説明

三価のキュリウムから三価のアメリシウムを分離する方法

【解決手段】 本発明は、三価のキュリウムおよび三価のアメリシウムのカチオンを少なくとも含有する水溶液で三価のキュリウムから三価のアメリシウムを分離する方法において、上記水溶液を0.01モル/L〜1モル/Lの酸濃度のもとで、一般式(4)
【化1】


[式中、Rはフェニルまたはナフチルであり、
はフェニルまたはナフチルであり、
並びにメチル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル−、シアノ−、ニトロ−、ハロゲニル基(Cl、F、Br、I)で置換されたRおよびRの残基であり、その際にRおよびRはメチル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル−、シアノ−、ニトロ−、ハロゲニル基(Cl、F、Br、I)の群から選択される少なくとも1種類の基で置換されていてもよい。]
で表されるビス(アリール)ジチオホスフィン酸並びに一般式(5)
【化2】


[式中、Xおよび/またはYおよび/またはZはRO(=アルコキシ)またはR(=アルキル)であり、その際にRは分岐していてもおよび/または直鎖状でもよい。]
で表される相乗剤を含有する有機溶剤と接触させることを特徴とする、上記分離方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の上位概念に従って三価のキュリウムから三価のアメリシウムを分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三価のアクチニド類、例えばアメリシウム(Am)またはキュリウム(Cm)、三価のランタニド類の分離には久しい依然から問題がある。これらの元素を分離する場合の困難の原因になっているのは、ランタニド類およびアクチニド類の三価イオンの化学的および物理的挙動が非常に類似していることにある。非常に類似するイオン半径が特にこれら両方の元素群の類似の挙動に寄与している。例えばアクチニド類およびランタニド類の三価のイオンをできるだけ高い選択率および高効率で分離するたくさんの試みがなされてきた。
【0003】
錯塩形成性構造成分として窒素または硫黄を含有するソフトなドナー基を有する抽出剤が液−液抽出の際に三価のアクチニド類に対して選択率が小さいが、三価のアクチニド類が沈殿物を形成する傾向がある比較的に高いpH値のもとでのみ、従来に分離することができることが確かに公知である。
【0004】
K. L. Nashの刊行物、“Solvent Extr. Ion Exch. 11 (4)”, 729-768 (1993)から公知のタルスピーク法(Talspeak Prozess)によれば、三価のアクチニド類を溶液状態で含有する錯塩化剤によるランタニド類の選択的抽出は可能である。しかしながらこの分離法は、3〜4の比較的に高いpH値において再び行いそして別の塩を添加することを必要とする。
【0005】
三価のアクチニド類および三価のランタニド類を含有する水溶液から三価のアクチニド類を抽出する、本発明者が使用する方法は、0.01〜2モル/L(HNO)の高い酸濃度で分離することを可能とする(ヨーロッパ特許第1,019,552号明細書(B1))。この方法によれば、三価のランタニド類およびアクチニド類よりなる混合物を含有するかゝる酸性水溶液が、抽出剤としてビス(アリール)ジチオホスフィン酸を相乗剤の添加下に含有する有機溶剤で抽出される。この方法では、低いpH値あるいは高い酸濃度のために三価のアクチニド類の沈殿物形成が阻止されそして既に良好な分離結果が達成される。この場合、分離挙動を評価するために引用されるデータは分配係数D並びに分離係数SF(Separation Factor)である:
An(III) = [An(III)org]/[An(III)w] (1)
式1の記号は以下の意味を有する:
An(III) = 三価のアクチニドの分配係数(無次元)
[An(III)org] = 有機相中の三価のアクチニドの濃度(モル/L)
[An(III)w] = 水性相中の三価のアクチニドの濃度(モル/L)。
【0006】
Ln(III) = [Ln(III)org]/[Ln(III)w] (2)
式2の記号は以下の意味を有する:
Ln(III) = 三価のランタニドの分配係数(無次元)
[Ln(III)org] = 有機相中の三価のランタニドの濃度(モル/l)
[Ln(III)w] = 水性相中の三価のランタニドの濃度(モル/L)。
【0007】
SF= DAn(III)/DLn(III) (3)
SF= 分離係数(無次元)
SF=1の分離係数では分離は不可能である。
【0008】
強酸性媒体中でビス(アリール)ジチオホスフィン酸を用いてこの方法で達成される、三価のアクチニド類と三価のランタニド類との間の分離係数SFは、相乗剤に依存して20〜2000の間にある。
【0009】
液状の高活性廃棄物、ピュレクス(PUREX)-法 のラフィネート(Madic, C. アクチニドおよび核分裂生成物の区分および変換の第六回情報交換会議(6thInformation Exchange Meeting on Actinide and Fission Product Partitioning and Transmutation)、マドリッド、スペイン、2000年12月11〜13日、EUR 19783, 2001, 第53〜64頁)からの三価のアクチニド類An(III)およびCmを分離する色々な方法が存在する。第一段階においてAn(III)をランタニド類Ln(III)と一緒に共抽出しそして分解生成物(例えばMo、Zr、Cs、Fe、等)の大部分を分離する。TRUEX、TRPOおよびDIAMEX法は最も良く知られた方法に属する。これら全ての方法の場合には、更に分離することに従来大きな問題があったAn(III)/Ln(III)フラクションが生じる。強い酸性溶液からAn(III)/Ln(III)を選択的に分離する抽出剤は従来には存在していない。しかしながら長命のアクチニド類を最初に分離し(分配、P)そして次に変換Tによって排除するP&T核燃料循環を考える場合には、An(III)/Ln(III)の分離は次の理由で許されない。
− 分裂生成物の約1/3はランタニド類がある。
− Ln(III)はAn(III)と同じ酸化状態(III)を有しそして化学的性質がAn(III)の性質と非常に類似している。
− 幾種類かのランタニド類は非常に大きい中性子捕獲断面積を有しそして変換に関して中性子毒として作用する。
【0010】
ダイヤメックス(DIAMEX)−法においてマレイン酸ジアミドによりAn(III)/Ln(III)は3〜4モル/LのHNOを含有するピューレックス法ラフィネートから一緒に抽出される。薄いHNOでの逆抽出の後で、主としてAn(III)およびLn(III)よりなり並びに約0.5モル/LのHNO濃度を有する生成物が得られる(Madic, C.; Hudson, M.J.; Liljenzin, J.O.; Glatz, J.P.; Nannicini, R.; Facchini, A.; Kolarik, Z.; Odoj, R. New partitioning techniques for minor actinides(少量のアクチニドのための新規な分配法), European report, EUR 19149, 2000)。
【0011】
本発明者によって、硝酸溶液(0.5〜1.0モル/L(HNO))からアクチニド−ランタニド類を分離する方法が開発された。この方法はALINA−法(Actinide (III)-Lanthanide(III) Intergroup separation in Acidic Medium(酸性媒体中でのアクチニド(III)−ランタニド(III)-集団間分離)の名称で知られている(Modolo, G.; Odoj, R.; Baron, P. “The ALINA Process for An(III)/Ln(III) Group Separation from strong Acidic Medium(強酸媒体からAn(III)/Ln(III)群を分離するALINA法)”, Proceedings of Global 99, International Conference on Future Nuclear Systems, Jackson Hole, Wyoming, USA, August 29 - September 3, 1999; American Nuclear Society, Inc.)。抽出剤としては芳香族ジチオホスフィン酸とトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)との混合物を第三ブチルベンゼンン中で使用した。新規の抽出剤の合成についての詳細、それの放射線分解安定性並びにAn(III)/Ln(III)分離のためのその適合性は(Modolo, G.; Odoj, R. “Synergistic selective extraction of actinides(III) over lanthanides from nitric acid using new aromatic diorganyldithiophosphinic acids and neutral organophosphorus compounds,Solvent Extr. Ion Exch.(新規の芳香族ジオルガニルジチオホスフィン酸および中性有機リン化合物を用いての硝酸からアクチニド(III)のランタニド類に優先しての相乗的選択抽出、溶剤抽出、イオン交換)”、1999, 17(1),第33〜53頁) に開示されている。
【0012】
勿論、アメリシウムおよびキュリウムの分離はアクチニド(III)-/ランタニド(III)分離よりも更に困難でありそしてそれ故にプロセス化学へのより大きな要求である。これは以下の根拠を有している:
三価の状態ではアメリシウムおよびキュリウムは殆ど同じイオン径(0.99Åと0.986Å)であるために非常に類似した化学的性質を有している。アメリシウムは高い酸化状態(IV、V、VI)において非常に強い酸化剤として作用しそしてそれ故に異原子価のアクチニド類を分離するために公知の湿式冶金法(液-液抽出法、例えばピューレックス法)は三価までのあらゆる酸化段階が不安定であるために適していない。
【0013】
それ故に文献には従来、アメリシウムおよびキュリウムを三価の自然な酸化段階において互いに分離することができる湿式冶金法は開示されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
それ故に本発明の課題は、特に高い分離係数SFを有する、アメリシウムおよびキュリウムを分離する方法を提供することである。この新規の方法はランタニド−アクチニドを分離する既に公知の方法を良好に統合でき、あるいは包含できるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題は、請求項1の上位概念から出発して、本発明に従って請求項1の特徴部分の構成要件によって達成されるべきである。
【0016】
本発明の方法では、アメリシウム(III)およびキュリウム(III)を10のオーダーの分配係数で分離することを可能とする。これはアメリシウム(III)/キュリウム(III)−分離の他にアクチニド(III)-/ランタニド(III)−分離も可能とする。
【0017】
本発明の有利な別の実施態様を従属形式の請求項に示してある。
【0018】
図面は概略的方法を例示している。
【0019】
図1:ピューレックス法に関連してアメリシウム(III)およびキュリウム(III)のための本発明に従う分離法の概略図を示している。
【0020】
図2:ランタニド溶液から最初にアメリシウム(III)およびキュリウム(III)の両方のカチオンを一緒に分離しそしてその後にアメリシウム(III)をキュリウム(III)から分離する方法工程の概略図を示している。
【0021】
本発明の方法によれば水性相中に存在するアメリシウム(III)およびキュリウム(III)のイオンを分離することができる。この場合、溶液は他のランタニド類および/またはアクリニド類並びに他の成分を含有していてもよい。
【0022】
この目的のためにはアメリシウム(III)およびキュリウム(III)を含有する水溶液を抽出剤および相乗剤を含有する有機相と接触させる。
【0023】
有機溶剤としては種々の系が該当する。例えば純粋な溶剤並びに少なくとも2種類の溶剤成分を含有する溶剤混合物を使用することもできる。
【0024】
芳香族溶剤、特に室温で液状の溶剤、例えばベンゼン、トルエン、第三ブチルベンゼン、キシレン、ビス-またはトリス-(第三ブチル)-ベンゼン、イソプロピルベンゼン、ビス-またはトリス-(イソプロピル)-ベンゼンを単独でまたは少なくとも2種類の成分の混合物の状態で使用することができる。
【0025】
更に分岐したおよび/または直鎖状の脂肪族溶剤、例えばC〜C14の鎖長の室温で液状の通例の脂肪族溶剤を単独でまたは少なくとも2種類の成分を含む混合物状態で使用することができる。特にn−ヘキサン、c−ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ケロシンまたはTPHが有利である。
【0026】
溶剤は芳香族溶剤と脂肪族溶剤との混合物を使用するのが好ましく、芳香族溶剤を主成分として、即ち>50%含有するのが特に有利である。
【0027】
溶剤としては例えばトルエン、ヘキサン、トルエンとヘキサンとの混合物、イソオクタンと第三ブチルベンゼンとの混合物が例示できる。
【0028】
有機溶剤は好ましくは芳香族成分、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、第三ブチルベンゼンを含有する溶剤または純粋な芳香族溶剤である。
【0029】
本発明の一つの実施態様においては溶剤として、トルエン、キシレン、第三ブチルベンゼン、並びにビス−またはトリス−(第三ブチル)−ベンゼン、イソプロピルベンゼン、ビス−またはトリス(イソプロピル)−ベンゼンよりなる群から選択される少なくとも1種類の成分を使用する。これらの溶剤の使用が追加的なプラスの効果をもたらす。即ち、アクチニド類Am(III)およびCm(III)の分配係数が追加的に改善される。分離係数は約10のまま一定している。
【0030】
分配係数にとって有効な溶剤の順序は以下の通りである:ベンゼン<トルエン<キシレン<第三ブチルベンゼン<n−ヘキサン/トルエン(50/50、表4)ビス−(イソプロピル)−ベンゼン、トリイソプロピルベンゼン、ビス−(第三−ブチル)ベンゼン、トリス−(第三ブチル)−ベンゼン。
【0031】
有機相中に存在する抽出剤は、芳香族ジチオホスフィン酸、好ましくはビス(クロロフェニル)ジチオ−ホスフィン酸が有利である。
【0032】
抽出は、一般に、抽出剤として一般式(4)
【0033】
【化1】

【0034】
[式中、Rはフェニルまたはナフチルであり、
はフェニルまたはナフチルであり、
並びにメチル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル−、シアノ−、ニトロ−、ハロゲニル基(Cl、F、Br、I)で置換されたRおよびRの残基であり、その際にRおよびRはメチル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル−、シアノ−、ニトロ−、ハロゲニル基(Cl、F、Br、I)の群から選択される少なくとも1種類の基で置換されていてもよい。]
で表されるビス(アリール)ジチオホスフィン酸RPS(SH)を含有する有機溶剤によって行われる。これらの基は例えば抽出剤のビス(アリール)ジチオホスフィン酸の酸性度を高め、特に良好な抽出挙動をもたらす置換基である。抽出剤の酸性度を高めることは重要であるが、置換基の正確な位置はあまり重要ではない。
【0035】
有機相中に存在する相乗剤は好ましくはX、Y、Z=ROであるトリアルキルホスファート(式(5))、好ましくはトリス(エチルヘキシル)ホスファート(TEHP)またはX、Y、Z=Rであるトリアルキルホスフィンオキシド、例えばトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)である。
【0036】
【化2】

【0037】
Xおよび/またはYおよび/またはZがRO(=アルコキシ)またはR(=アルキル)であり、その際にRが分岐していてもおよび/または直鎖状でもよく、かつ好ましくはC〜C10−のものである。この場合、残基X、Y、Z、RまたはROの全てが存在していてもよい。しかしながらX、Y、Z、ROまたはRの1つまたは2つの残基が存在していてもよい。
【0038】
有機相は特に好ましくは、トリオクチルホスファート(式(6))、トリス−(2−エチルヘキシル)ホスファート(式(7))およびトリス−(2−プロピルペンチル)−ホスファート(式(8))よりなる群から選択される少なくとも1種類の相乗剤を含有している。
【0039】
【化3】

【0040】
本発明の相乗剤の添加で分離係数SFの著しい増加が実現される。
【0041】
キュリウム(III)からアメリシウム(III)を分離する際の選択率が著しく増加される。
【0042】
Cm(III)からAm(III)の分離は、材料および材料の性質および抽出剤の、相乗剤のおよび溶剤の濃度に左右されている酸濃度のもとで実施する。この条件は、Am(III)の分配係数が1より大きくそしてCm(III)のそれが結果として1より小さいように調整しなければならない。0.5モル/L (ClPh)PSSH+0.15モル/L TEHPについての2種類の異なる溶剤について可能な酸濃度を表4に例示する。H−濃度は本発明に従う分離の場合には0.01〜1モル/Lの間にあることができる。特に0.05〜0.5モル/Lの範囲が特に有利である。酸としては例えばHCl、HSO、およびHNOは容易に溶解する塩を形成するので、特にHNOを使用することができる。
【0043】
本発明の方法ではAm(III)およびCm(III)はこれらの成分を単独で含有する溶液から並びに追加的イオンあるいはカチオン、例えばアルカリ金属元素、アルカリ土類金属を含有し並びにランタニド類(III)およびアクチニド類(IV、V、VI)を含有する溶液から分離することができる。
【0044】
従来技術に従ってアクチニド(III)/Ln(III)を分離するためにジチオホスフィン酸で抽出する実験の場合には、従来には、アメリシウム(III)およびキュリウム(III)が類似の挙動および同じ抽出特性を有し、即ち類似の分配係数、従ってSFAm/Cm〜1を有することから出発している。それ故にキュリウム(III)は従来には考慮されていなかった。キュリウム(III)を用いる抽出実験の結果は驚くべきことに、両方のアクチニド元素の色々な挙動を示す。本発明に従って、組成を表1に示したアクチニド(III)/ランタニド(III)合成溶液を用いて抽出実験を実施した。これらのアクチニド(III)/ランタニド(III)溶液はアクチニド(III)のためのダイアメクス法ではピューレックス・ラフィネートから生じる。
【0045】
表1:Am−241およびCm−244でトレースされたダイアメクス法からの濃厚なアクチニド(III)/ランタニド(III)合成溶液の組成。ランタニド(III)の濃度は予想される濃度の2.5倍または10倍に相当する。それ故に、KF=2.5および10である:
【0046】
【表1】

【0047】
抽出実験の結果を表2および3に示す。Y、Nd、Sm、EuおよびGdの分配係数はLa、CeおよびPrのそれよりも明らかに小さいことがわかる。
Ceは最も良好に抽出できるランタニドである。結果として例えばAm/Eu分離係数は非常に高い(SFAm/Eu > 1000)が、例えばAm/Ce分離係数はたったの中くらい(SFAm/Ce = 25-40)程度である。連続的にAm(III)/Ln(III) を分離するためには、これらの分離係数は十分以上である。しかしながらCmの分配係数はAmのそれよりも10倍以上小さいので、(SFAm/Cm = 10) はCmの分離をも可能とする。
【0048】
表3の結果はこの抽出系(ClPh)2PSSH+ TEHPで濃厚化もされたAn/Ln溶液(KF=10)をも処理できることも説明している。表2の値との比較で、同じ条件のもとであらゆる元素の分配係数が確かに幾分小さいが、分離係数SFAm/Eu、SFAm/Ce、SFCm/Eu およびSFCm/Ce は増加する。
【0049】
この場合に2000以上の高いAm/EuおよびAm/Gd分離係数が達成されることは注目に値する。Am/Ce−分離係数は既にほぼ10のオーダーで小さく、36〜40である。
【0050】
Am/Cm分離係数はここでも約10である。文献には従来比較的に高い分離係数は言及されなかったことをここに記載する。従来には2以下の値しか知られていない。
【0051】
表2:
Am(III)-/Ln(III)-合成溶液から20%のイソオクタン/第三ブチルベンゼン中で0.4モル/L(ClPh)2PSSH +0.15モル/L TEHPを用いてのAm(III)、Cm(III)およびランタニド類(III)の抽出
有機相:
20%のイソオクタン/第三ブチルベンゼン中0.4モル/L(ClPh)2PSSH + 0.15モル/LTEHP。
水性相:
色々なHNO−濃度を有する表1の組成を有するAn(III)/Ln(III)合成溶液
【0052】
【表2】

【0053】
表3:
Am(III)-/Ln(III)-合成溶液から20%のイソオクタン/第三ブチルベンゼン中0.4モル/L(ClPh)2PSSH + 0.15 モル/L TEHPを用いてのAm(III)、Cm(III)およびランタニド(III)の抽出
有機相:
20%のイソオクタン/第三ブチルベンゼン中0.4モル/L(ClPh)2PSSH + 0.15 モル/L TEHP。
水性相:
色々なHNO−濃度を有する表1の組成を有するAn(III)/Ln(III)合成溶液
【0054】
【表3】

【0055】
表4に、硝酸溶液からAm(III)-/Cm(III)-分離するための幾つかの抽出結果を記載している。この結果は、分配係数が溶剤に著しく影響されるが、Am/Cm分離係数SFAm/Cm は殆ど影響されないことを示している。AmおよびCm(共通の溶液)の分配係数はアルファスペクトロスコピー(Alphaspektroskopie)によって測定しそしてAmのそれは追加的にガンマスペクトロスコピー(Gammaspektroskopie)で測定した。アルファスペクトロスコピーは、両方の核種(ここではAm−241およびCm−244)が同時に測定できるという長所を有している。
表4:
0.5モル/L (ClPh)2PSSH + 0.15 モル/L TEHPを用いてAm(III)およびCm(III)を溶剤に依存して抽出
有機相:
種々の溶剤中の0.5モル/L(ClPh)2PSSH + 0.15 モル/L のトリスエチルヘキシルホスファート。
水性相:
Am−541およびCm−244のトレーサー量、色々なHNO−濃度
【0056】
【表4】

【0057】
本発明の方法は図1に示した様に、公知の分離法に応用する。図1には、ウランおよびプルトニウム(ネプツニウム)の分離、並びにHAW(ピューレックス・ラフィネート)からの三価のアクチニド類のアメリシウムおよびキュリウムを続いて分離するために、燃焼済み核燃料元素の再処理によって、分離法が概略図から判るように図示してある:燃焼済み燃料元素は、U、PuおよびNpが分離されるピューレックス法に戻すことができる。高い活性の液状廃棄物(HAW)はアクチニド類(III)およびランタニド類(III)の分離段階に戻される。
【0058】
分離されたアクチニド類(III)およびランタニド類(III)を次いでアクチニド(III)の選択的分離段階に戻され、それは例えばヨーロッパ特許第1019552号明細書に従う方法によって実施することができる。
【0059】
ヨーロッパ特許第1019552号明細書に従う方法によれば、水性相中に例えばランタニド類(Cer)、(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオヂム(Nd)、プロメチウム(Pr)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテニウム(Lu)、並びにランタン(La)およびイットリウム(Y)の三価のイオンまたはこれらの群から選ばれる少なくとも1種類の成分および三価のアクチニド類のイオン、例えばアメリシウム(Am)およびキュリウム(Cm)のそれを含有している。この水性相は0.01〜2モル/Lの強酸のH濃度に相当する低いpH値を有している。酸としてはHCl、HSOを、およびHNOは容易に溶解する塩を形成するので、特にHNOを使用することができる。抽出は、抽出剤として一般式(4)
【0060】
【化4】

【0061】
[式中、Rはフェニルまたはナフチルであり、
はフェニルまたはナフチルであり、
並びにメチル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル−、シアノ−、ニトロ−、ハロゲニル−(Cl、F、Br、I)で置換されたRおよびRの残基であり、その際にRおよびRはメチル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル−、シアノ−、ニトロ−、ハロゲニル基(Cl、F、Br、I)の群から選択される少なくとも1種類の基で置換されていてもよい。]
で表されるビス(アリール)ジチオホスフィン酸RPS(SH)を含有する有機溶剤によって行う。これらの基は例えば抽出剤のビス(アリール)ジチオホスフィン酸の酸性度を増加させる置換基であり、これらは特に有利な抽出挙動をもたらす。抽出剤の酸性度を高めることは重要であるが、置換基の正確な位置はあまり重要ではない。
【0062】
有機相は例えばトリオクチルホスファート(式(6))、トリス−(2−エチルヘキシル)ホスファート(式(7))およびトリス−(2−プロピルペンチル)−ホスファート(式(8))よりなる群から選択される少なくとも1種類の相乗剤を含有している。
【0063】
【化5】

【0064】
しかしながら一般式(5)の相乗剤も使用することができる。
【0065】
相乗剤の添加で分離係数SFの著しい増加が達成される。ランタニド類からアクチニドを分離する際の選択率は著しく増加する。
【0066】
有機溶剤は芳香族成分、例えばベンゼンを含有する溶剤または純粋な芳香族溶剤が有利である。
【0067】
本発明の特に有利な一つの実施態様においては溶剤としてはトルエン、キシレン、第三ブチルベンゼン、並びにビス−またはトリス−(第三ブチル)−ベンゼン、イソプロピルベンゼン、ビス−またはトリス(イソプロピル)−ベンゼンよりなる群から選択される少なくとも1種類の成分を使用する。これら溶剤の使用が2つの追加的プラス効果をもたらす。その一つはAn3+抽出の選択率を更に向上させ、もう一つは分配係数DAn(III)を追加的に改善する。
【0068】
分離係数SFおよび分配係数にとって有効な順序は以下の通りである:ベンゼン<トルエン<キシレン<第三ブチルベンゼン<ビス−(イソプロピル)−ベンゼン、トリイソプロピルベンゼン、ビス−(第三−ブチル)ベンゼン、トリス−(第三ブチル)−ベンゼン。
【0069】
次にアメリシウム(III)およびキュリウム(III)の分離を本発明の方法で行う。
【0070】
本発明の方法の方法工程は図2に例示している。図2はアクチニド(III)/キュリウム(III)を分離するためのLUCA法および続いてのアメリシウム/キュリウムを分ける図示している。
【0071】
この具体例においてはアクチニド類(III)をアメリシウム(III)およびキュリウム(III)並びにランタニド類(III)を含有する0.1モル/LのHNO含有水溶液から、0.4モル/L (ClPh)2PSSH および0.15 モル/L のトリスエチルヘキシルホスファートよりなる有機溶剤中抽出剤で抽出処理する。次いで0.3モル/LのHNO含有溶液を用いてキュリウム(III)を再抽出する。その後にアメリシウム(III)を1.0モル/LのHNOで逆抽出する。
【0072】
フローシートは次の通りである:
1)AmおよびCmの選択的抽出。ランタニド類Ln(III)、ここではY、La、Ce、Pr、Nd、Sm、EuおよびGdがラフィネート中に留まる(図中、Ln(III))。
2)Cm(III)の選択的ストリッピング。
3)Am(III)のストリッピング。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】ウランおよびプルトニウム(ネプツニウム)の分離、並びにHAW(ピューレックス・ラフィネート)からの三価のアクチニド類のアメリシウムおよびキュリウムを続いて分離するための、燃焼済み核燃料元素の再処理による分離法の概略図である。
【図2】アクチニド(III)/キュリウム(III)を分離するためのLUCA法および続いてのアメリシウム/キュリウムを分ける図示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
三価のキュリウムおよび三価のアメリシウムのカチオンを少なくとも含有する水溶液で三価のキュリウムから三価のアメリシウムを分離する方法において、上記水溶液を0.01モル/L〜1モル/Lの酸濃度のもとで、一般式(3)
【化1】

[式中、Rはフェニルまたはナフチルであり、
はフェニルまたはナフチルであり、
並びにメチル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル−、シアノ−、ニトロ−、ハロゲニル−(Cl、F、Br、I)基で置換されたRおよびRの残基であり、その際にRおよびRはメチル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル−、シアノ−、ニトロ−、ハロゲニル−(Cl、F、Br、I)基の群から選択される少なくとも1種類の基で置換されていてもよい。]
で表されるビス(アリール)ジチオホスフィン酸並びに一般式(5)
【化2】

[式中、Xおよび/またはYおよび/またはZはRO(=アルコキシ)またはR(=アルキル)であり、その際にRは分岐していてもおよび/または直鎖状でもよい。]
で表される相乗剤を含有する有機溶剤と接触させることを特徴とする、上記分離方法。
【請求項2】
有機溶剤が芳香族溶剤、脂肪族溶剤またはそれらの混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
芳香族溶剤がベンゼン、トルエン、第三ブチルベンゼン、キシレン、ビス−またはトリス−(第三ブチル)−ベンゼン、イソプロピルベンゼン、ビス−またはトリス(イソプロピル)−ベンゼンよりなる群から選択される少なくとも1種類の成分である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
脂肪族溶剤が、C〜C14の鎖長の分岐したまたは直鎖状の脂肪族溶剤よりなる群から選択される少なくとも1種類の成分である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
脂肪族溶剤がn−ヘキサン、c−ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ケロシンまたはTPHよりなる群から選択される少なくとも1種類の成分である、請求項2または4に記載の方法。
【請求項6】
芳香族溶剤を主成分として使用する、請求項2〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
ランタニド−アクチニド分離法を後続させる、請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【請求項8】
ランタニド−アクチニド分離法が、タルスピーク(Talspeak)-法、トルエックス(TRUEX)-法、TRPO−法またはダイアメックス(Diamex)-法である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ランタニド−アクチニド分離法が、水溶液からアクチニドを一般式(4)
【化3】

[式中、Rはフェニルまたはナフチルであり、
はフェニルまたはナフチルであり、
並びにメチル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル−、シアノ−、ニトロ−、ハロゲニル−(Cl、F、Br、I)で置換されたRおよびRの残基であり、その際にRおよびRはメチル−、エチル−、プロピル−、イソプロピル−、シアノ−、ニトロ−、ハロゲニル−(Cl、F、Br、I)の群から選択される少なくとも1種類の成分で置換されていてもよい。]
で表されるビス(アリール)ジチオホスフィン酸並びに一般式(5)
【化4】

[式中、Xおよび/またはYおよび/またはZはRO(=アルコキシ)またはR(=アルキル)であり、その際にRは分岐していてもおよび/または直鎖状でもよい。]
で表される相乗剤を含有する溶剤で抽出する方法である、請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−503526(P2007−503526A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524215(P2006−524215)
【出願日】平成16年8月14日(2004.8.14)
【国際出願番号】PCT/DE2004/001818
【国際公開番号】WO2005/021810
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(390035448)フォルシュングスツェントルム・ユーリッヒ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (100)
【Fターム(参考)】