説明

一体型温度センサ

バイオチップが、温度に基づき変形する微小機械アクチュエータ20と、上記アクチュエータの変形に基づき信号を出力するよう構成される検出器30とを有する一体型温度センサを持つ。アクチュエータは、エラストマーネットワークにおけるLC物質から形成されることができる。検出器30は、光学的、磁気的又は容量的とすることができる。そのアクチュエータは、層として構成されることができ、その変形は、その層の巻き上がりとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体型温度感知デバイス、及び対応する方法に関し、特に、例えばMEMSデバイス、バイオセンサといったセンサ、分子診断デバイス、生物反応器、及びマイクロ流体の「システムオンチップ」又は「ラボオンチップ」等に一体化される、温度感知デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
分子診断といった(生)化学分析のためのバイオセンサ及びバイオチップを含むMEMSデバイスが、医療、法医学、及び食品分野といった多くの用途に対して知られる。一般に、バイオチップは、バイオセンサを有する。その多くにおいて、ターゲット分子(例えばたんぱく質、DNA)が捕捉分子を用いて生化学面において不動状態にされ、続いて、瞬間的光学、磁気、又は電気検出スキームを用いて検出される。
【0003】
Grietje N. Mol、Kenneth D. Harris、Cees W. M. Bastiaansen及びDirk J. Broerによる「Thermo-Mechanical Responses of Liquid-Crystal Networks with a Splayed Molecular Organization」は、温度に基づき変形するMEMSデバイスに関する。この文献は、MEMSデバイスといった微小一体型アクチュエータが、電子機器、一体型光学機器、並びに医療及び生物医学分野において利用されることを示す。異なるタイプの刺激に対する動き、力又は仕事の形式での機械的効果が、マイクロ流体システムにおける流体に命令する(向きを変える)のにうまく利用されている。当該文献に与えられる多くの例は、しばしば、リソグラフィック手段及び犠牲層技術により得られる、微小構造の無機層に基づかれる。アクチュエータ構造におけるアクティブ層として、ポリマを使用することを記載する文献はほとんどない。にもかかわらず、アクチュエータの構築にポリマを使用することは、特殊な用途に対して多数の利点を持つことになる。その薄膜処理は通常、大面積用途に対してより簡易であり、より好適である。更に、その反応の大きさは、無機物質の反応より大きい。もちろん、これは低係数に関連し、生み出されることができる力又は仕事の犠牲の上に成り立つ。液晶ポリマシステムの使用は、反応時間及び大きさの点から特に魅力的に見える。様々なグループが、温度における変動によりもたらされる液晶(LC)エラストマ(LCE)における寸法変化を示してきた。一般的な機構は、分子組織における変化に基づかれる。これは、整列された液晶から等方性フェーズへの遷移で特に大きくなる。生じる回数が比較的大きくなることを可能にするため、分子回転運動性が十分に高くなければならない。従って、多くの文献が、柔軟なバックボーン構造を備え、結果として低弾性係数のLCエラストマのクラスを参照する。
【0004】
この記事は、密に架橋されるLCネットワークに基づかれ、かつ、反応メソゲンの光重合により得られる新たなポリマシステムを論じる。このシステムにおいて、分子オーダが好適に制御されることができる。分子オーダの制御された性質は、その度合い及び方向に関連するだけでなく、局所外部場の適用により又はポリマ化の間の露光及びポリマ化誘導拡散によりもたらされる、例えば局所配向性境界条件における変化を介して局所的に変調されることができるという事実にも関連する。露光は、微小電気機械システム(MEMS)デバイスに一体化されることができるマイクロメータサイズの要素の形成も可能にする。更に、LCネットワークは、すべての種類の刺激に対する良いモデルシステムを形成する。特に、それらは、熱によりアクティベートされることができる。斜めの分子構成が、良好に制御された態様で一様に変形するフィルムを生み出した。このフィルムは、本質的にモノリシックである。即ち、このフィルムは、製造及び構造化が簡単な単層構造に基づかれ、多層構造に良くある問題、例えば、曲げの間の層間剥離又は界面スライドを示すことがない。
【0005】
ラボチップ(lab on a chip)で実行されることができるアッセイの多くにおいて、サンプルの加熱を含む環境的処理ステップは重要である。この例は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)であり、PCRは、系列状の熱制御された反応ステップを繰り返すことによりDNAを増幅する好適に確立された酵素法である。PCR反応において、増幅されたDNA分子の数は、各サイクルの間倍増される。熱サイクルは、3つのステップからなる。即ち、相補鎖を分離するため二重鎖DNAを溶かすステップ(デナチュリゼーション(denatulisation))、特定のプライマーをターゲットサイトにバインドするステップ(アニーリング)、及びTaqポリメラーゼといった熱安定的な酵素によるプライマの膨張(エクステンション)である。デナチュレーション(denaturation)、アニーリング、及びエクステンションステップに対する通常の温度はそれぞれ、94、40〜72及び72℃である。これらの温度は、正確に、例えば0.5℃以内に制御されなければならない。
【0006】
通常バイオチップ上にあるバイオセンサの特異性は、温度の正確な制御により改善される。例えば、DNAストランドのその相補鎖へのバインディングといったターゲット生体分子の機能表面へのバインディングのストリンゲンシー(stringency)を調整するためのハイブリダイゼーションアッセイ(hybridization assay)の間、温度制御が使用される。例えば、単一ポイント変異に注目しているとき、高いストリンゲンシー、及び正確な温度制御が必要とされる。ハイブリダイゼーションアッセイにおいて重要性が高いだけでなく、一般にバイオセンサの温度制御は必要である。例えば、多くの生体分子は小さな温度ウィンドウ(通常37℃周辺)で安定しており、この温度ウィンドウの外側ではディアクティベートされるからである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
バイオチップにおける温度を正確に制御することができるためには、温度が測定される必要がある。最も一般的には、これは、通常チップに一体化される抵抗ストリップ又は抵抗ライン(例えば金又はプラチナ)からなる抵抗温度デバイス(RTD)を用いて実行される。利用される原理は、チップの電気抵抗が温度と共に(線形に)変化するというものである。これの不都合点は、十分な精度を実現するには抵抗ストリップが比較的大きい(オーダでいうと、ミクロンの幅、数百ミクロンの長さ)点にある。その結果、温度勾配の評価に有益である、1〜10ミクロンスケールで温度を局所的に測定することができない。
【0008】
本発明の目的は、代替的又は改善された、一体型温度感知デバイス、及び対応する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の側面によれば、本発明は、微小機械アクチュエータを有する一体型温度センサであって、温度に基づき変形する熱的に作動可能なポリマ物質と、上記アクチュエータの変形に基づき、信号を出力するよう構成される検出器とを有するセンサを提供する。これは、抵抗温度デバイスに関連付けられるすべての問題を引き起こすことなく、MEMSデバイスといった一体化された構造体における温度感知を可能にする。ある実施形態では、アクチュエータは、温度が変化するときその形状を変化させる細長い構造をしている。他の実施形態では、アクチュエータは、ブロック形状とすることができ、温度が変化するときその体積を変化させる。
【0010】
オプションの追加的な特徴は、アクチュエータが、熱的に作動可能なポリマ物質から形成されることである。例えば、特定の温度で解放されることができる内部圧を備える物質から形成される。ポリマ物質は、エラストマ物質、化学的にハイバネートされた弾性記憶物質(CHEM)といった形状記憶ポリマ(SMP)、エラストマネットワークにおけるLC(液晶)物質等とすることができる。
【0011】
熱的に作動可能なポリマ物質は、シングルショット物質とすることができる。即ち、それは、特定の温度でその形状を不可逆的に変化させる、又は形状変化を介してのサイクルを可能にするよう繰り返されることができる。
【0012】
別のオプションの特徴は、上記検出器が、光学的、磁気的、又は容量的検出器のいずれかを有することである。
【0013】
別のオプションの特徴は、上記検出器が、多くのレベルの変形を検出するよう構成されることである。
【0014】
別のオプションの特徴は、上記アクチュエータが、層として構成され、上記変形は、上記層の巻き上げであることである。
【0015】
別のオプションの特徴は、上記層が、モノリシック層であることである。これは、層間剥離の問題を回避するのに役立ち、製造を簡単化することができる。
【0016】
別の斯かる追加的な特徴は、上記アクチュエータが、100ミクロン未満の長さを持つことである。
【0017】
別の側面は、サンプルを解析する手段を持つバイオチップであって、上述した一体型温度センサを持つバイオチップである。オプションの特徴は、信号を処理する集積回路を持つことである。別の斯かるオプションの特徴は、上記集積回路が、解析処理のための一体型コントローラを有し、上記コントローラは、該コントローラに結合されるセンサにより出力される信号を感知することである。
【0018】
本発明の他の側面は、一体型温度センサを製造する方法と、一体型センサを用いて温度信号を生成する方法とを含む。
【0019】
追加的な特徴はいずれも、様々な側面のいずれかと一緒に結合され、組み合わされることができる。他の利点は、特に、他の従来技術を超えることになる利点は、当業者には明らかであろう。本発明の請求項から逸脱することなく、膨大な変形及び修正がなされることができる。従って、本発明の形式は説明目的であるにすぎず、本発明の範囲を限定するものではないことをはっきりと理解されたい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明がどのように実行されるかが、以下、添付された図面を参照して例示を介して説明されることになる。
【0021】
本発明は、特定の実施形態を参照し、かつ特定の図面を参照して説明されることになるが、本発明は、それらに限定されるものではなく、請求項によってのみ限定されるものである。請求項におけるいかなる参照符号も請求項の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。記載された図面は、概略的なものに過ぎず非限定的なものである。図面において幾つかの要素の大きさが誇張されている場合があり、説明目的のため実際のスケール通りに描かれていない場合がある。本明細書及び請求項における「有する」という用語は、他の要素又はステップの存在を排除するものではない。単数形名詞を参照するとき「a」「an」「the」といった不定冠詞又は定冠詞が使用される場合、これは、特に他に記述が無い限り、その名詞の複数形を含む。
【0022】
更に明細書及び請求項における第1、第2、第3等の用語は、同様な要素間を識別するのに使用され、必ずしも順次的な順序又は実際の順序を表すものではない。そのように使用されるこれらの用語は、適切な環境下において互いに交換可能であり、本書に述べられる本発明の実施形態は、本書に説明又は図示される順序以外の他の順番で動作することができる点を理解されたい。
【0023】
更に、明細書及び請求項におけるトップ(表面)、ボトム(底面)、オーバー(上)、アンダー(下)等の用語は、説明目的で使用されるものであり、必ずしも相対的な位置を表すものではない。そのように使用されるこれらの用語は、適切な環境下において互いに交換可能であり、本書に述べられる本発明の実施形態は、本書に説明又は図示される方向以外の他の方向で動作することができる点を理解されたい。
【0024】
請求項において使用される「comprising(有する)」という用語は、その後に記載される手段に限定されるものとして解釈されるべきではないことに留意されたい。即ち、その用語は、他の要素又はステップを除外するものではない。従って、記載された特徴、整数(integers)、ステップ又は参照される要素の存在を特定するものとして理解されることになるが、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ若しくは要素又はこれらのグループの存在又は追加を排除するものではない。従って、「手段A及び手段Bを有するデバイス」という表現の範囲は、要素A及び要素Bのみからなるデバイスに限定されるべきではない。それは、本発明に関して、デバイスの関連要素がAとBとのみであることを意味する。
【0025】
以下の明細書及び請求項において、「熱的に作動可能(actuatable)」又は「熱的に作動可能(actuable)」という用語は、少なくとも1つの次元における温度依存変化に関する。その変化は、熱膨張のみにより生成される線形運動を超える。従って、この用語は、単純な熱膨張と比べて拡張された、拡張熱依存運動をさす。この拡張運動は、様々な物理装置により与えられることができる。例えば、1つの物質を別の物質(例えばゲル)と混ぜることによって、加熱したとき曲がる傾向にあるようポリマ物質が処理される方法によって、2つの似ていない物質の並置によって、又は形状若しくはサイズにおける明らかな変化を伴い所定の温度で解放される内部圧力の凍結によって等により、与えられることができる。
【0026】
本発明は、一体化された温度センサ及び対応する方法に関する。特に、MEMSデバイス、バイオセンサといったセンサ、分子診断デバイス、生物反応器、及びマイクロ流体「システムオンチップ」又は「ラボチップ」といったものに一体化される温度感知デバイスに関する。ほとんどの斯かるデバイスのいずれかにおいて、例えば、(生)化学分析のためのバイオチップにおいて、正確な温度制御、及び正確な温度測定が重要である。上述される実施形態は、バイオチップ/バイオセンサ/PCRチャンバといったデバイスにおける温度の局所測定手段を実現する方法に関連する。斯かるデバイスは、通常1〜100ミクロンの小さなスケールであり、比較的低コストのソリューションを用いる。本発明の実施形態は、温度感知のための一体化された温度感知ポリマ微小構造を与える。これは、医療又は生物医学解析のためのバイオチップにおける用途又は他の用途に適している。温度感知ポリマ微小要素は、1〜100ミクロンのスケールで、(生)化学解析のためバイオチップにおける温度を局所的に測定することができる。既存のソリューションに比べて、これは、局所温度測定の利点、温度勾配を評価できる利点を提供し、可能性として、このソリューションは、既存の方法より安価である。
【0027】
変形による温度変化に反応する複数のポリマ物質が知られている。すべての物質は、温度に何らかの態様で反応するが、簡単で効率なアクチュエータに対しては、熱膨張係数は通常余りに低すぎる。本発明によれば、温度と共にある次元において変化するポリマ物質が使用される。それは、熱膨張によりもたらされるその次元における変化を超える。例えば、ポリマゲルの体積が温度変化に依存する場合がある。この背景にあるメカニズムは、仮にポリマ分子が溶媒内に置かれると、一方でポリマコイルを縮ませる傾向を持つ、ポリマセグメント間の引力と、他方でポリマセグメントと溶媒分子との間の引力とのバランスが、温度と共に変化するということに基づかれる。ポリマ溶媒システムが注意深く選択及び制御されるとき、この効果は拡大されることができ、かなり突然のフェーズ変形として現れることができる。そのポリマゲルは、ブロック形状又は細長い形状とすることができる。ポリマネットワークを形成するポリマが「一緒に結合される」場合には、微小アクチュエータを製造することが可能である。斯かる熱的にアクティベートされたゲルは、例えば、ポリアクリルアミド派生物及びポリペプチドとすることができる。これらの物質の、又は他のポリマ物質との組み合わせでの2層又は複数層のフィルム構造を作ると、温度変化に従わせることで反応するフィルムが得られる。別の例は、形状記憶ポリマ(SMP)により形成される。実際に、ちょうど議論された熱に反応的なポリマゲルが、SMPとして知られる物質のグループに属するものとして表示されることができる。SMPは、線形な、熱可塑性のマルチブロック共重合体又は共有架橋されたポリマネットワークのいずれに関しても、ドイツ国AachenにおけるmNemoscience GmbHから商業的に利用可能である。化学的に架橋された形状記憶ネットワークにおいて、永久形状は、共有結合(covalent)ネットポイントにより安定化される。一時形状は、結晶化されたセグメント鎖又はセグメント鎖のガラス遷移によってのいずれかで固定されることができる。SMPは、アクリル酸nステアリル・アクリレート・ハイドロゲル(co-crylic acid-n-stearyl acrylate hydrogels)から知られる。他の物質システムは、ポリウレタン開細胞(フォーム)構造及びポリ(スチレンブロックブタジエン)である。ポリウレタン開細胞フォームは、Sokolowskiにより述べられている(Sokolowskiらによる「Cold hibernated elastic memory(CHEM) self-deployable structures」、Proc. SPIE 6th Annual Int. Symposium on Smart Structures and Materials, SPIE Proc. Vol.3669(1999) pp179-185を参照)。これらの物質は、フォームの弾性的回復力及び形状記憶を利用する。実際には、これらの物質は、軟化(ガラス遷移)温度Tgを超える温度で変形(圧縮)される。Tgを下回って冷却されると、力が除去されたとき、これらの物質は、変形された状態を維持する。Tgを上回る加熱は元の形状を回復させる。そのポリマは、ブロック形状又は細長い形状とすることができる。架橋されたポリマ物質は、架橋されていない物質のガラス遷移温度又は溶解点を越えて加熱されるとき、「凍結された」形状を持つことができる。この凍結状態の圧は、温度が再度上昇されるとき、物質溶解を伴うことなく解放されることができる。なぜなら、その物質は架橋されるからである。種々のポリマがこのようにして変形されることができる。例えば、EPDM、ポリエチレン等である。更に追加的な例は、熱的に反応する液晶エラストマLCEである。LCEは、3つの主成分から構成される。1)例えばシリコンゴム又はPDMS(ポリジメチルシロキサンゴム)といったエラストマバックボーン、2)側鎖液晶分子、及び3)エラストマバックボーン鎖を相互接続し、液晶特性も示すことができる側鎖架橋剤である。例えば、LC(液晶)物質をエラストマネットワークに組み込むことにより、加熱に応じて特定の温度(ネマチック等方性温度)を通過すると、エラストマ分子のバックボーンにおける遷移が生じ、長さを変化させる物質が作られることができる。Molらによる上述の記事において論じられるように処理状態を注意深く制御することにより、フィルムの厚さを超えるLC物質の方向での傾斜を取得することが可能である。その結果、他方が膨張する間、フィルムの片側が接触する。これは、特定の温度でのフィルムの可逆な巻き上げを生み出す。図1は、斯かる熱的に作動されるLCEフィルムのさまざまな温度における巻き上げの様子の断面写真を示す。
【0028】
LC分子の形状とエラストマネットワークの架橋密度とを制御することにより、フィルムの形状と温度との関係が調整されることができる。これは図1を参照されたい。図1から明らかなように、フィルムの形状は、温度と共に変化し、従って、その形状は、局所温度を表すことができる。
【0029】
本発明の1つの側面において、フィルムは、標準的なリソグラフィにより微小要素へと構造化される。この技術において、光感知物質(フォトレジスト又はレジストと呼ばれることもある)が、熱的に作動可能なポリマ物質を有するフィルムにデポジットされ、光のパターンにさらされる。光感知物質又は「レジスト」で露光された部分は、除去に対して抵抗的になる。一方、露光されていない物質は容易に除去されることができる。生成されるパターン化マスクが、例えばエッチングを用いて、ポリマフィルムの一部を除去するのに使用されることができる。本発明はその範囲内に、熱的に作動可能なポリマ物質が、感光的であるよう「デザインされる」ことができることも含む。従って、それらは、追加的なマスキング抵抗層を必要とすることなく、1つのリソグラフィック的な処理ステップにおいて構築されることができる。その構造に対する通常のサイズは、長さにおいて10〜100ミクロン、幅において1〜10ミクロン、厚みにおいて数ミクロンとすることができる。バイオチップ/バイオセンサ/PCRチャンバにおける要素の一体化により、その構造の形状を観測することで、温度が局所スケールで評価されることができる。
【0030】
微小構造体の形状は、任意の適切な方法で観測されることができ、温度値へと変換されることができる。例えば、システムが光学的に透過状態、又は少なくとも部分的に透過とされるとき、微小構造体は光学的に観測されることができる。代替手法は、磁気検出である。熱的に作動可能なポリマ要素は、例えば磁気ナノ粒子といった磁気粒子を含むことができる。その動きは、GMR、AMR、TMR又はホール効果センサといった磁気センサを用いて検出されることができる。斯かるセンサは、センサが配置される基板内に一体化されることができる。更に別の代替手法は、容量検出である。この場合、ポリマ要素は、例えば導電フィルムといった導電物質を含むことができる。すると、第1の電極と第2の対電極とが下の基板にある状態が形成される。2つの電極はコンデンサを形成し、そのポリマ要素の変形は、結果として、標準的な技術により測定されることができる静電容量における変化を生じさせることになる。
【0031】
図3は、マイクロ流体チャンバの本発明による実施形態の例を示す。これは、本発明によるアクチュエータの実施形態のいずれにおいても使用されることができる。マイクロ流体チャンバ100、例えばPCRチャンバは、特定の温度で維持される必要がある。チャンバ100内部の温度は、チャンバ100の壁10に付けられる複数の細長い温度感知要素/アクチュエータ20を用いて監視される。これらのアクチュエータ20は、チャネルベースに沿って及びチャネルベースにわたり、並びに/又は壁10に沿ってアレイ状に配置される。各細長いアクチュエータ20の1つの端部は、チャンバ100の壁に固定される。細長いアクチュエータ20の他の端部は、壁から離れて巻き上がるアクチュエータの自由部を形成する。温度における変化は、アクチュエータ20の形状を変化させることになる。これは、例えば、光学的、磁気的又は電気的手段(後述参照)を用いて検出される。そのシステムは、各個別のアクチュエータ20の形状変化が分離して監視されることができるよう構成されることができる。斯かる場合、読み出し電子機器が与えられるだけでなく、温度に伴うアクチュエータ20における変化を感知する検出器40が与えられる。例えば、各アクチュエータ20は、個別に選択され、アドレス付けされることができる態様で与えられる。アクチュエータのサイズ(長さにおいて10〜100ミクロン、幅において1〜10ミクロン)を考えると、温度勾配は、(幅方向において)1〜10ミクロンの通常の長さスケールで、又は(長さ方向において)10〜100ミクロンのスケールで測定されることができる。チャンバ100に一体化される加熱要素14(例えば抵抗ワイヤ16)と組み合わせて、電子読み出し及びフィードバックシステムを用いると、チャンバ100内での能動的な温度制御が可能である。
【0032】
図4は、一体化されたセンサを持つバイオチップの一般的な実施形態の概略図を示す。図示されるように、基板10において、アクチュエータ20は、固定された一端と、巻き上がることができる自由な他端とを用いて形成される。固定及び自由部の多くの可能な構成が存在する。基板の面の外に巻き上がる層として図示されるが、本発明は、その範囲内に、基板の平面に平行に巻き上がる構成も含む。アクチュエータの一部は、例えば所望の場合に、非線形応答を生み出すため、温度に関する異なる変形係数を持つよう作られることもできる。アクチュエータの自由端部に1つの部分があり、他の部分は基板に固定されるような2つの部分の変形検出器30も図示される。これは、アクチュエータの変形の量を検出するよう構成される。これは、1つ又は複数の閾値に対する検出又は連続的なアナログ検出を実行することができる。検出器は、任意の適切な検出原理に基づかれることができる。例えば、光学的、容量的、若しくは磁気的原理、又は他の技術に基づかれる。それらの原理又は技術の何らかの特殊な実施形態が上述されている。検出器により出力される信号は、バイオチップの他の要素へのインターコネクト70を介して結合される。
【0033】
信号処理回路40が図示される。これは、閾値と比較することにより、例えばフィルタリング若しくは訂正を適用することにより、又は制御処理への入力としてその信号を用いることにより、信号を処理することができる。例示としてのみ、信号処理部は、微小チャネル60におけるサンプルのフローを制御するためにバルブ50に結合される。その信号は、例えば(一体化された)加熱要素により微小チャネルにおける温度を制御するのにも使用されることができる。明らかに、これは、図示されていない他の部分を備える、より複雑なチップの一部となることができる。温度センサは、製造工程において一体化されることができるので、追加的な製造コストが掛かる必要はほとんどない。精度を増加させるため、センサは、温度が測定される場所である微小領域、微小チャネル、又はチャンバに隣接して構成されることができる。斯かるセンサのアレイは、温度勾配を検出するよう構成されることができるか、又は精度を改善するため複数の信号の平均が取得されることを可能にするよう構成されることができる。連続測定を可能にするには可逆変形が必要とされることが多いが、時には、不可逆変形も有益であろう。その結果、最大又は最小温度が測定され、格納されることができるからである。バイオチップ以外の温度センサに対する他の用途も本発明の範囲内に含まれる。
【0034】
図5は、アクチュエータ変形の磁気センシングを用いる別の実施形態を示す。温度感知アクチュエータ要素20は、マイクロ流体チャネル壁10に付けられ、磁気物質を含む。例えば、超常磁性体粒子、強磁性体粒子が、アクチュエータ要素20を形成する熱作動可能な物資内に含まれるか、又は磁気フィルムが使用される。マイクロ流体チャネルの壁10において、磁場センサ要素40が一体化される。例えば、磁場センサ40は、GMR、TMR、AMR、若しくはホール効果センサ、又は他の任意の適切なセンサとすることができる。斯かるセンサのいくつかに対して、通常電気抵抗が、存在する磁場の大きさに基づき存在する。この磁場は、アクチュエータにより誘導される磁場、又はアクチュエータの位置により変調、修正、若しくは変化される磁場とすることができる。温度変動によりアクチュエータの形状が変化する場合、磁場センサ40により経験される磁場が変化し、抵抗といったセンサの物理的特性における変化として検出されるか、及び/又は、測定される磁場を表す出力信号が生成される。超常磁性体粒子を使用する場合には、粒子を磁化するため外部磁場が必要とされる。本実施形態を要約すると、温度変化によりもたらされるアクチュエータ20の形状変化が、磁場を変化させ、この変化が、磁場センサ40により検出される。
【0035】
図6は、電気的な、この場合容量性検出を用いる実施形態を示す。温度感知アクチュエータ20が電極24を含む。別の電極26が、マイクロ流体チャネル10の壁に一体化される。その壁には、要素20が付けられる。2つの電極24、26は、コンデンサを形成し、その容量が、簡単な電気回路40を用いて測定されることができる。温度変化により、アクチュエータ20の形状が変化する場合、電極24と26との間の容量が変化することになり、感知回路40により検出されることができる。
【0036】
本発明の実施形態は、比較的低コストのソリューションを用いて、1〜10ミクロンのスケールで、バイオチップ/バイオセンサ/PCRチャンバにおける温度の局所測定を可能にする。温度勾配感知は、可能となるであろう。可能性として、この手法は、既存のソリューションと比べてコスト効率的であろう。
【0037】
分子診断といった(生)化学解析のためのバイオチップが、例えば、ターゲット分子(例えばたんぱく質、DNA)を検出するため、及び1〜10ミクロンで温度感知が必要とされる他の任意の用途におけるバイオセンサを有する。
【0038】
請求項の範囲内の他の変形例が、当業者には予想されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】熱で作動されるLCE構造の変形における変動を温度の関数として示す図である。
【図2】ポリマ・マイクロアクチュエータを示す図である。
【図3】温度センサを含むバイオセルの一般的構成を示す図である。
【図4】本発明によるMEMS温度センサの実施形態の概略的な表示を示す図である。
【図5】本発明による温度センサの別の実施形態の概略的な表示を示す図である。
【図6】本発明による温度センサの別の実施形態の概略的な表示を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小機械アクチュエータを有する一体型温度センサであって、温度に基づき変形する熱的に作動可能なポリマ物質と、前記アクチュエータの変形に基づき、信号を出力する検出器とを有するセンサ。
【請求項2】
前記アクチュエータが、エラストマ物質を有する、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記アクチュエータが、エラストマネットワークにおけるLC物質を有する、請求項1又は2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記検出器が、光学的、磁気的、又は容量的検出器のいずれかを有する、請求項1乃至3のいずれかに記載のセンサ。
【請求項5】
前記検出器が、多くのレベルの変形を検出するよう構成される、請求項1乃至4のいずれかに記載のセンサ。
【請求項6】
前記アクチュエータが、層として構成され、前記変形は、前記層の巻き上げを有する、請求項1乃至5のいずれかに記載のセンサ。
【請求項7】
前記層が、モノリシック層である、請求項6に記載のセンサ。
【請求項8】
前記アクチュエータが、100ミクロン未満の長さを持つ、請求項1乃至7のいずれかに記載のセンサ。
【請求項9】
サンプルを解析する手段を持つバイオチップであって、請求項1乃至8のいずれかに記載の一体型温度センサを持つ、バイオチップ。
【請求項10】
信号を処理する集積回路を持つ、請求項9に記載のバイオチップ。
【請求項11】
前記集積回路が、解析処理のための一体型コントローラを有し、前記コントローラは、該コントローラに結合されるセンサにより出力される信号を感知する、請求項10に記載のバイオチップ。
【請求項12】
一体型温度センサを製造する方法において、温度に基づき変形する熱的に作動可能なポリマ物質を有する微小機械アクチュエータを形成するステップと、前記アクチュエータの変形に基づき信号を出力するよう構成される検出器を形成するステップとを有する、方法。
【請求項13】
温度信号を生成する方法において、温度に基づき変形する熱的に作動可能な物質を有する微小機械アクチュエータを有する一体型温度センサを与えるステップと、検出器を用いて前記アクチュエータの変形に基づき信号を出力するステップとを有する、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2009−535638(P2009−535638A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−508600(P2009−508600)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【国際出願番号】PCT/IB2007/051610
【国際公開番号】WO2007/129256
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】