説明

一方向クラッチ及びそれを用いた帯状物保持具

【課題】 帯状物の引き締め保持が容易で、かつ緊張状態の解除も容易に行えるクラッチを提供する。
【解決手段】 本一方向クラッチでは、一定間隔を持って基底部1より突出する1組のゲート部2と、該ゲート部2間隔よりも大きな直径を有し軸22の回りに回転可能なローラ21と、該ローラ21を前記ゲート部2に対して後方より付勢する付勢手段と、前記ローラ21を移動させることにより付勢を解除する付勢解除手段とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロープ等の帯状物を一方向には引き出し可能かつ他方向には係止固定できる一方向クラッチ機構及び、それを用いた帯状物保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばトラック等の積荷にロープを掛けて緊張状態にして固定する場合、多くはロープの結び方のみにより引き締めを行っていた。このような結び方は特殊なものなので一般の人にはなかなか利用することは困難であった。また、このような結び方で緊張状態を作り出す場合、ロープの摩擦力が付加されるため、実際のロープを引き締めに必要な力よりも余分な力が必要であり、腕力の弱い女性やお年寄りにはこの方法を利用することが難しかった。
【0003】
そこで、このような問題点を解決する手段として特許文献1に示すような荷締め用ロープ保持具が提案された。この手段においては、略U字状に形成されたロープチャンネルの開口した片端部に、ロープをクランプするための爪を設けたアームを回動自在に支持した支持軸の片端部が蝶番状に支持され、支持軸の別端部は前記ロープチャンネルの開口した別端部に設けた切り抜き穴に嵌入して止めるように構成されたロープ保持具において、前記ロープをクランプするための爪とは反対側のアームの後端部に、ロープを着脱自在に掛けて引っ張れるように引っ張り掛け具を設けたことを特徴としている。しかしながら、この機構においてはロープを係止する爪は付勢されているわけではないので、ロープを引っ張って緊張させた際に引っ掛け金具とローラに掛けない限りロープの緩み止め阻止力が有効に働かないという問題がある。また、この機構では、荷降ろしの際にロープを緩める場合、固定解除機能がないため、引っ掛け金具とローラからロープをはずした後で、再度引っ張って爪の係止を解除する必要があった。
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3124462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記問題点に鑑みて本発明による一方向クラッチでは、帯状物の引き締め保持が容易で、かつ緊張状態の解除も容易に行えるクラッチを提供することを課題とする。本クラッチの実施態様としては、帯状物保持具が好適である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明による一方向クラッチでは、一定間隔を持って基底部より突出する1組のゲート部と、該ゲート部間隔よりも大きな直径を有し軸の回りに回転可能なローラと、該ローラを前記ゲート部に対して後方より付勢する付勢手段と、前記ローラを移動させることにより付勢を解除する付勢解除手段とからなることを特徴とする。
【0007】
前記付勢手段は、前記ローラの駆動部材を通して前記ローラを付勢していることが望ましい。
【0008】
また、前記付勢解除手段は前記ローラの前記駆動部材からなり、該軸受け部材には操作部が設けられていて前記ゲートを開放する方向に前記ローラを移動できるよう構成されていることが好適である。
【0009】
さらに、前記駆動部材は摺動可能に配置されていることがさらに好適である。
【0010】
本発明による帯状物保持具としては、一定間隔を持って基底部より突出する1組のゲート部と、該ゲート部間隔よりも大きな直径を有し軸の回りに回転可能なローラと、該ローラを前記ゲート部に対して後方より付勢する付勢手段と、前記ローラを移動させることにより付勢を解除する付勢解除手段とからなり、前記ローラは前記ゲート部より伸びる帯状物導入溝に対して傾斜方向に摺動可能に設けられた駆動部材に回転可能に係止されており、前記前記付勢手段は弾性付与手段からなり、該弾性付与手段は前記駆動部材に係合されており、前記駆動部材にはさらに操作部が設けられていて手動にて摺動可能に形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、別の実施態様として、一定間隔を持って基底部より突出する1組のゲート部と、該ゲート部間隔よりも大きな直径を有し軸の回りに回転可能なローラと、該ローラを前記ゲート部に対して後方より付勢する付勢手段と、前記ローラを移動させることにより付勢を解除する付勢解除手段とからなり、前記ローラの軸の片側は前記基底部に設けた第1長溝により規制されており、もう一方の側は前記ゲート部より伸びる帯状物導入溝に対して略垂直方向に摺動可能に設けられた軸受け部材に設けられた第2長溝により回転可能に係合規制されており、前記前記付勢手段は弾性付与手段からなり、該弾性付与手段は前記軸受け部材に係合されており、前記軸受け部材にはさらに操作部が設けられていて手動にて摺動可能に形成されていることを特徴とする構成を採用することもできる。この構成においては、前記第1長溝と前記第2長溝は前記ローラの軸方向から見て互いに交差する方向に設けられていることが望ましい。
【0012】
前記ゲート部の少なくとも片方は両端において前記基底部より突出して形成されていることが好適である。
【0013】
前記ローラの外周には、滑り止め用の凹凸を設けることもできる。
【0014】
また、前記弾性付与手段はバネであることが望ましい。
【0015】
前記基底部には少なくとも1個の貫通孔を形成することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明による一方向クラッチでは、ロープなどの帯状物を押圧するローラが常に付勢されているため、帯状物の逆行を的確に防止できる。また、ローラ駆動部材を手動にて摺動可能に構成しているため、このローラ駆動部材を移動させることにより帯状物の緊張を容易に解除することができる。さらに、帯状物押圧部材としてローラを用いているので、ローラの回転により帯状物保持や或いは緊張解除が極めて容易となる。
【0017】
また、帯状物案内部材を帯状物導入溝より突出して形成することにより、ロープ等の帯状物を本保持具の回りに巻きつけやすくし、ローラが万一解放された場合にも帯状物の緩みを防止する安全手段を容易にとることができる。
【0018】
さらに、本発明による保持具の基底部の一部に貫通孔を設け、この貫通孔にロープ等を通すことにより例えばトラックの荷台等に結合させれば、本保持具を使用して積荷を容易に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【実施例】
【0019】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施例について説明する。図1は、本発明による帯状物保持具の実施例の正面図を示す。この実施例においては、基底部1上にその一端部から一定間隔を持って突出する1組のゲート部2と、このゲート部2の片方から延びる案内部3と、案内部3に沿って設けられた帯状物導入溝(第2段部)5と、この帯状物導入溝5に対して角度を持って形成された第1段部4と、この第1段部4の一部に形成した弾性体収納溝6とが配置されている。基底部1の詳細配置は図2の基底部部品図に示してある。第1段部4上にはローラ駆動部材41が載置されており、このローラ駆動部材41の片側端部付近には軸受け穴42が設けられていて、ローラ21の軸22を嵌合支持している。また、ローラ駆動部材41の一部には突起部43が形成され、弾性体収納溝6内に収納された弾性体31に係合することにより、ローラ21をゲート部2に対して付勢している。さらに、ローラ駆動部材41の軸受け穴42と反対側の端部には操作穴45が設けてある。このローラ駆動部材41の詳細形状については図3に示してある。
【0020】
ローラ駆動部材41及び弾性体31上にはカバー51を配置し、複数のネジ穴52を通して基底部1にネジ止め固定されている。カバー51上及び基底部1上には同じ位置に駆動用切り欠き部8,53が設けられていて、ローラ駆動部材41の操作穴45の移動区域と合致させてある。カバー51の詳細形状については図6に示してある。
【0021】
基底部1上の案内部3の両端には突出部10を設けて、帯状物導入溝5よりも突出して形成してある。また、基底部1の端部近傍には貫通孔7が設けてある。
【0022】
さて、上記実施例の帯状物保持具の動作について、次に説明する。ローラ駆動部材41は弾性体31により付勢されているので、ローラ21を常にゲート部2に押圧している。本保持具を使用する際はまず、指を操作穴45に入れて駆動用切り欠き部53に従って摺動させ、ローラ21をゲート部2から解放しておいてから、導入溝5上方の開放部からロープ等の帯状物を案内溝5に挿入する。この状態で指を操作穴45から離すと弾性体31の弾性力によりローラ21が帯状物を押圧して固定する。ローラ21は軸22を通して弾性体31からの弾性力を受け、帯状物とゲート部2との間に押圧されるため、帯状物がゲート部2方向に抜け出ることはない。
【0023】
さらに帯状物を引き締める場合には、図1の右側の突出部10をてこにして引っ張ることにより、その力が弾性体31の弾性力を上回った際にローラ21による押圧力が緩みローラが回転することによって帯状物は右方向へ移動する。しかし、帯状物が戻ろうとすると、再度ローラの押圧力が印加されるので、右方向のみに帯状物を移動することが可能となり、一方向クラッチとして作用する。
【0024】
帯状物をそのまま固定する場合には、図1の導入溝5の背後を通して帯状物を逆方向に回し固定具導入前の部分と結束することにより、不意の衝撃等で保持具の固定が緩む危険性を回避することができる。
【0025】
本保持具と使用する際は、基底部1上に設けた貫通孔7に別のロープ等を通して固定フック等に連結すれば、保持具の位置は固定されるので、帯状物を緊張保持することが可能となる。
【0026】
帯状物の緊張状態を解除する場合は、操作穴45に指を入れてローラ駆動部材41を摺動させればよい。摺動させることによりローラ21による押圧が緩むと帯状物の緩和圧力によりローラ21が回転し帯状物の緩和を促進する。この機構により、緊張状態を解除するためにさらに帯状物を引っ張る必要はない。
【0027】
本実施例においては、ローラ移動手段として摺動型駆動機構を用いたが、これに限定されるものではなく、例えばローラ軸とは別の軸の回りにローラ部を回転させたり、或いはその回転をリンクを用いて方向変換するなど、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【0028】
図7には、本発明による別の帯状物保持具の実施例を示した。この実施例においては、L字型の基底部1の一端部に一定間隔を持って突出する1組のゲート部2と、このゲート部2の片方から基底部に対して垂直に延びる案内部3と、案内部3に沿って設けられた帯状物導入溝(第2段部)5と、案内部3に対して垂直に形成された第1段部4と、この第1段部4の一部に形成した弾性体収納溝6とが配置されている。帯状物導入溝5内にはさらに、案内部3に対して角度を持って形成された軸受け長溝9が配置されている。基底部1の詳細配置は図8の基底部部品図に示してある。第1段部4上にはローラ駆動部材41が載置されており、このローラ駆動部材41の片側端部付近には、やはり案内部3に対して角度を持ちさらに基底部1上の軸受け長溝9とは上部から見て交差する方向にローラ駆動長溝47が設けられていて、ローラ21の軸22を規制支持している。また、ローラ駆動部材41の一部には弾性体受け突起44が形成され、弾性体収納溝6内に収納された弾性体31に係合することにより、ローラ21をゲート部2に対して付勢している。さらに、ローラ駆動部材41には第1段部の壁面に対して垂直方向の操作突起46が設けてある。このローラ駆動部材41の詳細形状については図3に示してある。
【0029】
ローラ駆動部材41及び弾性体31上にはカバー51を配置し、複数のネジ穴52を通して基底部1にネジ止め固定されている。カバー51の詳細形状については図11に示してある。
【0030】
基底部1上の案内部3の両端には突出部10を設けて、帯状物導入溝5よりも突出して形成してある。また、基底部1の端部近傍には貫通孔7が設けてある。
【0031】
次に、上記実施例の帯状物保持具の動作について説明する。基本的な原理は上述の第1の実施例とほぼ同じである。異なるのは、本保持具を使用する際に操作穴45ではなく操作突起46を用いることである。操作突起46を押し下げることにより、ローラ駆動長溝47により規制されているローラ21は溝に沿って斜め上に上がろうとする。しかし、ローラ21の軸22はまた基底部1上の軸受け長溝9によっても規制されているため、この長溝9に沿って結局は斜め下方向に移動させられ、ゲート部を開放する。前述の実施例においては、ローラ21はローラ駆動部材41に回転可能に固定されていたが、この実施例においては基底部1上の軸受け長溝9とローラ駆動部材41上のローラ駆動長溝47とにより移動可能に位置規制されている。また、前述の実施例においてはローラ駆動部材は導入溝5に対して角度を持って斜めに摺動可能であったが、本実施例においては案内溝5に対してほぼ垂直に摺動する。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、帯状物の緊張保持のための一方向クラッチが簡単な構造で提供でき、緊張解除機構も装備しているため、ロープ等の帯状物取扱い現場において大いに貢献できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による帯状物保持具の実施例を示す正面図である。
【図2】図1に示した実施例に用いた基底部の構造を示す部品図である。
【図3】図1に示した実施例に用いたローラ駆動部材の構造を示す部品図である。
【図4】図1に示した実施例に用いたローラの構造を示す部品図である。
【図5】図1に示した実施例に用いた弾性体の部品図である。
【図6】図1に示した実施例に用いたカバーの構造を示す部品図である。
【図7】本発明による帯状物保持具の別の実施例を示す正面図である。
【図8】図7に示した実施例に用いた基底部の構造を示す部品図である。
【図9】図7に示した実施例に用いたローラ駆動部材の構造を示す部品図である。
【図10】図7に示した実施例に用いたローラの構造を示す部品図である。
【図11】図7に示した実施例に用いたカバーの構造を示す部品図である。
【符号の説明】
【0034】
1 基底部
2 ゲート部
3 案内部
4 第1段部
5 第2段部(帯状物導入溝)
6 弾性体収納溝
7 貫通孔
8 駆動用切り欠き部
9 軸受け長溝
10 突出部
11 ネジ穴
21 ローラ
22 ローラ軸
31 弾性体
41 ローラ駆動部材
42 軸受け穴
43 突起部
44 弾性体受け突起
45 操作穴
46 操作突起
47 ローラ駆動長溝
51 カバー
52 ネジ穴
53 駆動用切り欠き部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定間隔を持って基底部より突出する1組のゲート部と、該ゲート部間隔よりも大きな直径を有し軸の回りに回転可能なローラと、該ローラを前記ゲート部に対して後方より付勢する付勢手段と、前記ローラを移動させることにより付勢を解除する付勢解除手段とからなることを特徴とする一方向クラッチ機構。
【請求項2】
前記付勢手段が、前記ローラの駆動部材を通して前記ローラを付勢していることを特徴とする請求項1記載の一方向クラッチ機構。
【請求項3】
前記付勢解除手段が前記ローラ駆動部材からなり、該駆動部材には操作部が設けられていて前記ゲートを開放する方向に前記ローラを移動できるよう構成されていることを特徴とする請求項1または2記載の一方向クラッチ機構。
【請求項4】
前記駆動部材が摺動可能に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の一方向クラッチ機構。
【請求項5】
一定間隔を持って基底部より突出する1組のゲート部と、該ゲート部間隔よりも大きな直径を有し軸の回りに回転可能なローラと、該ローラを前記ゲート部に対して後方より付勢する付勢手段と、前記ローラを移動させることにより付勢を解除する付勢解除手段とからなり、前記ローラは前記ゲート部より案内部材に沿って伸びる帯状物導入溝に対して傾斜方向に摺動可能に設けられたローラ駆動部材に回転可能に係止されており、前記前記付勢手段は弾性付与手段からなり、該弾性付与手段は前記ローラ駆動部材に係合されており、前記ローラ駆動部材にはさらに操作部が設けられていて手動にて摺動可能に形成されていることを特徴とする帯状物保持具。
【請求項6】
一定間隔を持って基底部より突出する1組のゲート部と、該ゲート部間隔よりも大きな直径を有し軸の回りに回転可能なローラと、該ローラを前記ゲート部に対して後方より付勢する付勢手段と、前記ローラを移動させることにより付勢を解除する付勢解除手段とからなり、前記ローラの軸の片側は前記基底部に設けた軸受け長溝により規制されており、もう一方の側は前記ゲート部より案内部材に沿って伸びる帯状物導入溝に対して略垂直方向に摺動可能に設けられたローラ駆動部材に設けられたローラ駆動長溝により回転可能に係合規制されており、前記前記付勢手段は弾性付与手段からなり、該弾性付与手段は前記ローラ駆動部材に係合されており、前記ローラ駆動部材にはさらに操作部が設けられていて手動にて摺動可能に形成されていることを特徴とする帯状物保持具。
【請求項7】
前記軸受け長溝と前記ローラ駆動長溝は前記ローラの軸方向から見て互いに交差する方向に設けられていることを特徴とする請求項6記載の帯状物保持具。
【請求項8】
前記案内部の両端は前記帯状物導入溝より突出して形成されていることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の帯状物保持具。
【請求項9】
前記ローラの外周には、滑り止め用の凹凸が設けられていることを特徴とする請求項5乃至8のいずれかに記載の帯状物保持具。
【請求項10】
前記弾性付与手段がバネであることを特徴とする請求項5乃至9のいずれかに記載の帯状物保持具。
【請求項11】
前記基底部には少なくとも1個の貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項5乃至10のいずれかに記載の帯状物保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−201398(P2008−201398A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75539(P2007−75539)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(301037545)株式会社クラフト小松 (1)