説明

一部が蛋白質に結合した物質を取除く装置

【課題】アルブミンのような担体に多少とも堅く結合した物質を血液から除去するための透析効率を高める装置を提供する。
【解決手段】浄化流体流量と濾過器の物質移動係数kAとを、従来の透析器に比較して大幅に増大させ、浄化流体流量が少なくとも2000ml/分であり、物質移動係数kAが少なくとも2000ml/分である。また、濾過器の物質移動係数kAと血液流量との間の比率は少なくとも5であり、浄化流体流量と血液流量との間の比率が少なくとも5である構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析効果を高めるために血液のような生物学的流体からアルブミンのような担体に多少とも堅く結合した物質を取除く装置に関する。
【背景技術】
【0002】
腎臓機能や肝臓機能の全てまたは大半を失った人には、血液を清浄化する別の方策を見い出すことが必要である。一つの一般的な代替方法は透析であり、血液中の老廃物は膜を横断して浄化流体へ運ばれる。透析の最も一般的な形態である血液透析では、血液が体内から抜出されて外部装置、すなわち透析器へ導かれる。透析器は膜を有しており、その片側を血液が流され、反対側に透析流体が流される。その後、血液は体内へ戻される。血液と透析流体との膜を隔てた濃度差により、血液中の老廃物は拡散して透析流体へ運ばれる。同時に、あらゆる過剰流体も限外濾過によって取除かれる。これは膜を隔てて圧力差を生じさせることで達成される。
【0003】
この透析方法は、血中血漿を含む体液中の溶解物質に関して非常に有効とされる。膜を横断しての移送の源動力は濃度差であり、この濃度差が保持される間は移送率を高くすることができる。透析流体中の濃度がゼロの物質では、その移送率は、血中濃度と、透析器の浄化率として知られた因子との積として計算することができる。この浄化率の値は、当該物質を全体的に浄化された血液流量の分屑とみなすことができ、ml/分の単位で測定される。
【0004】
浄化率(Cl)の主な決定因子は、血液の流量(Qb)および浄化流体の流量(Qd)、および膜の移送能力である。膜は、その面積に比例する物質移動係数kAで特徴づけられ、この係数は血液流量および透析流体流量が非常に大きな場合に得られる浄化率と解釈することができる。透析器の浄化率に関する数式は、透析器を通しての濃度プロフィルを計算することで論理的に導き出すことができる。透析器を通る各点での質量バランスを考え、流れにより運ばれる質量を考慮して、膜を横断する拡散により、血流方向に透析器に沿う濃度に関する一連の微分方程式が導き出される。浄化率の計算に必要な質量除去率は、血液流量と、血中濃度の計算で得た変化とによって得ることができる。いずれの限外濾過も行われない状態では、浄化率は数1によって与えられる。
【数1】


ここで、eは指数関数を示し、指数fは数2で計算される。
【数2】

【0005】
数1および数2を誘導するために、血液および透析流体の両方が透析器を通る各点で完全に混合されていると仮定する。したがって濃度は計算された濃度プロフィルにしたがって透析器を通して変化するが、膜からの距離に対して濃度は無関係であると仮定される。また、流れは透析器全体に等しく分配されると仮定される。これらの制約があっても、上述の数式は実際に血液流量および透析流体流量に対する浄化率の依存関係をよく表すことを示している。したがってこれらの数式は、必要ならば限外濾過について補正されて、透析器能力を記載するためにしばしば使用されている。
【0006】
数1および数2の綿密な研究によれば、浄化率はQ,Q,kAのいずれも超えることができないことが明かにされた。透析流体流量QおよびkAは使用機器によってのみ制限されるが、血液流量は患者から抜出すことのできる血液流量によって制限される。これは透析処理で達成できる最大効率を制限しており、また大流量とする場合のコストおよびkAが良好な効率をもたらす正当性を認めることができないことから、通常の透析処理に使用されるQおよび膜のkAに関する正当な標準値が導き出されている。
【0007】
およびkAを固定した状態でQを増大すると、浄化率は血液流量の或る分屑にまで増大し、これはkAで決定される。Qが血液流量の二倍のときにすでにこの限界に近づき、これより増大しても利得はほとんど得られない。したがって標準的な透析における透析流体流量は、通常は500〜800ml/分の範囲となる。
【0008】
これに代えてQおよびQを固定してkAを増大すると、浄化率はQとは無関係にQに近づく(QがQよりも大きい限り)。この増大は、kA値が血液流量の3〜4倍までにおいて顕著であるが、経済的および実際的な理由から、標準的な血液透析における透析器のkA値は通常は500〜1000ml/分の範囲に制限される。
【0009】
上述した分析は、流体中に溶解される血漿のような物質にあてはまる。しかしながら多数の物質はアルブミンのような担体にかなりの程度で結合される。アルブミンに結合できる物質の例は、酪酸および吉草酸、チロキシン、トリプトファン、非共役(unconjugated)ビリルビン、メルカプタン、芳香アミノ酸である。例えば三環抗鬱病剤、ジゴキシン、ジギトキシン、デオフィリンまたはベンゾジアゼピンの不用意な投与過多またはそれによる自殺行為の場合、多数の薬剤がアルブミンに対して高い結合率を有することが知られている。
【0010】
ヘモグロビンも例えば一酸化炭素またはシアン化物の担体として作用する。それらの物質はヘモグロビンに対する大きな親和力を有し、また酸素と置換され、これが酸素を運ぶ血液の能力を大きく低下させる。
【0011】
多くの場合、真菌類毒素のように蛋白質やその他の担体に大部分が結合する血中物質に関して高い除去率を有することが重要である。しかしながら上述した溶解物質の場合とは状況が異なる。一部が蛋白質に結合し、また一部が血液中に溶解している物質の全体量が大きな場合でも、血漿の濃度は低い。何故なら、大部分の物質は結合しているからである。したがって、膜を隔てた濃度勾配は小さくなり、これにより透析器における移送率は低くなり、処理効率も低くなる。
【0012】
この問題を解決するこれまでの試みは、透析流体に十分な量の担体を加えることを主眼としていた。アルブミンに結合した毒素の場合、一般的な解決法は透析流体にアルブミンを加えることである。したがって膜を横断して透析流体中へ移送された物質は透析流体中のアルブミンに結合する。これは透析流体中の濃度を低く保ち、これにより膜を横断する移送は濃度勾配を失うことなく持続される。したがって、蛋白質に結合した物質を運ぶ透析流体の能力は、非常に大きくなる。例えば米国特許第5744042号を参照。
物質の大部分が担体に結合し、濃度勾配が小さな場合には、移送を向上させるように膜自体を改善すれば良好な結果が達成される。これは米国特許第5744042号に示唆されており、それによれば膜はその内外両面をアルブミンで被覆するようにアルブミンを下塗りされており、アルブミンは表面に付着されている。したがって、膜を横断して移送させるための仲介部分として作用することのできる場所が膜内部に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第5744042号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
アルブミンのような担体を透析流体および(または)膜に付加することの主な欠点は、非常に高価となることである。したがって、アルブミンを含むこの透析流体は廃棄しないことが望ましい。米国特許第5744042号には、透析流体を再生するために担体から結合物質を除去するような浄化用カートリッジを透析ループ内に配置することが示唆されている。このようにすることで、僅かな量の透析流体を必要とするだけで済むことになる。何故なら、何度も再使用することができるからである。これにおける問題点は、カートリッジで除去できない全ての溶質で流体が飽和されてしまい、したがって一次的透析流体を浄化するために第二の透析ループを導入しなければならなくなること、および透析処置の間隔期間に患者に通常蓄積されるあらゆる過剰流体を除去することが必要になるということである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このように従来技術のこの方法は費用が高く、時間がかかり、そのうえ煩わしいので、担体に結合した物質を血液から除去する簡単な方法が必要とされるのである。本発明は、担体に結合した物質を透析膜を横断して移動させることの裏に隠れたメカニズムの、より注意深い精査に基づくものである。
【0016】
この場合、物質の全量と、血漿に溶解されたその物質の量との比率が一定であると仮定するならば、透析器の浄化率の論理的な数式を導き出すことができる。この比率をαで表し、また血液中の全濃度(結合した分屑を含む)で除去率を除した値として浄化率を定義するならば、浄化率の数式は数3で示されるように変化される。
【数3】

【0017】
数2に比較して、指数fは数4に示されるように変化される。
【数4】

【0018】
数3および数4の誘導において、比率αは常に透析器の全体において一定であると仮定された。このことは透析により物質が血漿から除去されるとき、同量の物質が担体から直ちに解放されるように、担体に結合した分屑と溶解している分屑との間の平衡が瞬時に起こることを意味する。この過程での遅れは結果として達成できる浄化率を低下させるが、血液の透析器内での滞留時間を最大限となすためのさまざまな働きかけによって、この低下を最少限に抑えることができる。
【0019】
限外濾過の効果も数3および数4では無視されている。溶解した物質に関しては、限外濾過は、その限外濾過量の約1/3〜1/2ほど浄化率を高めることが知られており、これは通常は数パーセントの増大を意味する。担体に結合した物質に関しては、限外濾過の効果はさらに複雑である。限外濾過それ自体は、残される血液中の濃度は変化させず、したがって担体に結合した物質の分屑は純粋な限外濾過による除去で有効に扱われない。限外濾過の他の効果は血漿流量を減少させることであり、これは血漿中の物質濃度を容易に減少させることができるようにする。同時に、血液は一層濃縮され、これにより担体濃度も高まる。これは結合比率αをさらに増大させることになり、このことは除去を減少させる傾向を示す。担体に結合した物質の除去に対する限外濾過の全体的な影響は、結合していない物質に対する影響よりも少ないであろう。
【0020】
事前希釈による血液濾過(hemofiltration)、および標準的な血液透析と血液濾過とを組合わせた血液透析濾過(hemodiafiltration)の場合のように限外濾過に先行して血液の希釈が行われると、状況は難しくなる。血液が希釈されると、溶解した物質の濃度は低下し、これは担体に結合した一部の結合物質が解放されるようにする。この解放された物質は、その後、引き続く限外濾過段階によって除去されるが、これにより濃度は変化されない。
【0021】
そのような事前希釈して血液濾過する方法の効率を計算することは可能である。しかしながら、結合比率αは血液が希釈されることで変化する。計算のために、その代わりに各担体分子に結合した物質の量は周囲の血漿中の物質の濃度に比例すると仮定する。また、希釈段階にて加えられる透析流体の流量Qはその後の限外濾過で除去されるとも仮定する。濃度に対する希釈効果の分析によれば、この場合の浄化率は数5で与えられることを示している。
【数5】

【0022】
α=1(結合がない)では、数5は事前希釈による血液濾過の浄化率に関する標準的な数式に合う。結合による影響は、係数αにより透析流体流量の影響を減少させることである。そのために十分大きな浄化率を達成するには、この流量を増大させることが必要となる。この流量はまた、限外濾過によって除去されることも必要なので、濾過器は流体を透過させることができなければならないという要求が大きくなる。必要な限外濾過量は、通常は、膜を横断して圧力勾配を与えることで得られる。この限外濾過量は与えられた圧力に対して、膜の面積に比例するLAで示される比例係数にて比例する。したがって、中間的な圧力で十分大きな限外濾過量を達成するためには、膜面積を相応に増大させることがしばしば必要となる。
【0023】
数3および数4は、血液透析において一部が担体に結合した物質の浄化率に及ぼす影響が、膜の物質移動係数kAと、結合比率αで除した透析流体流量との両方で簡単に表せることを示している。この比率αの値は10以上となるので、浄化率に及ぼす影響は大きくなり、透析方法の効果はあまりにも小さな実際値となってしまう。
【0024】
血漿に溶解した物質では、上述したように、通常は浄化率の制限要因であり、kA(または血液濾過ではLA)または透析流体流量Qを増大させるために制約を受ける値である血液流量Qである。しかしながら3〜4を超える比率αにて担体に結合されている物質では、数3,4,5は通常は制限要因がもはや血液流体でないことを示している。むしろkA(または血液濾過ではLA)およびQの両者が制限を与えるので、これらを増大することが要求される。しかしながら、それらの一方を増大させても他方は依然として浄化率を制限するので、一方だけを増大させることは大きな助けとならない。むしろそれらの両方を同時に増大しなければならない。
【0025】
理想的には、担体に結合する作用に全体的に対抗するためには、kA(または血液濾過ではLA)および透析流体流量Qの両者を係数αによって増大させるべきである。この結合係数が例えば100までと大きい値である場合には、実際的な理由のために、これを達成することは困難となる。しかしながら、担体は通常は主として血液中に存在し、残る体液中には非常に僅かしか存在しないので、通常は浄化率のそれほど大きな増大は必要とされない。このことは、他の体液中の濃度が血漿の場合と同じであっても、物質の大部分は血液中に見い出されることを意味する。したがって、一部が蛋白質に結合した浄化すべき物質を有する体液、すなわち主として血漿の見かけの全体量は、通常は非蛋白質に結合せずに溶解した物質を有する体液の全体量よりもはるかに少ない。さらに、除去すべき物質(蛋白質に結合している、および溶解している)の全体量は、正常な透析によって除去される物質、すなわち尿素などよりも少ない。
【0026】
透析流体流量および膜の物質移動係数kA(または血液濾過ではLA)は、少なくとも3〜4の係数で、好ましくは10の係数で増大されねばならない。これより大きな倍数が有用であるとしても、10〜100までの大きな結合係数に関して10倍の増大でしばしば十分とされる。血液流量と比率αとの積は、透析流体流量および膜の物質移動係数kA(または血液濾過ではLA)の適当値の目安として使用できるが、これより大きな結合比率αの場合も、この積の10%で十分とされる。
【0027】
これらの例では、血液流量はしばしば制限因子とならないので、少ない血液流量とすることも可能である。重要な因子は、膜の物質移動係数kA(または血液濾過ではLA)および透析流体流量を増大することであり、血液流量はそれらの二つのうちの大きい方の1/αの分屑となるまで少なくとも減少される。このような作用は大量の血液が取出されることで生じる血管に対する全ての有害な影響を制限することができる。したがって、薬物または他の毒素によって中毒になった患者は、針またはカテーテルを50ml/分程度の血液流量を得ることのできる上部静脈(Vena Cephalica)のような太く皮膚に近い血管に挿入して、本発明による装置で処置される。
【0028】
これより少ない血液流量でも、物質のうちの結合した分屑および溶解した分屑の間の均衡が時間的に遅れる場合には透析器ないでの血液の滞留時間を長くすることでこの方法の効率を高められる。透析流体流量およびkAはそれでも2000ml/分を超える、好ましくは5000ml/分を超え、またはさらに高く保持されねばならない。血液濾過では、中間的な圧力勾配のもとで大量の透析流体流量で必要な限外濾過を可能にするために、LAが大きくされねばならない。
【0029】
AおよびLAに比例する膜面積は、幾つかの標準的な透析濾過器を直列または並列構成、またはその組合せで使用することにより、または大きな膜面積を有する特別に設計された濾過器を使用することで容易に増大できる。
【0030】
透析流体流量を増大するためには、幾つかの他の配慮が必要である。例えば5リットル/分で透析流体を製造するには、高品質でなければならない水の供給に高度の要求を課する。
【0031】
透析流体はまたソジウム、ポッタシウム、カルシウム、塩化物および二酸化炭素のような電解質を血液中のそれらの濃度と等しい濃度で含有しなければならない。これは通常の透析ではそれらのイオンの濃縮溶液に水を混ぜて得られる。本発明で必要とされる流体は大量であるので、濃縮液の必要量も大量となる。それらの大量の流体の取扱いは、一種以上の電解質が米国特許第4784495号に示唆されているように乾燥状態で供給されるならば大いに簡単化できる。この問題に対処する他の方法は、透析流体を準備するために大きな中央混合ステーションを使用することであり、透析流体は導管を通して使用場所へ圧送される。
【0032】
水および濃縮液に関する大きな要求を軽減する一つの方法は、限外濾過処理によって使用済み透析流体を再生させることである。水に対して高い透過性を有し、また電解質を通過させるが除去すべき物質は通過させない適当な孔寸法を有する濾過器が使用済み透析流体ラインに配置される。限外濾過器は再使用でき、濃縮された使用済み透析流体が廃棄される。この方法は、除去すべき物質が電解質に対して十分に大量である場合に使用できる。
【0033】
さらに、透析流体は正常体温に近い温度を有していなければならない。透析器は血液と透析流体との間の熱交換器として作用する。透析流体が冷たいと、患者に戻される血液は温度が低くなり過ぎて、不快感を生じることになる。正常な透析処置では、全ての透析流体は大体38゜Cに加熱される。500〜800ml/分の透析流量を加熱するのに必要な電力は、標準的な壁の電気コンセントから得られる限界である。これより大きな流量では、特に進入する水が特に冷たい場合には、十分ではなくなる。この場合、使用済み透析流体から進入する水へ熱を伝えるために、熱交換器がしばしば使用される。
【0034】
本発明では、通常よりも10倍もの透析流体流量が必要とされる。したがって、透析流体の全量が標準的な壁の電気コンセントから得られる電力で十分に加熱されるようにするには、熱交換器では十分でない。未加熱透析流体を使用してこの方法の大部分を遂行することがこの問題の解決を可能にする。したがって、血液は戻される直前に加熱されるのである。これは、例えば血液ラインの外面に作用する血液ヒーターを使用して行える。
【0035】
他の可能な方法は、透析流体の全体量のうちの僅かな分屑を加熱することである。したがってこのシステムは、未加熱の透析流体部分が最初に使用され、最終的に加熱された透析流体部分は患者に戻される直前の血液の最終処理で使用される。
【0036】
この方法の主部分に関して未加熱の透析流体を使用すること、およびその後の血液の温度降下は効率に影響を及ぼす。拡散の効果は温度が低下すると減少するが、温度は結合比率αにも影響する。さまざまな担体/毒素の組合せがこれに関してさまざまに反応する。この方法の効率はαが増大すると低下する。
【0037】
加熱問題に対処する他の方法は、透析流体の準備および加熱の両方のために中央混合ステーションを使用することである。この方法全体は、効率の点から重要とされる場合に高い温度で遂行される。したがって、水および電解質の正しい組成を有する温かい透析流体が中央混合ステーションから透析機械の配置されている複数現場の各々に対して配給される。
【0038】
担体に結合した物質の大きな浄化率の効果を得るために、膜面積および透析流体の両方に対処することが必要である。本発明で開示するように、これは膜面積および透析流体流量の両方を大きくすることでなし得る。米国特許第5744042号では、両因子は担体のアルブミンを追加することで対処される。この二つのアプローチは組合わせることもできる。アルブミンのような担体は透析流体に添加できるが、膜には付与できないので、その代わりに上述したように大きく作られる。これに代えて、膜はアルブミンで初期処理することができるが、担体が透析流体に加えられることはなく、その代わりに大量の透析流体が供給される。
【0039】
本発明のさらに他の実施例で、アルブミンのような担体が大量の透析流体に加えられ、大きな膜が同じまたは別の担体で初期処理される。担体は例えばアルブミン血清である。アルブミン血製の濃度は10g/lを超えることが好ましい。本発明のこの実施例は、非常に強力に結合した物質が除去される場合、または結合物質と溶解物質との比率が異例に高い場合に有利である。
本発明のさらに他の実施例では、約4000ml/分の大流量の透析流体が約4000ml/分のkAを有する大きな膜と、約5g/lのアルブミン血清のような担体の濃度と組合わされる。この実施例は高価なアルブミンの濃度が制限され、透析処置の効果が許容レベルに保たれるので有利である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明を遂行する透析システムを模式的に示すブロック線図である。
【図2】透析器の代替配置を示すブロック線図である。
【図3】透析器の他の配置を示すブロック線図である。
【図4】本発明を遂行する代替透析システムを模式的に示すブロック線図である。
【図5】本発明を遂行するさらに他の透析システムを模式的に示すブロック線図である。
【図6】本発明を遂行するために事前希釈して血液透析するシステムを模式的に示すブロック線図である。
【実施例1】
【0041】
図1に本発明の第一の実施例が示されており、血液透析のための標準的なシステムに非常に似たシステムを示している。血液はポンプ10により患者から動脈血ライン11を経て大形透析器20の血液室21を通り、さらに血液ライン15を経て小型透析器30の血液室31へ送られる。その後、血液ライン17を経て患者へ戻される。透析器20,30のそれぞれの半透膜22,32はそれぞれの血液室21,31をそれぞれの透析液体室23,33から隔離している。
【0042】
半透膜22,32の孔寸法は、或る幾つかの例において数千ダルトンの寸法である除去すべき毒素の通過を許容させるのに十分な大きさに選ばれねばならない。一方この膜は、寸法が約66000ダルトンのアルブミンのような担体の通過を効果的に阻止する。これらの要求条件は、例えばポリスルホン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、アクリロニトリル重合体、ビニル・アルコール重合体、アクリレート重合体、メタクリレート重合材またはセルロース・アセテート重合体から作られた膜で満すことができる。
【0043】
透析流体の準備のために、透析処理に従来より使用されている清浄水プラントから得た清浄水が水入口50に導入され、この清浄水は二段階にて正確な組成となるように混合される。第一の段階では、濃縮液ポンプ60が塩化ソジウム、塩化ポタシウム、塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムの濃縮液を酢酸、塩酸またはクエン酸等の酸と一緒に容器61から濃縮液ライン62,63を経て主流体ライン51との合流点65へ導く。この混合液の電気伝導度が伝導セル66で測定される。測定され電気伝導度は制御ユニット(図示せず)に登録され、所定値と比較される。この制御ユニットは濃縮ポンプ60の速度を制御して、電気伝導度が所定値に保持される。
【0044】
第二の混合段階では、濃縮液ポンプ70がソジウム重炭酸塩の濃縮液を容器71から濃縮液ライン72,73を経て主流体ライン51との合流点75へ導く。この混合液の電気伝導度が伝導セル76で測定される。測定された電気伝導度は制御ユニット(図示せず)に登録され、所定値と比較される。この制御ユニットは濃縮液ポンプ70の速度を制御して、全体の電気伝導度が所定値に保持される。
【0045】
透析液体流の流れはさらに制限器80を通過し、その流量は主流体ラインのポンプ90で維持される。制限器80の作用は、透析器内の十分に低い透析液体圧力を可能にし、これにより血液側の圧力に拘わらずに半透膜22,32を通して限外濾過圧力によって血液から十分な量の流体が吸引されることができるようにすることである。流量は流量セル100で測定され、その測定値は制御ユニット(図示せず)に登録され、その制御ユニットが所望の流体流量を得るようにポンプ90の速度を制御する。
【0046】
この流れの主分屑は、その後、ライン110を通して導かれ、さらにバルブ150およびライン112,113を経て大形透析器20の透析液体室23へ直接に送られる。残りの分屑はライン111を通してヒーター120、調整可能な制限器130および流量計145を通して導かれる。ヒーター120は、図示していない温度センサーにより測定して40゜C未満の或る温度となるように流体を加熱する。この温度は透析器30をでる血液に適当な温度を与えるために選ばれる。調整可能な制限器130は、流量計145で測定して約500ml/分の流量だけがこの通路を流れること、またその流量は別の状況のもとで主流量が異なる値となってもこの部分の流量は同じ値を保てるように調整できることを保証するように設計されている。この流れの温度および組成が正しければ、三路バルブ140はその流れがライン114を通して引き続き小型透析器30の透析液体室33へ導かれるように設定することができる。透析器30を通った後、この流れは引き続きライン113を通して流れて主流分屑と合流し、全流量が大形透析器20を通り、引き続きライン115を流れる。
【0047】
透析流体が条件、例えば温度または組成を満たさないとき、または何らかの理由で透析器に透析流体が流れないことを望まれるならば、制御ユニットは流体がバイパス・ライン141,151を通して流れるようにそれぞれの三路バルブ140,150を設定し、ライン112,114はそれぞれ閉鎖される。透析流体の全量は、その後、透析器を通ることなくライン115へ導かれる。このことは、透析器内の全ての血液が正しい組成および温度ではない透析流体によって損害を与えられないことを保証する。
【0048】
その後、使用済み透析流体は第二の流量セル101へ導かれ、そこで流量が測定されて制御ユニットに登録される。流量セル100,101での登録された収集した流量の差が血液から限外濾過された容積流量の測定値とされる。制御ユニットは、使用済み透析流体の流量を制御するポンプ170の速度を制御することにより、この容積値を所望値となるように調整する。制限器180の作用は、血液側の圧力が高い場合に限外濾過を制限するために、透析液体室23,33内に正圧を作用させることである。透析流体中への少量の血液の漏れを検出するために図示するように血液漏洩検出器160が設計されている。この漏れが生じると、血液漏洩検出器は信号を制御ユニットに送り、透析流体が透析器をバイパスするように制御ユニットは三路バルブ140,150を作動させ、また血液ポンプ10が停止される。警報信号を発する等の他の作動も開始される。
【0049】
上述の説明には本発明に関係する部分のみ含まれている。幾つかの他の特徴がシステムの良好な作動に必要とされるが、それらの特徴は標準的な透析器で周知である。それらの周知の特徴には、これに限るわけではないが、透析器の前での透析流体の脱ガス処理、二重の安全性を得るための多数の基本パラメータの二重測定、透析流体のpH測定、残りの血液ラインから透析器を遮断することのできる血液ライン上のクランプ、および静脈血ライン17における空気検出を備えたドリップ室が含まれる。
【0050】
大部分において、このシステムは血液透析のための標準的なシステムとほとんど同じように設定され、制御される。小型透析器30は血液透析用の通常の濾過器とされ得るが、図1に示す大形透析器20は非常に大きい。除去すべき物質に応じて、8〜10cm以上の膜面積を有することができ、これによりkA値は4000ml/分以上となる。それらの担体に堅く結合した物質、すなわち大きなα値を有する物質に関しては、kA値は大きくされる必要がある。この上限は主として実際的および経済的な制約によって定まる。
【0051】
始動時には、血液ラインは生理的食塩水のような初期溶液を供給され、電気伝導度、ヒーターでの温度および透析流体流量に関する正しい設定を行う前に、制御ユニットは多数の安全テストを実施する。
【0052】
本発明によれば、透析流体の主流量は正常な血液透析の場合よりも大量とされねばならない。除去すべき物質に応じて主流量は2l/分以上、好ましくは5l/分以上とされねばならないが、これは実際的および経済的な条件で示される以外の上限はない。選ばれた主流量値は制御ユニットへ送られ、制御ユニットは流量セル100がこの値を測定するようにポンプ90を制御する。制限器130は、流量計145で示されるようなこの加熱された流量値が500ml/分に近づくように調整されねばならない。
【0053】
全てのテストが遂行され、全てのパラメータが正しい値に制御されると、血液が血液ライン11に導入され、三路バルブ140,150は透析流体が透析器20,30を通して流れるように設定される。透析は、要求された物質量が除去されるまで継続される。必要な時間は、透析のパラメータおよび結合比率αに応じて決まる。数百ml/分の高い浄化率を達成できる大きな血液流量が得られるならば、効率的な除去率であることから、30〜60分にてαが5〜10である物質の90%までも除去することが可能となる。これは深刻な中毒の場合に重要となる。他の例で結合比率αが非常に大きく、大血液流量が得られない場合、この処置は数時間から数日までも継続されねばならなくなる。
【実施例2】
【0054】
代替実施例で、透析器20は多数の小さな透析器で置き換えられ、それらの透析器はそれぞれが血液透析のための標準的な濾過器とされることができる。図2は並列な二つのアームを有する構成が示されており、各々のアームは血液側および透析流体側の両方に二つの透析器を直列に備えている。進入する血液ライン11は二つのラインに分けられ、その各々は二つの透析器が直列に配置されたアームにそれぞれ進入する。二つのアームから出た二つの血液ラインは、その後、血液ライン15で再び合流され、血液ライン15は小型透析器30へ導かれる。同様に、流体ライン113は二つのラインに分けられ、その各々は二つの透析器が直列に配置された二つのアームの一方にそれぞれ進入する。その後、使用済み透析流体の全てがライン115に集められる。
【0055】
いずれか複数の透析器、および直列または並列のいずれかの組合せの構成が可能である。この構成は血液側および透析流体側で同じである必要はない。例えば、図3に示すように三つの透析器の全てにおいて血液側は直列に配置される一方、透析流体側は並列に配置されることができる。直列構成では大きな圧力降下を生じる欠点があるのに対し、並列構成では流量が減少され、これは透析器の不十分な充満によって性能低下がもたらされる。したがって、図2に示されるような直列配置および並列配置の組合せが好ましい。
【実施例3】
【0056】
図4に示されたさらに他の実施例では、中央混合システムから使用に備えたシステムへ透析流体が導かれる。全ての透析流体は既にほぼ正しい温度にされているので、透析流体を低温部分と高温部分に分ける必要はなく、一つの大形透析器のみを使用することが可能である。図1と同様に、血液はポンプ10により動脈血ライン11を経て大形透析器20の血液室21を通り、さらに血液ライン17を経て戻される。戻される前の血液を加熱するために、任意であるが血液ヒーター18を血液ライン17に取付けることができる。このようなヒーターは、例えばヒーターの巻付けられた血液ラインの外面に熱を伝えることができ、また必要な血液の加熱の全てを実行する能力を有することができる。これは未加熱の透析流体を使用できるようにし、またヒーター85を省略することができる。透析器20の半透膜22は血液室21を透析液体室23から隔離している。
【0057】
流体は流体入口50から進入し、ライン51を通してヒーター85へ運ばれる。この流体はシステムに流入するときに既にほぼ所望の温度とされており、最終的な僅かな調整を必要とされる。その電気伝導度に反映される流体の組成は伝導セル76にてチェックされる。制限器80,ポンプ90および流量セル100の機能は、図1の場合と同じであり、すなわち適当な限外濾過が行われる透析流体室内の圧力を十分に低くできるようにし、また流量を測定して所望レベルに維持することを可能にすることである。
【0058】
この流れは、その後、正常状態のもとで三路バルブ140およびライン114を通して導かれ、流量計145を経て透析器20の透析液体室23へ送られ、透析液体室23からライン115を通して出る。透析器内の血液に望ましくない作用を及ぼす何等かの問題が生じた場合、制御ユニット(図示せず)は流体が透析器を通る代わりにライン141を通してバイパスするように三路バルブを設定する。
【0059】
その後、使用済み透析流体は第二の流量セル101へ導かれ、その流量セルにて流量が測定され、制御ユニットにより登録される。流量セル100,101での登録して蓄えられた流量の差が血液から限外濾過された容積の測定値となる。制御ユニットは、使用済み透析流体の流量を制御するポンプ170の速度を制御することでこの容積測定値を所望値となるように調整する。制限器180の作用は、血液側の圧力が高い場合に限外濾過を制限するために、透析液体室23内に正圧を作用させることである。透析流体中への少量の血液の漏れを検出するために図示するように血液漏洩検出器160が設計されている。この漏れが生じると、血液漏洩検出器は信号を制御ユニットに送り、透析流体が透析器をバイパスするように制御ユニットは三路バルブ140を作動させ、また血液ポンプ10が停止される。
【0060】
再び述べるが、上述の説明には本発明に解決する部分のみ含まれている。幾つかの他の特徴、例えば図1に関連して挙げられた特徴がシステムの良好な作動に必要とされるが、それらの特徴は標準的な透析器で周知である。上述した特徴の変種や組合せもまた可能である。図4に示したような一つの大形透析器に代えて、図2および図3に示されたような小型の標準的な透析器のさまざまな組合せを使用することができる。
【0061】
図4にも示された本発明の別の実施例において、上述したように同じ大流量の透析流体が使用されるが、透析器20の膜22は米国特許第5744042号に開示されているように、事前処理でアルブミンを被覆されている。透析流体流量は2l/分、好ましくは5l/分を超える量とされることが必要であり、血液流量の少なくとも10倍であるが、そのような被覆をされた膜では被覆面積はもはや大きくされる必要はない。膜の被覆はその濾過器が使用されるよりもかなり前に行われ、その後、適当な条件下で多数月にわたり保管することができる。他の方法は、ポリアミド膜またはポリスルホン膜のような、標準的な合成膜を使用する方法であり、この膜は処置の開始される直前に10g/lを超える濃度、または好ましくは40g/lを超える濃度、さらに好ましくは70g/lを超える濃度でアルブミンを含有する生理的食塩水で初期処理される。この初期処理は、システムのポンプによってその溶液を膜の一方または両方に沿って流すことで遂行される。
【0062】
図4の透析流体は中央の混合ステーションから導かれる。これに代えて、この実施例では図1に示されるように局部的に準備することもできる。
【実施例4】
【0063】
図5は、上述と同じ大きな表面積を有する透析器20が使用され、担体のアルブミンが透析流体に加えられた実施例を示している。アルブミンの濃度は10g/lを超え、好ましくは40g/lを超え、さらに好ましくは70g/lを超える。透析流体に対するアルブミンの添加は、蛋白質に結合した物質の移送能力を増大させ、これにより500〜1000ml/分の通常使用される流量を超えて流量を増大させる必要性をなくする。蛋白質に結合する作用に完全に対抗するためには通常使用されるよりも透析器20の膜面積を係数αで増大させるべきことが好ましい。実際には、これは実用的でないか達成するのに費用が掛かりすぎるので、小さな面積で十分とされねばならない。いずれにしても、膜が受入れることのできる移送能力を有するためには、kAは血液流量の少なくとも5倍、好ましくは血液流量の10倍、または2000ml/分を超える、好ましくは4000ml/分を超えることを必要とされる。
【0064】
アルブミンの消費量を最少限に抑えるために、アルブミン粥の透析流体は図5に示される実施例では閉ループを循環される。血液ポンプ10は患者から血液を透析器20の血液室21へ導き、その血液はライン17および任意であるが血液ヒーター18を経て患者へ戻される。
【0065】
アルブミン含有の透析流体はポンプ170によって透析液体室23を通して循環される。血液漏洩検出器160および気泡分離器190もライン115に配置されている。透析流体はさらに通常の形式の第二の透析器30の血液室31を通過される。その透析液体室33を通常の透析器200に連結することで、この透析器は水や、透析流体に溶解している尿素やクレアチニンのような老廃物を除去する。透析流体は、その後、透析器20に戻される前に二つの吸着塔210,220を通過される。
【0066】
吸着塔210,220は、透析流体中のアルブミンに結合した蛋白質結合物質に強い親和力を有する材料を収容している。したがってそれらの物質は塔内に捕捉される。また透析流体中のアルブミンは再び透析器20内で新たな分子に対する担体として作用できるように解放される。吸着塔210,220は、例えばガンブロAB社から入手できるアドソーバ300C(登録商標)またはアサヒ社から入手できるN350(登録商標)のような活炭吸着塔、および(または)アサヒ社から入手できるBR350(登録商標)のような陰イオン交換塔とされる。必要とされる塔の個数および形式は除去すべき物質(単数または複数)によって決まる。
【0067】
完全に溶解している老廃物や水の除去が全く必要ない例えば中毒の場合、すなわち蛋白質に結合した物質のみ除去することが必要とされる場合には、透析器30および透析器200は不要であり、取外すことができる。また、吸着塔210,220は、除去すべき蛋白質結合物質の全量を担持するために十分な量のアルブミンが透析ループに存在するならば、取外すことができる。さまざまな構成がこの実施例の範囲内で考えられる。
【0068】
図5に示された実施例の代替例は、例えばアルブミンのような担体で被覆された図4に開示したのと同じ形式の大面積透析器20を含む。
【実施例5】
【0069】
図6に示される実施例は、事前希釈して血液濾過することで本発明を遂行するようになされており、血液および透析流体が並流形式、すなわち血液と透析流体とが透析器内を同方向に流れる構造で遂行される。図4と同様に、血液はポンプ10により動脈血ライン11を経て大形透析器20の血液室21を通り、その後血液ライン17を経て戻される。この戻される前の血液を加熱するように、血液ヒーター18を血液ライン17に取付けることができる。
【0070】
透析流体は入口50からシステムへ進入し、流量セル100からでる迄は図1と全く同じ方法で処理される。この流れは、その後、正常状態のもとでは三路バルブ140およびライン122を通して限外濾過器40の室43へ導かれる。透析器内の血液に望ましくない作用をもたらす何等かの問題が生じた場合には、限外濾過器を通して流すことに代えてライン141に流体を通してバイパスさせるように制御ユニット(図示せず)が三路バルブを設定する。
【0071】
ポンプ135は制御ユニット(図示せず)により調整され、要求される正確な流量の透析液流体を限外濾過器の室41からライン124を通して合流点12へ導き、そこで透析流体と血液とが透析器20に進入する前に混合される。全ての未使用透析流体はライン123を通して室43を出る。この流体は透析器20の室23からの限外濾液と一緒にされ、ライン115、流量セル101、血液漏洩検出器160および制限器180を通してポンプによって流される。このシステムのこの部分の制御は図1の場合と同じである。
【0072】
上述した図示実施例は、本発明がいかに遂行されるかを示す単なる例であり、システムの大部分または小部分に関する他の実施例も可能である。必要な大量の透析流体は、例えば大量の図1の容器70,71に供給された電解質濃縮液を必要とする。これらの大量の液体の取扱いは、一種以上の電解質が米国特許第4784495号に示唆されているように乾燥状態で供給されるならば大いに簡単化できる。また、限外濾過の制御については、ポンプ170および流量セル100,101の使用を、米国特許第4267040号等に記載されているように均衡室および別個の限外濾過用ポンプを備えたシステムで置換することができる。図4では、戻される前の血液がライン17に直接に取付けられた血液温め器で加熱されるならば、透析流体を事前加熱する必要はなく、ヒーター85は不要である。この原理は勿論のこと、透析流体が図1に示されるように機械内で事前加熱されるならば適用することができる。したがって、流体を加熱部分および非加熱部分に分ける必要はなくなる。図6では、血液の加熱のためのヒーター18に代えて、例えば図4におけるように中央で事前加熱された透析流体、図2および図3に似た幾つかの小型透析器、または最終透析器を使用することも可能となる。
【0073】
本明細書は、次の発明も開示する。
1. 血液回路と、流体回路と、流体室を血液室から隔離する半透膜を有する濾過器とを含み、血液および浄化流体を混合し、前記混合液を血液室に通して導くための手段と、流体室への限外濾過が生じるように膜を隔てて圧力勾配を与える手段とを備え、流体室は浄化流体流量と患者の望ましい重量減との合計に寸法が等しく構成され、血液から一部が担体に結合した物質を除去するための装置であって、
濾過器の水透過係数LAが少なくとも10ml/分/mmHgであり、
浄化流体流量が少なくとも1000ml/分であり、
浄化流体流量と血液流量との間の比率が少なくとも5であることを特徴とする装置。
2. 濾過器が直列または並列、またはその組合せで配置された幾つかの濾過器によって置き換えられた前記1項又は特許請求の範囲の請求項1から11までのいずれか一項に記載された装置。
3. 血液が患者に戻される前に血液を加熱するためにヒーターが配置された前記1項又は2項、又は特許請求の範囲の請求項1から11までのいずれか一項に記載された装置。
4. 血液が患者に戻される前の血液の通路に沿う最終の透析器がヒーターである前記3項に記載された装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液回路と、流体回路と、流体室を血液室から隔離する半透膜を有する濾過器とを含み、血液は血液室を通して導かれ、浄化流体は流体室を通して導かれるように構成され、血液から一部が担体に結合した物質を除去するための装置であって、
前記血液から前記各担体に結合した物質を除去するための濾過器の物質移動係数kAが少なくとも2000ml/分であり、
濾過器の物質移動係数kAと血液流量との間の比率が少なくとも5であり、
浄化流体流量が少なくとも2000ml/分であり、
浄化流体流量と血液流量との間の比率が少なくとも5であることを特徴とする装置。
【請求項2】
濾過器の物質移動係数kAと血液流量との間の比率が少なくとも10であり、
浄化流体流量と血液流量との間の比率が少なくとも10である請求項1に記載された装置。
【請求項3】
濾過器の物質移動係数kAが少なくとも5000ml/分であり、
浄化流体流量が少なくとも5000ml/分である請求項1または請求項2に記載された装置。
【請求項4】
血液の流量Qbと、血漿中に溶解した分屑に関する除去すべき物質の全量を表す係数αとの積に関してパラメータが選ばれ、
濾過器の物質移動係数kAがこの積の値の少なくとも10%であり、
浄化流体流量がこの積の値の少なくとも10%である請求項1、請求項2または請求項3に記載された装置。
【請求項5】
濾過器の物質移動係数kAがこの積の値の少なくとも100%であり、および(または)
浄化流体流量がこの積の値の少なくとも100%である請求項4に記載された装置。
【請求項6】
血液回路と、流体回路と、流体室を血液室から隔離する半透膜を有する濾過器とを含み、血液が血液室を通して導かれ、浄化流体が流体室を通して導かれるように構成され、血液から一部が担体に結合した物質を除去するための装置であって、
前記血液から前記各担体に結合した物質を除去するための濾過器の物質移動係数kAが少なくとも2000ml/分であり、
濾過器の物質移動係数kAと血液流量との間の比率が少なくとも5であり、
一部が担体に結合している血液中の物質に結合することのできる担体を浄化流体が含んでいることを特徴とする装置。
【請求項7】
血液回路と、流体回路と、流体室を血液室から隔離する半透膜を有する濾過器とを含み、血液が血液室を通して導かれ、浄化流体が流体室を通して導かれるように構成され、血液から一部が担体に結合した物質を除去するための装置であって、
一部が担体に結合している血液中の物質に結合することのできる担体を含む流体によって膜が事前処理されており、
浄化流体流量が少なくとも2000ml/分であり、
浄化流体流量と血液流量との間の比率が少なくとも10であることを特徴とする装置。
【請求項8】
一部が担体に結合している血液中の物質に結合することのできる担体を含む流体で膜が事前処理されている請求項6に記載された装置。
【請求項9】
一部が担体に結合している血液中の物質に結合することのできる担体を浄化流体が含んでいる請求項7に記載された装置。
【請求項10】
担体がアルブミン血清である請求項6、請求項7、請求項8または請求項9に記載された装置。
【請求項11】
アルブミン血清の濃度が10g/lを超える請求項10に記載された装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−42272(P2010−42272A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231605(P2009−231605)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【分割の表示】特願2003−577978(P2003−577978)の分割
【原出願日】平成15年3月25日(2003.3.25)
【出願人】(500583139)
【Fターム(参考)】