ワーク搬送装置及びプレスシステム
【課題】 簡単な制御で、先端アームと金型やスライドとの干渉を回避し易くすることが可能なワーク搬送装置及びプレスシステムを提供する。
【解決手段】 第1の回動軸11を中心に回動可能に装着された第1のアーム12と、第1のアーム12の先端側に設けられた第2の回動軸21を中心に回動可能に装着された第2のアーム22と、第3の回動軸31を中心に回動可能に装着された第3のアーム32と、第2のアーム22の先端側に回動可能に装着され、且つ第3のアーム32の先端側に回動可能且つスライド可能に装着された第4のアーム42と、ワークを保持可能に形成された保持手段51と、第1のアーム12を回動させる回動駆動手段17と、第1のアーム12の回動に連動させて第2のアーム22を回動させるとともに、第1のアーム12の回動に連動させて第3のアーム32を回動させる回動伝達手段とを備える。
【解決手段】 第1の回動軸11を中心に回動可能に装着された第1のアーム12と、第1のアーム12の先端側に設けられた第2の回動軸21を中心に回動可能に装着された第2のアーム22と、第3の回動軸31を中心に回動可能に装着された第3のアーム32と、第2のアーム22の先端側に回動可能に装着され、且つ第3のアーム32の先端側に回動可能且つスライド可能に装着された第4のアーム42と、ワークを保持可能に形成された保持手段51と、第1のアーム12を回動させる回動駆動手段17と、第1のアーム12の回動に連動させて第2のアーム22を回動させるとともに、第1のアーム12の回動に連動させて第3のアーム32を回動させる回動伝達手段とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機械で加工されるワークを搬送するワーク搬送装置及びプレスシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数のアームを用いて、加工後のワークをプレス機械に装着した金型から取り出し、加工のためのワークをプレス機械に装着した金型へ搬送するワーク搬送装置が知られている。このようなワーク搬送装置においては、ワーク搬送時間を短縮することによってさらにプレス機械の加工効率を向上することが求められている。具体的には、上流側プレス機械の加工後のワークを早く取り出すために、ワーク保持手段を備えた先端アームが上昇途中のスライドや上型との干渉を避けながら上流側プレス機械のプレス加工領域内に進入できること、及び先端アームが下流側プレス機械の金型にワークを置いた後に、下降途中のスライドや上型との干渉を避けながら下流側プレス機械から退出できることが求められている。
【0003】
アームと金型やスライドとの干渉を回避してワーク搬送速度の高速化を図るために、第1のアームの下端側を往復移動させつつ、第2、3のアームを第1のアームの下端側の移動位置に対応させて回動させつつ、ワークを吸着する吸着手段をプレス加工領域内にほぼ水平方向から移動させるワーク搬送装置が知られている(例えば、特許文献1)。しかしながら、このワーク搬送装置では、複数のアーム(第1〜3のアーム)を回動駆動する複数の駆動源(第1〜3の駆動源)を同時に制御する必要があり駆動制御が複雑になるといった問題点があった。
【0004】
また、基部アームのみを回転駆動源によって回転させ、第2アーム(先端アーム)の回転を基部アームの回転と連動せしめる移動装置が知られている(例えば、特許文献2)。しかしながら、この移動装置では、先端アームの水平からの傾きが大きいため、先端アームが上昇又は下降中のスライドや金型と干渉する領域が広くワーク搬送時間を短縮することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−114249号公報
【特許文献2】特開2002−224976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な制御で、先端アームと金型やスライドとの干渉を回避し易くすることが可能なワーク搬送装置及びプレスシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るワーク搬送装置は、プレス機械で加工されるワークを搬送するワーク搬送装置において、基台と、基端側が、前記基台に設けられた第1の回動軸を中心に回動可能に装着された第1のアームと、基端側が、前記第1のアームの先端側に設けられた第2の回動軸を中心に回動可能に装着された第2のアームと、基端側が、前記第2の回動軸と同一中心軸線の第3の回動軸を中心に回動可能に装着され、前記第2のアームと長さが異なる第3のアームと、基端側が、前記第2のアームの先端側に回動可能に装着され、且つ、先端側が、前記第3のアームの先端側に回動可能且つスライド可能に装着された第4のアームと、前記第4のアームの先端側に設けられ、ワークを保持可能に形成された保持手段と、前記第1のアームを前記第1の回動軸を中心に回動させる回動駆動手段と、前記第1のアームの回動に連動させて前記第2のアームを前記第2の回動軸を中心に回動させるとともに、前記第1のアームの回動に連動させて前記第3のアームを前記第3の回動軸を中心に回動させる回動伝達手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るワーク搬送装置によれば、簡単な制御で、先端アームと金型やスライドとの干渉を回避し易くすることができる。また、本発明に係るワーク搬送装置によれば、先端アームを略水平な姿勢でプレス機械に進入又はプレス機械から退出させることができる。
【0009】
本発明に係るワーク搬送装置では、前記第3のアームの前記第1のアームに対する回転速度よりも、前記第2のアームの前記第1のアームに対する回転速度が大きくなるようにしてもよい。
【0010】
本発明に係るワーク搬送装置では、前記基台を昇降させる昇降駆動手段を更に備えるようにしてもよい。
【0011】
本発明に係るプレスシステムは、ワークを搬送してプレス加工するプレスシステムにおいて、前記本発明に係るワーク搬送装置を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るプレスシステムによれば、簡単な制御で、先端アームと金型やスライドとの干渉を回避し易くすることができる。また、本発明に係るプレスシステムによれば、先端アームを略水平な姿勢でプレス機械に進入又はプレス機械から退出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るワーク搬送装置を備えたプレスシステムの正面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るワーク搬送装置を備えたプレスシステムの側面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るワーク搬送装置の正面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るワーク搬送装置の一部を断面で示した平面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るワーク搬送装置の一部を断面で示した側面図である。
【図6】回動伝達手段を説明するための模式図である。
【図7】駆動制御装置を説明するためのブロック図である。
【図8】取出し搬送を行うワーク搬送装置と、送り出し搬送を行うワーク搬送装置のそれぞれの動作を時系列順に示す図である。
【図9】取出し搬送を行うワーク搬送装置と、送り出し搬送を行うワーク搬送装置のそれぞれの動作を時系列順に示す図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係るワーク搬送装置を備えたプレスシステムの側面図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る回転伝達手段を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係るワーク搬送装置を備えたプレスシステムの正面図であり、図2は、プレスシステムの側面図であり、図3(A)、図3(B)は、ワーク搬送装置の正面図であり、図4は、ワーク搬送装置の一部を断面で示した平面図であり、図5は、ワーク搬送装置の一部を断面で示した側面図である。
【0016】
図1、図2に示すように、本実施の形態のプレスシステムは、複数のプレス機械1(1A、1B)が矢印X方向(ワーク搬送方向)にタンデム配列され、且つワーク搬送装置10(10A、10B、10C)を用いて上流側プレスから下流側プレス(例えば、プレス機械1Aからプレス機械1B)へワーク69を搬送しつつ各プレス機械1においてプレス加工させるように形成されている。
【0017】
プレス機械1A,1Bは、金型5,6を除いて基本的に同じ構成である。プレス機械1A,1Bは、コラム3に沿って昇降可能なスライド5と、スライド5の下面に取り付けられた上型6と、上型6と組み合わされてプレス加工する下型7と、下型7を上面に載置固定したボルスタ8と、を含む。ここでは、プレス機械1A,1Bが2台と、ワーク搬送装置10A、10B、10Cが3台と、がワーク69の搬送方向である矢印X方向に並んで配置されている。ワーク搬送装置10A、10B、10Cもプレス機械に対する取り付け位置が異なるだけで基本的に同じ構成である。ワーク69は、図1における一番左端のワーク搬送装置10Aによってプレス機械1Aへ搬入されてプレス加工され、ワーク搬送装置10Bによってプレス機械1Aから搬出されて、さらにプレス機械1Bへ搬入されてプレス加工され、ワーク搬送装置10Cによってプレス機械1Bから搬出されて図1における一番右端に至る。
【0018】
図3(A)、図3(B)、図4、図5に示すように、ワーク搬送装置10は、第1の回動軸11を中心に回動可能に装着された第1のアーム12と、第2の回動軸21を中心に回動可能に装着された第2のアーム22と、第3の回動軸31を中心に回動可能に装着され第2のアームと長さが異なる第3のアーム32と、第4の回動軸40を中心に回動可能に装着され、且つ、第5の回動軸41を中心に回動可能且つスライド可能に装着された第4のアーム42と、第4のアーム42の先端側に設けられ、ワーク69を保持可能に形成された保持手段51とを備える。第1〜第5の回動軸11、21、31、40、41は、それぞれ図4,5に示す矢印Y方向(すなわちプレス機械の前後方向)に延びる。
【0019】
またワーク搬送装置10は、第1のアーム12を第1の回動軸11を中心に回動させ、第1のアーム12の回動に連動させて第2のアーム22を第2の回動軸21を中心に回動させるとともに、第1のアーム12の回動に連動させて第3のアーム32を第3の回動軸31を中心に回動させることで、先端アームとなる第4のアーム42を略水平な姿勢で、プレス機械1のプレス加工領域9内に進入又はプレス加工領域9内から退出させるように形成されている。すなわち、ワーク搬送装置10は、第4のアーム42を略水平な姿勢にしつつ、保持手段51をプレス加工領域9内に移動可能に形成されている。
【0020】
図1、図2、図5に示すように、プレス機械1Aのコラム3とプレス機械1Bのコラム3に横架された設置梁61には、走行梁62が取り付けられている。走行梁62には、走行キャリア63が図1における矢印X方向と平行な方向(左右方向)に往復移動可能に装着されている。走行キャリア63は、走行梁62上を、走行用サーボモータ等からなる走行駆動手段(図示省略)により矢印X方向に走行する。
【0021】
走行キャリア63には、昇降フレーム64が図1における矢印Z方向(すなわち上下方向)に移動可能に装着されている。昇降フレーム64は、昇降駆動用サーボモータ65とボールねじ66(図5参照)とからなる昇降駆動手段により矢印Z方向に昇降して往復移動する。また、図1〜図5に示すように、昇降フレーム64の下端には、第1の回動軸11を回動可能に支持する基台としてのアームキャリア67が固定されている。昇降フレーム64とアームキャリア67は、エアシリンダ装置で構成されるバランサ71によってバランスされている。
【0022】
図3(A)、図3(B)、図4、図5に示すように、第1の回動軸11は、アームキャリア67に回動可能に装着され、歯車18を介して連結された回動駆動手段17により正面から見て右回転及び左回転方向に回動される。この回動駆動手段17は、アームキャリア67に固定された2つの回動駆動用サーボモータ19を含む。
【0023】
第1のアーム12は、基端側が第1の回動軸11に固定され、第1の回動軸11の中心軸線を中心に回動可能に装着されている。すなわち、第1のアーム12は、回動駆動手段17により、第1の回動軸11と同期して右回転及び左回転方向に回動される。また、第1のアーム12は、エアシリンダ装置で構成されるバランサ72によってバランスされている。バランサ72は、一端側が昇降フレーム64に回動可能に装着され、他端側が第1のアーム12に回動可能に装着されている。なお、図4においてはバランサ72は省略した。
【0024】
第2の回動軸21は、第1のアーム12の先端側に回動可能に装着されている。第2のアーム22は、基端側が第2の回動軸21に固定され、第2の回動軸21の中心軸線を中心に回動可能に装着されている。すなわち、第2のアーム22は、第2の回動軸21と同期して右回転及び左回転方向に回動される。
【0025】
第3の回動軸31は、第1のアーム12の先端側に回動可能に装着されている。第3の回動軸31と第2の回動軸21とは、同一中心軸線上に設けられ、第2の回動軸21は、リング状に形成された第3の回動軸31の中心部を貫通して設けられている。
【0026】
第3のアーム32は、第2のアーム22より長いアームであり、基端側が第3の回動軸31に固定され、第3の回動軸31の中心軸線を中心に回動可能に装着されている。第2の回転軸21は、第3のアーム32及び第3の回転軸31を貫通して第2のアーム22に固定されている。すなわち、第3のアーム32は、第2の回転軸21の回動に影響されることなく第3の回動軸31と同期して右回転及び左回転方向に回動される。
【0027】
第1のアーム12の内部には、アームキャリア67に固定された第1の歯車68と、第1の歯車68と噛合う第1及び第2の遊星歯車26、36と、第2の回動軸21に固定され第1の遊星歯車26と噛合う第2の歯車24と、第3の回動軸31の端部周囲に形成され第2の遊星歯車36と噛合う第3の歯車34とが設けられている。これら第1〜第3の歯車68、24、34と、第1及び第2の遊星歯車26、36とは、第1のアーム12の回動に連動して第2のアーム22を第2の回動軸21を中心に回動するとともに、第1のアーム12の回動に連動させて第3のアーム32を第3の回動軸31を中心に回動させる回動伝達手段として機能する。
【0028】
すなわち、第1のアーム12が回動駆動手段17により回動すると、アームキャリア67に固定された第1の歯車68の外周上を第1の遊星歯車26が旋回して回転し、これにより、第2の回動軸21の一端側に固定されている第2の歯車24が回転するとともに、第2の回動軸21の他端側に固定されている第2のアーム22が回動する。また、第1のアーム12が回動駆動手段17により回動すると、第1の歯車68の外周上を第2の遊星歯車36が旋回して回転し、これにより、第3の回動軸31の一端側に形成されている第3の歯車34が回転するとともに、第3の回動軸31の他端側に固定されている第3のアーム32が回動する。
【0029】
例えば、模式図である図6に示すように、第1のアーム12が第1の回動軸11を中心に図中左回転方向(すなわち反時計回り)に回動されると、第1の遊星歯車26が左回転し、これにより、第2の歯車24及び第2の回動軸21が右回転(すなわち時計回り)に回転する。同様に、第1のアーム12が第1の回動軸11を中心に図中左回転すると、第2の遊星歯車36が左回転し、これにより、第3の歯車34及び第3の回動軸31が右回転する。したがって、第1のアーム12が左回転方向に回動すれば、第2、第3の回転軸21,31が右回転して第2、第3のアーム22,32を右回転方向に回動する。
【0030】
なお、第1の歯車68と第2の歯車24の歯車比は、第1の歯車68と第3の歯車34の歯車比と異なる値に設定されている。本実施の形態では、第1の歯車68と第2の歯車24の歯車比は4:1に設定され、第1の歯車68と第3の歯車34の歯車比は2:1に設定されている。従って、第2のアーム22は、第1のアームに対して4倍の回転速度で逆回転し、第3のアーム32は、第1のアームに対して2倍の回転速度で逆回転する。すなわち、第3のアーム32の第1のアーム12に対する回転速度よりも、第2のアーム22の第1のアーム12に対する回転速度が大きくなるように構成されている。
【0031】
第4のアーム42は、基端側が、第2のアーム21の先端側に設けられた第4の回動軸40の中心軸線を中心に回動可能に装着され、先端側が、第3のアーム31の先端側に設けられた第5の回動軸41の中心軸線を中心に回動可能に、且つ、第3のアーム31の先端側に第3のアーム31に沿って設けられたリニアスライド44によりアーム長手方向にスライド可能に装着されている。
【0032】
すなわち第4のアーム42は、互いに長さが異なる第2のアーム22及び第3のアーム32により二点支持され、第2のアーム22の第1のアーム12に対する回転角度と、第3のアーム32の第1のアームに対する回転角度により、その姿勢と位置が規定される。
【0033】
図3(B)に示すように、第1のアーム12が上向きに起立した状態(中立状態)においては、第2のアーム22は第2の回動軸21を支持点として上向きに起立した状態となり、第3のアーム32は第3の回動軸31を支持点として下向きに垂下した状態となり、第4のアーム42は第4及び第5の回動軸40、41を支持点として下向きに垂下した状態となる。
【0034】
図3(B)に示す中立状態を基準として、図1に示すワーク搬送装置10Bが上流側プレス機械1Aに半加工品であるワーク69を取出しに向かう取出し搬送を行う場合には、回動駆動用モータ19を制御して、図3(A)に示すように、第1のアーム12及び第1の回動軸11を図中左回転方向に角度θ(例えば略80°)だけ回動させる。このとき、第2のアーム22及び第2の回動軸21は、回動伝達手段により、第1のアーム12に対して右回転方向に角度4θ(例えば略320°)だけ回動され、第3のアーム32及び第3の回動軸31は、回動伝達手段により、第1のアーム12に対して右回転方向に角度2θ(例えば略160°)だけ回動される。このとき、第2のアーム22の先端側に設けられた第4の回動軸40と、第3のアーム32の先端側に設けられた第5の回動軸41が、略水平方向に離れて位置する状態となるため、第4及び第5の回動軸40、31を支持点とする第4のアーム42は、略水平状態となる。
【0035】
また、ワーク搬送装置10Bが下流側プレス機械1Bに半加工品であるワーク69を送り出す送り出し搬送を行う場合には、回動駆動用モータ19を制御して、第1のアーム12及び第1の回動軸11を図中右回転方向に角度θ(例えば略80°)だけ回動させる。このとき、第2のアーム22及び第2の回動軸21は、回動伝達手段により、第1のアーム12に対して左回転方向に角度4θ(例えば略320°)だけ回動され、第3のアーム32及び第3の回動軸31は、回動伝達手段により、第1のアームに対して左回転方向に角度2θ(例えば略160°)だけ回動される。そして、取出し搬送を行う場合と同様に、第4及び第5の回動軸40、31を支持点とする第4のアーム42は略水平状態となる。
【0036】
このように、本実施の形態によれば、1つの回動駆動用モータ19を制御して第1のアーム12及び第1の回動軸11のみを回動駆動させるという簡単な制御で、第4のアーム42を略水平な姿勢で、第4のアーム42の先端側にある保持手段51をプレス機械1に進入・退出させることができ、プレス機械1との干渉領域を小さくすることができ、プレス機械1との干渉を回避し易くすることができる。さらに、第4のアーム42を第2のアーム22と第3のアーム32とで2点支持することで、第4のアーム42を1点支持する場合と比べて、第4のアーム42の変形を少なくし剛性を向上することができる。
【0037】
なお、第1のアーム12を、図3(B)に示す中立状態から回動させると、第2のアーム22の回転速度と第3のアーム32の回転速度が異なるため、第4の回動軸40と第5の回動軸41間の距離が短くなり、第4のアーム42は、第5の回動軸41(すなわち第3のアーム32の先端部)に対してアーム先端側へスライドして第5の回動軸41とチルト軸54間の距離が長くなる。一方、第1のアーム12を、図3(A)に示す角度θだけ回動された状態から中立状態に向けて回動させると、第4の回動軸40と第5の回動軸41間の距離が長くなり、第4のアーム42は、第5の回動軸41に対してアーム基端側へスライドして第5の回動軸41とチルト軸54間の距離が短くなる。
【0038】
保持手段51は、ワーク69を吸着及び開放可能な手段であり、バキュームカップや電磁マグネット等から形成される。本実施の形態では、ワーク69が、図1〜図3に示す板形状材であるから、バキュームカップ53を採用している。保持手段31は、ワーク69を保持可能に構成されていればよく、例えば、ワーク69を把持及び開放可能に構成することもできる。
【0039】
図3〜図5に示すように、複数のバキュームカップ53は、矢印Y方向に延びるチルト軸54(第6の回動軸)に固定された複数の保持部材52に相対回転不能状態で取り付けられている。
【0040】
チルト軸54は、第4のアーム42の先端側に設けられ、第4のアーム42の基端側に固定されたチルト軸駆動用サーボモータ55により、第4のアーム42内に設けられたチルト軸伝達シャフト(図示省略)を介して回動される。チルト軸54は、第4のアーム42の傾斜角度に応じて、バキュームカップ53の吸着面の姿勢(搬送中のワーク姿勢)が水平状態を保つように回動制御される。
【0041】
また第4のアーム42の先端側には、チルト軸54に対して垂直な方向に延びるひねり軸(図示省略)が設けられている。ひねり軸(第7の回動軸)は、第4のアーム42の基端側に固定されたひねり軸駆動用サーボモータ56により、第4のアーム42内に設けられたひねり軸伝達シャフト(図示省略)を介して回動される。ひねり軸を回動させることで、ひねり軸に固定されたチルト軸54をひねり軸を中心に回動(ひねり動作)させて、搬送中のワーク姿勢を制御することができる。
【0042】
図7に示す駆動制御装置80は、CPU、ROM、RAMを含む制御部と、ハードディスク装置を含む記憶部と、設定・表示部82と、を含み、第1〜第5のモータドライバ60D、65D、19D、55D、56Dに制御信号を出力する。第1のモータドライバ60Dは、制御信号に基づき、走行駆動用サーボモータ60を回転制御して、走行キャリア63を走行駆動する。第2のモータドライバ65Dは、制御信号に基づき、昇降駆動用サーボモータ65を回転制御して、ボールねじ66を回転駆動することで、昇降フレーム64を昇降駆動する。第3のモータドライバ19Dは、制御信号に基づき、回動駆動用サーボモータ19を回転制御して、第1の回動軸11を回動駆動する。第4のモータドライバ55Dは、制御信号に基づき、チルト軸駆動用サーボモータ55を回転制御して、チルト軸54を回動駆動する。第5のモータドライバ56Dは、制御信号に基づき、ひねり軸駆動用サーボモータ56を回転制御して、ひねり軸を回動駆動する。また。駆動制御装置80は、バキュームコントローラ84に吸着・開放制御信号を出力して保持手段51(バキュームカップ53)の吸着・開放を制御する。
【0043】
ワーク搬送プログラムを構成する基本的な固定的情報(例えば、ワーク搬送情報、姿勢調整情報、吸着・開放情報等)は記憶部に格納されており、選択的情報(例えば、ワーク69の種類)は表示部82の表示を参照しつつ設定部82を用いて設定変更(例えば選択)でき、この情報も記憶部に記憶される。
【0044】
プレス運転に際しては、設定部82を用いて複数のワーク搬送プログラムの中からその1つを選択設定することができる。制御部は選択設定されたワーク搬送プログラムを実行する。なお、プレス機械1側の各種動作(例えば、スライド昇降動作)は、図示しないプレス運転制御盤からの信号により実行される。このプレス機械1側の動作は、プレス動作信号として通信線86を介して伝送され、駆動制御装置80はこのプレス動作信号を用いてタイミング同期させつつワーク搬送を行う。
【0045】
ワーク搬送運転に関しては、駆動制御装置80は、第1の回動軸11を中心として第1のアーム12を回動させつつ、走行キャリア63を走行させて保持手段51を移動する。これらと並行して、昇降フレーム64を昇降させることで、保持手段51が水平移動するように(第4のアーム42の先端部の高さが一定となるように)しつつ、チルト軸54を回動させることで、保持手段51の姿勢を制御する。また、保持手段51によりワーク69を吸着・開放する際には、昇降フレーム64を昇降させる。すなわち、駆動制御装置80は、第4のアーム42の先端部のチルト軸54を、図1に示す軌跡Rに沿って移動させる。
【0046】
図8(A)〜図8(E)、図9(A)〜図9(E)に、プレス機械1Aの上流側に配置されたワーク搬送装置10Aと、プレス機械1Aの下流側に配置されたワーク搬送装置10Bのそれぞれの動作を時系列順に示す。ワーク搬送装置10Aは、プレス機械1Aにワーク69Bを送り出す送り出し搬送を行い、ワーク搬送装置10Bは、プレス機械1Aからワーク69Aを取り出す取出し搬送を行う。なお、同図では第2及び第3のアーム22、32の図示を省略し、ワーク搬送装置10A,10Bの左右方向への走行は矢印で示している。
【0047】
図8(A)では、ワーク搬送装置10Bは、第1のアーム12Bが上向きに起立した中立状態となっており、ワーク搬送装置10Aは、上流側プレス機械からワーク69Bを取り出した状態となっている。また、プレス機械1Aは、ワーク69Aの加工を終えて、スライド5の上昇を開始している。
【0048】
図8(B)〜図8(D)に示すように、ワーク搬送装置10Aは、第1のアーム12Aが右回転方向に回動されつつ、プレス機械1A側(すなわち右方向)へ走行して、中立状態となる。
【0049】
一方、ワーク搬送装置10Bは、第1のアーム12が左回転方向に回動されつつ、プレス機械1側(すなわち左方向)へ走行して、プレス機械1Aにワーク69Aを取り出しに向かう。また、図8(D)に示すように、ワーク搬送装置10Bの第4のアーム42Bの先端部の保持手段51がプレス機械1A内に進入すると、ワーク搬送装置10Bは下降して保持手段51によりワーク69Aを吸着して保持する。
【0050】
ここで、図8(C)、図8(D)に示すように、ワーク搬送装置10Bの第4のアーム42Bは、プレス進入時に略水平な姿勢となっている。従って、保持手段51を備えた第4のアーム42Bを、上昇途中のスライド5や上型6との干渉を避けながら、型開き動作の開始から比較的早い段階でプレス機械1Aの加工領域内に進入させることができる。すなわち、スライド5が上昇し終わるのを待つことなく、第4のアーム42Bの先端部をプレス機械1A内に進入させることができる。
【0051】
ワーク搬送装置10Bは、ワーク69Aを保持すると上昇し(図8(E)参照)、第1のアーム12Bが右回転方向に回動されつつ、下流側プレスに向けて(すなわち右方向へ)走行し、プレス機械1Aから下流側プレスにワーク69Aを送り出し搬送する(図9(A)〜図9(E)参照)。ここで、図9(A)、図9(B)に示すように、プレス退出時には、ワーク搬送装置10Bの第4のアーム42Bは、第2のアーム22の回動によりアーム基端側にスライドするため、第4のアーム42Bの先端部を、送り出し搬送するワーク搬送装置10Aの第4のアーム42Aとの干渉を避けながらプレス機械1A内から早く退出させることができる。
【0052】
一方、図8(E)、図9(A)、図9(B)に示すように、ワーク搬送装置10Aは、第1のアーム12Aが右回転方向に回動されつつ、プレス機械1A側(すなわち右方向)へ走行して、プレス機械1Aにワーク69Bを送り出し搬送する。そして、ワーク搬送装置10Aの第4のアーム42Aの先端部(保持手段51)がプレス機械1A内に進入すると、ワーク搬送装置10Aは下降して保持手段51によりワーク69Aを下型7上に開放する。このときプレス機械1Aは、スライド5の下降を開始している。
【0053】
図9(C)〜図9(E)に示すように、ワーク搬送装置10Aは、ワーク69Aを開放後、第1のアーム12Aが左回転方向に回動されつつ、上流側プレスに向けて(すなわち左方向へ)走行し、上流側プレスにワークを取り出しに向かう。
【0054】
ここで、図9(C)、図9(D)に示すように、ワーク搬送装置10Aの第4のアーム42Aは、プレス退出時に略水平な姿勢となっている。従って、第4のアーム42Aを、下降途中のスライド5や上型6との干渉を避けながら、型閉じ動作開始から比較的遅い段階でプレス機械1Aの加工領域内から退出させることができる。すなわち、スライド5の下降を止めることなく、第4のアーム42Aの先端部をプレス機械1A内から退出させることができる。また、プレス退出時には、第4のアーム42Aは、第2のアーム22の回動によりアーム基端側にスライドするため、第4のアーム42Aの先端部をプレス機械1A内から早く退出させることができる。
【0055】
このように、本実施の形態によれば、簡単な制御で、先端アームである第4のアーム42を、スライド5や上型6との干渉を回避し易い略水平な姿勢でプレス機械1A内に進入・退出させることができる。すなわち、プレス機械1Aのスライド5の昇降速度を上げてもワークの搬送に要する時間を確保することになり、プレス加工のサイクルタイムを短くすることができる。
【0056】
(第2の実施の形態)
図10は、第2の実施の形態に係るワーク搬送装置を備えたプレスシステムの側面図である。この実施の形態は、基本的な構成・機能が第1の実施の形態の場合と同様とされているが、第1の実施の形態とは異なり、側面図である図10に示すように、アーム回動機構(すなわち第1〜第4のアーム12、22、32、42、第1〜第5の回動軸11、21、31、40、41、回動伝達手段等)、回動駆動用サーボモータ19、基台67、昇降フレーム64及び昇降駆動用サーボモータ65等が、矢印Y方向に離隔配設された1対からなる。また、チルト軸54が、プレス前側のチルト軸54Fとプレス後側のチルト軸54Rとを一体的に形成した共通軸(すなわちエコライザ軸)を形成する。1対の第1のアーム12及び第1の回動軸11は同期して回動運動し、1対の昇降フレーム64も同期して昇降運動し、1対の走行キャリア62も同期して走行するように駆動制御される。この第2の実施の形態によれば、ワーク69の重量が大きい場合に有効である。
【0057】
(第3の実施の形態)
図11は、第3の実施の形態に係る回転伝達手段を説明するための模式図である。この実施の形態は、基本的な構成・機能が第1の実施の形態の場合と同様とされているが、第1の実施の形態とは異なり、第1のアーム12の内部に設けられた複数のプーリと複数のタイミングベルトにより回動伝達手段を構成している。
【0058】
図11において、第1のアーム12の内部には、アームキャリア67に固定された第1のプーリ70と、第2の回動軸21に固定され第1のタイミングベルト27により第1のプーリ70と連結された第2のプーリ25と、第3の回動軸31に固定され第2のタイミングベルト37により第1のプーリ70と連結された第3のプーリ35とが設けられている。そして、第1の実施の形態と同様に、例えば、第1のアーム12が第1の回動軸11を中心に図中左回転方向(すなわち反時計回り)に回動されると、第1のタイミングベルト27を介して第2のプーリ25及び第2の回動軸21が右回転方向(すなわち時計回り)に回動するとともに、第2のタイミングベルト37を介して第3のプーリ35及び第3の回動軸31が右回転方向に回動する。この第2の実施の形態によれば、ワーク69の重量が小さい場合に有効である。
【0059】
なお、上記のように本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。本発明の実施の形態では、走行駆動手段を用いてワーク搬送装置10を矢印X方向(ワーク搬送方向)に走行させる例について説明したが、プレス機械1A、1B間の距離が短く、走行駆動手段を用いなくても、第4のアーム42の先端部の保持手段51をプレス機械1A、1B内に進入させることが可能な場合には、走行駆動手段を省略することができる。また、本発明の実施の形態では、第4のアーム42が、第2のアーム22の先端側に回動可能に装着され、第3アーム32の先端側に回動可能且つスライド可能に装着される例について説明したが、第4のアーム42が、第2のアーム22の先端側に回動可能且つスライド可能に装着され、第3アーム32の先端側に回動可能に装着されるように構成することもできる。また、本発明の実施の形態では、保持手段51は、ワーク69を吸着して保持したが、ワーク形状に合わせてチャックなどの公知の保持機構を採用することができる。また、本発明の実施の形態では、昇降駆動用サーボモータ65は、下型7に対するワーク69の昇降動作を行う場合について説明したが、これに限らず、第1のアーム12の回動に合わせてアームキャリア67を昇降させてワーク69がプレス加工領域内へ進入・退出する搬送ラインをさらに水平に近づけることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 プレス機械、3 コラム、5 スライド、6 上型、7 下型、8 ボルスタ、9 プレス加工領域、10 ワーク搬送装置、11 第1の回動軸、12 第1のアーム、17 回動駆動手段、19 回動駆動用サーボモータ、21 第2の回動軸、22 第2のアーム、24 第2の歯車、25 第2のプーリ、26 第1の遊星歯車、27 第1のタイミングベルト、31 第3の回動軸、32 第3のアーム、34 第3の歯車、35 第3のプーリ、36 第2の遊星歯車、37 第2のタイミングベルト、40 第4の回動軸、41 第5の回動軸、42 第4のアーム、44 リニアスライド、51 保持手段、52 保持部材、53 バキュームカップ、54 チルト軸、55 チルト軸駆動用サーボモータ、56 ひねり軸駆動用サーボモータ、57 吸着面、60 走行駆動用サーボモータ、61 設置梁、62 走行梁、63 走行キャリア、64 昇降フレーム、65 昇降駆動用サーボモータ、66 ボールねじ67 アームキャリア(基台)、68 第1の歯車、69 ワーク、70 第1のプーリ、71 バランサ、72 バランサ、80 駆動制御装置、82 設定・表示部、84 バキュームコントローラ、86 通信線
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機械で加工されるワークを搬送するワーク搬送装置及びプレスシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数のアームを用いて、加工後のワークをプレス機械に装着した金型から取り出し、加工のためのワークをプレス機械に装着した金型へ搬送するワーク搬送装置が知られている。このようなワーク搬送装置においては、ワーク搬送時間を短縮することによってさらにプレス機械の加工効率を向上することが求められている。具体的には、上流側プレス機械の加工後のワークを早く取り出すために、ワーク保持手段を備えた先端アームが上昇途中のスライドや上型との干渉を避けながら上流側プレス機械のプレス加工領域内に進入できること、及び先端アームが下流側プレス機械の金型にワークを置いた後に、下降途中のスライドや上型との干渉を避けながら下流側プレス機械から退出できることが求められている。
【0003】
アームと金型やスライドとの干渉を回避してワーク搬送速度の高速化を図るために、第1のアームの下端側を往復移動させつつ、第2、3のアームを第1のアームの下端側の移動位置に対応させて回動させつつ、ワークを吸着する吸着手段をプレス加工領域内にほぼ水平方向から移動させるワーク搬送装置が知られている(例えば、特許文献1)。しかしながら、このワーク搬送装置では、複数のアーム(第1〜3のアーム)を回動駆動する複数の駆動源(第1〜3の駆動源)を同時に制御する必要があり駆動制御が複雑になるといった問題点があった。
【0004】
また、基部アームのみを回転駆動源によって回転させ、第2アーム(先端アーム)の回転を基部アームの回転と連動せしめる移動装置が知られている(例えば、特許文献2)。しかしながら、この移動装置では、先端アームの水平からの傾きが大きいため、先端アームが上昇又は下降中のスライドや金型と干渉する領域が広くワーク搬送時間を短縮することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−114249号公報
【特許文献2】特開2002−224976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な制御で、先端アームと金型やスライドとの干渉を回避し易くすることが可能なワーク搬送装置及びプレスシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るワーク搬送装置は、プレス機械で加工されるワークを搬送するワーク搬送装置において、基台と、基端側が、前記基台に設けられた第1の回動軸を中心に回動可能に装着された第1のアームと、基端側が、前記第1のアームの先端側に設けられた第2の回動軸を中心に回動可能に装着された第2のアームと、基端側が、前記第2の回動軸と同一中心軸線の第3の回動軸を中心に回動可能に装着され、前記第2のアームと長さが異なる第3のアームと、基端側が、前記第2のアームの先端側に回動可能に装着され、且つ、先端側が、前記第3のアームの先端側に回動可能且つスライド可能に装着された第4のアームと、前記第4のアームの先端側に設けられ、ワークを保持可能に形成された保持手段と、前記第1のアームを前記第1の回動軸を中心に回動させる回動駆動手段と、前記第1のアームの回動に連動させて前記第2のアームを前記第2の回動軸を中心に回動させるとともに、前記第1のアームの回動に連動させて前記第3のアームを前記第3の回動軸を中心に回動させる回動伝達手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るワーク搬送装置によれば、簡単な制御で、先端アームと金型やスライドとの干渉を回避し易くすることができる。また、本発明に係るワーク搬送装置によれば、先端アームを略水平な姿勢でプレス機械に進入又はプレス機械から退出させることができる。
【0009】
本発明に係るワーク搬送装置では、前記第3のアームの前記第1のアームに対する回転速度よりも、前記第2のアームの前記第1のアームに対する回転速度が大きくなるようにしてもよい。
【0010】
本発明に係るワーク搬送装置では、前記基台を昇降させる昇降駆動手段を更に備えるようにしてもよい。
【0011】
本発明に係るプレスシステムは、ワークを搬送してプレス加工するプレスシステムにおいて、前記本発明に係るワーク搬送装置を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明に係るプレスシステムによれば、簡単な制御で、先端アームと金型やスライドとの干渉を回避し易くすることができる。また、本発明に係るプレスシステムによれば、先端アームを略水平な姿勢でプレス機械に進入又はプレス機械から退出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るワーク搬送装置を備えたプレスシステムの正面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るワーク搬送装置を備えたプレスシステムの側面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るワーク搬送装置の正面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係るワーク搬送装置の一部を断面で示した平面図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係るワーク搬送装置の一部を断面で示した側面図である。
【図6】回動伝達手段を説明するための模式図である。
【図7】駆動制御装置を説明するためのブロック図である。
【図8】取出し搬送を行うワーク搬送装置と、送り出し搬送を行うワーク搬送装置のそれぞれの動作を時系列順に示す図である。
【図9】取出し搬送を行うワーク搬送装置と、送り出し搬送を行うワーク搬送装置のそれぞれの動作を時系列順に示す図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係るワーク搬送装置を備えたプレスシステムの側面図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係る回転伝達手段を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係るワーク搬送装置を備えたプレスシステムの正面図であり、図2は、プレスシステムの側面図であり、図3(A)、図3(B)は、ワーク搬送装置の正面図であり、図4は、ワーク搬送装置の一部を断面で示した平面図であり、図5は、ワーク搬送装置の一部を断面で示した側面図である。
【0016】
図1、図2に示すように、本実施の形態のプレスシステムは、複数のプレス機械1(1A、1B)が矢印X方向(ワーク搬送方向)にタンデム配列され、且つワーク搬送装置10(10A、10B、10C)を用いて上流側プレスから下流側プレス(例えば、プレス機械1Aからプレス機械1B)へワーク69を搬送しつつ各プレス機械1においてプレス加工させるように形成されている。
【0017】
プレス機械1A,1Bは、金型5,6を除いて基本的に同じ構成である。プレス機械1A,1Bは、コラム3に沿って昇降可能なスライド5と、スライド5の下面に取り付けられた上型6と、上型6と組み合わされてプレス加工する下型7と、下型7を上面に載置固定したボルスタ8と、を含む。ここでは、プレス機械1A,1Bが2台と、ワーク搬送装置10A、10B、10Cが3台と、がワーク69の搬送方向である矢印X方向に並んで配置されている。ワーク搬送装置10A、10B、10Cもプレス機械に対する取り付け位置が異なるだけで基本的に同じ構成である。ワーク69は、図1における一番左端のワーク搬送装置10Aによってプレス機械1Aへ搬入されてプレス加工され、ワーク搬送装置10Bによってプレス機械1Aから搬出されて、さらにプレス機械1Bへ搬入されてプレス加工され、ワーク搬送装置10Cによってプレス機械1Bから搬出されて図1における一番右端に至る。
【0018】
図3(A)、図3(B)、図4、図5に示すように、ワーク搬送装置10は、第1の回動軸11を中心に回動可能に装着された第1のアーム12と、第2の回動軸21を中心に回動可能に装着された第2のアーム22と、第3の回動軸31を中心に回動可能に装着され第2のアームと長さが異なる第3のアーム32と、第4の回動軸40を中心に回動可能に装着され、且つ、第5の回動軸41を中心に回動可能且つスライド可能に装着された第4のアーム42と、第4のアーム42の先端側に設けられ、ワーク69を保持可能に形成された保持手段51とを備える。第1〜第5の回動軸11、21、31、40、41は、それぞれ図4,5に示す矢印Y方向(すなわちプレス機械の前後方向)に延びる。
【0019】
またワーク搬送装置10は、第1のアーム12を第1の回動軸11を中心に回動させ、第1のアーム12の回動に連動させて第2のアーム22を第2の回動軸21を中心に回動させるとともに、第1のアーム12の回動に連動させて第3のアーム32を第3の回動軸31を中心に回動させることで、先端アームとなる第4のアーム42を略水平な姿勢で、プレス機械1のプレス加工領域9内に進入又はプレス加工領域9内から退出させるように形成されている。すなわち、ワーク搬送装置10は、第4のアーム42を略水平な姿勢にしつつ、保持手段51をプレス加工領域9内に移動可能に形成されている。
【0020】
図1、図2、図5に示すように、プレス機械1Aのコラム3とプレス機械1Bのコラム3に横架された設置梁61には、走行梁62が取り付けられている。走行梁62には、走行キャリア63が図1における矢印X方向と平行な方向(左右方向)に往復移動可能に装着されている。走行キャリア63は、走行梁62上を、走行用サーボモータ等からなる走行駆動手段(図示省略)により矢印X方向に走行する。
【0021】
走行キャリア63には、昇降フレーム64が図1における矢印Z方向(すなわち上下方向)に移動可能に装着されている。昇降フレーム64は、昇降駆動用サーボモータ65とボールねじ66(図5参照)とからなる昇降駆動手段により矢印Z方向に昇降して往復移動する。また、図1〜図5に示すように、昇降フレーム64の下端には、第1の回動軸11を回動可能に支持する基台としてのアームキャリア67が固定されている。昇降フレーム64とアームキャリア67は、エアシリンダ装置で構成されるバランサ71によってバランスされている。
【0022】
図3(A)、図3(B)、図4、図5に示すように、第1の回動軸11は、アームキャリア67に回動可能に装着され、歯車18を介して連結された回動駆動手段17により正面から見て右回転及び左回転方向に回動される。この回動駆動手段17は、アームキャリア67に固定された2つの回動駆動用サーボモータ19を含む。
【0023】
第1のアーム12は、基端側が第1の回動軸11に固定され、第1の回動軸11の中心軸線を中心に回動可能に装着されている。すなわち、第1のアーム12は、回動駆動手段17により、第1の回動軸11と同期して右回転及び左回転方向に回動される。また、第1のアーム12は、エアシリンダ装置で構成されるバランサ72によってバランスされている。バランサ72は、一端側が昇降フレーム64に回動可能に装着され、他端側が第1のアーム12に回動可能に装着されている。なお、図4においてはバランサ72は省略した。
【0024】
第2の回動軸21は、第1のアーム12の先端側に回動可能に装着されている。第2のアーム22は、基端側が第2の回動軸21に固定され、第2の回動軸21の中心軸線を中心に回動可能に装着されている。すなわち、第2のアーム22は、第2の回動軸21と同期して右回転及び左回転方向に回動される。
【0025】
第3の回動軸31は、第1のアーム12の先端側に回動可能に装着されている。第3の回動軸31と第2の回動軸21とは、同一中心軸線上に設けられ、第2の回動軸21は、リング状に形成された第3の回動軸31の中心部を貫通して設けられている。
【0026】
第3のアーム32は、第2のアーム22より長いアームであり、基端側が第3の回動軸31に固定され、第3の回動軸31の中心軸線を中心に回動可能に装着されている。第2の回転軸21は、第3のアーム32及び第3の回転軸31を貫通して第2のアーム22に固定されている。すなわち、第3のアーム32は、第2の回転軸21の回動に影響されることなく第3の回動軸31と同期して右回転及び左回転方向に回動される。
【0027】
第1のアーム12の内部には、アームキャリア67に固定された第1の歯車68と、第1の歯車68と噛合う第1及び第2の遊星歯車26、36と、第2の回動軸21に固定され第1の遊星歯車26と噛合う第2の歯車24と、第3の回動軸31の端部周囲に形成され第2の遊星歯車36と噛合う第3の歯車34とが設けられている。これら第1〜第3の歯車68、24、34と、第1及び第2の遊星歯車26、36とは、第1のアーム12の回動に連動して第2のアーム22を第2の回動軸21を中心に回動するとともに、第1のアーム12の回動に連動させて第3のアーム32を第3の回動軸31を中心に回動させる回動伝達手段として機能する。
【0028】
すなわち、第1のアーム12が回動駆動手段17により回動すると、アームキャリア67に固定された第1の歯車68の外周上を第1の遊星歯車26が旋回して回転し、これにより、第2の回動軸21の一端側に固定されている第2の歯車24が回転するとともに、第2の回動軸21の他端側に固定されている第2のアーム22が回動する。また、第1のアーム12が回動駆動手段17により回動すると、第1の歯車68の外周上を第2の遊星歯車36が旋回して回転し、これにより、第3の回動軸31の一端側に形成されている第3の歯車34が回転するとともに、第3の回動軸31の他端側に固定されている第3のアーム32が回動する。
【0029】
例えば、模式図である図6に示すように、第1のアーム12が第1の回動軸11を中心に図中左回転方向(すなわち反時計回り)に回動されると、第1の遊星歯車26が左回転し、これにより、第2の歯車24及び第2の回動軸21が右回転(すなわち時計回り)に回転する。同様に、第1のアーム12が第1の回動軸11を中心に図中左回転すると、第2の遊星歯車36が左回転し、これにより、第3の歯車34及び第3の回動軸31が右回転する。したがって、第1のアーム12が左回転方向に回動すれば、第2、第3の回転軸21,31が右回転して第2、第3のアーム22,32を右回転方向に回動する。
【0030】
なお、第1の歯車68と第2の歯車24の歯車比は、第1の歯車68と第3の歯車34の歯車比と異なる値に設定されている。本実施の形態では、第1の歯車68と第2の歯車24の歯車比は4:1に設定され、第1の歯車68と第3の歯車34の歯車比は2:1に設定されている。従って、第2のアーム22は、第1のアームに対して4倍の回転速度で逆回転し、第3のアーム32は、第1のアームに対して2倍の回転速度で逆回転する。すなわち、第3のアーム32の第1のアーム12に対する回転速度よりも、第2のアーム22の第1のアーム12に対する回転速度が大きくなるように構成されている。
【0031】
第4のアーム42は、基端側が、第2のアーム21の先端側に設けられた第4の回動軸40の中心軸線を中心に回動可能に装着され、先端側が、第3のアーム31の先端側に設けられた第5の回動軸41の中心軸線を中心に回動可能に、且つ、第3のアーム31の先端側に第3のアーム31に沿って設けられたリニアスライド44によりアーム長手方向にスライド可能に装着されている。
【0032】
すなわち第4のアーム42は、互いに長さが異なる第2のアーム22及び第3のアーム32により二点支持され、第2のアーム22の第1のアーム12に対する回転角度と、第3のアーム32の第1のアームに対する回転角度により、その姿勢と位置が規定される。
【0033】
図3(B)に示すように、第1のアーム12が上向きに起立した状態(中立状態)においては、第2のアーム22は第2の回動軸21を支持点として上向きに起立した状態となり、第3のアーム32は第3の回動軸31を支持点として下向きに垂下した状態となり、第4のアーム42は第4及び第5の回動軸40、41を支持点として下向きに垂下した状態となる。
【0034】
図3(B)に示す中立状態を基準として、図1に示すワーク搬送装置10Bが上流側プレス機械1Aに半加工品であるワーク69を取出しに向かう取出し搬送を行う場合には、回動駆動用モータ19を制御して、図3(A)に示すように、第1のアーム12及び第1の回動軸11を図中左回転方向に角度θ(例えば略80°)だけ回動させる。このとき、第2のアーム22及び第2の回動軸21は、回動伝達手段により、第1のアーム12に対して右回転方向に角度4θ(例えば略320°)だけ回動され、第3のアーム32及び第3の回動軸31は、回動伝達手段により、第1のアーム12に対して右回転方向に角度2θ(例えば略160°)だけ回動される。このとき、第2のアーム22の先端側に設けられた第4の回動軸40と、第3のアーム32の先端側に設けられた第5の回動軸41が、略水平方向に離れて位置する状態となるため、第4及び第5の回動軸40、31を支持点とする第4のアーム42は、略水平状態となる。
【0035】
また、ワーク搬送装置10Bが下流側プレス機械1Bに半加工品であるワーク69を送り出す送り出し搬送を行う場合には、回動駆動用モータ19を制御して、第1のアーム12及び第1の回動軸11を図中右回転方向に角度θ(例えば略80°)だけ回動させる。このとき、第2のアーム22及び第2の回動軸21は、回動伝達手段により、第1のアーム12に対して左回転方向に角度4θ(例えば略320°)だけ回動され、第3のアーム32及び第3の回動軸31は、回動伝達手段により、第1のアームに対して左回転方向に角度2θ(例えば略160°)だけ回動される。そして、取出し搬送を行う場合と同様に、第4及び第5の回動軸40、31を支持点とする第4のアーム42は略水平状態となる。
【0036】
このように、本実施の形態によれば、1つの回動駆動用モータ19を制御して第1のアーム12及び第1の回動軸11のみを回動駆動させるという簡単な制御で、第4のアーム42を略水平な姿勢で、第4のアーム42の先端側にある保持手段51をプレス機械1に進入・退出させることができ、プレス機械1との干渉領域を小さくすることができ、プレス機械1との干渉を回避し易くすることができる。さらに、第4のアーム42を第2のアーム22と第3のアーム32とで2点支持することで、第4のアーム42を1点支持する場合と比べて、第4のアーム42の変形を少なくし剛性を向上することができる。
【0037】
なお、第1のアーム12を、図3(B)に示す中立状態から回動させると、第2のアーム22の回転速度と第3のアーム32の回転速度が異なるため、第4の回動軸40と第5の回動軸41間の距離が短くなり、第4のアーム42は、第5の回動軸41(すなわち第3のアーム32の先端部)に対してアーム先端側へスライドして第5の回動軸41とチルト軸54間の距離が長くなる。一方、第1のアーム12を、図3(A)に示す角度θだけ回動された状態から中立状態に向けて回動させると、第4の回動軸40と第5の回動軸41間の距離が長くなり、第4のアーム42は、第5の回動軸41に対してアーム基端側へスライドして第5の回動軸41とチルト軸54間の距離が短くなる。
【0038】
保持手段51は、ワーク69を吸着及び開放可能な手段であり、バキュームカップや電磁マグネット等から形成される。本実施の形態では、ワーク69が、図1〜図3に示す板形状材であるから、バキュームカップ53を採用している。保持手段31は、ワーク69を保持可能に構成されていればよく、例えば、ワーク69を把持及び開放可能に構成することもできる。
【0039】
図3〜図5に示すように、複数のバキュームカップ53は、矢印Y方向に延びるチルト軸54(第6の回動軸)に固定された複数の保持部材52に相対回転不能状態で取り付けられている。
【0040】
チルト軸54は、第4のアーム42の先端側に設けられ、第4のアーム42の基端側に固定されたチルト軸駆動用サーボモータ55により、第4のアーム42内に設けられたチルト軸伝達シャフト(図示省略)を介して回動される。チルト軸54は、第4のアーム42の傾斜角度に応じて、バキュームカップ53の吸着面の姿勢(搬送中のワーク姿勢)が水平状態を保つように回動制御される。
【0041】
また第4のアーム42の先端側には、チルト軸54に対して垂直な方向に延びるひねり軸(図示省略)が設けられている。ひねり軸(第7の回動軸)は、第4のアーム42の基端側に固定されたひねり軸駆動用サーボモータ56により、第4のアーム42内に設けられたひねり軸伝達シャフト(図示省略)を介して回動される。ひねり軸を回動させることで、ひねり軸に固定されたチルト軸54をひねり軸を中心に回動(ひねり動作)させて、搬送中のワーク姿勢を制御することができる。
【0042】
図7に示す駆動制御装置80は、CPU、ROM、RAMを含む制御部と、ハードディスク装置を含む記憶部と、設定・表示部82と、を含み、第1〜第5のモータドライバ60D、65D、19D、55D、56Dに制御信号を出力する。第1のモータドライバ60Dは、制御信号に基づき、走行駆動用サーボモータ60を回転制御して、走行キャリア63を走行駆動する。第2のモータドライバ65Dは、制御信号に基づき、昇降駆動用サーボモータ65を回転制御して、ボールねじ66を回転駆動することで、昇降フレーム64を昇降駆動する。第3のモータドライバ19Dは、制御信号に基づき、回動駆動用サーボモータ19を回転制御して、第1の回動軸11を回動駆動する。第4のモータドライバ55Dは、制御信号に基づき、チルト軸駆動用サーボモータ55を回転制御して、チルト軸54を回動駆動する。第5のモータドライバ56Dは、制御信号に基づき、ひねり軸駆動用サーボモータ56を回転制御して、ひねり軸を回動駆動する。また。駆動制御装置80は、バキュームコントローラ84に吸着・開放制御信号を出力して保持手段51(バキュームカップ53)の吸着・開放を制御する。
【0043】
ワーク搬送プログラムを構成する基本的な固定的情報(例えば、ワーク搬送情報、姿勢調整情報、吸着・開放情報等)は記憶部に格納されており、選択的情報(例えば、ワーク69の種類)は表示部82の表示を参照しつつ設定部82を用いて設定変更(例えば選択)でき、この情報も記憶部に記憶される。
【0044】
プレス運転に際しては、設定部82を用いて複数のワーク搬送プログラムの中からその1つを選択設定することができる。制御部は選択設定されたワーク搬送プログラムを実行する。なお、プレス機械1側の各種動作(例えば、スライド昇降動作)は、図示しないプレス運転制御盤からの信号により実行される。このプレス機械1側の動作は、プレス動作信号として通信線86を介して伝送され、駆動制御装置80はこのプレス動作信号を用いてタイミング同期させつつワーク搬送を行う。
【0045】
ワーク搬送運転に関しては、駆動制御装置80は、第1の回動軸11を中心として第1のアーム12を回動させつつ、走行キャリア63を走行させて保持手段51を移動する。これらと並行して、昇降フレーム64を昇降させることで、保持手段51が水平移動するように(第4のアーム42の先端部の高さが一定となるように)しつつ、チルト軸54を回動させることで、保持手段51の姿勢を制御する。また、保持手段51によりワーク69を吸着・開放する際には、昇降フレーム64を昇降させる。すなわち、駆動制御装置80は、第4のアーム42の先端部のチルト軸54を、図1に示す軌跡Rに沿って移動させる。
【0046】
図8(A)〜図8(E)、図9(A)〜図9(E)に、プレス機械1Aの上流側に配置されたワーク搬送装置10Aと、プレス機械1Aの下流側に配置されたワーク搬送装置10Bのそれぞれの動作を時系列順に示す。ワーク搬送装置10Aは、プレス機械1Aにワーク69Bを送り出す送り出し搬送を行い、ワーク搬送装置10Bは、プレス機械1Aからワーク69Aを取り出す取出し搬送を行う。なお、同図では第2及び第3のアーム22、32の図示を省略し、ワーク搬送装置10A,10Bの左右方向への走行は矢印で示している。
【0047】
図8(A)では、ワーク搬送装置10Bは、第1のアーム12Bが上向きに起立した中立状態となっており、ワーク搬送装置10Aは、上流側プレス機械からワーク69Bを取り出した状態となっている。また、プレス機械1Aは、ワーク69Aの加工を終えて、スライド5の上昇を開始している。
【0048】
図8(B)〜図8(D)に示すように、ワーク搬送装置10Aは、第1のアーム12Aが右回転方向に回動されつつ、プレス機械1A側(すなわち右方向)へ走行して、中立状態となる。
【0049】
一方、ワーク搬送装置10Bは、第1のアーム12が左回転方向に回動されつつ、プレス機械1側(すなわち左方向)へ走行して、プレス機械1Aにワーク69Aを取り出しに向かう。また、図8(D)に示すように、ワーク搬送装置10Bの第4のアーム42Bの先端部の保持手段51がプレス機械1A内に進入すると、ワーク搬送装置10Bは下降して保持手段51によりワーク69Aを吸着して保持する。
【0050】
ここで、図8(C)、図8(D)に示すように、ワーク搬送装置10Bの第4のアーム42Bは、プレス進入時に略水平な姿勢となっている。従って、保持手段51を備えた第4のアーム42Bを、上昇途中のスライド5や上型6との干渉を避けながら、型開き動作の開始から比較的早い段階でプレス機械1Aの加工領域内に進入させることができる。すなわち、スライド5が上昇し終わるのを待つことなく、第4のアーム42Bの先端部をプレス機械1A内に進入させることができる。
【0051】
ワーク搬送装置10Bは、ワーク69Aを保持すると上昇し(図8(E)参照)、第1のアーム12Bが右回転方向に回動されつつ、下流側プレスに向けて(すなわち右方向へ)走行し、プレス機械1Aから下流側プレスにワーク69Aを送り出し搬送する(図9(A)〜図9(E)参照)。ここで、図9(A)、図9(B)に示すように、プレス退出時には、ワーク搬送装置10Bの第4のアーム42Bは、第2のアーム22の回動によりアーム基端側にスライドするため、第4のアーム42Bの先端部を、送り出し搬送するワーク搬送装置10Aの第4のアーム42Aとの干渉を避けながらプレス機械1A内から早く退出させることができる。
【0052】
一方、図8(E)、図9(A)、図9(B)に示すように、ワーク搬送装置10Aは、第1のアーム12Aが右回転方向に回動されつつ、プレス機械1A側(すなわち右方向)へ走行して、プレス機械1Aにワーク69Bを送り出し搬送する。そして、ワーク搬送装置10Aの第4のアーム42Aの先端部(保持手段51)がプレス機械1A内に進入すると、ワーク搬送装置10Aは下降して保持手段51によりワーク69Aを下型7上に開放する。このときプレス機械1Aは、スライド5の下降を開始している。
【0053】
図9(C)〜図9(E)に示すように、ワーク搬送装置10Aは、ワーク69Aを開放後、第1のアーム12Aが左回転方向に回動されつつ、上流側プレスに向けて(すなわち左方向へ)走行し、上流側プレスにワークを取り出しに向かう。
【0054】
ここで、図9(C)、図9(D)に示すように、ワーク搬送装置10Aの第4のアーム42Aは、プレス退出時に略水平な姿勢となっている。従って、第4のアーム42Aを、下降途中のスライド5や上型6との干渉を避けながら、型閉じ動作開始から比較的遅い段階でプレス機械1Aの加工領域内から退出させることができる。すなわち、スライド5の下降を止めることなく、第4のアーム42Aの先端部をプレス機械1A内から退出させることができる。また、プレス退出時には、第4のアーム42Aは、第2のアーム22の回動によりアーム基端側にスライドするため、第4のアーム42Aの先端部をプレス機械1A内から早く退出させることができる。
【0055】
このように、本実施の形態によれば、簡単な制御で、先端アームである第4のアーム42を、スライド5や上型6との干渉を回避し易い略水平な姿勢でプレス機械1A内に進入・退出させることができる。すなわち、プレス機械1Aのスライド5の昇降速度を上げてもワークの搬送に要する時間を確保することになり、プレス加工のサイクルタイムを短くすることができる。
【0056】
(第2の実施の形態)
図10は、第2の実施の形態に係るワーク搬送装置を備えたプレスシステムの側面図である。この実施の形態は、基本的な構成・機能が第1の実施の形態の場合と同様とされているが、第1の実施の形態とは異なり、側面図である図10に示すように、アーム回動機構(すなわち第1〜第4のアーム12、22、32、42、第1〜第5の回動軸11、21、31、40、41、回動伝達手段等)、回動駆動用サーボモータ19、基台67、昇降フレーム64及び昇降駆動用サーボモータ65等が、矢印Y方向に離隔配設された1対からなる。また、チルト軸54が、プレス前側のチルト軸54Fとプレス後側のチルト軸54Rとを一体的に形成した共通軸(すなわちエコライザ軸)を形成する。1対の第1のアーム12及び第1の回動軸11は同期して回動運動し、1対の昇降フレーム64も同期して昇降運動し、1対の走行キャリア62も同期して走行するように駆動制御される。この第2の実施の形態によれば、ワーク69の重量が大きい場合に有効である。
【0057】
(第3の実施の形態)
図11は、第3の実施の形態に係る回転伝達手段を説明するための模式図である。この実施の形態は、基本的な構成・機能が第1の実施の形態の場合と同様とされているが、第1の実施の形態とは異なり、第1のアーム12の内部に設けられた複数のプーリと複数のタイミングベルトにより回動伝達手段を構成している。
【0058】
図11において、第1のアーム12の内部には、アームキャリア67に固定された第1のプーリ70と、第2の回動軸21に固定され第1のタイミングベルト27により第1のプーリ70と連結された第2のプーリ25と、第3の回動軸31に固定され第2のタイミングベルト37により第1のプーリ70と連結された第3のプーリ35とが設けられている。そして、第1の実施の形態と同様に、例えば、第1のアーム12が第1の回動軸11を中心に図中左回転方向(すなわち反時計回り)に回動されると、第1のタイミングベルト27を介して第2のプーリ25及び第2の回動軸21が右回転方向(すなわち時計回り)に回動するとともに、第2のタイミングベルト37を介して第3のプーリ35及び第3の回動軸31が右回転方向に回動する。この第2の実施の形態によれば、ワーク69の重量が小さい場合に有効である。
【0059】
なお、上記のように本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。本発明の実施の形態では、走行駆動手段を用いてワーク搬送装置10を矢印X方向(ワーク搬送方向)に走行させる例について説明したが、プレス機械1A、1B間の距離が短く、走行駆動手段を用いなくても、第4のアーム42の先端部の保持手段51をプレス機械1A、1B内に進入させることが可能な場合には、走行駆動手段を省略することができる。また、本発明の実施の形態では、第4のアーム42が、第2のアーム22の先端側に回動可能に装着され、第3アーム32の先端側に回動可能且つスライド可能に装着される例について説明したが、第4のアーム42が、第2のアーム22の先端側に回動可能且つスライド可能に装着され、第3アーム32の先端側に回動可能に装着されるように構成することもできる。また、本発明の実施の形態では、保持手段51は、ワーク69を吸着して保持したが、ワーク形状に合わせてチャックなどの公知の保持機構を採用することができる。また、本発明の実施の形態では、昇降駆動用サーボモータ65は、下型7に対するワーク69の昇降動作を行う場合について説明したが、これに限らず、第1のアーム12の回動に合わせてアームキャリア67を昇降させてワーク69がプレス加工領域内へ進入・退出する搬送ラインをさらに水平に近づけることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 プレス機械、3 コラム、5 スライド、6 上型、7 下型、8 ボルスタ、9 プレス加工領域、10 ワーク搬送装置、11 第1の回動軸、12 第1のアーム、17 回動駆動手段、19 回動駆動用サーボモータ、21 第2の回動軸、22 第2のアーム、24 第2の歯車、25 第2のプーリ、26 第1の遊星歯車、27 第1のタイミングベルト、31 第3の回動軸、32 第3のアーム、34 第3の歯車、35 第3のプーリ、36 第2の遊星歯車、37 第2のタイミングベルト、40 第4の回動軸、41 第5の回動軸、42 第4のアーム、44 リニアスライド、51 保持手段、52 保持部材、53 バキュームカップ、54 チルト軸、55 チルト軸駆動用サーボモータ、56 ひねり軸駆動用サーボモータ、57 吸着面、60 走行駆動用サーボモータ、61 設置梁、62 走行梁、63 走行キャリア、64 昇降フレーム、65 昇降駆動用サーボモータ、66 ボールねじ67 アームキャリア(基台)、68 第1の歯車、69 ワーク、70 第1のプーリ、71 バランサ、72 バランサ、80 駆動制御装置、82 設定・表示部、84 バキュームコントローラ、86 通信線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス機械で加工されるワークを搬送するワーク搬送装置において、
基台と、
基端側が、前記基台に設けられた第1の回動軸を中心に回動可能に装着された第1のアームと、
基端側が、前記第1のアームの先端側に設けられた第2の回動軸を中心に回動可能に装着された第2のアームと、
基端側が、前記第2の回動軸と同一中心軸線の第3の回動軸を中心に回動可能に装着され、前記第2のアームと長さが異なる第3のアームと、
基端側が、前記第2のアームの先端側に回動可能に装着され、且つ、先端側が、前記第3のアームの先端側に回動可能且つスライド可能に装着された第4のアームと、
前記第4のアームの先端側に設けられ、ワークを保持可能に形成された保持手段と、
前記第1のアームを前記第1の回動軸を中心に回動させる回動駆動手段と、
前記第1のアームの回動に連動させて前記第2のアームを前記第2の回動軸を中心に回動させるとともに、前記第1のアームの回動に連動させて前記第3のアームを前記第3の回動軸を中心に回動させる回動伝達手段とを備える、ワーク搬送装置。
【請求項2】
前記第3のアームの前記第1のアームに対する回転速度よりも、前記第2のアームの前記第1のアームに対する回転速度が大きい、請求項1記載のワーク搬送装置。
【請求項3】
前記基台を昇降させる昇降駆動手段を更に備える、請求項1又は2記載のワーク搬送装置。
【請求項4】
ワークを搬送してプレス加工するプレスシステムにおいて、
請求項1乃至3のいずれかに記載のワーク搬送装置を備えるプレスシステム。
【請求項1】
プレス機械で加工されるワークを搬送するワーク搬送装置において、
基台と、
基端側が、前記基台に設けられた第1の回動軸を中心に回動可能に装着された第1のアームと、
基端側が、前記第1のアームの先端側に設けられた第2の回動軸を中心に回動可能に装着された第2のアームと、
基端側が、前記第2の回動軸と同一中心軸線の第3の回動軸を中心に回動可能に装着され、前記第2のアームと長さが異なる第3のアームと、
基端側が、前記第2のアームの先端側に回動可能に装着され、且つ、先端側が、前記第3のアームの先端側に回動可能且つスライド可能に装着された第4のアームと、
前記第4のアームの先端側に設けられ、ワークを保持可能に形成された保持手段と、
前記第1のアームを前記第1の回動軸を中心に回動させる回動駆動手段と、
前記第1のアームの回動に連動させて前記第2のアームを前記第2の回動軸を中心に回動させるとともに、前記第1のアームの回動に連動させて前記第3のアームを前記第3の回動軸を中心に回動させる回動伝達手段とを備える、ワーク搬送装置。
【請求項2】
前記第3のアームの前記第1のアームに対する回転速度よりも、前記第2のアームの前記第1のアームに対する回転速度が大きい、請求項1記載のワーク搬送装置。
【請求項3】
前記基台を昇降させる昇降駆動手段を更に備える、請求項1又は2記載のワーク搬送装置。
【請求項4】
ワークを搬送してプレス加工するプレスシステムにおいて、
請求項1乃至3のいずれかに記載のワーク搬送装置を備えるプレスシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−11418(P2012−11418A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149759(P2010−149759)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000100861)アイダエンジニアリング株式会社 (153)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000100861)アイダエンジニアリング株式会社 (153)
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