三フッ化窒素中の二フッ化二窒素および四フッ化二窒素濃度を低減する熱的方法

三フッ化窒素混合物中の望ましくない不純物二フッ化二窒素および四フッ化二窒素の濃度が、この混合物を、電解研磨した金属、セラミックアルミナ、またはサファイヤから選択される内部壁を有する容器中の気相で加熱すること、および、かかる不純物濃度が低減した三フッ化窒素生成物を回収することによって低減される。この方法は、約150℃〜約300℃の温度で実行され、好ましくは容器は充填物がなく、容器内部表面積対容器体積の比が、加熱ステップが実行される容器の領域において最小にされる。この方法は、場合により、容器内部壁を、フッ素ガスを含む不動態化組成物と接触させるステップをさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三フッ化窒素と下記不純物の混合物中の不純物二フッ化二窒素および四フッ化二窒素の濃度を低減する熱的気相方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスを製造するために、シリコン系材料をプラズマ−エッチングする製造プロセスにおいて、様々なフッ素含有化合物が利用される。三フッ化窒素の主要な用途は、半導体デバイス製造における「化学気相成長」(CVD)チャンバ洗浄ガスとしての用途である。CVDチャンバ洗浄ガスを使用して、半導体製造装置の内部表面と相互作用するプラズマを形成し、時間の経過に伴い蓄積した様々な堆積物を取り除く。
【0003】
半導体製造の応用分野において洗浄ガスとして使用される三フッ化窒素などのフッ化化合物は、より一般には「電子ガス」と呼ばれる。高純度を有する電子ガスは、かかる半導体デバイス製造の応用分野にとって重要である。半導体デバイス製造手段に入るこれらガス中のほんの微量の不純物でも、広い線幅、したがってデバイスあたりのより少ない情報をもたらす可能性があることが知られている。さらに、これらに限定されないが、電子ガス中の微粒子、金属、水分、および他のハロゲン化炭素を含めて、これらの不純物の存在は、百万分の一水準で存在するだけでも、これらの高密度集積回路の製造において欠陥割合を増大させる。その結果、高純度電子ガスの要求が増大し、必要な純度を有する材料の市場価値が増大してきた。その結果として、原因成分の同定およびそれらを除去する方法は、これらの応用分野用にフッ化化合物を調製することの重要な状況を表している。
【0004】
三フッ化窒素は、米国特許公報(特許文献1)に開示されているものなどの様々な方法によって調製することができる。しかし、ほとんどの方法から得られる三フッ化窒素には、一酸化二窒素、二酸化炭素、二フッ化二窒素、および四フッ化二窒素などの、相対的に高濃度の望ましくない不純物が含まれる。二フッ化二窒素および四フッ化二窒素は、三フッ化窒素電子ガス生成物においては特に望ましくない不純物である。特定の状態下で、および相対的に低い濃度で、これらの化合物は、不安定でかつそれどころか爆発性組成物を形成する可能性がある。したがって、電子ガスとして使用する場合、二フッ化二窒素および四フッ化二窒素のない高純度三フッ化窒素を得るためには、かかる不純物を取り除く方法が必要である。
【0005】
三フッ化窒素生成物中の二フッ化二窒素および他の不純物を低減する周知の様々な方法があり、その範囲は、化学的もしくは熱的処理、ゼオライト、シリカゲル、および活性アルミナへの吸着に及ぶ。シリカゲルおよび活性アルミナは、低温での吸着剤としておよび高温度での試薬としてどちらも開示されている。
【0006】
米国特許公報(特許文献2)は、二フッ化二窒素を含有する三フッ化窒素の精製を開示しており、これは、容器内部の壁がフッ化ニッケルのフィルムで被覆された容器中で高温度で前記三フッ化窒素を加熱することによるものである。充填床を形成するために固体のフッ化物を詰めた容器が、空の容器を使用するより好ましい。この引用文献は、容器内部の壁をニッケル以外の金属で製造したとき、金属フッ化物フィルムは、加熱することによってしばしば容易に剥離すること、そのために、被覆がもろく、金属壁面に対する接着強度が低いので、金属表面が露出することを開示している。
【0007】
米国特許公報(特許文献3)は、二フッ化二窒素不純物を含有する三フッ化窒素ガスを、容器内部の壁に固体のフッ化物で裏張りをつけた金属容器中で150〜600℃の温度で加熱することによって、三フッ化窒素ガス中に存在する二フッ化二窒素を分解する方法を開示している。
【0008】
米国特許公報(特許文献4)および米国特許公報(特許文献5)は、三フッ化窒素から二フッ化二窒素を除去する方法を開示している。この方法は、二フッ化二窒素を脱フッ素化できるが、しかし三フッ化窒素に対しては不活性である微粒子金属の存在下に、二フッ化二窒素の脱フッ素化を達成するのに十分な時間、約149〜538℃の温度に三フッ化窒素を加熱することを伴う。この金属は、二フッ化二窒素の分解を達成するために、ある程度の長さの時間後、再生しなければならない。
【0009】
【特許文献1】米国特許第3,235,474号明細書
【特許文献2】米国特許第5,183,647号明細書
【特許文献3】米国特許第4,948,571号明細書
【特許文献4】米国特許第4,193,976号明細書
【特許文献5】米国特許第4,156,598号明細書
【非特許文献1】コールバーン(Colburn)ら、ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティ(J.Am.Chem.Soc.)(第80巻、頁5004(1958))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
周知の文献においては、三フッ化窒素から二フッ化二窒素を除去する好適な方法は、三フッ化窒素を、二フッ化二窒素の選択的な除去に有効と考えられる材料を詰めた反応器に通過させることによるものである。前記充填材料は、使用による劣化または消耗のため、定期的に取り替える必要がある。三フッ化窒素生成物からの四フッ化二窒素の除去、並びに、精製されるその三フッ化窒素から四フッ化二窒素を製造するためのこれらの三フッ化窒素精製方法自体の可能性に関して、文献は何ら述べていない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、三フッ化窒素と少なくとも1種の不純物との混合物において、二フッ化二窒素および四フッ化二窒素から選択される前記少なくとも1種の不純物の濃度を低減する方法であって、前記混合物を、電解研磨した金属、セラミックアルミナ、およびサファイヤよりなる群から選択される内部壁を有する容器中の気相で、少なくとも約150℃の温度で加熱するステップと、前記少なくとも1種の不純物の濃度が低減された三フッ化窒素生成物を回収するステップとを含む。
【0012】
本発明の発明者は、ガスを高温度に保持することによって、三フッ化窒素ガスに含まれる不純物二フッ化二窒素および四フッ化二窒素が、効率的に分解され、したがって、ガスから除去される本方法を発見した。驚いたことに、容器またはコンテナが空であり、いかなる種類の充填材料も含まないようなところで、表面とのガス接触が最小限に抑えられる場合、これらの不純物の除去は最も効率がよいことが知見された。さらに、本発明の発明者は、三フッ化窒素組成物がかかる高温度処理の際に接触する表面が、電解研磨した金属、セラミックアルミナ、およびサファイヤから選択される場合、三フッ化窒素生成物の望ましくない分解、および別の不純物の生成が低減されることを発見した。
【0013】
本発明は、二フッ化二窒素を除去する試薬または補充の充填材料を加える、または取り替える必要が全くない、これまでの方法を上回るさらなる改良を提供する。驚くべきことに、本発明の発明者は、三フッ化窒素を含むガス生成物を、その内部表面が、サファイヤ、セラミックアルミナ、またはステンレス鋼もしくはニッケルなどの電解研磨した金属から製造された管式反応装置に高温度で通過させると、望ましくない不純物二フッ化二窒素および四フッ化二窒素を、検出不可能な水準(例えば約0.1ppm−モル未満の水準)に低減することができ、一方、三フッ化窒素の劣化、および望ましくない四フッ化二窒素への収率損失を最小限に抑えることを発見した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、三フッ化窒素(NF)と少なくとも1種の不純物の混合物において、二フッ化二窒素(FN=NF、シスおよびトランス異性体)、並びに四フッ化二窒素(FN−NF)よりなる群から選択される前記少なくとも1種の不純物の濃度を低減する方法である。本方法を使用して、任意量の少なくとも1種のかかる不純物を含有する三フッ化窒素混合物、例えば、約2モルパーセントの少なくとも1種のかかる不純物を含有する三フッ化窒素混合物を処理することができる。本方法は、一酸化二窒素、二酸化炭素、六フッ化硫黄、ヘキサフルオロエタン、およびテトラフルオロメタンなどの、三フッ化窒素混合物中に存在するかもしれない他の不純物の存在下で、かつそれによって悪影響を及ぼされずに、実行することができる。
【0015】
本方法は、三フッ化窒素混合物が気相で加熱される加熱ステップを含む。三フッ化窒素混合物の加熱は、約150℃〜約300℃、好ましくは約200℃〜約250℃、最も好ましくは約235℃の温度で実行される。本発明の発明者は、かかる温度では、下記不純物と三フッ化窒素の混合物中の二フッ化二窒素および四フッ化二窒素不純物の濃度が、三フッ化窒素の分解および四フッ化二窒素などの副生物への収率損失を伴わずに、本方法によって低減されることを発見した。本加熱ステップは、容器中の静止した三フッ化窒素混合物を加熱することによって、あるいはより好ましくは、三フッ化窒素混合物が容器を経由して流れるとき、それを加熱することによる連続プロセスで、実行することができる。
【0016】
加熱ステップの際、様々な加熱法を使用して、三フッ化窒素混合物を加熱することができ、加熱法は特に限定されない。三フッ化窒素混合物は、電気ヒータまたはバーナーで容器を外部から加熱することによって、または、それを通じて加熱媒体を循環することができるジャケットを容器の外側もしくは内側に設けることによって、順に加熱することができる。あるいは、まず三フッ化窒素混合物を所望の温度に加熱し、次いで、不純物の分解が得られるある時間の間断熱した容器に通過または保持し、それによって不純物濃度の所望の低減を行ってもよい。例えば、三フッ化窒素混合物は、シェル−イン−チューブ型熱交換器で加熱し、次いで、断熱した管などの容器に供給してもよく、その場合、三フッ化窒素混合物は、不純物の濃度を低減するのに必要な時間高温度にとどまる。追加の代わりの構成では、加熱ステップの際、三フッ化窒素混合物を加熱したキャリヤーガスと混合することによって、三フッ化窒素混合物を所望の温度に至らせてもよい。例えば、三フッ化窒素混合物は、加熱された窒素流れと混合して、このようにして、合わせたガス組成物を所望の加熱ステップ温度まで至らせてもよい。
【0017】
任意選択で使用できる任意のガス整流板の容器、および任意選択で使用できる任意の予熱器容器の両方の場合に、加熱ステップの際、三フッ化窒素混合物と接触する全ての構成部材の容器内部表面が、電解研磨した金属、セラミックアルミナ、およびサファイヤよりなる群から選択される材料から構成されるとき、三フッ化窒素の望ましくない分解が低減される。
【0018】
三フッ化窒素混合物の温度が上昇する間、三フッ化窒素の望ましくない分解を促進しないように、容器およびプロセス流れの温度を制限することが望ましい。例えば、電気ヒータが使用される場合、極端に高い表面温度を回避するため、すなわち、約300℃を超える温度を回避するため、低熱流束電気ヒータが好ましい。他のプロセス流体またはキャリヤーガスを使用して三フッ化窒素混合物を加熱する場合、前記プロセス流体およびキャリヤーガスの温度は、やはり約300℃を超えない温度にするのが好ましい。
【0019】
接触時間は、三フッ化窒素混合物が加熱ステップを受けるその間の時間である。接触時間は、三フッ化窒素の収率損失を欠点として持たずに、二フッ化二窒素および四フッ化二窒素不純物の両方が実質的にない三フッ化窒素生成物が得られるように選択されるのが好ましい。三フッ化窒素混合物中の二フッ化二窒素および四フッ化二窒素不純物の濃度を低減するのに必要な所与の加熱ステップ温度における接触時間は、三フッ化窒素混合物中のかかる不純物の初期濃度、および三フッ化窒素生成物中の不純物の所望の終濃度に依存する。三フッ化窒素混合物中の三フッ化窒素の分解を伴わずに、不純物二フッ化二窒素および四フッ化二窒素の濃度を低減するのに必要な所与の加熱ステップ温度における接触時間は、過度の実験を伴わずに本発明が関係する分野の当業者によって定めることができる。一般に、二フッ化二窒素および四フッ化二窒素のうちの少なくとも1種の不純物の濃度を低減するためには、不純物の初期濃度が高くなるほど、加熱ステップの際、三フッ化窒素混合物が高温度に保持されることが必要な接触時間が長くなり、および/または、必要な加熱ステップ温度が高くなる。あるいは、任意の所与の初期濃度からの所望される不純物の終濃度が低くなるほど、加熱ステップの際、三フッ化窒素混合物が高温度に保持されることが必要な接触時間が長くなり、および/または、必要な加熱ステップ温度が高くなる。
【0020】
例えば、様々な量の二フッ化二窒素を含有する三フッ化窒素組成物は、1時間あたり0.45kg(1lb)の速度および101kPa(1気圧)の圧力で容器に供給され、この場合、この組成物は、容器を通過する間200℃または230℃に保持される。表1は、容器体積、および、三フッ化窒素生成物中の二フッ化二窒素を5ppm−モル未満に減少させるのに必要な接触時間を示す。
【0021】
【表1】

【0022】
加熱ステップの間の容器内の全圧力は重要でない。商業的に有用なプロセス生産性を達成するため、および、三フッ化窒素混合物を、連続プロセスの加熱ステップの間、容器を経由して移動させるため、加熱ステップの間の容器内の全圧力は、約101.3kPa(1気圧)〜約1,520kPa(15気圧)であることが好ましい。容器内の全圧力は、もっぱら三フッ化窒素混合物を含んでもよく、または、三フッ化窒素混合物の構成成分には不活性である不活性キャリヤーガス、並びに、三フッ化窒素生成物から容易に分離可能な不活性キャリヤーガスをさらに含んでもよい。かかる不活性キャリヤーガスには、例えば、窒素、ヘリウム、二酸化炭素、およびヘキサフルオロエタンが含まれる。
【0023】
加熱ステップが実行される容器の形状は重要でない。任意の形式の箱、シリンダ等の容器を使用することができる。本方法が連続的に実行される場合、円筒状(例えば、管式または管型)の容器が好ましい。容器形状は重要でないが、容器内部の表面積対容器体積の比は、加熱ステップが実行される容器の領域では最小にすることが好ましい。好適な容器形状は円筒状の容器であり、かかる容器の内部表面積対体積の比を最小にするため、容器直径は、容器両端間の十分な熱伝達を依然として考慮に入れた、可能な最も大きい直径、すなわち、容器壁に隣接する三フッ化窒素混合物から容器中央の三フッ化窒素混合物までの十分な熱伝達を依然として考慮に入れた、可能な最も大きい直径であることが好ましい。三フッ化窒素混合物を所与の体積のシリンダに通過させ、前記混合物を高温度に保持する場合、シリンダが、混合物が契約するシリンダ内部表面積を最小にする直径および長さであることが好ましい。例えば、三フッ化窒素、並びに不純物二フッ化二窒素および四フッ化二窒素を含む三フッ化窒素混合物を処理するのに、0.5立方メートルの流通型反応器体積が必要な場合、5.7平方メートルの内部表面積を提供するであろう0.35メートル直径の反応器は、8.0平方メートルの内部表面積を提供するであろう0.25メートル直径の反応器より好ましいであろう。
【0024】
三フッ化窒素混合物が加熱ステップの間に接触する容器の表面積が最小にされるように、容器は充填物のない、すなわち、加熱ステップが実行される容器の領域には充填材料としての材料を容器に全く加えないことが好ましい。いずれかの種類の充填材料が任意選択で加えられる場合、その表面積が最小にされるような形状であることが好ましい。本容器においてガス再整流板が使用される場合、その表面積を最小にする形状であることが好ましい。最小の表面積のガス再整流板の例は、ケニクス(登録商標)スタティックミキサ(Kenics Static Mixer)である。さらに、かかるガス再整流板は、電解研磨した金属、セラミックアルミナ、およびサファイヤよりなる群から選択される表面を有することが好ましい。場合により、かかるガス整流板の表面は、フッ素ガスを含む不動態化組成物で不動態化することができる。
【0025】
工業用の金属表面の機械的前処理および平滑化は、2段階に分割することができる:(i)研削および摩耗技術を使用して合理的に平滑かつ巨視的に平らな面を製作する「荒加工」、および(ii)研磨パッド上で微細な研磨剤を使用して微視的に平滑かつ輝きのある面を与える「研磨」。かかる機械的前処理は、金属表面で大幅に歪んだ微視的ゾーンになることが十分に確立されている。この歪んだゾーンは、バルク金属の性質とは異なる性質を有し、したがって、機械的に研磨された表面上で、またはその存在下に行われた作業で得られた結果は、バルク金属の特性ではない。機械的に研磨された表面の研究では、外側の表面層は激しく歪んだゾーンであること、および、機械的に作成された最終的な平滑な表面は、流動過程によって作り出されること、すなわち、微視的な水準で、金属のピークは金属の窪みの中に押し込まれることが示される。したがって、機械的に研磨された金属表面は、たくさんの望ましくない微視的な引っ掻き傷、歪、しゅう曲、金属異物、および埋め込まれた研磨剤を含む歪んだゾーンを有する表面である。
【0026】
用語「電解研磨した金属」は、本明細書で使用されるとき、電解浴中でアノードになる金属を指し、電解は、初期のあらゆる機械的前処理および研磨によって作り出された金属表面の歪んだゾーンを除去するのに十分な時間の間続けられる。最高の電解研磨結果を作り出すためには、金属が均質で、かつ表面欠陥のないものでなければならないことがよく知られている。機械研磨によって通常は隠される欠陥は、電解研磨によって現れ、それどころか過大になることもある。異物、鋳造不規則性、継目等は、それらが金属表面の近くにある場合取り除かれるだろうが、しかし、それが表面から臨界の距離にある場合それらは過大になる。この臨界距離は、電解研磨によって除去される金属の平均深さである。理論によって拘束されることを望まないが、金属表面を電解研磨することによって得られる表面洗浄および平滑化は、電解研磨の際、金属表面上の微視的なピークおよび窪みの上に形成される金属含有化合物の濃厚な層の濃度勾配の相違によって定性的に説明できると考えられる。金属のピークでは、この層は薄く、濃度勾配が大きく、一方、金属の窪みでは、この層は厚く、濃度勾配が小さい。電解研磨の間、金属ピークの優先した溶解が起こり、したがって、表面が洗浄され、かつ平滑化される。
【0027】
本方法には、加熱ステップが、電解研磨した金属内部壁を有する容器中の気相で実行される一実施形態が含まれる。本発明の金属は、(i)電解研磨できる、(ii)揮発性金属フッ化物を形成しない、および(iii)三フッ化窒素の熱分解を触媒しない金属フッ化物を形成する、金属を含む。本発明の金属は、アルミニウム、クロム、コバルト、銅、金、鉄、ニッケル、銀、スズ、チタン、および亜鉛を含む。本発明の金属は、上述した金属の合金をさらに含み、場合により、黄銅(主に銅および亜鉛を含む)、洋銀、モネル(Monel)(登録商標)(主にニッケルおよび銅を含む)、ハステロイ(Hastelloy)(登録商標)(主にニッケル、モリブデン、およびクロムを含む)、インコネル(Inconel)(登録商標)(主にニッケル、クロム、および鉄を含む)、コバール(Kovar)(登録商標)(主にニッケル、鉄、およびコバルトを含む)、低および高炭素鋼、並びにステンレス鋼(主に鉄、クロム、およびニッケルを含む)を含めて、金属モリブデンをさらに含む。好適な金属には、ニッケル、並びに、316ステンレス鋼、インコネル(登録商標)、ハステロイ(登録商標)、およびモネル(登録商標)などのニッケルを含む金属合金が含まれる。
【0028】
電解研磨した金属の表面粗さの程度は、マイクロインチ(またはμm)で表した算術平均粗度Raによって記述することができる。これは、電解研磨した金属の平均表面輪郭に関する全ての輪郭偏差(金属のトラフ深さおよびピーク高さ)の算術平均である。加熱ステップが電解研磨した金属内部壁を有する容器内で実行される本方法の実施形態の場合、内部壁は、約70マイクロインチ(1.75μm)以下、好ましくは約20マイクロインチ(0.5μm)以下、最も好ましくは約10マイクロインチ(0.25μm)以下のRa値を有する。
【0029】
本方法には、加熱ステップがセラミックアルミナから製造された内部壁を有する容器内の気相で実行される一実施形態が含まれる。セラミックアルミナは、きつく詰めた粉末形態のAlを焼成することによって形成される耐火材料を意味し、それは、場合により、若干のバインダー材料、例えば粘土を含む。かかるセラミックアルミナは、焼結と呼ばれるプロセス、すなわち、アルミナ粉体を、圧力下で同時に所望の形状で、ちょうどそれらの融点下まで加熱することによって形成することができる。焼結によってセラミックアルミナを形成する際、隣接する微粒子からの物質は、熱および圧力の影響を受けて、微粒子間に成長した「ネック」領域に拡散し、最終的に微粒子を一緒に結合する。粒子間の境界が成長するにつれて、最終段階で気孔が閉じて、もはや相互接続しなくなるまで、気孔は次第に減少する。あるいは、かかるセラミックアルミナは、アルミナ粉体を、それらの融点より上に加熱し、それらを所望の形状に鋳造することによって形成することができる。いずれの場合も、形成されたセラミックアルミナは、高度に緻密化した固体状の非多孔質アルミナ表面を含む。本発明の容器用の適切なセラミックアルミナは、例えばASTM方法C20(参照により本明細書に援用される)で測定して、3.4〜4.0グラム/ccの密度を有する。
【0030】
本方法には、加熱ステップがサファイヤから製造された内部壁を有する容器中の気相で実行される一実施形態が含まれる。サファイヤは、単結晶酸化アルミニウム(Al)を含む材料を意味する。それは単結晶であるので、サファイヤは、成型、引き抜き加工、または鋳造することができない。それは、選択された成長プロセスによって必然的に決められる特定の形状に「成長」させなければならない。合成または人工のサファイヤは、天然の原石と同じ単結晶菱面体構造を有するが、しかし、それは、もっと高純度であり、無色透明である。いくつかの結晶成長プロセスはニアネットシェイプを生成するが、ほとんどすべてのサファイヤ成分は、これらの形状から、様々な切削、研削、および研磨作業によって製造しなければならない。サファイヤは、非多孔質であり、水分を吸収しない。
【0031】
本方法は、場合により、加熱ステップが実行される領域の容器内部壁を、フッ素ガスを含む不動態化組成物と接触させて、不動態化された容器を製造するステップをさらに含むことができる。容器不動態化が実行される場合、本方法の加熱ステップの前にそれを行うことが好ましい。容器不動態化は、加熱ステップが実行される領域の容器内部壁を、不活性キャリヤーガス中の希釈したフッ素ガス、例えば、ヘリウムまたは窒素中の5体積パーセント・フッ素と接触させることによって、実行される。希釈したフッ素は、ほぼ周囲温度(例えば約25℃)で、ほぼ大気圧〜僅かに高い圧力(例えば55kPa(8psi))で約30分の時間、容器内部壁に接触させる。次いで、この容器を、任意選択で僅かに高い温度(例えば50℃)にもっていき、容器内部壁を、希釈したフッ素に約12時間の間接触させてもよい。次いで、この容器は、本方法の加熱ステップの開始前に純粋な不活性キャリヤーガスでパージされる。
【0032】
本方法は、三フッ化窒素と少なくとも1種の不純物の混合物中において、二フッ化二窒素および四フッ化二窒素よりなる群から選択される前記少なくとも1種の不純物の濃度を低減する。本明細書で定義した加熱ステップ温度、および十分な接触時間を使用すると、本方法は、前記少なくとも1種の不純物が実質的にない三フッ化窒素生成物を製造することができる。前記少なくとも1種の不純物が実質的にない三フッ化窒素生成物は、三フッ化窒素生成物が、約10ppm−モル以下、好ましくは約1ppm−モル以下、より好ましくは約0.1ppm−モル以下の前記少なくとも1種の不純物を含有することを意味する。さらに、本方法では、NFの2%未満の収率損失、ほとんどの場合1%未満の収率損失、ほとんどの場合0.5%未満の収率損失で前記三フッ化窒素生成物が製造される。
【0033】
本方法によって製造される三フッ化窒素生成物は、場合によりさらに処理して、不純物二フッ化二窒素および四フッ化二窒素が分解した生成物を除去することができる。例えば、本方法の加熱ステップは、不純物二フッ化二窒素および四フッ化二窒素を、窒素およびフッ素に分解する可能性がある。こうして製造されたフッ素は、周知のプロセスによって、例えば、この生成物を、水溶水酸化カリウム・スクラビング溶液に通過させることによって、あるいは、アルミナペレット、ゼオライト系モレキュラーシーブ、またはシリカゲルを詰めた床に通過させることによって、三フッ化窒素生成物から除去することができる。こうして製造された窒素は、周知のプロセスによって、例えば、三フッ化窒素生成物を蒸留することによって除去することができ、それによって、窒素は蒸留の塔頂留出物として除去され、三フッ化窒素は塔底生成物として回収される。
【実施例】
【0034】
(実施例1)
炭素鋼、非電解研磨316ステンレス鋼、15マイクロインチのRa(表面粗さ)を有する電解研磨した316ステンレス鋼、15マイクロインチのRaを有する電解研磨したニッケル、セラミックアルミナ、およびサファイヤを含む容器(管)内径0.491cmおよび外部加熱ゾーン長さ33cm(9.61cmの管体積を加熱)を、以下の手順によって不動態化した。ヘリウム中の5体積%フッ素のガス状混合物を、周囲温度で8〜10 psiの圧力で所与の管に加えた。このガス状混合物を直ちに排気し、この管に新しいガス状フッ素混合物を再圧入し、周囲温度で8〜10psiで30分間維持した。この時間の後、管を排気し、ガス状フッ素混合物を8〜10psiで再圧入し、管温度を50℃で18時間維持した。次いで、管を室温に冷却し、窒素でパージした。
【0035】
448ppm−モルの二フッ化二窒素(N)および356ppm−モルの四フッ化二窒素(N)を含有する三フッ化窒素(NF)のガス状流れを、そうしない場合空である管に供給した。三フッ化窒素を、大気圧(101.3kPa、14.7psia)、および14〜41秒の範囲の所与の管加熱ゾーン内の接触時間を提供する速度で、所与の管を経由して供給した。ガスクロマトグラフ質量分析計で生成物ガス組成を監視し、結果を表2〜7に与えた。
【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】

【0039】
【表5】

【0040】
【表6】

【0041】
【表7】

【0042】
表2〜7のデータからわかるように、加熱ステップ温度が上昇すると、三フッ化窒素ガスに残留する二フッ化二窒素の量が低減される。様々な温度での本発明のいくつかの管材料の有効性にはわずかな相違があるが、しかし、二フッ化二窒素を除去する能力においては全体としてそれらはかなり類似している。データを比較することからわかるように、接触時間が長くなるほど、三フッ化窒素ガスからの二フッ化二窒素の除去がより有効になる。
【0043】
表2−7のデータでは、試験した低い温度では、いくつかの管材料のそれぞれにおいて三フッ化窒素ガス流れを加熱すると、三フッ化窒素ガスから四フッ化二窒素を除去するとき、やはり有効であったことが示される。しかし、長い接触時間および高温度では、炭素鋼および非電解研磨ステンレス鋼は、四フッ化二窒素濃度の上昇を示し始める。本発明の容器材料(すなわち電解研磨したステンレス鋼、電解研磨したニッケル、セラミックアルミナ、およびサファイヤ)は、三フッ化窒素のさらなる望ましくない四フッ化二窒素不純物への劣化および収率損失を伴わずに、より高温度で操作することができるだろう。
【0044】
三フッ化窒素は、高温度である種の金属と反応して、四フッ化二窒素を形成することが知られている。コールバーン(Colburn)らは、(非特許文献1)において、三フッ化窒素は、高温度で銅、ステンレス鋼、および他の金属と反応して、最高で71%の収率で四フッ化二窒素を与えることを開示している。本発明者は、熱分解した三フッ化窒素流れ中の四フッ化二窒素をガスクロマトグラフ質量分析計で正確に測定し、電解研磨した金属、セラミックアルミナ、およびサファイヤよりなる群から選択される内部壁を有する管において、熱分解した三フッ化窒素流れ中に四フッ化二窒素が存在しないことは、かかる内部壁表面の存在下における三フッ化窒素分解によっては三フッ化窒素の収率損失が存在しないことを示す、と決定した。本発明者は、本方法の分解による三フッ化窒素のかかる収率損失のないことを、赤外分光によって確証することができた。例えば、純粋な三フッ化窒素を、243℃で14秒の接触時間で、セラミックアルミナ管を通過させ、赤外分光を使用して、三フッ化窒素の分解による三フッ化窒素の収率損失の上限レベルは0.5%であることことが決定された。
【0045】
(実施例2)
448ppm−モルの二フッ化二窒素(N)および356ppm−モルの四フッ化二窒素(N)を含有する三フッ化窒素(NF)のガス状流れを、内径0.491cmおよび外部加熱ゾーン長さ33cmのそうしない場合空である管に供給することができる。得られる加熱管体積は、9.61cmになるだろう。管は、非電解研磨316ステンレス鋼、および15マイクロインチのRa(表面粗さ)を有する電解研磨した316ステンレス鋼を含むことができる。これらの管は、三フッ化窒素混合物の処理前に、フッ素ガスを含む不動態化組成物で不動態化されないだろう。二フッ化二窒素および四フッ化二窒素を含有する三フッ化窒素の上述したガス状流れは、大気圧(101.3kPa、14.7psia)、および14〜41秒の範囲の管加熱ゾーン内の接触時間を提供する速度で、管に供給されるだろう。生成物ガス組成は、ガスクロマトグラフ質量分析計によって監視され、予期される結果は、表8および9に報告される。
【0046】
【表8】

【0047】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
三フッ化窒素と少なくとも1種の不純物との混合物において、二フッ化二窒素および四フッ化二窒素よりなる群から選択される前記少なくとも1種の不純物の濃度を低減する方法であって、
前記混合物を、電解研磨した金属、セラミックアルミナ、およびサファイヤよりなる群から選択される内部壁を有する容器中の気相で、少なくとも約150℃の温度で加熱するステップと、
前記少なくとも1種の不純物の濃度が低減された三フッ化窒素生成物を回収するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記加熱が、約150℃〜約300℃の温度で実行されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱が、約200℃〜約250℃の温度で実行されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記加熱が、約235℃の温度で実行されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記加熱の間、不活性キャリヤーガスが、前記混合物と共に存在することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記容器が、円筒状であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記容器が、充填物がないことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記容器の前記内部壁が、アルミニウム、クロム、コバルト、銅、金、鉄、ニッケル、銀、スズ、チタン、および亜鉛よりなる群から選択される電解研磨した金属を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記容器の前記内部壁が、ニッケルを含む電解研磨した金属であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記金属が、インコネル(登録商標)、ハステロイ(登録商標)、またはモネル(登録商標)を含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記容器の前記内部壁が、約70マイクロインチ以下のRa値を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記容器の前記内部壁が、約20マイクロインチ以下のRa値を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記容器の前記内部壁が、約10マイクロインチ以下のRa値を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記容器の前記内部壁を、フッ素ガスを含む不動態化組成物と接触させるステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記接触が、約25℃の温度、かつ約1気圧の圧力で実行され、前記不動態化組成物が、ヘリウム中に5体積パーセントのフッ素を含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記三フッ化窒素生成物が、約10ppm−モル以下の前記少なくとも1種の不純物を含有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
三フッ化窒素と少なくとも1種の不純物との混合物において、二フッ化二窒素および四フッ化二窒素よりなる群から選択される前記少なくとも1種の不純物の濃度を低減する方法であって、
容器に、電解研磨した金属、セラミックアルミナ、およびサファイヤよりなる群から選択される内部壁を提供するステップと、
前記容器の前記内部壁を、フッ素ガスを含む不動態化組成物と接触させることによって、不動態化された容器を形成するステップと、
前記混合物を、前記不動態化された容器中の気相で、約150℃〜約300℃の温度で加熱するステップと、
前記少なくとも1種の不純物の濃度が低減された三フッ化窒素生成物を回収するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
三フッ化窒素、並びに、二フッ化二窒素および四フッ化二窒素よりなる群から選択される少なくとも1種の不純物を含む三フッ化窒素組成物を精製する方法であって、
前記三フッ化窒素組成物を、ニッケルを含む電解研磨した金属の内部壁を有する容器中の気相で、約150℃〜約300℃の温度で加熱するステップと、
約10ppm−モル以下の前記少なくとも1種の不純物を含む三フッ化窒素生成物を回収するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
三フッ化窒素、並びに、二フッ化二窒素および四フッ化二窒素よりなる群から選択される少なくとも1種の不純物を含む三フッ化窒素組成物を精製する方法であって、
容器に、電解研磨した金属、セラミックアルミナ、およびサファイヤよりなる群から選択される内部壁を提供するステップと、
前記容器の前記内部壁を、フッ素ガスを含む不動態化組成物と接触させることによって、不動態化された容器を形成するステップと、
前記三フッ化窒素組成物を、前記不動態化された容器中の気相で、約150℃〜約300℃の温度で加熱するステップと、
約10ppm−モル以下の前記少なくとも1種の不純物を含む三フッ化窒素生成物を回収するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
不純物二フッ化二窒素および四フッ化二窒素を、三フッ化窒素から選択的に除去する容器であって、第1および第2の開口端、並びに、電解研磨した金属、セラミックアルミナ、およびサファイヤよりなる群から選択される内部壁を有するシリンダを含み、
前記内部壁は、フッ素ガスを含む不動態化組成物と接触させられていることを特徴とする容器。

【公表番号】特表2006−521279(P2006−521279A)
【公表日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509297(P2006−509297)
【出願日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/009183
【国際公開番号】WO2004/087569
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY