説明

万能ホルダ

【課題】様々な形状の物品を保持する万能ホルダを簡易な機構で安価に提供する。
【解決手段】可動プレート3は、横方向に延在する一対のレール2a,2b上をスライド可能な状態で、これらに取り付けられている。下固定プレート4は、縦方向において可動プレート3と対向して配置されている。物品Aは、可動プレート3側の第1の保持部3aと、固定プレート4側の第2の保持部4aとの挟み込みによって保持される。調整機構6は、物品Aの形状に応じて、固定プレート4に対する可動プレート3の相対位置を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な形状の物品を保持することができる万能ホルダに関する。
【背景技術】
【0002】
工場の生産ライン等では、搬送路上を流れる物品に対する作業の効率化を図るべく、物品を所定の状態(例えば起立状態)に保持するホルダ(保持具)が用いられることがある。例えば、特許文献1,2には、搬送路を形成するコンベヤにホルダを取り付けた搬送装置が開示されている。この搬送装置は、真横に並んだ一対のコンベアによって搬送路が形成され、それぞれのコンベアにホルダが取り付けられている。一方のコンベアに取り付けられたホルダは、他方のコンベアの搬送面上にオーバーハングするように延在している。これらのコンベアの境界部分に載置された物品は、互いにオーバーハングした一対のホルダによって挟み込まれ、これによって物品が保持される。ある形状の物品を適切に保持するためにホルダ間隔の調整を行う場合、一対のコンベアの互いの位相をずらせばよく、保持した物品を搬送する場合には、一対のコンベアを同方向に等速で移動させればよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−158307号公報
【特許文献2】特開平3−162297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術では、搬送装置自体の構造が複雑になって、設備コストの増大を招く。また、搬送路自体に多数のホルダが取り付けられているので、個々のホルダの付け替えに手間が掛かる。これらの問題は、搬送装置側の改良ではなく、別個の治具として用意することで、ある程度解消できる。しかしながら、この場合、保持しようとする物品の形状に応じた治具を個別に作成しなければならず、また、作成した治具を適切に保管せねばならない。そのため、多数の治具が必要となる少量多品種の生産において、これらの負担が問題として顕在化する。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、様々な形状の物品を保持する万能ホルダを簡易な機構で安価に提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決すべく、本発明は、横方向に延在する一対のレールと、一対のレール上をスライド可能な状態で、一対のレールに取り付けられた可動プレートと、縦方向において可動プレートと対向して配置された固定プレートと、可動プレートに設けられた第1の保持部と、第1の保持部と位置的に対応して第2のプレートに設けられているとともに、第1の保持部との挟み込みによって、物品を保持する第2の保持部と、物品の形状に応じて、固定プレートに対する可動プレートの相対的な位置を調整可能な調整機構とを有する万能ホルダを提供する。
【0007】
ここで、本発明において、第1の保持部は、一対のレールの延在方向に沿って可動プレートに複数設けられており、第2の保持部は、一対のレールの延在方向に沿って固定プレートに複数設けられていてもよい。
【0008】
また、本発明において、第1の保持部は、可動プレートから下方に向かって突出しており、第2の保持部は、下方に突出した第1の保持部の少なくとも一部とオーバーラップするように、可動プレートの下方に配置された固定プレートから上方に向かって突出していてもよい。
【0009】
また、本発明において、第1の保持部と位置的に対応して、可動プレートに設けられた開口部と、可動プレートと対向して可動プレートの上方に配置された第2の固定プレートと、第1の保持部と位置的に対応して第2の固定プレートに設けられ、第1の保持部との挟み込みによって、物品を保持する第3の保持部とをさらに有していてもよい。
【0010】
さらに、本発明において、調整機構は、調整用ネジ軸の回転運動を可動プレートの直線運動に変換するネジ送り機構であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、固定プレートに対する可動プレートの相対位置を調整することによって、第1および第2の保持部の間隔を自在に設定できる。これにより、簡易かつ小型な機構で、様々な形状の物品を有効に保持することができる。また、工場の生産ラインで使用する場合、搬送装置側の改良が必要ないので、保持機構を安価に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】万能ホルダの斜視展開図
【図2】調整機構の説明図
【図3】保持部による物品の保持状態の説明図
【図4】調整機構の他の例の説明図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本実施形態に係る万能ホルダの斜視展開図である。この万能ホルダ1は、例えば工場の生産ラインにおいて、物品A(例えばステック状の口紅)を起立した状態に保持して、その底面にラベルを貼り付ける工程等で用いられる。この場合、底面が上を向くように複数の物品Aが収容された万能ホルダ1が搬送路に送出され、ラベルの貼付工程に供給される。
【0014】
万能ホルダ1は、一対のレール2a,2bと、可動プレート3と、2つの固定プレート4,5と、調整機構6とを主体に構成されている。一対のレール2a,2bは、所定の間隔を空けて横方向に延在しており、これらの両端が支持部7に固定的に取り付けられている。
【0015】
可動プレート3は、横方向にスライド自在な状態で、一対のレール2a,2bに取り付けられている。可動プレート3の両側部は、その全域に亘って略U字状に曲げられており、レール2a,2bのそれぞれと係合している。これにより、可動プレート3のスライド性を確保しつつ、レール2a,2bからの浮き上がりを規制できる。可動プレート3の水平なプレート面には、レール2a,2bの延在方向に沿って、複数の第1の保持部3aが一体的に設けられている。保持部3aは、物品Aを一括で保持するのに必要な個数分だけ存在し(当然1個でもよい)、それぞれが可動プレート3のプレート面から下方に向かって突出している。それぞれの保持部3aは、物品Aを挟み込んで保持する役割を担っている。物品保持の安定性を高めるために、後述する第2の保持部4aと対向する垂直な保持面の略中央には、縦筋状の切り込みが設けられている。また、可動プレート3のプレート面には、物品Aが貫通する開口部3bが、保持部3aと位置的に対応して複数設けられている。さらに、可動プレート3の一方の端部には、下方に向かって突出した突出部3cが取り付けられている。この突出部3cには、後述する調整機構6と連係してネジ送り機構を形成するために、横方向を貫通するネジ孔3dが設けられている。
【0016】
下固定プレート4は、縦方向(下方)において可動プレート3と対向して配置されており、その両端には、上方に向かって起立した起立部4bがそれぞれ一体的に設けられている。下固定プレート4は、組み上がった万能ホルダ1のフレームとしての役割を担うので、両端の起立部4bも含めて、必要な剛性を確保すべく肉厚に形成されている。下固定プレート4の水平なプレート面には、レール2a,2bの延在方向に沿って、複数の第2の保持部4aが一体的に設けられている。この保持部4aは、第1の保持部3aと同数存在し、第1の保持部3aと位置的に対応しているとともに、それぞれが固定プレート4のプレート面から上方に向かって突出している。保持部4aは、上述した第1の保持部3aとの挟み込みにより、物品Aを保持する役割を担う。保持部4aの垂直な保持面、すなわち、第1の保持部3aと対向する面の略中央には、第1の保持部3aのそれと同様の理由で、縦筋状の切り込みが設けられている。なお、物品保持の安定性を高めるためには、上方に突出した保持部4aの少なくとも一部は、下方に突出した保持部3aと縦方向においてオーバーラップしていることが好ましい。また、下固定プレート4における一方の起立部4b(突出部3cと同じ側)には、後述する調整機構6が取り付けられている。
【0017】
上固定プレート5は、縦方向(上方)において可動プレート3と対向して配置されている。この上固定プレート5のプレート面には、レール2a,2bの延在方向に沿って、かつ、第1の保持部3aと位置的に対応して、複数の第3の保持部5aが設けられている。この保持部5aは、上述した保持部3a,4aのような突出形状ではなく、開口部5bの内側面の一部(物品Aと当接する部位)に相当するが、これを突出形状にしてもよい。開口部5bおよびその一部である保持部5aは、上述した保持部3a,4aと同様、物品Aを挟み込んで保持する役割を担うが、物品保持の安定性を高めるために、開口部5bの一部に切り込みが設けられている。
【0018】
万能ホルダ1の組み立ては、図1に示したように、上固定プレート5、支持部7および下固定プレート4の各取付孔(両端の2箇所)の位置合わせを行った上で、上方より挿入された取付ネジ8の締め付けによって行われる。
【0019】
図2は、調整機構6の説明図である。この調整機構6は、調整用ネジ軸6aと、その一端に取り付けられた調整つまみ6bとを有する。調整用ネジ軸6aは、下固定プレート4の起立部4bに形成された貫通孔に回転自在に挿入されている。そして、このネジ軸6aの外周に形成されたネジ部が可動プレート3側のネジ孔3dと螺合することによって、ネジ送り機構が形成される。作業者(ユーザ)が調整つまみ6bを回すと、調整つまみ6bに直結した調整用ネジ軸6aの回転運動が、ネジ送り機構によって可動プレート3の直線運動に変換される。これにより、可動プレート3がスライドして、固定プレート4,5に対する相対位置が変化する。可動プレート3のスライド方向は、ネジ送り機構の順送り/逆送りによって決定される。
【0020】
図3は、保持部3a〜5aによる物品Aの保持状態の説明図である。同図左側の保持部4a,5aが固定されているのに対して、右側の保持部3aは、可動プレート3と共に横方向に変位する。したがって、固定プレート4,5に対する可動プレート3の相対位置を調整することは、すなわち、保持部4a,5aと保持部3aの間隔を調整することを意味する。調整つまみ6bをある方向に回せば、ネジ送り機構の順送りにより両者の間隔が広がり、これを逆方向に回せば、ネジ送り機構の逆送りにより両者の間隔が狭まる。作業者(ユーザ)は、調整つまみ6bを操作して、物品Aを保持するのに適切な間隔を適宜設定する。適切な間隔で保持された物品Aは、保持部3a〜5aの3つの保持面によって安定的に支持される。
【0021】
このように、本実施形態によれば、固定プレート4,5に対する可動プレート3の相対位置を調整することによって、保持部3a〜5aの間隔を自在に設定できる。これにより、簡易な機構で、様々な形状の物品Aを有効に保持できる。様々な形状の物品に対応可能にすることは、物品毎にホルダを個別に用意する負担、或いは、多数のホルダを管理する負担から解消されることに繋がる。そのため、特に、少量多品種の物品Aを生産する場合等において、顕著な効果を発揮する。また、プレート3〜5を縦方向に重ねて配置することで、万能ホルダ1の横方向の小型化を図ることができる。さらに、上述した従来技術のように、搬送装置側の改良も必要ないので、物品保持用の機構を安価に実現することが可能になる。
【0022】
また、本実施形態によれば、保持部3a〜5aをレール2a,2bの延在方向に沿って複数設けることで、単一の万能ホルダ1で多数の物品Aを一括で保持することができる。これにより、万能ホルダ1の収納力を物品1個とする場合と比較して、作業効率の一層の向上を図ることができる。
【0023】
さらに、本実施形態によれば、3つの保持部3a〜5aを設け、これらによって挟み込まれた物品Aを3つの保持面で支持することにより、物品Aを安定的に保持することが可能になる。ただし、本発明は、このような三面支持に限定されるものではなく、例えば保持部5aを省略した二面支持であってもよいし、新たな保持部を追加して、より多くの保持面で支持してもよい。また、本実施形態では、極力広い保持面を確保するために、保持部3a,4aを突出形状にしているが、これに代えて、第3の保持部5aと同様、開口部の内側面に保持機能を担わせてもよい。さらに、本実施形態では、真ん中のプレート4を可動式としたケースについて説明したが、プレート3〜5のどれを可動式にしてもよい。
【0024】
なお、調整機構6としては、図4のような構成を用いてもよい。可動プレート3の側方(例えばレール2a側)に、横方向に貫通するネジ孔3eを設け、そこに調整ネジ6cを螺合させる。調整ネジ6cを緩めた状態では、可動プレート3がスライド自在になり、調整ネジ6cを締め付けた状態では、調整ネジ6cの先端がレール2aに強固に押し付けられ、可動プレート3が固定される。この場合、上述したネジ送り機構が存在しないので、可動プレート3のスライドは、作業者自身の手で直接行うことになる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上のように、本発明に係る万能ホルダは、工場の生産ラインでの使用等に限定されるものではなく、様々な形状の物品を保持しておく必要がある各種用途に対して広く適用できる。
【符号の説明】
【0026】
1 万能ホルダ
2a,2b 一対のレール
3 可動プレート
3a 第1の保持部
3b 開口部
3c 突出部
3d,3e ネジ孔
4 下固定プレート
4a 第2の保持部
4b 起立部
5 上固定プレート
5a 第3の保持部
5b 開口部
6 調整機構
6a 調整用ネジ軸
6b 調整つまみ
6c 調整ネジ
7 支持部
7a ネジ部
8 取付ネジ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
万能ホルダにおいて、
横方向に延在する一対のレールと、
前記一対のレール上をスライド可能な状態で、前記一対のレールに取り付けられた可動プレートと、
縦方向において前記可動プレートと対向して配置された固定プレートと、
前記可動プレートに設けられた第1の保持部と、
前記第1の保持部と位置的に対応して前記第2のプレートに設けられているとともに、前記第1の保持部との挟み込みによって、物品を保持する第2の保持部と、
前記物品の形状に応じて、前記固定プレートに対する前記可動プレートの相対的な位置を調整可能な調整機構と
を有することを特徴とする万能ホルダ。
【請求項2】
前記第1の保持部は、前記一対のレールの延在方向に沿って、前記可動プレートに複数設けられており、
前記第2の保持部は、前記一対のレールの延在方向に沿って、前記固定プレートに複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載された万能ホルダ。
【請求項3】
前記第1の保持部は、前記可動プレートから下方に向かって突出しており、
前記第2の保持部は、下方に突出した前記第1の保持部の少なくとも一部とオーバーラップするように、前記可動プレートの下方に配置された前記固定プレートから上方に向かって突出していることを特徴とする請求項1または2に記載された万能ホルダ。
【請求項4】
前記第1の保持部と位置的に対応して、前記可動プレートに設けられた開口部と、
前記可動プレートと対向して前記可動プレートの上方に配置された第2の固定プレートと、
前記第1の保持部と位置的に対応して前記第2の固定プレートに設けられ、前記第1の保持部との挟み込みによって、前記物品を保持する第3の保持部と
をさらに有することを特徴とする請求項3に記載された万能ホルダ。
【請求項5】
前記調整機構は、調整用ネジ軸の回転運動を前記可動プレートの直線運動に変換するネジ送り機構であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載された万能ホルダ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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