説明

ワーク突合わせ装置

【課題】 第1及び第2ワークの突合わせ時において、第1又は第2ワークの反り曲がり等の変形を防止しつつ、第1及び第2ワークの各縁端同士の密着性を向上できるワーク突合わせ装置を提供すること。
【解決手段】
レーザ溶接機100は、図13に示す移動フレーム5,5を位置制御する場合、ワークW1の縁端E1のy軸方向の目標位置を基準線x0,z0よりy軸方向下流側にオフセットメモリ101a(図15参照。)の値分だけ偏移させる一方、これと同様に、ワークW2の縁端E2のy軸方向の目標位置を基準線x0,z0よりy軸方向上流側にオフセットメモリ101aの値分だけ偏移させる。すると、この双方の偏移量に応じてサーボモータ9,9の出力トルクを増加させ、この増加分の出力トルクでワークW1,W2の縁端E1,E2面間に若干の押し付け力を付与すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1及び第2ワークの縁端が理想溶接線に一致するように第1及び第2ワークの縁端同士を突合わせるワーク突合わせ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車輌を構成する部品のうち、車輌のボディ部品には薄板状の金属板が多用されている。このようなボディ部品には、例えば、材料となる大判の金属板をプレス加工により所望の形状に切り出したものや、或いは、プレス加工により切り出された複数のワーク(被溶接材)を溶接したものが用いられる。ここで、複数のワークを溶接する場合、各ワークはそれぞれ縁端同士が突き合わせられ、その突合わせられた縁端同士がレーザ光により溶接される。この溶接に用いるレーザ光は極めて細い光線であるので、各ワークの縁端同士を確実に密着させて接合不良を防止する必要がある。
【0003】
そこで、従来より突合わせ溶接されるワーク同士の縁端間の密着性を高めるために種々の提案がなされているが、その一例として、特開平9−174283号公報に開示された2板体(ワーク)の相対位置決め装置がある。この相対位置決め装置では、2枚のワークの縁端同士をエアシリンダにより互いに押し当てることで密着性の高い突合わせを実現している。
【特許文献1】特開平9−174283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した相対位置決め装置の場合と同様にエアシリンダにより2枚のワークを突合わせる方式を採用して、エアシリンダから出力される一定の力でワーク同士を押し当てつつ突合わせると、エアシリンダが出力過大となって突き合わせたワークが反り曲がり、溶接不具合が発生するという問題点が生じてしまう。そこで、かかる問題点を解消すべく、エアシリンダの出力を低下させると、ワークの縁端間の押圧力が低下するため、ワークの縁端に残存する湾曲やバリ等で各ワークの縁端間が空いて密着度が低下してしまうという問題点が生じてしまう。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、第1及び第2ワークの突合わせ時において、第1又は第2ワークの反り曲がり等の変形を防止しつつ、第1及び第2ワークの各縁端同士の密着性を向上できるワーク突合わせ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために請求項1のワーク突合わせ装置は、第1及び第2ワークの縁端同士を理想溶接線に一致するように突合わせるものであり、理想溶接線を挟んだ一方側に配設され第1ワークを挟持する第1クランプと、その第1クランプから離間して理想溶接線を挟んだ他方側に配設され第2ワークを挟持する第2クランプと、その第2クランプ側へ向けて前記第1クランプを直線移動させる動力を付与する第1駆動手段と、前記第1クランプにより挟持される第1ワークの縁端が理想溶接線より前記第2クランプ側に所定量偏移するように前記第1駆動手段を制御する第1制御手段と、その第1制御手段により制御される前記第1クランプ側へ向けて前記第2クランプを直線移動させる動力を付与する第2駆動手段と、前記第2クランプにより挟持される第2ワークの縁端が理想溶接線より前記第1クランプ側に所定量偏移するように前記第2駆動手段を制御する第2制御手段と、その第2制御手段および第1制御手段によって第1及び第2ワークの縁端を理想溶接線から偏移させる偏移量をそれぞれ等しい値に設定する偏移量設定手段とを備えている。
【0007】
なお、理想溶接線とは、第1及び第2ワークを溶接する場合の溶接方向を示す理想線であり、第1ワークの縁端と第2ワークの縁端とを正確に突合わせた場合における両ワークの境界線と一致する。
【0008】
この請求項1のワーク突合わせ装置によれば、例えば、第1及び第2ワークは、互いの対向する縁端同士が離間した状態で、第1及び第2クランプにより挟持される。この状態から、第1制御手段によって、第1クランプが第1駆動手段を介して第2クランプ側へ向けて移動される一方、第2制御手段によって、第2クランプが第2駆動手段を介して第1クランプ側へ向けて移動される。ここで、第1及び第2制御手段は、第1及び第2駆動手段をそれぞれ制御して第1及び第2クランプを移動させ、各ワークの縁端が理想溶接線から偏移設定手段に設定される値分だけ通り過ぎた目標位置に到達させようとする。その結果、第1及び第2ワークの各縁端は目標位置に到達する以前に理想溶接線上で突き当たり、各クランプは見かけ上制止したかのようになる。しかしながら、第1及び第2ワークの縁端同士が突き当たっても、第1及び第2クランプには、偏移設定手段の値に応じた同等の動力が各動力手段により加えられ続ける。
【0009】
請求項2のワーク突合わせ装置は、請求項1のワーク突合わせ装置において、前記第1及び第2クランプは、ワークを吸着する磁石とその磁石に対向配置される強磁性体とを有し、その強磁性体及び磁石間にワークを挟持するものである。
【0010】
この請求項2のワーク突合わせ装置によれば、請求項1のワーク突合わせ装置と同様に作用する上、第1クランプは、それの磁石と強磁性体間に第1ワークを介在させ、その磁石の磁力により第1ワーク及び強磁性体を磁化させる。よって、第1ワークは、磁石と磁化された強磁性体とそれぞれ吸着された状態で強固に第1クランプに挟持される。また、同様にして、第2クランプも、第1ワークを磁石と磁化された強磁性体とにそれぞれ吸着させて強固に挟持する。
【0011】
請求項3のワーク突合わせ装置は、請求項2のワーク突合わせ装置において、前記第1クランプの磁石は、前記第2クランプの磁石とは反対の極性を有している。
【0012】
なお、上記した請求項1のワーク突合わせ装置の変形例として、以下のものがある。
【0013】
第1変形例のワーク突合わせ装置は、第1及び第2ワークの縁端同士を理想溶接線に一致するように突合わせるものであり、理想溶接線を挟んだ一方側に配設され第1ワークを挟持する第1クランプと、その第1クランプから離間して理想溶接線を挟んだ他方側に配設され第2ワークを挟持する第2クランプと、その第2クランプ側へ向けて前記第1クランプを直線移動させる動力を付与する第1駆動手段と、その第1駆動手段により移動される前記第1クランプ側へ向けて前記第2クランプを直線移動させる動力を付与する第2駆動手段と、その第2駆動手段の動力を、前記第1駆動手段の最大出力より低い所定の閾値以下に制限する一方、第1ワークの縁端と理想溶接線とが一致する突合位置で前記第1クランプが制止するように前記第1駆動手段を制御する制御手段とを備えている。
【0014】
この第1変形例のワーク突合わせ装置によれば、例えば、第1及び第2ワークは、互いの対向する縁端同士が離間した状態で、第1及び第2クランプにより挟持される。この状態から、第1クランプが第1駆動手段により第2クランプ側へ向けて移動され、第2クランプが第2駆動手段により第1クランプ側へ向けて移動されると、第1及び第2ワークの縁端が理想溶接線を両側から挟み込むように接近する。その後、制御手段による第1移動手段の制御によって、第1クランプは第1ワークの縁端と理想溶接線とが一致する突合位置で制止される。
【0015】
第1クランプが突合位置で制止されると、第1ワークの縁端は理想溶接線と一致する位置に位置決めされ、このように位置決めされた第1ワークの縁端には、第2クランプにより挟持された第2ワークの縁端が第2駆動手段の動力を介して押し当てられる。ここで、制御手段は、第2駆動手段の動力を第1駆動手段の最大出力より低い所定の閾値以下に制限するので、第2クランプにより挟持された第2ワークに押されて、縁端が理想溶接線に合わせられた第1ワークが第1クランプごと押し戻されることがない。よって、第1及び第2ワークの縁端が理想溶接線上にて突き合わさった状態が維持される。
【0016】
第2変形例のワーク突合わせ装置は、第1変形例のワーク突合わせ装置において、前記制御手段は、前記所定の閾値を記憶する書換可能な閾値記憶手段と、前記第2駆動手段の動力を検知する動力検知手段とを備えており、その動力検知手段により検知される動力が前記閾値記憶手段に記憶される所定の閾値と一致するように前記第2駆動手段を制御するものである。
【0017】
この第2変形例のワーク突合わせ装置によれば、第1変形例のワーク突合わせ装置と同様に作用する上、第2クランプを移動させる第2駆動手段の動力は動力検知手段により検知され、その検出された動力が閾値記憶手段に記憶される所定の閾値と一致するように第2駆動手段が制御手段によって制御される。ここで、閾値記憶手段に記憶される所定の閾値は書換可能であるので、第1及び第2ワークの押し当て(突当て)に適した動力値を閾値記憶手段に事後的に設定し直すことができる。
【0018】
なお、これらの第1変形例又は第2変形例のワーク突合わせ装置には、上記した請求項2記載の構成要素を付加しても良く、更に、この請求項2記載の構成要素が付加されたものに請求項3記載の構成要素を付加しても良い。
【発明の効果】
【0019】
請求項1のワーク突合わせ装置によれば、第1及び第2クランプにより第1及び第2ワークの縁端が理想溶接線上で突合わせられた場合、第1及び第2クランプには、偏移量設定手段に設定される偏移量に応じた動力が第1及び第2駆動手段から均等に付与されるので、第1及び第2ワークの縁端同士が理想溶接線からズレることなく互いに押し当たることができる。この押し当りによって、第1及び第2ワークの縁端に存在する湾曲やバリは圧潰されるので、各ワークの縁端同士の密着度を高めることができるという効果がある。また、第1及び第2ワークの縁端同士を押し当てつつ溶接できるので、かかる溶接中に各ワークの縁端を溶かし込みながら各ワーク間の隙間を縮減できるという効果がある。
【0020】
しかも、第1及び第2クランプは、第1及び第2制御手段によって、第1及び第2駆動手段により同等の動力で第1及び第2ワークを押し当て合うので、第1及び第2ワークの縁端を理想溶接線から位置ズレさせずに突合わせることができる。よって、第1及び第2ワークの突合わせ部分と理想溶接線に沿って照射されるレーザ光とのズレを防止できるので、かかるズレによる溶接不良の発生を回避できるという効果がある。また、第1及び第2ワークが溶接熱による熱膨張で歪んで各ワークの縁端同士の隙間が拡大する方向へ反力が作用する場合には、その反力に第1及び第2駆動手段が出力可能な最大限の動力で抵抗して、各ワークの縁端間の隙間拡大を防止できるという効果がある。
【0021】
請求項2のワーク突合わせ装置によれば、請求項1のワーク突合わせ装置の奏する効果に加え、クランプを機械式バネやエアシリンダにより押し付ける従来のクランプ方式のように、第1及び第2クランプによる各ワークの拘束に伴ってフレーム構造に過大な負荷荷重が作用することがないので、ワーク突合わせ装置のフレーム構造の剛性強度を小さくでき、その結果、フレーム構造を軽量かつ小型化できるという効果がある。従って、かかるワーク突合わせ装置のフレーム構造に他の装置、例えば、溶接加工装置や搬送装置を一纏めに集約することもできるのである。
【0022】
請求項3のワーク突合わせ装置によれば、請求項2のワーク突合わせ装置の奏する効果に加え、第1及び第2ワークの縁端同士が突合わせられる場合、第1クランプの磁石は第2クランプの磁石とは反対の極性を有するので、各磁石に吸着される第1及び第2ワークをそれぞれ反対の極性に磁化し、その両ワークの縁端間に磁気引力を生じさせることができる。この結果、突合わせられる両ワークの縁端間には磁気引力による吸着力が生じるので、その両縁端間の隙間を更に低減できるという効果がある。
【0023】
なお、上記した第1変形例及び第2変形例のバス接近情報通知システムについては、以下のような効果がある。
【0024】
第1変形例のワーク突合わせ装置によれば、第1及び第2ワークの縁端同士が突き合わさった場合、制御手段によって、第1駆動手段は、第1ワークの縁端と理想溶接線とが一致するように第1クランプを突合位置で制止させ、且つ、第2駆動手段の動力は第1駆動手段の最大出力より低い所定の閾値以下に制限される。結果、第1ワークの縁端を理想溶接線に合わせて位置決めした状態で、その第1ワーク縁端に第2ワークの縁端を所定の閾値以下の力で押し当てることができる。従って、かかる所定の閾値をワークの挫屈強度未満に設定することで、突き合わせ時のワークの反り曲がり等の変形を防止できるという効果がある。また、その所定の閾値を湾曲やバリの圧潰に充分な値に設定することで、第1及び第2ワークの縁端に存在する湾曲やバリを圧潰させることができ、各ワークの縁端同士の密着度を高めることができるという効果がある。
【0025】
しかも、第1及び第2ワークの縁端を一定の力で押し当てつつ溶接できるので、その各ワーク間の隙間へ溶接による溶融物を溶かし込ませて各ワーク間の隙間を縮減できるという効果がある。しかも、第2駆動手段の動力は、第1駆動手段の最大出力より低く制限されるので、第1及び第2ワークが突き当たった場合に第2クランプに押されて第1クランプが押し戻されることがなく、第1及び第2ワークの突合わせ部分が理想溶接線から偏移することを防止できる。よって、レーザ光と第1及び第2ワークの突合わせ部とのズレを防いで、溶接不良の発生を回避できるという効果がある。
【0026】
第2変形例のワーク突合わせ装置によれば、第1変形例のワーク突合わせ装置の奏する効果に加え、閾値記憶手段に記憶される閾値は書換可能であるので、第1及び第2ワークの押し当てに適した動力値を事後的に設定し直すことができる。例えば、第2駆動手段の動力が過大である場合には、閾値を低く設定し直すことで突合わせ時における各ワークの反り曲がりを防止できるという効果がある。また一方で、第2駆動手段の動力が過小である場合には、閾値を高く設定し直すことで、突合わさった各ワークが溶接熱による熱膨張で歪み各ワークの縁端間に隙間が空くことを防止できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の突合わせ装置の一実施例であるクランプマシン2を装備したレーザ溶接機1の正面図(前面図)である。図1に示すように、このレーザ溶接機1は、主に、鋼板等の薄板状の強磁性体で形成された溶接対象物(以下、「ワーク」と称す)を所定の溶接位置に位置決めして固定するクランプマシン2と、そのクランプマシン2により固定されるワークをレーザ光で溶接する溶接ユニット3とを備えている。
【0028】
クランプマシン2の下部にはx軸方向に延設される載置テーブル4が配設されており、この載置テーブル4の上面にはワークが載置可能とされている。載置テーブル4はy軸方向へ移動可能な移動フレーム5により下方から支持されており、この移動フレーム5は基礎フレーム6により下方から支持されている。基礎フレーム6は、クランプマシン2の土台となるフレーム構造体であり、床面上に設置されている。
【0029】
基礎フレーム6のx軸方向両側上面には、その基礎フレーム6のy軸方向に延設されるガイドレール8,8がそれぞれ配設され、このガイドレール8,8に移動フレーム5が載架されている。ガイドレール8,8は、移動フレーム5をy軸方向へ案内するものであり、このガイドレール8,8の間であって基礎フレーム6のx軸方向中央にはサーボモータ9が配設されている。サーボモータ9は、ガイドレール8,8上の移動フレーム5をy軸方向へ往復移動させる駆動装置である。
【0030】
クランプマシン2の上部であって載置テーブル4の上方には、その載置テーブル4の上面と対向してマグネットユニット10が配設されている。マグネットユニット10は、マグネット(磁石)の磁力により強磁性体であるワークを磁気誘導により磁化して吸着させるためのものである。マグネットユニット10は載置テーブル4より横長な移動フレーム11に吊設され、この移動フレーム11にはx軸方向に間隔を隔てて2本のガイドロッド12,12が配設されている。
【0031】
ガイドロッド12,12はマグネットユニット10のy軸方向移動を案内する軸状体である。このガイドロッド12,12は、その軸芯がy軸方向を向いた状態で移動フレーム11にそれぞれ挿嵌されており、このガイドロッド12,12の一端部(図1紙面に対する奥側)にマグネットユニット10が連結されている。また、移動フレーム11には、各ガイドロッド12,12の内側にエアシリンダ13,13がそれぞれ配設されており、このエアシリンダ13,13は、マグネットユニット10をy軸方向に移動させる駆動装置である。
【0032】
移動フレーム11の上方にはx軸方向に延びる梁状体である横架フレーム14が配設されており、横架フレーム14は、移動フレーム11が吊設されるものである。この横架フレーム14の下縁にはガイドレール15がx軸方向に延設されており、このガイドレール15には、移動フレーム11の上部が吊着されている。また、移動フレーム11の前面には複数の歯を有するラック16がx軸方向に延設されており、このラック16は歯車であるピニオン17と歯合されている。
【0033】
サーボモータ18は、ラック16に歯合するピニオン17を回転させて移動フレーム11をx軸方向へ往復移動させる駆動装置であり、横架フレーム14のx軸方向中央に固定設置されている。また、横架フレーム14は、クランプマシン2とx軸方向に並設される前段テーブル19の上方にまで延長されている。前段テーブル19は、その上面に溶接前のワークを載置するものであり、この前段テーブル19には、載置されたワークを下方から押し上げるプッシュロッド20が複数本配設されている。更に、横架フレーム14の上縁にはx軸方向に延びるガイドレール21が配設されており、このガイドレール21には、溶接ユニット3が載上されている。図7には、溶接ユニット3の構造がより詳細に図示されている。
【0034】
図7に示すように、溶接ユニット3は、レーザ光線を照射するレーザヘッド3aと、そのレーザヘッド3aを支持する支持体3bと、その支持体3bをxyz空間内で移動させるヘッド移動装置3c(図1参照)と、そのヘッド移動装置3cにより支持体3bがx軸方向へ移動する際にレーザヘッド3aから照射されるレーザ光を2枚のワークの縁端同士を突合わせた突合わせ部(シーム部)に追従するようにトラッキング制御するトラッキングドライバ3dと、シーム部のy軸及びz軸方向位置を検出するためのレーザセンサ3eとを有した溶接ユニットである。この溶接ユニット3によれば、溶接時においてレーザヘッド3aの支持体3bは、ヘッド移動装置3cによりx軸方向上流側(図7右側)から下流側(図7左側)へ移動され、その移動と共にレーザヘッド3aからレーザ光を照射して溶接を行うものである。
【0035】
レーザセンサ3eは、レーザヘッド3aからx軸方向下流側(図7左側)に所定距離(例えば50mm程度)離間した位置に配設されている。このレーザセンサ3eは、y軸方向幅が最大11.5mmのレーザ光を自己の直下に位置するワークのシーム部に照射でき、その反射光をCCD受光素子にて受光することによりワークのシーム部のy軸方向位置と、レーザセンサ3aからワークのシーム部までのz軸方向高低差とを検出することができる。ここで、レーザセンサ3eは、自己が照射したレーザ光の反射光をCCD受光素子で受光するので、ワーク表面の光反射率に関わらず高い検出精度を確保できる。
【0036】
また、レーザセンサ3eは、ワークW1,W2(図14参照)の厚みt1,t2が異なる場合に生じる段差をレーザ光の反射光を用いて検出し、その段差の位置からワークW1,W2の縁端E1,E2の突合わせ部であるシーム部のy軸及びz軸方向位置を検出するものである。トラッキングドライバ3dは、溶接開始時にレーザセンサ3eの検出結果に基づいてレーザヘッド3aからシーム部までのz軸方向の距離を調整する一方、溶接が開始されると、レーザセンサ3eにより検出されたシーム部のy軸方向位置に基づいて、その後のレーザヘッド3aの移動先を演算して、x軸方向へ移動するレーザヘッド3aのy軸方向位置をシーム部に追従するように制御(トラッキング制御)するものである。
【0037】
図1に戻って説明する。溶接ユニット3は、レーザヘッド3aの支持体3bをx軸方向へ移動させるためのボールねじ軸22と、ボールねじナット23と、サーボモータ24とを備えており、これらはヘッド移動装置3cの一部を構成している。溶接ユニット3の支持体3bにはボールねじ軸22が螺合されるボールねじナット23が取着されている。ボールねじ軸22及びボールねじナット23は、ねじ軸22のおねじとナット23のめねじとを複数の玉で結合する「ボールねじ」であり、そのボールねじ軸22には、横架フレーム14上に配設されたサーボモータ24が連結されている。サーボモータ24は、ボールねじナット23に螺合するボールねじ軸22を回転させて、溶接ユニット3の支持体3bをx軸方向へ往復移動させる駆動装置である。
【0038】
図2は、図1のII−II線における部分的な側断面図であり、載置テーブル4より下側の部位のみを図示している。尚、図2中の1点鎖線は、載置テーブル4,4’にそれぞれ載置されるワークW1,W2の縁端同士を突合わせた場合にその両縁端が一致すべき理想位置を示した基準線z0を、図中の2点鎖線は突合わせ溶接される二枚一組の溶接対象物であるワークW1,W2を、それぞれ示している。また、基準線z0はz軸と平行な直線である。
【0039】
図2に示すように、載置テーブル4は、その載置テーブル4に比べてy軸方向に長尺な載置テーブル4’とy軸方向に並設され、その載置テーブル4’とは反対側の端部に補助テーブル4”が取着されている。これらの載置テーブル4,4’及び補助テーブル4”は、その上面に複数のフリーベア25がそれぞれ取着され、各フリーベア25の頂部は略面一とされている。複数のフリーベア25は、頂部が外部に露出された球体を転動可能に保持した部材であり、その複数のフリーベア25の球体頂部によりワークW1,W2の下面を支持するものである。よって、ワークW1,W2が載置テーブル4,4’及び補助テーブル4”上を摺動する場合にはフリーベア25の球体が転動するので、ワークW1,W2の下面の損傷を防止できる。また、フリーベア25は球体の頂部にてワークW1,W2の下面に点接触するので、各ワークW1,W2とフリーベア25との間の摩擦抵抗も低減できる。
【0040】
また、載置テーブル4,4’の下方には上記した移動フレーム5が1基ずつ配設されており、2基の移動フレーム5,5はともに上記した一対のガイドレール8,8(図1参照)に載架されている。基礎フレーム6のy軸方向両端部には、上記したサーボモータ9がそれぞれ1基ずつ配設されており、一方のサーボモータ9(図2右側)は載置テーブル4を支持する移動フレーム5を、他方のサーボモータ9(図2左側)は載置テーブル4’を支持する移動フレーム5を、それぞれy軸方向に往復移動させる駆動装置である。
【0041】
また、移動フレーム5,5には、基準線z0から所定長さ隔ててエアシリンダ26,26がそれぞれ配設されており、このエアシリンダ26,26の各シリンダロッドには、先端が各載置テーブル4,4’の上面から突出される係合ロッド27,27の下端が連結されている(図7参照)。また、移動フレーム5,5の対向面間には間隙が設けられており、この間隙には、ワークW1,W2の縁端同士を基準線z0で突合わせる前にワークW1,W2の各縁端の向きを補正するために用いられる基準ガイドブロック28が配設されている。
【0042】
図3は、図1のIII−III線における部分断面図であり、図中の一点鎖線は、載置テーブル4、4’にそれぞれ載置されるワークW1,W2の縁端同士を突合わせる場合、その突合わせられた両縁端が一致すべき理想的位置である基準線x0を示しており、この基準線x0はx軸と平行な直線であり、上記した基準線z0と同一平面(x−z平面)内に存在する。
【0043】
図3に示すように、載置テーブル4,4’にはy軸方向に複数のフリーベア25が等間隔に配列され、更に、そのフリーベア25の配列がx軸方向に平行かつ等間隔で複数並設されている。載置テーブル4,4’には、基準線x0の延長方向に平面視長方形状の支持ブロック29,29がそれぞれ延設されている。支持ブロック29,29は、マグネットユニット10,10(図5参照)と共にワークW1,W2を挟み込んでクランプ(固定)するものであり、各ブロック29,29の対向する縁辺が基準線x0と平行とされている。各支持ブロック29,29はともに鋼材などの強磁性体(強磁性材料)で形成されており、後述するマグネットユニット10,10の磁力により磁気誘導を生じて磁化される特性を有している。また、支持ブロック29,29のx軸方向両側には上記した係合ロッド27がそれぞれ配設され、クランプマシン2には合計4本の係合ロッド27が配設されている。
【0044】
図4は、図1のIV−IV線における部分断面図である。図4に示すように、支持ブロック29,29の上面はともに略水平で且つ略面一とされている。また、各支持ブロック29,29の上方にはマグネットユニット10がそれぞれ1基ずつ配設されている。各マグネットユニット10,10の下端部には、支持ブロック29,29の上面にそれぞれ対向配置されるクランプ板30,30が取着され、クランプ板30,30の下面と支持ブロック29,29の上面とは略平行とされている。クランプ板30,30は、マグネットユニット10,10の中でワークW1,W2に直接吸着する部材であり、磁気誘導により磁化される強磁性体で形成されている。
【0045】
また、移動フレーム5,5の下部にはボールねじナット32が1基ずつ固着され、各ボールねじナット32,32には、y軸方向に軸芯が向いたボールねじ軸31が1本ずつ螺合されている。この2本のボールねじ軸31,31は、その基準線z0側の端部が軸受33,33により枢支される一方、その反基準線z0側の端部がそれぞれ異なるサーボモータ9,9に連結されている。このため、サーボモータ9,9を回転駆動することにより、載置テーブル4,4’は、y軸方向へ往復移動できるのである。
【0046】
図5は、図1のV−V線における部分断面図であり、基準ガイドブロック28が退避位置にある状態を示している。図5に示すように、上記した横架フレーム14の下端面のy軸方向両側には上記したガイドレール15がそれぞれ1本ずつ配設され、この2本のガイドレール15,15によって移動フレーム11がx軸方向へ移動可能に横架フレーム14の下方に吊設されている。また、移動フレーム11には、一対のガイドレール15,15の下方に梁部11a,11bがそれぞれ設けられている。梁部11aには、上記したガイドロッド12が貫通して挿嵌されており、そのガイドロッド12の基準線z0側の端部(図5左側)にはブラケット34が取着されている。
【0047】
ブラケット34は、マグネットユニット10を吊下げた状態で支持するものである。このブラケット34には、z軸方向に軸芯が向いたガイドロッド35がz軸方向に摺動可能に挿嵌されており、このガイドロッド35の下端にはマグネットユニット10の上部が取着されている。よって、マグネットユニット10は、ガイドロッド12及びガイドロッド35によりy軸およびz軸方向に往復移動可能とされている。また、梁部11bには、梁部11aと同様に、上記したガイドロッド12、ブラケット34、ガイドロッド35及びマグネットユニット10が装着されており、梁部11aに装着される各部材12,34,35,10と、梁部11bに装着される各部材12,34,35,10とは、基準線z0に関して対称とされている。
【0048】
基準ガイドブロック28のy軸方向両端面には基準面28aと基準面28bとが形成されている。基準面28aは、一方のワークW1(図5右側)の縁端が突当てられる端面であり、基準面28bは、他方のワークW2(図5左側)の縁端が突当てられる端面である。この基準面28a及び基準面28bは、互いに反対方向を向き且つ互いに平行な滑面状に形成されている。
【0049】
図6(a)は、図5のVI−VI線における断面図であり、基準ガイドブロック28の各基準面28a,28bの輪郭形状とワークW1,W2の縁端の輪郭形状との関係を説明するための平面(x−y平面)図である。図6(a)に示すように、ワークW1の縁端E1とワークW2の縁端E2とは共にほぼ直線状の輪郭を有している。このため、かかるワークW1,W2の縁端E1,E2同士の突合わせ溶接では、その理想溶接線Lが基準線x0と一致する直線となる。かかる場合、基準ガイドブロック28の基準面28a及び基準面28bは理想溶接線Lの軌跡と一致する直線状の輪郭に形成される。この基準面28a,28bにワークW1,W2の各縁端E1,E2が突当てられると、各縁端E1,E2の向きが互いに平行となるようにワークW1,W2の姿勢が補正されるのである。
【0050】
図7は、図2のVII−VII線における断面図である。なお、図2のVII’−VII’線における断面図は、図7を左右反転したものと略同一であるので、その説明を省略する。
【0051】
図7に示すように、横架フレーム14に吊設される移動フレーム11は、そのx軸方向中央に上記したブラケット34が配設されている。ブラケット34はx軸方向に長尺状に形成されており、その長手方向両端部に上記したガイドロッド35がそれぞれ1本ずつ挿嵌されている。移動フレーム11には、2本のガイドロッド35,35の内側に一対のエアシリンダ36,36が配設されており、この一対のエアシリンダ36,36は、マグネットユニット10をz軸方向に往復移動させる駆動装置である。
【0052】
このエアシリンダ36,36のシリンダロッド36a,36aはz軸下方へ突出され、各シリンダロッド36a,36aの先端にはマグネットユニット10の上部が取着されている。このマグネットユニット10にはx軸方向に複数枚(例えば合計11板)のクランプ板30が若干の隙間(数mm程度)を隔てて隣接して並設されており、複数枚のクランプ板30が支持ブロック29のx軸方向ほぼ全域に渡って設けられている。ここで、図8を参照して、マグネットユニット10の詳細について説明する。
【0053】
図8(a)は、図7に示すマグネットユニット10を部分的に断面視した拡大図である。図8(a)に示すように、マグネットユニット10は、その筐体40に複数基(例えば合計11基)の磁石モジュール41がx軸方向に並設されており、各磁石モジュール41は、クランプ板30が下端に取着される磁石本体42と、その磁石本体42を筐体40にz軸方向へ上下動可能に吊設するホルダ部材43とを備えている。磁石本体42は強磁性体で形成された略円柱状体であり、その軸芯がz軸方向を向いている。磁石本体42の内部には、その磁石本体42の中心軸周りに軸芯部42aが設けられ、この軸芯部42aの外周にコイル42bが巻回されている。尚、各磁石モジュール41は個々に独立したものである。
【0054】
磁石本体42によれば、コイル42bの外周に円筒状の外壁部42cが設けられており、この外壁部42cと軸芯部42aとが一体形成され、この軸芯部42a及び外壁部42cの下端にはクランプ板30の上面が当接して取着されている。よって、コイル42bに通電すると、軸芯部42a、外壁部42c及びクランプ板30が磁化されるのである。また、磁石本体42は、筐体40の底板40bに設けられた円筒状のスリーブ44内にz軸方向へ摺動可能に内設され、この磁石本体42の上方には磁石本体42の上端面と間隔を隔てて筐体40の天板40aが設けられている。
【0055】
ホルダ部材43は、磁石本体42と連結されるロッド43aと、そのロッド43aを付勢する弾性スプリング43bと、その弾性スプリング43bをロッド43aに係止する係止ナット43cとを備えている。ロッド43aの下端には磁石本体42の上端が取着されており、このロッド43aの上端部は天板40aを貫通して筐体40の上方へ突出されている。このロッド43aの上端部には、係止ナット43cが螺合され、この係止ナット43cと天板40aとの間に圧縮バネで構成された弾性スプリング43bが介装されている。この弾性スプリング43bの弾性復元力によって、磁石モジュール41はz軸方向上方(支持ブロック29から離間する方向)へ向けて付勢されている。
【0056】
図8(b)は、図8(a)のB−B線における断面図である。図8(b)に示すように、筐体40の天板40aには、各磁石モジュール41に対応して1本ずつ調節ボルト45が複数螺合され、この各調節ボルト45の頭部は天板40aから各磁石本体42の上端面へ向けて突出されている。しかも、調節ボルト45の頭部には磁石本体42の上端面が当接しており、磁石本体42のz軸方向上方へ向けた移動を規制している。よって、この調節ボルト45の突出量を調節することにより、クランプ板30のz軸方向の位置を変更でき、クランプ板30と支持ブロック29間の遊間85,86(図10参照)の幅を、ワークW1,W2の厚みt1,t2に応じて変更することもできるのである。
【0057】
図7に戻って説明する。マグネットユニット10のx軸方向両側には、その支持ブロック29のx軸方向両側から突出される係合ロッド27,27との対向位置にブラケット37,37が配設されており、各ブラケット37には係合ロッド27を挿入可能な係合孔37aが穿設されている。上記したエアシリンダ26により係合ロッド27を上方へ突出させ係合孔37aに挿入すると、係合ロッド27とブラケット37とが係合されるので、かかる係合によりz軸方向上下に対向配置される載置テーブル4’とマグネットユニット10とを一体的に連結することができる。
【0058】
更に、基準ガイドブロック28は、クランプマシン2のx軸方向に左右対称に一対配設されている。各基準ガイドブロック28のx軸方向両側からは軸芯がz軸方向を向いたガイドロッド38,38が下方に垂設されており、このガイドロッド38,38は、基礎フレーム6に摺動可能にそれぞれ取着されている。2本のガイドロッド38,38の間には、基礎フレーム6に固定されたエアシリンダ39が配設されており、このエアシリンダ39は基準ガイドブロック28をz軸方向へ昇降させる駆動装置である。このエアシリンダ39はシリンダロッド39aがz軸上方へ突出され、そのシリンダロッド39aの先端は基準ガイドブロック28の下部に連結されている。
【0059】
図9は、レーザ溶接機1の電気的構成を示したブロック図である。レーザ溶接機1は、クランプマシン2の各部位の位置制御やトルク制御を行う制御ユニット50を備え、この制御ユニット50は、主に、CPU51と、ROM52と、RAM53と、入出力ポート54と、モニタ55と、入力ユニット56と、インターフェイス57とを備えている。制御ユニット50のCPU51、ROM52、RAM53は、バスラインを介して相互に接続されており、このバスラインは、入出力ポート54にそれぞれ接続されている。入出力ポート54には、更にモニタ55と、入力ユニット56と、インターフェイス57と、モータドライバ58〜60と、電流検出回路61,62と、エンコーダ63〜65と、電磁弁ドライバ66と、マグネットドライバ83,84とが接続されている。
【0060】
CPU51は、ROM52に記憶されている制御プログラムに従って入出力ポート54に接続された各部を制御し、クランプマシン2及び溶接ユニット3の各部の動作を実行する演算装置である。ROM52は、このレーザ溶接機1で実行される制御プログラムや固定値データなどを格納した書換え不能な不揮発性メモリであり、RAM53は、レーザ溶接機1の各動作の実行時に各種のデータを一時的に記憶するための書換可能な揮発性メモリである。このRAM53には、移動フレーム5を駆動するサーボモータ9をトルク制御する場合に、そのサーボモータ9の出力を最大トルク値未満に制限するために設定される制限トルク値を記憶するための制限トルク値メモリ53aが設けられている。なお、RAM53は、図示しないバックアップ電源により常時電力供給されており、RAM53に記憶されるデータはレーザ溶接機1の電源オフ後も保持される。
【0061】
モニタ55は、レーザ溶接機1の動作制御時に必要となる各種のパラメータの設定状況や、その他のレーザ溶接機1に関する各種情報を表示するための表示装置であり、入力ユニット56は、各種パラメータの入力操作や、レーザ溶接機1を手動操作する場合に作業員により操作されるものである。また、インターフェイス57は、クランプマシン2によりクランプされたワークW1,W2をレーザ光により溶接する溶接ユニット3との間で各種信号やデータを送受信するためのものであり、溶接ユニット3と接続されている。
【0062】
モータドライバ58,59は、直流電動機であるサーボモータ9の駆動電流を制御する駆動回路であり、モータドライバ60は、直流電動機であるサーボモータ18の駆動電流を制御する駆動回路である。モータドライバ58,59の出力端には、サーボモータ9,9がそれぞれ1基ずつ接続されると共に、そのモータドライバ58,59から各サーボモータ9,9へ流れる電流値を検出する電流検出回路61,62が接続されている。各サーボモータ9,9の出力トルク値は、この電流検出回路61,62による検出電流値から算定される電機子電流値に基づいて求めることができる。
【0063】
エンコーダ63〜65は、サーボモータ9,9,18の回転変位を検出するためのセンサであり、このエンコーダ63〜65により検出された回転変位に基づいて、載置テーブル4,4’のy軸方向座標値や、マグネットユニット10,10のx軸方向座標値を求めることができる。制御ユニット50では、この求められた座標値に基づいて、サーボモータ9,9,18の回転量を調節して、載置テーブル4,4’(又は移動フレーム5,5)やマグネットユニット10,10(又は移動フレーム11)を目標位置に位置制御している。
【0064】
電磁弁ドライバ66は、4基のエアシリンダ13、4基のエアシリンダ26,4基のエアシリンダ36及び4基のエアシリンダ39にそれぞれ1基ずつ接続される電磁弁67〜82を制御する駆動回路である。また、電磁弁67〜82は、各エアシリンダ13,26,36,39のシリンダロッドを往復動作させるために圧縮空気の供給経路を切り換えると共に、その圧縮空気の供給停止して各エアシリンダ13,26,36,39のシリンダロッドを遊動可能にするものである。また、マグネットドライバ83,84は、マグネットユニット10,10の各磁石モジュール41への通電量を調節して、各磁石モジュール41が生じる磁力を変更するための回路である。
【0065】
次に、上記のように構成されたレーザ溶接機1の動作について説明する。以下の説明で用いる図10から図14は、図5に示したレーザ溶接機1の各部が動作した場合における断面図である。まず、サーボモータ18が回転され、移動フレーム11がx軸方向上流側(図1右側)へ移動されて、移動フレーム11が前段テーブル19の上方位置(図1中の2点鎖線)で位置決めされる。前段テーブル19上にはy軸方向に並べられた2枚のワークW1,W2(図示せず)が載置されており、移動フレーム11の停止後、エアシリンダ36,36,36,36によりマグネットユニット10,10が下降されて、マグネットドライバ83,84によりマグネットユニット10,10の各磁石モジュール41に通電がなされる。
【0066】
一方、この通電と共に、複数本のプッシュロッド20によるワークW1,W2の押し上げを行うと、一方のマグネットユニット10の各クランプ板30にワークW1が吸着され、他方のマグネットユニット10の各クランプ板30にはワークW2が吸着される。この吸着後、エアシリンダ36,36,36,36によりマグネットユニット10,10を上昇させ、且つ、プッシュロッド20を下降させると、ワークW1,W2が前段テーブル19の上方に吊り上げられる。ワークW1,W2の吊り上げ後、サーボモータ18が回転され、移動フレーム11がx軸方向下流側(図1左側)へ移動されて、移動フレーム11が載置テーブル4,4’の上方位置(図1中の実線)で位置決めされると、レーザ溶接機1は、図5に示した状態となる。
【0067】
図5に示した状態において、4本の係合ロッド27(図3参照)の上方には上記した4つブラケット37の係合孔37aがそれぞれ位置決めされており、4基のエアシリンダ26によって、4本の係合ロッド27が最上位置に上昇されると、各係合孔37aに各係合ロッド27が挿入されて、互いに対向する係合ロッド27とブラケット37同士が係合される。この結果、図5において基準線z0よりy軸方向上流側(図5右側)に配設される載置テーブル4とマグネットユニット10とが一体的に連結され、図5において基準線z0よりy軸方向下流側(図5左側)に配設される載置テーブル4’とマグネットユニット10とが一体的に連結される。
【0068】
この後、電磁弁67〜70が電磁弁ドライバ66により中立状態に切り換えられると、各エアシリンダ13,13,13,13はシリンダロッドがy軸方向へ遊動可能な状態となる。この結果、載置テーブル4,4’を支持する移動フレーム5,5がサーボモータ9,9によりy軸方向へ移動される場合に、一方のマグネットユニット10(図5右側)が載置テーブル4と一緒に、他方のマグネットユニット10(図5左側)が載置テーブル4’と一緒に、y軸方向へ移動自在な状態となるのである。しかも、ワークW1,W2の突合わせ時に、マグネットユニット10,10が載置テーブル4,4’に対して相対的にy軸方向へ位置ズレすることがなく、その結果、ワークW1,W2の突合わせ精度を確保できる。
【0069】
その後、エアシリンダ36,36,36,36によりマグネットユニット10,10が最下位置まで下降されると、レーザ溶接機1は、図10に示す状態となる。図10に示すように、マグネットユニット10,10が最下位置に至った状態で、ワークW1を挟んで対向するクランプ板30及び支持ブロック29間にはワークW1の厚みt1より大きな遊間85が確保され、ワークW2を挟んで対向するクランプ板30及び支持ブロック29間にはワークW2の厚みt2より大きな遊間86が確保されている。
【0070】
そこで、遊間85,86を確保したまま、エアシリンダ39,39によって、基準ガイドブロック28を図10に示した最下位置(退避位置)から図11に示した最上位置(当接位置)まで上昇させると、図11に示すように、基準ガイドブロック28の基準面28aがワークW1の縁端E1と対向される一方、基準面28bがワークW2の縁端E2と対向される。図11に示すように、ワークW1,W2は、その縁端E1、E2が支持ブロック29,29の先端面及びクランプ板30,30の先端面より基準ガイドブロック28配設側に突出された状態でクランプ板30,30にそれぞれ吸着されている。
【0071】
支持ブロック29,29はクランプ板30,30より基準ガイドブロック28の配設側に若干突出されるので、移動フレーム5,5を、位置制御によって、図11に示す退避位置から支持ブロック29,29の先端面が基準面28a,28bに当接する直前位置(図12参照)に位置決めするように移動させると、その移動の最中に、基準ガイドブロック28の基準面28aにワークW1の縁端E1が突当てられ、基準ガイドブロック28の基準面28bにワークW2の縁端E2が突当てられる。
【0072】
この際に、マグネットユニット10,10の各磁石モジュール41の磁力は、マグネットドライバ83,84によって、各クランプ板30上でワークW1,W2が摺動可能な程度の弱磁力に調節されているので、基準面28a,28bに対してワークW1,W2の縁端E1,E2がx−y平面内で傾いている場合、ワークW1,W2がクランプ板30上を摺動して、その縁端E1,E2が基準面28a,28bに正対する姿勢に位置補正できる。
【0073】
この結果、ワークW1,W2の縁端E1,E2は、基準線x0(理想溶接線L)に一致する向きに補正される。しかも、ワークW1,W2の縁端E1、E2が基準ガイドブロック28に突当てられてクランプ板30上を摺動する場合、支持ブロック29,29とクランプ板30,30との間には上記した遊間85,86が設けられるので、ワークW1,W2と支持ブロック29,29とが擦れて損傷することを防止することができる
【0074】
図12に示すように、ワークW1,W2を基準ガイドブロック28に突当てて姿勢補正した後は、マグネットドライバ83,84によってマグネットユニット10,10の各磁石モジュール41の磁力が強磁力に変更されると、その各磁石モジュール41により磁化された各クランプ板30及びワークW1,W2の磁界の影響を受けて各支持ブロック29,29が磁化される。この磁化によってワークW1,W2とそれに上下に対向する支持ブロック29,29との間には磁気的な引力(磁気引力)が生じる。
【0075】
これによって、各マグネットユニット10,10の各磁石本体42は、弾性スプリング43bの付勢力に抗して各スリーブ44内を摺動し、支持ブロック29,29側へ引き寄せられる。この引き寄せによって、マグネットユニット10,10の各クランプ板30と各支持ブロック29,29間の遊間85,86が縮小された結果、図13に示すように、ワークW1,W2が各マグネットユニット10,10の磁化されたクランプ板30と磁化された支持ブロック29,29との間に吸着されつつ強固に拘束される。
【0076】
ワークW1,W2をマグネットユニット10,10及び支持ブロック29,29間にて拘束した後は、図13に示すように、移動フレーム5,5を位置制御することによって図12に示す位置から図13に示す退避位置まで移動させた後、更に、エアシリンダ39,39により基準ガイドブロック28を最下位置まで下降させる。このため、ワークW1,W2の縁端E1、E2は、基準ガイドブロック28の下降前に基準面28a,28bから充分に離間されるので、基準ガイドブロック28の下降によりワークW1,W2の縁端E1、E2と基準面28a,28bとが擦れて損傷することを防止できる。
【0077】
基準ガイドブロック28の下降が完了した後は、移動フレーム5,5を基準線z0側へ向けて移動させて、ワークW1,W2の縁端E1,E2同士が突合わせられる。ここで、移動フレーム5,5のいずれか一方、例えば、載置テーブル4を支持する移動フレーム5(図13右側)の制御方式は、サーボモータ9による位置制御方式から、そのサーボモータ9の出力トルクを制限トルク値メモリ53aに記憶される制限トルク値以下に制限するトルク制御方式に切り換えられる。なお、かかるトルク制御方式は、サーボモータ9の出力トルクを制限トルク値メモリ53aに記憶される値に一致するように制御するものであっても良い。
【0078】
このため、載置フレーム4を支持する移動フレーム5はトルク制御されたサーボモータ9によりy軸方向下流側(図13左方)へ向けて移動される一方、載置テーブル4’を支持する移動フレーム5(図13左側)は、サーボモータ9を駆動装置とした位置制御によって、ワークW2の縁端E2が基準線z0に一致するようにy軸方向上流側(図13右方)へ移動される。この移動によりワークW1,W2の縁端E1,E2同士が図14に示すように突き合わさると、基準線z0上にてワークW1の縁端E1がワークW2の縁端E2に制限トルク値以下の押圧力によって押し当てられる。よって、本来は直線状であるべきワークW1,W2の縁端E1,E2に湾曲やバリが存在しても、かかる湾曲やバリをワークW1,W2間の押圧により圧潰させることができ、縁端E1,E2間の密着度を高めることができる。
【0079】
図14に示すように、ワークW1,W2の縁端E1,E2同士が突き合わさると、溶接ユニット3のレーザヘッド3aが下降され、レーザヘッド3aによって縁端E1,E2間にレーザ光が照射されつつ、溶接ユニット3がサーボモータ24によってx軸方向上流側(図1右側)から下流側(図1左側)へ移動されて、ワークW1,W2の縁端E1,E2が溶接される。この溶接時においても、突き合わさったワークW1,W2の縁端E1,E2間には押圧力が作用しているので、レーザ光により溶融された金属が溶け込んで各縁端E1,E2間に残存する隙間を更に縮減できる。また、ワークW2を拘束した載置テーブル4’を駆動するサーボモータ9は最大トルクまで出力可能であるので、ワークW1の押圧力で押し戻されることがなく、ワークW1,W2の縁端E1,E2の突合わせ位置が基準線z0からズレ動くこともない。
【0080】
溶接終了後は、レーザヘッド3aが上昇され、マグネットドライバ83,84により、マグネットユニット10,10の各磁石モジュール41への通電が停止される。これにより、各磁石モジュール41の磁力がなくなり、接合されたワークW1,W2がマグネットユニット10,10から離脱して、載置テーブル4,4’上に載置される。この後は、4基のエアシリンダ36によりマグネットユニット10,10が最上位置へ上昇される一方、4基のエアシリンダ26によって、4本の係合ロッド27が最下位置に下降され、各係合孔37aから各係合ロッド27が抜脱される。
【0081】
この結果、載置テーブル4,4’がマグネットユニット10,10とはそれぞれ別々に移動可能となり、その後、電磁弁67〜70が電磁弁ドライバ66により切り換えられて、各エアシリンダ13,13,13,13によって各マグネットユニット10,10がそれぞれ図5に示した位置まで移動される。一方、載置テーブル4,4’を支持する移動フレーム5,5は、溶接後のワークW1,W2が次工程へ搬送された後、サーボモータ9,9によって図5に示す位置までそれぞれ移動される。この後、次のワークW1,W2が前段テーブル19から取り寄せる動作が再び行われる。
【0082】
以上説明したように、本実施例のレーザ溶接機1によれば、従来のように、クランプマシン2によって、ワークW1,W2のいずれか一方の縁端のみを基準ガイドブロック28に突当てて姿勢を補正し、その姿勢補正された一方のワークの縁端を基準面として、他方のワークの姿勢を補正することもできる。しかしながら、本実施例では、クランプマシン2により突合わせられる2枚一組のワークW1,W2は、それぞれ基準ガイドブロック28の基準面28a,28bに別々に突当てられて、それぞれの姿勢が突合わせに適した向きに補正される。
【0083】
このため、ワークW1,W2の一方を基準として他方の姿勢補正を行う従来方式や従来方法のように、非基準側のワークの縁端が傾いたまま、基準側のワークの縁端に突き当たって基準側のワークの縁端が傷付けられるような事故を防止できる。しかも、ワークW1,W2は基準ガイドブロック28に別々に突当てられて姿勢補正(位置補正)されるので、従来方式や従来方法に問題となっていた突合せ時のワーク同士の重なりや乗り上げ現象の発生が防止でき、ワークW1,W2の突合せ時における精度安定性を著しく向上でき、装置の稼働率も向上でき、更に、不良の発生率の削減を達成できるのである。
【0084】
また、弾性スプリング43bによる磁石本体42の付勢力は、ワークW1,W2が支持ブロック29及びクランプ板30の双方に吸着されて拘束される状態(本クランプ状態)での各磁石モジュール41の吸着力の略2.5%程度と極めて弱く、図12に示したようにワークW1,W2が吸着されたクランプ板30を、支持ブロック29から遊間85,86だけ離間させた状態(仮クランプ状態)で吊り上げるために必要な最低限の力とされている。よって、弾性スプリング43bの付勢力が、それとは逆方向に作用する磁石モジュール41の磁気引力の大きな損失となることはない。なお、本実施例では、本クランプ時における弾性スプリング43bの付勢力は略5kgf程度とされ、これに対して磁石モジュール41のクランプ板30によるワークの吸着力は略200kgf程度とすることができる。
【0085】
しかも、上記の通り、ワークW1,W2の本クランプ時には、複数基(合計22基)の磁石モジュール41の磁力を使用するので、支持ブロック29とクランプ板30との間に磁気引力は生じるが、かかる磁気引力の反力がマグネットユニット10や支持ブロック29を支える構造体、各部材4,4’,5,5,6,11,14などに作用することがない。よって、その分、レーザ溶接機1全体としての各部を低剛性化できる。従って、レーザ溶接機1では、クランプマシン2、溶接ユニット3及びワークW1,W2の搬送装置として機能する移動フレーム11などの機能が異なる複数の装置を、各装置の設計上要求される精度を損なうことなく、同一のフレーム構造体に集約させることができる。
【0086】
また、ワークW1,W2の縁端E1,E2同士を突合わせる場合に、例えば、基準側となるワークW2をクランプするマグネットユニット10の各磁石モジュール41の磁力に比べて、非基準側となるワークW1をクランプするマグネットユニット10の各磁石モジュールの磁力を若干弱めておけば、非基準側のワークW1が支持ブロック29とクランプ板30との間で若干ズレ動くことを許容することもできる。この場合、基準側のワークW2を拘束するマグネットユニット10の各磁石モジュール41に定格以上の電圧を印加して強磁力を発生させることもできる。
【0087】
また、ワークW1,W2の縁端E1,E2同士を突合わせる場合(図14参照)、マグネットドライバ83,84によって、一方のマグネットユニット10の各磁石モジュール41と、他方のマグネットユニット10の各磁石モジュール41とを反対の極性に磁化させることができる。かかる場合には、一方のマグネットユニット10により磁化されるワークW1と、他方のマグネットユニット10により磁化されるワークW2とは、それぞれ反対の極性に磁化されるので、この磁化により両ワークW1,W2の縁端E1,E2間に生じる磁気引力によって両ワークW1,W2の縁端E1,E2同士を吸着でき、結果、突合わせ後の両ワークW1,W2の縁端E1,E2間の隙間を更に低減できる。
【0088】
また、マグネットユニット10の各磁石モジュール41は、その各ホルダ部材43によってそれぞれが独立した状態で筐体40に吊設されるので、マグネットユニット10や、磁石モジュール41や、磁石本体42や、ホルダ部材43などの機械的精度が多少悪くても、確実にワークW1,W2をクランプすることができる。また、ワークW1,W2のx軸方向両端をガイドせずにワークW1,W2の縁端E1,E2同士を突合わせるので、ワークW1,W2のx軸方向両端をガイドすることにより生じる変形や歪みを防止でき、かかる変形や歪みに起因するワークW1,W2同士の突合わせ精度の低下を防止できる。
【0089】
ところで、ワークW1,W2の縁端E1,E2の突合わせ面が理想溶接線L(基準線x0,z0)に対して位置ズレすると、レーザヘッド3aから照射されるレーザ光が支持ブロック29,29と干渉して、レーザ光の出力低下を起こして溶接不良が発生する虞がある。しかしながら、本実施例のレーザ溶接機1では、上記のようにワークW1,W2の突合わせ精度が向上されるので、かかるワークW1,W2の縁端E1,E2の突合わせ面が理想溶接線L(又は基準線x0,z0)に対してより正確に一致させることができ、レーザ光と支持ブロック29,29との干渉に起因する溶接不良を防止できる。
【0090】
また、上記のクランプマシン2により高精度に突合わせられたワークW1,W2は、ワークW1,W2の縁端E1,E2のシーム部(接合部)に追従して移動されるレーザヘッド3aにより溶接されるので、溶接時の安定性を飛躍的に向上でき、溶接不良の発生を更に低減できる。
【0091】
次に、上記実施例の変形例について説明する。第2実施例のレーザ溶接機は、上記した第1実施例のレーザ溶接機1に対して、図14に示したワークW1,W2の縁端E1,E2を突合わせる場合における移動フレーム5,5の制御方式をいずれもサーボモータ9,9による位置制御に変更したものである。具体的には、第2実施例のレーザ溶接機1では、載置フレーム4,4’を支持する移動フレーム5,5を別々にサーボモータ9,9により駆動して別々に位置制御することによって、ワークW1,W2の縁端E1,E2が基準線x0,z0に一致するように位置制御している。
【0092】
ワークW1,W2の縁端E1,E2の加工精度が許容限度内である場合、第1実施例のようにトルク制御によってワークW1をワークW2に押圧させて、その縁端E1,E2の湾曲やバリを圧潰させずとも、縁端E1,E2間の密着度を充分に確保することが可能な場合がある。かかる場合には、上記したように移動フレーム5,5を別々にサーボモータ9,9により駆動して別々に位置制御することによって、ワークW1,W2の縁端E1,E2を最小限の力で突合わせることができるので、トルク制御による弊害であるワークW1,W2の材料の曲がりを防止できる。また、溶接熱によるワークW1,W2の熱膨張で支持ブロック29,29及びマグネットユニット10,10を介してサーボモータ9,9に加わる反力を、トルク制御によるトルク制限を受けずにサーボモータ9,9の最大出力トルクの範囲内で担うことができる。
【0093】
第3実施例のレーザ溶接機は、上記した第2実施例のレーザ溶接機がワークW1,W2の縁端E1,E2を基準線x0,z0に一致させるように移動フレーム5,5を位置制御するのに対して、移動フレーム5,5を位置制御する場合にワークW1,W2の縁端E1,E2の目標位置を基準線x0,z0から若干量だけ偏移して、ワークW1,W2間に若干の押し当て力を作用させたものである。以下、第1及び第2実施例と同一の部分には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる部分のみを説明する。
【0094】
図15は、第3実施例のレーザ溶接機100の電気的構成を示したブロック図である。図15に示すように、RAM101には、移動フレーム5,5を位置制御する場合、ワークW1,W2の縁端E1,E2が位置決めされるy軸方向の目標位置と基準線x0,z0との偏移量(偏差)を記憶するオフセットメモリ101aが設けられている。このオフセットメモリ101aには、例えば0mm〜0.2mm程度の値が偏移量として記憶(設定)されている。
【0095】
第3実施例のレーザ溶接機100は、移動フレーム5,5を位置制御する場合、ワークW1の縁端E1のy軸方向の目標位置を基準線x0,z0よりy軸方向下流側にオフセットメモリ101aの値分だけ偏移させる一方、これと同様に、ワークW2の縁端E2のy軸方向の目標位置を基準線x0,z0よりy軸方向上流側にオフセットメモリ101aの値分だけ偏移させる。すると、この双方の偏移量に応じてサーボモータ9,9の出力トルクを増加させ、この増加分の出力トルクでワークW1,W2の縁端E1,E2面間に若干の押し付け力を付与すことができる。しかも、かかる場合にあっても、溶接熱によるワークW1,W2の熱膨張で支持ブロック29,29及びマグネットユニット10,10を介してサーボモータ9,9に加わる反力を、トルク制御によるトルク制限を受けずにサーボモータ9,9の最大出力トルクの範囲内で担うことができるのである。
【0096】
図6(b)は、第4実施例のレーザ溶接機における基準ガイドブロック28の各基準面28a,28bの輪郭形状とワークW1,W2の縁端の輪郭形状との関係を説明するための平面(x−y平面)図である。第4実施例のレーザ溶接機は、上記した第1実施例に対して、基準ガイドブロック28の形状を変更したものである。図6(b)に示すように、ワークW1の縁端E1とワークW2の縁端E2とが互いにほぼ合致する凹凸状(図中では曲線状で図示している)の輪郭を有する場合、これらの縁端E1,E2同士の突合わせ溶接では、その理想溶接線Lが縁端E1,E2の輪郭と略一致する凹凸状となる。かかる場合、基準面28a及び基準面28bの輪郭が理想溶接線Lの軌跡に略一致するように形成されると、基準面28aの輪郭はワークW2の縁端E2の輪郭に、基準面28bの輪郭はワークW1の縁端E1の輪郭に適合した形状となる。
【0097】
よって、このように形成された基準面28a,28bにワークW1,W2の各縁端E1,E2が突当てられれば、凹凸状の縁端E1,E2同士であっても正確に突合わせることができる。しかも、ワークW1,W2は、ワークW1,W2の縁端E1,E2のシーム部(接合部)に追従して移動されるレーザヘッド3aにより溶接されるので、ワークW1,W2の縁端E1,E2が凹凸状であるために溶接線が凹凸状となっても、レーザ光による溶接を実現することができる。
【0098】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0099】
例えば、本実施例のレーザヘッド3aにツインスポットビーム方式を採用すれば、レーザヘッド3aによる本溶接を行う以前に、ワークW1,W2のシーム部のバリ等を溶かし込みを行うことができ、これによりワークW1,W2の突合せ精度を更に向上させることができる。また、レーザヘッド3aがシングルスポット方式であっても、ヤグレーザ方式を採用することによって、ツインスポットビーム方式と同様の効果を得ることができる。
【0100】
また、本実施例では、マグネットユニット10,10を上方に、支持ブロック29,29を下方に配設したが、これらの位置関係は必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、マグネットユニットと支持ブロックとを上下入れ替えて配設しても良い。また、本実施例では、マグネットユニット10,10に対向する側に各磁石モジュール41により磁化される支持ブロック29,29を配設したが、かかる支持ブロック自体を磁石としても良い。また、本実施例では、クランプ板30及び支持ブロック29の対向面を互いに平行な平面に形成したが、かかるクランプ板及び支持ブロックの対向面は必ずしも平面に限られるものではなく、クランプするワークの凹凸形状に適合する面形状に形成しても良い。
【0101】
また、本実施例では、磁石モジュール41として電磁石を採用したが、かかる磁石モジュールは必ずしも電磁石に限定されるものではなく、磁力を強弱させることが可能であれば永久磁石や永電磁マグネットを採用しても良い。例えば、永久磁石を採用する場合には、クランプ板を磁化させる永久磁石と、その永久磁石をz軸方向に上下させる移動機構とを磁石モジュール内に設け、その移動機構をマグネットドライバにより制御して上下させることで、クランプ板に作用する永久磁石の磁界の強さを調節して、クランプ板の吸着力を調節するのである。
【0102】
また、永電磁マグネットを採用する場合には、クランプ板を磁化させる永久磁石と、その永久磁石の磁界を相殺する電磁石とをマグネットモジュール内に設け、その電磁石への通電量をマグネットドライバにより制御することで、電磁石が発生する磁界の強度を調節して、クランプ板の吸着力を調節するのである。
【0103】
また、第3実施例では、ワークW1,W2を突合わせる場合において基準線x0,z0に対する縁端E1,E2の偏移量、即ち、オフセットメモリ101aに記憶される値を、例えば、略0mm〜0.2mm程度とする旨説明したが、かかる値は、必ずしもこの数値に限定されるものではなく、レーザ光の光線幅やバリの突出量に応じて適宜変更しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の突合わせ装置の一実施例であるクランプマシンを装備したレーザ溶接機の正面図である。
【図2】図1のII−II線における部分的な側断面図である。
【図3】図1のIII−III線における部分断面図である。
【図4】図1のIV−IV線における部分断面図である。
【図5】図1のV−V線における部分断面図である。
【図6】(a)は、図5のVI−VI線における断面図であって基準ガイドブロックの各基準面の輪郭形状と各ワークの縁端の輪郭形状との関係を説明するための平面図であり、(b)は、第4実施例のレーザ溶接機における基準ガイドブロックの各基準面の輪郭形状と各ワークの縁端の輪郭形状との関係を説明するための平面図である。
【図7】図2のVII−VII線における断面図である。
【図8】(a)は、図7に示すマグネットユニットを部分的に断面視した拡大図であり、(b)は、(a)のB−B線における断面図である。
【図9】レーザ溶接機の電気的構成を示したブロック図である。
【図10】図5に示すレーザ溶接機の動作状態を示す断面図である。
【図11】図5に示すレーザ溶接機の動作状態を示す断面図である。
【図12】図5に示すレーザ溶接機の動作状態を示す断面図である。
【図13】図5に示すレーザ溶接機の動作状態を示す断面図である。
【図14】図5に示すレーザ溶接機の動作状態を示す断面図である。
【図15】第3実施例のレーザ溶接機の電気的構成を示したブロック図である。
【符号の説明】
【0105】
2 クランプマシン(ワーク突合わせ装置)
9,9 サーボモータ(第1駆動手段の一部、第2駆動手段の一部)
31,31 ボールねじ軸(第1駆動手段の一部、第2駆動手段の一部)
10,10 マグネットユニット(第1クランプの一部、第2クランプの一部)
27 係合ロッド(第1クランプの一部、第2クランプの一部)
29,29 支持ブロック(強磁性体)
30 クランプ板(磁石の一部)
37 ブラケット(第1クランプの一部、第2クランプの一部)
42 磁石本体(磁石の一部、電磁石)
51 CPU(制御手段の一部、第1制御手段の一部、第2制御手段の一部)
52 ROM(制御手段の一部、第1制御手段の一部、第2制御手段の一部)
53a 制限トルク値メモリ(閾値記憶手段、制御手段の一部)
54 入出力ポート(制御手段の一部、第1制御手段の一部、第2制御手段の一部)
58,59 モータドライバ(制御手段の一部、第1制御手段の一部、第2制御手段の一部)
61,62 電流検出回路(動力検知手段、制御手段の一部)
63,64 エンコーダ(制御手段の一部、第1制御手段の一部、第2制御手段の一部)
101a オフセットメモリ(偏移量設定手段)
E1,E2 ワークの縁端(第1ワークの縁端、第2ワークの縁端)
L 理想溶接線
W1,W2 ワーク(第1ワーク、第2ワーク)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2ワークの縁端同士を理想溶接線に一致するように突合わせるワーク突合わせ装置において、
理想溶接線を挟んだ一方側に配設され第1ワークを挟持する第1クランプと、
その第1クランプから離間して理想溶接線を挟んだ他方側に配設され第2ワークを挟持する第2クランプと、
その第2クランプ側へ向けて前記第1クランプを直線移動させる動力を付与する第1駆動手段と、
前記第1クランプにより挟持される第1ワークの縁端が理想溶接線より前記第2クランプ側に所定量偏移するように前記第1駆動手段を制御する第1制御手段と、
その第1制御手段により制御される前記第1クランプ側へ向けて前記第2クランプを直線移動させる動力を付与する第2駆動手段と、
前記第2クランプにより挟持される第2ワークの縁端が理想溶接線より前記第1クランプ側に所定量偏移するように前記第2駆動手段を制御する第2制御手段と、
その第2制御手段および第1制御手段によって第1及び第2ワークの縁端を理想溶接線から偏移させる偏移量をそれぞれ等しい値に設定する偏移量設定手段とを備えていることを特徴とするワーク突合わせ装置。
【請求項2】
前記第1及び第2クランプは、ワークを吸着する磁石とその磁石に対向配置される強磁性体とを有し、その強磁性体及び磁石間にワークを挟持するものであることを特徴とする請求項1記載のワーク突合わせ装置。
【請求項3】
前記第1クランプの磁石は、前記第2クランプの磁石とは反対の極性を有していることを特徴とする請求項2記載のワーク突合わせ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−119752(P2008−119752A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−340515(P2007−340515)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【分割の表示】特願2003−95244(P2003−95244)の分割
【原出願日】平成15年3月31日(2003.3.31)
【出願人】(591033010)株式会社小矢部精機 (8)