説明

一体同時硬化複合材翼

一体同時硬化複合材翼が開示される。翼は飛翼面および構造部材を有する。一実施形態において、構造部材は複数の桁であり得る。桁は様々な形状を有し、座屈強度を増加させる。桁は、正弦曲線型のような波型の形状であり得る。飛翼面および構造部材は一体同時硬化、一体翼構造を形成するために、同時に硬化される。一体同時硬化複合材翼を製造するための方法も開示される。前記方法は翼の飛翼面のための複合材シートの設計を含む。その後、桁の複合材料が複数の加圧可能フォームの周囲に配置される。最後に、複合材料はクラムシェルフレームにおいて硬化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、翼構造に関連する。詳しくは、本発明は一体同時硬化を成す複合翼構造体に関連する。
【背景技術】
【0002】
航空機の翼の設計には、その設計上において困難な問題がある。効率的な翼を設計するためには、複数の要素がバランスよく保たれなければならない。一つ考慮すべき点は、翼の形状である。翼は、目的の揚力を作り出すために適切な翼型を備えていなければならない。翼の飛翼面(flying surface)は空気の流れを阻害しないようなものでなくてはならない。また、翼は胴体の重量を持ち上げるだけの十分な強度も備えていなければならない。更に、航空機の翼の多くは燃料タンクとしての役割も果たしており、翼の設計を複雑なものにしている。これらの航空機の翼の設計を困難にしているパラメータを複合することが、可能な限り軽量な翼を形成するために望まれることである。
【0003】
航空機の翼は、通常、飛翼面と様々な構造部材とから構成されている。前記構造部材は、翼の内部で互いに交差する桁およびリブを含む。前記桁、およびリブは共に、飛翼面から航空機の胴体へ揚力を伝える役割を果たしている。前記桁、およびリブは、アルミニウムのような機械加工された金属から成ることが多く、高精度で、かつ負荷要求に見合うように製造される。翼の飛翼面も同様に金属から成り、翼型を決定するために構造部材に取り付けられる。
【0004】
飛翼面を構造部材に取り付けるには、飛翼面、および構造部材に何千もの穴を開けるのが通常である。従って、何千ものリベットが必要になり、前記リベットをそれぞれの穴に手作業で配置していくことが多い。翼に何千もの穴を開ける処理と、それぞれの穴に何千ものリベットを挿入していく処理は、実質的には翼の製造コストを引き上げている。加えて、翼に開けたそれぞれの穴は飛翼面、および構造部材を弱めることになる。更に、翼に対する部品の数が増加することによって、欠陥である部品も同様に増加することになる。現在の翼の設計に関する別の不都合は、膨大な数の留め具と分厚い金属の構成部材がもたらす、翼の重量増加である。
【0005】
近年、航空機構造に好ましい材料として複合材料が導入されている。複合材料とは、通常はカーボン繊維である、樹脂と混合した糸状繊維構造を備えることが多い。前記繊維は、多くの場合、材料シートに巻き込まれ、または埋設されており、その後、材料シートに樹脂を含浸させる。前記複合材料は、その後、目的の形状に成形され、適切な固さになるまで硬化される。複合材料は非常に軽量であり、かつ高強度である利点がある。加えて、複合構造は好みの形状、および形態に作ることが容易である。
【0006】
残念なことに、複合材料にもいくつかの不都合がある。第一に、複合材料は非常に高価なことである。高価である理由は、原材料から複合材料を製造するコストと同様に原材料のコストに由来する。高価な原材料と合わせた複合材料の高い製造コストは、多くの場合、複合材料の利用に膨大なコストを要する。
【0007】
複合材料の別の不都合は、複合材料の組み立てにある。複合材料を組み立てる際には、他の材料の場合とは別のことを考慮しなければならない。留め具を取り付けるために複合材料に穴を開けると、材料内の繊維構造を切断し、材料内に脆弱な部分を形成してしまうことになる。繊維を切断しないように未硬化の糸状繊維を移動させることによって複合材料に穴を形成するのだが、この処理は時間を要する処理であり、大抵の場合、実用的でな
い。
【0008】
複合材料を組み立てる別の代替案としては、高強度エポキシ樹脂を使用することである。エポキシ樹脂は製造工程数を抑えられる利点がある。しかしながら、同時にエポキシ樹脂を塗布し、部品を配置するには、高価な機械、および膨大な数のジグを要する。
【0009】
複合材料、または従来の金属のどちらが翼に使用されているかに関わらず、各留め具の取り付けに対する検査を実行しなければならない。明らかに、翼において留め具、および付属部品が多いほど、より多くの検査を必要とする。留め具、および付属部品は製造後に検査されるだけでなく、航空機の耐用期間を通じて定期的に検査されなければならない。従って、翼を製造することは、初期の製造コストに関わるだけでなく、翼の耐用期間を通じた維持費にも関わってくる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、当技術分野における翼にとって、使用する留め具の数を制限した翼を必要とする。また、組み立てに要する工程を抑えて組み立てることが可能な翼も必要とされる。更に、翼にとって軽量であることも必要である。また、翼に必要なこととして、製造後、および維持する間に行う検査の範囲を抑えることもある。更には、低コストな複合材翼に対する必要性もある。そのような翼、および翼の製造方法が、本願において開示され、特許請求の範囲に記載されている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明における装置および方法は、現在の最先端技術、具体的には、現在利用可能な翼構造によって十分に解決されていない技術的な問題、および必要性に応えて開発されてきた。従って、一体同時硬化複合材翼(single piece co−cured composite wing)を提供することが、本発明における全般的な目的である。
【0012】
翼は、複合材からなる飛翼面、および複合材からなる構造部材によって構成される。飛翼面、および複合材構造部材は、一体同時硬化複合材翼を形成するように同時硬化される。翼には様々な構造部材が組み込まれている。構造部材の例としては桁、リブ、または他の部材等がある。
【0013】
一実施形態において、前記桁はIビーム構造であってよい。前記Iビーム構造は背中合わせに配置された二つのC型ビームから成る。他の実施形態における桁は、J型の横断面、またはC型の横断面を有するものもある。桁は、スパーキャップ、およびウェビング(webbing)から構成されている。前記スパーキャップ、およびウェビングを備えるフィラメントバンド(filament bands)は個々の部材にかかる負荷に従って設置される。
【0014】
更に、桁は波型の形状を成し得る。前記波型は正弦曲線の形状、またはステップ波の形状をとり得る。桁における波型の振幅、および周期は単一の桁の長さによって変化するように、各桁によって変化する。桁はまた、異なる付属部品や構造体を受容するための、様々な平坦部分、または例えば交差スロッシュゲート(intersecting slosh gate)のような、異なる形状を有する部分を備える。
【0015】
翼の飛翼面は、上部飛翼面と下部飛翼面とから構成される。上部飛翼面、および下部飛翼面は、二つの別個の複合材料シートから構成されてもよいし、或いは、前記二つの飛翼面は単一の複合材料シートから構成されてもよい。他の実施形態では、飛翼面を形成するために、複数の複合材料シートを使用する。飛翼面に対する様々な複合材料のシートは、
例えば翼の前縁の下方の位置などの、選択された交差点を有し得る。
【0016】
一体同時硬化複合材翼は様々な方法を通じて製造され得る。一つの方法は、第一の飛翼面に対する第一クラムシェルフレームに複合材料の一部分を敷設しながら、最初に複合材翼が作成される。続いて、複数の加圧可能フォーム(pressurizable forms)が整列されて、翼の構造部材を画定し、前記複合材料は前記加圧可能フォームの間に選択的に配置される。次に上部飛翼面に対する複合材料が、前記加圧可能フォーム上に配置され、下部飛翼面に対する複合材料が配置される。一旦複合材料、および加圧可能フォームが構成されると、クラムシェルフレームが閉じられ、前記複合材料は硬化される。
【0017】
前記方法における一実施形態では、前記加圧可能フォームは、複合材料が硬化する間に加圧される。前記フォームの加圧によって、複合材料はクラムシェルフレーム、およびフォームによって決められた特定の形状になるように圧力を加えられる。加えて、前記加圧可能フォームは膜によって囲まれたフォームコアを有している。フォームコアはまた、硬化する間に収縮し、それによりふぉーむコアは容易に取り除かれ、複合材翼内部から膜が剥がれ得る。
【0018】
これらの特性や他の特性、および本発明における利点は、以下に続く説明と添付の特許請求の範囲によって、十分に明白なものとなるであろう。または、以下に説明する本発明の実施によって、理解することであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明における利点、および特性が得られるように、上記において要約された本発明のより詳細な説明が、添付の図面を参照することによって提供されるだろう。これらの図面は、単に本発明において選択された実施形態を提供するのみであり、従って、本発明の範囲を限定するものではないと考慮されることを理解されたい。本発明は、添付の図面の利用を通じて特定の形態、および詳細を追加して記述、および説明されるであろう。
【0020】
ここで本発明における好適な実施形態を、図1から図4を参照して説明し、同一の参照番号は、同一の、または同様の要素を示すものとする。本発明にある部材は、通常は図面において説明、および表示されているように、多様な設定において実施され得る。従って、図面に表されているように、以下に続くシステムの実施形態、および本発明の方法の詳細な説明は、特許請求の範囲に記載されている発明の範囲を限定するものではなく、単に現在における本発明の好適な実施形態を表しているのみである。
【0021】
本発明は、一体同時硬化複合翼構造体を提供する。図1を参照すると、複合材飛翼面112を有する一体同時硬化翼100、複数の複合材構造部材が表されている。複合材構造部材は、通常の飛翼面112の形状を維持するための多様な実施形態を有し、翼構造100の揚力が胴体(図示されず)に移動することを可能にしている。
【0022】
翼構造体100は様々な翼の構成部品を含み、例えば、補助翼、翼端、水平安定板、垂直安定板、フラップ、昇降舵、先尾翼等がある。これらの翼構造体は、一体物を構成するように同時に硬化された飛翼面および構造部材を有するであろう。いくつかの例において前記構造部材は、飛翼面に分厚い部分を含み、構造的な支持を提供する。本願において翼100、または翼構造を参照することは、上記に記載したような、個々に取り付け可能な翼100の構成部品を含むことであって、単に翼の主要部分のみ参照しているのではない。様々な構成部品が互いに同時に硬化される必要はなく、むしろ、個々の構成部品が同時に硬化され、一体同時硬化構造を成すことに注目すべきである。
【0023】
加えて、翼100および翼100を作成するための方法の詳細な説明、、翼幅全体、または翼の端から端までの全体を含む。一体同時硬化右翼構造、および左翼構造を実施することで、右翼と左翼とを互いに取り付ける工程、および単一翼の両方を胴体に取り付ける組み立て工程を削減することができる。従って、本願において翼を参照することは、端から端までを含む完全な翼幅、単一翼、および多様な翼構造を含む。
【0024】
表示されている実施形態、および図1において、構造部材は複数の翼桁116から構成されている。しかしながら、リブ、および補強材も同様に翼100に組み込まれている。通常、翼桁116は翼100の長さに沿って配置され、前記長さは横方向4における長さである。前記桁116は、飛行中に翼にかかる大きな負荷を受け止めるために、翼に対する構造的な支持を提供する。翼端120にかかる負荷は、翼100を湾曲させ、破損をひき起こすことがあろう。しかしながら、桁116により、翼100を飛行に十分なように強化している。
【0025】
翼100はまた、リブ(図示せず)も組み込んでおり、桁116に対してほぼ垂直に配置されている。前記リブは、横断方向6において通常、翼100の断面と同様な形状を有し得る。桁116と同様に、リブは飛行中における翼100の構造的な支持を提供する。リブは翼100の横断方向6の幅に沿って、翼の全てに配置されるか、或いは、選択された桁116の間にのみ配置されることもある。
【0026】
翼100に組み込まれ得る他の構造部材としては、補強材118があり、飛翼面112の内部に配置される。補強材118は小型の支持部材であり、飛翼面112内部に取り付けられているか、または一体的に成形されていることもある。更に、補強材118は複合材飛翼面112内に埋設される剛体材料を組み込むこともある。
【0027】
翼100は飛翼面112と桁116のような構造部材を組み合わせて、一体同時硬化複合材翼にする利点を有する。同時硬化とは、飛翼面112および構造部材の複合材料を一緒に、同時に硬化することを要する。飛翼面112および構造部材が同時に硬化される際、複合材料に含浸させた樹脂が硬化することで、飛翼面112が構造部材に接着する。翼100を一度に硬化させることによって、飛翼面112を構造部材に取り付けるための留め具の使用を回避することができる。加えて、多くの場合構造部材を互いに取り付けるために必要である留め具も、排除することができる。
【0028】
通常の複合材料でない、または同時に硬化されていない翼では、リベット等の複数の留め具が飛翼面と構造部材とを取り付けるために使用される。これらの留め具は、留め具の原価、さらには取り付けに要する膨大な組み立て作業時間のために莫大な費用を追加することになる。通常は、構造部材を取り付けるために、飛翼面に何千もの穴を開けなければならない。飛翼面における各穴によって、前記飛翼面の強度が低下し、安全性を確認するために検査される構成部品をさらに作り出すことになる。留め具を排除することによって、他にも多くの利点がある。従って、一体同時硬化複合材翼100は、翼100の一体性を増加させると同時に、組み立て作業コスト、および部品数を削減する。
【0029】
飛翼面112に対する複合材料は、一枚の幅の広いシートであり得る。複合材料は巻付けられるか、埋設されるか、或いは成形される。通常、飛翼面112に幅の広い複合材料片を使用することで、継ぎ目の数を制限することができる。飛翼面112において継ぎ目の数を制限すると、材料を分離する場所が少なくなることによって、より強化された構造を作り出すことができるであろう。更には、通常において継ぎ目のない飛翼面112は、より優れた空力的特性を有し、組み立て作業に要する時間も削減することができる。
【0030】
翼100の飛翼面112は、通常、上部飛翼面124、および下部飛翼面128として
説明される。上部飛翼面124、および下部飛翼面128は翼100の周囲を包む単一の複合材料シートから構成され、交差地点132において連結されている。前記交差地点132は実質的には継ぎ目であり、複合材料片の両端が接触する場所である。前記交差地点132は、負荷の少ない位置、および翼100の空力的影響のない位置にあることが望ましい。そのような場所の一つが、図1に示す、下部飛翼面128上における翼の前縁136の下である。
【0031】
別の方法として、上部飛翼面124、および下部飛翼面128は、2枚の別個の複合材料シートであってもよい。各シートは、実質的に、上部飛翼面124および下部飛翼面128の一方を被覆する被覆する。しかしながら、別の実施形態では、複合材シートの一方は、前縁136等の負荷の高い位置における継ぎ目を回避するために、上部飛翼面124と下部飛翼面128との間に及ぶことがある。さらに他の飛翼面124の構成では、複数の複合材料シートを使用することもある。
【0032】
更に飛翼面112は、ほぼ中実でほとんど隙間のない複合材料から組み立てられることもある。複合材料は、個々のフィラメントバンドの間に隙間があることが多い。これらの隙間は、完全な飛翼面112を作り出すために塞がなければならない。隙間を塞ぐには、他の材料を追加するか、または飛翼面112全体を中実な材料の層によって被覆することが必要となる。どちらの方法も、組み立てに要する費用を追加し、翼100に重量を加えることになる。通常は飛翼面112に対して中実であり軽量な複合材料が好まれるが、一方では別の異なる材料が一体同時硬化複合材翼の作成に採用されることが多いことを当業者は認識するであろう。
【0033】
一実施形態では、飛翼面112の複合材料は、硬化されていない場合、布地と同様の特性を有する。前記布地と同様の特性によって、複合材料は構造部材、または飛翼面112の形状に成形されることが可能となる。複合材料は、一旦硬化されると、通常は硬直し、金属、またはプラスチックシートと同様の特性を有する。
【0034】
飛翼面112は構造部材と協働して高強度の翼100を作り出す。一実施形態では構造部材は、横方向4に配置される桁116によって構成される。桁116は、翼100の形状を維持し、飛翼面112上の揚力を胴体(図示せず)に伝えるように構成されている。桁116は翼100に対する十分な強度を提供するために、様々な形状を取り得る。
【0035】
図1に表されているように、ある桁116aは、横方向4への波型の様相を呈するのに対し、他の桁116bは通常は直線型を成す。翼100は波型の桁116aのみ、または直線型の桁116bのみを使用しているが、形状の異なる桁116を組み合わせると、強度が最大になり、重量も最小に抑えることできる。通常、波型の桁116aは、同一の厚さおよび高さである直線型の桁116bに比べて、高い強度を有するであろう。波型の桁116aはまた、材料が追加されているために、直線型の桁116bに比べて重くなるであろう。
【0036】
波型の桁116aにおける波型は座屈強度を増加させるであろう。強度が増すことは、波型の桁116aが両端に取り付けられた一連の小型の桁のセグメントとしてあり、隣接した桁のセグメントは異なる方向に配向されていることを見ることによって理解できる。ある桁のセグメントが屈曲限界に近づくと、その屈曲力は直接、隣接する桁のセグメントに移される。そのような相互作用は、波型の桁116を通じて起こり、隣接する桁のセグメントは互いに支持し合う。
【0037】
図1に示す実施形態では、波型の桁116における波型は通常、正弦曲線の形状をしている。しかしながら、他の波型のパターンが桁116に採用されることもある。例えば桁
116は、通常桁116の長さに沿った角度のある屈曲を伴う、ステップ波の形状を成すこともある。その他の波型の桁116aの種類は桁116aの長さに従って、振幅、および周期を変化するか、または単一の翼100内の各桁116aによって変化する。
【0038】
波型の桁116aは、波型の振幅、および周期が翼100の異なる部分に対する様々な負荷要求に対応できるように、設計されている。例えば、翼100の負荷の小さい場所では、桁116aの波型の振幅、および周期は少なくなっている。同一の桁116aにおける異なる部分では、より大きな負荷に対応するために、波型の振幅、および周期がより大きくなっている。桁116aの長さに従って形状を変化させることによって、重量を最小限に抑えた最適な強度を有する桁116aが設計され得る。
【0039】
桁116はまた、その他の構造、または非構造部材を受け入れるために、他に様々な構造を取る。例えば、図1に示す桁116は、桁の長さに沿った取付構造140を有する。この実施形態では、取付構造部材140は平坦な表面を有し、構造部材を垂直に取り付けることができるようになっている。例えば、取付構造部材に交差する構造体は、スロッシュゲート144であり得る。
【0040】
スロッシュゲート144は、燃料が翼100の内部を自由に流れるのを防ぐために提供されている。多くの航空機において、翼100は航空機の燃料貯蔵庫としての役割を果たしている。図に示されている翼100において、燃料は三つの波型の桁116aによって画定された二つの導管の内部に配置される。動作中、航空機は様々な旋回、操縦を行い、液体燃料が翼100の片側から反対側へ一気に流れることが起こり得る。スロッシュゲート144は、翼100内部において燃料が急速に流れるのを防ぐために提供されている。スロッシュゲート144は構造部材であってもよいし、そうでなくてもよい。同様に、スロッシュゲート144はリブの部分であってもよいし、またはその他の構造部材であってもよい。
【0041】
桁116は、液体が桁116によって決められた導管の間を流れるようにするための隙間を有する。前記隙間は、燃料が桁116によって決められた導管の間を流れることを可能にする。桁116はまた、配線、油圧装置、または翼100の機械的要素の取付けを可能にするために、桁に従って様々な取付構造部材をも含み得る。
【0042】
単一の桁116はまた、波型部分、および直線型部分の組み合わせであり得る。例えば、ウィングボックス148を画定する桁116は、翼100の主要部分において波型であり、桁116がウィングボックス148の一部分である場所では、直線型を有する。他の桁116は、翼100の主要部分にのみ存在するように、ウィングボックス148の前で終結する。別の異なる桁116は、単一の桁に従ってその他の波型、および直線型の組み合わせを有し得る。更にその他の実施形態では、桁116は二本の翼の間に安全に取り付けられて、右翼と左翼の間に及んでいる。
【0043】
ここで、図2を参照すると、波型の桁116aの横断面図が表されている。波型の桁116aが表されているが、断面図にある概観は直線型の桁116b、またはそれ以外の形状の桁116にも適用され得る。桁116は複数の複合材料の層から構成される。複合材料の層はIビーム構造に成形され得る。Iビーム構造は、航空機の翼100の構造部材に好ましい構造であり得る。Iビーム構造は、当業者にとって周知である、優れた屈曲性、可捩性、およびそのままの特性を提供する。
【0044】
桁116は、スパーキャップ212、およびウェビング216から構成され得る。通常はIビーム構造による構成において、Iビーム構造の異なる部分には、異なる耐負荷機能を有する。ウェビング216は通常、桁216にかかる圧力を全て受け取り、管理するた
めに構成されている。加えて、ウェビング216は選択的負荷に対する耐座屈性を提供する。スパーキャップ212はまた、耐座屈性と同時に耐捩れ性も提供する。しかしながら、例えば、Cビーム構造やJビーム構造等のような、桁116の他の断面形状によっても、同一の特性が実現され得る。
【0045】
桁116の各部分に対するフィラメントバンドの方向は、その部分にかかる負荷によって変化し得る。例えば、ウェビング216は、通常、直接かかる圧力の大部分を受け止める。直接かかる圧力は45度の角度で最大となるため、いくつかのフィラメントバンド、およびウェビングの方向も45度であることが望ましく、その角度は、スパーキャップ212から見た角度である。
【0046】
同様に、スパーキャップ212におけるフィラメントバンドの配向は、スパーキャップ212にかかる負荷を受け止めるように方向付けられる。例えば、スパーキャップ212におけるフィラメントバンドは、桁116の長さから0度の角度に調整される。そのようにして、翼端120に負荷がかかると、スパーキャップ212内のフィラメントバンドに望ましい範囲で、張力がかかることになる。
【0047】
図2に示すように、桁116は複数の複合材料の層から形成されている。各層は、それぞれ異なる配向性、厚さ、繊維材料を含む、異なる材料組成を有する。例えば、翼100は、ほぼ炭素繊維から形成され、断続的にファイバーグラス、ケブラー、シリコン、またはその他の材料を有する。複合材料の組成を変化させることで、桁116にかかる負荷に対して、桁116の各部分を精密に設計することができる。飛翼面124の材料も同様に、各層によって変化する。
【0048】
さらに、飛翼面112も複数の複合材料の層から構成されている。複合材料も同様に配向が異なる様々な層を有する。層の数、および配向も、飛翼面112の部分によって異なる。例えば、高圧力のかかる部分では、圧力を受け止めるために複合材料の層を追加することが必要となる。
【0049】
他の実施形態における製造工程では、一度の処理で異なる配向を有する複数の複合材料層が製造される。そのような処理は、一度の処理で、異なる配向のフィラメントバンドと同時に、所与の部分に対して複数の層を形成し得る。この処理は、フィラメントを巻き付ける(filament winding)処理であり、その層数および配向のフィラメントバンドがマンドレルまたはドラムに巻き付けられる。製造工程において、複合材の目的の層数および所望の配向を作り出すことで、翼100の組み立て工程数を削減することができる。
【0050】
複合材料は、複数の複合繊維の帯から形成された複合材料の大型の巻付または織成シートで提供される。前記複合材料シートは布地と同様の特性を有し、複合材料は布地のように覆うことができる。前記複合材料シートはまた、翼の部分を成形するために様々な形状に切断可能である。そのような複合材料の一つはFybeXとして、その分野において周知である。
【0051】
複合材料はまた、翼100および翼構造材を落雷に対して絶縁するための導電層も含む。前記導電層は、複合材料が製造される際、複合材料の外層に埋設された銅、アルミニウム、または他の結合する金属から構成される。前記導電層は様々な導電性の金属繊維から成り得る。組み立て時において、導電性材料は翼100の外部に位置されるように配向される。その結果、翼100は落雷から保護されることになる。
【0052】
翼100に使用される複合材料は、複合材料シートに埋設される前に、樹脂をを予め含
浸させたフィラメントバンドで構成される。樹脂を予め含浸させることで、前記樹脂は桁116、および飛翼面112の様々な層の間に行き渡ることになるだろう。樹脂の量を均一に配置することで、硬化した複合材料の強度を高めることになる。樹脂はフェノールやビスフェノール等の、異なるエポキシおよび硬化剤を含み得る。
【0053】
複合材料層は更に、複数のステップダウン部分224を有し、前記部分において、異なる層が互いに接合する。ステップダウン部分224によって、スパーキャップ212と飛翼面112との間における円滑な移行が可能となる。前記ステップダウン224は、大きな圧力を生じる場所が広がることを防いでいる。圧力を生じる要因となるものは、材料の厚さが突然、かつ急激に変化する場所で発生する。しかしながら、複合材翼100内部の部品に対して円滑な移行を備えることで、構成部品の接合部分、および交差部分における圧力を制限することができる。
【0054】
Iビーム構造の実施形態において、I型の断面を有する桁116は、二つのC型片の複合材料をIビーム構造を成形するように、背中合わせに配置することで形成される。前記二つのC型片の複合材料は、通常、伸長された長方形の複合材料シートから形成される。長方形の複合材料シートは、Iビーム構造を形成するために、単にC型片に折り曲げられ、別のC型片と接合されてもよい。このような製造方法は、Iビーム構造を製造する際において、可能な限り容易な製造工程を可能にする。
【0055】
スロッシュゲート144、またはリブ等の、他の構造部材は同様に、層を成す方法を使用して作り出される。前記構成部品の機能は、層の数、フィラメントバンドの配向性、該部品の一般的構造を選択する際に、考慮されるべきである。例えば、スロッシュゲート144は、大きな負荷に対する耐性を必要としない。従って、スロッシュゲート144は、リブ、または他の耐負荷性の部材よりも少ない層を必要とする。
【0056】
一旦、複合材料が製造されると、該複合材料は翼100の形状に成形される。複合材料を翼100に成形するために、様々な方法が実施され得る。通常、一体同時硬化複合材翼100を成形する処理は、多様な複合材料を翼100のための適切な形状に配向し、該複合材料を硬化させる。
【0057】
図3は複合材翼100を製造するための一実施形態を表す。複合材翼100の形状、および外形の調整は、複数のクラムシェルフレーム312,316、および複数の加圧可能フォーム320通じて実現される。硬化されていない状態において、複合材料は布地のような特性を有するものが多い。一体同時硬化複合材翼100において、硬化されていない複合材料を目的の形状に成形すること、および硬化中に材料をその形状に維持することは、特に困難であり得る。クラムシェルフレーム312,316、および加圧可能フォーム320は、組み立て、および硬化している間に、布地のような複合材料を目的の形状に維持するように設計されている。
【0058】
クラムシェルフレーム312,316は上部クラムシェルフレーム、および下部クラムシェルフレームから構成される。上部クラムシェルフレーム312は実質、上部飛翼面124を決定し、下部クラムシェルフレーム316は実質、下部飛翼面128を決定する。クラムシェルフレーム312,316は本質的に、翼100の外形の形状を決定するフレームである。
【0059】
或いは、クラムシェルフレーム312,316は二つの異なる部分に分割することができる。例えば、第一のクラムシェルフレームは翼100の前縁136を画定し、第二のクラムシェルフレームは翼100の後縁138を画定する。更には翼100を成形するために、二つ以上のクラムシェルフレームが使用され得る。該クラムシェルフレーム312,
316はまた、互いに旋回可能に取り付けられる。旋回可能に取り付けることで、互いのクラムシェルフレーム312,316の部分を容易に閉じることができる。
【0060】
図3に示す実施形態では、クラムシェルフレーム312,316は、通常、複合材料の形状を制御する頑丈な制御制御面324を有する、鎧格子状の構造である。クラムシェルフレーム312,316は、金属、複合材料、プラスティック等の、任意の適切な剛性のある材料から形成される。しかしながら、該材料は運搬、および移動が容易であるように軽量であることが望ましい。通常、クラムシェルフレーム312,316の構造は、制御制御面324を支持する任意の構造であってよい。
【0061】
上部クラムシェルフレーム312、および下部クラムシェルフレーム316はほぼ密閉された構造を形成するために、連結されるように形成されている。図に示す実施形態では、クラムシェルフレーム312,316は、図4に表されているように、両側に開放端を有する翼100を成形するために結合している。クラムシェルフレーム312,316の片側にはウィングボックスキャビティ328(wing box cavity)含む。クラムシェルフレーム312,316において、様々な翼100の構造を成形するために、その他にも開口部が存在し得る。
【0062】
制御制御面324は、好ましくは翼100へ適用される表面仕上げを施されている。前記制御制御面324の表面仕上げは、制御面324に接触する複合材料に転写されるであろう。従って、クラムシェルフレーム312の制御面324における表面仕上げは、塗料を適用できるように、および望ましい空力的特性を提供するように、選択されるべきである。
【0063】
クラムシェルフレーム312,316が翼100の外寸法外形を画定する一方、加圧可能フォーム320は内部構造部材の形状を画定し、クラムシェルフレーム312,316に対して複合材料の付勢力をかける。通常、加圧可能フォーム320は、硬化処理中の複合材料の形状を制御することができる、いかなる構造にも成り得る。
【0064】
一実施形態において、加圧可能フォーム320は膜によって取り囲まれたフォームコア332から構成される。フォームコア332は、複合材料の形状を画定するために、複合材料に接触するように配置されている。以前に説明したように、複合材の桁の中には、正弦曲線の形状部分を成すものもある。正弦曲線の形状部分、またはその他の波型部分を画定するために、フォームコア332は正弦曲線の形状の側面を有するように成形される。フォームコア332は、所望の形状および外形に成型または切断される。
【0065】
加えて、前記フォームコア332の形状および外形は、隣接する加圧可能フォーム320の形状および外形に一致すべきである。この一致によって複合材料の形状を制御するためのフォームが作り出される。例えば、一つのフォームコア332が正弦曲線における頂点を有していると、隣接するフォームコア332は正弦曲線における谷を有するであろう。従って、二つのフォームコア332の間に複合材料の一部分を入れることで、複合材料は波型の形状になるように強いられるであろう。
【0066】
加圧可能フォーム320のフォームコア332は膜によって被覆され得る。前記膜336は、任意の数のシリコンのような弾性材料によって構成される。前記膜336は、加圧可能フォーム320において、いくつかの機能を果たす。第一に膜336は、複合材料とフォームコア332との間に仕切りを提供する。一部分のフォームコア332は硬化中に、複合材料樹脂に組み込まれ得る。しかしながら、膜を使用すると、樹脂がフォームコア332と接触することを防ぐことができる。
【0067】
膜336の別の機能は、フォームコア332を組み立ての際の損傷から防護することである。フォームはその端部において損傷しやすく、他の物とのほんの少し接触するだけで、不用な形状がフォームの表面に付きやすい。前記フォームコア332を膜336で被覆することによって、フォームコアの形状の完全性が維持され得る。
【0068】
膜336はフォーム320を加圧するために、空気の入力を受ける。前記膜336は実質的には、気体が膜に進入すると、加圧可能フォーム320が部分的に膨張するように、フォームコア332を取り囲んでいる。気体は入口注入管340、または他の同様な機構を通じて流入し得る。入口注入管340は、フォーム320を加圧するために加圧気体源に取り付けられ得る。
【0069】
フォーム320内の圧力は、膜336の材質および複合材料の厚さによって変化する。より厚い複合材料、およびより硬い膜では、複合材料を目的の形状にさせ、硬化する間その形状を維持するために、より高い圧力を要する。一実施形態において、あるタイプのシリコン膜336および複合材料の構成に対する圧力は、30psiから50psiである。しかしながら、他の膜336および複合材料では50psiより上の圧力を要することもあるし、或いは30psiより下の圧力を要する場合もある。
【0070】
フォーム320を加圧することで、いくつかの機能が提供される。フォーム320の加圧による一つの機能は、隣接するフォーム、またはクラムシェルフレーム312,316に対して複合材フォーム320を圧迫することである。複数の加圧可能フォーム320によって生成された力は、複合材料を、フォーム320またはクラムシェルフレーム312,316の形状および外形になるように強いる。
【0071】
加えて、非加圧可能フォームも採用され得る。非加圧可能フォームは加圧可能フォームと同様であるが、非加圧可能フォームは硬化処理中に膨張しないであろう。非加圧可能フォームは複合材料を成形するために、加圧可能フォームに対して付勢し得る。しかしながら、フォームは全て加圧可能であることが好ましい。加圧可能フォームを使用することで、複合材料がフレーム312,316の制御面324に対して、均一に付勢されることが可能となる。
【0072】
加圧可能フォーム320はまた、フォーム320の寸法における公差公差を考慮する。複数の複合材料の層を巻き付けたり、重ね合わせたりすることによって、厚さが変動する箇所がある複合材料が生成され、その結果、通常は公差が低下してしまうことになる。同様に、フォームコア332および取り囲んでいる幕も公差が低下してしまう。公差の低下を補償するために、加圧可能フォーム320が膨張して、加圧可能フォーム320と複合材料との間にあるいかなる空間をも充填する。
【0073】
加圧可能フォーム320の更なる利点は、加圧可能フォーム320によって複合材料にかけられる力である。図2に表されていたように、複合構造は通常、複数の複合材料の層から形成されている。通常は複合材料内部の隙間または空洞の数は、最小限に留めることが好ましい。上記を実現するために、加圧可能フォーム320は複合材料の複数の層に力をかけて、それら複数の層を同時に圧迫する。複合材料の層が同時に圧迫されると、空洞が取り除かれ、隙間が充填される。
【0074】
略管状で柔軟性のある断片の状態にある膜336を提供することによって、膜336は、フォームコア332を包み込む。膜336の管状部分は、膜336を管に挿入し、管に対して膜336の端を密封することによって広げられる。その後、管の側面に負圧をかけて、膜336の管状部分を強制的に広げる。フォームコア332はその後、広げられた膜に挿入される。一旦、フォームコア336が配置されると、負圧は取り除かれ、膜はフォ
ームコア332を包むことができる。
【0075】
加圧可能フォーム320のサイズおよび形状は、翼100のタイプおよび内部構造に依存するであろう。図3における加圧可能フォーム320は五つの桁を有する翼100を作り出すように構成されており、三つの中央桁は正弦曲線の形状を成し、スロッシュゲート144を有さない。上記構成の翼100を実現するために、異なる形状の加圧可能フォーム320が使用される。
【0076】
翼100の前縁136を確立している第一加圧可能フォーム320aは、片側に曲線状の端を有し、反対側には直線の桁116bを形成するために、ほぼ平坦な部分を有する。第一加圧可能フォーム320aは、複合材料をクラムシェルフレーム312,316の前縁136に対向するように強制する。第二加圧可能フォーム320bにおいて、片側は直線であり、反対側は正弦曲線の形状を有する。第二加圧可能フォームの直線側は、第一加圧可能フォーム320aの直線側と隣接し、第二加圧可能フォーム320bの正弦曲線を成す側は、第三加圧可能フォーム320cの正弦曲線を成す側と隣接する。その他の加圧可能フォーム320d,300e,300fも、構造部材の形状を制御するために、両側に同様な形状を有する。
【0077】
加圧可能フォーム320は、第三加圧可能フォーム320cに表されているように、一方の側において直線から正弦曲線の形状に移行していく。加圧可能フォーム320の波型の形状と直線部分との間の移行は、異なる構造体の取り付け、または異なる部品から移行を可能にするために必要とされる。例えば、図3の実施形態において、加圧可能フォーム320はウィングボックス148を形成するための部分を有する。他の実施形態では、スロッシュゲート144、ワイヤハーネス、油圧パイプ等を取り付けるための平坦部分を有する。
【0078】
更に、加圧可能フォーム320の長さも翼100の異なる形状、または異なる構造部材に対応するために変化する。例えば、スロッシュゲート144を有する翼100は、一つの加圧可能フォームを、軸線方向に一列に並べられた、より小型な三つの加圧可能フォームに置き替えることもある。その結果、複合材料は、スロッシュゲート144または他の形態を作り出すために、より小型の加圧可能フォームの間に配置されることになる。
【0079】
一旦クラムシェルフレーム312,316および加圧可能フォーム320が提供されると、複合材翼100が組み立てられる。最初に、飛翼面112のための複合材料がクラムシェルフレーム312,316に配置される。一実施形態では、下部飛翼面128の複合材料は、下部クラムシェルフレーム316に配置され、上部飛翼面124は上部クラムシェルフレーム312に配置される。上部クラムシェルフレーム312は、上部飛翼面のための複合材料を上部クラムシェルフレーム312に配置するために、図3に表されている状態から上下逆になる。
【0080】
複合材料は、クラムシェルフレーム312,316および加圧可能フォーム320に接着可能なように、若干粘着性のあることが好ましい。粘着性のある複合材料を使用することによって、複合材料は、取り付け装置および材料を加えて使用することなく、様々な支持構造体に配置され得る。従って、上部飛翼面124のための複合材料は、上部クラムシェルフレーム312が上部飛翼面124の複合材料を阻害することなく下部クラムシェルフレーム316を取り付けるために反転され得るように、上部クラムシェルフレーム312の制御面324に接着される。
【0081】
複合材料をクラムシェルフレーム312,316に均一に接着するために、複合材料はクラムシェルフレーム312,316上に真空プレスされる。例えばプラスティックのよ
うな気密材料が、制御面324上に配置され、その端部の周囲を密封される。その後、気密材料に負圧がかけられして、空気を排出する。一旦、空気が排出されると、大気圧がほぼ均一な力を複合材料に加え、複合材料をクラムシェルフレーム312,316の制御面324に接着する
本発明はまた、下塗層も複合材翼100の表面に同時に硬化されることを可能にする。翼100に同時に硬化される下塗層を形成するために、制御面324に下塗が塗布される。下塗は、制御面上に、噴霧されるか、ロールで延ばされるか、または刷毛で塗布される。一旦、下塗が制御面324に塗布されると、上部飛翼面124および下部飛翼面128の複合材料は、下塗りされた(動詞は送り仮名必要)制御面324上に配置される。飛翼面124,128複合材料が制御面324に対して付勢されるにつれて、複合材料は制御面324に存在する下塗に対して硬化される。
【0082】
一旦、翼100が硬化されると、翼100はフレーム312,316から取り出される。翼100が取り出される際、下塗が制御面から分離し翼100に接着した状態のままであろう。この処理によって後に硬化する工程数を制限することで、製造サイクルの時間を削減することが可能となる。加えて、下塗の表面仕上げは、下塗が制御面324上で乾燥した際の、制御面上の表面仕上げによって画定され得る。従って、外法および下塗の仕上げは、フレーム312,316の制御面324によって制御され得る。
【0083】
以前に説明したように、飛翼面112を構成する材料は、一体片であるかまたは、複数片である。飛翼面112に対して一体片の複合材料を使用する翼100において、一体片の複合材料は下部クラムシェルフレーム316に配置される。一旦フォーム320および複合材料が適切に配置されると一体片の複合材料は上部飛翼面を形成するために折り曲げられる。
【0084】
更に、下部飛翼面128は、必ずしも全てが下部クラムシェルフレーム316上にある必要はない。同様に、上部飛翼面124も全て上部クラムシェル312にあるわけではない。上部飛翼面124の一部分は下部クラムシェルフレーム316の下方に延びることもあり、またはその反対もあり得る。上記は、翼100の前縁または後縁138で生じると、飛翼面112を成形している複合材料の交差地点にとって望ましくない場所で起こり得る。
【0085】
一旦飛翼面112に対する複合材料が所定の位置に配置されると、桁116は加圧可能フォーム320によって成形される。一実施形態では桁116に対する複合材料は、C型片で提供される。C型片は、Iビーム構造を形成するために背中合わせに配置される。C型片が好ましい理由は、その形状を形成するために二面に折り曲げられた、細長い長方形部分を成す複合材料から構成されているために、複合材料の複雑性を低減することができるからである。
【0086】
一実施形態において、C型片は加圧可能フォーム320の側面の周囲を部分的に包み込む。単一の加圧可能フォーム320は、一つ以上の複合材料の部分を受けたもの、および形状であり得る。例えば、二つの複合材料のC型片は、互いに接するように、完全に加圧可能フォーム320を包み込む。或いは、複合材料のC型片は加圧可能フォーム320の側面のある一部分のみを被覆することもある。
【0087】
再び説明するが、粘着性のある複合材料を使用することで複合材桁116を加圧可能フォーム320に取り付けられ、加圧可能フォーム320は複合材料が脱落することなく移動および配置が可能となる。一旦C型片が加圧可能フォーム320に取り付けられると、加圧可能フォーム320は下部クラムシェルフレーム316上に配置される。加圧可能フォーム320が下部クラムシェルフレーム上に配置されると、様々なC型片がIビーム構
造を形成して一列に並べられる。
【0088】
代わりの実施形態において、桁116に対する複合材料は略Iビーム構造型片で提供され、複合材料は複数のフォームの周囲に一度に包み込まれている。更に別の実施形態では、複合材桁116はスパーキャップ212およびウェビング216の個々の部分提供される。しかしながら、複合材料を構成する材料の数および形状の複雑性を増大させることは、製造時間および製造コストの増大に繋がる。
【0089】
一旦加圧可能フォーム320および取り付けられた複合材料が、下部飛翼面128の複合材料に配置されると、上部飛翼面124に対する複合材料が上部に配置される。飛翼面124に対する複数の複合材料層が使用される。上部クラムシェルフレーム312はその後、複合材料および加圧可能フォーム320を取り囲んで、下部クラムシェルフレーム316に配置される。
【0090】
ここで図4を参照すると、上部クラムシェルフレーム312および下部クラムシェルフレーム316が閉じた状態で表されている。上部クラムシェルフレーム312および下部クラムシェルフレーム316の付属部品は、翼形状を成す内容積を形成する。クラムシェルフレーム312,316の付属部品は、加圧可能フォーム320によって作り出された外向きの圧力を維持するのに十分であるべきである。
【0091】
複数の端板342はクラムシェルフレーム312,316の端部を密封するために、クラムシェルフレーム312,316の端部に取り付けられる。端板342は、ねじまたはボルトのような、多数の留め具によってクラムシェルフレーム312,316に取り付けられる。複数の取り付け穴344が端板342およびクラムシェルフレーム312,316内に配置される。端板342は、硬化処理中に複合材の形状を制御することについて、加圧可能フォーム320および制御面324の機能と同様の機能を有する。加圧可能フォーム320はクラムシェルフレーム312,316の端板342に対して複合材料を押圧するであろう。端板342はまた、複合材料の部分がクラムシェルフレーム312,316の外に広がらないように阻止する。
【0092】
端板342の別の機能は、図3に表されているように、加圧可能フォーム320から延びる注入管340を支持することである。複数の開口部348が注入管340を受容するために、端板342に配置されている。注入管340は加圧気体源に取り付けられ、加圧可能フォーム320を膨張させる。
【0093】
一旦複合材料および加圧可能フォーム320がクラムシェルフレーム312,316内に適切に配置されると、フォーム320は加圧気体源によって加圧される。加圧可能フォーム320が加圧されると、膜336が拡張する力はクラムシェルフレーム312,316の内側面に対して複合材料を押圧し、同様に加圧可能フォーム320を互いに押圧する。フォーム320が加圧される間に、複合材料は硬化する。複合材料が硬化すると、材料は加圧されたフォーム320によって所定の位置に維持されるであろう。従って、複合材料はクラムシェルフレーム312,316および加圧可能フォーム320によって決められた形状になるように強いられることになる。
【0094】
複合材料が硬化すると、複合材料の分離している部分は共に結合するであろう。複合材料の結合は、複合材料を構成する材料を互いに押圧する加圧可能フォーム320の圧力に助けられている。複合材料を構成する材料が硬化すると、翼100の部材は一体同時硬化構造を作り出す。
【0095】
複合部材が異なると、硬化時間、および硬化温度も異なることを要する。硬化時間およ
び硬化温度は、翼100の厚さおよび構造に従う各個々の複合材料に対して選択されなければならない。加えて、加圧可能フォーム320内の圧力は、硬化処理における異なる段階において変化し得る。
【0096】
硬化処理中、または硬化処理後において、加圧可能フォーム320のフォームコア332が収縮する温度までに、加圧可能フォーム320を熱することがある。残存しているフォームコア332が翼100から容易に取り除くことができるまで収縮すれば十分である。一旦フォームコア332が取り除かれると、膜336も複合材翼100の内部側面から取り除くことができる。
【0097】
本願において説明した方法は一体同時硬化複合材翼を形成するために採用され得る唯一の実施形態である。この方法は、翼等を形成する多数のその他の方法に適用することも意図している。通常、翼は複合材の飛翼面から構成され、前記飛翼面は上部および下部飛翼面から構成される。飛翼面は複数の複合材構造部材を取り囲む。複合材構造部材および複合材飛翼面は一体同時硬化翼を形成するために、同時に硬化される。
【0098】
本発明は、発明の構造、方法、または本願において広く説明された、および特許請求の範囲において以下に主張されるその他の本質的な特性から逸脱することなく、他の特定の形態おいて体現されよう。説明された実施形態は単なる具体例としてあらゆる点において考慮されるものであって、限定するものではない。従って、本発明の範囲は前述の説明よりもむしろ、添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲に類する意味および範囲における変更は全て、特許請求の範囲に含まれることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】切取内部図を有する翼の斜視図。
【図2】桁の一実施形態の側面図。
【図3】複合材料翼を組み立てる方法の分解組立図。
【図4】クラムシェルフレーム、および端板の斜視図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合翼構造体であって
複合材飛翼面と、
複合材構造部材を備え、前記飛翼面および構造部材は一体同時硬化複合材翼を形成する複合翼構造体。
【請求項2】
前記構造部材は、少なくとも一つの桁を備える請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記桁はスパーキャップを備える請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記スパーキャップは、飛翼面からほぼ平行に配向されたフィラメントバンドから構成される請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記桁はウェビングを有する請求項2記載の装置。
【請求項6】
前記ウェビングは前記桁の長さに対して、約45度の角度に配向されたフィラメントバンドから構成される請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記桁は二つの略C型の複合材片から構成される請求項2記載の装置。
【請求項8】
前記C型片はIビーム構造を形成するために反対向きで配置される請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記桁は略J型の横断面形状を有する請求項2記載の装置。
【請求項10】
前記桁はC型の横断面形状を有する請求項2記載の装置。
【請求項11】
少なくとも一つの桁は正弦曲線の形状である請求項2記載の装置。
【請求項12】
少なくとも一つの桁は波型の形状である請求項2記載の装置。
【請求項13】
前記波型の形状は、可変の周期を有する請求項12記載の装置。
【請求項14】
前記波型の形状は、可変の振幅を有する請求項12記載の装置。
【請求項15】
前記波型の形状は、ステップ波である請求項12記載の装置。
【請求項16】
前記桁は、交差する構造体を取り付けることができるように、ほぼ平坦な部分を有する請求項2記載の装置。
【請求項17】
前記翼は上部飛翼面および下部飛翼面を有する請求項1記載の装置。
【請求項18】
前記上部飛翼面は実質的に第一の複合材料シートから構成され、下部飛翼面は実質的に第二の複合材料シートから構成される請求項17記載の装置。
【請求項19】
前記第一のシートおよび第二のシートは、翼の前縁の下方の地点で交差している請求項18記載の装置。
【請求項20】
前記複合材構造部材はリブである請求項1記載の装置。
【請求項21】
前記翼構造体は完全な翼幅である請求項1記載の装置。
【請求項22】
前記完全な翼幅は、前記完全な翼幅を通して連続した桁を有する請求項21記載の装置。
【請求項23】
前記翼構造体は少なくとも補助翼、翼端、水平安定板、垂直安定板、フラップ、昇降舵および先尾翼の内の一つである請求項1記載の装置。
【請求項24】
前記翼構造体は前記複合材料に埋設された糸状導電性材料を有する請求項1記載の装置。
【請求項25】
前記飛翼面に同時に硬化された下塗層を備える請求項1記載の装置。
【請求項26】
複合翼構造体であって、
複合材飛翼面と、
ほぼ正弦曲線の形状を有する複数の複合材桁を備え、前記飛翼面および前記複数の複合材桁は、一体同時硬化翼を形成し、
翼の内部の燃料の移動を制御するための複数のスロッシュゲートとを備える複合翼構造体。
【請求項27】
前記桁はスパーキャップを有する請求項26記載の装置。
【請求項28】
前記スパーキャップは飛翼面からほぼ平行に配向されたフィラメントバンドから構成される請求項27記載の装置。
【請求項29】
前記桁はウェビングを有する請求項26記載の装置。
【請求項30】
前記ウェビングは前記飛翼面から約45度の角度に配向されたフィラメントバンドから構成される請求項29記載の装置。
【請求項31】
前記桁は二つの略C型の複合材片から構成される請求項26記載の装置。
【請求項32】
前記C型片はIビーム構造を形成するために反対向きで配置される請求項31記載の装置。
【請求項33】
前記桁はJ型の横断面形状を有する請求項26記載の装置。
【請求項34】
前記桁はC型の横断面形状を有する請求項26記載の装置。
【請求項35】
前記桁は、前記スロッシュゲートを取り付けることができるように、ほぼ平坦な部分を有する請求項26記載の装置。
【請求項36】
前記翼は上部飛翼面および下部飛翼面を有する請求項26記載の装置。
【請求項37】
前記上部飛翼面は実質的に、第一の複合材料シートから構成され、下部飛翼面は実質的に、第二の複合材料シートから構成される請求項36記載の装置。
【請求項38】
前記第一のシートおよび第二のシートは、翼の前縁の下方の地点で交差する請求項37記載の装置。
【請求項39】
更に少なくとも一つのリブを備える請求項26記載の装置。
【請求項40】
前記翼構造体は完全な翼幅である請求項26記載の装置。
【請求項41】
前記完全な翼幅は、前記完全な翼幅を通して連続した桁を有する請求項40記載の装置。
【請求項42】
前記翼構造体は前記複合材料に埋設された糸状導電性材料を有する請求項26記載の装置。
【請求項43】
前記飛翼面に同時に硬化された下塗層を備える請求項26記載の装置。
【請求項44】
飛翼面および少なくとも一つの構造部材を有する一体同時硬化複合翼構造体を形成するための方法であって、
第一のクラムシェルフレームの制御制御面に沿って第一の飛翼面複合材料を配置することと、
複数のフォームを第一のクラムシェルフレームに整列させ、複合材料は選択的フォームの間に配置され、選択的フォームは加圧可能であることと、
第一および第二のクラムシェルフレームを共に閉じることと、
前記複合材料を硬化することとを備える方法。
【請求項45】
選択的フォームの間に配置された前記複合材料は、桁を形成する請求項44記載の方法。
【請求項46】
前記桁は二つの略C型の複合材片から構成される請求項45記載の装置。
【請求項47】
前記C型片はIビーム構造を成形するために反対向きで配置される請求項46記載の装置。
【請求項48】
前記桁は正弦曲線の形状である請求項45記載の装置。
【請求項49】
前記フォームは膜によって取り囲まれたフォームコアである請求項44記載の方法。
【請求項50】
前記選択的加圧可能フォームの膜は硬化処理中に正圧を受けることができる請求項49記載の方法。
【請求項51】
前記フォームコアは硬化処理中に収縮する請求項49記載の方法。
【請求項52】
前記フォームコアの形状は前記複合材料の成形を制御する請求項49記載の方法。
【請求項53】
前記選択的加圧可能フォームは前記第一の飛翼面および第二の飛翼面を、前記クラムシェルフレームの制御制御面に対して押圧する請求項44記載の方法。
【請求項54】
前記選択的加圧可能フォームは隣接するフォームに対して押圧する請求項44記載の方法。
【請求項55】
前記第一の飛翼面および第二の飛翼面は単一の複合材料シートの部分である請求項44記載の方法。
【請求項56】
前記翼構造は少なくとも補助翼、翼端、水平安定板、垂直安定板、フラップ、昇降舵および先尾翼の内の一つである請求項44記載の複合翼構造体。
【請求項57】
下塗層を前記第一のクラムシェルフレームの制御制御面および前記第二のクラムシェルフレームの制御制御面に適用することを更に備える請求項44記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−512240(P2006−512240A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−515852(P2004−515852)
【出願日】平成15年6月19日(2003.6.19)
【国際出願番号】PCT/US2003/019100
【国際公開番号】WO2004/000643
【国際公開日】平成15年12月31日(2003.12.31)
【出願人】(504463800)ロッキー マウンテン コンポジッツ インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】ROCKY MOUNTAIN COMPOSITES,INC.