説明

三次元位置決めシステム

【課題】レーザースポットを参照せずプリズムの計測により墨出し位置を決定する三次元位置決めシステムを提供する。
【解決手段】三次元位置決めシステムは、三次元計測器と、フレーム上にプリズムと長手方向に移動可能なスライダとを搭載したマーキング装置と、を備え、スライダには、マーキング手段と反射板とが設置され、反射板には、縦方向スリットを通過したスリット光を重ねることでスライダの移動方向をレーザーの軸方向と平行とする鉛直線が記してあり、マーキング手段は、マーキング装置の長手方向で縦方向スリットから鉛直線に至る直線上に設けられ、三次元計測器から目標点にレーザーを照射し、縦方向スリットを通過したレーザーが鉛直線と重なる向きに調整されたマーキング装置のプリズムまでの距離を三次元計測器で計測し、プリズムから目標点までの水平距離だけスライダが移動されてマーキング手段により所定の位置に墨出しさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木・建設などの各種工事現場等における墨出しといわれる位置決め作業を実施するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場等における位置計測及び位置決め作業は、レーザー照射機能を有し、望遠鏡等による視準方向を自動制御可能な三次元計測器(トータルステーションとして市販されているもの)を用いることで、測定精度の向上と作業の効率化が図られている。
【0003】
従来の三次元計測システムでは、例えば位置計測用のターゲットを持つ作業者と、遠隔地にいて三次元計測器の望遠鏡等で視準する測定者との2人の作業者を必要とし、ターゲットの位置が目標位置に合致するまで計測を繰り返す必要があり、ターゲットの移動・据付け等に多くの時間を必要とし、作業量が増加していた。三次元計測器はレーザーが直接届く位置でないと計測できないから、陰になる部分が多い機械室やパイプシャフトなど狭隘部での計測は困難であった。
【0004】
他の手法として、2つのプリズムを包含する指示棒を用いてそれらの座標から棒の先端座標を算出する方法がある。これも、計測に時間を要し、手ぶれにより精度が低下する難点がある。精度を向上させるために、プリズム間距離を広げると、指示棒が長くなって操作が面倒になる。また、一人で作業するにはプリズムを交互に認識しなければならないが、手ぶれが生じて計測が困難になるなどの欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−134029「位置測量方法」では、目標位置となる追尾ターゲット上にレーザー発振器を搭載し、測定点上の自動追尾型位置センサが追尾ターゲットを自動探索して位置データをワイヤレス送信し、さらにレーザー発振器から鉛直下方にマーキング用のレーザー光を照射する。この方法では、ターゲット位置のフィードバックによる微調整が必要となる。
【0006】
【特許文献2】特開2007−51910「レーザー光を用いる三次元座標計測または墨出し方法および位置決め方法」では、光路可視化モジュール内で2方向から照射したレーザー光の光路の交点を基準点とし、基準点から鉛直下方の位置を三次元的に特定して座標位置または墨出し位置としている。トータルステーションと呼ばれる測量機でターゲットプリズムを自動追尾することも記載されている。
【0007】
【特許文献3】特開2007−118165「墨位置記録装置」では、三次元計測器により提示されたマークポイントの位置に対してマーキングロボットによりマーキングを行う。マーキングロボットのスタンプ先端からレーザー光線が照射され、スタンプポイントをマークポイントに一致させてマーキングを行う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したように、従来の三次元計測器での位置計測は、三次元計測器により直接視準でき、レーザーが直接届く地点でなければ計測できないという弱点があった。また、位置決め作業では、床や壁、天井など位置決めをする対象物の建築誤差によって、レーザー照射点と目標点にずれを生じる可能性があった。
【0009】
参考例の第1の目的は、狭隘部での計測を可能にする三次元計測システムを提供することにある。
参考例の第2の目的は、短時間での計測を可能にしかつ手ぶれの影響を低減することが可能な三次元計測システムを提供することにある。
参考例の第3の目的は、一人の作業者でも計測が可能な三次元計測システムを提供することにある。
参考例の第4の目的は、三次元計測器では直接視準できない物陰にある点の座標を間接的に計測するためのポインターを有する三次元計測システムを提供することにある。
本発明の目的は、床や壁・天井などに照射されたレーザースポットの形成誤差を補正するためのマーキング装置を有する三次元位置決めシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した課題を解決するため、参考例は、各種工事において三次元の目標点を計測するためのシステムであって、レーザーを照射し視準した点の三次元座標を計測してデータを送受信することができる三次元計測器と、当該三次元計測器の設置位置を特定するための基準認識用ターゲットと、レーザーを受光しその入射角を計測する入射角センサとレーザー受光軸まわりの回転角を計測する傾斜センサと目標点に接触させる指示点とを有するポインターと、前記三次元計測器及び前記ポインターからの計測データを受信して前記ポインターの指示点の座標を計算しデータを送受信することができるホストコンピュータとを備え、前記ポインター上の指示点を計測する目標点に接触させることにより、指示点の三次元座標を計測する三次元計測システムを提供する。
【0011】
前述した課題を解決するため、本発明は、各種工事において三次元の目標点を位置決めし墨出しするためのシステムであって、レーザーを照射し視準した点の三次元座標を計測することができ、かつ任意の方向にレーザーを照射することができる三次元計測器と、フレーム上にプリズムとスライダとマーキング手段とが搭載され、前記三次元計測器による前記プリズムの位置計測結果をもとに前記スライダの位置を調節し、所定の位置にマーキングすることができるマーキング装置と、を備え、前記スライダは、前記フレームに対して前記マーキング装置の長手方向に移動可能とされ、前記スライダには、前記マーキング手段と反射板とが設置され、前記フレームには、前記マーキング装置の長手方向で見た前面に、受光したレーザーをスリット光とする縦方向スリットが設けられ、前記反射板には、前記縦方向スリットを通過したスリット光を重ねることにより前記スライダの移動方向を受光したレーザーの軸方向と平行とする鉛直線が記してあり、前記マーキング手段は、前記マーキング装置の長手方向で見て、前記縦方向スリットから前記鉛直線に至る直線上に設けられ、前記三次元計測器から前記目標点にレーザーを照射し、前記縦方向スリットを通過したレーザーが前記鉛直線と重なる向きに調整された前記マーキング装置の前記プリズムまでの距離を前記三次元計測器で計測し、前記プリズムから前記目標点までの水平距離だけ前記スライダが移動されて前記マーキング手段により所定の位置に墨出しさせることを特徴とする三次元位置決めシステムを提供する。
【0012】
好適な態様として、ポインターの入射角センサは、ピンホールと2次元位置検出デバイスとを有する。
【0013】
さらに好適な態様として、マーキング装置は受光するレーザー光の軸と平行になるように向きが調節可能になっている。
【0014】
さらに好適な態様として、マーキング装置の前記スライダは、当該マーキング装置の長手方向に沿って移動可能で移動距離を表す目盛りが付されている。
【発明の効果】
【0015】
参考例による三次元位置計測及び本発明による三次元位置決めシステムによれば、
(1)三次元計測器の移動を必要としないので狭隘部でも計測が可能になる
(2)1点計測のため短時間で計測ができ、手ぶれの影響を低減できる
(3)一人での作業が可能になる
(4)間接的な計測なので、測定対象点が物陰にあってもポインターの指示点をあてれば位置を計測できる
(5)指示棒の小型化が可能である
(6)三次元計測器を設置すれば、それ以降簡単に高精度な墨出しができる
(7)調整量を直接指示することにより瞬時にかつ手動で十分な精度の調整が可能である
(8)レーザースポットを参照せず、プリズムの計測により墨出し位置を決定するので、スポット延伸の影響を受けない、等の利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】参考例による三次元位置計測及び本発明による三次元位置決めシステムの概略斜視図。
【図2】ポインターの斜視図。
【図3】ポインター制御システムのブロック図。
【図4】マーキング装置の三面図。
【図5】入射角センサの断面図。
【図6】入射角センサの角度計測原理図。
【図7】入射角センサ用キャリブレーション装置の正面図。
【図8】角度βのキャリブレーションデータを表すグラフ。
【図9】座標系の設定を表す斜視図。
【図10】傾斜センサの計測角を表す斜視図。
【図11】α,β,γによる変換を表す斜視図。
【図12】参考例による計測システムの流れ図。
【図13】三次元計測器による位置指示を示す断面図。
【図14】マーキング装置を使用した位置指示を示す断面図。
【図15】スライダの斜視図。
【図16】マーキング装置の向きの調整を表す平面図。
【図17】本発明による位置決めシステムの流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は参考例により三次元位置計測及び本発明により三次元位置決めを行うための概略プロセスを表しており、図1Aは三次元計測器10を所定の位置に設置し、基準認識用ターゲット16とホストコンピュータ18を用いてその設置位置を計測するプロセスの外観図、図1Bは三次元計測器10とポインター12を用いて位置計測を行うプロセスの外観図、図1Cは三次元計測器10とマーキング装置14を用いて所定の位置に墨出しを行うプロセスの好適な態様を表している。
【0018】
三次元計測器10は一般にトータルステーションと呼ばれて市販されているものが利用できる。望遠鏡で視準した点の三次元座標を、光波距離計及び水平・垂直方向の角度計測により計測することができる。また、視準線に一致したレーザー光を照射し、水平・垂直角を自動制御することで、任意の方向にレーザーを照射することができる。さらにプリズムを自動で探索・視準する機能を有する。
【0019】
ホストコンピュータ18では、オペレータとのインターフェース、三次元計測器の無線による制御、ポインターとの無線通信(操作コマンドおよび計測データの送受信)、および計測データを用いた演算を行う。
【0020】
基準認識用ターゲット16は、現場に設置した絶対座標系における三次元計測器の設置位置を計測するために、現場の基準点や基準線に設置するターゲットである。本発明では整準機能を有する自立型プリズムを使用する。設置位置の計測方法は、前述した特許文献にも記載されているように、従来から知られている技術である。
【0021】
図2に示すポインター12は、レーザー光20を受光しその入射角を計測する入射角センサ30及びポインターのレーザー軸まわりの回転角を計測するための傾斜センサ25を有し、それらの出力及び三次元計測器による計測データを用いて指示点の座標を計測することができる。入射角センサ30は、ピンホール29と2次元位置検出デバイス32(例えばPSD,CCD,CMOSなど)により構成され、ピンホール29を通過したレーザーが照射される位置からレーザーの入射角度を計測する。
【0022】
図2に示すポインター12はさらに、作業者が把持するためのグリップ21、先端の指示点22、プリズムサーチボタン(振り向きボタン)23、計測ボタン24、受光確認ランプ26、無線通信用モデム27、プリズム28、回路・電池収納箱31を包含している。
【0023】
図3はポインター制御システムを表しており、図2の装置に加えて、傾斜センサ25とマイクロコンピュータ34が含まれている。
【0024】
作業者(オペレータ)はグリップ21を把持し、指示点22を計測する点にあてて使用する。図3に示されている傾斜センサ25は、回転軸まわりに全周計測(360°)が可能で、図2における回路・電池収納箱31内に入射角センサ30の法線と回転軸が平行になるように設置されている。
【0025】
図4に示すマーキング装置14は、装置の長手方向に沿って印字された目盛(スケール)46に沿って移動可能なスライダ40を有する。このマーキング装置14をレーザー照射位置に設置し、装置前面の縦方向スリット50及びスライダ40に設置された受光板(反射板)51を用いてマーキング装置14をレーザー軸方向にあわせる。ここで縦方向スリット50は、レーザーを受光してスリット光とし、スライダの反射板で受光し、装置の向きを調整するのに利用される。そして、三次元計測器10によりプリズム41の位置を計測することで、プリズム41から目標位置までの軸方向距離を算出し、スライダ40の位置を手動でレール45の軸方向に調整して適切な位置にマーキング(墨出し)する。
【0026】
図4に示すマーキング装置14は、さらに位置指示針42、マーキング穴43、レベル調整ねじ44,48、水準器47を包含し、これらは支持フレーム49上に搭載されている。
【0027】
ポインター12による位置計測は次のようにして実行する。
(1)入射角センサの構成と計測原理
図5にポインター12に含まれる入射角センサ30の断面図を、図6に入射角センサ30による角度計測原理図を示す。図5のように、入射角センサ30はピンホール36と2次元位置検出素子32から構成される。図6のようにピンホール36にレーザー20が照射されると、ピンホール36を通過したレーザー20がスポットSとして2次元位置検出デバイス受光面に照射され、2次元位置検出デバイスの出力としてSの座標(xp,yp)が計測される。αはレーザーの入射方向を示す角度であり、以下の式で求められる。
【数1】

【0028】
βは入射角センサ30の法線方向に対するレーザー20の入射角を示し、図7に示すような入射角センサ用キャリブレーション装置60を用いて求められたβの換算式により算出される。すなわち、図7によりレーザー20の入射角βに対するセンサ出力r(式1)を計測し、図8に示すように横軸をr(mm)、縦軸をβ(度)とするグラフにプロットしたデータを最小二乗法で近似することによりβの換算式を得る。
【0029】
図7の入射角センサ用キャリブレーション装置60は、さらにレーザー光源61、光軸調整機構62、レーザー光源固定具63、回転機構64、水平ステージ65、連結具66、回転機構67を包含している。
【0030】
(2)指示点の座標計測の原理
図9に示すように、三次元計測器10の設置位置を原点とする座標系をΣ、ポインター12のピンホールPを原点とする座標系をΣとする。Σにおけるポインターの指示点Pの座標は三次元計測器10により計測されるPの座標とレーザーに対するポインターの姿勢を用いて計測することができる。ポインターの姿勢を表すパラメータは、レーザーの入射方向α、入射角度β及びレーザー軸周りの回転角γである。αとβは入射角センサにより計測することができる。γは傾斜センサで計測するが、γはα,β及びレーザーの垂直方向の照射角度θに依存するので、センサにより直接求めることができない。そのため、γは傾斜センサの出力Ψとα,β,θにより求める。
【0031】
図10に示すように、傾斜センサ25の出力Ψは、Σにおける重力方向のベクトルG(→上付き)を入射角センサの受光面に正投射したベクトルG(→上付き)と、傾斜センサの計測基準方向(鉛直方向)ベクトルM(→上付き)のなす角に等しいので、次式が成り立つ。
【数2】

【0032】
変換前の傾斜センサ25の計測基準方向はΣのx軸と一致するので、ベクトルM(→上付き)はm(→上付き)=[1,0,0]を以下に示す手順で変換することで得られる。以下の各式においてCθはCosθ,SθはSinθをそれぞれ表す。
1)Σのz軸周りにγ回転する。
【数3】

【0033】
2)α,βにより変換する
図11に示すように、αとβによる変換はΣにおけるベクトルω(→上付き)=[S(α−γ),C(α−γ),0]の周りにβ回転することと同義であり、以下の式で変換される。
【数4】

【0034】
3)ΣにおいてY軸周りにθ回転する
【数5】

【0035】
ベクトルG(→上付き)はΣにおける重力方向ベクトルG(→上付き)=[0,0,−1]を、入射角センサ受光面に正射影する行列Qで変換することにより得られる。入射角センサ受光面の方向余弦をn(→上付き)=[n,n,nとすると、行列Qは次式で表される。
【数6】

【0036】
変換前の方向余弦は、Σにおけるz軸方向と等しく、n(→上付き)=[0,0,1]と表され、これを上記と同様にα,β,γ及びθで変換すると次式のようになる。
【数7】

【0037】
これより、ベクトルG(→上付き)は以下のように表される。
【数8】

【0038】
式5及び式8を式1に代入して得られる式に、α,β,θ及びΨを代入することにより、γを求めることができる。
【0039】
α,β,γ及び三次元計測器により計測されるL,φ,θを用いて、ポインター指示点PのΣにおける座標を求める。図9のように、ポインター12の長さをl(小文字のエル)、ポインター軸のPからの厚さ方向のオフセットをdとすると、変換前のPはΣにおいてP[0,l,d]と表される。式3,式4と同様の変換によりPはP’に変換される。
【数9】

【0040】
さらに、L,φ,θ及びΣにおけるPの座標[X,Y,Zを用いて、次式により、点P’はΣ上の点Pに変換される。
【数10】

【0041】
最後に、現場に設定した絶対座標系ΣにおけるΣの座標[X,Y,Z及びZ軸周りの回転角ρによって、次式を用いてPをΣ上の点Pに変換する。
【数11】

ここで、[X,Y,Z及びρは、三次元計測器を現場に設置した際に、基準認識用ターゲットを用いて、現場の基準点を参照することにより求められる値である。
【0042】
(3)計測の手順は図12の流れ図の矢印方向に従って行われる。
ステップ70:開始
ステップ71:計測点を指示する
ステップ72:振り向きボタン(プリズムサーチボタン)を押す
ステップ73:プリズムを探す
ステップ74:レーザーを照射する
ステップ75:ポインターの姿勢を調節しレーザーを入射角センサのピンホールにあてる
ステップ76:計測ボタンを押す
ステップ77:三次元計測器、ポインターが各計算パラメータを計測する
ステップ78:指示点の座標を計算し、表示する
ステップ79:計測データを記録する
ステップ80:終了。
【0043】
マーキング装置14による墨出しの原理と手順は以下のようになる。
(1)計測の原理
例として床面への墨出しを取り上げる。三次元計測器10は、システムに入力された現場の絶対座標系Σ上の目標点Pに対して、三次元計測器10の座標系Σの原点座標及びZ軸周りの回転角を用いてΣの点に変換し、それを極座標で表すことによって水平角φと高度角θを求め、その方向にレーザーを照射する。
【0044】
しかし、図13に示すように、三次元計測器10の設置位置と目標点Pに高低差Δhが存在すると、目標点Pまでの水平距離LからΔLだけずれた位置P’にレーザーが照射される。そこで、図14に示すように、マーキング装置14をレーザー照射点に設置し、三次元計測器10によりプリズムまでの水平距離Lを計測し、プリズムから目標点Pまでの水平距離Lを求める。マーキング装置14のスライダ40(図4)をレール45に沿ってLだけ移動することにより、目標点Pにマーキングすることができる。その際、マーキング装置14の軸方向がレーザーの軸方向と平行になっている必要がある。
【0045】
図15に示すように、スライダ40と一体化したレーザー反射板49には鉛直線53が記してあり、図16に示すように、マーキング装置14を設置する際に装置を整準するとともにレーザーをスリット50にあて、スリット50を通過したレーザー光が反射板49の鉛直線53と重なるように矢印方向に装置の向きを調整する。ここで、図16ではスリットを表示するため、プリズムを省略している。
【0046】
(2)墨出しの手順は図17の流れ図の矢印方向に従って行われる。
ステップ90:開始
ステップ91:墨出し点の座標を入力する
ステップ92:目標点にレーザーを照射する
ステップ93:マーキング装置を設置し整準及び向きの調整をする
ステップ94:計測ボタンを押す
ステップ95:プリズムを計測する
ステップ96:目標点までの距離を表示する
ステップ97:スライダの位置を調整する
ステップ98:マーキングする
ステップ99:終了。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上詳細に説明した如く、参考例による三次元位置計測及び本発明による三次元位置決めシステムによれば、三次元計測器の移動を必要としないので狭隘部でも計測が可能になる、1点計測のため短時間で計測ができ手ぶれの影響を低減できる、一人での作業が可能になる、間接的な計測なので測定対象点が物陰にあってもポインターの指示点をあてれば位置を計測できる、指示棒の小型化が可能である、三次元計測器を設置すればそれ以降簡単に高精度な墨出しができる、調整量を直接指示することにより瞬時にかつ手動で十分な精度の調整が可能である、レーザースポットを参照せずプリズムの計測により墨出し位置を決定するのでスポット延伸の影響を受けない、などの多くの利点が得られ、その技術的価値には極めて顕著なものがある。
【符号の説明】
【0048】
10 三次元計測器
12 ポインター
14 マーキング装置
16 ターゲット
18 ホストコンピュータ
20 レーザー光
22 指示点
25 傾斜センサ
28 プリズム
30 入射角センサ
32 2次元位置検出デバイス
36 ピンホール
40 スライダ
45 レール
46 目盛
49 フレーム
50 スリット
51 反射板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各種工事において三次元の目標点を位置決めし墨出しするためのシステムであって、
レーザーを照射し視準した点の三次元座標を計測することができ、かつ任意の方向にレーザーを照射することができる三次元計測器と、
フレーム上にプリズムとスライダとマーキング手段とが搭載され、前記三次元計測器による前記プリズムの位置計測結果をもとに前記スライダの位置を調節し、所定の位置にマーキングすることができるマーキング装置と、を備え、
前記スライダは、前記フレームに対して前記マーキング装置の長手方向に移動可能とされ、
前記スライダには、前記マーキング手段と反射板とが設置され、
前記フレームには、前記マーキング装置の長手方向で見た前面に、受光したレーザーをスリット光とする縦方向スリットが設けられ、
前記反射板には、前記縦方向スリットを通過したスリット光を重ねることにより前記スライダの移動方向を受光したレーザーの軸方向と平行とする鉛直線が記してあり、
前記マーキング手段は、前記マーキング装置の長手方向で見て、前記縦方向スリットから前記鉛直線に至る直線上に設けられ、
前記三次元計測器から前記目標点にレーザーを照射し、前記縦方向スリットを通過したレーザーが前記鉛直線と重なる向きに調整された前記マーキング装置の前記プリズムまでの距離を前記三次元計測器で計測し、前記プリズムから前記目標点までの水平距離だけ前記スライダが移動されて前記マーキング手段により所定の位置に墨出しさせることを特徴とする三次元位置決めシステム。
【請求項2】
前記フレームには、前記スライダの移動方向に沿って移動距離を表す目盛が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の三次元位置決めシステム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の三次元位置決めシステムであって、
さらに、オペレータとのインターフェースとなり、前記三次元計測器からの計測データを用いた演算が可能であり、該三次元計測器の制御が可能なホストコンピュータを備え、
前記三次元計測器は、前記ホストコンピュータとデータを送受信することができ、かつ前記プリズムを自動で探索して視準する機能を有することを特徴とする三次元位置決めシステム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−189612(P2012−189612A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−128540(P2012−128540)
【出願日】平成24年6月6日(2012.6.6)
【分割の表示】特願2009−71201(P2009−71201)の分割
【原出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000191319)新菱冷熱工業株式会社 (78)