説明

一酸化珪素微粒子の製造方法および一酸化珪素微粒子

【課題】二酸化珪素を原料に用いたナノサイズの一酸化珪素微粒子を製造する方法およびこの製造方法により得られた一酸化珪素微粒子を提供する。
【解決手段】本発明の一酸化珪素微粒子の製造方法は、二酸化珪素の粉末を、炭素を含む液体状の物質に分散させ、さらに水を添加してスラリーにし、このスラリーを液滴化させて酸素を含まない熱プラズマ炎中に供給して、一酸化珪素微粒子を得るものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノサイズの一酸化珪素(SiO)微粒子およびその製造方法に関し、特に、二酸化珪素(SiO)を原料に用いたナノサイズの一酸化珪素微粒子を製造する方法およびこの製造方法により得られた一酸化珪素微粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、食品包装,液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、太陽電池等に利用されるガスバリアフィルムのガスバリア膜に酸化珪素が用いられている。また、一酸化珪素は、リチウムイオン電池の負極材として用いることも検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、一酸化珪素粉末の製造方法が開示されている。この文献では、平均粒子径が1μm以下の二酸化珪素粉末と平均粒子径が30μm以下の金属珪素粉末の混合原料粉末を、不活性ガスまたは減圧下で1100〜1450℃に加熱し、一酸化珪素ガスを発生させ、この一酸化珪素ガスを基体表面に析出させて一酸化珪素粉末を製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−290890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、現在、酸化物微粒子、窒化物微粒子、炭化物微粒子等は、半導体基板、プリント基板、各種電気絶縁部品などの電気絶縁材料、切削工具、ダイス、軸受などの高硬度高精度の機械工作材料、粒界コンデンサ、湿度センサなどの機能性材料、精密焼結成形材料などの焼結体の製造、エンジンバルブなどの高温耐摩耗性が要求される材料などの溶射部品製造、さらには燃料電池の電極、電解質材料および各種触媒などの分野で用いられている。上述の微粒子のように、一酸化珪素も微粒子として、種々の用途に利用されることが望まれている。
しかしながら、特許文献1に記載されている一酸化珪素粉末の製造方法には、得られる粉末の大きさについては具体的に開示されておらず、一酸化珪素の微粒子の具体的な製造方法が知られていないのが現状である。
【0006】
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、二酸化珪素を原料に用いたナノサイズの一酸化珪素微粒子を製造する方法およびこの製造方法により得られた一酸化珪素微粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、二酸化珪素を用いて一酸化珪素微粒子を製造する製造方法であって、前記二酸化珪素の粉末を、炭素を含む液体状の物質に分散させ、さらに水を添加してスラリーにし、該スラリーを液滴化させて酸素を含まない熱プラズマ炎中に供給することを特徴とする一酸化珪素微粒子の製造方法を提供するものである。
【0008】
この場合、前記二酸化珪素の粉末の量は、前記二酸化珪素の粉末と前記炭素を含む液体状の物質の総量に対して10〜65質量%であり、前記炭素を含む液体状の物質の量は、前記二酸化珪素の粉末と前記炭素を含む液体状の物質の総量に対して90〜35質量%であり、前記水の量は、前記二酸化珪素の粉末と前記炭素を含む液体状の物質の総量に対して10〜40質量%であることが好ましい。
また、例えば、前記炭素を含む液体状の物質として、アルコール、ケトン、ケロシン、オクタンまたはガソリンが挙げられる。
さらに、前記熱プラズマ炎は、水素、ヘリウムおよびアルゴンの少なくとも1つのガスに由来するものであることが好ましい。
【0009】
また、本発明の第2の態様は、二酸化珪素の粉末を、炭素を含む液体状の物質に分散させ、さらに水を添加してスラリーにし、該スラリーを液滴化させて酸素を含まない熱プラズマ炎中に供給して生成されたことを特徴とする一酸化珪素微粒子を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、二酸化珪素を原料として、ナノサイズの一酸化珪素微粒子を容易に、しかも高い生産性で製造することができる。
ナノサイズの一酸化珪素微粒子は、例えば、リチウムイオン電池の負極材として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る一酸化珪素微粒子の製造方法を実施するための微粒子製造装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】図1中のプラズマトーチ付近を拡大して示す断面図である。
【図3】図1中のチャンバの天板およびこの天板に備えられた気体射出口付近を拡大して示す断面図である。
【図4】図1中のサイクロンを拡大して示す断面図である。
【図5】射出される気体の角度を示す説明図であり、(a)はチャンバの天板の中心軸を通る垂直方向の断面図であり、(b)は天板を下方から見た下面図である。
【図6】本発明の実施例で得られた微粒子、および比較のための一酸化珪素のX線回折法による結晶構造の解析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の一酸化珪素微粒子の製造方法および一酸化珪素微粒子を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る一酸化珪素微粒子の製造方法を実施するための微粒子製造装置の全体構成を示す模式図である。図2は、図1中に示したプラズマトーチ12付近の部分拡大図である。図3は、図1中に示したチャンバ16の天板17、およびこの天板17に備えられた気体射出口28aおよび気体射出口28b付近を拡大して示す断面図である。また、図4は、サイクロン19を拡大して示す断面図である。
【0013】
図1に示す微粒子製造装置10は、熱プラズマを発生させるプラズマトーチ12と、二酸化珪素の粉末を後述するように、スラリー状にしてプラズマトーチ12内へ供給する材料供給装置14と、微粒子(1次微粒子)15を生成させるための冷却槽としての機能を有するチャンバ16と、生成された1次微粒子15から任意に規定された粒径以上の粒径を有する粗大粒子を除去するサイクロン19と、サイクロン19により分級された所望の粒径を有する一酸化珪素微粒子(2次微粒子)18を回収する回収部20とを含んで構成される。
【0014】
本実施形態においては、二酸化珪素の粉末(以下、二酸化珪素原料ともいう)を、炭素を含む液体状の物質(以下、分散媒ともいう)に分散させて、更に水を加えてスラリー状にしたスラリーを用いて、微粒子製造装置10によりナノサイズの一酸化珪素微粒子が製造される。
【0015】
図2に示すプラズマトーチ12は、石英管12aと、その外側を取り巻く高周波発振用コイル12bとで構成されている。プラズマトーチ12の上部には、後述するように、スラリー14aの供給管14fがその中央部に設けられており、プラズマガス供給口12cがその周辺部(同一円周上)に形成されている。
【0016】
プラズマガスは、プラズマガス供給源22からプラズマガス供給口12c(図2参照)へ送り込まれる。
本実施形態においては、後述する熱プラズマ炎24中で、炭素を含む液体状の物質(分散媒)を燃焼させることなく分解して炭素を発生させるために、プラズマガスには酸素を含まないものを用いる。このプラズマガスとしては、例えば、水素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。プラズマガスは、単体に限定されるものではなく、水素とアルゴン、ヘリウムとアルゴンのように、これらプラズマガスを組み合わせて使用してもよい。
【0017】
プラズマガス供給源22には、例えば、水素とアルゴンの2種類のプラズマガスが準備されている。プラズマガスは、プラズマガス供給源22から、図2に示すリング状のプラズマガス供給口12cを介して、矢印Pで示されるようにプラズマトーチ12内に送り込まれる。そして、高周波発振用コイル12bに高周波電圧が印加されて、酸素を含まない熱プラズマ炎24が発生する。
【0018】
なお、石英管12aの外側は、同心円状に形成された管(図示されていない)で囲まれており、この管と石英管12aとの間に冷却水を循環させて石英管12aを水冷し、プラズマトーチ12内で発生した熱プラズマ炎24により石英管12aが高温になりすぎるのを防止している。
【0019】
図1に示すように、材料供給装置14は、管26と供給管14fを介してプラズマトーチ12の上部に接続され、二酸化珪素原料を炭素を含む液体状の物質に混ぜ、更に水を加えて調製されたスラリー14aを材料供給装置14からプラズマトーチ12内へ均一に供給する。
【0020】
材料供給装置14は、スラリー14aを入れる容器14bと、容器14b中のスラリー14aを攪拌する攪拌機14cと、供給管14fを介してスラリー14aに高圧をかけプラズマトーチ12内に供給するためのポンプ14dと、スラリー14aをプラズマトーチ12内へ噴霧するための噴霧ガスを供給する噴霧ガス供給源14eと、スラリー14aを液滴化しプラズマトーチ12内部に供給する供給管14fを含み構成されている。
【0021】
押し出し圧力をかけられた噴霧ガスが、噴霧ガス供給源14eからスラリー14aと共に、図2中に矢印Gで示されるように供給管14fを介してプラズマトーチ12内の熱プラズマ炎24中へ供給される。供給管14fは、スラリーをプラズマトーチ内の熱プラズマ炎24中に噴霧し液滴化するための二流体ノズル機構を有しており、これにより、スラリー14aをプラズマトーチ12内の熱プラズマ炎24中に噴霧する、すなわち、スラリー14aを液滴化させることができる。噴霧ガスには、例えば、アルゴン、ヘリウム、水素等が単独または適宜組み合わせて用いられる。なお、噴霧ガスは、必ずしも供給しなくてもよい。
【0022】
このように、二流体ノズル機構は、スラリーに高圧をかけ、気体である噴霧ガスによりスラリーを噴霧することができ、スラリーを液滴化させるための一つの方法として用いられる。例えば、ノズルに内径1mmのものを用いた場合、供給圧力を0.2〜0.3MPaとして毎分20ミリリットルでスラリーを流し、毎分10〜20リットルで噴霧ガスを噴霧すると、約5〜10μm程度の液滴が得られる。
【0023】
なお、本実施形態では二流体ノズル機構を用いたが、一流体ノズル機構を用いてもよい。さらに他の方法として、例えば、回転している円板上にスラリーを一定速度で落下させて遠心力により液滴化する方法、スラリー表面に高い電圧を印加して液滴化する方法等が考えられる。
【0024】
一方、図1に示したように、チャンバ16がプラズマトーチ12の下方に隣接して設けられている。プラズマトーチ12内の熱プラズマ炎24中に噴霧されたスラリー14a中の分散媒が熱プラズマ炎24で、燃焼することなく分解されて発生した炭素により、二酸化珪素原料が一部還元されて一酸化珪素となり、その直後に、この一酸化珪素がチャンバ16内で急冷され、1次微粒子(一酸化珪素微粒子)15が生成される。このように、チャンバ16は冷却槽としての機能を有する。
【0025】
また、ここでは、一酸化珪素微粒子をより一層効率的に製造する方法の一つとして、生成された一酸化珪素微粒子を急冷するための気体供給装置28を備えている。以下、この気体供給装置28について説明する。
【0026】
図1、図3に示す気体供給装置28は、熱プラズマ炎24の尾部(プラズマガス供給口12cと反対側の熱プラズマ炎の端、つまり、熱プラズマ炎の終端部)に向かって、所定の角度で気体を射出する気体射出口28aと、チャンバ16の側壁に沿って上方から下方に向かって気体を射出する気体射出口28bと、チャンバ16内に供給する気体に押し出し圧力をかけるコンプレッサ28cと、チャンバ16内に供給する上記気体の供給源28dと、それらを接続する管28eとから構成されている。なお、コンプレッサ28cは、ブロアでもよい。
【0027】
なお、上記気体射出口28aから射出する気体は、後に詳述するように、チャンバ16内で生成される1次微粒子15を急冷する作用以外にも、気体射出口28bから射出する気体とともに、サイクロン19における1次微粒子15の分級に寄与する等の付加的作用を有するものである。
上述のコンプレッサ28cと気体供給源28dは、管28eを介してチャンバ16の天板17に接続されている。
【0028】
ここで、上記気体射出口28bは、気体供給装置28の外側部天板部品17b内に形成されたスリットであり、生成された1次微粒子15がチャンバ16の内壁部に付着するのを防止するとともに、1次微粒子15を下流のサイクロン19で任意の分級点で分級できる流速を与えられる量の気体を射出できることが好ましい。上記気体射出口28bからは、チャンバ16の内壁に沿って上方から下方に向かって気体が射出される。
【0029】
気体供給源28d(図1および図3参照)から矢印Sに示されるように管28eを介して天板17(詳しくは、外側部天板部品17bおよび上部外側部天板部品17c)内に供給された気体は、ここに設けられた通気路を介して気体射出口28bから(後述するように、気体射出口28aからも)射出される。
【0030】
材料供給装置14からプラズマトーチ12内に射出された(液滴化された)スラリーは、熱プラズマ炎24中で、後述するように、燃焼することなく二酸化珪素原料が一部還元されて一酸化珪素となる。そして、この一酸化珪素は、上記気体射出口28aから射出される(矢印Q参照)気体によりチャンバ16内で急冷され、一酸化珪素からなる1次微粒子15が生成される。この際、気体射出口28bから射出される(矢印R参照)気体により、1次微粒子15がチャンバ16の内壁に付着することが防止される。
【0031】
図1に示すように、チャンバ16の側方下部には、生成された1次微粒子15を所望の粒径で分級するためのサイクロン19が設けられている。このサイクロン19は、図4に示すように、チャンバ16から1次微粒子15を供給する入口管19aと、この入口管19aと接続され、サイクロン19の上部に位置する円筒形状の外筒19bと、この外筒19b下部から下側に向かって連続し、かつ、径が漸減する円錐台部19cと、この円錐台部19c下側に接続され、上述の所望の粒径以上の粒径を有する粗大粒子を回収する粗大粒子回収チャンバ19dと、後に詳述する回収部20に接続され、外筒19bに突設される内管19eとを備えている。
【0032】
入口管19aから、チャンバ16内にて生成された1次微粒子15を含んだ気流が、外筒19b内周壁に沿って吹き込まれ、これにより、この気流が図4中に矢印Tで示すように外筒19bの内周壁から円錐台部19c方向に向かって流れることで、旋回する下降流が形成される。
【0033】
そして、上述の旋回する下降流は、円錐台部19c内周壁でさらに加速され、その後反転し、上昇流となって内管19eから系外に排出される。また、気流の一部は、粗大粒子回収チャンバ19dに流入する前に円錐台部19cで反転し、内管19eから系外に排出される。粒子には、旋回流により遠心力が与えられ、遠心力と抗力とのバランスにより、粗大粒子は壁方向に移動する。また、気流から分離した一酸化珪素微粒子は、円錐台部19c側面に沿って下降し、粗大粒子回収チャンバ19dで回収される。ここで、十分に遠心力が与えられない微粒子は、円錐台部19c内周壁での反転気流とともに、系外へ排出される。
【0034】
また、内管19eを通して、後に詳述する回収部20から負圧(吸引力)が生じるようになっている。そして、この負圧(吸引力)によって、上述の旋回する気流から分離した一酸化珪素微粒子が、図4中の矢印Uで示すように吸引され、内管19eを通して回収部20に送られるようになっている。
【0035】
図1に示すように、サイクロン19内の気流の出口である内管19eの延長上には、所望のナノサイズの粒径を有する2次微粒子(一酸化珪素微粒子)18を回収する回収部20が設けられている。この回収部20は、回収室20aと、回収室20a内に設けられたフィルター20bと、回収室20a内下方に設けられた管を介して接続された真空ポンプ(図示せず)とを備えている。サイクロン19から送られた微粒子は、真空ポンプ(図示せず)で吸引されることにより、回収室20a内に引き込まれ、フィルター20bの表面で留まった状態にされて回収される。
【0036】
以下、上述のように構成される微粒子製造装置10の作用を述べつつ、この微粒子製造装置10を用いて、本発明の実施形態に係る一酸化珪素微粒子の製造方法、およびこの製造方法により生成された一酸化珪素微粒子について説明する。
【0037】
ここで、本実施形態において、二酸化珪素原料(二酸化珪素の粉末)は、一酸化珪素微粒子の原料となるものであって、熱プラズマ炎中で容易に蒸発するように、その平均粒径が50μm以下であり、好ましくは平均粒径が10μm以下である。
【0038】
本実施形態において、炭素を含む液体状の物質(分散媒)としては、例えば、アルコール、ケトン、ケロシン、オクタンまたはガソリンが挙げられる。
また、アルコールとしては、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロピルアルコールが挙げられる。
上述のように、炭素を含む液体状の物質(分散媒)は、二酸化珪素原料を還元するものである。このため、炭素を含む液体状の物質は、熱プラズマ炎24により分解されやすいことが好ましい。このことから、炭素を含む液体状の物質は、低級アルコールが好ましい。
また、更に、水(HO)をスラリー14aに加えている。この水は、炭素を含む液体状の物質(分散媒)による二酸化珪素原料の一酸化珪素化を促進するものである。
【0039】
本実施形態の一酸化珪素微粒子の製造方法では、まず、二酸化珪素原料を分散媒中に分散させ、更に水を加えてスラリーを得る。このスラリーにおいては、二酸化珪素原料と分散媒との混合比は、質量比で、例えば、4:6(40%:60%)であり、水は、二酸化珪素原料と分散媒との総量に対する割合で、20〜25%である。
二酸化珪素原料と分散媒との混合比、水の量は、上述のものに限定されるものではないが、二酸化珪素原料の量の好ましい範囲は、二酸化珪素原料と分散媒の総量に対して10〜65質量%であり、分散媒の量の好ましい範囲は、二酸化珪素原料と分散媒の総量に対して90〜35質量%であり、水の量の好ましい範囲は、二酸化珪素原料と分散媒の総量に対して10〜40質量%である。
分散媒および水は、二酸化珪素を還元するものであるため、一酸化珪素が生成されるように、この二酸化珪素原料と分散媒との質量比、添加される水の量は、適宜変更してスラリーが調製される。
【0040】
さらに、スラリー14aを調整する際に、界面活性剤、高分子、カップリング剤よりなる群より選ばれる1種または2種以上の混合物を添加してもよい。界面活性剤としては、例えば、ノニオン性界面活性剤であるソルビタン脂肪酸エステルが用いられる。高分子としては、例えば、ポリアクリル酸アンモニウムが用いられる。カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤等が用いられる。界面活性剤、高分子、カップリング剤よりなる群より選ばれる1種または2種以上の混合物をスラリー14aに添加することにより、二酸化珪素原料が分散媒、水で凝集することをより効果的に防止して、スラリー14aを安定化させることができる。
【0041】
上述のようにして調整されたスラリー14aは、図1に示す材料供給装置14の容器14b内に入れられ、攪拌機14cで攪拌される。これにより、分散媒中の二酸化珪素原料が沈澱することを防止し、分散媒中で二酸化珪素原料が分散された状態のスラリー14aが維持される。なお、材料供給装置14に二酸化珪素原料と分散媒と水とを供給して連続的にスラリー14aを調製してもよい。
【0042】
次に、前述の二流体ノズル機構を用いてスラリー14aを液滴化させ、液滴化されたスラリー14aが、プラズマトーチ12内に供給されることにより、プラズマトーチ12内に発生している熱プラズマ炎24中に供給されて、分散媒を燃焼させることなく炭素が生成される。
【0043】
なお、酸素を含まない熱プラズマ炎24は、液滴化されたスラリー14aを蒸発させ、分散媒を燃焼させることなく分解、蒸発させて炭素を生成させる。このとき、水も水素と酸素に分解される。更には熱プラズマ炎24は、その温度と生成された炭素により、二酸化珪素原料を還元し、更に水より発生した酸素により還元を制御して一酸化珪素にさせるものである。このため、熱プラズマ炎24の温度は、スラリーに含まれる二酸化珪素原料が炭素により還元される温度よりも高いことが必要である。
一方、熱プラズマ炎24の温度が高いほど、容易に二酸化珪素原料が還元されるので好ましいが、特に温度は限定されず、二酸化珪素原料が還元される温度に応じて適宜選択してよい。例えば、熱プラズマ炎24の温度を6000℃とすることもできるし、理論上は、10000℃程度に達するものと考えられる。
【0044】
また、プラズマトーチ12内における圧力雰囲気は、大気圧以下であることが好ましい。ここで、大気圧以下の雰囲気については、特に限定されないが、例えば、5Torr〜750Torrとすることができる。
【0045】
次に、酸素を含まない熱プラズマ炎24中でスラリー14aが蒸発し、更にはメタノール等の分散媒を燃焼させることなく分解されて炭素が得られる。この炭素が、二酸化珪素原料に比して多く生成されるように、スリラー14aにおける分散媒の量が調整されている。発生した炭素と二酸化珪素原料とが反応し、二酸化珪素が一酸化珪素に還元されて、更に水より発生した酸素により還元を制御して一酸化珪素にさせるものである。このようにして生成された一酸化珪素が、気体射出口28aを介して矢印Qで示される方向に射出される気体によって急冷されて、チャンバ16内で急冷されることにより、一酸化珪素からなる1次微粒子15が得られる。
【0046】
従って、上記気体射出口28aから射出される気体の量は、1次微粒子が生成される過程において、一酸化珪素微粒子を急冷するに十分な供給量であることが必要であるが、これとともに気体射出口28bから射出される気体の量、さらには、後述する熱プラズマ炎中に供給する気体の量と合わせて、1次微粒子15を下流のサイクロン19で任意の分級点で分級できる流速が得られ、かつ、熱プラズマ炎の安定を妨げない程度の量であることが好ましい。
【0047】
なお、上述の気体射出口28aから射出される気体の量と気体射出口28bから射出される気体の量とを合わせた射出量は、上記熱プラズマ炎中に供給する気体の200%〜5000%とするのがよい。ここで、上述の熱プラズマ炎中に供給する気体とは、熱プラズマ炎を形成するプラズマガス、プラズマ流を形成するためのセントラルガスおよび噴霧ガスを合わせたものである。
【0048】
また、熱プラズマ炎の安定を妨げない限り、上記射出される気体の供給方法や供給位置などは、特に限定されない。本実施形態の微粒子製造装置10では、天板17に円周状のスリットを形成して気体を射出しているが、熱プラズマ炎からサイクロンまでの経路上で、確実に気体を供給可能な方法や位置であれば、他の方法、位置でも構わない。
【0049】
最終的にチャンバ16内で生成された一酸化珪素からなる1次微粒子15は、サイクロン19の入口管19aから、気流とともに外筒19bの内周壁に沿って吹き込まれ、これにより、この気流が図4中の矢印Tで示すような外筒19bの内周壁に沿って流れることにより、旋回流を形成して下降する。そして、この旋回流は円錐台部19c内周壁でさらに加速され、その後反転し、上昇流となって、内管19eから系外に排出される。また、気流の一部は、粗大粒子回収チャンバ19dに流入する前に円錐台部19c内周壁で反転し、内管19eから系外に排出される。
【0050】
一酸化珪素からなる1次微粒子15に旋回流により遠心力が与えられ、遠心力と抗力とのバランスにより、1次微粒子15のうち、粗大粒子は壁方向に移動する。また、1次微粒子15のうち、気流から分離された粒子は、円錐台部19c側面に沿って下降し、粗大粒子回収チャンバ19dで回収される。ここで、十分に遠心力が与えられない微粒子は、円錐台部19c内周壁での反転気流とともに、内管19eから、一酸化珪素微粒子(2次微粒子)18として系外へ排出される。このときのサイクロン19内への気流の流速は、好ましくは、10m/sec以上である。
【0051】
排出された一酸化珪素微粒子(2次微粒子)18は、回収部20からの負圧(吸引力)によって、図4中の矢印Uで示すように吸引され、内管19eを通して回収部20に送られ、回収部20のフィルター20bで回収される。このときのサイクロン19内の内圧は、大気圧以下であることが好ましい。また、一酸化珪素微粒子(2次微粒子)18の粒径は、目的に応じてナノサイズレベルの任意の粒径が規定される。
このようにして、本実施形態においては、ナノサイズの一酸化珪素微粒子を得ることができる。
また、本発明の一酸化珪素微粒子の製造方法においては、使用するサイクロンの個数は、1つに限定されず、2つ以上でもよい。
【0052】
本実施形態の一酸化珪素微粒子の製造方法により製造される一酸化珪素微粒子は、その粒度分布幅が狭い、すなわち、均一な粒径を有し、1μm以上の粗大粒子の混入が殆どなく、具体的には、その平均粒径が1〜100nmのナノサイズの一酸化珪素微粒子である。
【0053】
本実施形態の一酸化珪素微粒子の製造方法で得られる一酸化珪素微粒子は、例えば、リチウムイオン電池の負極材などに用いることができる。
また、本実施形態の一酸化珪素微粒子の製造方法で得られる一酸化珪素微粒子は、例えば、各種光学用、反射防止膜、吸収膜、保護膜、液晶導電被膜の保護絶縁膜、半導体素子用保護膜、薄膜コンデンサ用誘電体、太陽電池などの反射防止膜、およびガスバリアフィルム用蒸着材料に用いることもできる。
【0054】
また、本実施形態においては、二酸化珪素原料の還元に用いる炭素源に液体を用い、それ以外は水であるため、二酸化珪素原料を熱プラズマ炎に対して容易に、均一に供給することができる。さらには、炭素源が液体であるため、グラファイト等の固体の炭素源に比して、容易に分解され、二酸化珪素原料を効率良く炭素と反応させることができる。これにより、二酸化珪素原料の一酸化珪素への反応効率が高くなり、高い生産性で一酸化珪素微粒子を製造することができる。
【0055】
また、本実施形態の一酸化珪素微粒子の製造方法では、ガスを供給し、装置内の流速を任意に制御することで、装置内に設けたサイクロンで微粒子を分級可能としている。本実施形態の一酸化珪素微粒子の製造方法では、反応条件を変えることなく、気体の流速、もしくはサイクロン内径を変えることで、任意の分級点で粗大粒子を分離できるため、粒径が微細かつ均一で、品質のよい高純度の微粒子を高い生産性で製造することが可能になる。
【0056】
さらに、本実施形態の一酸化珪素微粒子の製造方法では、サイクロン内で旋回流を生じるため滞留時間が長くなり、サイクロン内で微粒子が冷却されるので、これまで冷却機構として用いていたフィンや冷却路を設ける必要がなくなる。そのため、フィン内に堆積した微粒子除去のために装置の稼動を停止させる必要がなくなり、装置の稼動時間を長期化することが可能になる。さらに、サイクロン全体を水冷ジャケット構造とすることで、冷却効果をより一層高めることができる。
【0057】
前述の通り、本実施形態の微粒子製造装置10は、気相状態の混合物を急冷することを主たる目的とする気体供給装置28を備えることを特徴としている。以下、この気体供給装置28について追加説明する。
【0058】
図1,図3に示す気体供給装置28は、熱プラズマ炎24の尾部に向かって、前述のような所定の角度で気体を射出する気体射出口28aと、チャンバ16の側壁に沿って上方から下方に向かって気体を射出する気体射出口28bと、チャンバ16内に供給される気体に押し出し圧力をかけるコンプレッサ28cと、チャンバ16内に供給される上記気体の供給源28dと、それらを接続する管28eとから構成されている。
なお、コンプレッサ28cと気体供給源28dは、管28eを介してチャンバ16の天板17に接続されている。ここで、熱プラズマ炎の尾部とは、プラズマガス供給口12cと反対側の熱プラズマ炎の端、つまり、熱プラズマ炎の終端部である。
【0059】
図3に示すように、気体射出口28aと気体射出口28bとは、チャンバ16の天板17に形成されている。ここで、天板17は、円錐台形状で上側の一部が円柱である内側部天板部品17aと、円錐台形状の孔を有する外側部天板部品17bと、内側部天板部品17aを垂直に移動させる移動機構を有する上部外側部天板部品17cとを含み構成されている。
【0060】
ここで、内側部天板部品17aと上部外側部天板部品17cとが接する部分(内側部天板部品17aでは上部の円柱部分)にはネジが切ってあり、内側部天板部品17aが、回転することで垂直方向に位置を変えることができ、内側部天板部品17aは、外側部天板部品17bとの距離を調節できる。また、内側部天板部品17aの円錐台部分の勾配と、外側部天板部品17bが有する孔の円錐台部分の勾配は同一であり、お互いがかみ合う構造になっている。
【0061】
また、気体射出口28aとは、内側部天板部品17aと外側部天板部品17bとが形成した間隙、つまり、スリット幅が調節可能であって、天板と同心である円周状に形成されたスリットである。ここで、気体射出口28aは、熱プラズマ炎24の尾部に向かって気体を射出することができる形状であればよく、上述のようなスリット形状に限定されるものではなく、例えば、円周上に多数の孔を配したものでもよい。
【0062】
また、上部外側部天板部品17cの内部には、管28eを介して送られる気体が通過するための通気路17dが設けられる。上記気体は、通気路17dを通過し、上述した内側部天板部品17aと外側部天板部品17bとが形成するスリットである気体射出口28aに送られる。気体射出口28aに送られた気体は、図1および図3中の矢印Qで示される方向に、熱プラズマ炎の尾部(終端部)に向かって、前述のように、所定の供給量および所定の角度で射出される。
【0063】
ここで、上記所定の供給量について説明する。前述のように(段落0045参照)、前記気相状態の混合物を急冷するのに生成した量とは、例えば、前記気相状態の混合物を急冷するのに必要な空間を形成するチャンバ内に供給する気体のチャンバ16内における平均流速(チャンバ内流速)を、0.001〜60m/secとすることが好ましく、0.5〜10m/secとすることがより好ましい。これは、熱プラズマ炎24中に噴霧され蒸発した気相状態の混合物を急冷し微粒子を生成させ、生成された微粒子同士の衝突による凝集を防止するのに十分な気体の供給量である。
【0064】
なお、この供給量は、気相状態の混合物を急冷して凝固させるのに十分な量であり、また、凝固し生成された直後の微粒子同士が衝突することで凝集しないように気相状態の混合物を希釈するのに十分な量である必要があり、チャンバ16の形状や大きさによりその値を適宜定めるのがよい。
ただし、この供給量は、熱プラズマ炎の安定を妨げることのないように制御されることが好ましい。
【0065】
次に、図5(a)、(b)を用いて、気体射出口28aがスリット形状の場合における、上記所定の角度について説明する。図5(a)に、チャンバ16の天板17の中心軸を通る垂直方向の断面図を、また、図5(b)に、天板17を下方から見た図を示す。なお、図5(b)には、図5(a)に示した断面に対して垂直な方向が示されている。ここで、図5(a)、(b)中に示す点Xは、通気路17dを介して気体供給源28d(図1参照)から送られた気体が、気体射出口28aからチャンバ16内部へ射出される射出点である。実際は、気体射出口28aが円周状のスリットであるため、射出時の気体は帯状の気流を形成している。従って、点Xは仮想的な射出点である。
【0066】
図5(a)に示すように、通気路17dの開口部の中心を原点として、垂直上方を0°、紙面で反時計周りに正の方向をとり、矢印Qで示される方向に気体射出口28aから射出される気体の角度を角度αで表す。この角度αは、上述した、熱プラズマ炎の初部から尾部(終端部)への方向に対する角度である。
【0067】
また、図5(b)に示すように、上記仮想的な射出点Xを原点として、熱プラズマ炎24の中心に向かう方向が0°、紙面で反時計回りを正の方向として、熱プラズマ炎24の初部から尾部(終端部)への方向に対して垂直な面方向における、矢印Qで示される方向に気体射出口28aから射出される気体の角度を角度βで表す。この角度βは、上述した、熱プラズマ炎の初部から尾部(終端部)への方向に対して直行する面内で、熱プラズマ炎の中心部に対する角度である。
【0068】
上述した角度α(通常は垂直方向の角度)および角度β(通常は水平方向の角度)を用いると、前記所定の角度、すなわち、前記気体の前記チャンバ内への供給方向は、前記チャンバ16内において、熱プラズマ炎24の尾部(終端部)に対して、角度αが90°<α<240°(好ましくは100°<α<180°の範囲、より好ましくはα=135°)、角度βが−90°<β<90°(好ましくは−45°<β<45°の範囲、より好ましくはβ=0°)であるのがよい。
【0069】
上述したように、熱プラズマ炎24に向かって所定の供給量および所定の角度で射出された気体により、上記気相状態の混合物が急冷され、微粒子15が生成される。上述の所定の角度でチャンバ16内部に射出された気体は、チャンバ16内部に発生する乱流等の影響により必ずしもその射出された角度で熱プラズマ炎24の尾部に到達するわけではないが、気相状態の混合物の冷却を効果的に行い、かつ熱プラズマ炎24を安定させて効率よく微粒子製造装置10を動作させるためには、上記角度に決定するのが好ましい。なお、上記角度は、装置の寸法、熱プラズマ炎の大きさ等の条件を考慮して、実験的に決定すればよい。
【0070】
生成直後の微粒子同士が衝突し、凝集体が形成されることで粒径の不均一が生じると、品質低下の要因となる。これに対し、本発明の一酸化珪素微粒子の製造方法においては、気体射出口28aを介して所定の角度および供給量で熱プラズマ炎の尾部(終端部)に向かって矢印Qで示される方向に射出される気体が、微粒子15を希釈することで、微粒子同士が衝突し凝集することを防止する。つまり、気体射出口28aから射出された気体が、上記気相状態の混合物を急冷し、さらに、生成された一酸化珪素微粒子の凝集を防止することで、一酸化珪素微粒子の粒子径の微細化、および一酸化珪素微粒子の粒子径の均一化の両面に作用している。
【0071】
ところで、気体射出口28aから射出される気体は、熱プラズマ炎24の安定性に少なからず悪影響を与える。しかし、装置全体を連続的に運転するためには熱プラズマ炎を安定させる必要がある。このため、本実施形態の微粒子製造装置10における気体射出口28aは、円周状に形成されたスリットとなっており、そのスリット幅を調節することで気体の供給量を調節することができ、中心方向に均一な気体を射出することができるので、熱プラズマ炎を安定させるのに好ましい形状を有するといえる。また、この調節は、射出される気体の供給量を変えることでも行える。
【0072】
以上、本発明の一酸化珪素微粒子の製造方法および一酸化珪素微粒子について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【実施例】
【0073】
以下、本発明の一酸化珪素微粒子の製造方法の実施例について具体的に説明する。
本実施例においては、上述の微粒子製造装置10により、下記表1に示す各実験例1〜5の「原料混合比」のスラリーを用いて一酸化珪素微粒子の製造を試みた。
【0074】
一酸化珪素微粒子の原料として、各実験例1〜5のスラリーには、下記表1の「原料混合比」の欄に示すように二酸化珪素の粉末、およびアルコールを含有し、水が添加されたものと添加されてないものとがある。
なお、「原料混合比」の欄に示す二酸化珪素粉末とアルコールとの数値は、二酸化珪素粉末とアルコールとの質量比を示すものである。水の数値は、二酸化珪素の粉末とアルコールの総量に対する水の量の比率を示すものである。
また、原料に用いた二酸化珪素の粉末は、平均粒径が4μmである。アルコールには、エタノールを用いた。
【0075】
ここで、プラズマトーチ12の高周波発振用コイル12bには、約4MHz、約80kVAの高周波電圧を印加し、プラズマガス供給源22からは、実施例毎に、それぞれ下記表1に示すプラズマガスを供給し、プラズマトーチ12内に熱プラズマ炎を発生させた。なお、材料供給装置14の噴霧ガス供給源14eから、噴霧ガスとして、10リットル/minでアルゴンガスを供給した。
【0076】
本実施例では、各実験例1〜5のスラリーを、それぞれ噴霧ガスであるアルゴンガスとともに、プラズマトーチ12内の熱プラズマ炎24中に供給した。
また、気体供給装置28によって、チャンバ16内に供給される気体としては、アルゴンガスまたはアルゴンとヘリウムとの混合ガスを使用した。このときのチャンバ内流速は5m/secで、供給量は1m/minとした。
なお、サイクロン19内の圧力は50kPaとし、チャンバ16からサイクロン19への微粒子の供給速度は10m/sec(平均値)とした。
【0077】
熱プラズマ炎のプラズマガスにおける水素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガスの割合は、ヘリウムガスおよびアルゴンガスの総量に対して、水素ガスの量を0〜20vol%とした。
また、プラズマガスが水素ガス、ヘリウムガスの2種類の場合、ヘリウムガスの総量に対して水素ガスの量を0〜20vol%とし、水素ガス、アルゴンガスの2種類の場合、アルゴンガスの総量に対して水素ガスの量を0〜20vol%とした。
なお、プラズマガスの供給量ついては、アルゴンガスは10〜300リットル/minとし、ヘリウムガスは5〜30リットル/minとした。
【0078】
次に、下記表1に示す実験例1〜5において、得られた生成物についてX線回折(XRD)を用いて結晶構造を調べた。その結果を図6に示す。なお、図6において、符号Aは、市販の一酸化珪素のX線回折(XRD)の結果を示すものである。
【0079】
【表1】

【0080】
実験例1〜5のうち、図6に示すように、水の量が20%の実験例3、水の量が25%の実験例4では、炭化珪素(SiC)が殆ど生成されることなく一酸化珪素が得られ、その粒子径は約17nmであった。
一方、実験例1は、水を添加していないため、一酸化珪素が殆ど生成されることなく炭化珪素が得られた。また、実験例2および実験例5では、一酸化珪素以外に炭化珪素も生成された。
【符号の説明】
【0081】
10 微粒子製造装置
12 プラズマトーチ
12a 石英管
12b 高周波発振用コイル
12c プラズマガス供給口
14 材料供給装置
14a スラリー
14b 容器
14c 攪拌機
14d ポンプ
14e 噴霧ガス供給源
14f 供給管
15 1次微粒子
16 チャンバ
17 天板
17a 内側部天板部品
17b 外側部天板部品
17c 上部外側部天板部品
17d 通気路
18 微粒子(2次微粒子)
19 サイクロン
19a 入口管
19b 外筒
19c 円錐台部
19d 粗大粒子回収チャンバ
19e 内管
20 回収部
20a 回収室
20b フィルター
20c 管
22 プラズマガス供給源
24 熱プラズマ炎
26 管
28 気体供給装置
28a 気体射出口
28b 気体射出口
28c コンプレッサ
28d 気体供給源
28e 管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化珪素を用いて一酸化珪素微粒子を製造する製造方法であって、
前記二酸化珪素の粉末を、炭素を含む液体状の物質に分散させ、さらに水を添加してスラリーにし、
該スラリーを液滴化させて酸素を含まない熱プラズマ炎中に供給することを特徴とする一酸化珪素微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記二酸化珪素の粉末の量は、前記二酸化珪素の粉末と前記炭素を含む液体状の物質の総量に対して10〜65質量%であり、
前記炭素を含む液体状の物質の量は、前記二酸化珪素の粉末と前記炭素を含む液体状の物質の総量に対して90〜35質量%であり、
前記水の量は、前記二酸化珪素の粉末と前記炭素を含む液体状の物質の総量に対して10〜40質量%である請求項1に記載の一酸化珪素微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記炭素を含む液体状の物質は、アルコール、ケトン、ケロシン、オクタンまたはガソリンである請求項1または2に記載の一酸化珪素微粒子の製造方法。
【請求項4】
前記熱プラズマ炎は、水素、ヘリウムおよびアルゴンの少なくとも1つのガスに由来するものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の一酸化珪素微粒子の製造方法。
【請求項5】
二酸化珪素の粉末を、炭素を含む液体状の物質に分散させ、さらに水を添加してスラリーにし、該スラリーを液滴化させて酸素を含まない熱プラズマ炎中に供給して生成されたことを特徴とする一酸化珪素微粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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