説明

三方活栓

【課題】シリンジから第2導入管15への第2薬液の供給終了後、第2導入管15内に残存する第2薬液を第2導入管15内から的確に除去することができる三方活栓10を提供する。
【解決手段】弁体17の切換路18は貫通孔18aと周溝18bとを有する。貫通孔18aは弁体17を直線状に貫通する。周溝18bは、弁体17の回動方向へ90°の範囲にわたり弁体17の周部に形成され、一端は貫通孔18aの一端に連通し、他端は回動方向へ貫通孔18aの両端の中心位置になっている。三方活栓10の第1切換位置では、第1導入管13の第1薬液は、貫通孔18aを介して第2導入管15内へ深く進入して、第2導入管15内に残存中の第2薬液を取り込んでから、周溝18bを介して導出管14へ抜ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3つの分岐管の連通を選択的に切換える三方活栓に関する。
【背景技術】
【0002】
三方活栓は、医療の分野において点滴等を行う際に使用されており、2つの分岐管から供給される薬液等を他の1つの分岐管に交互にあるいは同時に供給するものである。従来、この種の三方活栓は、3つの分岐管が円筒状の基部から基部の周方向へ90゜間隔で外方に延出している。基部内には円柱状の弁体が基部の周方向を回動方向として回動自在に設けられており、弁体にはT字形の切換路が形成されている。そして、この弁体を回動させることにより切換路を介して各分岐管同士を選択的に連通させることができるようになっている(例:特許文献1図4)。
【0003】
その場合、T字形切換路の−部分(“T”を頂部の“−”と柱の“I”とに分解して考える。)の両端が、第1分岐管と第3分岐管(基部の周方向へ第1、第2、第3分岐管の順に配置されているとする。)へ接続され、T字形切換路のI部分の先端が第2分岐管とは反対側の閉塞部へ向けられている回動位置では、すなわち、第3分岐管へは第1分岐管からの液のみを供給する切換位置では、切換路のI部分が閉塞空間(デッドスペース)になり、該閉塞空間に薬液等が滞留する不都合が生じる(例:特許文献2図5(b))。
【0004】
また、T字形切換路のI部分の先端が第3分岐管へ接続され、T字形切換路の−部分の一端が第2分岐管へ接続され、T字形切換路の−部分の他端が第2分岐管とは反対側の閉塞部へ向けられている回動位置では、すなわち、第3分岐管へは第2分岐管からの液のみを供給する切換位置では、切換路の−部分の他端側半部が閉塞空間になり、該閉塞空間に薬液等が滞留する不都合が生じる(例:特許文献2図5(c))。
【0005】
特許文献2はこれに対処する三方活栓を開示し、該三方活栓では、切換路が、弁体を貫通する直線貫通孔と、弁体の一方の半周部に周方向へ半周するように延設されて両端において管通孔の両端へ連通する半周溝とによって構成されている。該三方活栓では、弁体のどの切換位置においても、液が半周溝を通過するので、切換路内に閉塞空間が生じないようになっている(特許文献2図4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平6−44554号公報
【特許文献2】特開2009−77879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の三方活栓では、弁体の切換路には液の滞留空間が生じないものの、その図4(a)において第2分岐管として第2導入管としてのからの液供給が終了した場合、第2導入管内の残存液の一部が滞留するおそれがある。
【0008】
本発明の目的は、一方の導入管のみから導出管に液を送る際に他方の導入管内の液を導出管に流出させることができる三方活栓を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、円筒状の基部と、該基部内に回動自在に設けられた円柱状の弁体と、該弁体の回動方向へ90°間隔で前記基部から三方に延出する3つの分岐管とを備え、該弁体に、その回動により各分岐管同士を選択的に連通させる切換路が形成された三方活栓において、前記切換路は、前記弁体を直線状に貫通する貫通孔と、前記貫通孔の一端の位置から該位置より前記弁体の回動方向へ90°離間した位置まで前記弁体の周部に延設される周溝とによって構成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、弁体の回動方向へ180°離間している2つの分岐管を導入管とし、回動方向の中間位置の分岐管を導出管として使用して、2つの導入管の両方を同時に1つの導出管へ接続する切換位置では、一方の導入管の液は、弁体の貫通孔が直線状のために、該貫通孔を所定の勢いを保持しつつ通過して、他方の導入管内へ十分深く流入し、他方の導入管内の他方の液と混合する。そして、混合液が弁体の周溝を介して導出管へ流入する。したがって、他方の導入管内への他方の液の供給が停止した場合には、一方の液が他方の導入管内の他方の液を、周溝を介して導出管に流出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】三方活栓の平面図。
【図2】図1のII−II線断面図。
【図3】図1のIII−III線断面図。
【図4】三方活栓の第1切換位置における主要部の横断面図。
【図5】三方活栓の第2切換位置における主要部の横断面図。
【図6】三方活栓の第3切換位置における主要部の横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態の三方活栓10は、図1に示すように、円筒状の基部12と、基部12の周方向へ90°間隔で基部12から三方に延出する3つの分岐管とを備えている。これら3つの分岐管は、三方活栓10の図1の平面図において反時計方向へ順番に第1導入管13、導出管14及び第2導入管15となっている。導入側の第1導入管13及び第2導入管15は雌コネクタ型とされ、導出側の導出管14は雄コネクタ型とされる。なお、第2導入管15は、内部にゴム製のバルブを内蔵し、該バルブは、第2導入管15へのシリンジの取付け及び取り外しに伴い自動的に開閉する。
【0013】
図1及び図2に示すように、円柱状の弁体17は、上部に三つ股のレバー16を備え、基部12に回動自在に挿設されている。なお、弁体17の回動方向は基部12の周方向と同一である。
【0014】
図2及び図3において、切換路18は、貫通孔18aと周溝18bとによって構成され、弁体17に形成されている。貫通孔18aは弁体17の中心線に対して直交する直線で弁体17を貫通する。周溝18bは、弁体17の回動方向へ90°の範囲にわたり弁体17の周部に延在しており、一端は貫通孔18aの一端に連通し、他端は弁体17の回動方向へ貫通孔18aの両端から90°離間した位置となっている。典型的には、貫通孔18aは円形横断面であり、周溝18bは半円横断面である。なお、貫通孔18a及び周溝18bの流通断面積は、貫通孔18aの直径、並びに周溝18bの深さ及び幅により適宜調整することができる。
【0015】
弁体17は、レバー16の回動操作に伴って、基部12に対して相対回転し、第1切換位置(図4)、第2切換位置(図5)又は第3切換位置(図6)へ切換えられる。なお、図1に示すように、三つ股のレバー16の各アーム部16a〜16cには、その上面に連通方向を示す矢印表示19が設けられている。
【0016】
図1の矢印表示19の状態は第1切換位置(図4)を示しており、第1導入管13、導出管14及び第2導入管15はいずれかの矢印表示19の向きと一致している。第1切換位置では、図4に示すように、切換路18は第1導入管13及び第2導入管15を導出管14へ接続している。
【0017】
図1の矢印表示19の状態からレバー16を反時計方向へ90°だけ回動させると、矢印表示19の状態は第2切換位置(図5)を示し、導出管14及び第2導入管15はいずれかの矢印表示19の向きと一致しているものの、第1導入管13はいずれの矢印表示19の向きとも一致しなくなる。第2切換位置では、切換路18は第2導入管15を導出管14へ接続している。
【0018】
図1の矢印表示19の状態からレバー16を時計方向へ90°だけ回動させると、矢印表示19の状態は第3切換位置(図6)を示し、第1導入管13及び導出管14はいずれかの矢印表示19の向きと一致しているものの、第2導入管15はいずれの矢印表示19の向きとも一致しなくなる。第2切換位置では、切換路18は第1導入管13を導出管14へ接続している。
【0019】
三方活栓10の作動について説明する。例えば、第1導入管13へは可撓性管路を介して点滴等の薬液が導入され、導出管14は可撓性管路を介して人体の腕の静脈へ刺す針へ接続され、第2導入管15には、シリンジが接続されて、シリンジ内の他の薬液が投入される。
【0020】
三方活栓10の第1切換位置では、図4に示すように、切換路18の貫通孔18aが第1導入管13と第2導入管15とに連通し、切換路18の周溝18bが導出管14と第2導入管15とに連通している。第1導入管13からの第1薬液は、直線状の貫通孔18aを介して第2導入管15へ導入される。その際、貫通孔18aが直線状である理由により、第1薬液は十分な勢いを保持して第2導入管15へ導入され、第2導入管15へ深く進入して、第2導入管15において第2導入管15からの第2薬液と混合する。そして、第1及び第2薬液の混合薬液が周溝18bを介して導出管14へ流入する。第1切換位置において、切換路18には薬液の滞留空間(デッドスペース)は存在しない。
【0021】
シリンジの第2薬液がなくなるのに伴い、シリンジから第2導入管15への第2薬液の導入が途絶える。これに対し、第1薬液は、なおも、第1導入管13内へ導入され続け、第1導入管13からレバー16の貫通孔18aを介して第2導入管15へ進入する。その際、貫通孔18aが直線状である理由により、第1薬液は十分な勢いを保持して第2導入管15へ導入され、第2導入管15へ深く進入して、第2導入管15内に残存中の第2薬液を効率的に取り込んで、周溝18bを介して導出管14へ流入する。したがって、第2導入管15内に残存中の第2薬液は、第1薬液により導出管14へ流れ、第2導入管15内の残存が防止される。
【0022】
三方活栓10の第2切換位置では、図5に示すように、第1導入管13は弁体17の周部により閉鎖され、第2導入管15は、周溝18b及び貫通孔18aを介して導出管14へ連通状態となる。これにより、第2導入管15の第2薬液のみが、周溝18bから貫通孔18aを経て導出管14へ流入する。第2切換位置において、切換路18には薬液の滞留空間は存在しない。
【0023】
三方活栓10の第3切換位置では、図6に示すように、第1導入管13は、周溝18bを介して導出管14へ連通状態となり、第2導入管15は弁体17の周部により閉鎖される。これにより、第1導入管13の第1薬液のみが周溝18bを経て導出管14へ流入する。
【0024】
なお、第1切換位置において、シリンジを取り外すと、第2導入管15内のゴム製のバルブが自動的に閉止され、第2薬液が第2導入管15から流出し、その後は、第1導入管13の第1薬液のみが、貫通孔18a、第2導入管15及び周溝18bを経て導出管14内へ導入されることになる。その後、別のシリンジを第2導入管15に装着するとともに、第3切換位置にしても、前回の第2液は第2導入管15内に残っていないので、毎回、第2液を正確な投与量で投与することかできる。
【0025】
以上のように、本実施形態の三方活栓10によれば、弁体17の切換路18が、直線状の貫通孔18aと、弁体17の回動方向へ貫通孔18aの一端から貫通孔18aの両端の中心点までの90°の範囲にわたり弁体17の周部に延設された周溝18bとによって構成されたことにより、第2導入管15への第2薬液の供給終了後、第2導入管15内に残存しようとする第2薬液を第1薬液により第2導入管15から円滑に除去することができる。
【符号の説明】
【0026】
11・・・三方活栓、12・・・基部、13・・・第1導入管(分岐管)、14・・・導出管(分岐管)、15・・・第2導入管(分岐管)、17・・・弁体、18・・・切換路、18a・・・貫通孔、18b・・・周溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の基部と、該基部内に回動自在に設けられた円柱状の弁体と、該弁体の回動方向へ90°間隔で前記基部から三方に延出する3つの分岐管とを備え、該弁体に、その回動により各分岐管同士を選択的に連通させる切換路が形成された三方活栓において、
前記切換路は、前記弁体を直線状に貫通する貫通孔と、前記貫通孔の一端の位置から該位置より前記弁体の回動方向へ90°離間した位置まで前記弁体の周部に延設される周溝とによって構成されていることを特徴とする三方活栓。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−139451(P2012−139451A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−644(P2011−644)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(390029676)株式会社トップ (106)
【Fターム(参考)】