説明

一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤

【課題】作業環境や対VOC並びに初期粘着力の発現性、貼付け可能時間などの塗布作業性などに優れる一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤を提供すること。
【解決手段】平均2個以上のイソシアネート基を有するプレポリマーと平均イソシアネート基数が2未満のプレポリマーと3級アミン系触媒と多価アルコールのエーテル、エステルまたはエーテル・エステルである有機溶剤を含有する一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全・低臭気で塗布作業性に優れ、初期粘着力の発現性が速く、且つ貼付け可能時間の長い一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤に関し、特に、初期粘着力発現性を必要とする長尺塩ビやタイル等に代表されるプラスチック床材の現場施工用に最適な一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長尺塩ビシートやタイルに代表されるプラスチック床材を下地に直貼り施工する際に使用する接着剤として、酢酸エチルやジメチルカーボネートなどの揮発性の高い有機溶剤を含有する一液湿気硬化型ウレタン系接着剤が提案されている。例えば特許文献1や特許文献2に記載されている高重合度、高粘度のウレタンプレポリマーを揮発性の高い有機溶剤に溶解せしめ、接着剤を下地に塗布後、溶剤の揮発に伴い樹脂の粘度を上げる事により、短時間でシートやタイルの反りからなる反発力を押さえ込むに充分な初期粘着力を出す技術が知られている。
【0003】
しかしながら、揮発性の高い有機溶剤は、その高い揮発性による臭気及び毒性等など環境に対する懸念が問題視されている。また、溶解性の高い溶剤は、概ね引火点が低く、これらの溶剤を含んだ接着剤組成物は、消防法第四類第一或いは第二石油類に分類され、その輸送、保管、貯蔵、取扱いには厳しい法規制が伴うといった問題が生じていた。
【0004】
これらの問題点を解決する為には、脱溶剤化或いは、臭気が弱く揮発性の低い高沸点溶剤を代替として用いると同時に、接着剤組成物の主たる原料であるウレタンプレポリマー自体の粘度を大幅に下げる必要があった。すなわち粘度を下げる為には、ウレタンプレポリマーの重合率を抑え、少なくとも常温で液状となるレベルまで分子量を低く設計する必要があった。しかしながら、これらの手法は、従来の様な溶剤の揮発に伴う、物理的乾燥による初期粘着性の発現効果は得られず、初期粘着力を必要とする用途には不向きであった。
【0005】
これらの難題を解決する為に様々な提案がされている、例えば特許文献3には、メチレン架橋ポリフェニルポリイソシアネートをアミンベースのPPGで変性し反応性を上げる手法が開示されている。この技術は、ウレタンプレポリマーに触媒を添加する方法よりも貯蔵安定性を維持したまま反応性を上げる事が可能であるものの、初期粘着力発現性と貼付け可能時間の施工環境依存性への対策は不十分である。
【0006】
また、特許文献4には、2,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネートを使用した一液湿気硬化型ウレタン樹脂と3級アミン系触媒とからなる組成物を使用して、初期粘着力発現性と貼付け可能時間のバランスをとる手法が開示されている。しかしながら、初期粘着力発現性を揮発性有機溶剤系接着剤なみに早めた場合、貼付け可能時間も同時に短くなり、建築現場施工用接着剤に要求される初期粘着力発現性と貼付け可能時間のバランスを得るのは困難である。
【0007】
更に、特許文献5には、初期粘着力発現性と貼付け可能時間のバランスをとる手法として、芳香族ウレタンプレポリマーと脂肪族ウレタンプレポリマーと含窒素系有機溶剤及び3級アミン系触媒を配合する技術が開示されている。この技術は、芳香族ウレタンプレポリマーと含窒素系有機溶剤と3級アミン系触媒により初期粘着力を発現させ、且つ、脂肪族ウレタンプレポリマーの遅い反応性にて建築現場施工用としての実用レベルの貼付け可能時間を得るものである。しかしながら、初期粘着力発現性を維持しながら塗布作業性を高めるには、環境汚染物質排出・移動登録(以下「PRTR」と言う)に該当するN−メチル−2−ピロリドンを必須成分とする為、施工時の臭気などにより、施工業者への安全対策は不十分である。
【0008】
【特許文献1】特開平2002−121528号公報
【特許文献2】特開平11−263962号公報
【特許文献3】特開平11−228656号公報
【特許文献4】特開平9−235540号公報
【特許文献5】特開平2003−221569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するものであり、建築施工現場の作業環境や季節要因に関係なく、安全・低臭気で塗布作業性に優れ、初期粘着力発現性に優れ、且つ塗布後の接着剤が初期粘着力を発現してから維持している時間(以下「貼付け可能時間」と言う)の長い一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂組成物を提供することにある。更には貯蔵安定性に優れた一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤をも提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決する為に鋭意検討を重ねた結果、下記の一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、
(A)有機ポリイソシアネート化合物から得られる分子中に2個以上の平均イソシアネート基数を有するプレポリマーと
(B)分子中の平均イソシアネート基数が2未満のプレポリマーと
(C)3級アミンである触媒と
(D)多価アルコールのエーテル、エステルまたはエーテル・エステルから選択された有機溶剤
を含有することを特徴とする一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤
を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の接着剤は、揮発性の高い有害な揮発性有機溶剤を使用しないので、低臭気で施工する現場作業者への体にも優しく、施工後例えば翌日においても臭気が殆どない為、住居中のマンションの補修や特にシックハウスに敏感である学校や病院等にも安心して使用できる。また加えて低粘度なので塗布作業性に優れ、初期粘着力の発現性を損ねることもなく貼付け可能時間の延長が出来る。
本発明の接着剤によれば、プラスチック床材を施工する建築現場で使用しても充分な初期粘着力と貼付け可能時間を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の詳細を説明する。
【0014】
本発明の接着剤は、プレポリマー(A)とプレポリマー(B)と触媒(C)と有機溶剤(D)を含有するものである。
【0015】
本発明でのプレポリマー(A)は、有機ポリイソシアネート化合物と多価アミンをベースとするポリオール(以下「アミンベースポリオール」と言う)を反応させて得られるプレポリマー成分を含むイソシアネート基含有プレポリマーであり、分子中にイソシアネート基を2個以上有する末端イソシアネート基のプレポリマーである。ポリオキシアルキレンポリオール(以下「ポリエーテルポリオール」と言う)やその他のポリオールまたアルコールと多価カルボン酸との反応により得られたポリエステルポリオールや短鎖のグリコールなど(例えば、アミンベースポリオール100重量部に対して1〜100重量部)がアミンベースポリオールと併用することができる。
アミンベースポリオールの量として、プレポリマー(A)に対し1〜50重量%が良い。より好ましくは5〜40重量%である。
【0016】
アミンベースポリオールは特に限定されるものではないが、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、モノエチルアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,3−ジアミノブタンなどの脂肪族アミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、トリレンジアミン、トリアミノベンゼン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、ポリメチレンポリフェニルポリアミンなどの芳香族アミンなどの開始剤へエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの1種または2種以上を付加重合させて得られる。
【0017】
アミンベースポリオールの開始剤としては脂肪族ジアミン、特に、エチレンジアミン、 プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンが好ましい。エチレンジアミンが有機ポリイソシアネート化合物との反応性が適切でありまた得られたプレポリマーの貯蔵安定性が良好な点で特に好ましい。
【0018】
アミンベースポリオールの重合度は、水酸基価が5mgKOH/g〜700mgKOH/g以下が良い。好ましくは5mgKOH/g〜400mgKOH/g以下、特に好ましくは5mgKOH/g〜100mgKOH/g以下である。水酸基価5mgKOH/〜100mgKOH/gであれば、一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤として優れた初期粘着力と長い貼付け可能時間の両方が得られる。
【0019】
ポリエーテルポリオールは特に限定されるものではないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、エチルブチルプロパンジオール、ペンタエリスリトール、シュクローズ、ソルビトール、ビスフェノールAなどの開始剤へエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの1種または2種以上を付加重合させて得られる。
ポリエーテルポリオールの開始剤としては、官能基数が2〜4が好ましい。特に好ましくは官能基数が2〜3のプロピレングリコール、グリセリンである。
【0020】
ポリエーテルポリオールの重合度としては、水酸基価が5mgKOH/g〜700mgKOH/gが良い。好ましくは5mgKOH/g〜400mgKOH/g以下、特に好ましくは5mgKOH/g〜100mgKOH/g以下である。水酸基価が5mgKOH/g〜100mgKOH/gであれば、特に優れた粘着力が得られる。
【0021】
ポリエーテルポリオールの量としては、プレポリマー(A)に対し70重量%以下、例えば1〜60重量%が良い。より好ましくは5〜40重量%である。
【0022】
ポリエステルポリオールは特に限定されるものではないが、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、マレイン酸、ダイマー酸、水素添加ダイマー酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シクロペンタンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸などの1種または2種以上の多価カルボン酸と例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジメチロールプロパン、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、エチルブチルプロパンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、シュクローズ、ソルビトール、ビスフェノールA等のグリコール成分との縮合重合体、あるいは、ラクトン、例えば、カプロラクトン、バレロラクトンの開環重合体及びこれらの共重合体などが挙げられる。
【0023】
また、上記多価カルボン酸及びグリコール成分として、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸、セバチン酸との縮合重合体が接着性の面で好ましく、更に3−メチル−1,5−ペンタンジオールとアジピン酸、セバチン酸との縮合重合体が耐加水分解性の面でも好ましい。
【0024】
ポリエステルポリオールの重合度としては、水酸基価が5mgKOH/g〜700mgKOH/gが良い。好ましくは5mgKOH/g〜400mgKOH/g以下、特に好ましくは5mgKOH/g〜100mgKOH/g以下である。
【0025】
ポリエステルポリオールの量としては、プレポリマー(A)に対して50重量%以下、例えば3重量%〜30重量%が良い。より好ましくは5重量%〜20重量%である。
【0026】
本発明の接着剤においては、有機ポリイソシアネート化合物と反応させるために、必要に応じて短鎖の2価アルコール(短鎖グリコール類)や2価フェノールまた3〜8価の水酸基含有化合物やその他ポリオール等が使用できる。
短鎖の2価アルコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジメチロールプロパン、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、エチルブチルプロパンジオール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、2価フェノールとしてビスフェノールA、3〜8価の水酸基含有化合物としてはグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、シュクローズ、ソルビトール等があり、これらは何れもエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加していないものである。この中でもエチルブチルプロパンジオールが良い。
その他ポリオール等としては、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリブタジエンポリオール、水添ポリブタジエンポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリマーポリオールが挙げられる。
【0027】
プレポリマー(A)に用いられる有機ポリイソシアネート化合物としては、分子中にイソシアネート基を2個以上有するもが良い。
分子中にイソシアネート基を2個以上有するイソシアネートとしては、特に限定されるものではないが、例えば、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4'MDI)、2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4'MDI)、2,2'−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,2'MDI)、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネートとカルボジイミドのシクロアダクト体、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3'−ジクロロ−4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、メタキシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート及びこれらのビュレット体やアダクト体ないしは、ダイマー体やイソシヌレート体などが挙げられる。
【0028】
プレポリマー(A)に用いられる有機ポリイソシアネート化合物としては、芳香族ジイソシアネートが好ましい。
特に好ましいのは4,4' MDIと4,4' MDIの異性体である2,4' MDIとの混合による芳香族ジイソシアネートが低温保存安定性及び初期粘着力と貼付け可能時間とのバランスの面で好ましい。その混合割合としては、2,4'− MDIが4,4' MDI100重量部に対して10〜90重量部が良い。好ましくは30〜70重量部である。
芳香族ジイソシアネートの中でも作業環境や施工後の環境など安全面を考慮すると、PRTR第一種指定化学物質に該当する、2,4'−トルエンジイソシアネート、2,6'−トルエンジイソシアネートなどは用いないのが好ましい。
【0029】
このようにして得られるプレポリマー(A)のNCO含量は3.0〜10.0重量%であることが好ましい。プレポリマー(A)の平均イソシアネート基数は、2.1〜4.0、例えば2.2〜3.7であることが好ましい。
【0030】
本発明でのプレポリマープレポリマー(B)は、有機ポリイソシアネート化合物と炭素数が1から26の1価のアルカノールを反応させて得られるイソシアネート基含有プレポリマーであり、平均官能基数が2未満のプレポリマーである。
【0031】
プレポリマー(B)に用いられる有機ポリイソシアネート化合物としては、20〜70重量%の4,4' MDI、20〜70重量%の2,4' MDI、0〜5重量%の2,2' MDI、5〜30重量%の3核体以上の多核体成分を含むポリメリックMDIであるのが好ましい。特に好ましいポリメリックMDIとしては40〜60重量%の4,4' MDI、30〜50重量%の2,4' MDI、0〜5重量%の2,2' MDI、5〜25重量%の3核体以上の多核体成分を含むものである。
【0032】
プレポリマー(B)は有機ポリイソシアネート化合物と炭素数が1から26の1価のアルカノールを反応させた分子中の平均イソシアネート基数が2未満のプレポリマーである。
炭素数(C)が1から26の1価のアルカノールとしてはエーテル橋を含有しても良く、場合によりオレフィン型不飽和のC1−26、好ましくはC6-12(シクロ)アルカノールはi−プロパノール、アリルアルコール、i−ブタノール、n−ドデカノール、n−オクタデカノール、エトキシエタノール、ブロボキシエタノール、メトキシプロパノール、ブトキシエタノールおよびシクロヘキサノール;および好ましくはネオペンチルアルコール、2−エチルヘキサノールおよびトリメチルヘキサノール異性体のような枝分かれ鎖アルコールを含有する。
【0033】
炭素数が1から26の1価のアルカノールを有機ポリイソシアネート化合物と反応させ分子中の平均イソシアネート基数が2未満になるようにするのが好ましい。プレポリマー(B)の平均イソシアネート基数について特に好ましいのは1.05ないし1.8である。更に好ましくは1.3ないし1.5である。
分子中の平均イソシアネート基数が2未満であると、プレポリマー(A)と混合した場合、密閉容器等、湿気不在下での優れた貯蔵安定性すなわち自己重合を抑制する効果と優れた貼付け可能時間が得られるので良い。
またこのようにして得られるプレポリマー(B)のNCO含量は3.0から20.0重量%であることが好ましい。
【0034】
プレポリマー(B)の量は、特に限定されるものではないが、プレポリマー(A)100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましい。特に好ましい使用量は、1〜10重量部である。
プレポリマー(B)の量が0.1〜20重量部であると、初期粘着力発現性に優れ、貼付け可能時間を延長させ、且つ接着剤配合後の貯蔵安定性を顕著に改善するので良い。
プレポリマー(A)とプレポリマー(B)を所望の量で混合したときと同様の有機ポリイソシアネート化合物の組成にすれば、プレポリマー(A)とプレポリマー(B)を含んだプレポリマーの重合を同時に行っても良い。
【0035】
プレポリマー(A)とプレポリマー(B)は、それぞれ単独で重合し、プレポリマー(A)とプレポリマー(B)を所望の比率で混合して用いるのが好ましい。
プレポリマー(A)とプレポリマー(B)は、それぞれ単独で重合し、混合したほうが、接着剤配合時に使用される、充填剤や希釈剤中に含まれる微量の水分を脱水し、接着剤配合後の貯蔵安定性を顕著に改善するので良い。
プレポリマー(A)100重量部に対しプレポリマー(B)の量が0.1〜20重量部の時のNCO含量は3.0から12.0重量%が好ましい。
【0036】
本発明の接着剤は、初期粘着力発現性を早めるため、3級アミンである触媒(C)を用いる。3級アミンの例は、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N−メチルモルホリンビス(2−ジメチルアミネチル)エーテル、ビス(モルホリノエチル)エーテル、ビス(2,6−ジメチルモルホリノエチル)エーテル、ビス(3,5−ジメチルモルホリノエチル)エーテル、イミダゾール系などがある。好ましくは分子中にモルホリン骨格を2個有するビス(モルホリノエチル)エーテル、ビス(2,6−ジメチルモルホリノエチル)エーテル、ビス(3,5−ジメチルモルホリノエチル)エーテルである。
触媒(C)は1種のみで使用しても良い。また2種以上を混合して使用しても良い。
【0037】
触媒(C)の使用量は特に限定されるものではないが、初期粘着力発現性と貼付け可能時間のバランスより、プレポリマー(A)とプレポリマー(B)の混合プレポリマー100重量部に対し0.03〜2.5重量部が好ましい。0.03重量部以上では、初期粘着力発現性を早めることができ、2.5重量部以下では、貼付け可能時間が長くなると同時に接着層の発泡が小さく、且つ接着剤の貯蔵安定性も高い。最も好ましい使用量は、0.05〜0.5重量部であり、更に貼付け可能時間に影響を及ぼさず、初期粘着力発現性を早めることが出来、且つ接着剤配合後の貯蔵安定性を良好にすることが可能になる。
【0038】
本発明の接着剤は希釈剤として有機溶剤(D)を用いる。有機溶剤(D)は、多価アルコールのエーテル、多価アルコールのエステルまたは多価アルコールのエーテル・エステルである。多価アルコールのエーテル・エステルは、エーテル基およびエステル基の両方を有する多価アルコールの誘導体である。
多価アルコールは、2〜5のヒドロキシル基を有する炭素数2〜30のアルコールであることが好ましい。多価アルコールの例は、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、エトヘキサジオール、グリセリン及び1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどである。多価アルコールは、多価アルコールの縮合体であってもよい。
【0039】
多価アルコールとエーテルを形成するためのアルコールは、炭素数1〜20のモノアルコールであることが好ましい。そのようなアルコールの例は、メタノール、エタノール、 プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール等である。
エステルを形成するための酸は、有機酸、例えば、炭素数1〜20(特に2〜5)のカルボン酸(1〜4価のカルボン酸、特に1価のカルボン酸)であることが好ましい。酸の例は、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、トルイル酸である。
【0040】
多価アルコール(および多価アルコールの縮合体)のエーテルの具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのモノエーテル類、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテルプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテルなどのジエーテル類、ピロガロールのトリメチルエーテルなどのトリエーテル類などが挙げられる。
多価アルコールのエステルの具体例としては、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート及びモノアセチン等のモノアセテート類、エチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート及びブチレングリコールジアセテート等の多価アルコールのジアセテート類などが挙げられる。
【0041】
多価アルコール縮合物のエステルの具体例としては、ジエチレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート及びトリエチレングリコールモノアセテート等のモノアセテート類、カルビトールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート及びトリエチレングリコールジアセテート等の多価アルコール縮合物のジアセテート類などが挙げられる。
【0042】
有機溶剤(D)として、酢酸多価アルコールが、本発明の目的を阻害せず、且つ臭気が少なく環境に優しいので特に好ましい。酢酸多価アルコールとしては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(MMGAC)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EGA)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(MMPGAC)、プロピレングリコールアセテート(PGDA)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BMGAC)、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAC)、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(DPMA)、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BDGAC)などが挙げられる。
有機溶剤(D)(特に、酢酸多価アルコール)は、分子量が160以上のものが引火点など高くなるので取扱いなど作業安全面の面で好ましい。特に好ましいのはジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートである。更に好ましいのはジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートである。酢酸多価アルコールは、接着剤に対する希釈効率が高く、均一な接着剤が得られるとともに、低粘度で作業性の良い接着剤配合を得ることができる。また酢酸エチルや酢酸ブチルなどの揮発性の高い有機溶剤に比べ蒸発速度も適度であるので臭気を発生しにくいなど対VOC(シックハウス)の面で好ましい。
【0043】
有機溶剤(D)の使用量としてはプレポリマー(A)100重量部に対し5〜30重量部が好ましい。特に好ましい使用量は10〜25重量部である。5〜30重量部であれば一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤した時の初期粘着力発現性を阻害せず、また希釈性も良い。またプレポリマー(A)とプレポリマー(B)を混合したのち、充填剤、チキソトロピー付与剤、粘着付与剤などを加えて一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤にした場合は、一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤100重量部に対して新たに5〜30重量部加えるのが良い。好ましくは5〜20重量部である。5〜30重量部であれば、初期粘着力発現性を阻害せず、充填剤による粘度上昇を抑えることができ、塗布作業性が良好になる20000mPas〜50000mPasの粘度範囲の接着剤配合物が得られる。
【0044】
本発明の一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤は、必要に応じて、充填剤、チキソトロピー付与剤、粘着付与剤なども用いることが出来る。
充填剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、炭酸カルシウム、表面疎水処理炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、酸化チタン、有機バルーン、無機バルーン、ベントナイト、カーボンブラック、ゴム粉末、ワラストナイト等が挙げられ、1種または2種以上混合して用いられる。これらはいずれも充分に乾燥させ、水分を0.05%以下にしたものであることが好ましい。
充填剤の量としては一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤100重量部に対して10〜100重量部が良い。好ましくは20〜80重量部である。
【0045】
また、チキソトロピー付与剤としては、例えば、コロイド状シリカ、水素添加ヒマシ油等が挙げられ、1種または2種以上混合して用いられる。
粘着付与剤としては、例えば、ロジン樹脂系、テルペン樹脂系、フェノール樹脂系、ポリアクリル樹脂系等が挙げられる。
【0046】
以下に、実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。尚、実施例において、特記しない限り、「部」は「重量部」、「%」は「重量%」を示す。
【0047】
一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤の評価は、以下の方法により実施した。
初期粘着力発現性
(1)150×70×6mmのフレキシブルスレート板(JISA5430 日本テストパネル社製)上に、一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤を、バーコーダーにて塗布量が270g/mになるように均一に塗布し、塗布後直ちに23℃と50RH%に調整した恒温恒湿槽に投入した。
(2)投入してから最初のみ20分後、その後は10分毎に、120×25×1mmの可塑剤を30%以上含む軟質塩化ビニルシートを、(1)のフレキシブルスレート板に軟質塩化ビニルシートの40×25mmの部分を接着面積とし、約3kg荷重のローラで2往復圧縮して接着させた。
(3)接着後、直ちに軟質塩化ビニルシートに50gの荷重をかけて90度クリープ試験を行った。50g荷重で軟質塩化ビニルシートが落下する時間が10秒を超えた時を、初期粘着力が発現した時間とした。
(4)評価結果
○:初期粘着力発現時間が40分未満で良好
×:初期粘着力発現時間が40分以上で不良
【0048】
貼付け可能時間
(1)初期粘着力発現性の評価(1)(2)と同様にして、フレキシブルスレート板と軟質塩化ビニルシートを接着させた。
(2)接着させた20秒後に、軟質塩化ビニルシートを180度剥離(剥離速度 50mm/分)を実施し、その時、軟質塩化ビニルシート側に接着剤が50%以上残った状態(以降、「面積転写率」)を、貼付けが可能な時間と判断した。
(3)評価結果
○:50%以上の面積転写率の貼付け可能時間が40分以上で良好
×:50%以上の面積転写率の貼付け可能時間が40分未満で不良
【0049】
剥離(接着)強さ
(1)JIS A 5536−2003に準拠し、フレキシルスレート板と軟質塩化ビニルシートの剥離(接着)強さを測定した。
(2)評価結果
○:剥離(接着)強さが60N/mm以上で良好
×:剥離(接着)強さが60N/mm未満で不良
【0050】
貯蔵安定性
(1)調製した一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤を窒素置換後、50ml密閉容器中にて40℃で30日間保管後、B型回転粘度計を用い、25℃における粘度を測定した。
(2)評価結果
○:粘度の上昇率が50%未満
×:粘度の上昇率が50%以上
【0051】
塗布作業性
(1)塗布作業性確認方法:23℃と50%RHに調整した、恒温恒湿室にて、JIS A 5430に規定されている300mm×600mm×8mmのフレキシブルスレート板へJIS A 5536に規定されている塗布方法にてくし目ごてを用い塗布し、そのときの塗りやすさを確認した。
(2)評価結果
○:塗布した際のコテさばきが軽く良好。
×:塗布した際のコテさばきが重たく不適。
【0052】
臭気
(1)臭気確認方法:23℃と50%RHに調整した、恒温恒湿室にて、JIS A 5430に規定されている300mm×600mm×8mmのフレキシブルスレート板へJIS A 5536に規定されている塗布方法にてくし目ごてを用い塗布。直後に塗布面から約20cmまで顔を近づけ臭気の有無を確認した。
(2)評価結果
○:10名のパネラー中、8名以上が殆ど臭いを感じなく良好。
×:10名のパネラー中、2名以上が臭いを強く感じ不快。
【合成例1】
【0053】
(1)プレポリマー(A)の作製
1Lセパラブルフラスコに2,4'MDIを40%と4,4'MDI60%を含有する芳香族ジイソシアネート(MMDI)を310部投入し、窒素雰囲気下にて攪拌しながら、グリセリンを開始剤としアルキレンオキサイド(プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド)を付加した水酸基価56mgKOH/g(平均分子量3000)のポリオキシアルキレンポリオール(以下「ポリエーテルポリオール1」という)を155部、同様にプロピレングリコールを開始剤としアルキレンオキサイド(プロピレンオキサイド、エチレンオキサイド)を付加した水酸基価56mgKOH/g(平均分子量2000)のポリオキシアルキレンポリオール(以下「ポリエーテルポリオール2」という)を50部、エチレンジアミン(EDA)を開始剤としプロピレンオキサイドを付加した水酸基価60mgKOH/g(平均分子量3700)のアミンベースポリオール200部、水酸基価700mgKOH/g重量平均分子量160の短鎖グリコール(協和発酵社製、2−ブチル−2エチル−1,3−プロパンジオール)60部を加え、液温60−70℃で窒素雰囲気下にて攪拌しながら1時間反応させた後、水酸基価56mgKOH/g重量平均分子量2000のポリエステルポリオール(大日本インキ社製、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール/アジピン酸系ポリエステルポリオール)75部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(ダイセル社製、EDGAC)150部を加え、更に液温70−80℃で窒素雰囲気下にて攪拌しながら7時間反応させイソシアネート基含有率が4.8%(分子中平均イソシアネート基が2.30)のプレポリマー(A)を得た。粘度は28300mPas/25℃であった。
【合成例1(2)】
【0054】
(2)プレポリマー(A)とプレポリマー(B)混合
(1)で得たプレポリマー(A)の液温を室温(25℃)まで下げた後、反応前の平均イソシアネート官能基数が2.07のポリメリックMDI(50重量%の4,4‘MDI、40重量%の2,4‘MDI、4.5重量%の2,2‘MDI、5.5重量%の3核体以上の多核体成分を含む)と2−エチルヘキサノールを反応させた(NCO含量16.0%)反応後の平均イソシアネート官能基数が1.4のプレポリマー(B)50部を加え、窒素雰囲気下にて1時間攪拌させ、NCO含量が5.3%で粘度が28600mPas/25℃のイソシアネート基含有プレポリマーを得た。
【合成例2】
【0055】
(1)プレポリマー(A)の作製
MMDIを312部、アミンベースポリオールを353部にした以外は、合成例1と同様にしてプレポリマー(A)を得た。
NCO含量が4.4%(分子中平均イソシアネート基が2.36)で、粘度は42600mPas/25℃のイソシアネート基含有のプレポリマーを得た。
【合成例2(2)】
【0056】
(2)プレポリマー(A)とプレポリマー(B)混合
(1)で得たプレポリマー(A)の液温を室温(25℃)まで下げた後、合成例1の(2)と同様にしてNCO含量が5.0%で粘度が41900mPas/25℃のイソシアネート基含有プレポリマーを得た。
【合成例3】
【0057】
(1)プレポリマー(A)の作製
芳香族ジイソシアネートを308部、ポリエーテルポリオール1を207部にし、モノエチルアミン(MEA)を開始剤としプロピレンオキサイドを付加した水酸基価56mgKOH/g(平均分子量2000)のアミンベースポリオール200部、ポリエーテルポリオール2を用いなかった以外は、合成例1と同様にしてプレポリマー(A)を得た。
NCO含量が4.6%で、粘度は15200mPas/25℃のイソシアネート基含有のプレポリマーを得た。
【合成例3(2)】
【0058】
(2)プレポリマー(A)とプレポリマー(B)混合
(1)で得たプレポリマー(A)を合成例1の(2)と同様にして、NCO含量が5.2%で粘度が15500mPas/25℃のイソシアネート基含有プレポリマーを得た。
【合成例4】
【0059】
(1)プレポリマー(A)の作製
溶剤をジイソノニルアジペート(新日本理化社製、サンソサイザーDINA)150重量部に変えた以外は、合成例1の(1)と同様にしてのプレポリマー(A)を作製した。
NCO含量が4.8%で、粘度は66000mPas/25℃のイソシアネート基含有プレポリマーを得た。
【合成例4(2)】
【0060】
(2)プレポリマー(A)とプレポリマー(B)混合
(1)で得たプレポリマー(A)を合成例1の(2)と同様にして、NCO含量が5.3%で、粘度は64900mPas/25℃のイソシアネート基含有プレポリマーを得た。
【合成例5】
【0061】
(1)プレポリマー(A)の作製
溶剤をジイソプロピルナフタレン(Rutgers Kureha Solvents社製 Ruetasolv DI)150重量部に変えた以外は、合成例1の(1)と同様にしてのプレポリマー(A)を作製した。
NCO含量が4.8%で、粘度が90000mPas/25℃のイソシアネート基含有プレポリマーを得た。
【合成例5(2)】
【0062】
(2)プレポリマー(A)とプレポリマー(B)混合
(1)で得たプレポリマー(A)を合成例1の(2)と同様にして、NCO含量が5.3%で、粘度が89500mPas/25℃のイソシアネート基含有プレポリマーを得た。
【実施例1】
【0063】
合成例1の(2)から得られたイソシアネート基含有プレポリマー100重量部に対し、炭酸カルシウム(水分0.05%以下)63.5重量部と3級アミン系触媒のUcat660M(サンアプロ社製、ビス(モルホリノエチル)エーテル)0.16重量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート(EDGAC)10重量部を加えて、一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤とした。
この一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤の初期粘着力発現性、貼付け可能時間、剥離(接着)強さ、臭気、希釈性(溶解性)など性能評価を行った。
結果は表2にあるようにいずれも問題なく良好であった。
【実施例2】
【0064】
合成例2の(2)から得られたイソシアネート基含有プレポリマー100重量部に対し、炭酸カルシウム(水分0.05%以下)40.8重量部と3級アミン系触媒のUcat660M(サンアプロ社製、ビス(モルホリノエチル)エーテル?)0.05重量部、EDGAC10重量部を加えて、一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤とした。
この一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤の初期粘着力発現性、貼付け可能時間、剥離(接着)強さ、臭気、希釈性(溶解性)、貯蔵安定性など性能評価を行った。
結果は表2にあるようにいずれも問題なく良好であった。
【比較例1】
【0065】
合成例1のから得られたプレポリマー(A)にプレポリマー(B)を加えずにプレポリマー(A)100重量部に対し、炭酸カルシウム(水分0.05%以下)63.5重量部、EDGAC10重量部を加えて、一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤とした。
この一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤の初期粘着力発現性、貼付け可能時間、剥離(接着)強さ、臭気、希釈性(溶解性)、貯蔵安定性など性能評価を行った。
結果は表2にあるように初期粘着力発現性に問題がみられ満足のいくものではなかった。
【比較例2】
【0066】
合成例2から得られたプレポリマー(A)にプレポリマー(B)を加えずにプレポリマー(A)100重量部に対し、炭酸カルシウム(水分0.05%以下)40.8重量部とEDGACを10重量部加えて、一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤とした。
この一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤の初期粘着力発現性、貼付け可能時間、剥離(接着)強さ、臭気、希釈性(溶解性)、貯蔵安定性など性能評価を行った。
結果は表2にあるように初期粘着力発現性に問題がみられ満足のいくものではなかった。
【比較例3】
【0067】
合成例3の(2)から得られたイソシアネート基含有プレポリマー100重量部に対し、
炭酸カルシウム(水分0.05%以下)63.5重量部とEDGAC10重量部のみを加えて、3級アミン系触媒を加えずに一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤とした。
この一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤の各種の性能評価を行ったが、表1のように貼付け可能時間に問題がみられ満足のいくものではなかった。
【比較例4】
【0068】
合成例1(2)のイソシアネート基含有プレポリマープレポリマー(A)100重量部に対し、炭酸カルシウム(水分0.05%以下)63.5重量部とEDGAC10重量部のみを加えて3級アミン系触媒を加えずに、一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤とした。
この一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤の各種の性能評価を行ったが、表1のように初期粘着力発現性に問題がみられ満足のいくものではなかった。
【比較例5】
【0069】
合成例4(2)で得られたイソシアネート基含有プレポリマーに、炭酸カルシウム(水分0.05%以下)63.5重量部、ジイソノニルアジペート(DINA)10重量部を加えて、一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤とした。
この一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤は、粘度が高いため、塗布作業性が悪く不良とした。)
【比較例6】
【0070】
合成例5(2)で得られたイソシアネート基含有プレポリマーに、炭酸カルシウム(水分0.05%以下)63.5重量部、ジイソプロピルナフタレン(DI) 10重量部を加えて、一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤とした。
この一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤は、粘度が高いため、塗布作業性が悪く不良とした。)
【比較例7】
【0071】
合成例2から得られたプレポリマー(A)にプレポリマー(B)を加えずにプレポリマー(A)100重量部に対し、炭酸カルシウム(水分0.05%以下)40.8重量部と3級アミン系触媒のUcat660M(サンアプロ社製、ビス(モルホリノエチル)エーテル)0.05重量部、EDGACを10重量部加えて、一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤とした。
この一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤の初期粘着力発現性、貼付け可能時間、剥離(接着)強さ、臭気、希釈性(溶解性)、貯蔵安定性など性能評価を行った。
結果は表2にあるように貼付け可能時間に問題がみられ満足のいくものではなかった。



【0072】
【表1】
















【0073】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)有機ポリイソシアネート化合物から得られる分子中に2個以上の平均イソシアネート基数を有するプレポリマーと
(B)分子中の平均イソシアネート基数が2未満のプレポリマーと
(C)3級アミンである触媒と
(D)多価アルコールのエーテル、エステルまたはエーテル・エステルから選択された有機溶剤
を含有することを特徴とする一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤。
【請求項2】
プレポリマー(A)が、有機ポリイソシアネート化合物と多価アミンをベースとするポリオキシアルキレンポリオールポリオールを反応させて得られるプレポリマー成分を含むイソシアネート基含有プレポリマーであり、プレポリマー(A)に対し多価アミンをベースとするポリオキシアルキレンポリオールポリオールの量が5から50重量%であることを特徴とする請求項1に記載の一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤。
【請求項3】
プレポリマー(A)に用いる有機ポリイソシアネート化合物が、
10〜90重量%の4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート、
90〜10重量%の2,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネートの芳香族ジイソシアネートであることを特徴とする請求項1から請求項2のいずれかに記載の一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤。
【請求項4】
プレポリマー(B)が有機ポリイソシアネート化合物と炭素数が1から26の1価のアルカノールを反応させて得られるイソシアネート基含有プレポリマーであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤。
【請求項5】
プレポリマー(B)に用いられる有機ポリイソシアネート化合物が、
20〜70重量%の4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート、
20〜70重量%の2,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート
0〜5重量%の2,2‘−ジフェニルメタンジイソシアネート、
5〜30重量%の3核体以上の多核体成分
を含むポリメチレンポリフェニルイソシアネートであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤。
【請求項6】
プレポリマー(A)100重量部に対しプレポリマー(B)の量が0.1〜20重量部であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤。
【請求項7】
3級アミン系触媒(C)が分子中にモルホリン骨格を2個有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤。
【請求項8】
有機溶剤(D)が酢酸多価アルコールであることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤。
【請求項9】
有機溶剤(D)の分子量が160以上であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤。
【請求項10】
酢酸多価アルコール系有機溶剤が、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート及びジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の一液湿気硬化型ポリウレタン樹脂系接着剤。

【公開番号】特開2008−94905(P2008−94905A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−276302(P2006−276302)
【出願日】平成18年10月10日(2006.10.10)
【出願人】(000183299)住化バイエルウレタン株式会社 (33)
【Fターム(参考)】