説明

一部に金属光沢印刷を施された印刷物

【課題】金属光沢形成面を他の印刷面と異なるレベルに形成して、印刷後における取扱い時に他のものと擦れ合わないようにして、装飾性を損なわない一部に金属光沢印刷を施された印刷物を提供する。
【解決手段】印刷面の一部に金属光沢部分6を表示する板紙のオフセット印刷物において、前記金属光沢部分6をオーバーコートすることなく凹面に形成する。こうすることで、その金属光沢面を保護して擦過傷の発生を防ぎ、金属光沢を顕示して装飾性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一部に金属光沢面を印刷された印刷物に関するものであって、詳しくはその金属光沢面にオーバーコートすることなく取扱いを容易にした印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製のものを除く包装容器その他物品において、その表面に金属的な光沢を顕示させて装飾性を高めるには、アルミニウム粉末を含有した印刷インクを使用して印刷されることが知られている(例えば特許文献1参照)。この場合、アルミニウム粉末を含有して無色の印刷インクでもって印刷された印刷面は、いわゆる銀色を呈することになる。通常、このアルミニウム粉末含有の印刷インクは、印刷インクに主として鱗片状のアルミニウム粉を混入したものが多く使用されており、そのアルミニウム粉の混入量の多少によって金属光沢の色調が異なるものである。
【0003】
【特許文献1】特願平11−78204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、オフセット印刷などによりアルミニウム粉末含有印刷インクを用いて部分的に金属光沢を表現させる印刷物にあっては、その金属光沢を保持している部分が印刷物の状態にもよるが、通常の印刷インクにより印刷された部分に較べて金属光沢部分が他の物と擦れ合うと擦過傷を発生し、商品価値が低下するという問題点がある。つまり、アルミニウム粉末含有印刷インクによって印刷された部分の表面にはインクに含まれるアルミニウム粉が浮き上がった状態で付着していることになるので、微視的に表面が激しく凹凸に現れることから異物によって擦られるとアルミニウム粉体が剥がれたり変位して偏光し、擦過部分が黒くなって違和感を与えることになる。
【0005】
このような現象を回避する対策としては、金属光沢面の擦過傷の発生を予防するために、その表面にクリア層をオーバーコートして印刷された金属光沢表面のアルミニウム粉体が直接他の物体と接触しないようにする。ところが、このようなオーバーコート層を形成すると、どうしても金属色が減退して装飾性が低下するという問題がある。また、含有させるアルミニウム粉末の量を減らして印刷後の表面への粉体の露出を抑えるようにすると、金属色の顕示能力が減退して装飾性が低下することになり、好ましくない。
【0006】
そのために、装飾性を重視して前述のようにアルミニウム粉含有印刷インクによる印刷面(金属光沢形成面)がそのまま露出する状態にしていると、例えば印刷工程で、順次刷り上った印刷シートを重ね合わせる際に当該印刷面が擦られると、前述のような擦り傷が発生し易い。また、印刷されたシートを加工して例えば包装容器を形成するような場合や、得られた包装容器の製品に商品を包装して消費者の手に渡るまでの間での流通段階で取扱い中に、他の物体などと擦れ合うと金属光沢形成面に擦り傷が発生して商品価値を低下させることが避けられないという問題点がある。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、金属光沢形成面を他の印刷面と異なるように高低差を形成して、印刷後における取扱い時に他のものと擦れ合わないようにして、装飾性を損なわない一部に金属光沢印刷を施された印刷物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明による一部に金属光沢印刷を施された印刷物は、
印刷面の一部に金属光沢部分を表示する板紙のオフセット印刷物において、前記金属光沢部分を凹面に形成することを特徴とするものである(第1発明)。
【0009】
前記発明において、前記金属光沢部分は、その周縁部が透明皮膜層で被覆形成されているのがよい(第2発明)。
【0010】
また、前記発明において、前記金属光沢部分は、印刷物の加工によって立体形状の端縁まで延長されており、その金属光沢印刷部分端縁部が透明皮膜層で被覆形成されているのがよい(第3発明)。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、印刷面の一部に印刷される金属光沢部分が、隣接する他の印刷面より凹面に形成されることにより、印刷後におけるこの印刷物を取扱う際、例えば印刷物同士を重ねたり横移動させるときに、その金属光沢部分が印刷面全般に対して凹面になっているので擦れ合うことが回避される。したがって、擦過されなくなって金属光沢面が傷付くのを防止することができる。その結果、擦過傷の発生を回避できるので、金属光沢形成面にオーバーコートすることなく金属的な顕示部分を設けることができ、装飾性の高い印刷物が得られるという効果を奏するのである。
【0012】
また、前記発明において、印刷面の一部に金属光沢部分を設けるに際し、その周縁部を透明皮膜層で被覆することにより、金属光沢部分の端縁が擦れて剥がれることが予防でき、装飾性を維持できる。特に、この金属光沢部分を印刷されたシートを用いて包装容器などを形成する場合、その容器の折り曲げ縁に金属光沢部分が位置すると、取扱い時に擦れる頻度が高くなるが、当該端縁部分となる箇所に透明皮膜層を形成しておけば、金属粉末含有インク層を擦れに対して保護できて商品価値が低下するのを予防できる。
【0013】
なお、本発明における印刷物を構成する板紙については、板紙ならびに化粧ダンボール紙を含んで総称するものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明による一部に金属光沢印刷を施された印刷物の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、この実施形態としては、表面に印刷を施されてなる袋状の容器について説明する。
【0015】
図1には本実施形態の袋状容器の全体斜視図が示され、図2には図1におけるA部の拡大断面図が、図3には図1におけるB−B視拡大断面図が、図4には容器の加工前の印刷シートの一部を表わす図が、それぞれ示されている。
【0016】
この実施形態の袋状容器1(印刷物。以下、説明の都合上単に容器1という)は、板紙を用いて形成されている。この容器1は、所定サイズにカットされた用紙(商品)を包装するものであって、その用紙が収容(包装)できる縦長の寸法に形成された本体部2と、その縦長方向に一辺(上方)に設けられる開口部を閉じるための蓋片3とで形成されている。また、本体部2はマチを備えず閉じ合わせた形状になっている。なお、前記蓋片3は、本体部2内に商品を収容後密封できて商品取り出し後に蓋を閉じて保管容易なようにする機能を備えている。そのために、前記蓋片3には包装後の開封用ジッパ4が設けられている。図中符号3′は開封後の切捨て部分、7は吊り掛け孔である。
【0017】
前記容器1は、表裏両面に印刷5が施されており、本体部2の表面の一部に金属光沢の印刷部分(金属光沢部分6)が付されている。その金属光沢部分6を含めて表面および裏面には商品に関連する文字・商標(図示省略)や商品をアピールする図柄もしくは画像が印刷され、全体で装飾性を高めるデザインが施されている。そして、この容器1の表裏両面に施された印刷は、オフセット印刷によって施されている。
【0018】
前記金属光沢部分6は、容器1の幅方向の全幅にわたって所要のデザインで設けられており、金属粉末(例えばアルミニウム粉末)含有印刷インクによって印刷されている。そして、金属光沢部分6は、そのデザインに合わせて周縁部6aを取り囲んで隣接部分5aよりやや低い凹面に形成されている。なお、その凹面部分(金属光沢部分6)は他の外面より例えば0.1〜0.2mmの段差となるように形成されている。
【0019】
この金属光沢部分6は、図2に例示されるように、前記金属粉末含有印刷インクによる金属光沢層10を、容器1を構成する板紙(例えば化粧シート)11の表面に塗着形成され、他の印刷インクによる層12との境界部分で透明皮膜層13が適宜幅で金属光沢層10の上側に積層されている。また、本体部2の両端縁2′,2′となる部分では、表面側に前記境界部分(金属光沢部分6の周縁部6a)より広い幅、例えば5mm幅程度で透明皮膜層13が積層されている。
【0020】
このように形成される金属光沢部分6を一部に印刷された容器1は、その製作に際して所要寸法の板紙にてなる材料シート11(例えば、化粧シート)を使用して、容器1の展開状態でオフセット印刷機にかけて印刷される。なお、このオフセット印刷については、公知の手段によって製版どおりに印刷される。また、前記金属粉末含有印刷インクとしては、その金属光沢部分6の色調に応じてアルミニウム粉末含有印刷インクが用いられ、銀色を呈する印刷面にされる。例えば金色を呈する金属光沢面に仕上げる場合は、含有顔料としてブロンズ粉を用いたインクあるいは染料もしくは顔料で着色されたアルミニウム粉を含有した印刷インクが使用される。
【0021】
こうした金属粉末含有印刷インクによって印刷された金属光沢部分6は、図4に示されるようにオフセット印刷されたシートSを、容器1に加工する打抜き工程で、打抜き型(図示せず。以下同様)によって前記印刷済みのシートSを打抜きと同時に、その打抜き型に付設されている押し型により金属光沢部分6を押圧して凹面に形成される。この打抜き工程では外形が打抜き刃で打抜き形成される(切り抜き外形線cで表わす)とともに、折り曲げ部分には折目線d〜f′(二点鎖線で示す)が形成される。
【0022】
打抜き工程で得られた容器1のブランクは、次の製袋工程で本体部2の表面と裏面との連接部の折目線fおよび表裏両面を袋状に閉じ合せるための両側糊代部分8,8の折目線e,eとでそれぞれの部位が折り曲げられ、前記糊代部分8,8に糊付けされて表裏両面が袋状に形成される。
【0023】
前述の加工工程では、前記金属光沢部分6が他の印刷部分5よりも表面を低く形成されているので、移動する際加工機の搬送面などに直接接触せず、擦り傷が発生することなく加工することができる。また、金属光沢面(金属光沢部分6)は、製袋後に輸送のために積み重ねられるときにも製品(容器1)同士が擦れ合うことがあっても、凹面にされているので擦り傷の発生を予防することができる。
【0024】
こうして得られた容器1は、収容物を内部に収めて包装後、製品として流通に供して消費者の手元にわたるまで、前述のように金属光沢部分6が擦れ合うことなく取扱うことができるので、表面に施された金属光沢がオーバーコートしなくとも保護され、他の印刷面に表示されている意匠と相俟って装飾効果を高め得ることができるのである。
【0025】
また、この実施形態の容器1では、前記金属光沢部分6が本体部2の両端縁部分2′,2′まで設けられている。したがって、その本体部2の端縁2′では金属光沢形成面(金属光沢部分6)が折り曲げられているが、当該部分では金属光沢部分6に対して透明皮膜層13を形成されているので、折り曲げ操作時並びのその後の他物との接触があっても、その透明皮膜層13によってインクに含有される金属粉末が覆われるので、外力によって剥がれることがなく、金属色を保持される(図3参照)。また、この透明皮膜層13による保護部分は、極僅かな部分に留められているので、金属光沢部分6の有する光沢色を損なうことはない。
【0026】
また、前記金属光沢部分6は、その周縁部6aに沿って透明皮膜層13で覆うようにすることで、前述のブランクの打抜き成形時に行われる金属光沢部分6を凹面に押圧加工する際、材料シート11に金属粉末含有印刷インクで印刷されたその金属光沢部分6が剥がれるのを防止して印刷面を損なうことなく加工できる。また、製品化後において外力により金属光沢面の金属粉粒の剥がれを誘引することが防止でき、装飾性を阻害することがない。
【0027】
以上の実施形態では、袋状容器について記載したが、箱形構造の包装容器(図示省略)の表面に同様にして金属光沢部分を設けた場合にあっても、前述のようにその金属光沢部分を凹面にしておけば、前記同様の効果を奏する。
【0028】
また、図5に他の実施形態の要部を表わす拡大断面図で示されるように、金属光沢部分6のエリアの中に通常の印刷部分5Aが島状に介在するような場合、その通常の印刷部分5A(島状の部分)は凹面にせず、金属光沢部分6のみを凹面とするようにしてもよい。このように形成する場合は、容器1のブランク形成時(打抜き加工時)にその凹面形成用の押し型を金属光沢部分5のみ凸状にしたものが用いられる。また、前述の金属光沢部分6のエリアの中に島状の他の条件の部分、例えばその島状の部分を異なる金属光沢で顕示させる場合、当該島状部分は透明皮膜層で覆うようにしておくのが好ましい。こうすれば、その島状部分が他物と触れたり外力を受けて擦られることがあっても支障を来たすことはない。また、このような押圧加工を併用させると、前記島状部分が立体的に顕示されて意匠効果を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
このように、本発明の趣旨に則すれば、金属光沢を有効に顕示する印刷面を備える各種容器に適応させて装飾性を高めた包装容器を提供することができる。もちろん、平版的な物品においても、板紙や複合シート材(例えば化粧面を有するダンボールシート)をもちいて作成される印刷物に適応して効果的であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本実施形態の袋状容器の全体斜視図
【図2】図1におけるA部の拡大断面図
【図3】図1におけるB−B視拡大断面図
【図4】容器の加工前の印刷シートの一部を表わす図
【図5】他の実施形態の要部を表わす拡大断面図
【符号の説明】
【0031】
1 容器(印刷物)
2 本体部
5 他の印刷部分(通常印刷部分)
6 金属光沢部分
6a 金属光沢部分の周縁部
10 金属光沢層
11 材料シート(板紙)
12 他の印刷インクによる層
13 透明皮膜層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷面の一部に金属光沢部分を表示する板紙のオフセット印刷物において、前記金属光沢部分を凹面に形成することを特徴とする一部に金属光沢印刷を施された印刷物。
【請求項2】
前記金属光沢部分は、その周縁部が透明皮膜層で被覆形成されている請求項1に記載の一部に金属光沢印刷を施された印刷物。
【請求項3】
前記金属光沢部分は、印刷物の加工によって立体形状の端縁まで延長されており、その金属光沢印刷部分端縁部が透明皮膜層で被覆形成されている請求項1に記載の一部に金属光沢印刷を施された印刷物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate