説明

ワーク搬送装置およびワーク搬送装置のバックラッシュ吸収機構

【課題】安価にて製造可能な構成でありながら、位置決めを正確に行うことができ、かつ、部品の交換サイクルを引き延ばすことが可能なワーク搬送装置を提供する。
【解決手段】基台フレーム2に対して搬送方向に直線的に移動できるように順次連結された複数のフレーム3〜6と、隣接する3つのフレームをそれぞれ連動させることにより全てのフレームを連動させる連動機構14と、駆動フレーム3を搬送方向に移動させるモータ8と、テーブルフレーム7に取り付けられてワークWを載せるテーブル9とを有し、かつ、前記テーブル9が搬送方向Xの始点または終点に位置する状態でこのテーブル9をその移動範囲の内側に付勢する付勢力を加える弾性体10aを備えることを特徴とするワーク搬送装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離れた二点間にわたって、ワークを搬送するためのワーク搬送装置およびワーク搬送装置のバックラッシュ吸収機構を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ワーク搬送装置を、例えば加工ラインの加工機の間に配置し、加工対象物(以下ワークという)を一方の加工機から他方の加工機に移動させることが行われている。図12は登録実用新案第3056404号公報(特許文献1)に記載されたワーク搬送装置の構成を概略的に示すものであり、昇降ベース90に第1スライドテーブル91a、第2スライドテーブル91bおよび支持テーブル91cをこの順に連結するものであり、例えばワークWを右の加工機92aから左の加工機92bへと搬送する。
【0003】
これにより、加工機92aでワークWの加工を完了した後に、ワーク搬送装置のテーブルを搬送方向の始点においてワークWを搭載し、支持テーブル91cを終点まで移動させて、ワークを搬送する。
【0004】
図13は各テーブル91a〜91cを図示左右方向に移動させる構成を説明する図であり、93a〜93cは各テーブル91a〜91cに動力を伝えて左右に移動させるチェーン、94a〜94cはチェーン93a〜93cを掛けるスプロケット、95はこれらに駆動力を供給する駆動モータである。図13のように複数のチェーン93a〜93cを用いた駆動では、チェーン93a〜93cとスプロケット94a〜94cのガタが大きいという問題がある。加えて、チェーン93a〜93cが延びることにより、停止位置の位置決め精度にバラツキ91u,94uが生じ、搬送中にテーブル91a〜91cの揺れが発生するという問題があった。
【0005】
ワークWを搬送するときに、左右にスライドテーブルを伸ばす際に、昇降ベース90からスライドテーブル91a〜91cが大きくずれて連結されるので、スライドテーブル91a〜91cの撓みが発生する。また、撓みを取るために、大型の直線移動部(以下、LMガイドという)を使用する必要があるので、装置が高価になるという問題がある。さらに、チェーンの延びに対応するために、半年から1年間隔でメンテナンスを必要とするという問題があるメンテナンスは、ラインを停止させる必要があるため、休日に行う必要があった。
【0006】
図14は特開2004−1990号公報(特許文献2)に記載されたワーク搬送装置の構成を概略的に示すものであり、とりわけ、前記チェーン93cとスプロケット94cによるワークWの搬送の他に、ラックとピニオンによる連動機構95a、95bを用いたワークWの搬送を組み合わせたワーク搬送装置の構成を示す。この構成により、スライドテーブル91cの剛性力が向上し、チェーン駆動において発生していた搬送中の支持テーブル91cの揺れや、スライドテーブル91a〜91cの撓みを解消することができる。
【0007】
しかしながら、ラックとピニオンを用いた連動機構95a,95bには歯車同士に歯の摩耗防止のための遊び、つまり、隙間(バックラッシュ)が設定されているので、これによって、ワーク搬送装置の動作端(始点、終点)において位置決めがずれてしまうという問題がある。とりわけ、複数の連動機構95a,95bを組み合わせた場合には各隙間の影響が加算されて大きな誤差となり、位置決め制御の低下を招くことがあった。これによって、テーブル91cに対するワークWの搬送位置が定まらないため、加工機92a,92bとの間でワークWの受け渡しができなくなり、加工機92a,92bがワークセット不良で停止し、ラインが停止することがあった。
【0008】
そこで、ラックとピニオンの歯車を加工精度の高い加工方法で製造し、歯をすり合わせ加工したり、歯車を複数枚に分割したり、高精度での組付をすることにより、歯車同士のバックラッシュをなくすことができる。これにより、各テーブルが毎回同じ位置に停止できるようにして停止位置の位置決め精度を保証することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】登録実用新案第3056404号公報
【特許文献2】特開2004−1990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の高精度の加工方法を実施することによりラックとピニオンの部分が高価になり、ワーク搬送装置の製造コストが引き上げられるという問題がある。また、バックラッシュをなくしたことにより歯車同士の歯の摩擦が大きくなるために、各テーブルを左右に移動させるのに、出力の大きな高出力タイプのモータが必要となり、多くの電力を消費するだけでなく、歯面同士の摩擦が大きくなるため、歯車の摩耗が大きくなり、短期間に部品の交換が必要となるという問題もあった。
【0011】
本発明は上述の事柄を考慮に入れてなされたものであり、安価にて製造可能な構成でありながら、位置決めを正確に行うことができ、かつ、部品の交換サイクルを引き延ばすことが可能なワーク搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明のワーク搬送装置は、基台フレームに対して搬送方向に直線的に移動できるように順次連結された複数のフレームと、隣接する3つのフレームをそれぞれ連動させることにより全てのフレームを連動させるラックとピニオンおよび/またはスプロケットとチェーンからなる連動機構と、前記複数のフレームのうち何れか一つのフレームを駆動フレームとして搬送方向に移動させるアクチュエータと、前記各フレームのうち最遊端部に位置するテーブルフレームに取り付けられてワークを載せるテーブルとを有し、かつ、前記テーブルが搬送方向の始点または終点に位置する状態でこのテーブルをその移動範囲の内側に付勢する付勢力を加える弾性体を備えることを特徴とするワーク搬送装置(請求項1)を提供する。
【0013】
前記構成によれば、連動機構によって各フレームを連動させているので、一つのアクチュエータの出力を用いて一つの駆動フレームを移動させることにより、全てのフレームを搬送方向に移動させることができ、ワーク搬送装置の製造コストを低く抑えることができる。なお、前記アクチュエータとは駆動用の動力源として回転回数や回転角の制御を行うことができるサーボモータであることが好ましいが、通常のモータやエアーシリンダやオイルシリンダを用いてもよい。
【0014】
また、複数のフレームが直線的に移動可能に順次連結されるので隣接するフレーム間の移動を連結したフレームの数により小さくすることができ、それだけ、連結部分にかける荷重を小さくすることができる。また、各フレームは搬送方向(通常は水平線に双方向)に直線的に移動できるように順次取り付けられているので、テーブルの移動に必要な電力をできるだけ小さくすることができる。なお、各フレーム間の連結部には直線移動部を用いることが好ましく、これによってより高い精度の直線移動を実現できる。
【0015】
また、テーブルが搬送方向の始点または終点に位置する状態でこのテーブルをその移動範囲の内側に付勢する付勢力を加える弾性体を備えるので、この弾性体の付勢力が前記始点または終点に位置する状態でのみ、ラックとピニオンおよびチェーンとスプロケットの遊びをなくすように作用し、位置決め精度(停止位置の精度)を高めることができる。加えて前記弾性体による付勢力はテーブルが搬送方向の始点または終点に位置するときのみ作用するので、搬送中はラックとピニオンおよび/またはスプロケットとチェーンに適宜の遊びがあり、搬送中にアクチュエータにかかる負荷を低く抑え、かつ、可動部の摩耗を低減できる。
【0016】
前記弾性体は基台フレームからテーブルまでの可動部分内の何れか1箇所に取り付けられるものであるが、フレームの両端部に設けたストッパに当接するように、テーブルまたは別のフレームに取り付けられるものであることが考えられる。弾性体は弾性を備える合成樹脂やゴムなどからなるブッシュであってもよいが、コイルスプリングを用いて所定の大きさの付勢力を加えるものであることが望ましい。
【0017】
連動機構はラックとピニオンからなるものであれば、チェーンとスプロケットからなるものに比べて遊びを小さくすることができるので、位置決め精度を高めるために好ましく、各フレームの間の連動機構として好ましい。一方、チェーンとスプロケットからなる連動機構は、例えばテーブルフレームに対するテーブルの位置をフレームの動きに連動させる部分において移動幅を大きくするのに適している。また、これらを組み合わせて用いてもよい。
【0018】
第2発明は、基台フレームと、この基台フレームに対して順次連結された少なくとも一つの中間フレームと、中間フレームを介して前記基台フレームに連結されると共にワークを載せるテーブルが取り付けられるテーブルフレームと、隣接する各フレームを搬送方向に直線的に移動可能に連結する直線移動部と、何れか一つの中間フレームを駆動フレームとして搬送方向に移動させるアクチュエータとを備え、前記中間フレームが、その両側に隣接するフレームに設けたラックに噛み合うことによりこれら隣接するフレームが互いに相対する方向に移動するように連結させるピニオンを有し、かつ、前記テーブルが搬送方向の始点または終点に位置する状態でこのテーブルをその移動範囲の内側に付勢する付勢力を加える弾性体を備えることを特徴とするワーク搬送装置を提供する。(請求項2)
【0019】
前記構成によれば、ラックとピニオンの組み合わせによって各フレームを連動させているので、一つのモータの出力を用いて一つの駆動フレームの移動に伴って、全てのフレームを搬送方向に移動させることができる。また、テーブルが搬送方向の始点または終点に位置する状態でこのテーブルをその移動範囲の内側に付勢する付勢力を加える弾性体を備えるので、この弾性体の付勢力が前記始点または終点に位置する状態でのみ、ラックとピニオンの遊びをなくすように付勢し、位置決め精度を引き上げることができる。
【0020】
前記テーブルフレームに隣接するフレームは、その搬送方向の両端部に一対のスプロケットを備え、これらのスプロケットにチェーンを巻回させると共に、このチェーンの両端をさらに基台フレーム側のフレームに連結させ、中間部を前記テーブルフレームに連結させたテーブル連動機構を備える場合(請求項3)には、中間フレームに対するテーブルフレームの位置を中間フレームの移動に連動させて移動させることができるので、全体としてのテーブルの移動幅を大きくすることができ、搬送方向の始点と終点の距離が離れている場合にも余裕をもってワークを搬送することができるので搬送距離を伸ばすことができる。前記スプロケットとチェーンからなるテーブル連動機構は、テーブルフレームを中間フレームの一端側から他端側まで移動可能である。
【0021】
前記アクチュエータは回転角を検出可能なモータと、このモータの回転軸に取り付けられて前記駆動フレームに設けた駆動ラックに嵌合する駆動ピニオンと、モータの回転回数および回転角によってテーブルの位置を制御する制御部とを有する場合(請求項4)には、制御部による電気制御だけでモータの回転を制御することが可能であり、テーブルの動作をさらに容易かつ正確に制御することができる。
【0022】
第3発明は、基台フレームに対して搬送方向に直線的に移動できるように順次連結された複数のフレームと、隣接するフレームを連動させる連動機構と、前記複数のフレームのうち何れか一つのフレームを駆動フレームとして搬送方向に移動させるアクチュエータと、前記各フレームのうち最遊端部に位置するテーブルフレームに取り付けられてワークを載せるテーブルを有するワーク搬送装置に取り付けられ、 前記テーブルが搬送方向の始点または終点に位置する状態でこのテーブルをその移動範囲の内側に付勢する付勢力を加える弾性体を備えることを特徴とするワーク搬送装置のバックラッシュ吸収機構(請求項5)を提供する。
【発明の効果】
【0023】
前述したように、本発明のワーク搬送装置は弾性体がテーブルの搬送方向の始点と終点においてその移動範囲の内側に付勢する付勢力を加える弾性体を備えることにより、各フレームの連動機構が遊びのある安価にて製造可能なものであったとしても、テーブルの位置決め精度を高めることができ、テーブルの位置ずれによる動作不良の発生を防止でき、ラインの停止を招く事態の発生を阻止することができる。加えて、テーブルがその搬送範囲の始点または終点の位置にないときには、連動機構に付勢力が加えられないので、各部の摩擦抵抗が小さく、それだけ、テーブルの移動に必要な動力を削減することができ、可動部の摩耗も必要最小限に留めることができるので、メンテナンス周期を長くすることができる。さらに、ワーク搬送装置の構成は簡素であり、その部品点数が少ないので、ワーク搬送装置の製造コストを削減することができるのでメンテナンスも容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のワーク搬送装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】前記ワーク搬送装置の動作状態を概略的に示す図である。
【図3】前記ワーク搬送装置の全体構成を示す平面図である。
【図4】前記ワーク搬送装置の全体構成を示す側面図である。
【図5】前記ワーク搬送装置の全体構成を別の角度から見た側面図である。
【図6】図5の一部を拡大し一部構成を透視して示す側面図である。
【図7】前記ワーク搬送装置の要部構成を示す側面図である。
【図8】前記要部構成を示す平面図である。
【図9】前記ワーク搬送装置の別の要部構成を示す側面図である。
【図10】前記要部構成を示す平面図である。
【図11】前記ワーク搬送装置の動作を説明する図である。
【図12】従来のワーク搬送装置の構成を説明する図である。
【図13】従来のワーク搬送装置の構成を説明する図である。
【図14】従来のワーク搬送装置の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1、2は本発明の実施形態に係るワーク搬送装置の構成を概略的に説明する図である。図1に示すように、本発明のワーク搬送装置1は基台フレーム2に対して搬送方向に直線的に移動できるように順次連結された複数のフレーム3〜7と、前記複数のフレーム3〜7のうち何れか一つを駆動フレーム3として搬送方向Xに移動させるアクチュエータの一例としてのモータ8と、前記各フレーム3〜7のうち最遊端部に位置するテーブルフレーム7に取り付けられてワークを載せるテーブル9と、このテーブル9が搬送方向の始点または終点に位置する状態でこのテーブル9をその移動範囲の内側に付勢する付勢力を加える弾性体10とを備える。
【0026】
なお、本実施形態においては前記基台フレーム2とテーブルフレーム7の間に4つのフレーム3〜6(以下、他のフレーム2,7と区別するために中間フレーム3〜6と表現することもある)を介在させて順次連結することにより、最も基台フレーム側の中間フレーム3の移動幅Hだけ各中間フレーム4〜7を隣接する中間フレーム3〜6から移動させることができるので、各フレーム2〜7を最大限に伸ばした状態であっても、その長さ方向の半分以上を隣接するフレーム3〜6に重ねた状態を保つことを可能としている。しかしながら、本発明は、中間フレーム3〜6の数がこの実施例に示すものに限定されるものではないことはいうまでもない。
【0027】
また、前記弾性体10は例えば前後一対のコイルバネ10a,10bを用いた当たり部10c,10dを備え、この弾性体10を設けたフレームに隣接するフレームの前記当たり部10c,10dに対応する位置にはストッパ10e,10fを備える。すなわち、これらの各部材10a〜10fが本実施形態におけるバックラッシュ吸収機構Aである。
【0028】
図2に示すように、前記フレーム3〜7は隣接する3つのフレーム2〜4,3〜5,4〜6,5〜7をそれぞれ連動させることにより全てのフレーム3〜7を連動させる連動機構11,12,13,14を備える。また、連動機構11〜13はそれぞれラック11a〜13a、11b〜13bにピニオン11c〜13cを噛み合わせたものであり、連動機構14は一対のスプロケット14a,14bとこれに巻回させたチェーン14cとからなる。したがって、全てのフレーム3〜7は連動して搬送方向に移動するように構成されている。
【0029】
また、15は前記モータ8の状態を監視しながらモータ8を所定の回転数および回転角に回転させることにより、テーブル9の位置の制御を行う制御部である。なお、本実施形態においてモータ8は制御部15によって回転数、回転角の制御を可能とするサーボモータである例を説明するが、このモータ8に代えて前記移動幅Hに合わせたストロークを有するエアシリンダや油圧シリンダを用いてもよい。
【0030】
さらに、図1には本発明の要旨を容易に説明できるように、前記バックラッシュ吸収機構Aをテーブルフレーム7に設けているように図示しているが、このバックラッシュ吸収機構Aは連動機構11〜14を取り付けた全てのフレーム3〜7のうち何れか一箇所に設けていればよい。また、既存のワーク搬送装置に対して本発明のバックラッシュ吸収機構Aを取り付けるようにしてもよい。
【0031】
図3〜図5は具体的にワーク搬送装置の全体構成を示す平面図、搬送方向Xに直角な方向から見た側面図、搬送方向Xから見た側面図であり、図6は図5の一部を透過して示す拡大図である。
【0032】
図3〜図5に示すように、本発明のワーク搬送装置1は基台1a,1bの上に設置されるものであり、基台1aには全体を上下方向に移動可能とする昇降機能を備える。
【0033】
図6に示すように、基台フレーム2は基台1bに固定される立脚部2aと、この立脚部に連設された壁面部2bとを備え、前記立脚部2の上面には第1中間フレーム3を搬送方向Xに直線的に移動可能に支えるガイドレール2cを備え、前記立脚部2aにはこの第1中間フレーム3を側面からガイドするガイドレール2dと、前記ラック11aを設けている。また、基台フレーム2は前記モータ8が取り付けられており、このモータ8の回転軸には駆動ピニオン8aが取り付けられている。
【0034】
前記第1中間フレーム3は側面視略L字状の本体3aの下面に前記ガイドレール2cに対応する移動体3bを備え、これによって搬送方向Xに直線的に移動できる直線移動部20を形成する。同様に本体3aの基台フレーム側の側面には前記ガイドレール2dに対応する移動体3cを備え、これによって直線移動部21を形成する。また、遊端側の側面には遊端側の第2中間フレーム4をガイドするための上下一対の移動体3d,3eを備える。加えて、本体3aの基台フレーム側には前記駆動ピニオン8が噛み合うラック3fを備え、前記ラック11aに噛み合うピニオン11cが回動自在に取り付けられている。さらに、前記移動体3d,3eの間には前記ラック12aを備える。
【0035】
第2中間フレーム4は平板形状の本体4aの基台フレーム側面に前記移動体3d,3eに対応するガイドレール4b,4cを備え、これらが直線移動部22,23を構成し、下端部に前記ピニオン11cに噛み合うラック11bを備える。他方、本体4bの遊端側面には遊端側の第3中間フレーム5をガイドするための上下一対のガイドレール4d,4eを備え、その間に前記ラック12aに噛み合うピニオン12cが回動自在に取り付けられ、その下部にはラック13aを備える。
【0036】
第3中間フレーム5は側面視略L字の本体5aの基台フレーム側面に前記ガイドレール4d,4eに対応する移動体5b,5cと前記ピニオン12cに噛み合うラック12bを備え、前記部材4d,5b、4e,5cがそれぞれ直線移動部24、25を構成する。また、本体5aの遊端側面には、遊端側の第4中間フレーム6をガイドするための移動体5dを備え、その下部には前記ラック13aに噛み合うピニオン13cが回転自在に取り付けられる。
【0037】
図7はこの第3中間フレーム5の構成を更に詳細に示す側面図、図8は平面図である。
図6〜図8に示すように、前記本体5aはその搬送方向Xの中間部に前記ピニオン12cを鉛直軸周りに回動自在に支持する軸受け5eと、ピニオン12cの両側部に突出して前記弾性体10a,10bを支持する支持部5f,5gと、これらの支持部5f,5gの下部に連設されると共に遊端側に突出させ前記チェーン14cにかかるテンションを調節するテンション調節部14d,14eを形成する突出板5hと、この突出板5hの遊端にさらに立設し前記チェーン14cを巻回するスプロケット14d,14eを回動自在に設けた立設部5iとを備える。
【0038】
図9は前記第4中間フレーム6の構成を詳細に説明する側面図、図10は平面図である。図6,図9,図10に示すように、第4中間フレーム6は、平板形状の本体6aの基台フレーム側面に前記移動体5dに対応するように取り付けられたガイドレール6bを備え、これらが直線移動部26を構成する。また本体6aの搬送方向Xの基台フレーム側面の両端部には、前記ストッパ10e,10fを突出支持するアングル6c,6dを備える。また、本体6aの遊端側面にはその搬送方向Xの両端部に前記スプロケット14a,14bを回動自在に支持する支持部6e,6fを備え、本体6aの上面には前記テーブルフレーム7をガイドするためのガイドレール6gを備える。
【0039】
図6,9,10に示すように、テーブルフレーム7は前記テーブル9の下面に取り付けられる取付台7aと、この取付台7aの下面の前記ガイドレール6gに対応する位置に取り付けられた移動体7bを備え、前記部材6g,7bが直線移動部27を構成する。さらに、取付台7aの下面には前記チェーン14cが固定されるチェーン連結部7cを備える。
【0040】
なお、上述の実施形態では直線移動部21〜27として、ガイドレール2c,2d,4b,4c,4d,4e,6b,6gと、これに対応する移動体3b,3c,3d,3e,5b,5c,5dとからなるものを例示しているが、この直線移動部20〜27はより高精度に直線移動を行わせるLMガイド(商品名)などを用いてもよいことは言うまでもない。
【0041】
前記構成のワーク搬送装置1は制御部12によってモータ8を正逆回転することにより、モータ8の回転軸に設けたピニオン8aがラック3f(駆動ラック)に動力を伝達して第1中間フレーム3が搬送方向Xに移動する。すなわち、本実施形態においてはラック3fを設けた第1中間フレーム3が駆動フレームとなる。
【0042】
第1中間フレーム3が基台フレーム2に対して移動することにより、ラック11aに噛み合うピニオン11cが回動し、これに伴ってピニオン11cに噛み合う第2中間フレーム4のラック11bが第1中間フレーム3に対して移動する。つまり、隣接する3つのフレーム2〜4が、ちょうど隣接するフレーム2,3とフレーム3,4の搬送方向Xの位置関係が同じになるように、連動機構11によって連動する。同様に、隣接する他の2組のフレーム3〜5、4〜6も連動機構12、13によって連動する。
【0043】
さらに、前記チェーン14cの両端部が第3中間フレーム5の突出板5hに設けたテンション調節部14d,14eに固定されており、スプロケット14a,14bを第4中間フレーム6の搬送方向Xの両端部に回動自在に支持され、チェーン14cがテーブルフレーム7のチェーン連結部7cに固定されているので、図9に仮想線で示すように、各フレーム5〜7の移動幅が同じになるようにこれらを連動させることができる。
【0044】
すなわち、全てのフレーム2〜7のうち隣接する3つのフレーム2〜4、3〜5、4〜6、5〜7をそれぞれ連動させるように連動機構11〜14を設けているので、これらの中間フレーム3〜6のうち一つのフレーム3を移動させるだけで全てのフレーム3〜7を隣接するフレーム2〜6に対して同じ幅だけ移動させることができる。
【0045】
図11はラック12aとピニオン12cの噛み合わせ部分の状態を拡大して示す図であり、図11(A)は各フレーム2〜7が移動中の状態、図11(B)は搬送方向Xの端(始点または終点)に停止した状態を示す図である。図11(A)に示すように、各フレーム2〜7が移動中にはラック12aとピニオン12cとの間に例えば0.1mm程度の遊び(バックラッシュ)bが形成されているので、ラック12aとピニオン12cの噛み合い部分の摩擦を小さくすることができる。
【0046】
つまり、それだけモータ8に必要とされる回転トルクを小さくすることができ、装置の小型化を達成することができ、ラック12aとピニオン12cの摩耗も少なくすることができる。同様のことが連動機構11〜13の各ピニオンとラックにおいても生じる。また、スプロケット14a,14bとチェーン14cを用いた連動機構においても、移動中は十分な遊びを確保して、効率のよい搬送を行うことができる。各部の摩擦が小さくなればなるほど、ワーク搬送装置1はメンテナンス周期を長くすることができる。
【0047】
他方、図11(B)に示すように、前記弾性体10bの当接部10cがストッパ10eに当接した状態(図9参照)、すなわち、テーブル9が搬送方向X1の終点に位置する状態では、弾性体10aによる付勢力Fがピニオン12cに作用して前記バックラッシュbを無くすことができる。この状態は全てのラックとピニオンからなる連動機構11〜13においても、チェーンとスプロケットとからなる連動機構14においても同じ状態が生じる。つまり、連動機構11〜14のどこにおいても遊びによる影響を前記バックラッシュ収集機構Aによって吸収でき、モータ8の回転数および回転角によって、ワーク搬送装置1のテーブル9を高い精度で位置決め制御することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ワーク搬送装置
2 基台フレーム
3〜6 中間フレーム
7 テーブルフレーム
8 アクチュエータ
8a 駆動ピニオン
3f 駆動ラック
9 テーブル
10 弾性体
11〜14 連動機構
14a,14b スプロケット
14c チェーン
15 制御部
20〜27 直線移動部
A ワーク搬送装置のバックラッシュ吸収機構
F 付勢力
W ワーク
X 搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台フレームに対して搬送方向に直線的に移動できるように順次連結された複数のフレームと、隣接する3つのフレームをそれぞれ連動させることにより全てのフレームを連動させるラックとピニオンおよび/またはスプロケットとチェーンからなる連動機構と、前記複数のフレームのうち何れか一つのフレームを駆動フレームとして搬送方向に移動させるアクチュエータと、前記各フレームのうち最遊端部に位置するテーブルフレームに取り付けられてワークを載せるテーブルとを有し、かつ、
前記テーブルが搬送方向の始点または終点に位置する状態でこのテーブルをその移動範囲の内側に付勢する付勢力を加える弾性体を備えることを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項2】
基台フレームと、この基台フレームに対して順次連結された少なくとも一つの中間フレームと、中間フレームを介して前記基台フレームに連結されると共にワークを載せるテーブルが取り付けられるテーブルフレームと、隣接する各フレームを搬送方向に直線的に移動可能に連結する直線移動部と、何れか一つの中間フレームを駆動フレームとして搬送方向に移動させるアクチュエータとを備え、前記中間フレームが、その両側に隣接するフレームに設けたラックに噛み合うことによりこれら隣接するフレームが互いに相対する方向に移動するように連結させるピニオンを有し、かつ、
前記テーブルが搬送方向の始点または終点に位置する状態でこのテーブルをその移動範囲の内側に付勢する付勢力を加える弾性体を備えることを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項3】
前記テーブルフレームに隣接するフレームは、その搬送方向の両端部に一対のスプロケットを備え、これらのスプロケットにチェーンを巻回させると共に、このチェーンの両端をさらに基台フレーム側のフレームに連結させ、中間部を前記テーブルフレームに連結させたテーブル連動機構を備える請求項2に記載のワーク搬送装置。
【請求項4】
前記アクチュエータは回転角を検出可能なモータと、このモータの回転軸に取り付けられて前記駆動フレームに設けた駆動ラックに嵌合する駆動ピニオンと、モータの回転数および回転角によってテーブルの位置を制御する制御部とを有する請求項1〜請求項3の何れかに記載のワーク搬送装置。
【請求項5】
基台フレームに対して搬送方向に直線的に移動できるように順次連結された複数のフレームと、隣接するフレームを連動させる連動機構と、前記複数のフレームのうち何れか一つのフレームを駆動フレームとして搬送方向に移動させるアクチュエータと、前記各フレームのうち最遊端部に位置するテーブルフレームに取り付けられてワークを載せるテーブルとを有するワーク搬送装置に取り付けられ、
前記テーブルが搬送方向の始点または終点に位置する状態でこのテーブルをその移動範囲の内側に付勢する付勢力を加える弾性体を備えることを特徴とするワーク搬送装置のバックラッシュ吸収機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−265063(P2010−265063A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116751(P2009−116751)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000191353)新明工業株式会社 (75)
【Fターム(参考)】