説明

ワーク整列装置

【目的】焼き付き防止用パウダーを用いることなく、セラミックチップなどのワークを互いに所定間隔だけ離間した並列状態で容易に整列させることができ、これらの確実な焼き付き防止を図ることが可能なワーク整列装置を提供する。
【構成】本発明に係るワーク整列装置1は、前進動作するワーク整列部材2と、その上側位置に配置されたうえで該ワーク整列部材2と平行な方向に沿って後退動作するワーク載置部材3と、該ワーク載置部材3の上側位置に固定されたワーク当接部材4とを備えており、ワーク載置部材3は、その動作方向に沿う並列状態で密接配置された一群のワークWが滑動可能に載置され、かつ、ワーク整列部材2よりも相対的に遅い速度で動作するものである一方、ワーク当接部材4は、ワーク載置部材3上に載置されて後退動作したうえで当接したワークWを停止させるものであることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、セラミックチップなどのようなワークを互いに離間した並列状態で整列させるために使用されるワーク整列装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、正特性サーミスタのような小型電子部品の製造に際しては、図示していないが、チタン酸バリウムなどを用いて作製された角形状などのセラミックチップを並列状態として整列させたうえで匣鉢内に収納した後、これらの匣鉢を加熱炉内に投入して加熱することによってセラミックチップを焼成することが行われている。そして、これらセラミックチップの収納時には、焼成済みとなったセラミックチップ同士が焼き付いてしまうのを防止すべく、予めセラミックチップに対してジルコニアなどの焼き付き防止用パウダーを散布しておくことによってセラミックチップ同士が相互に密接していない並列状態を確保するようにしている。すなわち、ここでは、焼き付き防止用パウダーを互いに隣接するセラミックチップ同士間に介在させ、かつ、焼き付き防止用パウダーの介在によってセラミックチップ同士間に隙間を形成することによって密接を防ぐのである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、焼き付き防止用パウダーの散布によってセラミックチップ同士の焼き付きを防止しようとする従来例においては、散布された焼き付き防止用パウダーが周囲にまで飛び散ることを回避できないため、焼き付き防止用パウダーが散布装置などの摺動部や回転部などに入り込んで故障の原因となったり、その信頼性を損なわせたりすることが起こっていた。そして、このような不都合を生じさせないためには集塵機器などを設けておく必要があることになるが、このようにした場合にはその分だけ装置構造が複雑化することになってしまう。
【0004】また、この従来例においては焼き付き防止用パウダーの散布量を調整しなければならないが、厳密な散布量調整を行うのは大変に困難であり、特に、散布量を微量とする際の調整には時間を要することになっていた。さらにまた、焼き付き防止用パウダーの散布量と、セラミックチップ間に形成される隙間とが必ずしも対応した関係にある訳でもなく、焼き付き防止にあたって最も重要となるセラミックチップ間の隙間を必要な間隔で確保できるとは限らないのが実情であった。
【0005】本発明は、これらの不都合に鑑みて創案されたものであって、焼き付き防止用パウダーを用いることなく、セラミックチップなどのワークを互いに所定間隔だけ離間した並列状態で容易に整列させることができ、これらの確実な焼き付き防止を図ることが可能なワーク整列装置の提供を目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係る第1のワーク整列装置は、このような目的を達成するために、前進動作するワーク整列部材と、その上側位置に配置されたうえで該ワーク整列部材と平行な方向に沿って後退動作するワーク載置部材と、該ワーク載置部材の上側位置に固定されたワーク当接部材とを備えており、ワーク載置部材はその動作方向に沿う並列状態で密接配置された一群のワークが滑動可能に載置され、かつ、ワーク整列部材よりも相対的に遅い速度で動作するものである一方、ワーク当接部材はワーク載置部材上に載置されて後退動作したうえで当接したワークを停止させるものであることを特徴としている。
【0007】本発明に係る第2のワーク整列装置は、前進動作するワーク整列部材と、その上側位置に固定されたワーク載置部材と、該ワーク載置部材の上側位置に配置されたうえでワーク整列部材と平行な方向に沿って前進動作するワーク当接部材とを備えており、ワーク載置部材はワーク整列部材の動作方向に沿う並列状態で密接配置された一群のワークが滑動可能に載置されたものである一方、ワーク当接部材はワーク整列部材よりも相対的に遅い速度で動作してワーク載置部材上に載置されたワークを前進させるものであることを特徴とする。
【0008】
【作用】上記第1の構成によれば、並列状態で密接配置された一群のワークはこれらが載置されたワーク載置部材に従って後退動作することになり、これらのうちの最も後側に位置するワークがワーク当接部材に当接した時点でワーク全体は強制的に停止させられる。しかし、これらワークの後退動作が停止させられた後もワーク載置部材は引き続き後退動作を続けるから、一群のワークはそのうちの最も前側に位置するものから順にワーク載置部材で支持されなくなり、このワーク載置部材と平行な方向に沿って前進動作中のワーク整列部材上に移送される。そして、この際、ワーク整列部材はワーク載置部材の後退動作よりも相対的に早い速度で前進動作しているから、ワークは両者の速度差に基づいて間欠的に移送されることになり、ワーク整列部材上に移送されたワークは速度差に対応した所定間隔だけ離間した並列状態で配置されることになる。
【0009】また、上記第2の構成によれば、固定されたワーク載置部材上に並列状態で密接配置された一群のワークは前進動作してきたワーク当接部材が当接することによって後側から押されることになり、最も前側に位置するワークから順次前進動作中のワーク整列部材上に移送させられていくことになる。そして、このとき、ワーク整列部材はワーク当接部材よりも相対的に早い速度で前進動作しているのであるから、ワークは両者の速度差に基づいて間欠的に移送されることになり、ワーク整列部材上に移送されたワークは速度差に対応した所定間隔だけ離間した並列状態で配置されることになる。
【0010】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0011】第1実施例図1は第1実施例に係るワーク整列装置の全体構造を簡略化して示す平面図、図2は図1中のC−C線に沿う側断面図であり、これらの図における符号1はワーク整列装置である。
【0012】本実施例に係るワーク整列装置1は、ワークとしてのセラミックチップWを互いに離間した並列状態で整列させる際に使用されるものであり、前進動作するワーク整列部材としてのベルトコンベア2と、その上側位置に配置されたうえでベルトコンベア2と平行な方向に沿って後退動作するワーク載置部材としてのテーブル3と、このテーブル3の上側位置に固定されたワーク当接部材としての横持ちバー4とを備えている。そして、このワーク整列装置1を構成するベルトコンベア2はセラミックチップWを例えば2列状で配置しうる幅寸法を有するとともに、両端位置に設けられた一対のローラ5間に架設されて水平方向に沿うように支持されたものであり、ローラ5の一方に連結された電動機6の回転駆動により図中の矢印A方向に向かって所定速度で前進動作するよう構成されている。
【0013】また、テーブル3はベルトコンベア2よりも広幅の平板形状とされており、ベルトコンベア2の上面とは狭い所定間隔を介した離間状態で配置されている。そして、このテーブル3の両側端下部はLMガイドといわれるような一対のガイドレール7、すなわち、テーブル3の動作方向に向かって水平支持されたガイドレール7を介して摺動自在に支持される一方、その後端部はベルト8を介したうえで電動機9に連結されている。なお、この電動機9は回転駆動されることによってテーブル3を図中の矢印B方向に向かって後退動作させるものであり、後退動作速度はベルトコンベア2の前進動作速度よりも相対的に遅くなるよう調整されている。さらにまた、このテーブル3の上面には、その動作方向に沿う並列状態で密接配置された一群のセラミックチップWが滑動可能な状態で載置されている。
【0014】一方、横持ちバー4はテーブル3上をその幅方向に沿って横切るように架設されたうえで固定的に支持されたものであり、その架設高さはテーブル3上に載置されたセラミックチップWが当接するよう調整したうえで位置決めされている。そこで、テーブル3上に載置されて後退動作してきたセラミックチップWは横持ちバー4に当接することになり、これらセラミックチップWの後退動作は横持ちバー4によって停止させられることになる。ところで、本実施例においては、ワーク整列部材がベルトコンベア2であり、かつ、ワーク載置部材であるテーブル3を電動機9によって動作させる構成を採用しているが、このような構成に限定されることはなく、例えば、ワーク整列部材をテーブル3と同様の平板形状としてもよいのは勿論、テーブル3の後退動作をシリンダなどによって行わせることも可能である。また、このテーブル3を間欠運転するように構成しておいてもよい。
【0015】つぎに、本実施例に係るワーク整列装置1の動作及び作用を説明する。
【0016】まず、並列状態で密接配置された一群のセラミックチップWを例えば2列状としてテーブル3上に載置した後、このテーブル3を後退動作させると、これらのセラミックチップWはテーブル3に従って後退動作することになる。そして、これらのうちの最も後側に位置するセラミックチップWL が横持ちバー4に当接すると、セラミックチップW全体の動きは横持ちバー4によって押し留められることになり、これらの後退動作は強制的に停止させられてしまう。しかし、セラミックチップWの後退動作が停止させられた後においても、これらが載置されたテーブル3の後退動作は、セラミックチップWとの間で滑りながら引き続き行われている。
【0017】そこで、このテーブル3が後退動作を続けていくと、やがては、一群のうちの最も前側に位置するセラミックチップWF から順にテーブル3によって支持されないことになり、テーブル3で支持されなくなったセラミックチップWはテーブル3と平行な方向に沿って前進動作中のベルトコンベア2上に向かって順次乗り移っていくことになる。ところが、この際、ベルトコンベア2はテーブル3の後退動作よりも相対的に早い速度で前進動作しているのであるから、個々のセラミックチップWはベルトコンベア2及びテーブル3の速度差に基づいて間欠的に移送されることになり、ベルトコンベア2上に移送されたセラミックチップWのそれぞれは速度差に対応した所定間隔だけ離間した並列状態で配置される。
【0018】すなわち、このようにしてベルトコンベア2上に移送されたセラミックチップWそれぞれ間の隙間間隔は、ベルトコンベア2及びテーブル3の速度差に基づいて定まることになる。したがって、これらの動作速度をセラミックチップWの大きさなどの条件に応じて調整すれば、これらセラミックチップWの隙間における間隔を任意に変更しうることになる。
【0019】第2実施例ところで、以上説明した第1実施例に係るワーク整列装置1においては、テーブル3が後退動作し、かつ、横持ちバー4が固定的に支持されたものであるとしているが、これに限定されるものではなく、以下説明する第2実施例で示すような構成とされたワーク整列装置の採用も可能である。すなわち、図3は第2実施例に係るワーク整列装置の全体構造を簡略化して示す平面図、図4は図3中のE−E線に沿う側断面図であり、これらの図における符号10はワーク整列装置である。なお、図3及び図4において、図1及び図2と互いに同一である部品、部分には同一符号を付し、ここでの詳しい説明は省略する。
【0020】この第2実施例に係るワーク整列装置10は、図中の矢印A方向に向かって前進動作するワーク整列部材としてのベルトコンベア2と、その上側位置に固定されたワーク載置部材としてのテーブル11と、このテーブル11の上側位置に配置されたうえでベルトコンベア2と平行な方向に沿って前進動作するワーク当接部材としての横持ちバー12とを備えている。すなわち、このワーク整列装置10におけるテーブル11はベルトコンベア2よりも広幅の平板形状とされたものであり、ベルトコンベア2の上面と所定間隔だけ離間した状態で対面するように配置されたうえで固定的に支持されている。そして、このテーブル11の上面には、ベルトコンベア2の動作方向に沿う並列状態で密接配置された一群のワークWが滑動可能な状態で載置されている。
【0021】一方、横持ちバー12はテーブル11上をその幅方向に沿って横切るようにして架設されたものであり、その両側端はベルトコンベア2と同方向に向かって水平支持された一対のガイドレール13を介して摺動自在に支持されている。そして、この横持ちバー12の前端部は、ベルト14を介したうえで電動機15に連結されている。そこで、この横持ちバー12は電動機15の回転駆動に伴う所定速度で図中の矢印D方向に向かって前進動作させられることになり、この前進動作した横持ちバー12はテーブル11上に載置された一群のセラミックチップWに当接したうえ、これらをその後側から前側に向かって押すことになる。なお、この際、横持ちバー12の動作速度は、ベルトコンベア2の前進動作速度よりも相対的に遅くなるよう調整されている。また、図3においては、横持ちバー12の両側端をガイドレール13によって支持するとしているが、これに限られることはなく、横持ちバー12の一側端のみを支持する構成であってもよいことは勿論である。
【0022】つぎに、本実施例に係るワーク整列装置10の動作及び作用を説明する。
【0023】まず、並列状態で密接配置された一群のセラミックチップWを例えば2列状としてテーブル11上に載置した後、横持ちバー12を前進動作させる。すると、この前進動作してきた横持ちバー12は最も後側に位置するセラミックチップWL に当接したうえでセラミックチップWの全体を押すこととなる結果、これらのセラミックチップWは横持ちバー12で押されることによってテーブル11上を滑りながら前進させられる。そして、前進させられたセラミックチップWは、これらのうちの最も前側に位置するワークWF から順次前進動作中のベルトコンベア2上に移送されることになり、このベルトコンベア2上に載置されていく。
【0024】そして、このとき、ベルトコンベア2は横持ちバー12よりも相対的に早い速度で前進動作しているのであるから、個々のセラミックチップWはベルトコンベア2及び横持ちバー12の速度差に基づいて間欠的に移送されることになり、ベルトコンベア2上に移送されたセラミックチップWのそれぞれは速度差に対応した所定間隔だけ離間した並列状態で配置されることになる。なお、セラミックチップWに当接した横持ちバー12を間欠運転してもよく、これの間欠運転によってセラミックチップW間の間隔を確保することが可能となる。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係るワーク整列装置によれば、ワーク載置部材上に載置されて後退動作したワークはワーク当接部材によって停止させられたうえで前進動作中のワーク整列部材に対して間欠的に移送されることになり、移送されたワークはワーク整列部材及びワーク載置部材の速度差に対応した所定間隔だけ離間した並列状態でワーク整列部材上に配置される。あるいはまた、固定されたワーク載置部材上に載置されたワークはワーク当接部材によって前進させられたうえでワーク整列部材に対して間欠的に移送されることになる。
【0026】したがって、焼き付き防止用パウダーを用いなくてもワークを互いに離間した並列状態で整列させることが可能となる結果、焼き付き防止用パウダーの散布に伴って発生していた種々の不都合を回避したうえでワーク間における隙間を確保することができ、これらの確実な焼き付き防止を図ることができるという効果が得られる。また、本発明装置においては、ワーク整列部材及びワーク載置部材もしくはワーク当接部材の速度差を調整することによってワーク間における隙間の大きさを任意に変更することが可能であり、多品種少量生産にも対応しやすいという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例に係るワーク整列装置の全体構造を簡略化して示す平面図である。
【図2】図1中のC−C線に沿う側断面図である。
【図3】第2実施例に係るワーク整列装置の全体構造を簡略化して示す平面図である。
【図4】図3中のE−E線に沿う側断面図である。
【符号の説明】
1 ワーク整列装置
2 ベルトコンベア(ワーク整列部材)
3 テーブル(ワーク載置部材)
4 横持ちバー(ワーク当接部材)
W セラミックチップ(ワーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 前進動作するワーク整列部材(2)と、その上側位置に配置されたうえで該ワーク整列部材(2)と平行な方向に沿って後退動作するワーク載置部材(3)と、該ワーク載置部材(3)の上側位置に固定されたワーク当接部材(4)とを備えており、ワーク載置部材(3)は、その動作方向に沿う並列状態で密接配置された一群のワーク(W)が滑動可能に載置され、かつ、ワーク整列部材(2)よりも相対的に遅い速度で動作するものである一方、ワーク当接部材(4)は、ワーク載置部材(3)上に載置されて後退動作したうえで当接したワーク(W)を停止させるものであることを特徴とするワーク整列装置。
【請求項2】 前進動作するワーク整列部材(2)と、その上側位置に固定されたワーク載置部材(11)と、該ワーク載置部材(11)の上側位置に配置されたうえでワーク整列部材(2)と平行な方向に沿って前進動作するワーク当接部材(12)とを備えており、ワーク載置部材(11)は、ワーク整列部材(2)の動作方向に沿う並列状態で密接配置された一群のワーク(W)が滑動可能に載置されたものである一方、ワーク当接部材(12)は、ワーク整列部材(2)よりも相対的に遅い速度で動作してワーク載置部材(11)上に載置されたワーク(W)を前進させるものであることを特徴とするワーク整列装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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