説明

ワーク位置決め装置

【課題】位置決め本体部の台座など他の部位に対する取り付けおよび取り外し作業を容易なものとする。
【解決手段】先端にワーク位置決め用の位置決めピン25を備えた位置決め本体部3の下端に本体部雄ねじ9を設ける一方、脚部5の上端に、本体部雄ねじ9に螺合する脚部雌ねじ11を設ける。また、脚部5の下端には脚部雄ねじ13を設ける一方、台座7には、脚部雄ねじ13が螺合する台座雌ねじ14を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端にワークを位置決めする位置決め部を備えた位置決め本体部を、他の部位に対して着脱可能に構成したワーク位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のワーク位置決め装置は、例えば下記特許文献1に記載されているように、板状のワークの位置決め孔に挿入する位置決めピンおよび、この位置決めピンを位置決め孔に挿入しつつワークを着座フランジ部に着座させた状態で、ワークを着座フランジ部に向けて押圧してクランプするクランプアームをそれぞれ備えた中空円筒状のポスト部を有している。
【0003】
そして、このポスト部の下端部に矩形状の取付フランジ部を設け、取付フランジ部には複数のボルトおよび位置決め用のノックピンを設けて、ポスト部をロケータ本体に固定している。
【特許文献1】特開2002−337770号公報(段落0024,図1,図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のワーク位置決め装置にあっては、位置決め本体部となるポスト部を、台座側に相当するロケータ本体に取り付ける際に、ポスト部における矩形状の取付フランジ部に複数のボルトおよび位置決め用のノックピンを設けているため、ポスト部のロケータ本体に対する取り付けおよび取り外し作業が煩雑であって時間がかかり、特にワークに対する上下高さ位置をシムによって微調整する際には、上記した取り付けおよび取り外し作業を何度も繰り返して行うため、高さ調整が容易ではない。
【0005】
そこで、本発明は、位置決め本体部の台座など他の部位に対する取り付けや取り外し作業を容易なものとすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、先端にワークを位置決めする位置決め部を備えた位置決め本体部を、他の部位に対して着脱可能に構成したワーク位置決め装置において、前記位置決め本体部を前記他の部位に対して着脱可能とする取付ねじ部を、前記位置決め部の中心軸線上に軸心が位置するよう前記位置決め本体部の基端に設けたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、位置決め本体部を他の部位に対し、位置決め部の中心軸線を中心として回転させることで、取付ねじ部によるこれら各部材相互間の締結固定および固定解除を行えるので、位置決め本体部の他の部位に対する取り付けおよび取り外し作業を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態を示すワーク位置決め装置の分解斜視図である。このワーク位置決め装置は、先端にワーク位置決め部となる位置決めピン1を備えた位置決め本体部3と、位置決め本体部3の下部にねじ構造によって着脱可能に取り付けられる延長部材としての脚部5と、脚部5の下部にねじ構造によって着脱可能に取り付けられる台座7とを、それぞれ備えている。
【0010】
位置決め本体部3は上下2段の円柱形状を呈し、その下端部には、他の部位となる脚部5に対して着脱可能とする取付ねじ部としての本体部雄ねじ9を設ける一方、円柱形状を呈する脚部5の上端には、本体部雄ねじ9が螺合する第1ねじ部としての脚部雌ねじ11を設けている。また、脚部5の下端には、第2ねじ部としての脚部雄ねじ13を設ける一方、ほぼ正方形の平板状の台座7には、脚部雄ねじ13が螺合する台座雌ねじ14を設けている。
【0011】
そして、上記した位置決め本体部3の本体部雄ねじ9を脚部5の脚部雌ねじ11に螺合締結するとともに、脚部5の脚部雄ねじ13を台座7の台座雌ねじ14に螺合締結することで、これら三者が一体化し、図2に正面図として示すようなワーク位置決め装置となる。
【0012】
なお、図1と図2では、脚部5の上下方向長さが異なっているが、脚部5はこのような長さ違いのように、適宜長さを変更したものを使用することが可能である。また、ここでは位置決め本体部3の本体部雄ねじ9と脚部5の脚部雄ねじ13は、外径およびピッチを互いに同一としてある。つまり、本体部雄ねじ9を台座雌ねじ14に螺合締結することができる。
【0013】
図3は、台座7を省略した図2のA−A断面図であり、これに基づきワーク位置決め装置の内部構造について詳細に説明する。位置決め本体部3は、上部から順に、上マウント部15、シリンダ部17、下マウント部19をそれぞれ備えている。
【0014】
上マウント部15は、全体として中空円筒形状であり、円筒主体部21の上部に円筒主体部21より小径のピン保持部23を設け、ピン保持部23には、位置決め部としての位置決めピン25の下端径大部26を挿入して固定する。位置決めピン25は、下端径大部26をピン保持部23に挿入した状態で、ピン保持部23の側方から、1本のねじ27を締結することでピン保持部23に固定される。
【0015】
前記した取付ねじ部となる本体部雄ねじ9および、第2ねじ部となる脚部雄ねじ13は、上記した位置決め部となる位置決めピン25の中心軸線上に軸心が位置している。
【0016】
位置決めピン25は、図3中で左右方向に貫通しかつ下方に開口するスリット28を設け、このスリット28に円筒主体部21内から上方に延びるクランプアーム29の上端付近を移動可能に挿入する。クランプアーム29は、互いに同一面となっているピン保持部23上および下端径大部26上のワーク着座面31に着座させる図示しない板状のワークを、先端が屈曲したフック部33によって上面から押圧してワークをクランプする。
【0017】
また、上マウント部15は、下端部にフランジ部35を有し、フランジ部35の下部にはフランジ部35より小径の締結雄ねじ部37を設けている。
【0018】
上マウント部15の下部に位置するシリンダ部17は、外径が上記したフランジ部35と同等な円筒形状のシリンダケース39を有し、このシリンダケース39上部内面に形成してある上部締結雌ねじ部41を、上記した上マウント部15の締結雄ねじ部37に螺合締結する。また、シリンダケース39の下部内面には、下部締結雌ねじ部43を形成している。
【0019】
シリンダ部17の下部に位置する下マウント部19は、上部に締結雄ねじ部45を形成し、この締結雄ねじ部45に上記したシリンダケース39の下部締結雌ねじ部43を締結固定する。下マウント部19の下部には、シリンダケース39と外径が同等なフランジ部47を形成してある。
【0020】
そして、上記した下マウント部19の下端部に、前記図1に示した本体部雄ねじ9を設けている。
【0021】
シリンダ部17のシリンダケース39内には、ピストン49を、図3中で上下方向に移動可能にシール用Oリング50を介して収容し、ピストン49の上部にはロッド51をねじ53により連結固定し、ロッド51の先端に、前記したクランプアーム29の下端をヒンジピン55を介して回転可能に連結する。54は、ウレタンワッシャである。また、ロッド51の外周側の上マウント部15における締結雄ねじ部37の内側には、Oリング用ワッシャ57を設け、Oリング用ワッシャ57の内周面には、ロッド51との間をシールするOリング59を設けている。61は、ウレタンワッシャである。
【0022】
クランプアーム29の下部にはガイド溝63を設け、ガイド溝63に、円筒主体部21に両端を固定しているガイドピン65を移動可能に挿入する。ガイド溝63は、下端部が上部に対して屈曲しており、図3の状態からピストン49およびロッド51の上昇に伴いクランプアーム29が上昇し、ガイドピン65が、ガイド溝63の下部の屈曲した部位に達すると、クランプアーム29は上昇しつつヒンジピン55を中心として図3中で左回り方向に回転し、先端のフック部33が位置決めピン25のスリット28内に入り込んで、図示しないワークに対するクランプ状態を解除する。
【0023】
シリンダケース39内におけるピストン49の上部および下部には、上部シリンダ室67および下部シリンダ室69をそれぞれ設けている。上部シリンダ室67は、円筒主体部21に形成した流体通路71およびシリンダケース39に形成した開口73を介し、図示しない配管を経て流体制御バルブに接続する。一方、下部シリンダ室69は、下マウント部19に形成した流体通路75およびシリンダケース39に形成した開口77を介し、図示しない配管を経て流体制御バルブに接続する。
【0024】
また、下マウント部19のフランジ部47の周囲2箇所および、脚部5の下部側の周囲2箇所には、回転器具係合部としての回転器具挿入孔79および、80をそれぞれ設けている。回転器具挿入孔79または80には、図4(a)に示すような回転器具であるシリンダ用スパナ81のピン部83が挿入可能となっている。図4(b)は図4(a)の右側面図である。
【0025】
上記したシリンダ用スパナ81は、作業者が把持する把持部85の先端に円弧形状部87を設け、円弧形状部87の先端内側に、前記したピン部83を内側に向けて突出して設けている。円弧形状部87は、フランジ部47および脚部5の外径とほぼ同径の円弧内面89を有し、この円弧内面89をフランジ部47または脚部5の外周面に整合させつつ、ピン部83を回転器具挿入孔79または80に挿入した状態で、把持部85を把持してシリンダ用スパナ81を円周方向に回転させることで、位置決め本体部3を脚部5に対して着脱し、また脚部5を台座7に対して着脱する。
【0026】
なお、ねじ部の締結および締結解除のいずれの場合においても、シリンダ用スパナ81を回転させる際には、図4に示すように、把持部85をピン部83から離れる矢印Bで示す方向に移動させるようにする。
【0027】
上記のように構成したワーク位置決め装置は、図1のように分解した状態から、本体部雄ねじ9を脚部雌ねじ11にねじ込み、図4に示したシリンダ用スパナ81のピン部83を回転器具挿入孔79に挿入して位置決めピン25の中心軸線を中心として位置決め本体部3を回転させることで、位置決め本体部3を脚部5に対して締結固定する。また、脚部雄ねじ13を台座雌ねじ14にねじ込み、シリンダ用スパナ81のピン部83を回転器具挿入孔80に挿入して位置決めピン25の中心軸線を中心として脚部5を回転させることで、脚部5を台座7に対して締結固定する。
【0028】
一方、ワーク位置決め装置は、図2のように組み立てた状態から、脚部5を、シリンダ用スパナ81を使用して台座7に対して上記した締結固定時とは逆方向に回転させることで台座7から取り外す。また、図2の状態から、位置決め本体部3をシリンダ用スパナ81を使用して脚部5に対して上記した締結固定時とは逆方向に回転させることで脚部5から取り外す。
【0029】
このように、本実施形態によれば、位置決め本体部3を、他の部位となる脚部5に対し、位置決めピン25の中心軸線を中心に回転させるだけで、位置決め本体部3の脚部5に対する取り付けおよび取り外し作業を容易に行うことができる。
【0030】
ここで、ワークに対する上下高さ位置をシムによって微調整する際には、シムを例えば位置決め本体部3と脚部5との間に挿入するが、この際位置決め本体部3と脚部5との間で何度も繰り返して取り付けおよび取り外しを行っても、従来のように複数のボルトやノックピンを使用する場合に比較して作業の煩雑さを解消することができる。
【0031】
この際、位置決め部として、図示しないワークの位置決め孔に挿入する位置決めピン25を備えるものに対し、位置決め本体部3の脚部5に対する取り付けおよび取り外し作業を容易に行うことができる。
【0032】
また、位置決め本体部3の側面に、この位置決め本体部3を前記位置決めピン25の中心軸線を中心として回転させるための回転器具挿入孔79を設けたので、回転器具挿入孔79に挿入するピン部83を備えるシリンダ用スパナ81を使用することで、位置決め本体部3の脚部5に対する取り付けおよび取り外し作業を容易かつ確実に行うことができる。
【0033】
さらに、位置決め本体部3を円柱状に形成したので、ワーク位置決め装置全体として簡素な構造となり、省スペース化を達成することができる。
【0034】
また、位置決め本体部3の本体部雄ねじ9に螺合する脚部雌ねじ11を一端に備えた脚部5を、脚部雌ねじ11を介して位置決め本体部3に対して着脱可能に設け、前記脚部5の他端に位置決めピン25の中心軸線に軸心が位置する脚部雄ねじ13を設けたので、脚部5の軸方向(図1,2中で上下方向)長さを、図1のものと図2のものにおける前記した長さ違いのように適宜変更することで、ワーク位置決め装置として高さ調整が容易にでき、また、脚部5の長さを変更しても、台座7を共通利用することが可能となる。
【0035】
なお、脚部5を使用せず、位置決め本体部3の本体部雄ねじ9を台座7の台座雌ねじ14に螺合締結することで、位置決め本体部3を台座7に直接取り付けることもできる。この場合には、台座7が位置決め本体部3を取り付ける他の部位となる。
【0036】
また、脚部5の側面に、この脚部5を位置決めピン25の中心軸線を中心として回転させるための回転器具挿入孔80を設けたので、回転器具挿入孔80に挿入するピン部83を備えるシリンダ用スパナ81を使用することで、脚部5の台座7に対する取り付けおよび取り外し作業を容易かつ確実に行うことができる。
【0037】
上記した脚部5は、位置決め本体部3と同様に円柱状に形成したので簡素な構造となり、省スペース化を達成することができる。
【0038】
さらに、位置決め本体部3の本体部雄ねじ9または脚部5の脚部雄ねじ13を螺合締結する台座7を設け、この台座7を板状に形成したので、台座7の形状が簡素化して製造が容易となる。
【0039】
なお、台座7は必ずしも使用する必要はなく、位置決め本体部3の本体部雄ねじ9または脚部5の脚部雄ねじ13を螺合締結する雌ねじ部を備えた部位があればよい。
【0040】
図5は、位置決め本体部3の上マウント部15Aを図3の上マウント部15に対して形状を異ならせている。すなわち、図5の上マウント部15Aは、円筒主体部21Aをその上部のピン保持部23Aと外径を同等としている。さらに、下部のフランジ部35Aから上端のワーク着座面31Aまでの長さを、図3の同等部位の長さより長くしている。これに対応してピストン49に連結するロッド51Aも図3のロッド51に対して長くしている。その他の構成は、図3のものと同様であり、同一構成部分には同一符号を付してある。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態を示すワーク位置決め装置の分解斜視図である。
【図2】図1のワーク位置決め装置の組み立てた状態を示す正面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】(a)はシリンダ用スパナの正面図、(b)は(a)の右側面図である。
【図5】図3に対して形状の異なる他のワーク位置決め装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0042】
3 位置決め本体部
5 脚部(延長部材,他の部位)
7 台座
9 位置決め本体部の本体部雄ねじ(取付ねじ部)
11 脚部上端の脚部雌ねじ(第1ねじ部)
13 脚部下端の脚部雄ねじ(第2ねじ部)
25 位置決めピン(位置決め部)
79,80 回転器具挿入孔(回転器具係合部)
81 シリンダ用スパナ(回転器具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にワークを位置決めする位置決め部を備えた位置決め本体部を、他の部位に対して着脱可能に構成したワーク位置決め装置において、前記位置決め本体部を前記他の部位に対して着脱可能とする取付ねじ部を、前記位置決め部の中心軸線上に軸心が位置するよう前記位置決め本体部の基端に設けたことを特徴とするワーク位置決め装置。
【請求項2】
前記位置決め部は、前記ワークの位置決め孔に挿入する位置決めピンを備えていることを特徴とする請求項1に記載のワーク位置決め装置。
【請求項3】
前記位置決め本体部の側面に、この位置決め本体部を前記位置決め部の中心軸線を中心として回転させるための回転器具係合部を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のワーク位置決め装置。
【請求項4】
前記位置決め本体部を円柱状に形成したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のワーク位置決め装置。
【請求項5】
前記位置決め本体部の取付ねじ部に螺合する第1ねじ部を一端に備えた延長部材を、前記第1ねじ部を介して前記位置決め本体部に対して着脱可能に設けるとともに、前記延長部材の他端に第2ねじ部を設け、前記第1ねじ部および第2ねじ部は、前記位置決め部の中心軸線上に軸線を備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のワーク位置決め装置。
【請求項6】
前記延長部材の側面に、この延長部材を前記位置決め部の中心軸線を中心として回転させるための回転器具係合部を設けたことを特徴とする請求項5に記載のワーク位置決め装置。
【請求項7】
前記延長部材を円柱状に形成したことを特徴とする請求項5または6に記載のワーク位置決め装置。
【請求項8】
前記位置決め本体部の取付ねじ部または前記延長部材の第2ねじ部を螺合締結する台座を設け、この台座を板状に形成したことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載のワーク位置決め装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−245316(P2007−245316A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−74663(P2006−74663)
【出願日】平成18年3月17日(2006.3.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】