説明

三価クロム化成皮膜処理剤、三価クロム化成皮膜処理方法および三価クロム化成皮膜処理物

【課題】皮膜化成に際して強いエッチングを必要とせず、亜鉛や亜鉛系合金等、従来の処理では強いエッチングにより基材表面にスマットが発生しやすい金属上にも均一で美しい外観の高耐食性三価クロム化成皮膜を形成する技術を提供すること。
【解決手段】1)三価クロム化合物およびコバルト化合物、2)塩素イオン、硝酸イオン、硫酸イオンから選択される少なくとも1種の供給源、3)有機酸または有機酸塩を含み、これに更に4)アリルアミン、ポリアリルアミン、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物およびこれらの誘導体から選択される少なくとも1種を含有する三価クロム化成皮膜処理剤と、それを使用する金属表面の処理方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属例えば鉄、亜鉛めっき、亜鉛系合金めっき、亜鉛ダイカスト、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金を三価クロム化成皮膜処理剤に浸漬することにより金属表面に三価クロム化成皮膜を形成し金属基材に耐食性を付与する技術における三価クロム化成皮膜処理剤、三価クロム化成皮膜処理方法および三価クロム化成皮膜処理物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄系材料及び部品の防錆処理として、亜鉛又は亜鉛系合金めっき(以下、亜鉛めっきと称す)が最も広く一般的に利用されている。しかしながら、亜鉛めっきされた鉄系材料及び部品は、そのまま使用すると亜鉛の錆である白錆がすぐに発生してしまうため、通常は更に保護皮膜を形成させることが一般的である。亜鉛めっきに通常施される保護皮膜としてクロメート皮膜処理が一般的であり、このクロメート皮膜処理は更に電解クロメート処理、塗布型クロメート処理及び反応型クロメート処理の3種類に分類される。クロメート処理は亜鉛めっきに限定されず、亜鉛ダイカスト、アルミニウム、カドミニウム、マグネシウムなどにも施される。
【0003】
クロメート皮膜は安価で容易に実用的な耐食性を得られるために広く利用されているが、クロメート処理はいずれも有害な六価クロムを使用するために処理液のみならず、処理品から溶出する六価クロムが人体や環境へ悪影響があるとして近年、大きな問題となっている。
【0004】
六価クロムの公害上の問題を解決するためにこれまで種々の発明が特許出願されている。例えば、特許文献1では5〜100g/Lの三価クロム、有機酸、コバルト等の金属を含有し、20〜100℃、pH2〜2.5に調整した処理液に浸漬して金属基材表面に保護皮膜を得る方法が開示されている。この方法では保護皮膜を厚膜化させることにより耐食性を得ているが、厚膜化のためには金属基材表面のエッチング量を増やさなければならず、高温、低pHでの処理が必要となる。しかしながら、亜鉛−ニッケル合金めっき等の一部亜鉛系合金めっきにおいては強いエッチングにより金属基材表面にスマットが発生してしまい外観上好ましくない上、耐食性能上も不十分な化成皮膜となってしまう欠点がある。更に、高温処理であるために槽の材質によっては使用できない場合もある。
また、特許文献2ではシリコン化合物を含有し、三価クロムとシュウ酸を0.5〜1.5のモル比で含有し、三価クロムがシュウ酸との水溶性錯体で存在し、コバルトイオンを含有する処理液で亜鉛および亜鉛合金めっき上に防錆皮膜を形成する方法が開示されている。この方法では10〜40℃という比較的低い温度での処理が可能であるという利点があるが、皮膜生成機構上基材表面の強いエッチングが必要であり、特許文献1同様に亜鉛−ニッケル合金めっき等の一部亜鉛系合金めっきにおいては強いエッチングにより金属基材表面にスマットが発生してしまい外観上好ましくない上、耐食性能上も不十分な化成皮膜となってしまう欠点がある。
亜鉛−ニッケル合金めっき上に防錆皮膜を形成させる方法としては特許文献3で三価クロムと亜鉛を含み、pH1.5〜5.5の範囲の処理液に浸漬させる方法が開示されている。この方法では亜鉛の添加により厚膜化に際し強いエッチングが必要ないため亜鉛−ニッケル合金めっき上に外観上好ましい防錆皮膜を形成することが可能である。しかし、この方法は処理液中の亜鉛の影響により処理液に沈殿が発生しやすく、更に防錆皮膜中に多量に亜鉛を取り込んでしまうために高温高湿環境下で外観が低下しやすい欠点がある。
また、特許文献4では(A)三価クロムと;(B)硫酸イオン、硝酸イオン、塩素イオン、塩素の酸素酸イオン及びホウ素の酸素酸イオンよりなる群から選ばれた2種以上のアニオンと;(C)アルカリ金属、アルカリ土類金属、チタン、ジルコニウム、バナジウム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、金、銀、銅、錫及びアルミニウムよりなる群から選ばれた3種以上の金属イオンと;(D)酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、琥珀酸、酪酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ジグリコール酸、アスコルビン酸、アンモニア、アミン化合物及びそれらの塩よりなる群から選ばれた1種以上の錯化剤を含有するpH0.5〜6の処理液にて防錆皮膜を形成する方法が開示されている。この方法では亜鉛−ニッケル合金めっき上に優れた耐食性を有する防錆皮膜を形成することができる。しかし、電気めっきにおいては電流の流れにくい部位にめっきが析出しない現象、いわゆる不めっき部分が発生し、このような部分には防錆皮膜を形成することができず、乾燥までの間に露出した鉄材が腐食する場合がある。従って、不めっきが発生しやすい形状の品物を処理する際は別途防錆剤への浸漬処理が必要になるという欠点がある。
【0005】
【特許文献1】特表2000−509434号公報
【特許文献2】特開2003−166075号公報
【特許文献3】特開2005−126797号公報
【特許文献4】特開2005−240068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では保護皮膜を厚膜化させることにより耐食性を得ているが、厚膜化のためには金属基材表面のエッチング量を増やさなければならず、高温、低pHでの処理が必要となるが、亜鉛−ニッケル合金めっき等の亜鉛系合金めっきにおいては強いエッチングにより金属基材表面にスマットが発生してしまい外観上好ましくない上、耐食性能上も不十分な化成皮膜となってしまう欠点がある。更に、高温処理であるために槽の材質によっては使用できない場合もある。
また、特許文献2では、亜鉛−ニッケル合金めっき等の亜鉛系合金めっきにおいては強いエッチングにより金属基材表面にスマットが発生してしまい外観上好ましくない上、耐食性能上も不十分な化成皮膜となってしまう欠点がある。
特許文献3の方法では亜鉛の添加により厚膜化に際し強いエッチングが必要ないが、処理液中の亜鉛の影響により処理液に沈殿が発生しやすく、更に防錆皮膜中に多量に亜鉛を取り込んでしまうために高温高湿環境下で外観が低下しやすい欠点がある。
また、特許文献4に記載の方法では亜鉛−ニッケル合金めっき上に優れた耐食性を有する防錆皮膜を形成することができが、電気めっきにおいては電流の流れにくい部位にめっきが析出しない現象、いわゆる不めっき部分が発生し、このような部分には防錆皮膜を形成することができず、乾燥までの間に露出した鉄材が腐食する場合がある。
【0007】
本発明は金属例えば鉄、亜鉛めっき、亜鉛系合金めっき、亜鉛ダイカスト、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金表面に対し、強いエッチングや処理液中の亜鉛に依存せずに三価クロム化成皮膜を形成することができる三価クロム化成皮膜処理剤およびその処理方法を提供し、六価クロメートと同等以上の耐食性を有する三価クロム化成皮膜処理物を得ることを目的とする。特に、亜鉛系合金めっき、亜鉛ダイカスト、アルミニウム合金、マグネシウム合金等、強いエッチングにより基材表面にスマットが発生しやすい金属上に均一で美しい外観の高耐食性三価クロム化成皮膜処理を施すことのできる処理剤および処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは従来技術の問題を解決するために鋭意研究した結果、1)三価クロム化合物およびコバルト化合物、2)塩素イオン、硝酸イオン、硫酸イオンから選択される少なくとも1種の供給源、3)有機酸または有機酸塩を含み、更に4)アリルアミン、ポリアリルアミン、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物およびこれらの誘導体から選択される少なくとも1種を含有する、三価クロム化成皮膜処理剤に金属基材を一定時間接触させることにより強いエッチングや処理液中の亜鉛に依存せずに六価クロメートと同等以上の耐食性を有する三価クロム化成皮膜を形成できることを見出した。
本発明は上記成分4)を添加したため、皮膜化成に際して強いエッチングを必要としないため、亜鉛系合金めっき、亜鉛ダイカスト、アルミニウム合金、マグネシウム合金等、強いエッチングにより基材表面にスマットが発生しやすい金属上にも均一で美しい外観の高耐食性三価クロム化成皮膜を形成できる。
【0009】
すなわち、本発明は1)三価クロム化合物およびコバルト化合物、2)塩素イオン、硝酸イオン、硫酸イオンから選択される少なくとも1種の供給源、3)有機酸または有機酸塩を含み、更に4)アリルアミン、ポリアリルアミン、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物およびこれらの誘導体から選択される少なくとも1種を含有する、三価クロム化成皮膜処理剤を提供する。
本発明で提供する三価クロム化成皮膜処理剤はより具体的には1)0.1〜100g/L、好ましくは0.5〜10g/Lの三価クロム化合物および0.01〜100g/L、好ましくは0.1〜30g/L、より好ましくは0.5〜10g/Lのコバルト化合物、2)塩素イオン、硝酸イオン、硫酸イオンから選択される少なくとも1種を合計で0.1〜50g/L、好ましくは0.5〜35g/L供給する供給源、3)0.01〜100g/L、好ましくは0.1〜50g/L、より好ましくは0.5〜10g/Lの有機酸または有機酸塩を含み、更に4)アリルアミン、ポリアリルアミン、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物およびこれらの誘導体から選択される少なくとも1種を合計で1〜100g/L、好ましくは3〜30g/L含有するものである。
【0010】
本発明はまた、金属基材に上記三価クロム化成皮膜処理剤を接触させ、金属基材表面に三価クロム化成皮膜を形成させる処理方法を提供する。
この場合、より具体的には、上記三価クロム化成皮膜処理剤は、温度が20〜60℃、好ましくは25〜40℃であり、pHが2.5〜6.0、好ましくは2.5〜4.5、処理時間が1〜180秒、好ましくは20〜90秒である条件下に、対象金属基材接触させることからなり、それにより金属基材表面に高耐食性の三価クロム化成皮膜を形成する。
接触の方法に制限はないが、均一な化成皮膜を効率よく得るためには金属基材を三価クロム化成皮膜処理剤に浸漬させる方法が好ましい。この際、適度な液のかくはんや処理物の揺動を行うことが好ましい。
【0011】
更に前記三価クロム化成皮膜処理剤にTi、V、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Ca、Mg、Al、Siから選択される少なくとも1種を合計0.01〜50g/L、好ましくは0.01〜10g/L加えることにより更に三価クロム化成皮膜の耐食性を向上させることができる。
【0012】
いずれの成分もこれらの範囲より少ないと効果が得られなくなる。反対に過剰であると効果が頭打ちになり、経済的損失が大きくなるだけではなく、場合によっては過剰な皮膜生成は耐食性の低下や外観の悪化を招くため好ましくない。
処理温度が前記範囲より低い場合は三価クロム化成皮膜の生成量が低くなり耐食性が低下し、前記範囲より高い場合は過剰な三価クロム化成皮膜生成により耐食性の低下や外観の悪化を招くため好ましくない。
処理pHが前記範囲より低い場合はエッチングが過剰になり三価クロム化成皮膜が厚膜化しにくくなり、高い場合は処理外観が低下する上、三価クロム化成皮膜処理液に沈殿が発生しやすくなる。いずれの場合も好ましくない。
処理時間が前記範囲より短い場合は三価クロム化成皮膜の生成量が低下するため耐食性も低下し、長い場合は過剰な三価クロム化成皮膜の生成により処理外観の低下を招くばかりか、生産性の低下により経済的損失が大きいため好ましくない。
【0013】
三価クロム化合物としては任意の水溶性三価クロム化合物が使用できる。具体的には、硝酸クロム、硫酸クロム、塩化クロム、燐酸クロム、酢酸クロム等の塩類の他、クロム酸や重クロム酸塩等の六価クロム化合物を還元剤により三価に還元した化合物を使用することも可能である。また、これらを複数併用することもできる。
コバルト化合物としては塩化コバルト、硝酸コバルト、硫酸コバルト、リン酸コバルト、酢酸コバルト等水溶性のコバルト化合物であれば任意のものを使用することができる。また、これらを複数併用することもできる。
塩素イオン、硝酸イオン、硫酸イオンの供給源としては塩酸、硝酸、硫酸等それ自体の酸や金属塩を使用できる。前記金属塩は任意のものを使用できるが、塩化クロム、塩化コバルト、硫酸クロム、硫酸コバルト、硝酸クロム、硝酸コバルト等、浴成分の金属塩を使用すれば工業的に有利である。
有機酸または有機酸塩は任意のものを使用できるが、キレート性を有したものが好ましい。例えば、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、酪酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ジグリコール酸、アスコルビン酸、シュウ酸、マロン酸またはこれらの塩を使用することができる。
【0014】
上記成分に加え、本発明の重要な特徴として、アリルアミン、ポリアリルアミン、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物およびこれらの誘導体から選択される少なくとも一つを使用して三価クロム化成皮膜処理剤を構成する。前記誘導体としてはアリルアミン、ポリアリルアミン、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物から誘導される化合物や塩等分子内にこれらを含むものを使用することができる。芳香族スルホン酸としては任意のものを使用することができるが、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、スチレンスルホン酸が入手しやすく、効果も高い。上記成分のうち、重合品については各薬品メーカーより多くの商品が市販されているので、これらを使用すれば比較的安価に入手でき、工業的メリットが大きい。例えばポリアリルアミンとしてはPAA−10C、PAA−HCl−3S(製品名、日東紡績(株)製)、芳香族スルホン酸誘導物としてはポリティPS−1900(製品名、ライオン(株)製、ポリスチレンスルホン酸塩)、芳香族スルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体としてはデモールN、デモールRN、デモールNL、デモールRN−L、デモールT(すべて製品名、花王(株)製、ナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物塩)、セルフローDX(製品名、第一工業製薬(株)製、ナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物塩)、ポリティN−100K(製品名、ライオン(株)製、ナフタレンスルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物塩)、デモールMS、デモールSN−B、デモールC、デモールSS−L、デモールSC−30(すべて製品名、花王(株)製、特殊芳香族スルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物塩)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Ti、V、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Ca、Mg、Al、Siの供給源に制限はなく、これらの塩や酸化物等任意のものを使用することができる。
三価クロム化合物は水酸化クロムとして金属基材表面に析出し、皮膜の骨格を形成する。
コバルト化合物も金属基材表面に析出するが、その量はきわめて微量である。従って、皮膜の骨格を形成するものであるとは考えにくいが、これを含まない処理液で化成処理を行った場合金属基材表面に析出する水酸化クロム量が極端に低下することから、皮膜の成長を促進する触媒的な作用をしているものと推測できる。
塩素イオン、硝酸イオン、硫酸イオンは金属基材表面を適度にエッチングし、皮膜化成反応を開始、継続させるために必要である。但し、本発明では金属基材表面の強いエッチングは必要なく、極弱いエッチングを継続できればよい。
有機酸または有機酸塩は浴成分金属にキレートし、浴成分金属を液中で安定化させるとともに析出を適度に抑制することにより均一な三価クロム化成皮膜を得られるようにする効果がある。
【0015】
アリルアミン、ポリアリルアミン、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物およびこれらの誘導体は、前記塩素イオン、硝酸イオン、硫酸イオンによる金属基体表面のエッチングが極弱い状態でも該表面に三価クロム化成皮膜を形成させる効果がある。これらを含まない処理液ではpHを2.5未満にしなければ三価クロム皮膜が化成しないが、このようなpH領域では亜鉛系合金めっき、亜鉛ダイカスト、アルミニウム合金、マグネシウム合金等、強いエッチングにより基材表面にスマットが発生しやすい金属表面には正常な三価クロム化成皮膜を形成することができない。
Ti、V、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Ca、Mg、Al、Siは三価クロム化成皮膜中に取り込まれ、耐食性を向上させる効果がある。その析出機構は明らかではないが、共沈効果により三価クロム化成皮膜の析出量を増加させているものと推測できる。また、Siを含む三価クロム化成皮膜処理液で処理を行った際は三価クロム化成皮膜表面付近にSiリッチ槽を成長させる効果もあり、これにより皮膜のカバリング性能の向上および自己修復性能の向上効果が認められる。
【0016】
また、上記処理剤および方法で形成された皮膜上に市販のオーバーコートを施すことも可能である。オーバーコート剤に特に限定はなく、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、オレフィン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂などの樹脂類やケイ酸塩などを成分とするオーバーコート剤がある。具体的にはコスマーコート(商品名、関西ペイント(株)製)、トライナーTR−170(商品名、日本表面化学(株)製)、フィニガード(商品名、Coventya社製)などが使用できる。オーバーコート処理はそれぞれのオーバーコート剤毎の適切な処理条件および処理方法で行えばよい。
【0017】
即ち、本発明は複数の特定金属と、複数の特定アニオンと、複数の特定有機酸と、更にアリルアミン、ポリアリルアミン、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物およびこれらの誘導体から選択される少なくとも1種との組み合わせにより、強いエッチングや処理液中の亜鉛に依存せずに金属基材表面に意匠性に富んだ外観と六価クロメートと同等以上の耐食性を有する三価クロム化成皮膜を形成することを可能にするものである。
【0018】
本発明は様々な金属基材表面に適用可能であるが、亜鉛系合金めっき、亜鉛ダイカスト、アルミニウム合金、マグネシウム合金等、強いエッチングにより基材表面にスマットが発生しやすい金属表面への適用において特に有用である。また、鉄系素材上の亜鉛めっきや亜鉛系合金めっきにおいてめっき方法が電気めっきである場合、本発明を適用することにより品物の形状に起因する不めっき部(鉄系素材が露出している部分)の腐食の問題を別途防錆剤への浸漬処理を行うことなく解決することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は幅広い金属基材に対して六価クロメートと同等以上の性能を有する三価クロム化成皮膜を形成できるため、従来の問題を解決し三価クロム化成皮膜への切り替え前進に大いに寄与する。
すなわち、本発明は上記成分4)を添加したため、皮膜化成に際して強いエッチングを必要としないため、亜鉛系合金めっき、亜鉛ダイカスト、アルミニウム合金、マグネシウム合金等、強いエッチングにより基材表面にスマットが発生しやすい金属上にも均一で美しい外観の高耐食性三価クロム化成皮膜を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、実施例により本発明を説明する。尚、耐食性の評価はJIS Z 2371に従う塩水噴霧試験にて行った。金属基材が亜鉛めっき、亜鉛−ニッケル合金めっきの場合は鉄板(SPCC)を脱脂、酸浸漬、電解洗浄後亜鉛めっきまたは亜鉛−ニッケル合金めっき(ともにノーシアンアルカリ浴、めっき膜厚8〜10μm)を行った上に硝酸活性化(亜鉛−ニッケル合金めっきの場合は活性化は行わない)後、本発明による処理を行った。金属基材がZDC2(亜鉛ダイカスト)、ADC12(アルミニウム合金)、AZ91(マグネシウム合金)の場合は脱脂、表面の活性化後(AZ91の場合は更に脱スマット処理後)本発明による処理を施した。三価クロム化成皮膜処理液のpH調整は硝酸またはカ性ソーダにて行った。
【実施例】
【0021】
実施例1
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、シュウ酸5g/L、アリルアミン8g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に20秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0022】
実施例2
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、硝酸ソーダ10g/L、マロン酸ソーダ3g/L、PAA−10C(製品名、日東紡績(株)製)5g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0023】
実施例3
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、コハク酸5g/L、スチレンスルホン酸15g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に90秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0024】
実施例4
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、リンゴ酸3g/L、ポリティPS−1900(製品名、ライオン(株)製)10g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0025】
実施例5
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、乳酸1g/L、ナフタレンスルホン酸10g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0026】
実施例6
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、マロン酸ソーダ12g/L、デモールN(製品名、花王(株)製)2g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に40秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0027】
実施例7
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、グルコン酸カリウム4g/L、ベンゼンスルホン酸30g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0028】
実施例8
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、ジグリコール酸20g/L、ベンゼンスルホン酸30g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0029】
実施例9
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして0.5g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、酪酸10g/L、デモールLN(製品名、花王(株)製)7g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0030】
実施例10
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、酪酸10g/L、デモールLN(製品名、花王(株)製)7g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0031】
実施例11
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして10g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、酪酸10g/L、デモールLN(製品名、花王(株)製)7g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0032】
実施例12
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物0.5g/L、ぼう硝5g/L、酪酸10g/L、デモールLN(製品名、花王(株)製)7g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0033】
実施例13
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物35g/L、ぼう硝5g/L、酪酸10g/L、デモールLN(製品名、花王(株)製)7g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0034】
実施例14
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、酪酸10g/L、デモールLN(製品名、花王(株)製)7g/L、塩化チタン0.2g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0035】
実施例15
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、酪酸10g/L、デモールLN(製品名、花王(株)製)7g/L、バナジン酸ソーダ七水塩0.05g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0036】
実施例16
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、酪酸10g/L、デモールLN(製品名、花王(株)製)7g/L、バナジン酸ソーダ10g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0037】
実施例17
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、酪酸10g/L、デモールLN(製品名、花王(株)製)7g/L、塩化マンガン1g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0038】
実施例18
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、酪酸10g/L、デモールLN(製品名、花王(株)製)7g/L、塩化第二鉄0.04g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0039】
実施例19
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、酪酸10g/L、デモールLN(製品名、花王(株)製)7g/L、塩化第二鉄0.1g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0040】
実施例20
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、酪酸10g/L、デモールLN(製品名、花王(株)製)7g/L、硫酸ニッケル2g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0041】
実施例21
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、酪酸10g/L、デモールLN(製品名、花王(株)製)7g/L、塩化第二銅0.2g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0042】
実施例22
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、酪酸10g/L、デモールLN(製品名、花王(株)製)7g/L、硝酸亜鉛5g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0043】
実施例23
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、酪酸10g/L、デモールLN(製品名、花王(株)製)7g/L、塩化カルシウム3g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0044】
実施例24
アエン−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、酪酸10g/L、デモールLN(製品名、花王(株)製)7g/L、塩化マグネシウム8g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0045】
実施例25
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、酪酸10g/L、デモールLN(製品名、花王(株)製)7g/L、塩化アルミニウム六水塩0.1g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0046】
実施例26
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、酪酸10g/L、デモールLN(製品名、花王(株)製)7g/L、コロイダルシリカ(カタロイドSI−550:商品名、触媒化成工業(株)製)5g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0047】
実施例27
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率14%)を施した鉄板を塩化クロム40%水溶液を塩化クロムとして1g/L、塩化コバルト六水和物3g/L、67.5%硝酸2g/L、グルコン酸ソーダ4g/L、ポリティPS−1900(製品名、ライオン(株)製)5g/L含み、温度20℃、pH4.5に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に20秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0048】
実施例28
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率14%)を施した鉄板を硝酸クロム40%水溶液を硝酸クロムとして3.5g/L、硫酸コバルト七水和物6g/L、硝酸ソーダ15g/L、アスコルビン酸10g/L、セルフローDX(製品名、第一工業製薬(株)製)5g/L含み、温度30℃、pH3.5に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0049】
実施例29
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率14%)を施した鉄板を酢酸クロム六水和物4.5g/L、硝酸コバルト六水和物8g/L、35%塩酸25g/L、シュウ酸7g/L、アリルアミン15g/L含み、温度30℃、pH3.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に90秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0050】
実施例30
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率14%)を施した鉄板を塩化クロム40%水溶液を塩化クロムとして5.5g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、67.5%硝酸10g/L、グルコン酸ソーダ5g/L、ポリティPS−1900(製品名、ライオン(株)製)30g/L、硫酸ニッケル1g/L含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に20秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0051】
実施例31
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率14%)を施した鉄板を硝酸クロム40%水溶液を硝酸クロムとして2.5g/L、硫酸コバルト七水和物15g/L、硝酸ソーダ10g/L、アスコルビン酸8g/L、デモールRN−L(製品名、花王(株)製)10g/L、バナジン酸カリウム1g/L含み、温度30℃、pH3.8に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0052】
実施例32
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率14%)を施した鉄板を酢酸クロム六水和物1.5g/L、硝酸コバルト六水和物5g/L、塩酸15g/L、シュウ酸10g/L、アリルアミン15g/L、塩化亜鉛10g/L含み、温度30℃、pH4.2に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に90秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0053】
実施例33
亜鉛めっきを施した鉄板を実施例10と同組成、同温度、同pHの三価クロム化成皮膜処理液に同時間浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−3に示す。
【0054】
実施例34
亜鉛めっきを施した鉄板を実施例14と同組成、同温度、同pHの三価クロム化成皮膜処理液に同時間浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−3に示す。
【0055】
実施例35
亜鉛めっきを施した鉄板を実施例31と同組成、同温度、同pHの三価クロム化成皮膜処理液に同時間浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−3に示す。
【0056】
実施例36
亜鉛ダイカスト(ZDC2)を塩化クロム40%水溶液を塩化クロムとして3g/L、酢酸コバルト10g/L、75%硫酸4g/L、マロン酸10g/L、ベンゼンスルホン酸12g/L含み、温度35℃、pH3.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に40秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−5に示す。
【0057】
実施例37
亜鉛ダイカスト(ZDC2)を塩化クロム40%水溶液を塩化クロムとして3g/L、酢酸コバルト10g/L、75%硫酸4g/L、マロン酸10g/L、ベンゼンスルホン酸12g/L、塩化第二鉄0.2g/L含み、温度35℃、pH3.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に40秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−5に示す。
【0058】
実施例38
アルミニウム合金(ADC12)を硝酸クロム40%水溶液を硝酸クロムとして1g/L、硫酸コバルト七水和物3g/L、食塩5g/L、酒石酸ソーダ7g/L、ポリティPS−1900(製品名、ライオン(株)製)20g/L含み、温度40℃、pH3.5に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に90秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−5に示す。
【0059】
実施例39
アルミニウム合金(ADC12)を硝酸クロム40%水溶液を硝酸クロムとして1g/L、硫酸コバルト七水和物3g/L、食塩5g/L、酒石酸ソーダ7g/L、ポリティPS−1900(製品名、ライオン(株)製)20g/L、アルミン酸ソーダ0.5g/L含み、温度40℃、pH3.5に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に90秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−5に示す。
【0060】
実施例40
マグネシウム合金(AZ91)を酢酸クロム六水和物6g/L、硝酸コバルト六水和物20g/L、硝酸ソーダ30g/L、ジグリコール酸4.5g/L、PAA−HCl−3S(製品名、日東紡績(株)製)10g/L含み、温度25℃、pH3.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−5に示す。
【0061】
実施例41
マグネシウム合金(AZ91)を酢酸クロム六水和物6g/L、硝酸コバルト六水和物20g/L、硝酸ソーダ30g/L、ジグリコール酸4.5g/L、PAA−HCl−3S(製品名、日東紡績(株)製)10g/L、コロイダルシリカ(カタロイドSI−550:商品名触媒化成工業(株)製)15g/L含み、温度25℃、pH3.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−5に示す。
【0062】
実施例42
鉄板を脱脂後、塩化クロム40%水溶液を塩化クロムとして3g/L、硝酸コバルト六水和物10g/L、硝酸ソーダ15g/L、コハク酸10g/L、デモールLN(製品名、花王(株)製)10g/L含み、温度30℃、pH3.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、水洗後表−面が完全に乾燥するまで室温下で空中に放置した後、外観を評価した。結果を表−7に示す。
【0063】
実施例43
鉄板を脱脂後、塩化クロム40%水溶液を塩化クロムとして3g/L、硝酸コバルト六水和物10g/L、硝酸ソーダ15g/L、コハク酸10g/L、デモールLN(製品名、花王(株)製)10g/L、塩化亜鉛3g/L含み、温度30℃、pH3.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、水洗後表面が完全に乾燥するまで室温下で空中に放置した後、外観を評価した。結果を表−7に示す。
【0064】
実施例44
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を実施例10と同組成、同温度、同pHの三価クロム化成皮膜処理液に浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成後、市販のオーバーコート剤5G018(製品名、日本表面化学(株)製)に室温で30秒浸漬し三価クロム化成皮膜上にオーバーコート皮膜を形成した。処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0065】
比較例1
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を市販の亜鉛−ニッケル合金めっき用六価クロメート(ZNC−980:製品名、日本表面化学(株)製)30mL/Lを含み、温度27℃に調整した処理液に40秒浸漬し、六価クロメート皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−2に示す。
【0066】
比較例2
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、酪酸10g/L(実施例10の処理液からデモールLN(製品名、花王(株)製)を除いた組成の処理液)含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−2に示す。
【0067】
比較例3
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率6%)を施した鉄板を市販の亜鉛−ニッケル用化成皮膜処理剤(5P043:製品名、日本表面化学(株)製、三価クロム、塩素イオン、硝酸イオン、有機酸、コバルト、ケイ素を含み、アリルアミン、ポリアリルアミン、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物およびこれらの誘導体を含まない三価クロム化成皮膜処理剤)5P043S:200mL/L、5P043R:100mL/Lを含み、温度30℃、pH3.0に調整した処理液に30秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−2に示す。
【0068】
比較例4
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率14%)を施した鉄板を市販の亜鉛−ニッケル合金めっき用六価クロメート(ZNC−980:製品名、日本表面化学(株)製)30mL/Lを含み、温度27℃に調整した処理液に40秒浸漬し、六価クロメート皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−2に示す。
【0069】
比較例5
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率14%)を施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、酪酸10g/L(実施例10の処理液からデモールLN(製品名、花王(株)製)を除いた組成の処理液)含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−2に示す。
【0070】
比較例6
亜鉛−ニッケル合金めっき(ニッケル共析率14%)を施した鉄板を市販の亜鉛−ニッケル用化成皮膜処理剤(5P043:製品名、日本表面化学(株)製、三価クロム、塩素イオン、硝酸イオン、有機酸、コバルト、ケイ素を含み、アリルアミン、ポリアリルアミン、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物およびこれらの誘導体を含まない三価クロム化成皮膜処理剤)5P043S:200mL/L、5P043R:100mL/Lを含み、温度30℃、pH3.0に調整した処理液に30秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−2に示す。
【0071】
比較例7
亜鉛めっきを施した鉄板を市販の六価有色クロメート(ローメイト62:製品名、日本表面化学(株)製)10mL/Lを含み、温度を25℃に調整した処理液に15秒浸漬し、六価クロメート皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−4に示す。
【0072】
比較例8
亜鉛めっきを施した鉄板を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、酪酸10g/L(実施例10の処理液からデモールLN(製品名、花王(株)製)を除いた組成の処理液)含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−4に示す。
【0073】
比較例9
亜鉛めっきを施した鉄板を市販の三価クロム化成皮膜処理剤(TR−173A:製品名、日本表面化学(株)製、三価クロム、硝酸イオン、有機酸、コバルトを含み、アリルアミン、ポリアリルアミン、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物およびこれらの誘導体を含まない三価クロム化成皮膜処理剤)200mL/Lを含み、温度30℃、pH2.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−4に示す。
【0074】
比較例10
亜鉛ダイカスト(ZDC2)を市販の亜鉛ダイカスト用六価クロメート剤(アルメート66:製品名、日本表面化学(株)製)アルメート66A:10mL/L、アルメート66B:5mL/Lを含み、温度30℃、pH1.5に調整した処理液に120秒間浸漬し、六価クロメート皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−6に示す。
【0075】
比較例11
亜鉛ダイカスト(ZDC2)を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、酪酸10g/L(実施例10の処理液からデモールLN(製品名、花王(株)製)をのぞいた組成の処理液)含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−6に示す。
【0076】
比較例12
アルミ合金(ADC12)を市販の亜鉛ダイカスト用六価クロメート剤(アルメート66:製品名、日本表面化学(株)製)アルメート66A:10mL/L、アルメート66B:5mL/Lを含み、温度25℃、pH1.5に調整した処理液に120秒間浸漬し、六価クロメート皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−6に示す。
【0077】
比較例13
アルミ合金(ADC12)を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、酪酸10g/L(実施例10の処理液からデモールLN(製品名、花王(株)製)を除いた組成の処理液)含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−6に示す。
【0078】
比較例14
マグネシウム合金(AZ91)を硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、酪酸10g/L(実施例10の処理液からデモールLN(製品名、花王(株)製)を除いた組成の処理液)含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、三価クロム化成皮膜を形成し、処理外観を評価後耐食性試験を行った。結果を表−6に示す。
【0079】
比較例15
鉄板を脱脂後、市販の三価クロム化成皮膜処理剤(TR−173A:製品名、日本表面化学(株)製、三価クロム、硝酸イオン、有機酸、コバルトを含み、アリルアミン、ポリアリルアミン、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物およびこれらの誘導体を含まない三価クロム化成皮膜処理剤)200mL/Lを含み、温度30℃、pH2.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、水洗後表面が完全に乾燥するまで室温下で空中に放置した後、外観を評価した。結果を表−8に示す。
【0080】
比較例16
鉄板を脱脂後、市販の亜鉛−ニッケル用化成皮膜処理剤(5P043:製品名、日本表面化学(株)製、三価クロム、塩素イオン、硝酸イオン、有機酸、コバルト、ケイ素を含み、アリルアミン、ポリアリルアミン、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物およびこれらの誘導体を含まない三価クロム化成皮膜処理剤)5P043S:200mL/L、5P043R:100mL/Lを含み、温度30℃、pH3.0に調整した処理液に30秒浸漬し、水洗後表面が完全に乾燥するまで室温下で空中に放置した後、外観を評価した。結果を表−8に示す。
鉄板を脱脂後、市販の亜鉛−ニッケル用化成皮膜処理剤(5P043:製品名、日本表面化学(株)製)5P043S:200mL/L、5P043R:100mL/Lを含み、温度30℃、pH3.0に調整した処理液に30秒浸漬し、水洗後表面が完全に乾燥するまで室温下で空中に放置した後、外観を評価した。結果を表−8に示す。
【0081】
比較例17
鉄板を脱脂後、硫酸クロム40%水溶液を硫酸クロムとして3g/L、塩化コバルト六水和物10g/L、ぼう硝5g/L、酪酸10g/L(実施例10の処理液からデモールLN(製品名、花王(株)製)を除いた組成の処理液)含み、温度30℃、pH4.0に調整した三価クロム化成皮膜処理剤に60秒浸漬し、水洗後表面が完全に乾燥するまで室温下で空中に放置した後、外観を評価した。結果を表−8に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
【表4】

【0086】
【表5】

【0087】
【表6】

【0088】
【表7】

【0089】
【表8】

【0090】
表−1、表−2中比較例1、3、4、6および実施例1〜32、44より、亜鉛−ニッケル合金めっき上に本発明による三価クロム化成皮膜を形成することにより、現行の六価クロメートおよび亜鉛−ニッケル合金めっき用三価クロム化成皮膜処理剤と同等以上の耐食性を得られることが判る。また、比較例2および5と実施例1〜13および27〜29より、アリルアミン、ポリアリルアミン、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物およびこれらの誘導体の存在により皮膜形成がなされ、良好な耐食性が得られるようになっていることが判る。すなわち、これらには造膜性付与効果があり、1)三価クロム化合物およびコバルト化合物、2)塩素イオン、硝酸イオン、硫酸イオンから選択される少なくとも1種の供給源、3)有機酸または有機酸塩との相乗効果により良好な処理外観と耐食性を有する三価クロム化成皮膜を形成できることが判る。また、実施例1〜13と比べ14〜26は耐食性が向上していることから、Ti、V、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Ca、Mg、Al、Siには更なる耐食性向上効果があることが判る。
【0091】
表−3、表−4中比較例7、9および実施例33〜35より、亜鉛めっき上においても現行六価クロメートおよび亜鉛めっき用三価クロム化成皮膜処理剤と同等以上の耐食性を得られることが判る。また、比較例8より、亜鉛めっき上であれば本発明からアリルアミン、ポリアリルアミン、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物およびこれらの誘導体を除いた組成の三価クロム化成皮膜処理液でも皮膜を形成することができるものの、その皮膜は不均一であり、耐食性も低いものであることが判る。ところが実施例33では芳香族スルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物誘導体の添加により皮膜の均一性向上および耐食性向上効果が得られている。更に実施例34、35ではTi、Vの耐食性向上効果が判る。
【0092】
表−8より、市販の三価クロム化成処理剤や本発明からアリルアミン、ポリアリルアミン、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物およびこれらの誘導体を除いた組成の三価クロム化成皮膜処理液では鉄素地に対して三価クロム化成皮膜を形成することができず、乾燥までの間に赤錆が発生してしまうことが判る。一方、表−7より本発明による三価クロム化成皮膜処理剤を用いれば鉄素地に三価クロム化成皮膜を形成し、乾燥までの間での赤錆発生を防止できることが判る。すなわち、現行の三価クロム化成処理剤が抱えている不めっき部分の腐食問題も解決できることが判る。
表−5、表−6より、亜鉛ダイカスト、アルミニウム合金、マグネシウム合金といった工業的に多く用いられている金属基材に対しても芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物誘導体、ポリアリルアミンの添加により実用的な耐食性を有する三価クロム化成皮膜を形成可能であることが判る上、Fe、Al、Siが更なる耐食性向上に寄与していることが判る。
【0093】
以上より1)三価クロム化合物およびコバルト化合物、2)塩素イオン、硝酸イオン、硫酸イオンから選択される少なくとも1種の供給源、3)有機酸または有機酸塩を含む液に対し、アリルアミン、ポリアリルアミン、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物およびこれらの誘導体により造膜性を付与することにより金属基材上に良好な処理外観と耐食性を有する三価クロム化成皮膜を形成することが出来、Ti、V、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Ca、Mg、Al、Siの添加により更なる耐食性向上が可能であることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属表面に三価クロム化成皮膜を形成するための水溶液であり、1)三価クロム化合物およびコバルト化合物、2)塩素イオン、硝酸イオン、硫酸イオンから選択される少なくとも1種のイオン供給源、3)有機酸または有機酸塩を含み、更に4)アリルアミン、ポリアリルアミン、芳香族スルホン酸、芳香族スルホン酸−ホルムアルデヒド縮合物およびこれらの誘導体から選択される少なくとも1種を含有する、三価クロム化成皮膜処理剤。
【請求項2】
前記化合物1)が0.1〜100g/Lの三価クロム化合物および0.01〜100g/Lのコバルト化合物であり、前記イオン供給源2)が合計で0.1〜50g/Lであり、前記成分3)が合計で0.01〜100g/Lの有機酸または有機酸塩であり、更に前記成分4)が合計で1〜100g/L含有される、請求項1記載の三価クロム化成皮膜処理剤。
【請求項3】
更にTi、V、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Ca、Mg、Al、Siから選択される少なくとも1種の金属を含有する、請求項1又は2記載の三価クロム化成皮膜処理剤。
【請求項4】
前記少なくとも1種の金属が合計で0.01〜50g/Lである請求項2または請求項3記載の三価クロム化成皮膜処理剤。
【請求項5】
金属基材に請求項1〜4のいずれか一項記載の三価クロム化成皮膜処理剤を接触させ、金属基材表面に三価クロム化成皮膜を形成させる三価クロム化成皮膜処理方法。
【請求項6】
前記接触は、温度20〜60℃、pH2.5〜6.0、処理時間1〜180秒間の条件下に行われる請求項5記載の三価クロム化成皮膜処理方法。
【請求項7】
前記金属基材が鉄、亜鉛めっき、亜鉛系合金めっき、亜鉛ダイカスト、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、又はマグネシウム合金である請求項5又は6記載の三価クロム化成皮膜処理方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一項記載の方法で形成させた三価クロム化成皮膜上に更にオーバーコートを施す処理方法。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか一項記載の処理方法にて処理された処理物。

【公開番号】特開2007−321234(P2007−321234A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156162(P2006−156162)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(000232656)日本表面化学株式会社 (29)
【Fターム(参考)】