説明

一次慢性腎臓疾患の進行についての予後バイオマーカー

本発明の対象は、一次慢性腎臓疾患(CKD)の進行の予測のための、又はANP及び/又はADM又はその前駆体又はそのフラグメントの決定を含んで成る慢性腎臓疾患療法のモニターリングのためのアッセイ及びインビトロ方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予後バイオマーカーの分野にあり、そして慢性腎臓疾患を有する患者についての結果の予測に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性腎臓疾患(CKD)は、上昇する発生率及び普及、高い費用、及び不良な結果を有する主要健康問題である。腎臓疾患結果品質推進(K/DOQI)分類の導入及び腎機能を評価するためへの推定される糸球体濾過率(eGFR)の使用は、これまで診断されていないCKDを有する多数の患者を同定して来た(National Kidney Foundation. Am J Kidney Dis 2002; 39 (2 Suppl 1): S 1-266; Centers for Disease Control and Prevention (CDC), Morb Mortal WkIy Rep 2007; 56: 161-165)。
【0003】
しかしながら、わずかに少数のCKD患者が、末期腎臓疾患(ESRD)に進行する(Clase et al., BMJ 2004; 329: 912-915)。CKD進行について最高の危険性を有するそれらの患者の同定が挑戦のまま残っている。多くの実験室によるK/DOQI推薦及びGFRの通常報告される評価の採用を通して、実質的な成功が診断されていないCKDについてのスクリーニングにおいて達成されて来た。しかしながら、ESRDにたぶん進行するCKDを有するそれらの患者への介入を標的化するために、さらなる危険性層別化及びさらなる危険性予測体の同定のための緊急の必要性が存在する。
【0004】
アミノ−末端プロBNP(NT−プロBNP)、すなわち心血管疾患のための十分に確立された予後マーカーが、一次CKDを有する非糖尿病患者における腎臓病進行を予測するために示されて来た(Spanaus et al., Clin Chem 2007; 53: 1264- 1272)。
【0005】
Aタイプナトリウム利尿性ペプチド(ANT)及びアドレノメジュリン(ADM)は、心血管及び腎臓血流遮断の維持に関与する、強力な血圧下降性、利尿性及びナトリウム利尿性ペプチドである(Vesely et al., Cardiovasc Res 2001; 51 : 647-658; Bunton et al., Pharmacol Ther 2004; 103: 179-201)。ANP及びADMの高められた血漿濃度が、心血管病を有する患者、及び腎臓疾患を有する患者において報告されている(Lerman et al., Lancet 1993; 341 : 1105-1109; Jougasaki et al., Circulation 1995; 92:286-289; Winters et al., Biochem Biophys Res Commun 1988; 150: 231-236; Ishimitsu et al., J Clin Invest 1994; 94: 2158-2161)。しかしながら、ANP及びADMは、腎臓疾患の進行を予測するマーカーとして決して考慮されたことはない。
【0006】
ペプチドアドレノメジュリン(ADM)は、ヒト褐色細胞腫から単離された、52個のアミノ酸を含んで成る新規の血圧降下性ペプチドとして、1993年に最初に記載された(Kitamura et al. (1993), Biochem. Biophys. Res. Commun. 192:553-560)。同じ年、185個のアミノ酸を含んで成る前駆体ペプチドをコードするcDNA、及びこの前駆体ペプチドの完全なアミノ酸配列がまた記載されている(Kitamura et al. (1993), Biochem. Biophys. Res. Commun. 194:720-725)。中でも、N−末端で21個のアミノ酸シグナル配列を含んで成る前駆体ペプチドは、“プレ−プロ−アドレノメジュリン”(プレ−プロ−ADM)として言及される。
【0007】
ADMペプチドは、タンパク質分解切断により形成される、プレ−プロ−ADMのアミノ酸95〜146を含んで成る。プレ−プロADMの切断において形成されるそれらのフラグメントのいくつかのペプチドフラグメント、特に生理学的活性のペプチドアドレノメジュリン(ADM)及び“PAMP”、すなわちプレ−プロADMにおいて20個のアミノ酸(22−41)、続いてシグナルペプチドの21個のアミノ酸を含んで成るペプチドが、詳細に特徴づけられている。未知の機能及び高いエクスビボ安定性のもう1つのフラグメントは、中央領域プロアドレノメジュリン(MR−プロADM)であり(Struck et al. (2004), Peptides 25(8): 1369-72)、このために、信頼できる定量化方法が開発されて来た(Morgenthaler et al. (2005), Clin. Chem. 51(10): 1823-9)。
【0008】
1993年、ADMの発見及び特徴化が徹底的な調査活性及び多くの出版を誘発し、この結果、最近、種々の再考文献に要約されており、その記載においては、“Peptides”devoted to ADM (Peptides 22(2001))の発行、特に(Takahashi (2001), Peptides 22, 1691 and Eto (2001), Peptides 22, 1693-1711)に見出される文献に言及される。主題はさらに、Hinson et al. (Hinson et al. (2000), Endocr. Rev. 21 (2), 138-167)に再考されている。ADMは、多機能性調節ペプチドとして見なされ得る。それは、C−末端グリシンにより拡張される不活性形で循環中に放される(Kitamura et al. (1998),Biochem. Biophys. Res. Commun. 244 (2), 551-555)。
【0009】
ADMは、効果的血管拡張剤である。降圧効果は、ADMのC−末端部分におけるペプチドセグメントに特に関連している。他方では、ADMのN−末端のペプチド配列は、血圧上昇効果を示す(Kitamura et al. (2001), Peptides 22, 1713-1718)。
【0010】
動脈ナトリウム利尿性ペプチド(ANP、また、動脈ナトリウム利尿性因子(ANF)としても知られている)は、28個のアミノ酸残基(配列番号:8)を含んで成るペプチドホルモンである。ANG遺伝子は、3個のエキソン及び2個のイントロンを含んで成り、そして153個のアミノ酸プレ−プロANP(配列番号6)をコードする。N−末端シグナルペプチド(25個のアミノ酸)及び2個のC−末端アミノ酸(127/128)の切断に基づいて、プロANPが放出される。
【0011】
ANPは、前駆体プロホルモン プロANP(配列番号:7)のC−末端からの残基99−126を含んで成る、このプロホルモンは、ANP(1−28)又はα−ANPとしても知られている、成熟の28個のアミノ酸ペプチドANP、及びアミノ末端フラグメントANP(1−98)(NT−プロANP、配列番号:9)に分解される。従って、NT−プロANP及びANPは等モル量で生成される。98個のアミノ酸NT−プロANPはさらに、タンパク質分解的にプロセッシングされ得る。中央領域プロANP(MR-プロANP)はプロANP、又はプロANPの少なくともアミノ酸残基53−90を含んで成るそのいずれかのフラグメントとして定義される。プロANPのアミノ酸53−90は、配列番号:10に示される(図10)。MR−プロANPの測定は、急性非代償性心不全の分別診断に使用されて来た(Gegenhuber et al., Clin Chem 2006; 52: 827-31)。
【0012】
ANP及びその前駆体及びフラグメントに関しては、いくつかの出版物は、進行した腎臓疾患を有する患者において、特に人口透析の前及び後、それらの分析物の測定に対処している。それらの出版物においては、測定される分析物のレベルが、サンプルが測定のために得られる同じ時間で患者から得られた他のパラメーターへのそれらの関連性に関して分析される。出版物のいずれも、時間にわたっての疾病の進行を追跡したことはなく、そして従って、所定の時点で測定される分析物レベルが疾病の重症性の上昇に関係するかどうか、又は分析物レベルが疾病の進行の予測のために適切であるかどうかを調べることができず、且つ調べていない。(Nephron. 1991 ;58(1): 17-22. Change in plasma immunoreactive N-terminus, C-terminus, and 4,000-dalton midportion of atrial natriuretic factor prohormone with hemodialysis. Winters CJ, Vesely DL. Regul Pept Suppl.1985 ;4: 110-2)。
【0013】
発明の特定の記載
本発明は、次の段階:
(a) 一次慢性腎臓疾患を有する患者からのサンプルを供給し、
(b) ANP及び/又はADM又はそのフラグメント、又はその前駆体又はそのフラグメントのレベルを決定し、
(c) ANP及び/又はADM又はそのフラグメント、又はその前駆体又はそのフラグメントのレベルと、一次慢性腎臓疾患の進行の予測とを関連づけることを含んで成る、一次慢性腎臓疾患(CKD)の進行の予測又は慢性腎臓疾患治療のモニターリング方法に関するに関する。
【0014】
1つの好ましい態様においては、本発明は、次の段階:
(a) 一次慢性腎臓疾患を有する患者からのサンプルを供給し、
(b) ANP及び/又はADM又はそのフラグメント、又はその前駆体又はそのフラグメントのレベルを決定し、
(c) ANP及び/又はADM又はそのフラグメント、又はその前駆体又はそのフラグメントのレベルと、一次慢性腎臓疾患の進行の予測とを関連づけることを含んで成る、一次慢性腎臓疾患(CKD)の進行の予測方法に関するに関する。
【0015】
もう1つの好ましい態様においては、本発明は、次の段階:
(a) 一次慢性腎臓疾患を有する患者からのサンプルを供給し、
(b) ANP及び/又はADM又はそのフラグメント、又はその前駆体又はそのフラグメントのレベルを決定し、
(c) ANP及び/又はADM又はそのフラグメント、又はその前駆体又はそのフラグメントのレベルと、一次慢性腎臓疾患の進行の予測とを関連づけることを含んで成る、慢性腎臓疾患治療のモニターリング方法に関するに関する。
【0016】
最も好ましい態様は、上記のような一次腎臓疾患の進行の予測方法である。この予測方法は、後で本明細書に概略されるすべての特定の態様を伴って変化され得る。
【0017】
前記方法は、非進行性慢性腎臓疾患を有する患者と、進行性慢性腎臓疾患を有する患者との識別を可能にする。本明細書における進行性CKDは、血清クレアチニンの倍加に進行し、そしてたぶん進行するCKD、及び末期腎臓疾患(ESRD)に関する。従って、前記方法の好ましい態様においては、患者は進行体又は非進行体として分類される。従って、進行体は、CKDが結果的に、末期腎臓疾患(ESRD)に進行するであろう患者である。これは、1つの態様において、進行体が好ましくは、ESRDに達しないで、倍加血清クレアチニンであるエンドポイントに進行する患者として定義されることを意味する。ESRDは非代償性腎臓疾患である。これは、腎臓損傷がもはや可逆的ではなく、そして透析又は移植が必要とされることを意味する。
【0018】
これは、一次CKDの進行の予測方法、及び/又は腎臓疾患をモニターリングする方法についての好ましい患者サブグループが、ESRDでない患者を独占的に包含することを意味する。
【0019】
本発明のもう1つの態様においては、進行体は、腎臓移植を必要とする末期ESRDに進行する患者として定義される。従って、進行は、好ましくはESRDに達しないで、血清クレアチニンを倍加するか、又は腎臓置換を必要とするESRDに達する前述のエンドポイントの1つの方への、軽い〜中位の腎臓疾患の疾病の工程として定義される。本発明の方法は特に、軽い〜中位の腎臓疾患を有する患者に適用できる。軽い〜中位の疾病を有する患者は、分析物の測定の前、少なくとも3ヶ月間、安定した腎機能を有する患者として定される。好ましい態様においては、軽い〜中位の疾病を有する患者は、人口透析を必要としない。
【0020】
好ましい態様においては、本発明の方法は、慢性腎臓疾患の進行を予測するか、又はモニターリングするためであるが、しかし死亡の危険性を予測するものではない。従って、本発明の1つの態様によれば、死亡率は、進行体又は非進行体への患者の分類のために考慮されるエンドポイントではない。しかしながら、進行体は、非進行体に比較して、死亡の増強された危険性を有することが、当業者に明白である。
【0021】
1つの好ましい態様においては、本発明は、次の段階:
(a) 軽い〜中位の腎臓疾患を有する一次慢性腎臓疾患の患者からのサンプルを供給し、
(b) ANP及び/又はADM又はそのフラグメント、又はその前駆体又はそのフラグメントのレベルを決定し、
(c) ANP及び/又はADM又はそのフラグメント、又はその前駆体又はそのフラグメントのレベルと、一次慢性腎臓疾患の進行の予測とを関連づけることを含んで成る、軽い〜中位の腎臓疾患を有する患者について、一次慢性腎臓疾患(CKD)の進行の予測又は慢性腎臓疾患治療のモニターリング方法に関するに関する。
【0022】
1つの好ましい態様においては、本発明は、次の段階:
(a) 軽い〜中位の腎臓疾患を有する一次慢性腎臓疾患の患者からのサンプルを供給し、
(b) ANP及び/又はADM又はそのフラグメント、又はその前駆体又はそのフラグメントのレベルを決定し、
(c) ANP及び/又はADM又はそのフラグメント、又はその前駆体又はそのフラグメントのレベルと、一次慢性腎臓疾患の進行の予測とを、死亡性の予測を考慮しないで、関連づけることを含んで成る、軽い〜中位の腎臓疾患を有する患者について、一次慢性腎臓疾患(CKD)の進行の予測又は慢性腎臓疾患治療のモニターリング方法に関するに関する。
【0023】
これは、一次慢性腎臓疾患の進行を意味し、ここで進行は、腎機能の悪化を意味する。腎機能の悪化の測定は、上昇、すなわち基線血清クレアチニンの少なくとも倍加、及び/又は腎臓置換療法を必要とするESRDである。
【0024】
本発明の1つの好ましい態様においては、ANP又はそのフラグメント、又はその前駆体又はそのフラグメントのレベルは、単一マーカーとして決定され、そして使用される。本発明のもう1つの好ましい態様においては、ADM又はそのフラグメント、又はその前駆体又はそのフラグメントのレベルが、単一マーカーとして決定され、そして使用される。
【0025】
ANP又はそのフラグメント、又はその前駆体又はそのフラグメントは、好ましくは、NT−プロANP、 MR−プロANP及び成熟ANPを含んで成る群から選択される。フラグメントは好ましくは、少なくとも12個の長さのアミノ酸を有することができる。
【0026】
ADM又はそのフラグメント、又はその前駆体又はそのフラグメントは好ましくは、成熟ADM、 MR-プロADM、PAMP 及びCT-プロADM又はそれらのフラグメントを含んで成る群から選択される。フラグメントは好ましくは、少なくとも12個の長さのアミノ酸を有することができる。
【0027】
本発明の特に好ましい態様においては、一次慢性腎臓疾患の進行の予測は、少なくとも1つの実験パラメーター、又はクレアチニン、GFR(“糸球体濾過率”;GFRは例えば、イオヘキソール−クリアランスを測定することにより決定される(Bostom et al., J Am Soc Nephrol 2002; 13: 2140-2144))、タンパク尿、アルブミン、CRP、シスタチンC、GDF15、ST2、NGAL、プロカルシトニン及びそのフラグメント、BNP又はそのフラグメント又はその前駆体又はそのフラグメント、プロ−バソプレッシン及びそのフラグメント、例えばコペプチン、バソプレシン及びニューロフィシンII、プロ−エンドセリン−1及びそのフラグメント、例えばCT−プロET−1、NT−プロET−1、大−エンドセリン−1及びエンドセリン−1を含んで成る群から選択された追加のマーカーをさらに決定し、そして用いることにより改良される。
【0028】
好ましくはまた、さらに、年齢、性別、収縮期血圧、拡張期血圧、抗高血圧処置、肥満指数、現在の喫煙習慣を含んで成る群から選択された、少なくとも1つの臨床学的パラメーターが決定される。
【0029】
本発明はまた、ANP及び/又はADM又はその前駆体又はそのフラグメントのレベルが、単独で、又は他の予後的に有用な実験又は臨床学的パラメーターと共に、一次慢性腎臓疾患の進行の予測のために、次の変法:
−一次慢性腎臓疾患の集団における予備決定された全サンプルにおける、ANP及び/又はADM又はそのフラグメント又はその前駆体又はそのフラグメントのレベルのメジアンの比較、
−一次慢性腎臓疾患の集団における予備決定された全サンプルにおける、ANP及び/又はADM又はそのフラグメント又はその前駆体又はそのフラグメントのレベルの変位点の比較、
−Cox Proportional Hazards分析に基づいての、又は危険指数計算、例えばNRI(ネット再分類指数)又はIDI(統合識別指数)の使用による計算から選択され得る方法により使用される、上記のような一次慢性腎臓疾患の進行の予測及び慢性腎臓疾患治療のモニターリング方法に関する。
【0030】
特定の態様においては、MR−プロADMのレベルは、プレ−プロADMのアミノ酸位置45−92に位置する1又は複数のエピトープに対して向けられる1又は複数の捕獲プローブを含んで成る診断活性を用いて測定される。
さらなる観点においては、本発明はまた、一次慢性腎臓疾患を有する患者における腎エンドポイントの予測のためへのANP及び/又はADM又はそのフラグメント又はその前駆体又はそのフラグメントの使用に関する。
【0031】
さらに、本発明は、一次慢性腎臓疾患の進行の予測のためへのANP及び/又はADM又はそのフラグメント又はその前駆体又はそのフラグメントの使用に関する。
本発明の1つの態様においては、一次慢性腎臓疾患を有する患者は、真性糖尿病を有さない。従って、本発明の好ましい態様においては、慢性腎臓疾患は、非糖尿病性慢性腎臓疾患である。
【0032】
一次慢性腎臓疾患を有する患者の進行体又は非進行体への分類のためへのANP及び/又はADM又はそのフラグメント又はその前駆体又はそのフラグメントの使用はまた、本発明の範囲内である。
特に、ANP及び/又はADM又はそのフラグメント又はその前駆体又はそのフラグメントは、GFR無関係予測体及び分類マーカーとして使用される。
【0033】
本発明はまた、一次慢性腎臓疾患を有する患者における慢性腎臓疾患のための治療の成功をモニターリングするためへの本発明のいずれかの方法の使用に関する。この情況下で、本発明の方法は、治療の開始後、1又は複数回、適用され、そして結果がお互い、又は治療の開始の前の結果に比較され、治療の成功が評価され得る。
【0034】
腎機能をモニターリングするためへの本発明のいずれかの方法の使用もまた、本発明の範囲内にある。
1つの態様においては、0.3nモル/l以下、及び/又は一次慢性腎臓疾患を有する患者集団のメジアン以下の検出限界、及び正常範囲での<30%CVのアッセイ間精度を有するMR−プロADMアッセイが、一次慢性腎臓疾患の進行の予測のために使用される。
【0035】
もう1つの態様においては、20pモル/l以下、及び/又は一次慢性腎臓疾患を有する患者集団のメジアン以下の検出限界、及び正常範囲での<30%CVのアッセイ間精度を有するMR−プロANPアッセイが、一次慢性腎臓疾患の進行の予測のために使用される。
【0036】
本発明はまた、ANP又はそのフラグメント、又はその前駆体又はそのフラグメント及び/又はADM又はそのフラグメント、又はその前駆体又はそのフラグメントに対して向けられた捕獲プローブの、一次慢性腎臓疾患の進行を予測するためへの使用に関する。ADMの場合、好ましくは、前記捕獲プローブは、プレ−プロADMのアミノ酸位置45−92に位置する1又は複数のエピトープに対して向けられる。ANPの場合、好ましくは、前記捕獲プローブは、プロANPのアミノ酸位置53−902に位置する1又は複数のエピトープに対して向けられる。
【0037】
一般的に、本明細書に記載されるようなペプチド及び前駆体ペプチドのフラグメントは、少なくとも12個の長さのアミノ酸のフラグメントに関する。フラグメントは好ましくは、ペプチドの免疫学的に検出できるフラグメントである。
【0038】
本発明においては、用語“プロ−アドレノメジュリン”(プロADM)及び用語“プロ−アドレノメジュリン又はそのフラグメント”とは、プロADMの完全な分子、又は少なくとも12個のアミノ酸のそのフラグメントのいずれか、例えば、ADM、PAMP及びMR−プロADMを言及するが、但しそれらだけには限定されない。好ましい態様においては、プロADMは、プロADMの完全な分子又は少なくとも12個のアミノ酸のそのフラグメントのいずれかを言及するが、但し、成熟ADMを除く。さらなる好ましい態様においては、プロADMは、プロADMの完全な分子又は少なくとも12個のアミノ酸のそのフラグメントのいずれかを言及するが、但し成熟ADM又はそのフラグメントを除く。従って、本発明の1つの特定の態様においては、“プロADM又はそのフラグメントのレベルの決定”とは、プロADM又はそのフラグメントのレベルの決定を言及し、ここで成熟ADM及び/又はそのフラグメントのレベルは決定されない。
【0039】
アドレノメジュリン(プレ−プロ−アドレノメジュリン)の前駆体ペプチドのアミノ酸配列は、図1(配列番号:1)に与えられる。プロ−アドレノメジュリンは、プロ−プロ−アドレノメジュリンの配列のアミノ酸残基22〜185に関する。プロ−アドレノメジュリン(プロ−ADM)のアミノ酸配列は、図2(配列番号:2)に与えられる。プロ−ADM N−末端20ペプチド(PAMP)は、プレ−プロADMのアミノ酸残基22−41に関する。PAMのアミノ酸配列は、図3(配列番号:3)に与えられる。MR−プロ−アドレノメジュリン(NR−プロ−ADM)は、プレ−プロ−ADMのアミノ酸残基45−92に関する、MR−プロ−ADMのアミノ酸配列は、図4(配列番号:4)に与えられる。成熟アドレノメジュリン(ADM)のアミノ酸配列は、図5(配列番号:5)に与えられる。
【0040】
ANPのアミノ酸配列は、図8(配列番号:8)に与えられる。153アミノ酸プレ−プロANPの配列は、図6(配列番号:6)に与えられる。N−末端シグナルペプチド(25個のアミノ酸)及び2個のC−末端アミノ酸(127/128)の切断に基づいて、プロANP(図7、配列番号:7)が放される。ANPは、前駆体プロホルモンプロ−ANPのC−末端からの残基99−126を含んで成る。このプロホルモンは、ANP(1−28)又はα−ANPとも知られている、成熟28アミノ酸ペプチド、及びアミノ末端フラグメントANP(1−98)(NT−プロANP、図9、配列番号:9)に分割される。中央領域プロANP(MR−プロANP)は、NT−プロANP、又はプロANPの少なくともアミノ酸残基53−90(図10における配列番号10)を含んで成る、そのいずれかのフラグメントとして定義される。
【0041】
タンパク質又はペプチドに関して、本明細書において言及される場合、用語“フラグメント”とは、大きなタンパク質又はペプチドに由来する小さなタンパク質又はペプチドを言及し、従って、大きなタンパク質又はペプチドの部分配列を含んで成る。前記フラグメントは、1又は複数のそのペプチド結合の鹸化により、大きなタンパク質又はペプチドに由来する。
【0042】
本発明においては、表現における用語“レベル”、例えば“プロテアーゼのレベル”、“分析物レベル”及び類似する表現は、それぞれにおいて言及される分子体の量を言及し、又は酵素の場合、それはまた、酵素活性を言及する。
【0043】
本発明の方法の1つの好ましい態様においては、プロ−アドレノメジュリン又はそのフラグメント及び/又はプロANP又はそのフラグメントの前記レベルは、単一マーカーとして決定され、そして使用される。
【0044】
本発明の好ましい態様においては、一次慢性腎臓疾患の進行の予測は、少なくとも1つの実験パラメーター、又はクレアチニン、GFR(“糸球体濾過率”;GFRは例えば、イオヘキソール−クリアランスを測定することにより決定される(Bostom et al., J Am Soc Nephrol 2002; 13: 2140-2144))、タンパク尿、アルブミン、CRP、シスタチンC、GDF15、ST2、NGAL、プロカルシトニン及びそのフラグメント、BNP又はそのフラグメント又はその前駆体又はそのフラグメント、プロ−バソプレッシン及びそのフラグメント、例えばコペプチン、バソプレシン及びニユーロフィシンII、プロ−エンドセリン−1及びそのフラグメント、例えばCT−プロET−1、NT−プロET−1、大−エンドセリン−1及びエンドセリン−1を含んで成る群から選択された追加のマーカーをさらに決定し、そして用いることにより改良される。
【0045】
用語“さらに決定する”とは、そのような決定が技術的に組み合わされていることを包含しないが、とはいえ排除するものでもない。用語“さらに使用する”とは、一次慢性腎臓疾患の進行の予測をもたらすいずれかの種類のパラメーター(実験及び/又は臨床パラメーター)の数学的組合せとして定義される。そのような数学的組合せの1つの例は、Cox Proportional Hazards分析であり、これから、一次慢性腎臓疾患を有する対象のその疾病の進行についての危険性が誘導されるが、しかし他の方法も同様に使用され得る。
【0046】
本発明はまた、予定された値を有する個人のためのマーカーのレベルを比較することを包含する。予定された値は、種々の形を取ることができる。それは単一のカットオフ値であり得る:これは例えば、対照集団のメジアン又は平均、又は75, 90, 95又は99%であり得る。これは例えば、また“最適”なカットオフ値であり得る。所定のマーカーのための最適なカットオフ値は、診断感受性及び特異性の生成物がこのマーカーのために最大である値である。
【0047】
診断感受性は、マーカーにより正しく認識される(“真の陽性”)、疾病又はその疾病を進行するための危険性(いずれかの特定の場合、答えられるべき診断又は予後問題に依存する)を担持する患者の相対的割合であり、そして診断特異性は、マーカーにより認識される(“真の陰性”)、疾病又はその疾病を進行するための危険性(いずれかの特定の場合、答えられるべき診断又は予後問題に依存する)を担持しない患者の相対的割合である。これは、臨床、又は経済的必要性に依存して、最大の負の予測値又は最大の正の予測値のために最適化されたカットオフ値によるものである。
【0048】
従って、“誤った陽性”の同定をまた犠牲にして、危険下での対象のほとんどを同定することがより適切であると思われるかどうか、又は適度な危険下でいくらかの対象の欠落を犠牲にして、高い危険性下での対象を主に同定することがより適切であると思われるかどうかに依存して、カットオフ値を、だれでも採用することができる。
【0049】
予定された値は比較グループに基づいて確立され得、例えばここで、1つの確立されたグループにおける危険性がもう1つの確定されたグループにおける危険性の二倍である。それは、一定の範囲であり得、ここで試験される集団は、グループ、例えば低危険性グループ、中位の危険性グループ、及び高い危険性グループ、又は四分位(すなわち最低の四分位は最低の危険性を有する個人であり、そして最高の四分位は最高の危険性を有する個人である)に平等に(又は不平等に)分割される。
【0050】
予定された値は、選択される特定の参照集団間で、それらの習慣、民族性、遺伝性、等に依存して、変化することができる。従って、選択された予定される値は、個人が陥るカテゴリを考慮することができる。適切な範囲及びカテゴリーは、通常の実験以下で、当業者により選択され得る。
【0051】
上記に論じられるような種々の閾値レベルの有用性は、Kaplan-Meierプロットにより可視化され得(図11−14)、ここで現象、すなわち、本発明の場合、腎臓疾患進行の時間にわたっての発生が調査される患者集団のサブグループについて示されている:ここで、4つのKaplan-Meier分析に関しては、調査される患者集団はそれぞれ2種のサブグループに分けられた。
【0052】
前記サブグループは次の通りに定義された:
a)メジアンレベル(106pモル/l)以上のMR−プロANP値を有する1つのグループ、及びメジアンレベル以下のMR−プロANP値を有するもう1つのグループに分離される、調査される患者集団(図11)、
b)メジアンレベル(0.75nモル/l)以上のMR−プロADM値を有する1つのグループ、及びメジアンレベル以下のMR−プロADM値を有するもう1つのグループに分離される、調査される患者集団(図12)、
c)最適な閾値−レベル(0.865nモル/l(0.766の感受性及び0.809の特異性))以上のMR−プロADMを有する1つのグループ、及び最適な閾値−レベル以下のMR−プロADM値を有するもう1つのグループに分離される、調査される患者集団(図13)、
d)最適な閾値−レベル(84.15pモル/l(0.891の感受性及び0.582の特異性))以上のMR−プロANPを有する1つのグループ、及び最適な閾値−レベル以下のMR−プロANP値を有するもう1つのグループに分離される、調査される患者集団(図14)。
【0053】
本発明においては同定される最適閾値レベルは、調査される特定集団に基づかれ、そしてそれは、上記理由のために、他の比較できる集団において異なる(+/−20%)。
本発明においては、用語“閾値”、“カットオフ”及び“カットオフ値”は、同意味で使用される。
それらの結果はさらに、一次慢性腎臓疾患(CKD)の進行の予測のためにMR−プロANP及びMR−プロADMの両者の使用を示すCox回帰分析(表4)により支持される。
【0054】
個人のMR−プロADM及び/又はMR−プロANP値及び他の予後実験及び臨床パラメーターを用いることにより個人の危険性を計算する他の数学的可能性は例えば、NRI(ネット再分類指数)又はIDI(統合された識別指数)である。それらの指数は、Pencina (Pencina MJ, et al.: Evaluating the added predictive ability of a new marker: from area under the ROC curve to reclassification and beyond. Stat Med. 2008;27: 157-172)に従って計算され得る。
【0055】
ある態様においては、パネルにおける1又は複数のマーカーについての特定の閾値は、対象から得られるマーカーレベルのプロフィールが特定の診断/予後を示すかどうかを決定することに依存しない。むしろ、本発明は、単位完全体としてマーカーパネル“プロフィール”の評価を利用することができる。そのようなマーカーパネルにおける変化の特定“フィンガープリント”パターンは結果的に、特定の診断又は予後インジケーターとして作用することができる。本明細書において論じられる場合、変化のパターンは、単一のサンプルから、又は1又は複数のパネルメンバー(又はパネル応答値)における一時的変化から得られる。本明細書におけるパネルは、マーカー組を言及する。
【0056】
パネル応答値は、種々の方法により誘導され得る。1つの例は、Cox Proportional Hazards分析である。もう1つの例は、ROC値の最適化である:これは、種々のカットオフでのパネルについての1−(特異性)に対する特定パネルのマーカーの感受性についてのROC曲線をプロットすることにより達成され得る。
【0057】
それらの方法においては、対象からのマーカー測定のプロフィールが、診断又は予後の全体的確立(数値の評点として又は%危険性として表される)を提供するために一緒に考慮される。そのような態様においては、一定のサブセットのマーカーの上昇が、1人の患者における特定の診断/予後を示すために十分であり得るが、ところが異なったサブセットのマーカーの上昇はもう1人の患者における同じか又は異なった診断/予後を示すために十分であり得る。
【0058】
計量因子がまた、パネルにおける1又は複数のマーカーに適用され得、例えばマーカーが特定の診断/予後の同定に特別に高い利用性がある場合、それは計算され、その結果、所定のレベルで、それは単独で陽性結果をシグナル化するのに十分である。同様に、計量因子は、特定のマーカーの所定レベルが陽性結果をシグナル化するためのに十分ではないが、しかしもう1つのマーカーがまた分析に寄与する場合、結果を単にシグナル化することを提供できる。
【0059】
一定の態様においては、マーカー及び/又はマーカーパネルは、少なくとも約70%の特異性、より好ましくは少なくとも約80%の特異性、さらにより好ましくは少なくとも約85%の特異性、さらにより好ましくは少なくとも約90%の特異性、及び最も好ましくは少なくとも約95%の特異性を組合して、少なくとも約70%の感受性、より好ましくは少なくとも約80%の感受性、さらにより好ましくは少なくとも約85%の感受性、さらにより好ましくは少なくとも約90%の感受性、及び最も好ましくは少なくとも約95%の感受性を示すように選択される。特に好ましい態様においては、感受性及び特異性の両者は、少なくとも約75%、より好ましくは少なくとも約80%、さらにより好ましくは少なくとも約85%、さらにより好ましくは少なくとも約90%、及び最も好ましくは少なくとも約95%である。用語“約”とは、本明細書においては、所定の測定値の+/−5%を言及する。
【0060】
他の態様においては、正の見込み比率、負の見込み比率、不平等比率又は危険比率が、危険性を予測するか又は疾病を診断する試験の能力の測定として使用される。正の見込み比率の場合、1の値は、陽性結果が“疾病”及び“対照”グループの両者において、対象間で同等であることを示唆し;1以上の値は、陽性結果が疾病グループにおいて、より可能性があることを示唆;そして1以下の値は、陽性結果が対象グループにおいて、より可能性あることを示唆する。負の見込み比率の場合、1の値は、陰性結果が“疾病”及び“対照”グループの両者において、対象間でたぶん同等であることを示唆し;1以上の値は、陰性結果が、試験グループにおいて、より可能性あることを示唆し;そして1以下の値は、陰性結果が、対照グループにおいて、より可能性あることを示唆する。
【0061】
一定の好ましい態様においては、マーカー及び/又はマーカーパネルは好ましくは、少なくとも約1.5又はそれ以上、又は約0.67又はそれ以下、より好ましくは少なくとも約2又はそれ以上、又は約0.5又はそれ以下、さらにより好ましくは少なくとも約5又はそれ以上、又は約0.2又はそれ以下、さらにより好ましくは少なくとも約10又はそれ以上、又は約0.1又はそれ以下、及び最も好ましくは少なくとも約20又はそれ以上又は約0.05又はそれ以下の正又は負の見込みを比率を示すよう選択される。用語“約”とは、本明細書においては、所定の測定値の+/−5%を言及する。
【0062】
不平等比率の場合、1の値は、陽性結果が、“疾病”及び“対象グループの両者において、対象間でたぶん同等であることを示唆し;それ以上の値は、陽性結果が対照グループにおいて、より可能性があることを示唆する。一定の好ましい態様においては、マーカー及び/又はマーカーパネルは好ましくは、少なくとも約2又はそれ以上、又は約0.5又はそれ以下、より好ましくは少なくとも約3又はそれ以上、又は約0.33又はそれ以下、さらにより好ましくは少なくとも約4又はそれ以上、又は約0.2又はそれ以下、さらにより好ましくは少なくとも約5又はそれ以上、又は約0.2又はそれ以下、及び最も好ましくは少なくとも約10又はそれ以上又は約0.1又はそれ以下の正又は負の不平等比率を示すよう選択される。用語“約”とは、本明細書においては、所定の測定値の+/−5%を言及する。
【0063】
危険性比率の場合、1の値は、エンドポイント(例えば、死亡)の相対的危険性が、“疾病”及び“対照”グループの両者において、等しいことを示唆し;1以上の値は、危険性が疾病グループにおいて高いことを示唆し;そして1以下の値は、危険性が対照グループにおいて高いことを示唆する。一定の好ましい態様においては、マーカー及び/又はマーカーパネルは好ましくは、少なくとも約1.1又はそれ以上、又は約0.91又はそれ以下、より好ましくは少なくとも約1.25又はそれ以上、又は約0.8又はそれ以下、さらにより好ましくは少なくとも約1.5又はそれ以上、又は約0.67又はそれ以下、さらにより好ましくは少なくとも約2又はそれ以上、又は約0.5又はそれ以下、及び最も好ましくは少なくとも約2.5又はそれ以上又は約0.4又はそれ以下の正又は負の危険性比率を示すよう選択される。用語“約”とは、本明細書においては、所定の測定値の+/−5%を言及する。
【0064】
当業者は、診断と、又は未来の臨床結果の予後危険性と、診断又は予後インジケーターとの関連が統計学的分析であることを理解するであろう。例えば、X以上のマーカーレベルは、患者が、統計学的有意性のレベルにより決定される場合、X以下か又はXに等しいレベルを有する患者よりも、たぶん悪い結果を有することをシグナル化することができる。さらに、基線レベルからのマーカー濃度の変化は、患者の予後を反映し、そしてマーカーレベルの変化の程度は、悪い現象の重症度に関連する。統計学的有意性はしばしば、複数の集団を比較し、そして信頼区間及び/又はp値を決定することにより決定される。例えばDowdy and Wearden, Statistics for Research, John Wiley & Sons, New York, 1983を参照のこと。本発明の好ましい信頼区間は、90%、95%、97.5%、98%、99%、99.5%、99.9% 及び 99.99%であり、そして好ましい、値は0.1、0.05、0.025、0.02、0.01、0.005、0.001、及び0.0001である。
【0065】
さらに他の態様においては、診断又は予後マーカーの複数の決定が行われ得、そしてマーカーの一時的変化が、診断又は予後を決定するために使用され得る。例えば、対象サンプルにおけるマーカー濃度が、初期時点で決定され、そして再び、第2の時点で、第2の対象サンプルから決定される。そのような態様においては、初期時点から第2時点までのマーカーの上昇が、特定の診断又は特定の予後を表示することができる、同様に、初期時点から第2時点までのマーカーの低下は、特定の診断又は特定の予後を表示することができる。
【0066】
用語“サンプル”とは、本明細書において使用される場合、興味ある対象、例えば患者の診断、予後又は評価のために得られる体液のサンプルを言及する。好ましい試験サンプルは、血液、血清、血漿、脳脊髄液、尿、唾液、癌、及び胸膜滲出物を包含する。さらに、当業者は、いくつかの試験サンプルが、分別又は精製方法、例えば完全な血液の血清又は血漿成分への分離に続いて、より容易に分析されることを実現するであろう。
【0067】
従って、本発明の方法の好ましい態様においては、前記サンプルは、血液サンプル、血清サンプル、血漿サンプル、及び尿サンプル、又前述のサンプルのいずれかの抽出物を含んで成る群から選択される。
【0068】
用語“患者”とは、本明細書において使用される場合、医療を受けているか、又は疾病のために医療を受けるべきである、生存ヒト又は非ヒト生物を言及する。これは、病理学の徴候のために調査される、定義される疾病を有さない個人を包含する。従って、本明細書に記載される方法及びアッセイは、ヒト及び家畜の疾病に適用できる。
【0069】
用語“相互関係する”とは、診断及び予後マーカーに関して、本明細書において使用される場合、所定の病状を有することが知られているか、又はその危険性下にあることが知れている個人、又は所定の病状を有さないことが知られている個人におけるマーカーの存在又は量と、患者におけるマーカーの存在又は量とを比較することを言及する。上記で論じられるように、患者サンプルにおけるマーカーレベルが、特定の診断に関連することが知られているレベルに比較され得る。サンプルのマーカーレベルは、診断と相互関係すると言われ;すなわち、当業者は、患者が特定型の診断を有するかどうかを決定するためにマーカーレベルを用い、そして従って、応答することができる。他方では、サンプルのマーカーレベルは、良好な結果(例えば、疾病の不在、等)と関連していることが知られているマーカーレベルに比較され得る。好ましい態様においては、マーカーレベルのプロフィールが、全体的確立又は特定の結果に相互関係する。
【0070】
“予後”とは、所定の経過又は結果が生じるであろう確立の割り当てを言及する。これはしばしば、1又は複数の“予後インジケーター”を試験することにより決定される。それらはマーカーであり、患者(又は患者から得られるサンプル)におけるその存在又は量が、所定の経路又は結果が生じるであろう確立をシグナル化する。例えば、1又は複数の予後インジケーターが、そのような患者から得られるサンプルにおいて、十分に高いレベルに達する場合、そのレベルが、患者が末期腎疾患(ESRD)に結果的に進行するための高められた確率で存在し、すなわち患者が“進行体”である高められた確立を有することをシグナル化することができる。
【0071】
本発明の好ましい態様においては、MR−プロADMのレベルが測定される。MR−プロADMは、プレ−プロADMのアミノ酸45−92を含んで成る。
本発明のもう1つの好ましい態様においては、プロADM又はそのフラグメントのレベルは、プレ−プロADMのアミノ酸位置45−92に位置する1又は複数のエピトープに対して方向づけられた1又は複数の捕獲プローブを用いての診断アッセイにより測定される。
【0072】
本発明のもう1つの好ましい態様においては、MR−プロANPのレベルが測定される。MR−プロANPは、プロANPのアミノ酸53−90を含んで成るプロANPのいずれかのフラグメントを意味する。
【0073】
本発明のもう1つの好ましい態様においては、プロANP又はそのフラグメントのレベルは、プロANPのアミノ酸位置53−90に位置する1又は複数のエピトープに対して方向づけられた1又は複数の捕獲プローブを用いての診断アッセイにより測定される。
【0074】
本明細書において言及されるように、“アッセイ”又は“診断アッセイ”とは、診断の分野において適用されるいずれかのタイプのものであり得る。そのようなアッセイは、一定の親和性を伴って1又は複数の捕獲プローブに検出される分析物の結合にもとづいかれ得る。捕獲分子と標的分子又は興味ある分子との間の相互作用に関しては、親和性定数は好ましくは、108M-1よりも高い。
【0075】
上記マーカーのレベルは、いずれかの技術的に認識されている方法により得られる。典型的には、レベルは、体液、例えば血液、リンパ、唾液、尿及び同様のものにおけるマーカーのレベル又は活性を測定することにより決定される。そのレベルは、マーカーのレベルを決定するためのイムノアッセイ又は他の従来の技法により決定され得る。認識される方法は、測定のための商業的実験室に、患者の体液のサンプルを送付し、また、治療の点で測定実施することを包含する。
【0076】
本発明においては、“捕獲分子”は、サンプルからの標的分子又は興味ある分子、すなわち分析物を結合するために使用され得る分子である。従って、捕獲分子は、空間的に及び表面特徴、例えば表面荷電、疎水性、親水性、ルイスドナー及び/又は受容体の存在又は不在に関して、標的分子又は興味ある分子を特異的に結合するために、適切に形状化されるべきである。それにより、結合は例えば、イオン、ファン・デル・ワールス、シグマ−パイ、疎水性又は水素結合相互作用、又は捕獲分子と標的分子又は興味ある分子との間の複数の前述の相互作用の組合せにより介在され得る。
【0077】
本発明においては、捕獲分子は例えば、核酸分子、炭水化物分子、PNA分子、タンパク質、抗体、ペプチド又は糖タンパク質を含んで成る群から選択され得る。好ましくは、捕獲分子は、抗体、例えば標的分子又は興味ある分子への十分な親和性を有するそのフラグメント、及び組換え抗体又は組換え抗体フラグメント、並びに前記抗体の化学的及び/又は生化学的に修飾された誘導体、又は少なとも12個の長さのアミノ酸を有する変異体鎖に由来するそのフラグメントである。
好ましい検出方法は、種々の形でのイムノアッセイ、例えばラジオイムノアッセイ、化学発光−及び蛍光−イムノアッセイ、酵素結合されたイムノアッセイ(ELISA)、ルミネックスに基づくビーズアレイ、タンパク質マイクロアレイアッセイ、及び急速試験形、例えば免疫クロマトグラフィーストリップ試験を包含する。
【0078】
アッセイは、相同又は異種アッセイ、競争及び非競争サンドイッチアッセイであり得る。特に好ましい態様においては、アッセイは、非競争性イムノアッセイである、サンドイッチアッセイの形で存在し、ここで検出され、そして/又は定量化されるべき分子が第1抗体及び第2抗体に結合される。第1抗体は、固相、例えばビーズ、ウェル又は他の容器の表面、チップ又はストリップに結合され、そして第2抗体は、例えば色素、放射性同位体、又は反応性又は触媒的活性成分によりラベルされる抗体である。次に、分析物に結合される、ラベルされた抗体の量が、適切な方法により測定される。“サンドイッチアッセイ”により包含される一般的組成物及び方法は、十分に確立され、そして当業者に知られている。
【0079】
引用により本明細書に組込まれる、The Immunoassay Handbook, Ed. David Wild, Elsevier LTD, Oxford; 3rd ed. (May 2005), ISBN-13: 978-0080445267; Hultschig C et al., Curr Opin Chem Biol. 2006 Feb;10(l):4-10. PMID: 16376134を参照のこと。
特に好ましい態様においては、アッセイは2種の捕獲分子、好ましくは液体反応混合物において分散体として両者とも存在する抗体を含んで成り、ここで第1のマーキング成分が第1の捕獲分子に結合され、ここで前記第1のマーキング成分は、蛍光−又は化学発光−消光又は増幅に基づかれるマーキングシステムの一部であり、そして前記マーキングシステムの第2マーキング成分は、第2の捕獲成分に結合され、その結果、分析物への両捕獲分子の結合に基づいて、サンプルを含んで成る溶液における形成されるサンドイッチ複合体の検出を可能にする測定できるシグナルが生成される。
【0080】
さらにより好ましくは、前記マーキングシステムは、蛍光色素又は化学発光色素、特にシニアタイプの色素と組合して、希土類クリプタート又は希土類キレートを含んで成る。
【0081】
本発明においては、蛍光に基づくアッセイは、FAM (5-又は6- カルボキシフルオレセイン)、 VIC、 NED、 フルオレセイン、 フルオレセインイソチオシアネート (FITC)、 IRD- 700/800、 シアニン色素、 例えば CY3、 CY5、 CY3.5、 CY5.5、 Cy7、 キサンテン、 6-カルボキシ- 2'、4'、7'、4、7-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、 TET、 6-カルボキシ-4'、5'-ジクロロ-2'、7'-ジメトキシフルオレセイン (JOE)、 N、N、N'、N'-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、 6- カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、 5-カルボキシローダミン-6G (R6G5)、 6-カルボキシローダミン-6G(RG6)、 ローダミン、ローダミングリーン、 ローダミンレッド、 ローダミン110、 BODIPY 色素、 例えばBODIPY TMR、 オレンジグリーン、 クマリン 、例えばウンベリフェロン、 ベンズイミド、 例えばHoechst 33258; フェナントリジン、 例えばテキサスレッド、ヤキマイエロウ、 Alexa Fluor、 PET、 臭化エチジウム、 アクリジニウム色素、 カルバゾール色素、 フェノキサジン色素、 ポルフィリン色素、 ポリメチン色素、及び同様のものを含んで成る群から選択され得る色素の使用を包含する。
【0082】
本発明においては、化学発光に基づくアッセイは、第551−562ページの引用を包含する、引用により本明細書に組込まれる、Kirk- Othmer, Encyclopedia of chemical technology, 4th ed., executive editor, J. I. Kroschwitz; editor, M. Howe-Grant, John Wiley & Sons, 1993, vol.15, p. 518-562に化学発光材料について記載される物理学的原理に基づいて、色素の使用を包含する。好ましい化学発光色素は、アクリジニウムエステルである。
【0083】
特に好ましい態様においては、対象における最初の悪い現象を予測するか、又は最初の悪い現象を得るための増強された危険性を有する対象を同定するために、正常な範囲で0.3nモル/l以下の検出限界及び<30%CVのアッセイ間精度を有するMR−プロADMアッセイが使用される。
【0084】
本発明のもう1つの態様は、対象における最初の悪い現象を予測するか、又は最初の悪い現象を得るための増強された危険性を有する対象を同定するためへの、捕獲プローブ、例えばプロADM又はそのフラグメントに対して向けられる抗体の使用である。
プレ−プロADMのアミノ酸位置45−92に包含されるエピトープ、及び/又はプロANPのアミノ酸位置53−90に包含されるエピトープに対して向けられる1又は複数の抗体の使用は、特に本発明において好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】図1は、アドレノメジュリン(ADM)前駆体ペプチド(プレ−プロ−ADM)のアミノ酸配列を示す。アミノ酸1−21がシグナルペプチドを形成する。アミノ酸22−41がプロ−ADM N−20末端ペプチド(プロADM N20)を形成する。アミノ酸45−92がMR−プロADMペプチドを形成する。成熟ADMはアミノ酸95−146を含んで成る。アミノ酸148−185はプロADM C−末端フラグメントを形成する。
【0086】
【図2】図2は、プロ−アドレノメジュリンペプチド(プロADM)のアミノ酸配列を示す。
【図3】図3は、プロ−アドレノメジュリンN−末端20ペプチド(プロADM N20;PAMP)のアミノ酸配列を示す。PAMPペプチドは、アミド化されたC−末端を有する。
【図4】図4は、MRプロ−アドレノメジュリン(MR−プロADM)のアミノ酸配列を示す。
【0087】
【図5】図5は、成熟アドレノメジュリンペプチド(ADM)のアミノ酸配列を示す。ADMペプチドは、アミド化されたC−末端を有し、そして/又はグリコシル化され得る。
【図6】図6は、動脈ナトリウム利尿性ペプチド(ANP)前駆体(プレ−プロ−ANP)のアミノ酸配列を示す。アミノ酸1−25は、シグナルペプチドを形成する。
【図7】図7は、プロANPのアミノ酸配列を示す。
【0088】
【図8】図8は、成熟ANPのアミノ酸配列を示す。
【図9】図9は、NT−プロANPのアミノ酸配列を示す。
【図10】図10は、プロANPのアミノ酸53−90のアミノ酸配列を示す。
【図11】図11は、基線でのMR−プロANPのメジアン(106pモル/l)に従って2つのグループに分類された、CKDを有する患者における腎疾患進行を示すKaplan-Meierプロットを示す。
【0089】
【図12】図12は、基線でのMR−プロADMのメジアン(0.75nモル/l)に従って2つのグループに分類された、CKDを有する患者における腎疾患進行を示すKaplan-Meierプロットを示す。
【図13】図13は、MR−プロADMについて最適なカットオフ:感受性=0.766、特異性=0.809、ロッグランク:p=<0.001を伴ってのKaplan-Meier曲線を示す。
【図14】図14は、MR−プロANPについて最適なカットオフ:感受性=0.891、特異性=0.582、ロッグランク:p=<0.001を伴ってのKaplan-Meier曲線を示す。
【実施例】
【0090】
例1:軽い〜中位の腎臓疾患(MMKD)研究
本発明の研究の目的は、一次CKDを有する患者集団における見込みのある7年の追跡研究における腎臓疾患進行について、より安定したプロホルモンフラグメント(MR−プロANP及びMR−プロADM)の中央領域エピトープを保護する新規サンドイッチイムノアッセイを用いて、ANP及びADMの予測値を調べることであった。
【0091】
結果
表1は、慢性腎臓疾患についてのK/DOQI臨床学的実施ガイドラインに従って、段階的に分けられた基線GFRであるNT-プロBNP、MR-プロANP及びMR-プロADM血漿濃度を示す。CKD段階を通してのメジアンNT-プロBNP、MR-プロANP及びMR-プロADM血漿濃度の連続した上昇が存在した。さらに、非パラメトリック相関分析は、GFRとすべての3種パラメーターとの間の有意な関係を示した(表2)。
【0092】
追跡は、227人の登録された患者のうち177人に利用できた。基線調査の完結の後、追跡のメジアン期間は、53ヶ月(3〜84ヶ月の範囲)であった。追跡の間、65人の患者は、血清クレアチニンが二倍化したエンドポイントに進行し、但し36人の患者においてはESRDに達成せず、そして29人の患者において腎臓置換療法を必要とするESRDに達しなかった。表3は、進行体及び非進行体についての基線CKD患者の特徴を報告する。進行性エンドポイントに達した患者は、高いタンパク質排泄速度及び低いGFRを有した老人であった。さらに、NT-プロBNP、MR-プロANP及びMR-プロADMのメジアン血漿濃度は、非進行体においてよりも、進行体において高かった(NT−プロBNP、321対84ng/l;MR−プロANP、164対74pモル/l:及びMR−プロADM、1.13対0.55nモル/l)。
【0093】
基線でのMR−プロAMP及びMR−プロADMのメジアンに従って、2種のグループに分けられたCKDを有する177人の患者のKaplan-Meier曲線分析を、図11〜12により示す。メジアン以下のGFR値、及びメジアン以上のMR−プロANP及びMR−プロADM血漿濃度を有した患者は、メジアン以上のGFR値及びメジアン以下のMR−プロANP及びMR−プロADM血漿濃度を有する患者に比較して、より悪い腎臓予後及び有意に短い進行時間を有した[数ヶ月での進行の平均時間は、それぞれMR-プロANP について51.1 (95%CI 45.2-57.1) 対 71.4 (95%CI 64.7-78.1), p<O.OOl; 及びMR-プロADMについて 51.6 (95%CI 45.6-57.6) 対73.6 (95%CI 68.5-78.6), p<O.OOlであった]。
【0094】
メジアン値に従っての予測体変数を分類するアプローチを用いての一変量Cox Proportional−Hazard回帰分析は、次のように、基線でのメジアン以上のGFRについて、有意に低められた危険性比率(HR)(HR 0.12; 95%CI 0.06-0.24; p<O.OOl)及び基線でのメジアン以上の濃度について、有意に高められたHRを示した:NT-プロBNP (HR 3.84; 95%CI 2.14-6.89; p<O.OOl), MR-プロANP (HR 4.47; 95%CI 2.46-8.12; p<O.OOl), 及びMR-プロADM (HR 5.84; 95%CI 3.04-11.21; p<O.OOl)。
【0095】
予測体変数についての増加アプローチを用いてのCox Proportional-Hazards回帰分析の結が表4に与えられている。年齢−及び性別−調節されたモデル1においては、GFR、タンパク質尿症、NT-プロBNP、MR-プロANP及び MR-プロADMは、腎臓疾患進行について有意なHRを示した。GRF及びタンパク尿症についてのさらなる調節の後、わずかに減衰するが、しかし両変数は存続している、MR−プロANP及びMR−プロADMについてのHRは疾病進行に強く関連し、ところがNT−プロBNPについてのHRはもはや有意ではなかった(モデル2)。
【0096】
NT−プロBNPについての追加の調節の後でさえ、MR−プロANP及びMR−プロADMの両者はそれぞれ、腎臓疾患進行の強い予測体のままであった(モデル3)。調査された変数のいくつかは非通常的に分配されているので、我々は、モデル中に1n−転換された変数を包含することにより感受性分析を実施した。それらの分析は非常に類似する結果を示したが(データは示されていない)、但し年齢、性別、GFR及びタンパク尿症についての調節の後、有意性のままであるNT−プロBNPを除く(HR 1.59; 95%CI 1.15-2.19; p=0.005)。しかしながら、評価の良好な解釈のために、われわれはオリジナル規模でデータを提供する。
【0097】
さらに我々は、MR−プロANP及びMR−プロADMの両者が、同じCox回帰モデルに両変数を含み、そして年齢、性別、GFR及びタンパク尿症を調節することにより、CKD進行の予測に、それぞれ加わるかどうかを調査した。両変数の危険性比率は低下したが(表4のモデル2における評価に比較して)、しかしまだ有意性のままであった(MR-プロANP についてHR 1.60; 95%CI 1.11-2.30, p=0.011、及びMR-プロADM についてHR 1.96; 95%CI 1.31-2.94, p<O.OOl)。
【0098】
第2分析において、我々は、慢性腎臓疾患についてのK/DOQI臨床実施ガイドラインに従って段階3及びそれ以上でわずかな患者を包含した(GFR<60ml/分/1.73m2)。我々は、完全なグループについて表4のモデル2及び3について提供されるのに非常に類似する評価を観察した(データは示されていない)。
【0099】
議論
本発明の研究は、一次CKDを有する白人患者における腎疾患進行についてのMR−プロANP及びMR−プロADMの予後値を調べる最初の見込みある長期観察である。我々のデータは基線での高められたMR−プロANP及びMR−プロADM血漿濃度が、GFRとは異なっている腎臓エンドポイントの強い予測体であることを示す。
【0100】
K/DOQI推薦及び多くの実験室によるGFRの通常報告される評価の採用を通して、実質的な好結果が、診断されていないCKDについてのスクリーニングで達成された(National Kidney Foundation. Am J Kidney Dis 2002; 39 (2 Suppl 1): S 1-266; Centers for Disease Control and Prevention (CDC), Morb Mortal Wkly Rep 2007; 56: 161-165)。しかしながら、さらなる危険性の分類、及びESRDにたぶん進行するCKDを有するそれらの患者への介在を標的化するための追加の危険性予測体の同定についての緊急の必要性が存在する。
【0101】
我々の研究の重要な発見は、MR−プロANP及びMR−プロADMが、腎臓機能測定のゴールドスタンダードに接近することが報告されている、イオヘキソールにより測定されるGFRと強く相互関係する事実であった(Bostom et al., J Am Soc Nephrol 2002; 13: 2140-2144)。我々は、疾病重症度への関連性を示唆する、GFR段階を通してのMR−プロANP及びMR−プロADM血漿濃度の連続した上昇を観察した。
【0102】
GFRとのこの強い相関性は、ANP及びADMが腎臓において生成され(Vesely et al., Am J Physiol Renal Physiol 2003; 285: 167-177)、そして両者が腎臓内での重要な生物学的機能を有する(Vesely et al,. Cardiovasc Res 2001; 51 : 647-658; Nishikimi et al., Curr Med Chem 2007; 14: 1689-1699)出来事に起因することができる。さらに、両ペプチドについての腎保護性が報告されており、このことは、CKDにおけるANP及びADMの高められた濃度の補充的役割を示唆する(Vesely et al., Cardiovasc Res 2001; 51 : 647-658; Vesely et al., Am J Physiol Renal Physiol 2003; 285: 167-177; Nishikimi et al., Curr Med Chem 2007; 14: 1689-1699)。
【0103】
評価される設定において、MR−プロANP及びMR−プロADMの予後値は、GFRの予後値に比較でき、すなわち確立された予後であるが、しかし腎臓疾患進行においてマーカーを決定するためには困難であった。年齢−及び性別−調節されたCox-Proportional Hazard回帰モデルにおいては、GFR、MR−プロANP及びMR−プロADMの挙動性は類似した。しかしながら、GFRの他に、MR−プロANP及びMR−プロADMが、疾病進行の予測に有意に付加されることを注目することは重要である。1標準偏差による両パラメーターの個々の上昇が、基線GFRについての調節の後でさえ、疾病進行の2倍以上の危険性に関連した。我々がモデルに同時に両パラメーターを付加する場合でさえ、両パラメーターの危険性予測への有意で且つ独立した寄与をもたらした。
【0104】
NT−プロBNPの予後能力は、GFR、MR−プロANP又はMR−プロADMに比較して低かった。
我々の研究におけるGFRは、公式によっては計算されなかったが、しかし腎機能を測定するための正確な方法として考慮されるイオヘキソールのクリアランスにより測定されたことを注目することが重要である。しかしながら、この方法は、労力を要し、そして比較溶媒の適用及びいくつかの血液サンプルの収集のために、患者にとって重荷である。MR−プロANP又はMR−プロADMの測定は、腎機能の良好な概算、及びGFRと同等に実施する、腎層疾患の進行についての十分な実施予測体を提供する、代用の且つ単純な方法である。
【0105】
要約すると、我々の研究は、基線での高められたMR−プロANP及びMR−プロADM血漿濃度が腎臓疾患の進行の強力な予測体であることを示す。従って、両マーカーは、一次CKDを有する患者において予測体として臨床学的に有用である。
【0106】
簡明な方法
研究サンプル
基線で、CKD及び種々の程度の腎不全を有する、18〜65歳の227人の白人患者を、軽い〜中位の腎臓疾患(MMKD)研究に登録した。それらの患者は、Kronenberg et al. (J Am Soc Nephrol 2000; 11 : 105-115)に記載されるように、8の腎臓病部門から募集された。この研究はInstitutional Ethic Committeesに許容され、そしてすべての対象は書面のインフォームドコンセントを与えた。彼らは、研究に入る前、少なくとも3ヶ月間、安定した腎機能を有した。
【0107】
排除基準は、免疫抑制剤、魚油又はエリトロポエチンによる処理、6mg/dl以上の血清クレアチニン、いずれかのタイプの真性糖尿病、悪性腫瘍、肝臓、甲状腺又は感染疾患、ネフローゼ症候群(3.5g/1.73m2/日以上のタンパク尿症として定義される)、器官移植、イオン性対比媒体に対するアレルギー、及び妊娠であった。観察者間差異を回避するために、すべての患者は、すべての参加センターを訪問する一人の医者によって募集された。患者の経歴、例えば喫煙習慣及び基線での血圧降下処理を、インタビューにより記録し、そして患者の記録を調べることにより確かめた。
【0108】
これは、臨床試験、例えば肥満度指数及び血圧の評価により完結した。高血圧は、140/90mmHg以上の血圧、及び/又は血圧降下治療の使用により定義された。血圧降下治療は、GFRの測定による干渉を最少にするために、研究登録の日、保留された。血圧降下薬剤は、179人の患者(79%)により摂取された:利尿薬(n=83;37%)、ACE−インヒビター(n=123;54%)、カルシウムチャネル遮断薬(n=78;34%)、β受容体遮断薬(n=67;30%)及びα−1受容体遮断薬(n=36;16%)。
【0109】
腎臓疾患の主要原因は、97人(90人において生検−確認された)の患者においては糸球体腎炎、37人の患者においては成人性腎嚢胞、24人の患者においては間質性腎炎、43人の患者においては他のタイプの腎臓疾患、及び26人の患者においては未知であった。慢性腎臓疾患分類のためのK/DOQI臨床実施ガイドラインに従ってのCKDの段階にわたっての患者の分布が表1に提供される。
【0110】
追跡調査のエンドポイントは、基線血清クレアチニンの二倍化及び/又は腎臓置換療法を必要とするESRDとして定義された。227人の患者の一次集団のうち、177人の患者(78%)は、84ヶ月までの間、先を見越して追跡された(Boes et al. J Am Soc Nephrol 2006; 17: 528-536)。患者は、外来患者病棟において規則的制御下にあり、そしてエンドポイントは研究調整センターに報告された。追跡の間、失敗した患者は家庭に帰されるか、又は基線調査の後、研究センターに照会された。追跡を受けた患者に比較して、それらの患者は、基線で有意に良好な腎機能を有したが、しかし性別及び年齢において有意に異ならなかった。
【0111】
生化学的分析
血液サンプルを、少なくとも12時間の一晩の断食の後、採取した。サンプルはすぐに、1.500g及び4℃で10分間、遠心分離され、そして上清液は、さらなる使用まで、-80℃でアリコートで貯蔵された。GFRを、Bostom et al. (J Am Soc Nephrol 2002; 13: 2140-2144)に詳細に記載されるように、イオヘキソールクリアランス技法を用いて、患者において評価した。血清クレアチニン、タンパク利尿症、血清アルブミン及び高感受性C−反応性タンパク質を包含する通常の生化学分析を、Kronenberg et al. (J Am Soc Nephrol 2000; 11 : 105-115)に記載されるようにして実施した。
【0112】
血漿NT−プロBNPを、Modular Analytics El70 System (Roche Diagnostics, Mannheim, Germany)上で測定した(Spanaus et al., Clin Chem 2007; 53: 1264-1272)。MR−プロANP及びMR−プロADM血漿濃度を、市販のイムノルミノメトリックアッセイ(B.R.A.H.M.S. AG, Hennigsdorf Germany)により測定した。それらの2種の方法の精度は評価されており、そしてこれまでに記載されている(Morgenthaler et al., Clin Chem 2004; 50: 234-236; Morgenthaler et al., Clin Chem 2005; 51 : 1823-1829)。
【0113】
統計学的分析
統計学的分析を、SPSSバージョン13.0ソフトウェア(SPSS Inc., Chicago, Illinois, USA)及びMedCalc 9.4.2.0 パッケージ (MedCalc Software, Mariakerke, Belgium)を用いて実施した。種々のグループ間の連続変数の一変量比較を、ワンウェイANOVA、非対t検定又はノンパラメトリックKruskal-wallis、又は非通常的に分配された変数の場合、Wilcoxonランク合計試験を用いて実施した。二分変数を、Pearson's χ2-検定−試験を用いて比較した。データは、平均±標準偏差(SD)として、及び適切な場合、斜めにされた変数についての25番目の%と75番目の%とのメジアンとして提供される。ランク相関(rS)のSpearman係数を、4種の主要研究パラメーター(すなわち、GFR、NT-プロBNP、MR-プロANP及びMR-プロADM)間の関係を評価するために使用した。
【0114】
基線から腎エンドポインまでの時間の分布のKaplan-Meier評価を、全研究集団のメジアン値以上及び以下のGFR、NT-プロBNP、MR-プロANP及びMR-プロADMを有する患者について生成し;logrank試験を、グループの間の生存曲線を比較するために計算した。一変量Cox Proportional-Hazards回帰分析を、全集団のメジアン濃度に従って二分されたすべての4種のパラメーターにより、実施した。さらに、進行エンドポイントについての調節された危険性評価を、それぞれのデータの1標準偏差(SD)の個々のインクリメントについてのインクメンタルアプローチを用いて計算した。すべての確率は、両側検定され、そしてP値<0.05が有意性と見なされた。
【0115】
【表1】

【0116】
略語:GFR、糸球体濾過比率;MR−プロADM、中央領域プロ−アドレノメジュリン;MR−プロANP、中央領域プロ−A−タイプナトリウム利尿性ペプチド;NT−プロBNP、アミノ末端プロB−タイプナトリウム利尿性ペプチド。
*:P−値は、適切な場合、Kruskal−Wallis試験、ワンウェイANOVA及びカイニ乗検定から得られたすべての4グループの比較のためである。
データは、平均±SDとして、及び適切な場合、斜めにされた変数について25番目、50番目(=メジアン)、75番目の%として提供される。
†:NT-プロBNP、MR-プロANP及びMR-プロADMの血漿レベルは、それぞれ、227人の患者の222、221及び220人において入手できた。
【0117】
【表2】

【0118】
【表3】

【0119】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次慢性腎臓疾患の進行の予測又は慢性腎臓疾患治療のモニターリング方法であって、次の段階:
a. 一次慢性腎臓疾患を有する患者からのサンプルを供給し、
b. ANP及び/又はADM又はそのフラグメント、又はその前駆体又はそのフラグメントのレベルを決定し、
c. ANP及び/又はADM又はそのフラグメント、又はその前駆体又はそのフラグメントのレベルと、一次慢性腎臓疾患の進行の予測とを関連づけることを含んで成る方法。
【請求項2】
前記患者が、進行体又は非進行体として分類される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ANP又はそのフラグメント、又はその前駆体又はそのフラグメントのレベルが、単一マーカーとして決定され、そして使用される、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
ANP又はそのフラグメント、又はその前駆体又はそのフラグメントが、NT−プロANP、 MR−プロANP及び成熟ANPを含んで成る群から選択される、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記ADM又はそのフラグメント、又はその前駆体又はそのフラグメントのレベルが、単一マーカーとして決定され、そして使用される、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
ADM又はそのフラグメント、又はその前駆体又はそのフラグメントが、成熟ADM、 MR-プロADM、PAMP 及びCT-プロADMを含んで成る群から選択される、請求項1、2又は5記載の方法。
【請求項7】
一次慢性腎臓疾患の進行の予測が、少なくとも1つの実験パラメーター、又はクレアチニン、GFR、タンパク尿、アルブミン、CRP、シスタチンC、GDF15、ST2、NGAL、プロカルシトニン及びそのフラグメント、BNP又はそのフラグメント又はその前駆体又はそのフラグメント、プロ−バソプレッシン及びそのフラグメント、例えばコペプチン、バソプレシン及びニューロフィシンII、プロ−エンドセリン−1及びそのフラグメント、例えばCT−プロET−1、NT−プロET−1、大−エンドセリン−1及びエンドセリン−1を含んで成る群から選択された追加のマーカーをさらに決定し、そして用いることにより改良される、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
さらに、年齢、性別、収縮期血圧、拡張期血圧、抗高血圧処置、肥満指数、現在の喫煙習慣を含んで成る群から選択された、少なくとも1つの臨床学的パラメーターが決定される、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
ANP及び/又はADM又はその前駆体又はそのフラグメントのレベルが、単独で、又は他の予後的に有用な実験又は臨床学的パラメーターと共に、一次慢性腎臓疾患の進行の予測のために、次の変法:
−一次慢性腎臓疾患の集団における予備決定された全サンプルにおける、ANP及び/又はADM又はそのフラグメント又はその前駆体又はそのフラグメントのレベルのメジアンの比較、
−一次慢性腎臓疾患の集団における予備決定された全サンプルにおける、ANP及び/又はADM又はそのフラグメント又はその前駆体又はそのフラグメントのレベルの変位点の比較、
−Cox Proportional Hazards分析に基づいての、又は危険指数計算、例えばNRI(ネット再分類指数)又はIDI(統合識別指数)の使用による計算の比較から選択され得る方法により使用される、請求項1〜9のいずれか1項記載の一次慢性腎臓疾患の進行の予測及び慢性腎臓疾患治療のモニターリング方法。
【請求項10】
MR−プロADMのレベルが、プレ−プロADMのアミノ酸位置45−92に位置する1又は複数のエピトープに対して向けられる1又は複数の捕獲プローブを含んで成る診断活性を用いて測定される、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
一次慢性腎臓疾患を有する患者における腎エンドポイントの予測のためへのANP及び/又はADM又はそのフラグメント又はその前駆体又はそのフラグメントの使用。
【請求項12】
一次慢性腎臓疾患の進行の予測のためへのANP及び/又はADM又はそのフラグメント又はその前駆体又はそのフラグメントの使用。
【請求項13】
一次慢性腎臓疾患を有する患者の進行体又は非進行体への分類のためへのANP及び/又はADM又はそのフラグメント又はその前駆体又はそのフラグメントの使用。
【請求項14】
腎臓機能をモニターリングするためへの請求項1〜11のいずれか1項記載の方法の使用。
【請求項15】
一次慢性腎臓疾患の進行の予測のためへのANP及び/又はADM又はそのフラグメント又はその前駆体又はそのフラグメントに対して向けられた捕獲プローブの使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2012−506546(P2012−506546A)
【公表日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532546(P2011−532546)
【出願日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007739
【国際公開番号】WO2010/046137
【国際公開日】平成22年4月29日(2010.4.29)
【出願人】(508093584)ベー.エル.アー.ハー.エム.エス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (27)
【Fターム(参考)】