置と前記ワークに設けた前記ICタグとの間で通信を行なって、前記ワークの方向判別を連続して行なう請求項1、2または3に記載のワークの方向判別方法。
【請求項5】
表面の所定位置にパッシブタグ型のICタグが固定してあるワークを判別対象にして、前記ワークの方向を判別する方向判別装置であって、
前記ICタグは、基板と、前記基板に隣接配置されるICモジュールおよびアンテナコイルとを備えており、
方向判別装置は、前記アンテナコイルを介して前記ICタグと通信を行なうアンテナと、通信時の通信強度の大小を判定する判定回路とを備えており、
前記ワークと前記方向判別装置とが所定の通信位置に位置する状態において、前記方向判別装置の前記アンテナと前記ICタグの前記アンテナコイルとの間で通信を行ない、通信時の通信強度の大小を前記判定回路で判定して、前記ワークの方向を判別することを特徴とするワークの方向判別装置。
【請求項6】
正姿勢に保持された前記ワークと前記方向判別装置とが所定の通信位置に位置する状態において、前記方向判別装置の前記アンテナの通信可能領域の一部が、前記ICタグに設けた前記アンテナコイルの設置領域とのみ重なるように、前記アンテナが配置してある請求項5に記載のワークの方向判別装置。
【請求項7】
前記方向判別装置が、通信強度の大小を判定する前記判定回路を備えたタグリーダーで構成してある請求項5または6に記載のワークの方向判別装置。
【請求項8】
前記方向判別装置の前記アンテナに隣接して、前記アンテナの漏洩磁束を減衰する磁性材料製の減磁体が配置してある請求項5、6または7に記載のワークの方向判別装置。
【請求項9】
所定の通信位置において方向判別装置と通信して、ワーク姿勢が正姿勢と逆姿勢とのいずれであるかを方向判別装置で判定されるワークであって、
前記方向判別装置はICタグと通信するアンテナと、通信時の通信強度の大小を判定する判定回路とを備えており、
前記ワーク表面の所定位置には、前記方向判別装置と通信できる前記ICタグが固定されており、
前記ICタグは、基板と、前記基板に隣接配置されるICモジュールおよびアンテナコイルとを含んでパッシブタグ型に構成されており、
所定の通信位置における前記ワークの姿勢の違いに基づき、前記アンテナコイルと前記方向判別装置の前記アンテナの通信可能領域との通信距離が大小に異なるように、前記アンテナコイルが前記基板に偏寄配置してある、方向判別機能を備えているワーク。
【請求項10】
所定の通信位置に位置する前記ワークが正姿勢であるときにのみ、前記ICタグに設けた前記アンテナコイルの全体が、前記方向判別装置の前記アンテナの通信可能領域の内部に位置するように、前記アンテナコイルが前記基板の一側に偏寄配置してある請求項9に記載の方向判別機能を備えているワーク。
【請求項11】
前記ICタグに設けた前記アンテナコイルの配置パターンが非矩形状に形成されており、
所定の通信位置に位置する前記ワークが、正姿勢であるときと逆姿勢であるときとで、前記方向判別装置の前記アンテナの通信可能領域と、前記アンテナコイルとの重合面積が大小に異なるように、前記アンテナコイルが前記基板に配置してある請求項9に記載の方向判別機能を備えているワーク。
【請求項12】
前記ICタグの前記アンテナコイルに隣接して、前記アンテナの漏洩磁束を減衰する磁性材料製の減磁体が配置してある請求項9、10または11に記載の方向判別機能を備えているワーク。
【請求項13】
2個の区室を備えた直方体状のワークであって、
前記ワークの上面の前後対称位置に各区室用の出入口が開口されて、両出入口の間に前記ICタグが配置されており、
前記ICタグを構成する基板の前後いずれか一側に前記アンテナコイルが偏寄配置され、他側に前記ICモジュールが配置してある請求項9から12のいずれかに記載の方向判別機能を備えているワーク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−225014(P2010−225014A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73246(P2009−73246)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(591009093)マクセル精器株式会社 (30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(591009093)マクセル精器株式会社 (30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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