説明

一体型空気調和機

【課題】吹出口の開口面積を大きくして、吹出風量を増加させることのできる一体型空気調和機を提供する。
【解決手段】室内熱交換器10が吸込グリルと、ケーシング13との間で前方に傾斜して配置されることにより、吸込グリルの下部と、ケーシング13との間に空間ができ、同空間に、背面側に電装箱を備えた操作ユニット7を配置することができる。これにより、吹出口を前面パネルの上端部から下端部に至るように開口面積を大きくして形成することができ、吹出風量を増加させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体型空気調和機に関わり、より詳細には、背面側に電装箱を備えた操作ユニットを吸込グリル側に配置して吹出口の面積を拡大させ、吹出風量及び熱交換量を向上させる構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一体型空気調和機は、ベース上を仕切板により室内側と室外側とに区画し、室内側に室内熱交換器とシロッコファンとが配設し、室外側に室外熱交換器とプロペラファンと、同プロペラファンと前記シロッコファンとを駆動するモータと、圧縮機とを配設している。また、ベースは外胴内に引き出し可能に収納され、外胴の前面には前面パネルが取り付けられている。
【0003】
図5で示す一体型空気調和機40は、外胴42内に各機器を搭載したベースを収納するとともに前面に前面パネル43を装着している。同前面パネル43の一側には、多数の桟を前面に形成し、裏面に塵埃を除去するフィルタを備えた吸込グリル44が設けられ、他側には、複数の左右風向板45aと複数の上下風向板45bとを備えた吹出口45が形成されるとともに、同吹出口45の下方には、ON/OFFスイッチ、温度調整ノブ等を前面側に備える一方、背面側に電装箱を備えた操作ユニット46が設けられている。
【0004】
吸込グリル44から吸込まれた室内の空気は、同吸込グリル44の裏面に備えられたフィルタにより含有する塵埃を除去された後、室内熱交換器内を流れる冷媒と熱交換され、熱交換された空気はシロッコファンにより吹出口45から再び室内に吹出されるようになっている。
【0005】
しかしながら、吹出口45は下方に電装箱を備えた操作ユニット46を設けていることにより面積の拡大は制限されており、吹出面積拡大による吹出風量の増加を図ろうとしても困難であった。
【0006】
上記した問題に対処する為、例えば、一体型空気調和機とは異なるが特許文献1に記載されているように、熱交換器と、同熱交換器の下流に設けられるファンとを内蔵する壁掛型の室内機において、熱交換器よりも上流側の空間に電気品収納箱を配置することにより、室内機の幅方向のほぼ全域に熱交換器を設置できるようになり、空気流路を通過する空気流量を増加させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−156135号(3頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、吹出口の開口面積を増大させて、吹出風量を増加させることのできる一体型空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するため、外胴に収納されるベース上を仕切体により室内側と室外側とに区画し、前記室内側に室内熱交換器と、シロッコファンを収納し吹出口に至るファンケーシングとを配設し、前記室外側に圧縮機と室外熱交換器とプロペラファンとを配設する一方、前記外胴の前面側に前面パネルを設け、同前面パネルの一側に吸込グリルを装着し他側に前記吹出口を形成するとともに、前記室内側に電装箱を背面に備えた操作ユニットを配置してなる一体型空気調和機において、前記吸込グリルと前記ファンケーシングの間に、前方に傾斜する前記室内熱交換器を配置し、前記吸込グリルの下部と前記室内熱交換器との間に空間を形成し、前記空間に前記操作ユニットを配置する一方、前記吹出口を前記前面パネルの上端部から下端部に至るように形成した構成となっている。
【0010】
また、前記ベースは周縁に、前面フランジと側面フランジと後面フランジとを有し、前記操作ユニットは前記前面フランジに固定されてなる構成となっている。
【0011】
また、前記前面フランジに、左右に螺子挿通孔を穿設するとともに把手を前面側に突出するように備えた前面抑え部を形成し、前記前面フランジの後方に、内側に凹む後面抑え部を形成した固定用フランジを設け、前記前面抑え部と前記後面抑え部とで、前記操作ユニットを収納し、且つ固定する操作ユニット固定部を設けてなる構成となっている。
【0012】
また、前記前面フランジを内側に窪ませ前記操作ユニットを収納する操作ユニット固定部を形成する一方、同操作ユニット固定部の両側に、把手部を配置した構成となっている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、室内熱交換器が前方に傾斜して設けられることにより、背面側に電装箱を備えた操作ユニットを吸込グリルの下部に配置することができ、これにより、吹出口を前面パネルの上端から下端に至るように形成して吹出風量を増加させることができるようになっている。
【0014】
また、操作ユニットをベースの前面フランジに固定することにより、操作ユニットの装着が容易となっている。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による一体型空気調和機を示す外観斜視図である。
【図2】本発明による一体型空気調和機の第一実施例による内部構成を示す斜視図である。
【図3】本発明による一体型空気調和機の第一実施例による内部構成を示す断面図である。
【図4】本発明による一体型空気調和機の第二実施例による内部構成を示す斜視図である。
【図5】従来の一体型空気調和機を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいた実施例として詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
本発明による一体型空気調和機は、図1及び図2の斜視図で示すように、底面を構成する板金材からなるベース1と、同ベース1を収納自在に保持する断面コ字状に形成された板金材からなる外胴2と、同外胴2の前面に装着された樹脂材からなる前面パネル3とで本体を構成している。ベース1の周縁には、前面フランジ1dと、側面フランジ1eと、後面フランジ1fとが形成されている。
【0018】
前面パネル3の一側には図示しない吸込口が形成され、同吸込口の前面には、多数の桟を上下方向に形成した樹脂材からなる吸込グリル3aが着脱自在に装着されている。また、吸込口と吸込グリル3aとの間には、吸込まれた空気に含有される塵埃を捕集する図示しないフィルタが着脱自在に装着されている。前面パネル3の他側には、複数の左右風向板5と複数の上下風向板6を可動自在に備えた吹出口4が設けられている。
【0019】
吸込グリル3aの下端中央には、前面側にON/OFFスイッチ7a、温度調整ノブ7b等を備える一方、背面側に電装品を収納した電装箱を備えた操作ユニット7が設けられている。同操作ユニット7を吸込グリル3aの下端中央に配置することにより、吹出口7を前面パネル3の上端部から下端部に至るように形成でき、これにより吹出口の開口面積を大きくすることができるようになっている。
【0020】
吸込グリル3aから吸込まれた室内の空気は、フィルタにより含有する塵埃を除去され、後述する室内熱交換器10を通過して冷媒と熱交換された後、複数の左右風向板5及び複数の上下風向板6により吹出方向を偏向されながら、後述するシロッコファン12により吹出口4から再び室内に送出されるようになっており、吹出口4の吹出口の開口面積の拡大により、吹出風量が増加するようになっている。
【0021】
次に、内部構成について説明する。図2の斜視図で示すように、底面を構成するベース1は、中央部に配置された仕切体1aにより前後に区画され、区画された前方には室内部1bが形成され、区画された後方には室外部1cが形成されている。
【0022】
室外部1cには、圧縮機8及びアキュームレータ9が配設されるとともに、平行して並べられた多数のフィンと同フィンに直交するように蛇行状に配置された伝熱管とからなり、U字状に形成された室外熱交換器11と、同室外熱交換器11に囲まれるように、プロペラファン14が配設されている。また、室外部1cには仕切体1aに近接して両軸を備えた後述するファンモータ16が設けられ、同ファンモータ16の一方の回転軸は室内ファンとしてのシロッコファン12に接続され、他方の回転軸は室外ファンとしてのプロペラファン14に接続されるようになっている。図1で示す外胴2の両側面に形成された吸込口2aから吸込まれた室外の空気は、プロペラファン13により室外熱交換器11に送出され、同室外熱交換器11を通過して冷媒と熱交換された後、背面側に吹出されるようになっている。
【0023】
室内部1bには、室内ファンとしてのシロッコファン12と、同シロッコファン12を収納し、吸込グリル3aから吸込まれた室内の空気が後述する室内熱交換器10により熱交換された後、前述した吹出口4に導くファンケーシング13が設けられている。
【0024】
また、ファンケーシング13の前面には、図3に示すように、室内熱交換器10が前方に傾斜するようにして設けられている。同室内熱交換器10は室外熱交換器11と同様に、平行して並べられた多数のフィン10bと同フィン10bに直交するように蛇行状に配置された伝熱管10cと、フィン10bの両側に配置された側板10aとからなり、前述したように吸込グリル3aから吸込まれた室内の空気が伝熱管10cを流れる冷媒と熱交換し、熱交換された空気はケーシング13のシロッコファン12に吸引されるようになっている。
【0025】
ベース1の前面中央には、操作ユニット固定部15が形成されており、同操作ユニット固定部15に、前述したようにON/OFFスイッチ7a及び温度調整ノブ7b等を前面側に備え、背面側に電装箱を備えた操作ユニット7が配置されるようになっている。操作ユニット固定部15はベース1の前面フランジ1dと、同前面フランジ1dの内側に立設された固定用フランジ1gとから形成され、A部詳細で示すように、前面フランジ1dには、左右に一対の螺子挿通孔15dを穿設するとともに、前面に切り起こしによる把手15cを備え、周囲より段差を有して高く形成された前面抑え部15aが形成され、固定用フランジ1gには前面抑え部15aに対応して、内側に矩形状に窪んだ後面抑え部15bが形成されている。
【0026】
背面側に電装箱を備えた操作ユニット7は、前面上部7cにON/OFFスイッチ7a及び温度調整ノブ7b等を備える一方、前面下部7dは前面フランジ1dの板厚分、前面上部7cより凹んで形成され、同前面下部7cの両側には、前面抑え部15aの螺子挿通孔15dに対応して一対の螺子孔7eが穿設されている。
【0027】
次に、操作ユニット7が操作ユニット固定部15に収容されるとともに固定された状態について説明する。図3の断面図で示すように、ベース1上には、前述した室内熱交換器10、ケーシング13、同ケーシング13に収納されたシロッコファン12、ファンモータ16、プロペラファン14及び室外熱交換器11等が配設されており、ベース1の前面には操作ユニット7が設けられるようになっている。
【0028】
操作ユニット7が前面抑え部15aと後面抑え部15bとに挟まれるように上方から操作ユニット固定部15に収容されると、周辺フランジ1dの前面抑え部15a両側に穿設された螺子挿通孔15dに図示しない螺子が挿入されるとともに、操作ユニット7の前面下部7cに穿設された螺子孔7eに螺合するようになっており、これにより操作ユニット7は操作ユニット固定部15に固定されるようになっている。
【0029】
室内熱交換器10が図3において図示しない吸込グリル3aと、ケーシング13との間で前方に傾斜して設けられることにより、室内熱交換器10の下部と吸込グリル3aとの間に空間ができ、同空間に前述したように操作ユニット7を配置することができるようになっている。
【0030】
また、ベース1の操作ユニット固定部15に操作ユニット7を配置することにより、吹出口4を前面パネル3の上端部から下端部に至るように吹出口の開口面積を大きく形成することができ、これにより、吹出口4からの吹出風量を増加させることができるようになっている。
【0031】
また、前面フランジ1dの前面抑え部15aには切り起こしによる把手15cが形成されているが、前面抑え部15aと後面抑え部15bとからなる操作ユニット固定部15に操作ユニット7が収容され且つ固定されることにより、把手15cを形成した前面抑え部15aの強度が向上するようになっている。これにより、メンテナンス作業時に、把手15cに手を掛けて各機器が搭載された重量のあるベース1を外胴2から引き出したり、収納したりしても前面抑え部15aの強度が向上していることにより、前面抑え部15a及び前面フランジ1dでの変形を防ぎながら円滑に作業を行なえるようになっている。
【0032】
本体の設置作業あるいはメンテナンス作業においては、前述したように、室内熱交換器10、プロペラファン14、室外熱交換器11等を搭載したベース1を、把手15cに手を掛けて外胴2から引抜いたり収納する作業が行なわれるが、この際、把手15cを形成した前面抑え部15a及び周辺フランジ1dの強度が向上していることにより、これらに引張力及び押圧力が掛かっても変形が発生することを防止して円滑な作業が行なえるようになっている。
【実施例2】
【0033】
次に、第二実施例について説明する。第二実施例は、後述する操作ユニット35と操作ユニット固定部31bの形状が第一実施例と相違するが、他は第一実施例と同様である。
【0034】
第二実施例における一体型空気調和機30は、図4に示すように、ベース31に形成された前面フランジ31aを内側に窪ませ、一対の側部フランジ31dと後部フランジ31cとにより操作ユニット固定部31bを形成している。また、前面フランジ31aの両側には螺子孔31fが穿設されるとともに、切り起こしによる把手31eが夫々形成されている。
【0035】
操作ユニット35は電装品を収納した箱体35bと、同箱体35bより幅広に形成されON/OFFスイッチ等を備えた前面板35aとからなり、同前面板35aの両側には、周辺フランジ31aに穿設された螺子孔31fに対応して螺子挿通孔35cが穿設されている。
【0036】
操作ユニット35が操作ユニット固定部31bに前面側から挿入されると、螺子36が前面板35dの螺子挿通孔35cに挿通されるとともに、前面フランジ31aの螺子孔31fに螺合され、これにより、操作ユニット35が操作ユニット固定部31bに固定されるようになっている。
【0037】
第二実施例も第一実施例と同様に、ベース31の前面フランジ31aに操作ユニット35を設けることにより、風向板33を備えた吹出口32を図示しない前面パネルの上端部から下端部に至るように吹出口32の開口面積を大きくして形成することができ、吹出口32からの吹出風量を増加させることができるようになっている。
【0038】
また、第一実施例における固定用フランジ1gが不要となってベース31の組立コストが低減されるとともに、操作ユニット固定部31bにより把手31eを形成した前面フランジ31aの強度が増加し、設置作業あるいはメンテナンス作業が円滑に行なえるようになっている。
【0039】
尚、ファンケーシング34の上面には配線溝34aが前後方向に形成されており、操作ユニット35と図示しない圧縮機及びファンモータとを接続する配線が配線溝34aに収納できることにより配線作業が容易に行なえるようになっている。
【符号の説明】
【0040】
1 ベース
1a 仕切板
1b 室内部
1c 室外部
1d 前面フランジ
1e 側面フランジ
1f 後面フランジ
1g 固定用フランジ
2 外胴
3 前面パネル
3a 吸込グリル
4 吹出口
5 左右風向板
6 上下風向板
7 操作ユニット
7a ON/OFFスイッチ
7b 温度調整ノブ
7c 前面上部
7d 前面下部
7e 螺子孔
8 圧縮機
9 アキュームレータ
10 室内熱交換器
10a 側板
10b フィン
10c 伝熱管
11 室外熱交換器
12 シロッコファン
13 ファンケーシング
14 プロペラファン
15 操作ユニット固定部
15a 前面抑え部
15b 後面抑え部
15c 把手
15d 螺子挿通孔
16 ファンモータ
30 一体型空気調和機
31 ベース
31a 前面フランジ
31b 操作ユニット固定部
31c 後部フランジ
31d 側部フランジ
31e 把手
31f 螺子孔
32 吹出口
33 風向板
34 ファンケーシング
34a 配線溝
35 操作ユニット
35a 前面板
35b 箱体
35c 螺子挿通孔
36 螺子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外胴に収納されるベース上を仕切体により室内側と室外側とに区画し、前記室内側に室内熱交換器と、シロッコファンを収納し吹出口に至るファンケーシングとを配設し、前記室外側に圧縮機と室外熱交換器とプロペラファンとを配設する一方、前記外胴の前面側に前面パネルを設け、同前面パネルの一側に吸込グリルを装着し他側に前記吹出口を形成するとともに、前記室内側に電装箱を背面に備えた操作ユニットを配置してなる一体型空気調和機において、
前記吸込グリルと前記ファンケーシングの間に、前方に傾斜する前記室内熱交換器を配置し、前記吸込グリルの下部と前記室内熱交換器との間に空間を形成し、前記空間に前記操作ユニットを配置する一方、前記吹出口を前記前面パネルの上端部から下端部に至るように形成したことを特徴とする一体型空気調和機。
【請求項2】
前記ベースは周縁に、前面フランジと側面フランジと後面フランジとを有し、前記操作ユニットは前記前面フランジに固定されてなることを特徴とする請求項1に記載の一体型空気調和機。
【請求項3】
前記前面フランジに、左右に螺子挿通孔を穿設するとともに把手を前面側に突出するように備えた前面抑え部を形成し、前記前面フランジの後方に、内側に凹む後面抑え部を形成した固定用フランジを設け、前記前面抑え部と前記後面抑え部とで、前記操作ユニットを収納し、且つ固定する操作ユニット固定部を設けてなることを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の一体型空気調和機。
【請求項4】
前記前面フランジを内側に窪ませ前記操作ユニットを収納する操作ユニット固定部を形成する一方、同操作ユニット固定部の両側に、把手部を配置したことを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の一体型空気調和機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−68334(P2013−68334A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205484(P2011−205484)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000006611)株式会社富士通ゼネラル (1,266)
【Fターム(参考)】