説明

一方向透視眩惑シート

【課題】昼夜を問わず、屋内照明が灯されて屋内が明るくなる夜間でも、屋外視線に対する眩惑機能を発揮し、屋内視線に対しては透視性を保つ一方向透視眩惑シートを得る。
【解決手段】裏側を透視可能な透視区画11と透視区画に比して透視性の劣る隠蔽区画12とから成る単位パターン13を可撓性シートの表面の縦横に繰り返し連続させる。透視区画に外接する外接最小矩形18の短辺の寸法Mを18mm以上、外接最小矩形の長辺の寸法Nを65mm以下、透視区画の面積(S)を300〜3000mm2 、透視区画の面積占有率(T)を15〜55%とする。単位パターン13の繰り返し間隔X・Yを外接最小矩形の短辺の寸法Mの1.2倍以上で外接最小矩形の長辺の寸法Nの3倍以下とし、JIS−K−7361による隠蔽区画12の平行光線透過率を20%以下、透視区画のヘーズ値を50%以上・70%以下、透視区画の全光線透過率を70%以上にするとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓や戸口等の屋内開口部に配置するとき、屋外から屋内への透視が妨げられるものの、屋内から屋外への透視は左程妨げられることのない一方向透視性を有するフイルムや布帛等の可撓性シート(以下、一方向透視眩惑シートと言う。)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
裏側を透視することの出来る織物、編物、不織布等の布帛やフイルム等の可撓性シート(以下、透視性シートと言う。)の片面にスパッタリング加工による金属蒸着を施し、或いは、インキを部分的に塗着し、屋外からの透視を妨げて屋内でのプライバシーを保護する眩惑機能を付与した一方向透視眩惑シートは、カーテンとして屋内開口部に吊るし、或いは、ガラスに貼着して使用されている(例えば、特許文献1、2、3、4参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平05−116499号公報
【特許文献2】特開平06−082607号公報
【特許文献3】特開平09−039365号公報
【特許文献4】特開平10−048566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来公知の一方向透視眩惑シートは、金属蒸着塗膜やインキ塗膜の有無によって表裏に濃淡光沢差が生じ、その淡色光沢面を屋外に向けて配置すると、その淡色光沢面での強い反射光に妨げられて暗い屋内を透視し難く、屋外から屋内に向けられる視線(以下、屋外視線と言う。)に対して眩惑機能を発揮するが、その屋内に向けられる濃色非光沢面では、屋内が屋外に比して暗く、その濃色非光沢面への照射光量が少ないこともあって、濃色非光沢面での反射光が殆どなく、屋内から屋外に向けられる視線(以下、屋内視線と言う。)に対しては眩惑機能を発揮しない。そのように、従来公知の一方向透視眩惑シートは、屋内に比して屋外が明るい昼間には、屋外視線に対しては眩惑機能を発揮するものの、屋内照明が灯されて明暗が逆転し、屋内に比して屋外が暗くなる夜間では、屋外から淡色光沢面への照射光量が少なく、淡色光沢面での反射光も少なくなるので、屋外視線に対して透視性を帯び、眩惑機能を発揮しない。
【0005】
近年、特殊な断面形状を成し、光の屈折の仕方が変化して特異なレンズ効果を発揮する光学繊維糸条を布帛に使用し、その光学繊維糸条の特異なレンズ効果によって夜間でも眩惑機能を発揮する光学布帛のカーテンへの使用が試みられているが、その光学布帛では、光学繊維糸条を隙間なく織編込まなければならず、屋内視線に対する透視機能を欠き、又、通気性を欠き、圧迫感を与えるのでカーテンとしては使用し難い。
【0006】
そこで本発明は、昼夜を問わず、即ち、屋内照明が灯されて屋内が明るくなる夜間でも、屋外視線に対する眩惑機能を発揮し、屋内視線に対しては透視性を保つ一方向透視眩惑シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一方向透視眩惑シート14は、(a) 裏側を透視可能な透視区画11と、その透視区画に比して透視性の劣る隠蔽区画12とから成る単位パターン13が表面の縦横に繰り返し連続しており、(b) 透視区画に外接する外接最小矩形18の短辺の寸法Mが18mm以上であり、(c) 透視区画に外接する外接最小矩形の長辺の寸法Nが65mm以下であり、(d) 単位パターン13の面積に占める透視区画の面積の占有率(T)が15%以上・55%以下(15≦T≦55)であることを第1の特徴とする。
【0008】
本発明に係る一方向透視眩惑シート14の第2の特徴は、上記第1の特徴に加えて、透視区画11の面積(S)が300mm2 以上・3000mm2 以下(300≦S≦3000)である点にある。
【0009】
本発明に係る一方向透視眩惑シート14の第3の特徴は、上記第1、第2の何れかの特徴に加えて、JIS−K−7361による隠蔽区画12の平行光線透過率が20%以下である点にある。
【0010】
本発明に係る一方向透視眩惑シート14の第4の特徴は、上記第1、第2、第3の何れかの特徴に加えて、JIS−K−7361による透視区画11のヘーズ値が50%以上・70%以下であり、全光線透過率が70%以上である点にある。
【発明の効果】
【0011】
一方向透視眩惑シート14の使用状態において、屋外を透視しようとする多くの場合は一方向透視眩惑シート14に近づくことになるので、その視点と一方向透視眩惑シートの距離は0.5m以下になり、透視区画11の最小寸法Mが18mmであれば、覗き孔から覗くように透視区画11を通して屋外を透視することが出来る。一方、隠蔽されるべき屋外視線の視点は公道や隣家に位置し、その視点と一方向透視眩惑シートの距離は概して10m以上となり、屋外からは透視区画11を通して屋内を覗き見ることは出来ない。
そして、視力検査による視力1.0の眼に、5m離れた位置から明確に読み取れるランドル環の最小寸法は7.5mmであり、10m離れた位置では明確に読み取れるランドル環の最小寸法が15mmとなるので、最小寸法が18mmの透視区画11の輪郭は、視力1.0の眼には10m離れた位置においてもハッキリ看取される。
【0012】
ところで、焦点が自動的に設定されるオートフォーカス・カメラに焦点距離が1m前後異なる2つの前後する被写体が映ると、レンズが絶え間なく前後に往復移動して焦点距離が定まらず、撮影不能になる。それと同じように、屋外視線が透視区画11を通して屋内の人影を捕らえ得るとしても、屋内の人影と一方向透視眩惑シート14との間の距離は、概して1m前後となることが多く、屋外視線の視点から透視区画11(一方向透視眩惑シート14)までの概して10m以上となる焦点距離に比して短く、透視区画11が前記の通り10m離れた位置においてもハッキリ看取し得る大きさなので、オートフォーカス・カメラと同様に、透視区画11の輪郭と屋内の人影の間で目移りし、視点が前後に揺れ動いて焦点距離が定まらず、透視区画11の輪郭が目障りになり、透視区画11の輪郭に分断されて、屋内の人影を注視しようとしても注視し難くなる。
【0013】
特に、JIS−K−7361による隠蔽区画12の平行光線透過率を20%以下にすると、屋内が屋外に比して明るくなる夜間でも隠蔽区画12に映る屋内の人影が朧で10m以上離れた屋外からは看取し難くなり、夜間の屋外視線に対して優れた眩惑機能を発揮する一方向透視眩惑シートが得られる。
【0014】
JIS−K−7361による透視区画のヘーズ値が50%未満の場合には、透視区画の隙間15を透過した屋内照明光が屋外側で拡散するヴェーリング効果が少なく、それとは逆にヘーズ値が70%を超える場合には、一方向透視眩惑シートが通気性を欠き、屋内において一方向透視眩惑シートから圧迫感を受け易くなる。この点、本発明の如くJIS−K−7361による透視区画のヘーズ値を50%以上・70%以下とし、全光線透過率を70%以上にすると、屋内照明光が透視区画の隙間15を透過し、屋外側で拡散してヴェーリング効果が生じ、屋外視線に対する眩惑機能が高まると共に、屋内からは屋外を透視し易くなり、通気性もあって屋内視線に対する圧迫感もなく、屋外視線に対する眩惑機能と共に屋内視線に対する透視機能においても優れた一方向透視眩惑シートが得られる。
【0015】
オフセット印刷画像は細かい網点によって点描され、テレビ画像は細かく仕切られたブラウン管の格子枡目によって点描される。一方向透視眩惑シートの透視区画11が細かく、又、単位パターン13に占める透視区画11の面積占有率(T)が55%を超える場合は、透視区画11からの透過光に点描されるように屋内の人影が一方向透視眩惑シートに現れ易くなる。しかし、本発明では、透視区画11に外接する外接最小矩形18の短辺の寸法Mを18mm以上とし、透視区画11の面積(S)を300mm2 以上にしたので、屋内の人影が透視区画11からの透過光によってテレビ画像のようには点描され難く、又、その透視区画11の単位パターン13に占める面積占有率(T)を15%以上・55%以下としたので、隠蔽区画12に妨げられて透視区画11からの透過光によっては印刷画像やテレビ画像のようには点描されず、焦点距離が10m以上となる視点においても、透視区画11が細かい点となって眼に映ることはなく、屋内の人影が、印刷画像やテレビ画像のように屋内が明るくなる夜間において透視し難くなる。
【0016】
在来の透視性カーテン布帛では、全面の平行光線透過率が20%以上であり、全面のヘーズ値が50%前後であり、全光線透過率が60〜80%になっている。しかし、本発明では、可撓性シートを透視区画11と隠蔽区画12とに区分けし、部分的に、即ち、透視区画11に外接する外接最小矩形18の短辺の寸法Mを18mm以上とし、透視区画11に外接する外接最小矩形18の長辺の寸法Nを65mm以下とし、透視区画11の単位パターン13に占める面積占有率(T)を15%以上・55%以下とし、隠蔽区画12の平行光線透過率を20%以下とし、透視区画11の面積(S)を300mm2 以上・3000mm2 以下(300≦S≦3000)とし、透視区画11を縁取る周囲の隠蔽区画12の面積占有率(100−T)を45%以上・85%以下としたので、10m離れた視点においても在来の透視性カーテン布帛のように全体が無地調にならず、透視区画11の輪郭が明瞭に眼に映り、それが目障りになり、透視区画11の輪郭に分断されて屋内の人影を注視し難くなり、その結果、屋内が屋外に比して明るくなる夜間においても屋内の人影が屋外から透視し難くなる。
【0017】
かくして、本発明によると、昼夜を問わず、屋外視線に対しては眩惑機能を発揮し、屋内視線に対しては透視機能を発揮する一方向透視眩惑シートが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
一方向透視眩惑シート14は、図柄模様を描出する常法に従ってフイルムや布帛等の可撓性シートに単位パターンを描出して構成される。例えば、フイルムに対しては、グラビアロールやスクリーンロール、インクジェット等のプリント装置によって、斑点(ドット)模様、格子模様、網目模様等の地模様をプリントする場合に、その地模様を構成する斑点、格子、網目等の図形の描出密度、太さ、大きさ、濃淡、インキ塗膜厚み等の差異によって、透視区画11と隠蔽区画12との間に平行光線透過率、全光線透過率およびヘーズ値の差異を付ける。
【0019】
布帛にあっては、グラビアロールやスクリーンロール、インクジェット等によるインク(捺染・プリント)の印捺によるほか、抜触剤を印捺して繊維(17A)を部分的に溶解除去して布帛を透視区画11と隠蔽区画12に区分けし、透視区画11と隠蔽区画12との間に平行光線透過率、全光線透過率およびヘーズ値の差異を付ける。
【0020】
織物と編物では、糸条が交絡した織編組織が透視区画11の地模様になり、その織編組織によって構成される経糸16や緯糸17の間の織目隙間15や編目隙間の大きさや密度を部分的に変えて透視区画11と隠蔽区画12に区分けし、透視区画と隠蔽区画との間に平行光線透過率、全光線透過率およびヘーズ値の差異を付ける。織物や編物は、表布と裏布を接結した表裏二重構造を成すものであってもよい。
【0021】
更に、一方向透視眩惑シートは、織物と編物、不織布とフイルム等、織物、編物、不織布およびフイルムを二重或いは三重に重ね合せて多層構造にすることも出来る。織物と編物では、ピケ織物組織のように、その構成する糸条を部分的に浮き出させ、その浮き出た糸条(17B)をシャーリング装置に通して削り取り、或いは、部分的に起毛し、或いは又、部分的にウォーターパンチング(高圧噴射液流)やニードルパンチングを施して強制的に織目隙間15や編目隙間を押し広げ、透視区画11と隠蔽区画12との間に平行光線透過率、全光線透過率およびヘーズ値の差異を付けることも出来る。
【0022】
一方向透視眩惑シートの表面と裏面との間には、表面反射率の差異による濃淡を付け、光沢のある淡色面を屋外側に向けて使用するとよく、このことは一方向透視眩惑シートを二重三重に重ねて使用する場合も同様である。従って、表裏二重構造を成す織物や編物では、艶消剤を殆ど含有せず光沢の強いブライト繊維と、酸化チタンを主とする艶消剤の含有率が多く光沢が殆どないダル繊維、或いは、艶消剤の含有率が少なく光沢の弱いセミダル繊維を表裏に織編み分けると効果的である。
【0023】
本発明では、透視区画11の輪郭(隠蔽区画12)が屋外視線には目障りになり、それが屋内の人影の注視を妨げて一方向透視眩惑性を高めようとするのであるから、その輪郭を同じ形に統一せず、図1に図示する円形「○」のほか、X字形「×」、十文字形「+」、三角形「△」、矩形「□」、星形「☆」等に形を変え、例えば、円形「○」とX字形「×」の透視区画を縦横に交互に配置し(○×○×○× ………)、或いは、矩形「□」と星形「☆」の透視区画を縦横に交互に配置する等(□☆□☆□☆ ………)、異形輪郭の透視区画を交互に並べるとよく、又、野戦防衛器具施設や野戦服のように迷彩パターンを一方向透視眩惑シートに施すことも出来る。
【0024】
単位パターン13の繰り返し間隔X・Yは、透視区画11に外接する外接最小矩形18の短辺の寸法Mの1.2倍以上、透視区画に外接する外接最小矩形18の長辺の寸法Nの3倍以下にするとよい。透視区画11の輪郭が円形を成す場合、その透視区画11に外接する外接最小矩形18は正方形になるので、その外接最小矩形18の短辺の寸法(M)と長辺の寸法(N)は等しくなる(図1)。
【0025】
単位パターン13は、連続した隠蔽区画12と、その連続した隠蔽区画12に囲まれて独立した輪郭の異なる複数個の透視区画(11,11………)とによって構成することも出来る。その複数個の透視区画(11,11………)に成る単位パターン13では、その個々の透視区画(11)に外接する外接最小矩形18の短辺の寸法Mが18mm以上となり、その個々の透視区画(11)に外接する外接最小矩形18の長辺の寸法Nが65mm以下となり、且つ、その複数個の透視区画(11,11………)の合計面積の単位パターン13の面積に占める面積の占有率(T)が15%以上・55%以下(15≦T≦55)となるように、その複数個の透視区画(11,11………)の輪郭を設定する。
【0026】
単位パターン13には、外接最小矩形18の短辺の寸法Mが18mm以上で、外接最小矩形18の長辺の寸法Nが65mm以下の透視区画11の他に、裏側を透視可能であっても外接最小矩形(18)の短辺の寸法(M)と長辺の寸法(N)が共に18mm未満であって屋外視線に対する眩惑機能を発揮せず、一方向透視眩惑シート14の装飾上必要とされる透視付飾区画19が含まれていてもよい(図2)。透視付飾区画19の面積は、単位パターン13の面積に占める透視区画11の面積の占有率(T)からは除外される。
【0027】
一方向透視眩惑シート14は、カーテン布帛としてロールブラインドのように平らに拡布して使用することも出来、又、スタイルカーテンや横開きカーテン、ローマンシェードのように縦襞や横襞を付けて立体的に使用することも出来る。
【0028】
一方向透視眩惑シート14は、屋外視線に対する眩惑効果と屋内視線に対する透視効果を必要とする窓や戸口等の屋内開口部に配置して使用されるものであるから、眩惑効果と透視効果を必要とする布帛やフイルム等の透視性シートの一部に単位パターン13を描出し、その透視性シートの一部にだけ眩惑機能と透視機能を付与することも出来、そのように透視性シートの一部にだけ単位パターン13を描出するとしても、そのことによって本発明の技術的範囲が縮減されることはない。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
繊度22dtexのポリエステルセミダル繊維モノフィラメント糸を経糸(16)とし、繊度30番手双糸のカチオン可染ポリエステルブライト繊維紡績糸と、繊度40番手単糸のポリエステルブライト繊維紡績糸と、繊度22dtexのポリエステルセミダル繊維モノフィラメント糸とを緯糸(17A・17B)として順次経糸間(16・16)に打ち込み、カチオン可染ポリエステルブライト繊維紡績糸(17A)が経糸(16)と接結することなく織幅方向に長さ20mm(M)に亙って浮き出し、その浮出部分が製織方向に長さ20mm(N)に亙って連続した20mm角・矩形の緯糸浮出区画を描出した経糸密度210本/2.54cm×緯糸密度126本/2.54cmの織物を織成し、シャーリング装置に通して緯糸浮出区画において浮き出ている緯糸(カチオン可染ポリエステルブライト繊維紡績糸17A)を剪断除去して緯糸浮出区画を透視区画(11)とし、緯糸浮出区画(11)の周囲を隠蔽区画(12)とする単位パターン(13)がそれぞれ左斜め方向と右斜め方向に42.4mm間隔(X・Y)で繰り返し連続した一方向透視眩惑織物(14)に仕上げた。
【0030】
(実施例2〜9)
繊度22dtexのポリエステルセミダル繊維モノフィラメント糸を経糸(16)とし、繊度30番手双糸のレーヨン紡績糸と、繊度40番手単糸のポリエステルブライト繊維紡績糸と、繊度22dtexのポリエステルセミダル繊維モノフィラメント糸とを緯糸(17)として順次経糸間(16・16)に打ち込み、経糸密度210本/2.54cm×緯糸密度126本/2.54cmの織物を織成し、捺染元糊にアルカリ剤を配合した抜触剤を下記表1に示す直径(R)の円形状に織物に印捺し、その円形内のレーヨン紡績糸を抜触除去し、その印捺箇所を透視区画(11)とし、その周囲の抜触剤の非印捺箇所を隠蔽区画(12)とする単位パターン(13)がそれぞれ左斜め方向と右斜め方向に下記表1に示す間隔(X・Y)で繰り返し連続した一方向透視眩惑織物(14)に仕上げた。
【0031】
(比較例1)
繊度22dtexのポリエステルセミダル繊維モノフィラメント糸を経糸(16)とし、繊度40番手単糸のポリエステルブライト繊維紡績糸と、繊度22dtexのポリエステルセミダル繊維モノフィラメント糸とを緯糸(17)として順次経糸間(16・16)に打ち込み、経糸密度210本/2.54cm×緯糸密度84本/2.54cmの織物を織成した。
【0032】
(比較例2)
繊度22dtexのポリエステルセミダル繊維モノフィラメント糸を経糸(16)とし、繊度30番手双糸のレーヨン紡績糸と、繊度40番手単糸のポリエステルブライト繊維紡績糸と、繊度22dtexのポリエステルセミダル繊維モノフィラメント糸とを緯糸(17)として順次経糸間(16・16)に打ち込み、経糸密度210本/2.54cm×緯糸密度126本/2.54cmの織物を織成し、アルカリ抜触剤を付与してレーヨン紡績糸を全て抜触除去し、経糸密度210本/2.54cm×緯糸密度84本/2.54cmの織物に仕上げた。
【0033】
(比較例3〜8)
繊度22dtexのポリエステルセミダル繊維モノフィラメント糸を経糸(16)とし、繊度30番手双糸のレーヨン紡績糸と、繊度40番手単糸のポリエステルブライト繊維紡績糸と、繊度22dtexのポリエステルセミダル繊維モノフィラメント糸とを緯糸(17)として順次経糸間(16・16)に打ち込み、経糸密度210本/2.54cm×緯糸密度126本/2.54cmの織物を織成し、捺染元糊にアルカリ剤を配合した抜触剤を下記表1に示す直径(R)の円形状に織物に印捺し、その円形内のレーヨン紡績糸を抜触除去し、その印捺箇所を透視区画(11)とし、その周囲の抜触剤の非印捺箇所を隠蔽区画(12)とする単位パターン(13)がそれぞれ左斜め方向と右斜め方向に下記表1に示す間隔(X・Y)で繰り返し連続した織物(14)に仕上げた。
【0034】
実施例1〜9の織物と比較例1〜8の織物をカーテンとしてガラス窓に吊るして試用したところ、実施例1〜9の織物が比較例1〜8の織物に比し、昼夜を問わず、屋外視線に対する眩惑機能に優れているとの結果を得た。
実施例1〜9の織物と比較例1〜8の織物の透視区画の面積(A)、透視区画の面積占有率(T)、隠蔽区画の平行光線透過率、透視区画のヘーズ値、透視区画の全光線透過率、および、屋外視線に対する眩惑機能は、下記表1に示す通りである。
【0035】
下記表1において、実施例1〜9の織物と比較例1〜8の織物の屋外視線に対する隠蔽効果については、屋外から屋内がほとんど見えずプライバシー保護機能に富むと評価される場合は「◎」と表示し、屋外から屋内が見え難くプライバシー保護機能に富むと評価される場合は「○」と表示し、屋外から屋内がなんとなく見えプライバシー保護機能に劣ると評価される場合は「△」と表示し、屋外から屋内が良く見えプライバシー保護機能に劣ると評価される場合は「×」と表示している。
【0036】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る一方向透視眩惑シートの平面図である。
【図2】本発明に係る一方向透視眩惑シートの平面図である。
【符号の説明】
【0038】
11:透視区画
12:隠蔽区画
13:単位パターン
14:一方向透視眩惑シート
15:隙間
16:経糸
17:緯糸
18:外接最小矩形
19:透視付飾区画
M :透視区画に外接する外接最小矩形の短辺の寸法
N :透視区画に外接する外接最小矩形の長辺の寸法
X :繰り返し間隔
Y :繰り返し間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 裏側を透視可能な透視区画(11)と、その透視区画(11)に比して透視性の劣る隠蔽区画(12)とから成る単位パターン(13)が表面の縦横に繰り返し連続しており、
(b) 透視区画(11)に外接する外接最小矩形(18)の短辺の寸法(M)が18mm以上であり、
(c) 透視区画(11)に外接する外接最小矩形(18)の長辺の寸法(N)が65mm以下であり、
(d) 単位パターン(13)の面積に占める透視区画(11)の面積の占有率(T)が15%以上・55%以下(15≦T≦55)である一方向透視眩惑シート。
【請求項2】
透視区画(11)の面積(S)が300mm2 以上・3000mm2 以下(300≦S≦3000)である前掲請求項1に記載の一方向透視眩惑シート。
【請求項3】
JIS−K−7361による隠蔽区画(12)の平行光線透過率が20%以下である前掲請求項1と2の何れかに記載の一方向透視眩惑シート。
【請求項4】
JIS−K−7361による透視区画(11)のヘーズ値が50%以上・70%以下であり、全光線透過率が70%以上である前掲請求項1と2と3の何れかに記載の一方向透視眩惑シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−2087(P2008−2087A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170392(P2006−170392)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(000148151)株式会社川島織物セルコン (104)