説明

ワーク搬送装置

【課題】 簡単かつ安価な構成で、かつ省スペースを実現しながら、少ない駆動源で効率良くワークを搬送することができるワーク搬送装置を提供する。
【解決手段】 本発明は、対面するフィンガ20A〜25A(20B〜5B)を接近させてワークを支持するクランプ動作と、ワークを持ち上げるリフト動作と、ワークを搬送方向へ移動させるアドバンス動作と、ワークを持ち下げるダウン動作と、ワークを解放するアンクランプ動作と、原位置へ戻すリターン動作と、を介して、ワークを上流工程から下流工程へ順次搬送するワーク搬送装置であって、それぞれの先端側が支持部材11A(11B)に連結される2つのリンクアーム101A(101B)が備えられ、該リンクアームの少なくとも一方の基端側が直動アクチュエータ110A(110B)の可動要素111A(111B)に連結され、該可動要素はクランプ動作方向と略平行な方向に往復直線移動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機体内或いはプレス機体間におけるワークの搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プレス機体内或いはプレス機体間におけるワークの搬送装置には、生産性の向上を図るために、ワークの姿勢を正しく維持しつつ高速でワークを上流工程所定位置から下流工程所定位置へ搬送することができることが求められている。
【0003】
このため、従来においては、この種の搬送装置として種々のものが提案されており、例えば、図2に示すように、ワーク搬送方向(ワーク進行方向)に対面して延在される一対のフィードバー10A、10Bを利用したものがある。
このものは、一対のフィードバー10A、10Bの長手方向に所定間隔で対面配置されるフィンガ20A〜25A、20B〜25B等を取り付け、対面するフィードバー10A、10B延いてはフィンガ20A〜25A、20B〜25B同士を接近させて上流工程所定位置にあるワークを挟持(或いはフィンガ上に載置)する(クランプ動作)。
【0004】
次に、挟持(或いはフィンガ上に載置)したワークを金型(下型)から抜くために上方に持ち上げ(リフトし)、この状態で対面するフィードバー10A、10B延いてはフィンガ20A〜25A、20B〜25Bをワーク搬送方向に移動(アドバンス)させて、ワークを下流工程所定位置(例えば、1st.stgから2nd.stg、或いは2nd.stgから3rd.stgなど)へ搬送する。
【0005】
そして、当該下流工程所定位置において、対面するフィードバー10A、10B延いてはフィンガ20A〜25A、20B〜25Bを下降(ダウン)して、例えば金型(下型)上の所定位置にワークを降ろす。
【0006】
その後、対面するフィードバー10A、10B延いてはフィンガ20A〜25A、20B〜25B同士を所定に離間させてワークを解放(アンクランプ)し、プレス動作により下降してくる金型(上型)との干渉等を避けつつ、各フィンガ20A〜25A、20B〜25Bがそれぞれ上流側のワーク(次のワーク)を挟持(或いはフィンガ上に載置)などするために、元の位置(原位置:上流工程所定位置)へフィードバー10A、10B延いてはフィンガ20A〜25A、20B〜25Bを復帰(リターン)させる。
【0007】
このような従来の搬送装置では、フィードバーのリフト・ダウン動作、クランプ・アンクランプ動作、アドバンス・リターン動作などの各動作の実現には、例えば、ボールスクリュー(ボールねじ)やラック&ピニオンなどの直動機構を利用するものが多い。
【0008】
また、リニアモータ等を利用したものもあり、例えば、特許文献1には、装置全体の構造の簡略化を図り、可動部分の慣性重量を小さくするために、フィードバーに対して直接リニアモータを連結することによって、クランプ・アンクランプ動作やリフト・ダウン動作などを行わせるようにしたものが記載されている。
【0009】
更に、例えば、特許文献2や特許文献3では、フィードバーに、例えば3節リンク機構の頂を連結すると共に、各節の端部にボールねじ機構を連結し、当該ボールねじ機構はサーボモータにより駆動されフィードバーの長尺方向に沿って移動可能に対向配置されていて、これら対向配置されたボールねじ機構を駆動して、各節の端部をフィードバーの長尺方向に沿って接近或いは離間させることにより、クランプ・アンクランプ動作を行わせるようにしたものなどが提案されている。
【特許文献1】特開2002−102964号公報
【特許文献2】特開平06−63666号公報
【特許文献3】特開平06−63667号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述したような従来の搬送装置は、クランプ・アンクランプ動作及びリフト・ダウン動作の両動作のための駆動源(アクチュエータ)をそれぞれ備える必要があり、部品点数が多く構成が複雑化すると共に、製品コストも高く、かつ広い設置スペースも必要になるといった惧れがある。
【0011】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、簡単かつ安価な構成で、かつ省スペースを実現しながら、少ない駆動源で効率良くワークを搬送することができるワーク搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このため、本発明に係るワーク搬送装置は、
対面するフィンガを接近させてワークを支持するクランプ動作と、支持したワークを持ち上げるリフト動作と、支持したワークを搬送方向へ移動させるアドバンス動作と、支持したワークを持ち下げるダウン動作と、対面するフィンガを離間させてワークを解放するアンクランプ動作と、フィンガを原位置へ戻すリターン動作と、を介して、ワークを上流工程所定位置から下流工程所定位置へ順次搬送するワーク搬送装置であって、
それぞれの先端側が、フィンガを支持する支持部材にクランプ動作方向において位置の異なる回動支点を介して連結され、ワーク搬送方向に略直交する面内において回動可能な2つのリンクアームが備えられ、
当該2つのリンクアームの少なくとも一方の基端側が直動アクチュエータの可動要素に回動可能に連結され、該可動要素はクランプ動作方向と略平行な方向において往復直線移動可能であることを特徴とする。
【0013】
本発明において、前記2つのリンクアームは、ワーク搬送方向から見たときに交差されていることを特徴とすることができる。
【0014】
本発明において、前記2つのリンクアームの基端側の相対距離が変更されることに基づいて、リフト動作或いはダウン動作がなされることを特徴とすることができる。
【0015】
本発明において、前記2つのリンクアームの基端側が同一方向に移動されることに基づいて、クランプ動作或いはアンクランプ動作がなされることを特徴とすることができる。
【0016】
本発明において、前記2つのリンクアームの回動支点の少なくとも1つに作用してリンクアームを回転駆動可能なアクチュエータが配設されることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡単かつ安価な構成で、かつ省スペースを実現しながら、少ない駆動源で効率良くワークを搬送することができるワーク搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態に係るワーク搬送装置の全体構成を概略的に示す斜視図(ワーク搬送方向の斜め前方から見た図)である。
【図2】同上実施の形態に係るワーク搬送装置のフィンガ、フィードバー等の構成例と動作の様子を説明する斜視図(ワーク搬送方向の斜め前方から見た図)である。
【図3】同上実施の形態に係るワーク搬送装置の初期状態(アンクランプかつダウン状態)を示す図であり、(A)はワーク搬送方向上流側から見た図で、(B)は(A)の下面図であり、(C)は(A)の側面図である。
【図4】同上実施の形態に係るワーク搬送装置の「クランプかつダウン状態」を示す図であり、(A)はワーク搬送方向上流側から見た図で、(B)は(A)の下面図である。
【図5】同上実施の形態に係るワーク搬送装置の「クランプかつリフト状態」を示す図であり、(A)はワーク搬送方向上流側から見た図で、(B)は(A)の下面図である。
【図6】同上実施の形態に係るワーク搬送装置の傾斜状態(クランプかつダウン状態)を示す図であり、(A)はワーク搬送方向上流側から見た図で、(B)は(A)の下面図である。
【図7】同上実施の形態に係るワーク搬送装置の通常状態と傾斜状態の動作の様子を比較して示した図である。
【図8】同上実施の形態に係るワーク搬送装置のリンク機構の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明に係るプレス機体内におけるワーク搬送装置の一実施の形態を、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
【0020】
本発明の一実施の形態に係るワーク搬送装置10は、図1に示すように、プレス1の機体内に配設される。但し、複数のプレスの機体間においてワークを搬送するのに利用することもできる。
【0021】
図1において、プレス1の機体内の左側からワーク(先頭ワークのみ図示)はワーク搬送方向(ワーク進行方向)下流側に向けて搬送されるが、当該搬送は、図2を参照しつつ説明すると、対向配置される一対のフィードバー10A、10B延いてはこれらに取り付けられたフィンガ20A〜25A、20B〜25Bのクランプ動作・リフト動作・アドバンス動作・ダウン動作・アンクランプ動作・リターン動作が繰り返されることによりなされる。
【0022】
ワークが各工程の所定位置(例えば、第1工程では、図2のワークが図示されている位置)にセットされ、フィードバー10A、10B延いてはフィンガ20A〜25A(20B〜25B)がアンクランプされると、プレス1ではスライド2を上下動させて、所定のプレス処理をワークWに施すようになっている。
【0023】
このように所定のプレス処理を施され所定に成形されたワーク(完成品或いは半加工品)は、前記一対のフィードバー10A、10Bに取り付けられたフィンガ20A〜25A、20B〜25Bのクランプ動作・リフト動作・アドバンス動作・ダウン動作・アンクランプ動作・リターン動作を介して、プレス1の加工工程上流側(例えば1st.stage)の所定位置から下降工程下流側(例えば2nd.stage)の所定位置へ順次搬送され、各ワークは次工程におけるプレス処理を順次受けることになる。
【0024】
ここで、本実施の形態に係るワーク搬送装置10においては、図1に示したように、フィードバー10A(或いは10B)は、それぞれパンタグラフ式のリンク機構100を介して支持されている。
【0025】
本実施の形態に係るリンク機構100は、図3に示すように、リンクアーム101A、101Bを交差させてX字状に配設したパンタグラフ式のリンク機構が採用されている。なお、リンク機構100は、図1に示したように、各フィードバー10A(或いは10B)のワーク搬送方向の両端付近に配設されているが、これに限定されるものではない。
【0026】
リンクアーム101A、101Bの先端側は、図3(A)に示したように、フィードバー10A、10Bをアドバンス(或いはリターン)方向に摺動自在に案内しつつ支持するフィードバー摺動ガイド11A、11Bの連結部11Aa、11Ab、11Ba、11Bbに回転可能に連結されている。
【0027】
リンクアーム101A、101Bは、フィードバー10A、10Bの長軸方向(アドバンス・リターン方向)から見たときに交差されており、リンクアーム101Aの基端側はリニアアクチュエータ110Aの可動要素111Aと略一体の連結部111aに取り付けられ例えばサーボモータ等のアクチュエータ120により回転駆動可能に構成される一方で、リンクアーム101Bの基端側はリニアアクチュエータ110Bの可動要素111Bと略一体の連結部111bに回転自在に連結されている。
【0028】
なお、アクチュエータ120は、連結部111a廻りにリンクアーム101Aを回転駆動可能(例えば、反力に対して、リンクアーム101Aを所定回転角度位置に維持可能にリンクアーム101Aに対して駆動力を付与するような駆動を含む)なものであれば、サーボモータに限定されるものではなく、他のエア圧や油圧などを利用した流体アクチュエータなどを用いることもできる。また、例えば、回転方向への所定の付勢力(弾性力)をリンクアーム101Aに対して直接的に或いは間接的に作用(供給)可能な機械要素(例えばコイルスプリング、板バネ、ゴム等の弾性部材)などをアクチュエータとして用いることも可能である。
【0029】
ところで、本実施の形態では、図3(A)に示したように、アクチュエータ120を連結部111a近傍に取り付け、ここに連結されるリンクアーム101Aに回転力を付与する構成として例示したが、これに限らず、他の連結部111bや、更には11Aa、11Ab(或いは11Ba、11Bb)廻りのリンクアームに対して作用する構成とすることができる。
【0030】
なお、フィードバー10A、10Bが対面配置される中心面Xに関して、図3(A)に示すように、フィードバー摺動ガイド11A、11Bは面対称に配置されており、これに連結されているリンクアーム101A、101B延いてはリニアアクチュエータ110A、110Bも面対称に配設されている。
【0031】
図3(A)に示したように、フィードバー10A、10Bが対面配置される中心面Xに関して面対称に配設されるリニアアクチュエータ110Aの可動要素111Aのそれぞれは、フィードバー10A、10Bのクランプ動作・アンクランプ動作の方向と略平行に延在される共通のリニアガイド112Aに案内されつつ移動可能に構成され、可動要素111Aのそれぞれには、リンクアーム101Aの基端側が連結されている。
【0032】
また、中心面Xに関して面対称に配設されるリニアアクチュエータ110Bの可動要素111Bのそれぞれは、フィードバー10A、10Bのクランプ動作・アンクランプ動作の方向と略平行に延在される共通のリニアガイド112Bに案内されつつ移動可能に構成され、可動要素111Bのそれぞれには、リンクアーム101Bの基端側が連結されている。
【0033】
従って、本実施の形態に係るリンク機構100においては、一つのリンク機構100内において、リンクアーム101Aに連結されている連結部111aと、アクチュエータ110Bを介してリンクアーム101Bに連結されている連結部111bと、を相対的に接近させることで、フィードバー10A(10B)をリフトさせることができる一方で、連結部111aと、連結部111bと、を相対的に離間させることでフィードバー10A(10B)をダウンさせることができるようになっている。
【0034】
このようなリフト動作やダウン動作の際には、これら動作に対応してリンクアーム101Aを円滑に動かすように、アクチュエータ120(サーボモータ等の電動アクチュエータの場合)が駆動制御されるようになっている。なお、アクチュエータ120が弾性体の付勢力を利用するものである場合には、当該付勢力に抗してリフト動作やダウン動作が行われることになる。
【0035】
また、中心面Xに関して面対称に配置される一対のリンク機構100において、中心面Xに関して面対称な一対の連結部111a間の距離と、中心面Xに関して面対称な一対の連結部111b間の距離と、を共に長くすることで、フィードバー10A(10B)を離間させてワークをアンクランプさせることができる一方で、面対称な一対の連結部111a間の距離と、面対称な一対の連結部111b間の距離と、を共に短くすることで、フィードバー10A(10B)を接近させてワークをクランプすることができるようになって いる。
【0036】
ところで、本実施の形態では、共通のリニアガイド112A(或いは112B)に2つの可動要素111A(或いは111B)を対面配置した構成として説明しているが、これに限定されるものではなく、各可動要素111A(或いは111B)毎にリニアガイド112A(或いは112B)を配設することもできる。
【0037】
また、図3で例示する直動アクチュエータとしてのリニアアクチュエータ110A、110Bは、リニアモータを例として説明しているが、これに限定されるものではなく、例えば、ボールねじ機構やラック&ピニオン機構と、電動モータと、を組み合わせたような直動アクチュエータとすることができる。
【0038】
ここで、フィードバー10A、10Bのアドバンス動作とリターン動作は、図示しない従来同様のアクチュエータ等を介して、フィードバー10A、10Bをフィードバー摺動ガイド11A、11B上をスライドさせることにより達成される。
従って、アドバンス動作とリターン動作についての詳細な説明は省略する。
【0039】
ここで、本実施の形態に係るフィードバー摺動ガイド11A、11Bが、本発明に係るフィンガを支持する支持部材に相当するが、例えば、アドバンス動作やリターン動作が、フィンガやフィードバー10A、10Bをフィードバー摺動ガイド11A、11B上をスライドさせることでなされる構成で無い場合(例えば、フィンガやフィードバー10A、10B等を支える全体がアドバンス動作方向・リターン動作方向に移動されるような構成の場合)には、フィードバーを、本発明に係るフィンガを支持する支持部材とすることもできる。
【0040】
これに対し、フィードバー10A、10Bのクランプ動作、アンクランプ動作、リフト動作、及びダウン動作は、上述したように、本実施の形態に係るパンタグラフ式のリンク機構100など(リンクアーム101A、101Bやリニアアクチュエータ110A、110Bなど)を利用して達成される。
【0041】
以下、本実施の形態に係るワーク搬送装置10におけるワーク搬送動作(クランプ動作、アンクランプ動作、リフト動作、ダウン動作、アドバンス動作、リターン動作)について、図面を用いて、より詳細に説明する。
【0042】
(I)図3は、アンクランプ状態かつダウン状態の初期状態を示している。
【0043】
(II)図3の初期状態(アンクランプ状態かつダウン状態)から、図4に示すように、対面配置されているリニアアクチュエータ110A(110B)の対面する可動要素111A間の距離と、対面する可動要素111B間の距離と、を共に短くするように(可動要素111A或いは111Bを相互に接近させるように)リニアアクチュエータ110A(110B)を駆動し、可動要素111A(111B)間の対面距離を減少させ(図3(B)に示される距離A1を、図4(B)に示される距離A2へ減少させ)ることで、ワークをクランプする。
なお、この際、各リニアアクチュエータ110A(110B)内の可動要素111Aと可動要素111Bとは略平行に移動させることができるが、これに限定されるものではなく、種々の要求に応じて移動量に変化を持たせることもできる(図3(B)中の距離X1、図4(B)中の距離X2など参照)。
【0044】
(III)ワークをクランプした後は、ワークを金型(下型)から引き抜いて他との干渉等を避けつつ下流工程側へ搬送するために、ワークをリフトする(図5を参照)。
ワークのリフトは、(II)(図4)のワークをクランプした状態を維持しながら、フィードバー10A(10B)を支持するリンク機構100A(100B)のそれぞれにおいて、可動要素111Aと可動要素111Bとの相対位置を変化させ、連結部111aと連結部111bとの相対距離が短くなるように(つまり、図4(B)中の距離X2を、図5(B)中の距離X3のように短くするように)、各リニアアクチュエータ110A(110B)及びアクチュエータ120を駆動し、これにより、図5(A)に示すように、フィードバー10A、10B、フィンガ20A〜25A(20B〜25B)延いてはワークを、所定のリフトストローク分だけリフトさせる。
【0045】
(IV)そして、かかるワークをクランプし所定にリフトした状態において、従来同様のアクチュエータ(図示せず)を介して、フィードバー10A、10Bをアドバンスさせてワークを下流工程に搬送する。
【0046】
(V)ワークが下流工程所定位置まで搬送されたら、金型(下型)などの所定位置にワークを載置するために、各リニアアクチュエータ110A(110B)及びアクチュエータ120を駆動して、ワークをダウンさせる。
すなわち、例えば、図5の状態から図4の状態へ戻すように、各リニアアクチュエータ110A(110B)及びアクチュエータ120を駆動する。
【0047】
なお、図6に示すように、フィードバー摺動ガイド11A、11B延いてはフィードバー10A、10Bの中心面X側を下に傾斜させた傾斜状態としながらダウン動作やクランプ動作をさせることもできる。
【0048】
すなわち、ダウン動作において、例えば、生産スピードの向上などの要求に応じてスライド(金型:上型)をプレス動作のために早めに上方より下降させたい場合などが想定されるが、かかる場合には、図7の左側の図に示すように、下降してくるスライド(金型:上型)と、フィンガ20A〜25A(20B〜25B)やフィードバー10A(10B)の上面などと、が干渉し易くなるが、図6や図7の右側の図に示したように、中心面X側を下に傾斜させた傾斜状態としながらダウン動作させた後、左右方向にフィンガ20A〜25A(20B〜25B)やフィードバー10A(10B)を退避させてアンクランプ状態とするような動作とすることで、当該干渉を避けることができ、以って生産スピードの向上などの要求に応えることができることになると共に、金型設計の自由度などを向上させることができる。
【0049】
なお、ワークをクランプする際にも、同様に、生産スピードの向上などの要求に応じてスライド(金型:上型)が十分に上方に移動される前にワークを拾いに行かせる場合などが想定されるが、かかる場合には、図7の左側の図に示すように、十分に上昇していないスライド(金型:上型)と、フィンガ20A〜25A(20B〜25B)やフィードバー10A(10B)の上面などと、が干渉し易くなるが、図6や図7の右側の図に示したように、中心面X側を下に傾斜させた傾斜状態としながらクランプ動作させることで、当該干渉を避けることができ、以って生産スピードの向上などの要求に応えることができることになると共に、金型設計の自由度などを向上させることができる。
【0050】
ところで、クランプ動作には、フィンガ20A〜25A(20B〜25B)により両側からワークを挟持(把持)する場合に限らず、フィンガ20A〜25A(20B〜25B)を所定に接近させて対向するフィンガ20A〜25A(20B〜25B)の上にワークを載置するような場合も含まれる。すなわち、クランプ動作は、対向するフィンガA〜25A(20B〜25B)或いはフィードバー10A(10B)を、ワークを支持することができる距離だけ相対的に接近させる動作とすることができる。
【0051】
また、本実施の形態では、リンク機構100を、リンクアーム101A、101Bを交差させてX字状に配設したパンタグラフ式のリンク機構として説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、図8に示すように、リンクアーム101A、101Bを交差させずに、略台形状に配設したリンク機構などとすることも可能である。
【0052】
なお、フィードバー10A(10B)の一方はX字状のリンク機構とし、他方を略台形状のリンク機構としたり、一つのフィードバー10A(或いは10B)の一端側をX字状のリンク機構とし、他端側を略台形状のリンク機構とするなど、X字状のリンク機構と略台形状のリンク機構とを組み合わせて使用することもできる。
【0053】
以上で説明したように、本実施の形態によれば、略同一の方向に直線運動する直動アクチュエータによりリンク機構のリンクアームを駆動することにより、フィードバー10A、10Bをクランプ動作、アンクランプ動作、リフト動作、ダウン動作、更には傾斜動作させる構成としたので、従来のように異なる方向への動作のために必要とされるアクチュエータを省略等することができるため、部品点数の削減と設置スペースの省スペース化を図ることができる。
【0054】
また、本実施の形態のようなリンク機構を用いた場合、フィードバー10A、10Bをクランプ(アンクランプ)動作及びリフト(ダウン)動作させる際に、クランプ(アンクランプ)方向及びリフト(ダウン)方向に沿ってフィードバー10A、10Bをガイドするスライドガイドを不要とすることができ、かかる点においても構成の簡略化、小型化、省スペース化、低コスト化などを促進することができる。
【0055】
更に、本実施の形態のようなリンク機構を用いた場合、容易にフィードバー10A、10Bを自由に傾斜させることができるので、フィードバー10A、10Bに取り付けられるフィンガ20A〜25A(20B〜25B)などと、金型等と、の干渉などを回避することができるため、生産スピードの向上や金型設計自由度を拡大することなどに貢献することができる。
【0056】
なお、傾斜の方向は、図6や図7に示したように中心面X側が下になるように傾斜させる場合に限らず、図6や図7に示したものとは逆に中心面X側が上になるように傾斜させることも可能である。更には、フィードバー10A(10B)の長手方向における一端を他端に対して持ち上げたり、或いは下方に下げるなど、フィードバー10A(10B)の長手方向に対して傾斜させることも可能である。
【0057】
また、本実施の形態では、既述したように、直動機構(直動アクチュエータ)の構成はリニアモータに限定されるものではないが、直動機構としてリニアモータを採用した場合には、以下のような利点がある。
すなわち、ボールねじ機構などのねじ機構を利用した直動機構による搬送装置の場合、クランプ・アンクランプ動作及びリフト・ダウン動作の両動作方向における直動を案内するスライドガイド等と組み合わせて使用する必要もあり、構成が複雑化すると共に、ねじ機構は機械効率による損失が比較的大きくなる。
これに対し、本実施の形態のように直動機構としてリニアモータを採用した場合には、従来の搬送装置に比べて、構成の簡略化を図りつつ、機械損失の少ない効率の良い搬送装置を提供することが可能となる。
【0058】
なお、本実施の形態では、2つのフィードバー10A、10Bにそれぞれリンク機構100及びリニアアクチュエータ110A(110B)を配設した場合について説明したが、本発明は当該構成に限定されるものではなく、例えば少なくとも一方のフィードバーにのみリンク機構及び直動アクチュエータを備えた構成とすることもできる。
【0059】
また、リンクアーム101A、101Bの基端側の両方に可動要素111A、111Bを連結したが、本発明は当該構成に限定されるものではなく、何れか一方にのみ可動要素延いては直動アクチュエータを連結し、他方は位置としては固定的な回動軸に連結し、リフト・ダウン動作を一方の直動アクチュエータを駆動して達成すると共に、クランプ・アンクランプ動作についてはリンクアーム101A、101B、前記固定的な回動軸、及び可動要素等の直動アクチュエータなどを全体的に移動させることにより達成させるなど種々の変更が可能である。
【0060】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 プレス
10 ワーク搬送装置
10A、10B フィードバー
11A、11B フィードバー摺動ガイド(支持部材)
11Aa、11Ab、11Ba、11Bb 連結部(先端側の回動支点)
20A〜25A フィンガ
20B〜25B フィンガ
100 リンク機構
101A、101B リンクアーム
110A、110B リニアアクチュエータ
111A、111B 可動要素
111a、111b 連結部(基端側の回動支点)
120 アクチュエータ(サーボモータなど)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対面するフィンガを接近させてワークを支持するクランプ動作と、支持したワークを持ち上げるリフト動作と、支持したワークを搬送方向へ移動させるアドバンス動作と、支持したワークを持ち下げるダウン動作と、対面するフィンガを離間させてワークを解放するアンクランプ動作と、フィンガを原位置へ戻すリターン動作と、を介して、ワークを上流工程所定位置から下流工程所定位置へ順次搬送するワーク搬送装置であって、
それぞれの先端側が、フィンガを支持する支持部材にクランプ動作方向において位置の異なる回動支点を介して連結され、ワーク搬送方向に略直交する面内において回動可能な2つのリンクアームが備えられ、
当該2つのリンクアームの少なくとも一方の基端側が直動アクチュエータの可動要素に回動可能に連結され、該可動要素はクランプ動作方向と略平行な方向において往復直線移動可能であることを特徴とするワーク搬送装置。
【請求項2】
前記2つのリンクアームは、ワーク搬送方向から見たときに交差されていることを特徴とする請求項1に記載のワーク搬送装置。
【請求項3】
前記2つのリンクアームの基端側の相対距離が変更されることに基づいて、リフト動作或いはダウン動作がなされることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のワーク搬送装置。
【請求項4】
前記2つのリンクアームの基端側が同一方向に移動されることに基づいて、クランプ動作或いはアンクランプ動作がなされることを特徴とする請求項1〜請求項3の何れか1つに記載のワーク搬送装置。
【請求項5】
前記2つのリンクアームの回動支点の少なくとも1つに作用してリンクアームを回転駆動可能なアクチュエータが配設されることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1つに記載のワーク搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−79004(P2011−79004A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231731(P2009−231731)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(000100861)アイダエンジニアリング株式会社 (153)