説明

一成分系ポリウレタン接着剤系の複合材料の使用方法

本発明は、二層以上の木材層をもつ複合材料の、構造エンジニアリング、船や車両や飛行機の建設、発電システム、鉱業または家具の生産における支持材部品としての使用方法に関する。これらの木材層は、フリーのNCO基をもつプレポリマーを含む一成分系ポリウレタン接着剤により相互に結合され、この木材は真正木繊維の体積比率が50〜70%である構造をもつ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ねて設けられた2層以上の木材状材料の層からなる複合材料の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料は、極めて広い範囲の利用分野をもつ。
【0003】
持続的な資源利用のため、再生可能原料からの複合材料が特に魅力的である。現在、コンテナーの床材用途のみでも一年間で約800000mの熱帯性の硬質木材(特にアピトン等)が使用されており、これは、約560kmの面積(ワシントンDCの面積の約3倍)の熱帯多雨林に相当し、これが毎年この目的のために消滅している。すでに関係する法令規制と数量規制によりこれらの熱帯多雨林材料の入手が難しくなっており、代替材料が懸命に探されている。
【0004】
US2007/0088103には、ウレタン変性イソシアネート系の非発泡ポリウレタンバインダーで貼り合わせた、特に二層からなる複合材料が開示されている。この複合材料の層は、リグノセルロース層であり、特にコルク、木材、草または藁である。
【0005】
しかしながら、この文書には、低密度で高い機械的許容荷重と弾力性をもつ再生可能原料からなる複合材料についての記載はない。
【0006】
積層材料が、木材から、個々の層をフェノール−ホルムアルデヒド接着剤で相互に結合させて製造可能であることは公知である。また、木材に接着剤がよく含浸/浸透することが強固な木材の接着剤結合に重要であり、接着剤の木材細胞への浸入が望ましいことも、当業界の熟練者には知られている。L.P. Futo, “木材表面塗装の電顕写真像(Elektronenmikroskopische Direktabbildung von Leimfugen und Oberflachenbeschichtungen der Holzwerkstoffe)”、ETH Zurich、in: Holz als Roh− und Werkstoff 31 (1973)、pp.52−61には、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂のブナベニア材内への浸入が、その接着的な貼合に有効であることが示されている。しかしながら、フェノール−ホルムアルデヒド接着剤を用いて生産された木材を含む積層材料が、ある場合には0.75〜1.0kg/lと、あるいは>1kg/lと比較的に高密度であるという事実は、望ましくないことである。しかしながら、特に望ましくないのは、静的性能が不十分なこと、また特に動的性能が不十分なことである。この結果、静的荷重下では、割れによる初期故障(Institute of International Containier Lessors (IILC)、Technical Bulletin (TB) 001、September 1, 2002、短スパン試験)が、特にこれからフェノール−ホルムアルデヒド及び/又はポリ酢酸ビニルで接着して貼り合わせて生産された積層材料の、個々の層の層剥離が起こりやすくなる。フェノールホルムアルデヒドで接着して貼り合わせたこのような積層材料はまた、特に高温で、例えば80℃で不十分な性能を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US2007/0088103
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、相互に重ねて設けられた2層以上の木材層を含む複合材料を使用する方法であって、該複合材料が、フェノール−ホルムアルデヒドを接着して貼り合わせた従来の積層材料で可能なものよりかなり優れた静的性質及び動的性質を有するように生産されたものである使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
その解決策は、相互に重ねて設けられた2層以上の木材層を含む複合材料であって、それら層が相互に、フリーのNCO基をもつプレポリマーを含む一成分系ポリウレタン接着剤で結合されており、その木材が真正木繊維の体積比率が50〜70%である構造を有する複合材料を、建物建設、土木、造船、車両製造、飛行機製造、発電プラントの建設、鉱業または家具の製造における構造部品として使用する方法にある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に用いる複合材料を用いる落下試験の結果を示す図である。
【図2】本発明に用いる複合材料の光学的顕微鏡写真を示す図である。
【図3】図2と同じ複合材料の光学的顕微鏡写真で、より解像度のものを示す図である。
【図4】連続気泡構造の木材としての比較用のアピトンの、即ち真正木繊維体積が50〜70体積%でない木材の光学的顕微鏡写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
真正木繊維は、空気または水を保有する、細長い、ある程度厚膜で、狭い内腔をもつ、尖って先端が閉じられた円管状の孔を持っている。
【0012】
Treiber (H.−G. Volkel and J. Weigl: “Mikroskopie von Fasern、Fullstoffen und Papieren”、Papiertechnische Stiftung、Munich、PTS−Manuskript PTS−MS 11/94−6 (1994))によると、カバとツガは、真正木繊維の体積比率として、ブナ(類似の導管あるいは気管体積を与えられて)より約二倍大きな値をとる(表1を参照)。
【0013】
【表1】

【0014】
本発明では、真正木繊維の体積比率が高い木材が、特に真正木繊維の体積比率が50〜70%である木材が使用される。これらの真正木繊維(閉じられた円管状の孔)は、少なくともほとんどが閉鎖孔であり、一成分系ポリウレタンで接着して結合させた後でも、接着剤が浸透することなく、また接着剤で充満されること無くこれらが保持され、最終の複合材料中では、これが強力な空気ポンプまたは強力な空気クッションとして働く。上のような関係が、実質的に静的及び動的性質が改善された複合材料が得られる理由と考えられている。
【0015】
本発明では、これらの顕著な静的及び動的な性質が、このような複合材料の建物の建設、土木、造船、車両製造、飛行機製造、発電プラントの建設、鉱業または家具製造における構造部品としての使用の提案に利用されている。
【0016】
この閉鎖孔をもつ木材は、カバ材であることが特に好ましい。
【0017】
他の好ましい木材は、ツガ、ユーカリ、ゴムの木、ネムノキ、綿の木、アカシアまたはポプラまたはシデ材である。
【0018】
本発明の複合材料は、重ねて設けられた5〜31個の層をもつことが好ましい。
【0019】
この木材は、ベニアとして用いることが、即ち一般的に幹から剥ぎ取られた0.5〜2mmの薄い木材層からなることが好ましい。
【0020】
上記一層以上の木材に加えて、一層以のプラスチック層、特に一層以上のポリウレタン及び/又はポリ尿素層、特に外層を設けることが有利である。
【0021】
この複合材料のすべての辺をプラスチック層で覆うことも可能である。
【0022】
これら追加のプラスチック層は、特に、さらに、有機及び/又は無機充填剤を、例えば有機粘土、ケイ砂、コランダム、ガラスまたは他の鉱物または繊維またはあらゆる種類の繊維マットを含んでいてもよい。
【0023】
また、ガラス繊維ウェブ、天然繊維ウェブ、ガラス繊維マット、または天然繊維マットからなる一層以上の層を、本発明の複合材料に設けてもよい。
【0024】
本発明によれば、真正木繊維の体積比率が50〜70%で閉鎖孔をもつ木材の、特にカバ材の二層以上の層が、フリーのNCO基をもつプレポリマーを含む一成分系ポリウレタン接着剤で結合される。
【0025】
好ましくは、この一成分系ポリウレタン接着剤は、最高で99重量%の比率で、イソシアネート反応性化合物をもつ少なくとも一つの成分A及びイソシアネート基をもつ少なくとも一つの成分Bから得られるフリーのNCO基をもつプレポリマーと、
・0.1〜40重量%の、好ましくは0.1〜30重量%の、少なくとも一種の繊維を含み、この繊維に加えて少なくとも一種の非繊維状充填材を含む充填剤と、
・0〜20重量%の従来より使用されている添加物や助剤と、
・0〜20重量%の活性化剤とを含む。
なお、上記少なくとも一種の繊維の直径は5〜100μmの範囲であり、長さは0.02〜6mmの範囲である。
【0026】
他の好ましい実施様態においては、繊維を含む充填材を添加せずに、一成分系ポリウレタン接着剤が用いられる。特に、この一成分系ポリウレタン接着剤は、最高で99.999重量%の比率で、イソシアネート反応性化合物を含む少なくとも一つの成分A及びイソシアネートをもつ少なくとも一つの成分Bから得られるフリーのNCO基をもつプレポリマーを含み、この一成分系ポリウレタン接着剤は、
・0〜20重量%の従来より使用されている添加物や助剤と、
・0.001〜20重量%の、4−メチルモルホリン、4−エチルモルホリン、4−シクロヘキシルモルホリン、2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル及びジモルホリノポリエチレングリコールの一つ以上から選ばれる少なくとも一種の活性化剤を含み、
a)前記プレポリマーが、以下の特徴を有し:
i)NCO含量が、プレポリマーに対して5〜30重量%であり、
ii)25℃での粘度が300〜15000mPa・sの範囲にあり、
b)成分Aが以下の特徴を有し:
i)成分Aが少なくとも一種のジオールを含み、
ii)成分AのOH価が10〜500KOH/gの範囲であり、
上記一成分系ポリウレタン接着剤が充填材を含み、その25℃での粘度が300〜15000mPa・sの範囲である。
【0027】
上記の好ましい一成分系ポリウレタン接着剤は、EP1072620とEP1072621に記載されている。
【0028】
一成分系ポリウレタン接着剤のプレポリマーの製造に当り、プレポリマーの上記の特性が、特にNCO含量と粘度が達成されるような比率で成分AとBを使用することが好ましい。また、助剤や添加物や触媒をこのプレポリマーの製造に用いることができる。
【0029】
以下に、このプレポリマー組成物や接着剤組成物の製造用に用いられる他の出発原料や成分を記載する:
好ましく使用されるイソシアネート反応性の化合物、即ち成分Aは、官能価が2〜8、好ましくは2〜6であり、分子量が60〜10000で、ヒドロキシル基、チオール基及び/又は第一級及び/又は第二級アミノ基を、イソシアネート反応性基としてもつものである。例えば、上記ポリエーテルオールやポリエステルオール、ポリチオエーテルポリオール、ヒドロキシル基含有ポリアセタール、ヒドロキシル基含有脂肪族ポリカーボネート、ポリカーボネートジオールやポリカプロラクトンジオール、上記ポリオールの少なくとも2種の混合物からなる群から選ばれるポリオールが有用であるとわかっている。ポリエステルオール及び/又はポリエーテルオールの使用が好ましい。これらのポリヒドロキシ化合物のヒドロキシル価は、原則として20〜850mgKOH/gであり、好ましくは25〜500mgKOH/gである。
【0030】
イソシアネート反応性化合物として、本発明の方法において、分子量が60〜<400のジオール及び/又はトリオールを、鎖延長剤として及び/又は架橋剤として使用することができる。しかしながら、機械的性質、例えば硬度を調整するためには、またプレポリマーの安定性を増加させるためには、鎖延長剤、架橋剤または必要ならこれらの混合物の添加が有利であることもある。鎖延長剤及び/又は架橋剤の分子量は60〜300g/molであることが好ましい。例えば、エチレングリコールや1,3−プロパンジオール、1,10−デカンジオール、o−、m−及びp−ジヒドロキシシクロヘキサン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、好ましくは1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ビス(2−ヒドロキシエチル)ヒドロキノンなどの、2〜14個の、好ましくは4〜10個の炭素原子をもつ脂肪族、脂環式及び/又は芳香脂肪族ジオールや;1,2,4−及び1,3,5−トリヒドロキシシクロヘキサン、グリセロール、トリメチロールプロパンなどのトリオールや;ヒドロキシル基を含む、エチレンオキシド及び/又は1,2−プロピレンオキシド系の低分子量ポリアルキレンオキシドや;上述のジオール及び/又はトリオールが好適な開始剤分子である。
【0031】
一般に、ポリオール成分としては、多価のポリオールを、特に多価アルコール、糖アルコール及び/又は糖類系のポリエーテルオールを開始剤分子として使用することができる。しかしながら、グリセロール及び/又はトリメチロールプロパン及び/又はグリコール系の二官能性及び/又は三官能性のポリエーテルオールまたはポリエステルオールを、開始剤分子としてあるいはエステル化されるアルコールとして使用することが好ましい。ポリエーテルオールの製造は、既知の技術で行われる。ポリオールの製造に好適なアルキレンオキシドとしては、例えば、テトラヒドロフランやエチレンオシド、1,3−プロピレンオキシド、1,2−または2,3−ブチレンオキシド、スチレンオキシドがあげられ、好ましくはエチレンオキシドや1,2−プロピレンオキシドがあげられる。これらのアルキレンオキシドは、個別に用いてもよいし、交互に続けてあるいは混合物として使用してもよい。本発明の接着剤組成物中のプレポリマー中で特に好ましく用いられるポリエーテルオールは、アルコキシル化の最後でエチレンオキシドでアルコキシル化して、このため第一級のヒドロキシル基をもつものである。
【0032】
好適な開始剤分子の例としては、水や、エチレングリコールやプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどのグリコール;エチレンジアミンやヘキサメチレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどのアミン;エタノールアミンまたはトリエタノールアミンなどのアミノアルコールがあげられる。
【0033】
これらのポリエーテルオールの官能価は、好ましくは2〜6、特に2〜3であり、分子量は400〜10000、好ましくは1000〜7000である。これらのポリエーテルオールは、単独で使用しても、混合物として使用してもよい。
【0034】
ポリカーボネートジオールも同様に好適である。好適なポリカーボネートジオールは、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−プロパン系などの芳香族ジヒドロキシ化合物を含むもの、あるいは1,6−ヘキサンジオールなどの脂肪族ジヒドロキシ化合物系のものである。そのモル質量は500〜4000の範囲であり、好ましくは1000〜2000の範囲である。
【0035】
ポリオール成分として好適なポリエステルオールは、2〜12個の炭素原子をもつ有機ジカルボン酸、好ましくは4〜6個の炭素原子をもつ脂肪族ジカルボン酸と2〜12個の炭素原子をもつ、好ましくは2〜6個の炭素原子をもつ多価アルコール、好ましくはジオールから製造でき、あるいは3〜20個の炭素原子をもつラクトンの重合で製造できる。使用できるジカルボン酸としては、例えばグルタル酸やピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン酸があげられ、好ましくはアジピン酸やコハク酸、フタル酸があげられる。これらのジカルボン酸は個別に用いても、混合物として用いてもよい。ポリエステルオールの製造には、ジカルボン酸に代えて、相当する酸誘導体、例えばカルボン酸無水物またはアシル塩化物を使用することが望ましい場合もある。好適な芳香族ジカルボン酸は、テレフタル酸、イソフタル酸、またはこれらと他のジカルボン酸、例えばジフェン酸やセバシン酸、コハク酸、アジピン酸との混合物である。好適なグリコールの例としては、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,10−デカンジオールや2,2,4−トリメンチルペンタン−1,5−ジオール、1,2−エタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−ジエタノールシクロヘキサンがあげられる。2,2−ビス(4−ヒドロキシ−フェニレン)プロパン(ビスフェノールA)のエトキシ化/プロポキシ化生成物の使用が好ましい。ポリウレタンの望ましい性質により、これらのポリオールを、単独で使用しても、いろいろな比率の混合物として使用してもよい。ポリエステルオールの製造に好適なラクトンとしては、例えば、α,α−ジメチル−β−プロピオラクトンやγ−ブチロラクトンがあげられ、好ましくはε−カプロラクトンがあげられる。これらのポリエステルオールの官能価は、好ましくは2〜4、特に2〜3であり、分子量は1200〜3000、好ましくは1500〜3000、特に1500〜2500である。
【0036】
特にポリオール混合物がプレポリマーに有用であることがわかっている。このようなポリオール混合物は、好ましくは少なくとも一種のジオール(好ましくはポリプロピレングリコール)と少なくとも一種のトリオール(好ましくはポリエーテルトリオール)を含む。特に好適なジオールの平均分子量は、500〜3000の範囲であり、好ましくは700〜1500、特に好ましくは800〜1500、さらに好ましくは800〜1200の範囲である。平均分子量が1000〜8000のトリオールが、好ましくは2000〜6000、特に好ましくは3000〜5000のトリオールが、上記トリオールとして有用であることがわかっている。このポリオール混合物のOH価が30〜140の範囲、好ましくは50〜90、特に好ましくは60〜80mgKOH/gの範囲にあることが特に好ましい。上述のジオールとトリオールは、ポリオール混合物としてだけでなく、いずれのも単独でプレポリマーの製造に使用できる。
【0037】
このプレポリマーのもう一つの実施様態においては、好ましくは第一級ヒドロキシル基をもち、OH価が10〜200の範囲、好ましくは20〜150、特に好ましくは25〜100mgKOH/gの範囲にあるポリエーテルポリオールの使用が好適であるとわかっている。
【0038】
鎖延長剤、架橋剤またはこれらの混合物をプレポリマーの製造に使用する場合は、これらは、イソシアネート反応性化合物の総量に対して、好ましくは0〜20重量%の量で、より好ましくは0.5〜5重量%で用いられる。
【0039】
成分Bの好適なイソシアネートまたはポリイソシアネートは、公知の脂肪族、脂環式、芳香脂肪族及び/又は芳香族イソシアネートであり、好ましくはジイソシアネートであり、これは必要なら一般に既知の方法でビウレット化及び/又はイソシアヌル酸化されていてもよい。その具体例としては次のものが挙げられる:ドデカン1,12−ジイソシアネートや2−エチルテトラメチレン1,4−ジイソシアネート、2−メチルペンタメチレン1,5−ジイソシアネート、テトラメチレン1,4−ジイソシアネート、リシンエステルジイソシアネート(LDI)、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)などのアルキレン基中に4〜12個の炭素原子を有するアルキレンジイソシアネート、シクロヘキサン1,3−及び/又は1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン2,4−及び2,6−ジイソシアネートと相当する異性体混合物、ジシクロヘキシルメタン4,4’−、2,2’−及び2,4’−ジイソシアネートと相当する異性体混合物、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、トルエン2,4−及び/又は2,6−ジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4’−、2,4’−及び/又は2,2’−ジイソシアネート(モノマーMDI)、ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート(ポリマーMDI)、またナフチレン1,5−ジイソシアネート(1,5−NDI)とトリレンジイソシアネート(TODI=2,7−ジメチルジフェニル1,6−ジイソシアネート)とp−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、及び/又は上記イソシアネートの少なくとも二つを含む混合物。本発明の方法において、エステル基、尿素基、アロファネート基、カルボジイミド基、ウレトジオン基及び/又はウレタン基を含むジ−及び/又はポリイソシアネートを使用してもよい。
【0040】
ポリマーMDIまたは好ましくはモノマーMDI、特に4,4’−MDIなどのMDIが、あるいは2,4’−MDIと4,4’−MDIの混合物が、接着剤組成物のプレポリマーの製造に特に好ましい。
【0041】
ある実施様態においては、平均官能価が1〜5の範囲、好ましくは1.5〜4、特に好ましくは2〜3.5の範囲にあり、粘度が100〜400mPa・sの範囲、好ましくは150〜300、特に好ましくは160〜260mPa・sの範囲にあるポリマーMDIをプレポリマーに使うことが特に好適であるとわかっている。
【0042】
用いることのできる触媒は、イソシアネートとイソシアネート反応性化合物との反応を大きく加速させる既知の化合物であり、総触媒含量が、イソシアネート反応性化合物の総重量に対して0.01〜8重量%、特に0.1〜5重量%であることが好ましい。例えば、以下の化合物を使用してもよい:トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルジアミノジエチルエーテル、ビス−(ジメチルアミノプロピル)尿素、N−メチル−またはN−エチルモルホリン、N,N’−ジモルホリノジエチルエーテル(DMDEE)、N−シクロヘキシルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルブタンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジメチルピペラジン、N−ジメチルアミノエチルピペリジン、1,2−ジメチルイミダゾール、N−ヒドロキシプロピルイミダゾール、1−アザビシクロ[2.2.0]オクタン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(Dabco)、及びトリエタノールアミンやトリイソプロパノールアミン、N−メチル−及びN−エチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、2−(N,N−ジメチルアミノエトキシ)エタノール、N,N’,N−トリス(ジメチルアミノプロピル)−s−ヘキサヒドロトリアジンなどのN,N’,N−トリス(ジアルキルアミノアルキル)ヘキサヒドロトリアジンを含むアルカノールアミン化合物;塩化鉄(II)、塩化亜鉛、オクタン酸鉛、好ましくはスズジオクタノエート、スズジエチルヘキサノエート、ジブチルスズジラウレート及び/又はジブチルジラウリルスズメルカプチドなどのスズ塩、2,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどのテトラアルキルアンモニウムヒドロキシド、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物、ナトリウムメチラートやカリウムイソプロピラートなどのアルカリ金属アルコラート及び/又は10〜20個の炭素原子と必要ならOH側鎖基をもつ長鎖脂肪酸のアルカリ金属塩。酢酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩などの、好ましくは酢酸カリウムなどの三量体化触媒をあげることもできる。活性化剤として用いられる上記モルホリン誘導体に加えて、上記の触媒を活性化剤として使用することもできる。従って、触媒は、プレポリマーの製造に当り触媒として導入されるが、本発明の接着剤組成物の他の構成成分として、活性化剤をこのプレポリマーと共に上記組成物に導入することができる。また、Ti化合物が、特にメチルやエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチルなどのアルキル基をもつTi(IV)−O−アルキル化合物、好ましくはエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチルなどのアルキル基を持つTi(IV)−O−アルキル化合物、また特に好ましくはTi(IV)ブチラートもまた、触媒または活性化剤として有用であることがわかっている。
【0043】
適当なら、他の助剤及び/又は添加物をプレポリマーの製造用の反応混合物に添加することもできる。例としては、表面活性物質や安定剤、セル調整剤、染料、顔料、難燃剤、加水分解安定剤、殺虫剤、制カビ性物質または制菌性物質があげられる。これらの表面活性物質と安定剤は、接着剤組成物の空気に面する表面の「スキン形成」を抑制する。また、これらの表面活物質と安定剤は、着剤組成物の平滑性と接着剤組成物のクリープ性能を改善し、その揮発性を低下させる。好適な表面活性物質は、例えば出発原料を均質にさせる化合物である。例としては、ヒマシ油スルフェートまたは脂肪酸のナトリウム塩や、オレイン酸のジエチルアミン塩やステアリン酸のジエタノールアミン塩、リシノール酸のジエタノールアミン塩などの脂肪酸のアミン塩、ドデシルベンゼンスルホン酸やジナフチルメタンジスルホン酸のアルカリ金属塩またはアンモニウム塩のようなスルホン酸塩、リシノール酸などの乳化剤や、シロキサン−オキシアルキレンコポリマー等のオルガノポリシロキサン、オキシエチル化アルキルフェノール、オキシエチル化脂肪アルコール、流動パラフィン、ヒマシ油エステル類またはリシノール酸エステル、ターキーレッド油や落花生油などの安定剤、パラフィンや脂肪アルコール、ジメチルポリシロキサンなどのセル調整剤があげられる。上記のポリオキシアルキレン基とフルオロアルカン基を側基としてもつオリゴマー状のアクリレートは、乳化効果、セル構造の改善及び/又はプレポリマーの安定化にさらに好適である。発泡を抑制又は回避したい場合には、消泡剤としてトリアルキルホスフェートが好ましい。これらは、好ましくは、メチルやエチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、2−ペンチル、3−ペンチルなどのアルキル基をもち、好ましくはエチルやn−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチルなどのアルキル基をもつ。これらの表面活性物質は、通常イソシアネート反応性化合物の総使用量100%に対して0.01〜5重量%の量で使用される。
【0044】
好適な難燃剤としては、例えばトリクレジルフォスフェートやトリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリス(1,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、テトラキス(2−クロロエチル)エチレンジホスフェート、ジメチルメタンホスホネート、ジエチルジエタノールアミノメチルホスホネート、市販のハロゲン含有難燃性ポリオールがあげられる。プレポリマーまたは接着剤組成物の難燃性を上げるために、上述のハロゲン置換ホスフェートに加えて、赤リン、水和酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、酸化ヒ素、ポリリン酸アンモニウム、硫酸カルシウム、発泡グラファイトまたはメラミンなどのシアヌル酸誘導体などの無機難燃剤または有機難燃剤を使用でき、あるいは少なくとも2種の難燃剤の混合物を、例えば、ポリリン酸アンモニウムとメラミンの混合物、適当ならコーンスターチまたはポリリン酸アンモニウムとメラミンと発泡グラファイト及び/又は適当なら芳香族ポリエステルの混合物を使用することができる。一般に、上記難燃剤を、イソシアネート反応性化合物の総重量に対して5〜50重量%の量で、好ましくは5〜25重量%の量の使用することが好ましいことがわかっている。
【0045】
他の好ましい実施様態においては、少なくとも一種の繊維を含む充填剤を有する一成分系ポリウレタン接着剤が使用される。
【0046】
この一成分系ポリウレタン接着剤は、好ましくは次の主たる特徴(i)〜(iii)の内の少なくとも一つをもつ。
【0047】
(i)このプレポリマーは、以下の二次的な特徴(a)と(b)のうちの少なくとも一つをもつ:
(a)プレポリマーに対するNCO含量が5〜30重量%である、
(b)25℃の粘度が300〜150000mPa・sの範囲である、
(ii)成分Aは、以下の二次的な特徴(c)と(d)のうちの少なくとも一つをもつ:
(c)成分Aは、少なくとも一種のジオールまたはポリオール、好ましくは一種のジオールまたはトリオール、特に好ましくはジオールとトリオールを含む、
(d)成分AのOH価は10〜500mgKOH/gの範囲である。
(iii)充填材は、以下の二次的な特徴(e)と(f)のうちの少なくとも一つをもつ:
(e)この繊維は少なくとも一種の繊維ポリマーを含む、
(f)この充填材は、繊維に加えて少なくとも一種の非繊維状充填材を含む。
【0048】
この接着剤組成物がポンプ輸送可能であるべき場合、このプレポリマーの25℃での粘度は300〜15000mPa・sの範囲が好ましく、500〜10000mPa・sの範囲がより好ましい。他方、この接着剤組成物をペースト状のこて塗り材料として用いたい場合は、このプレポリマーの25℃での粘度は、好ましくは>15000〜150000mPa・sの範囲であり、特に好ましくは20000〜100000mPa・sである。
【0049】
また、この接着剤組成物の溶媒含量は少量であることが好ましい。少量とは、接着剤組成物中に存在する溶媒の量が<10重量%である場合のことであり、好ましくは<5重量%、特に好ましくは<2重量%である場合のことである。本発明によれば、溶媒とは、接着剤組成物の他の成分を溶解でき、少なくとも他成分の一部とともに硬化することのない有機液体または無機液体のことである。
【0050】
本接着剤組成物は、無溶媒であることが好ましい。
【0051】
本接着剤組成物のある好ましい実施様態においては、プレポリマーの主たる特徴(i)と成分Aの主たる特徴(ii)の両方が満足されている。
【0052】
本接着剤組成物のもう一つの実施様態においては、成分Aの主たる特徴(ii)と充填材の主たる特徴(iii)が満足されている。
【0053】
本接着剤組成物のもう一つの実施様態においては、3つの主たる特徴(i)〜(iii)が満足されている。
【0054】
本接着剤組成物の好ましい実施様態は、プレポリマー、成分A、充填材の二次的な特徴の(a)と(b)または(c)と(d)または(e)と(f)がともに満足される場合である。
【0055】
本接着剤組成物のもう一つの好ましい実施様態においては、主たる特徴(i)〜(iii)のすべてと二次的な特徴(a)〜(f)の両方が満足される。
【0056】
本接着剤組成物の他の実施様態においては、特徴(i)〜(iii)に加えて特徴(iv)と(v)の内の少なくとも一つが満足される。
(iv)この繊維ポリマーが少なくとも一種のポリアミドである、
(v)この充填材が少なくとも一種の無機物を含む。
【0057】
接着剤組成物の繊維ポリマーの大部分が有機物または無機物からできていることが好ましい。繊維ポリマーに好適な有機物質は、特にポリウレタン以外の重縮合物や重付加ポリマーであり、重縮合物が好ましい。特に好適なのは、ポリウレタン以外の重縮合物である。特に適当な重縮合物は、ポリカーボネートやポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂である。
【0058】
重付加ポリマーは、特にポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、上述のホモポリマーの少なくとも2種のモノマーのコポリマー、少なくとも2種のポリマーのブレンドである。
【0059】
ポリアミドをこの接着剤組成物の繊維ポリマーとして使用することが特に好ましい。当業界の熟練者には既知のあらゆる市販ポリアミドがこの目的に適当である。しかしながら、ナイロン、特にナイロン6,6またはナイロン6などのポリアミドやポリアラミドが特に有用である。
【0060】
また、これらの繊維が、天然の有機繊維ポリマー、例えばセルロースや綿、黄麻、ビスコース、サイザル麻からなるものであっても、これらを含むものであってもよい。あるいは、これらの繊維を無機物から製造してもよい。好ましい無機繊維ポリマーは、炭素繊維、ガラス繊維、鉱物ウール繊維である。また、これらの繊維が、例えば紡糸によりいろいろな材料から得られるものであってもよい。
【0061】
用いる繊維の直径は、好ましくは5〜100μmの範囲であり、好ましくは10〜60、特に好ましくは10〜30μmであり、長さは0.02〜6mmの範囲であり、好ましくは0.05〜4、特に好ましくは0.1〜2mmである。
【0062】
また、この接着剤組成物は、少なくとも一種の無機物からなる非繊維状充填材を有している。原則的には、当業界の熟練者には既知のすべての無機物で、また特に市販の無機物で固体で存在するものは、本発明の接着剤に好適である。これらの無機物は、特に本発明の接着剤組成物が使用され、続いて接着して結合した製品が使用される温度範囲で、固体で存在する必要がある。この温度範囲は、好ましくは−50℃〜+160℃である。
【0063】
ケイ素またはアルミニウムまたはマグネシウムの酸化物、またはこれらの少なくとも2種の混合物で、必要なら他の元素を含むものが、特に好適な無機物であることがわかっている。ケイ酸塩と酸化アルミニウム、例えば白土などの粘土と、石英化合物またはケイ酸が特に好適である。
【0064】
これらの非繊維状充填材は粒子状であることが好ましい。粒子状充填物質の80%が0.01〜50μmの範囲に、好ましくは0.1〜10、特に好ましくは0.2〜8μmの範囲に入る。
【0065】
本発明で用いられる充填材は、繊維またはさらに充填物質を含んでいてもよい。この充填材が繊維と充填物質の両方を有する場合、少なくとも繊維と同量の充填物質が、好ましくは充填物質が過剰で、充填材中に存在することが好ましい。
【0066】
充填材は、特にいろいろな用途への物理的性質を改善するために、接着剤組成物中に加えられる。このためには、この接着剤組成物が、硬化後にできるだけ緻密となる無気泡の接着層を形成し、基材間の継ぎ目ができる限り完全に埋まっている必要がある。接着を上げるためには、この接着剤組成物が基材の表面中に部分的に浸透する必要がある。しかし、接着剤組成物を接着のために硬化させた後で、浸透または収縮により空洞ができて結合に悪影響を与えてはいけない。特に、0.1〜1mmの範囲の、好ましくは0.2〜1mmの範囲の厚い継ぎ目では、特にこの接着剤組成物に上述の組成の充填材を導入することで、これらの要件を満たすことができる。
【0067】
接着剤組成物中に存在する充填材の場合、これらの水分率が、充填材に対して5重量%未満であることが、好ましくは1重量%未満、特に好ましくは0.1重量%未満であることが有用であることがわかっている。これは、特に本発明の接着剤組成物の製造の点で好ましい。
【0068】
この接着剤組成物の活性化剤は、少なくとも一種のモルホリン誘導体を含む。特に好適なモルホリン誘導体は、4−メチルモルホリン、4−エチルモルホリン、4−シクロヘキシルモルホリン、2,2’−ジモルホリノジエチルエーテルまたはジモルホリノポリエチレングリコール、またはこれらの少なくとも2種である。また、例えば、Becker/Braun、炭素材料ハンドブック(Kunststoff handbuch) 7 (1993)中に、ポリウレタン触媒として記載の、活性化効果を有する他の化合物をモルホリン誘導体に加えて使用することが可能であり、その場合、モルホリン誘導体の使用量が圧倒的に多いことが好ましい。
【0069】
チキソトロープ助剤が、特に貯蔵安定性の点で好ましいことがわかっている。特に好ましいチキソトロープ助剤は、ベントナイトやカオリン、アルギン酸、ケイ酸であり、ケイ酸が特に好ましい。固形分を含む上述のチキソトロープ助剤に加えて、あるいはこれに代えて、例えばアミン存在下でのイソシアネートの反応で得られる可溶性のチキソトロープ助剤、例えばEP300388A1やDD156480、DD211689、DD211930、DD211931に記載のようなものが好ましい。
【0070】
チキソトロープ助剤は、液体に添加されて少量が放出されても、例えばその液体に対して10重量%以下で放出されても、その液体を増粘させることのできる微粒子状物質である。これらの微細粒子は、分散剤の液体と相互作用する表面シラノ基を持ち、水素ブリッジ結合を形成することが好ましく、その結果この液体を増粘させることとなる。典型的なチキソトロープ助剤の場合、激しく混合しながら適度に注意して分散すると、同一量では増粘効果が粒度の低下と共に増加する。また、これらのチキソトロープ助剤は、分散液体中で沈降しないという特徴をもっている。また、これらのチキソトロープ助剤は充填材の沈降を防止又は遅延させる。チキソトロープ助剤として好ましい材料は、モンモリロナイトやケイ酸Mg/Al、ケイ酸Al/Na、ベントナイト、ヘクトライト、ケイ酸Na/Mg、熱分解法シリカ、水和シリカ、角閃石−クリソタイル、クリソタイル−アスベスト、クリソタイル−ケイ酸、微粉末状沈降MgOであり、例えばアエロジルとしてデグサヒルス社から入手できる熱分解法シリカやベントーンとしてクロノスチタン社(独)から入手できる珪酸マグネシウムが好ましく、アエロジルが特に好ましい。
【0071】
本発明は、フリーのNCO基をもつプレポリマーを含む一成分系ポリウレタン接着剤で相互に重ねて接着された2層以上の、閉鎖孔を持つ構造を有する木材の層からなる複合材料の、建築や土木、造船、車両製造、飛行機製造、発電プラント建設、鉱業または家具の製造での構造部品としての使用方法に関する。
【0072】
本発明で用いられる複合材料は、特に弾性による可逆的なエネルギー吸収に特徴があり、エネルギー消散効果をもっている。このため、いろいろな潜在用途が可能となり、特に防弾部品などの高いエネルギー吸収が求められる分野や、採鉱などの爆発の恐れのある環境や化学プラントでの使用が可能となる。
【0073】
この複合材料は、好ましくは負荷のかかる部品として、特に床面、中間床、壁面または屋根部品として使用できる。この複合材料はまた、支持部品及び/又は型枠部品として使用できる。
【0074】
上記の複合材料をコンテナーの底面またはトレーラーの底面として使用することが特に好ましい。
【0075】
トラック、バス、トレーラー、飛行機、鉄道、船舶またはフェリーの構造部品としての使用が好ましい。
【0076】
本発明の複合材料は、また特に発電装置の空気タービンブレード等の部品の強化に好適である。
【0077】
建物の建設や土木での使用、良好な耐力性能、特に他の建材、特にプラスチックまたはコンクリートからの良好な分離性能が重要であるコンクリートの型枠や他の構造物としての使用もまた極めて好ましい。
【0078】
防弾部品としての使用も好ましい。
【0079】
本発明はまた、上記複合材料で形成されるコンテナーの底面またはトレーラーの底面に関する。上記複合材料から形成されるコンテナー底面またはトレーラー底面で、用いる木材がカバ材であるものが特に好ましい。
【0080】
関係がまだ完全に明らかとなっていないが、本発明によれば、閉鎖孔をもつ木材、特にカバ材と、フリーのNCO基をもつプレポリマーを含む一成分系ポリウレタン接着剤との組み合わせにより、プレポリマーのフリーのNCO基の、木材のフリーOH基との反応、特にでんぷんまたはセルロースまたはリグニンとケイ酸含有誘導体構成成分との、特に外層での反応と、また木材からの残留水分との反応により、接着剤と木材層のマトリックスとの化学的な結合が改善される。驚くべきことに、光学的顕微鏡写真は、この一成分系接着剤が木材繊維内または導管内に浸透せずに、そのまた残っていることを示している。この木材は、接着により貼り合わされた複合材料中に保持され、接着剤が浸入していない、あるいは接着剤で満たされていない実質的に閉鎖された孔を有する構造をしている。
【0081】
コンテナー底面とレーラー底面は、特定の所要規格を満たす必要がある。寸法は、通常2.40m×1.16m×28mm(長さ×幅×厚み)である。しかしながら、これらの使用はこれらの寸法に制限されない。特に本発明に記載の複合材料の用途では、これらの寸法や密度範囲に限定されるものではない。密度は0.8±0.1kg/lである必要がある。
【0082】
三点曲げ試験での静的曲げ強度を求める標準的な試験であるIICL (Institute of International Container Lessors), TB (Technical Bulletin) 001, of September 1, 2002, “Short Span Test” (250mm “Span Shear Test”)による破壊強度が、少なくとも6900Nであることが必要となる。この試験方法と試験片の寸法は、IICL−TB001に詳細に説明されている。ここでは、割れによる破壊だけでなく、特に接着剤での結合が不十分な場合に起こる層間での層剥離もダメージと判断されている。試験は、標準的な環境条件(23℃で55%相対湿度)で行われる。
【0083】
現在広く使用されている熱帯木材であるアピトンにより、これらの要件は満たされる。
アピトン木材と接着剤としてフェノール−ホルムアルデヒドとを用いる積層材料(一般的に「合板」ともよばれる)の密度は約0.8kg/lであり、23℃/55%相対湿度での静的三点曲げ試験における荷重限度は約7000〜7300Nである。
【0084】
しかしながら、アピトンの量は無限でないため、上記の必要規格を満たす、あるいは実質的に他の材料、あるいは、例えば竹を含む代替積層材料(「合板」)で現在の性能レベルを超えるものを見つける必要がある。
【0085】
市販の他材料を多く含む複合材料「合板」のほとんどは、上記の要件を満たさない。従来フェノール−ホルムアルデヒドで接着的に貼り合わされている竹の層を含む複合材料や、ブナ、松、スプルースなどの他の木材を含む複合材料、異なるベニア材の混合物や、例えば、竹の層との混合物を含むベニア材または積層材料(「合板」)、(いずれの場合も、フェノール−ホルムアルデヒド及び/又はポリ酢酸ビニルで接着して貼り合わされる)は、IICL−TB001に記載のコンテナー底面用途での使用上のコンテナー底面用の認証試験のための上記要件を満たさない。このような積層材料の破壊最大耐力は、23℃、55%相対湿度で5400〜6600Nの範囲である。用いる構造や材料や接着剤により、これらの積層材料の密度が、最大で0.9kg/lとなることがあり、いくつかの場合には最大で>1kg/lとなることもある。
【0086】
他方、上記の材料の密度は0.8±0.1kg/lであり、例えばコンテナー底面に求められる低密度であるため、提案されている閉鎖孔をもつ木材系の複合材料を、構造部品として使用すること、特に荷重を受ける部品、特にコンテナー底面の製造のために使用することは特に好適である。
【0087】
【表2】

【0088】
IICL−TB001のコンテナー底面の認証試験において、フェノール−ホルムアルデヒド(PF)で接着して貼り合わせた熱帯多雨林木材アピトンからなる材料(現在、実質的には存在しない)は、最大耐力として7506Nを示し、その規格を満たす。フェノール−ホルムアルデヒドで接着して貼り合わせた代替材料合板(PF)で、最大破壊耐力が6282Nのレベルのものは、フェノール−ホルムアルデヒドで接着して貼り合わせた竹(PF)(最大耐力:6558N)と同程度に、コンテナー底面の規格を満たすことができない。
【0089】
カバと上記一成分系PU接着剤からなる本発明の複合材料は、IICL−TB001のコンテナー底面認証試験において最大破壊耐力が12801Nを示し、この値はこの基準により求められる値より約二倍大きい。特に、カバと本発明に使用される1−C PU接着剤からなる複合材料の最大破壊耐力12801Nは、TB001の要件を満たさないフェニル−ホルムアルデヒドで接着して貼り合わせた竹や合板の値(それぞれ6282Nと6558N)よりはるかに大きい。
【0090】
このような材料のコンテナー底面としての静的性能を決める試験(本明細書に記載の試験)において、特定の試料形体(IICL−TB001に記載の)で上記試験で求められた最大破壊耐力から得られる最大曲げ応力(MPa)が、さらに測定試験データから決められる。現在入手不能の熱帯性硬材アピトンの曲げ応力は71.6MPaであり、フェノール−ホルムアルデヒドで接着して貼り合わせた代替材料の曲げ応力は66.5MPaであり、竹の曲げ応力は64.8MPaである。他方、カバと1−C PU接着剤からなる複合材料の最大の曲げ応力は112.3MPaであり、この値も比較材料の値より約二倍大きい。この曲げ応力は、Dubbel、Taschenbuch fur Maschinenbauに記載されている。
【0091】
弾性率は、一般的には典型的な特徴であると当業界の熟練者に知られている。本明細書に記載の材料の場合、本明細書の測定法で得られた曲げ弾性率は、熱帯多雨林木材アピトンでは6562MPaであり合板では5323MPa、竹では5974MPaである。
【0092】
他方、カバと1−C PUからなる複合材料の曲げ弾性率は7267MPaであり、この値は、したがってアピトンのレベルであり、代替木材とフェノール−ホルムアルデヒドからなる比較用材料の値より実質的に大きく、これは本発明の材料が実質的に高強度であることを表している。
【0093】
上記の特徴は、この材料の、コンテナー底面(IICL−TB001)の重要な規格に求められる23°C/55%相対湿度での機械的静的性能レベルを示すが、これらは、地球上のいろいろな地域でコンテナーに起こりうる高温での挙動についての情報を与えない。
【0094】
以下の測定は、上記の室温での高性能なレベルが高温下でも維持されていることを示す。
【0095】
表3は、80℃での相当するIICL−TB001による測定を示す。なお、この試験は、この規格では求められていないか記載されていない。
【0096】
【表3】

【0097】
このために、それぞれの試験片を完全に80℃まで温まるまで保存した後、測定した。
【0098】
極めて高温の80℃でも、カバと1−C PU接着剤からなるこの複合材料は、
フェノール−ホルムアルデヒドで接着して貼り合わせたアピトンや他の合板や竹積層品と較べて極めて優れた性能を示す。
【0099】
したがって、カバと1−C PU接着剤とからなる本発明の複合材料の80℃での破壊時最大耐力である9973Nは、比較用材料より約2回大きく、その最大の曲げ応力の86.6MPaは、アピトンより30%大きく、竹とフェノール−ホルムアルデヒドの値より80%大きい。
【0100】
また、本発明での使用に選ばれる複合材料は、優れた動的な性質を示す。このため、動荷重極限値を決める測定方法を開発した。いわゆるウェーラー曲線を動的ステップ試験で求めた。ウェーラー曲線は、例えば、Dubbel、エンジニアリングポケットブック(Taschennuch fur Maschinenbau)に記載されている。本発明の材料と比較例のウェーラー曲線を得るために、それぞれの材料の、上記のIICL−TB001に記載され使われている長さが30.5cm、幅が5cm、厚みが28mmの試料に、10Hzの頻度で最大曲げ応力を印加し、いずれの場合もこの荷重をこの最大の曲げ応力の10%にまで減少させた(図中のR=0.1の表示は、最大/最小曲げ応力の比率を示す)。従って、ダメージ(積層材料の割れまたは層剥離)無く終了したサイクル数は、それぞれの材料の期待される動的性能レベルに関する、あるいはコンテナー底面として使用の場合の疲労挙動に関する情報を提供する。ダメージ無く終了するサイクルの数が大きく、またそこで導入される最大の曲げ応力が大きくなるほど、材料の動的性能レベルが、またそれぞれのコンテナー底面の実際の寿命が大きくなる。表2と表3に示されるIICL−TB001の破壊時の最大の曲げ応力は、いずれの場合も用いる最大の曲げ応力を決めるのに役立つ。このは破壊時の最大の曲げ応力であるため、即ちそれぞれの材料が一回の負荷で降伏する曲げ応力であるため、相当する低い方の曲げ応力がウェーラー曲線に選ばれる。概略の低曲げ応力である20MPaがまず用いられ、その試料に10Hzの頻度で5000回の曲げ応力が加えられる。試料がこの試験に合格すると、最大の曲げ応力を40MPaとし、同一試料を10Hzで5000サイクルかける。この試験もダメージなく通過するなら、この最大の曲げ応力を少しずつ、いずれの場合も20MPaずつ段階的に増加させ、破壊が起こるまで続ける。このようなウェーラー曲線は、この短縮動的ステップ試験(この試験は、比較用材料やカバと1−C PU接着剤の複合材料に対して通常のウェーラー試験より厳格である)で実施され、その結果を表4に示す。表4の試験は、いずれの場合も、温度と湿度を標準条件である23℃と55%相対湿度として行った。
【0101】
【表4】

【0102】
カバと一成分系のPU接着剤からなる複合材料の実質的に高い動的性能レベルは、実質的に高い最大曲げ応力である100MPaと20800サイクルの通過数として表われる。複合材料のカバとは対照的に、竹または合板とフェノール−ホルムアルデヒドを含む比較用材料は、60MPaで、あるいは40MPaで、延べ10400サイクルで破壊された。
【0103】
したがって、カバと1−C PU接着剤からなる複合材料の動的性能レベルは、比較用材料と較べて、それぞれ動的許容荷重としての最大曲げ応力において2.5倍と1.66倍高く、また延べ通過荷重サイクルが実質的に大きくなる。
【0104】
また(表5)、カバと1−C PU接着剤からなる複合材料の実質的に優れた動的性能レベルも、80℃で調べられた。
【0105】
【表5】

【0106】
ここでも、カバと1−C PU接着剤からなる複合材料の実質的に優れた動的性能が明白である。合板または竹を含む比較用材料は、それぞれ80℃で最大曲げ応力の40MPaと7100または8700サイクルに耐えることができるのみであるが、カバと1−C PU接着剤を含む複合材料は、曲げ応力が80MPaで20000サイクルを超える回数を問題なく通過する。この複合材料が30℃での連続負荷で上記ダイナミックステップ試験で耐えることのできる最大曲げ応力の80MPaが、いずれの他の比較用材料でも23℃での一回負荷での破壊時最大曲げ応力としても耐えることができない(表3参照)ことを言及する必要がある。
【0107】
本発明で用いる材料が実質的に高い動的性能レベルをもつという事実は、次の落下試験における顕著に大きな弾性的な可逆的エネルギー吸収からも明らかである。ここでは、32cm×32cmの大きさのそれぞれの材料のシートを、8cmの高さのスチールフレーム上の四隅にM8ネジを用いてネジどめした。スチールの支持体間の距離は26cmである。このシートは、他の支持体/敷物をもたず、このためこの試験の配列は、コンテナー内の実際に極めて近い設置状況を反映している。次いでこれらを、99kg重量の円柱状半球を高さが0.624mからブレーキをかけることなくこの非支持試験片上に落とす落下試験にかける。ここに示す落下試験で加えられるエネルギーは、いずれの場合も609Jであり、これはこれらの条件下では衝突速度の3.5m/secに相当する。
【0108】
本発明を、図面を参照しながらより詳細に説明する。
【0109】
具体的には:
図1は、本発明に用いる複合材料を用いる落下試験の結果を示し、
図2は、本発明に用いる複合材料の光学的顕微鏡写真を示し、
図3は、図2と同じ複合材料の光学的顕微鏡写真で、より解像度のものを示し、
図4は、連続気泡構造の木材としての比較用のアピトンの、即ち真正木繊維体積が50〜70体積%でない木材の光学的顕微鏡写真を示す。
【0110】
図1は、直径が100mmで重量が99kgの半球を、0.624mの高さから落下させる落下試験の図面を示す。加えられるエネルギー量は609Jであった。この図において、変形または恒久的な荷重圧縮特性V(mm)を横座標にプロットし、加えられたF(kN)を縦座標にプロットした。一成分系ポリウレタン接着剤でカバを貼り合わせた複合材料の値を円で示し、竹とフェノール−ホルムアルデヒド接着剤を含む比較用材料の値を三角形で、合板とフェノール−ホルムアルデヒド接着剤を含む比較用材料の値を菱形で示した。
【0111】
合板複合材料とPF接着剤を含む板(ひし形で示される)は、この試験で完全に破壊された。これが不可逆なエネルギー吸収に相当する。この板は、恒久的な変形または荷重圧縮特性として、12〜13mmの値を示し、こらは元の板厚に対して50%に相当に相当する
複合材料の竹とフェノール−ホルムアルデヒド接着剤を含む板(三角形で示される)も試験で破壊され、これが不可逆なエネルギー吸収に相当する。この板の恒久的な変形または荷重圧縮特性は6〜7mmであり、これは元の板厚の約30%に相当する。
【0112】
この試験での、この板の印加エネルギーへの抵抗は、この材料の応力として測定された。この応力または破壊抵抗は、合板とPF接着剤の場合は約25kNであり、比較用材料竹とフェノール−ホルムアルデヒドの場合は30kN〜35kN未満である。
【0113】
驚くべきことに、カバ/1−C PU接着剤材料を含む板(円で示される)は、完全に元のまま存在し、恒久的な荷重圧縮特性をまったく示さなかった。全エネルギ吸収は可逆的であり、試験板がなんらダメージを受けることなくエネルギーが弾性的に放散される。その最大応力の約50kNは、合板/フェノール−ホルムアルデヒドの値より二倍大きく、比較用材料竹/フェノール−ホルムアルデヒドの値より多くて66%大きい。
【0114】
したがって、これらの試験も本発明の材料、カバ/1−C PUの実質的に高い動的性能レベルを示す。このことは、特にその破壊−自由エネルギー吸収で示され、これは、またそれで生産される被荷重部材、特にコンテナー底面の高効率を効果的に支えるものである。
【0115】
図2に、カバと1−C PU接着剤を含む複合材料の光学的顕微鏡写真を示す。これらの顕微鏡写真は、直交的な層構造を示し、真正木繊維が接着剤で飽和されていないことを示す。
【0116】
図3はまた、図2の複合材料を、より高い解像度で示す。この顕微鏡写真は、真正木繊維が実質的に二つの相互に直交するカバ材の連続する層に保持されおり、接着剤で浸入されていないことを示す。
【0117】
図4は、アピトンの光学的顕微鏡写真で、例えばこの木材の連続気泡構造を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ねて設けられた二層以上の木材層を含む複合材料であって、これらの層が相互にフリーのNCO基をもつプレポリマーを含む一成分系ポリウレタン接着剤で結合されており、前記木材が真正木繊維の体積比率が50〜70%である構造をもつものである複合材料を、
建物の建設、土木、造船、車両製造、飛行機製造、発電プラントの建設、鉱業または家具製造における構造部品として使用する方法。
【請求項2】
閉鎖孔を持つ構造を有する木材がカバ材である請求項1に記載の使用方法。
【請求項3】
床用、中間床用、壁面用または屋根用部品としての請求項1または2に記載の使用方法。
【請求項4】
コンテナー底面またはトレーラー底面としての請求項3に記載の使用方法。
【請求項5】
防弾部品としての請求項1または2に記載の使用方法。
【請求項6】
請求項1の定義に相当する複合材料から形成されたコンテナー底面またはトレーラー底面。
【請求項7】
前記複合材料がカバ材から形成される請求項5に記載のコンテナー底面またはトレーラー底面。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−525280(P2012−525280A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507701(P2012−507701)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055503
【国際公開番号】WO2010/125012
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】