説明

三酸化ヒ素を含む経口組成物の処方およびその使用法

本発明は、急性骨髄性白血病(AML)および急性前骨髄球性白血病(APL)を包含する種々の血液学的悪性腫瘍の治療のための三酸化ヒ素(As)の経口処方を提供する。本発明は、また、該経口三酸化ヒ素処方の製法を提供する。該経口三酸化ヒ素処方の使用方法もまた記載される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2002年10月9日に出願された米国仮出願番号第60/417,200号および2003年6月25日に出願された米国仮出願番号第60/483,014号に対する利益を請求し、その各々は全体として、出典明示により本明細書の一部とされる。
【0002】
発明の技術分野
本発明は、急性骨髄性白血病(AML)および急性前骨髄球性白血病(APL)を包含する種々の血液学的悪性腫瘍の治療のための三酸化ヒ素(As)の経口処方に関する。該処方は、現在実施されている三酸化ヒ素の静脈内(IV)投与の全身性バイオアベイラビリティに匹敵する全身性バイオアベイラビリティを提供する。本発明の経口処方は、3ヶ月以上の貯蔵寿命を示し、静脈内投与法よりも非常に便利で、危険性が低く、かつ、あまり費用がかからない三酸化ヒ素の投与方法を提供する。本発明は、また、本発明の経口処方の調製方法および該経口処方を用いて血液学的悪性腫瘍を有する対象を治療する方法に関する。
【0003】
発明の背景
血液学的悪性腫瘍
血液学的悪性腫瘍は、身体の造血および免疫系の癌である。血液学的悪性腫瘍は、白血病、リンパ腫(ホジキン病および非ホジキンリンパ腫の両方)、および骨髄腫を包含する。異常な細胞増殖は、身体の健康な血液細胞の産生を干渉し、かくして、身体を感染に対して保護できなくする。血液学的悪性腫瘍の新規な事例は、アメリカ合衆国で診断された癌事例の9%を占め、毎年、約59,200人が該疾患によって死亡している。これらの疾患の多くは子供に起きる。
【0004】
白血病
白血病は、骨髄および血液の癌である。それは、血液細胞の制御されない増殖によって特徴付けられる。アメリカ合衆国において約30,000もの新規な白血病事例が毎年報告されている。ほとんどの事例は老人において起きているが、白血病は、幼年期の癌の最も一般的な種類である。
白血病は急性または慢性のいずれかである。急性白血病において、異常な血液細胞は、非常に未熟なままであって、その正常な機能を実施することのできない芽細胞である。芽細胞の数は早急に増加し、該疾患は早急に悪化する。慢性白血病においては、芽細胞も存在するが、一般に、これらの細胞はより成熟しており、その正常な機能のいくつかを実施することができる。また、芽細胞の数は、急性白血病におけるよりも早急には増加しない。結果として、慢性白血病は徐々に悪化する。
【0005】
白血病は、2つの主要な型の白血球−リンパ系細胞(リンパ球性白血病)または骨髄系細胞(骨髄性白血病)のいずれかにおいて起きることができる。一般的な型の白血病は、急性リンパ球性白血病(ALL);急性骨髄性白血病(AML)(急性非リンパ球性白血病(ANLL)と呼ばれることもある)、例えば、骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、赤白血病、および骨髄異形成症候群;慢性リンパ球性白血病(CLL);慢性骨髄性(顆粒球性)白血病(CML);慢性骨髄単球性白血病(CMML);毛様細胞性白血病;および真性赤血球増加症を包含する。
【0006】
リンパ腫
2つの主要な型のリンパ腫−ホジキン病および非ホジキンリンパ腫がある。ホジキン病は、ホジキンリンパ腫としても知られているが、リード・ステルンベルク(R−S)細胞として知られる特定の細胞が存在する特別な形態のリンパ腫である。該細胞は、通常、他のリンパ腫には見られない。
ホジキン病の原因は不明である。ホジキン病は、他の癌と同様に、非感染性であり、他人に移ることはない。それは遺伝性ではない。ホジキン病の最初の徴候は、通常、頚部、腋窩または鼠蹊部の痛みのない腫れである。他の徴候は、寝汗または説明困難な発熱、体重減少および疲労、咳または息切れ、および全身の持続性の痒みを包含しうる。
【0007】
約20の異なる型の非ホジキンリンパ腫がある。非ホジキンリンパ腫は、顕微鏡下でのその外観および細胞型(B細胞またはT細胞)にしたがって類別される。危険因子は、老齢、女性、弱体化した免疫系、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(human T-lymphotropic virus type 1; HTLV−1)およびエプスタイン−バーウイルス感染、ならびに農薬、溶媒および肥料などの化学物質への曝露を包含する。
【0008】
骨髄腫
骨髄腫は、骨髄において通常見出される型の形質細胞からなる悪性腫瘍である。骨髄腫細胞は、骨髄および骨の堅い外部に集まる傾向がある。ときどき、それらはたった1つの骨だけに集まり、形質細胞腫と呼ばれる1つの塊または腫瘍を形成する。しかしながら、ほとんどの場合、骨髄腫細胞は多くの骨に集まり、しばしば、多くの腫瘍を形成し、他の問題を引き起こす。これが起こるとき、該疾患は、限定するものではないが、例えば、巨細胞性骨髄腫、無痛性骨髄腫、限局性骨髄腫、多発性骨髄腫、形質細胞性骨髄腫、硬化性骨髄腫、孤立性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌性骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞性白血病、孤立性形質細胞腫、および髄外性形質細胞腫などの多発性骨髄腫と呼ばれる。
【0009】
骨髄異形成症候群は、骨髄が1以上の型(白血球、赤血球、または血小板)において効果のない異常な外観の細胞を生産する障害である。患者の大部分は、60歳を越えた男性である。二次的な骨髄異形成症候群は、化学療法および照射の使用後に見られる。
徴候および症状は、影響を及ぼされた細胞の型に依存する。異常な白血球は、人々をより感染し易くし;異常な血小板は、人々を挫傷および自発性出血し易くし;異常な赤血球は、貧血および疲労を引き起こす。
【0010】
化学療法および照射は血液学的悪性腫瘍の治療に有用であるが、特に、臨床腫瘍学者が癌患者の生活の質に大きな関心を払っている場合、該疾患を管理するための、より有効で毒性の低い良好な治療モダリティーおよびアプローチに対する持続的な要望が存在する。本発明は、三酸化ヒ素を含む経口組成物を使用することによって、血液学的悪性腫瘍治療および該疾患の管理に対する別のアプローチを提供する。
【0011】
ヒ素
ヒ素は、2,000年以上もの間、医学的に使用されてきた。18世紀に、1%w/v重炭酸カリウム中における三酸化ヒ素(実験式As)の溶液(Fowler溶液)が、種々の感染性疾患および悪性疾患を治療するために開発された。白血球の抑制におけるその効力は、1878年に初めて記載された(Kwong Y.L.ら、Delicious poison: arsenic trioxide for the treatment of leukemia, Blood 1997;89:3487-8)。したがって、1940年代により強力な細胞毒性薬に取って代わられるまで、三酸化ヒ素が慢性骨髄性白血病の治療に使用されていた。しかしながら、三酸化ヒ素が、急性前骨髄球性白血病(APL)細胞においてアポトーシスおよび分化を誘導することが見出されたとき、かかる治療におけるその復活があった(Chen G.Q.ら、急性前骨髄球性白血病の治療における三酸化ヒ素の使用(Use of arsenic trioxide (As2O3) in the treatment of acute promyelocytic leukemia (APL)): I. As2O3は用量依存性二元的効果をイン・ビトロおよびイン・ビボでAPL細胞に対して発揮する(As2O3 exerts dose-dependent dual effect on APL cells in vitro and in vivo), Blood 1997;89:3345-53; Soignet S.L.ら、再発性急性前骨髄球性白血病における三酸化ヒ素の合衆国多施設研究(United States multicenter study of arsenic trioxide in relapsed acute promyelocytic leukemia)、J Clin Oncol. 2001;19:3852-60)。その後、これらのイン・ビトロでの観察の臨床上の意義は、三酸化ヒ素は90%を越える患者において軽減を誘導すると証明された(Shen Z.X.ら、急性前骨髄球性白血病の治療における三酸化ヒ素の使用(Use of arsenic trioxide (As2O3) in the treatment of acute promyelocytic leukemia (APL)): II. 再発性患者における臨床効果および薬物動態学(Clinical efficacy and pharmacokinetics in relapsed patients), Blood 1997;89:3354-60; Soignet S.L.ら、急性前骨髄球性白血病の三酸化ヒ素での治療後の完全な寛解(Complete remission after treatment of acute promyelocytic leukemia with arsenic trioxide), N Engl J Med 1998;339:1341-8; Niu C.ら、急性前骨髄球性白血病の三酸化ヒ素での治療における研究: 11人の新たに診断されたの急性前骨髄球性白血病患者および47人の再発性の急性前骨髄球性白血病患者における寛解誘導、追跡調査および分子モニタリング(Studies on treatment of acute promyelocytic leukemia with arsenic trioxide: remission induction, follow-up and molecular monitoring in 11 newly diagnosed and 47 relapsed acute promyelocytic leukemia patients), Blood 1999;94:3315-24)。
【0012】
三酸化ヒ素の典型的な過程は、4〜8週間の毎日の静脈内(IV)投与、ならびに付随する不都合、危険性ならびに適当な血管アクセスおよび長期の入院を維持する費用を伴う。現在、臨床上の使用のための経口用三酸化ヒ素は存在しない。Fowler溶液はもはや、現代の薬局方に収載されておらず、または処方集に記載されていない(1941, Arsenum. Martindale, The Extra Pharmacopoeia 22:209-15; British Pharmacopoeia. London: Her Majesty's Stationery Office, 1988; Appendix 1A, p A12)。したがって、経口投与のための三酸化ヒ素の処方は、明確な利益を提供する可能性があった。発明者らは、近年、三酸化ヒ素静脈内投与に匹敵するヒ素元素の全血液細胞および血漿レベルを達成するのに有用な三酸化ヒ素の経口調製物を開発した(Kumana C.R.ら、血液学的悪性腫瘍患者の治療に使用された経口三酸化ヒ素の全身性アベイラビリティー(Systemic availability of oral arsenic-trioxide used for treatment of patients with haematological malignancies)、Eur J Clin Pharmacol. 2002;58:521-526, 出典明示により全体として本明細書の一部とされる)。
【0013】
発明の概要
本発明は、血液学的悪性腫瘍、特に、骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、赤白血病、および骨髄異形成症候群などの再発した急性骨髄性白血病(AML)、および再発した急性前骨髄球性白血病(APL)患者の治療のための三酸化ヒ素(AS)の経口調製物を提供する。第1の目的は、該経口処方の全身性バイオアベイラビリティーが静脈内投与に匹敵するか否かを試験することであった。第2の目的は、血液の細胞性成分、および推測によると、骨髄細胞(推定される作用部位)におけるAs蓄積の程度を表すことであった。
【0014】
ある特定の具体例において、本発明は、血液学的悪性腫瘍の治療に有用な三酸化ヒ素を含む経口組成物に関する。1の具体例において、該経口三酸化ヒ素組成物は、(1)三酸化ヒ素を滅菌水に加えて第1の溶液を作成し;(2)水酸化ナトリウムを第1の溶液に加えて第2の溶液を作成し;(3)滅菌水を第2の溶液に加えて第3の溶液を作成し;(4)塩酸を第3の溶液に加えて第4の溶液を作成し;次いで(5)希塩酸および滅菌水を第4の溶液に加えて最終溶液を作成する工程によって調製される。特定の具体例において、三酸化ヒ素は、少なくとも90%、95%、96%、97%、98%または99%純度を有する粉末である。好ましくは、該三酸化ヒ素粉末は、塩酸の添加前に、完全に溶解している。別の特定の具体例において、最終的な三酸化ヒ素溶液のpHは、約6.0、6.5、7.0、7.5または8.0、好ましくは約7.2である。別の特定の具体例において、最終溶液は1mg/mlの三酸化ヒ素濃度を有する。
【0015】
本発明は、また、経口三酸化ヒ素組成物の製造法に関する。好ましい具体例において、三酸化ヒ素組成物の製造法は、(1)500mgの三酸化ヒ素を150mlの滅菌水に加えて第1の溶液を作成し;(2)3M水酸化ナトリウムを第1の溶液に加えて第2の溶液を作成し;(3)250mlの滅菌水を第2の溶液に加えて第3の溶液を作成し;(4)6M塩酸を第3の溶液に加えて第4の溶液を作成し;次いで(5)希塩酸および滅菌水を第4の溶液に加えて最終溶液を作成する工程を含む。
【0016】
本発明は、さらに、対象において血液学的悪性腫瘍を治療するために、経口三酸化ヒ素組成物を使用する方法に関する。該対象は、ウシ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ニワトリ、アヒル、サル、ラット、マウスおよびヒトからなる群から選択される。好ましくは、該対象は哺乳動物、より好ましくは霊長類、最も好ましくはヒトである。
好ましい具体例において、三酸化ヒ素組成物は、血液学的悪性腫瘍を有する対象に経口投与される。三酸化ヒ素組成物は、血液学的悪性腫瘍のための通常の治療(例えば、化学療法、照射)の前、間または後に、対象に投与できる。
【0017】
図面の簡単な説明
図1は、単一の患者における三酸化ヒ素の静脈内および経口投与によるヒ素レベル対時間曲線(AUC)の代表的な評価を示す。全AUCは、台形法則を用いてコンピューター処理された。経口投与による正味の24h AUCは、2日目の総24−48h AUCと対応する静脈内投与によるAUCとの間の差として算出された。後者のAUCは、1日目の患者の排出薬物動態学の概算から得られた推定ヒ素レベルを用いて算出された(表IV参照)。図1は、Kumanaら、Eur. J Clin Pharmacol. 2002, 58: 521-6(出典明示により全体として本明細書の一部とされる)から借用された。
【0018】
図2は、1日目および2日目における全9人の患者の血漿中ヒ素濃度および全血中ヒ素濃度を示す。図2もまた、前掲のKumanaら(出典明示により全体として本明細書の一部とされる)から借用された。
【0019】
図3は、経口Asで治療された再発した急性前骨髄球性白血病(APL)の12人の一連の患者の臨床病理学的特徴および結果を示す。図3は、Auら、Blood 2003; 102: 407-8(出典明示により全体として本明細書の一部とされる)から借用された。
【0020】
発明の詳細な記載
経口三酸化ヒ素組成物の調製
市販の薬局方等級Asがない場合は、良好な化学品質(最小純度99%)の粉末をSigma Chemical Company (St Louis, MO, USA)から得た。As粉末は、冷水に溶け難く、極度にゆっくりと溶解し;沸騰水であっても、1:15の割合で溶解するだけである(Arsenic Trioxide, In: Budavari S O'Neil MJ (Eds), The Merck Index. An encyclopedia of chemicals, drugs and biologicals. NJ: Merck & Co., Inc. 11th Ed., Rahway, N.J., USA. 1989. Monograph 832, p 127)。結局、それは下記のように溶解させた。
【0021】
正確に秤量した500mgアリコートのAs粉末を150mlの滅菌水を含有するビーカー中に入れた。得られた懸濁液を、3M水酸化ナトリウムを滴下することによって溶解させた。該粉末が完全に溶解したとき、さらに250mlの滅菌水を加えた。6M塩酸(HCl)でゆっくりと滴定することによって、pHメーターを用いて、得られた溶液をpH8.0に調整した。次いで、希HClを用いて、pH7.2に調整し、滅菌水を加えて最終容量を500mlにした。原料の極度に有害な性質およびかかる溶液の真菌増殖を支持する既知の傾向のため、全工程を製薬用アイソレーター中で行った。薬局方における一般的な推奨とは対照的に、殺真菌剤は加えなかった。得られた透明溶液は、Asを1mg/ml濃度で含有するように開発された。さらに、香港政府試験所(Hong Kong Government Laboratory)に提出された試料をアッセイし、1mlあたり1mgのAsを含有することが確認され、微生物部門(Department of Microbiology)に提出された試料中、1ヶ月間のインキュベーション後、真菌は増殖しなかった。該溶液の貯蔵寿命は、3ヶ月を越えた。該研究の目的では、患者は、より長期間貯蔵した処方を受けなかった。
【0022】
使用法
血液学的悪性腫瘍を有する対象における使用
本発明は、さらに、本発明の経口三酸化ヒ素組成物を使用する方法を提供する。1の具体例において、該三酸化ヒ素組成物は、血液学的悪性腫瘍(例えば、白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、および骨髄腫)の治療のための医薬として使用される。該方法は、有効量の該三酸化ヒ素組成物を治療を必要とする対象に投与することを含む。該三酸化ヒ素組成物は、液体または固体形態において経口的に、または補給チューブを介して経腸的に投与されてもよい。本明細書中で使用される場合、「有効量」なる語は、血液学的悪性腫瘍という状況で、治療的または健康的利益を与えるのに十分な量を意味する。
【0023】
1の具体例において、該三酸化ヒ素組成物は、血液学的悪性腫瘍に罹患している対象において、健康的利益をもたらすことができる。好ましくは、該対象はヒトである。治療の必要な対象は、疾患のいずれかの段階で、転移を伴うか、または伴わない血液学的悪性腫瘍と診断されたものである。本明細書中で使用される場合、「血液学的悪性腫瘍」なる語は、限定するものではないが、白血病、リンパ腫および骨髄腫を包含する。本明細書中で使用される場合、「白血病」なる語は、限定するものではないが、急性リンパ球性白血病(ALL);急性骨髄性白血病(AML)(急性非リンパ球性白血病(ANLL)と呼ばれることもある)、例えば、骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、赤白血病、および骨髄異形成症候群;慢性リンパ球性白血病(CLL);慢性骨髄性(顆粒球性)白血病(CML);慢性骨髄単球性白血病(CMML);毛様細胞性白血病;および真性赤血球増加症を包含する。本明細書中で使用される場合、「リンパ腫」なる語は、限定するものではないが、ホジキン病および非ホジキンリンパ腫を包含する。本明細書中で使用される場合、「骨髄腫」なる語は、限定するものではないが、巨細胞性骨髄腫、無痛性骨髄腫、限局性骨髄腫、多発性骨髄腫、形質細胞性骨髄腫、硬化性骨髄腫、孤立性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌性骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞性白血病、孤立性形質細胞腫、および髄外性形質細胞腫を包含する。
【0024】
対象は、同時に血液学的悪性腫瘍に対する他の治療モダリティーを受けている患者であってもよい。対象は、治療計画(例えば、化学療法および/または照射)を経験し、その癌が退縮している血液学的悪性腫瘍患者であることができる。対象は、治療計画を経験し、臨床上、血液学的悪性腫瘍を有さないように見える血液学的悪性腫瘍患者であってもよい。本発明の三酸化ヒ素組成物は、限定するものではないが、化学療法および/または照射などの治療モダリティーのいずれかと共に投与することができる。例えば、該三酸化ヒ素組成物は、1以上の化学治療剤または免疫治療剤、例えば、アムサクリン(AMSA)、ブスルファン(Myleran(登録商標))、クロラムブシル(Leukeran)、クラドリビン(2−クロロデオキシアデノシン;「2−CDA」;Leustatin)、シクロホスファミド(Cytoxan)、シタラビン(ara−C;Cytosar−U)、ダウノルビシン(Cerubidine)、ドクソルビシン(Adriamycin)、エトポシド(VePesid)、フルダラビン・ホスフェート(Fludara)、ヒドロキシウリア(Hydrea)、イダルビシン(Idamycin)、L−アスパラギナーゼ(Elspar)、メトトレキサートナトリウムおよび6−メルカプトプリン(6−MP;Purinethol)、ミトキサントロン(Novantrone)、ペントスタチン(2−デオキシコフォルマイシン;「DCF」;Nipent)、プレドニソン、レチノイン酸(ATRA)、硫酸ビンクリスチン(Oncovin)、6−チオグアニン(Tabloid)、シクロスポリンA、タキソール(Taxol)、シスプラチン(Cisplatin)、カルボプラチン(Carboplatin)、ドキシル(Doxil)、トポテカン(Topotecan)、メトトレキサート(Methotrexate)、ブレオマイシン(Bleomycin)、およびエピルビシン(Epirubicin)と共に使用することができる。該三酸化ヒ素組成物は、また、他の治療計画を行った後に使用することもできる。
【0025】
対象は、まだ血液学的悪性腫瘍と診断されていないが、遺伝的因子および/または環境的因子の結果として、血液学的悪性腫瘍に罹患しやすいか、または該疾患を高リスクで発現しやすいものであってもよい。
対象にもよるが、治療的および健康的利益は、血液学的悪性腫瘍の成長および/または血液学的悪性腫瘍の他の身体部分への伸展(すなわち、転移)の阻害または遅延、癌の症状の軽減、癌を有する対象の生存率の改善、対象の平均寿命の延長、対象の生活の質の改善、および/または好結果の治療過程(例えば、化学療法、照射)後の再発率の減少の範囲に及ぶ。血液学的悪性腫瘍に関連する症状は、限定するものではないが、弱体化した免疫系、感染、発熱、赤血球および血小板の減少、衰弱、疲労、食欲減退、体重減少、腫れた、または柔らかいリンパ節、肝臓または脾臓、容易な出血または挫傷、皮下の小さな赤い斑点(点状出血と呼ばれる)、腫れた、または出血した歯肉、発汗(特に夜)、骨または関節痛、頭痛、嘔吐、精神錯乱、筋肉調節の喪失、および発作を包含する。
【0026】
特に、本発明は、本発明の三酸化ヒ素組成物を対象に経口投与することを含む、対象、例えば、ヒトにおける血液学的悪性腫瘍の完全な寛解方法を提供する。他の具体例において、本発明は、血液学的悪性腫瘍の少なくとも10%、20%、40%、60%、80%および95%の寛解を提供する。本発明は、また、本発明の三酸化ヒ素組成物を対象に経口投与することを含む、血液学的悪性腫瘍に苦しめられている対象、好ましくはヒト患者の生存時間を延長する方法を提供する。
【0027】
有効投与量は、治療されている対象および投与経路によって変化するであろう。対象に対する有効投与量は、また、治療されるべき状態および治療されるべき状態の重篤度によって変化するであろう。投与量、およびおそらく投与頻度は、また、個々の対象の年齢、体重および応答によって変化するであろう。一般に、血液学的悪性腫瘍に苦しめられている対象のための三酸化ヒ素組成物の1日の全投与量は、1日あたり1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、15mg、20mg、または25mg、好ましくは1日あたり約10mgであり、一度に、または数回に分けて投与される。好ましくは、該三酸化ヒ素組成物は、対象に経口投与される。
【0028】
治療過程の時間の長さは、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも7週間、少なくとも10週間、少なくとも13週間、少なくとも15週間、少なくとも20週間、少なくとも6ヶ月、または少なくとも1年であるべきである。いくつかの場合において、当業者に明らかなように、これらの範囲外の投与量を使用する必要があることもある。ある特定の具体例において、該三酸化ヒ素組成物は、症状が調節下におかれるまで、または該疾患が部分的または完全に寛解するまでの時間、投与することができる。さらに、臨床医または治療している外科医は、個々の患者の応答と関連して、薬物療法として、該三酸化ヒ素組成物の使用をどのように、いつ中断、調整、または終了するかを知っていることに注目されたい。
【0029】
血液学的悪性腫瘍の発症および進行に対する本発明の三酸化ヒ素組成物の効果は、限定するものではないが、a)コンピューター断層撮影法(CT)スキャンまたはソノグラムなどの画像化技術を用いて、腫瘍の大きさおよび形態の変化;および(b)血液学的悪性腫瘍の危険性の生物学的マーカーのレベルの変化を測定することを包含する当業者に既知のいずれかの方法によってモニターできる。
【0030】
ある特定の具体例において、本発明の予防および/または治療プロトコールの毒性および効力は、細胞培養または実験動物における標準的な医薬的手法、例えば、LD50(集団の50%までの致死量)およびED50(集団の50%において治療効果のある投与量)を決定するための手法によって決定できる。毒性および治療効果間の用量比は、治療的指標であり、LD50/ED50比として表すことができる。大きな治療的指標を示す予防および/または治療剤が好ましい。毒性副作用を示す予防および/または治療剤を用いてもよいが、非感染細胞に対する損傷の可能性を最小限し、それにより、副作用を減少させるために、かかる薬剤を罹患組織部位に向けさせる送達系を設計するように配慮しなければならない。
【0031】
他の具体例において、細胞培養アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトにおいて有用な予防および/または治療剤の一連の投与量を処方するのに使用できる。かかる薬剤の投与量は、好ましくは、わずかな毒性か、または毒性のないED50を包含する循環濃度の範囲内にある。該投与量は、使用された投与形態および投与経路に依存して、該範囲内で変更してもよい。本発明の方法において使用されるいずれの薬剤の場合も、治療上有効量は、最初に、細胞培養アッセイから概算することができる。投与量は、細胞培養において決定されたIC50(すなわち、症状の最大阻害の半分を達成する試験化合物の濃度)を包含する循環血漿濃度範囲を達成するように、動物モデルにおいて処方してもよい。かかる情報は、ヒトにおいて有用な投与量をより正確に決定するために使用できる。血漿中レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーによって測定されうる。
【0032】
本発明にしたがって用いられる治療の抗癌活性は、また、scidマウスモデルまたはトランスジェニックマウスなどの癌の研究のための種々の実験動物モデルを用いることによって決定できる。下記に、例示として、いくつかのアッセイを示すが、それらに限定されるものではない。
【0033】
処方
本発明の組成物は、セクション5.1において上記したように調製された三酸化ヒ素を活性成分として含み、医薬上許容される担体または賦形剤、および/または他の成分を含有することができる(但し、これらの成分は、該三酸化ヒ素組成物の効力を損なわない(例えば、減少させない))。本発明の三酸化ヒ素組成物中に配合できる他の成分は、限定するものではないが、薬草(伝統的な中国の医薬品)、薬草抽出物、ビタミン、アミノ酸、金属塩、金属キレート、着色料、風味増強剤、保存料などを包含しうる。
【0034】
経口組成物の有効投与量を対象に提供するために、いずれの投与形態を使用してもよい。投与形態は、錠剤、カプセル、分散液、懸濁液、溶液などを包含する。1の具体例において、経口投与に適当な本発明の組成物は、所定量の活性化および順化酵母細胞を含有しているカプセル、発疱剤、カシェ剤、または錠剤などの別個の単位として、粉末または顆粒として、または水性液体、非水性液体中の溶液または懸濁液、水中油型エマルジョン、または油中水型液体エマルジョンとして提供されうる。好ましい具体例において、該経口組成物は溶液形態である。一般に、該組成物は、活性成分を液体担体または微粉固形担体またはその両方と均一によく混合し、次いで、必要ならば、生産物を所望の形状にすることによって調製される。かかる生産物は、投与量およびその使用環境にもよるが、医薬または食物サプリメントとして使用できる。
【0035】
本発明の経口組成物は、さらに、結合剤(例えば、α化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);結合剤または増量剤(例えば、ラクトース、ペントサン、微結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)を含んでいてもよい。錠剤またはカプセルは、当該分野でよく知られた方法によって被覆できる。
【0036】
経口投与用液体調製物は、例えば、溶液、シロップまたは懸濁液の形態を取ることができ、またはそれらは、使用前に水または他の適当なビヒクルで復元するための乾燥製品であることができる。所望の生産物を再構築するために使用される液体の温度は、65℃未満であるべきである。かかる液体調製物は、医薬上許容される添加剤、例えば、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素添加食用脂);乳化剤(例えば、レシチンまたはアラビアゴム);非水性ビヒクル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコールまたは分別植物油);および保存料(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチルまたはプロピルあるいはソルビン酸)と共に、通常の方法によって調製することができる。下記のように、該調製物は、また、バッファー塩、フレーバー、着色料および甘味料を適宜含有して、食物または飲料に似せることができる。
【0037】
ある特定の具体例において、該三酸化ヒ素組成物は、1mlあたり約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4、5、10または15mgの三酸化ヒ素を含む懸濁液である。該三酸化ヒ素組成物は、当業者によく知られた方法を用いて希釈または濃縮できる。あまり好ましくない具体例において、該三酸化ヒ素組成物は、1mlあたり約0.1〜100mgの三酸化ヒ素を含有する懸濁液である。好ましい具体例において、該三酸化ヒ素組成物は、1mlあたり約0.5〜10mgの三酸化ヒ素を含有する懸濁液である。より好ましい具体例において、該三酸化ヒ素組成物は、1mlあたり約1mgの三酸化ヒ素を含有する懸濁液である。最も好ましい具体例において、該三酸化ヒ素組成物は、1mlあたり約1mgの三酸化ヒ素を含有する懸濁液である。該三酸化ヒ素組成物は、健康ドリンクとして処方でき、所定量の液体酵母培養物を含有する液体容器中にパッケージすることができる。標準的な品質調節およびパッケージング方法が、本発明の1の具体例において、各容器が約1ml、2ml、3ml、4ml、5ml、10ml、15ml、20ml、30ml、40ml、50ml、75ml、100ml、150ml、200ml、250ml、500ml、750ml、または1,000mlの該三酸化ヒ素組成物を含有するように液体容器中にパッケージされる三酸化ヒ素組成物の生産に応用される。対象において全一日量を得るように毎日取り扱われるべき容器の数は、各容器中に含有される該三酸化ヒ素組成物の濃度に依存する。
【0038】
一般に、投与の容易さのため、錠剤およびカプセルが最も有益な経口投与単位形態を示し、この場合、上記の固形医薬担体が用いられる。好ましい具体例において、該組成物はカプセルである。該カプセルは、いずれかの商業上利用可能な方法によって処方することができる。ある特定の具体例において、該組成物は、0.25mg、0.5mg、1mg、5mg、10mg、15mg、20mg、25mg、30mg、40mgまたは50mgの粉末形態の該三酸化ヒ素組成物を含有するカプセルである。
【0039】
本発明の医薬組成物および投与形態およびキットを含め、本発明の種々の具体例において使用できる抗癌剤の付加的な例は、限定するものではないが、アシビシン(acivicin);アクラルビシン(aclarubicin);塩酸アコダゾール(acodazole);アクロニン(acronine);アドゼレシン(adozelesin);アルデスロイキン(aldesleukin);アルトレタミン(altretamine);アンボマイシン(ambomycin);酢酸アメタントロン(ametantrone);アミノグルテチミド(aminoglutethimide);アンサクリン(amsacrine);アナストロゾール(anastrozole);アントラマイシン(anthramycin);アスパラギナーゼ;アスペルリン(asperlin);アザシチジン(azacitidine);アゼテパ(azetepa);アゾトマイシン(azotomycin);バチマスタット(batimastat);ベンゾデパ(benzodepa);ビカルタミド(bicalutamide);塩酸ビサントレン(bisantrene);ビスナフィド(bisnafide)ジメシラート;ビゼレシン(bizelesin);硫酸ブレオマイシン(bleomycin);ブレキナル(brequinar)ナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン(busulfan);カクチノマイシン;カルステロン(calusterone);カラセミド(caracemide);カルベチメル(carbetimer);カルボプラチン(carboplatin);カルムスチン(carmustine);塩酸カルビシン(carubicin);カルゼレシン(carzelesin);セデフィンゴール(cedefingol);クロラムブシル(chlorambucil);シロレマイシン(cirolemycin);シスプラチン(cisplatin);クラドリビン(cladribine);クリスナトール(crisnatol)メシラート;シクロホスファミド;シタラビン(cytarabine);ダカルバジン(dacarbazine);ダクチノマイシン(dactinomycin);塩酸ダウノルビシン(daunorubicin);デシタビン(decitabine);デクソルマプラチン(dexormaplatin);デザグアニン(dezaguanine);デザグアニンメシラート;ジアジクオン(diaziquone);ドセタキセル(docetaxel);ドクソルビシン;塩酸ドクソルビシン;ドロロキシフェン(droloxifene);クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン(dromostanolone);ダウゾマイシン(duazomycin);エダトレキサート(edatrexate);塩酸エフロニチン(eflornithine);エルサミトルシン(elsamitrucin);エンロプラチン(enloplatin);エンプロメート(enpromate);エピプロピジン(epipropidine);塩酸エピルビシン(epirubicin);エルブロゾール(erbulozole);塩酸エソルビシン(esorubicin);エストラムスチン(estramustine);リン酸エストラムスチンナトリウム;
【0040】
エタニダゾール(etanidazole);エトポシド(etoposide);リン酸エトポシド;エトプリン(etoprine);塩酸ファドロゾール(fadrozole);ファザラビン(fazarabine);フェンレチニド(fenretinide);フロクリジン(floxuridine);リン酸フルダラビン(fludarabine);フルオロウラシル;フルオロシタビン(flurocitabine);フォスキドン(fosquidone);フォストリエシン(fostriecin)ナトリウム;ゲンシタビン(gemcitabine);塩酸ゲンシタビン;ヒドロキシウリア;塩酸イダルビシン(idarubicin);イフォスファミド(ifosfamide);イルモフォシン(ilmofosine);インターロイキンII(組み換えインターロイキンIIまたはrIL2を包含する);インターフェロンアルファ−2a;インターフェロンアルファ−2b;インターフェロンアルファ−n1;インターフェロンアルファ−n3;インターフェロンベータ−1a;インターフェロンガンマ−1b;イプロプラチン(iproplatin);塩酸イリノテカン(irinotecan);酢酸ランレオチド(lanreotide);レトロゾール(letrozole);酢酸ロイプロリド(leuprolide);塩酸リアロゾール(liarozole);ロメトレキソール(lometrexol)ナトリウム;ロムスチン(lomustine);塩酸ロソキサントロン(losoxantrone);マソプロコール(masoprocol);マイタンシン(maytansine);塩酸メクロレタミン(mechlorethamine);酢酸メゲストロール(megestrol);酢酸メレンゲストロール(melengestrol);メルファラン(melphalan);メノガリル(menogaril);メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン(metoprine);メツレデパ(meturedepa);ミチンドミド(mitindomide);ミトカルシン(mitocarcin);ミトクロミン(mitocromin);ミトギリン(mitogillin);ミトマルシン(mitomalcin);ミトマイシン(mitomycin);ミトスペル(mitosper);ミトタン(mitotane);塩酸ミトキサントロン(mitoxantrone);マイコフェノール酸(mycophenolic acid);ノコダゾール(nocodazole);ノガラマイシン(nogalamycin);オルマプラチン(ormaplatin);オキシスラン(oxisuran);パクリタキセル(paclitaxel);ペガスパルガーゼ(pegaspargase);ペリオマイシン(peliomycin);ペンタムスチン(pentamustine);硫酸ペプロマイシン(peplomycin);ペルフォスファミド(perfosfamide);ピポブロマン(pipobroman);ピポスルファン(piposulfan);
【0041】
塩酸ピロキサントロン(piroxantrone);プリカマイシン(plicamycin);プロメスタン(plomestane);ポルフィマー(porfimer)ナトリウム;ポルフィロマイシン(porfiromycin);プレドニムスチン(prednimustine);塩酸プロカルバジン(procarbazine);プロマイシン(puromycin);塩酸プロマイシン;ピラゾフリン(pyrazofurin);リボプリン(riboprine);ログレチミド(rogletimide);サフィンゴール(safingol);塩酸サフィンゴール;セムスチン(semustine);シントラゼン(simtrazene);スパルフォサート(sparfosate)ナトリウム;スパルソマイシン(sparsomycin);塩酸スピロゲルマニウム(spirogermanium);スピロムスチン(spiromustine);スピロプラチン(spiroplatin);ストレプトニグリン(streptonigrin);ストレプトゾシン(streptozocin);スロフェヌル(sulofenur);タリソマイシン(talisomycin);テコガラン(tecogalan)ナトリウム;テガフル(tegafur);塩酸テロキサントロン(teloxantrone);テモポルフィン(temoporfin);テニポシド(teniposide);テロキシロン(teroxirone);テストラクトン(testolactone);トビアミプリン(thiamiprine);チオグアニン;チオテパ(thiotepa);チアゾフリン(tiazofurin);チラパザミン(tirapazamine);クエン酸トレミフェン(toremifene);酢酸トレソトロン(trestolone);リン酸トリシリビン(triciribine);トリメトレキサート(trimetrexate);グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン(triptorelin);塩酸ツブロゾール(tubulozole);ウラシルマスタード;ウレデパ(uredepa);バプレオチド(vapreotide);ベルテポルフィン(verteporfin);硫酸ビンブラスチン(vinblastine);硫酸ビンクリスチン(vincristine);ビンデシン(vindesine);
【0042】
硫酸ビンデシン;硫酸ビネピジン(vinepidine);硫酸ビングリシネート(vinglycinate);硫酸ビンロイロシン(vinleurosine);酒石酸ビノレルビン(vinorelbine);硫酸ビンロシジン(vinrosidine);硫酸ビンゾリジン(vinzolidine);ボロゾール(vorozole);ゼニプラチン(zeniplatin);ジノスタチン(zinostatin);塩酸ゾルビシン(zorubicin)を包含する。他の抗癌剤は、限定するものではないが、20−epi−1,25ジヒドロキシビタミンD3;5−エチニルウラシル;アビラテロン(abiraterone);アクラルビシン(aclarubicin);アシルフルベン(acylfulvene);アデシペノール(adecypenol);アドゼレシン(adozelesin);アルデスロイキン(aldesleukin);ALL−TKアンタゴニスト;アルトレタミン(altretamine);アンバムスチン(ambamustine);アミドックス(amidox);アミフォスチン(amifostine);アミノレブリン酸(aminolevulinic acid);アンルビシン(amrubicin);アムサクリン(amsacrine);アナグレリド(anagrelide);アナストロゾール(anastrozole);アンドログラフォリド(andrographolide);脈管形成阻害剤;アンタゴニストD;アンタゴニストG;アンタレリックス(antarelix);抗−背側化形態形成蛋白質−1(anti-dorsalizing morphogenetic protein-1);抗アンドロゲン、前立腺癌;抗エストロゲン;抗新生物薬;アンチセンスオリゴヌクレオチド;アフィジコリングリシネート(aphidicolin glycinate);アポトーシス遺伝子モジュレーター;アポトーシス調節剤;アプリン酸;ara−CDP−DL−PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン(asulacrine);アタメスタン(atamestane);アトリムスチン(atrimustine);アキシナスタチン(axinastatin)1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン(azasetron);アザトキシン(azatoxin);アザチロシン(azatyrosine);バクカチン(baccatin)III誘導体;バラノール(balanol);バチマスタット(batimastat);BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾクロリン(benzochlorins);ベンゾイルスタウロスポリン(benzoylstaurosporine);ベータラクタム誘導体;ベータ−アレチン(alethine);ベタクラマイシン(betaclamycin)B;ベツリン酸;bFGF阻害剤;ビカルタミド(bicalutamide);ビサントレン(bisantrene);ビスアジリニルスペルミン(bisaziridinylspermine);ビスナフィド(bisnafide);ビストラテン(bistratene)A;ビゼレシン(bizelesin);ブレフラート(breflate);ブロピリミン(bropirimine);ブドチタン(budotitane);ブチオニンスルフォキシミン(buthionine sulfoximine);カルシポトリオール(calcipotriol);カルフォスチン(calphostin)C;カンプトテシン(camptothecin)誘導体;カナリポックス(canarypox)IL−2;
【0043】
カペシタビン(capecitabine);カルボキサミド−アミノ−トリアゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRest M3;CARN 700;軟骨誘導性阻害剤;カルゼレシン(carzelesin);カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン(castanospermine);セクロピン(cecropin)B;セトロレリックス(cetrorelix);クロルリン(chlorlns);クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト(cicaprost);cis−ポルフィリン;クラドリビン(cladribine);クロミフェン(clomifene)類似体;クロトリマゾール(clotrimazole);コリスマイシン(collismycin)A;コリスマシンB;コンブレタスタチン(combretastatin)A4;コンブレタスタチン類似体;コナゲニン(conagenin);クラムベスシジン(crambescidin)816;クリスナトール(crisnatol);クリプトフィシン(cryptophycin)8;クリプトフィシンA誘導体;クラシン(curacin)A;シクロペンタントラキノン(cyclopentanthraquinones);シクロプラタム(cycloplatam);サイペマイシン(cypemycin);シタラビンオクフォスフェート(cytarabine ocfosfate);細胞溶解因子;サイトスタチン(cytostatin);ダクリキシマブ(dacliximab);デシタビン(decitabine);デヒドロジデムニン(dehydrodidemnin)B;デスロレリン(deslorelin);デキサメタゾン(dexamethasone);デキシフォスファミド(dexifosfamide);デクスラゾキサン(dexrazoxane);デクスベラパミル(dexverapamil);ジアジキオン(diaziquone);ジデムニン(didemnin)B;ジドックス(didox);ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ−5−アザシチジン(azacytidine);9−ジヒドロタキソール;ジオキサマイシン(dioxamycin);ジフェニルスピロムスチン(diphenyl spiromustine);ドセタキセル(docetaxel);
【0044】
ドコサノール(docosanol);ドラセトロン(dolasetron);ドキシフルリジン(doxifluridine);ドロロキシフェン(droloxifene);ドロナビノール(dronabinol);ドゥオカルマイシン(duocarmycin)SA;エブセレン(ebselen);エコムスチン(ecomustine);エデルフォシン(edelfosine);エドレコロマブ(edrecolomab);エフォルニチン(eflornithine);エレメン(elemene);エミテフル(emitefur);エピルビシン(epirubicin);エプリステリド(epristeride);エストラムスチン(estramustine)類似体;エストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール(etanidazole);リン酸エトポシド(etoposide);エキセスタン(exemestane);ファドロゾール(fadrozole);ファザラビン(fazarabine);フェンレチニド(fenretinide);フィルグラスチム(filgrastim);フィナステリド(finasteride);フラボピリドール(flavopiridol);フレゼラスチン(flezelastine);フルアステロン(fluasterone);フルダラビン(fludarabine);塩酸フルオロダウノルシン(fluorodaunorunicin);フォルフェニメックス(forfenimex);フォルメスタン(formestane);フォストリエシン(fostriecin);フォテムスチン(fotemustine);ガドリニウムテキサフィリン(gadolinium texaphyrin);硝酸ガリウム;ガロシタビン(galocitabine);ガニレリックス(ganirelix);ゲラチナーゼ阻害剤;ゲンシタビン(gemcitabine);グルタチオン
阻害剤;ヘプスルファム(hepsulfam);ヘレグリン(heregulin);ヘキサメチレンビサセタミド(hexamethylene bisacetamide);ヘペリシン(hypericin);イバンドロン酸(ibandronic acid);イダルビシン(idarubicin);イドキシフェン(idoxifene);イドラマトン(idramantone);イルモフォシン(ilmofosine);イロマスタット(ilomastat);イミダゾアクリドン(imidazoacridones);イミキモド(imiquimod);免疫刺激ペプチド;インスリン様生長因子−1受容体阻害剤;インターフェロンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン(iobenguane);ヨードドクソルビシン(iododoxorubicin);4−イポメアノール(ipomeanol);イロプラクト(iroplact);イルソグラジン(irsogladine);イソベンガゾール(isobengazole);イソホモハリコンドリン(isohomohalicondrin)B;イタセトロン(itasetron);
【0045】
ジャスプラキノリド(jasplakinolide);カハラリド(kahalalide)F;ラメラリン(lamellarin)−Nトリアセテート;ランレオチド(lanreotide);レイナマイシン(leinamycin);レノグラスチム(lenograstim);硫酸レンチナン(lentinan);レプトルスタチン(leptolstatin);レトロゾール(letrozole);白血病阻害因子;白血球アルファインターフェロン;ロイプロリド(leuprolide)+エストロゲン+プロゲストロン;ロイプロレリン(leuprorelin);レバミソル(levamisole);リアロゾール(liarozole);直鎖状ポリアミン類似体;脂肪親和性二糖類ペプチド;脂肪親和性プラチナ化合物;リソクリナミド(lissoclinamide)7;ロバプラチン(lobaplatin);ロムブリシン(lombricine);ロメトレキソール(lometrexol);ロニダミン(lonidamine);ロソキサントロン(losoxantrone);ロバスタチン(lovastatin);ロクソリビン(loxoribine);ルトテカン(lurtotecan);ルテチウムテキサフィリン(lutetium texaphyrin);リソフィリン(lysofylline);細胞溶解性ペプチド;マイタンシン(maitansine);マノスタチン(mannostatin)A;マリマスタット(marimastat);マソプロコル(masoprocol);マスピン(maspin);マトリライシン(matrilysin)阻害剤;マトリックスメタロプロテイナーゼ阻害剤;メノガリル(menogaril);メルバロン(merbarone);メテレリン(meterelin);メチオニナーゼ;メトクロプラミド(metoclopramide);MIF阻害剤;ミフェプリストン(mifepristone);ミルテフォシン(miltefosine);ミリモスチム(mirimostim);ミスマッチ二本鎖RNA;ミトグアゾン(mitoguazone);ミトラクトール(mitolactol);マイトマイシン(mitomycin)類似体;
【0046】
マイトナフィド(mitonafide);マイトトキシン(mitotoxin)繊維芽細胞生長因子−サポリン(saporin);マイトキサントロン(mitoxantrone);モファロテン(mofarotene);モルグラモスチム(molgramostim);モノクローナル抗体、ヒト絨毛膜刺激ホルモン;モノホスホリル脂質A+マイオバクテリア(myobacterium)細胞壁sk;モピダモール(mopidamol);多剤耐性遺伝子阻害剤;多発性腫瘍サプレッサー1に基づく治療;マスタード抗癌剤;マイカペロキシド(mycaperoxide)B;ミコバクテリア細胞壁抽出物;マイリアポロン(myriaporone);N−アセチルジナリン(acetyldinaline);N−置換ベンズアミド;ナファレリン(nafarelin);ナグレスチップ(nagrestip);ナロクソン(naloxone)+ペンタゾシン(pentazocine);ナパビン(napavin);ナフテルピン(naphterpin);ナルトグラスチム(nartograstim);ネダプラチン(nedaplatin);ネモルビシン(nemorubicin);ネリドロン酸(neridronic acid);中性エンドペプチダーゼ;ニルタミド(nilutamide);ニサマイシン(nisamycin);一酸化窒素モジュレーター;ニトロキシド抗酸化剤;ニトルリン(nitrullyn);O6−ベンジルグアニン;オクトレオチド(octreotide);オキセノン(okicenone);オリゴヌクレオチド;オナプリストン(onapristone);オンダンセトロン(ondansetron);オンダンセトロン;オラシン(oracin);経口サイトカイン誘導剤;オルマプラチン(ormaplatin);オサテロン(osaterone);オキサリプラチン(oxaliplatin);オキサウノマイシン(oxaunomycin);パクリタキセル(paclitaxel);パクリタキセル類似体;パクリタキセル誘導体;パラウアミン(palauamine);パルミトイルリゾキシン(palmitoylrhizoxin);パミドロン酸(pamidronic acid);パナキシトリオール(panaxytriol);パノミフェン(panomifene);パラバクチン(parabactin);パゼリプチン(pazelliptine);ペガスパルガーゼ(pegaspargase);ペルデシン(peldesine);ペントサンポリサルフェートナトリウム;ペントサチン(pentostatin);ペントロゾール(pentrozole);ペルフルブロン(perflubron);ペルフォスファミド(perfosfamide);ペリリルアルコール;フェナジノマイシン(phenazinomycin);フェニルアセテート;ホスファターゼ阻害剤;ピシバニル(picibanil);塩酸ピロカルピン(pilocarpine);ピラルビシン(pirarubicin);ピリトレキシム(piritrexim);プラセチン(placetin)A;プラセチンB;プラスミノーゲンアクチベーター阻害剤;プラチナ錯体;プラチナ化合物;プラチナ−トリアミン複合体;ポルフィマー(porfimer)ナトリウム;ポリフィロマイシン(porfiromycin);
【0047】
プレドニソン(prednisone);プロピルビス−アクリドン;プロスタグランジンJ2;プロテアソーム(proteasome)阻害剤;プロテインAに基づく免疫モジュレーター;プロテインキナーゼC阻害剤;プロテインキナーゼC阻害剤、ミクロアルガル(microalgal);プロテインチロシンホスファターゼ阻害剤;プリンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン(purpurins);ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化されたヘモグロビンポリオキシエチレン抱合体;rafアンタゴニスト;ラルチトレキセド(raltitrexed);ラモセトロン(ramosetron);rasファルネシル蛋白質トランスフェラーゼ阻害剤;ras阻害剤;ras−GAP阻害剤;脱メチル化レテリプチン(retelliptine demethylated);レニウムRe186エチドロネート(etidronate);リゾキシン(rhizoxin);リボザイム;RIIレチナミド(retinamide);ログレチミド(rogletimide);ロヒツキン(rohitukine);ロムルチド(romurtide);ロキニメクス(roquinimex);ルビギノン(rubiginone)B1;ルボキシル(ruboxyl);サフィンゴール(safingol);サントピン(saintopin);SarCNU;サルコフィトール(sarcophytol)A;サルグラモスチム(sargramostim);Sdi1模倣物;セムスチン(semustine);老齢誘導性阻害剤1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル変換阻害剤;シグナル変換モジュレーター;一本鎖抗原結合性蛋白質;シゾフィラン(sizofiran);ソブゾキサン(sobuzoxane);ナトリウムボロカプテート(sodium borocaptate);
【0048】
ナトリウムフェニルアセテート;ソルベロール(solverol);ソマトメジン(somatomedin)結合性蛋白質;ソネルミン(sonermin);スパルフォス酸(sparfosic acid);スピカマイシン(spicamycin)D;スピロムスチン(spiromustine);スプレノペンチン(splenopentin);スポンジスタチン(spongistatin)1;スクアラミン(squalamine);幹細胞阻害剤;幹細胞分化阻害剤;スチピアミド(stipiamide);ストロメリシン(stromelysin)阻害剤;スルフィノシン(sulfinosine);超活性血管作用性腸管ペプチドアンタゴニスト;スラジスタ(suradista);スラミン(suramin);スワインソニン(swainsonine);合成グリコサミノグリカン;タリムスチン(tallimustine);タモキシフェンメチオジン(tamoxifen methiodide);タウロムスチン(tauromustine);タザロテン(tazarotene);テコガラン(tecogalan)ナトリウム;テガフル(tegafur);テルラピリリウム(tellurapyrylium);テロメラーゼ阻害剤;テモポルフィン(temoporfin);テモゾロミド(temozolomide);テニポシド(teniposide);テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン(tetrazomine);タリブラスチン(thaliblastine);チオコラリン(thiocoraline);トロンボポイエチン;トロンボポイエチン模倣物;チマルファシン(thymalfasin);サイモポイエチン受容体アゴニスト;サイモトリナン(thymotrinan);甲状腺刺激ホルモン;スズエチルエチオプルプリン(tin ethyl etiopurpurin);チラパザミン(tirapazamine);二塩化チタノセン(titanocene bichloride);トプセンチン(topsentin);トレミフェン(toremifene);全能性幹細胞因子;翻訳阻害剤;トレチノイン(tretinoin);トリアセチルウリジン;トリシリビン(triciribine);トリメトレキサート(trimetrexate);トリプトレリン(triptorelin);トロピセトロン(tropisetron);ツロステリド(turosteride);チロシンキナーゼ阻害剤;チルホスチン(tyrphostins);UBC阻害剤;ウデニメックス(ubenimex);尿生殖洞誘導性成長阻害因子;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;バプレオチド(vapreotide);バリオリン(variolin)B;ベクター系;赤血球遺伝子治療;ベラレソル(velaresol);ベラミン(veramine);ベルジン(verdins);ベルテポリフィン(verteporfin);ビノレルビン(vinorelbine);ビンキサルチン(vinxaltine);ビタキシン(vitaxin);ボロゾール(vorozole);ザノテロン(zanoterone);ゼニプラチン(zeniplatin);ジラスコルブ(zilascorb);およびジノスタチンスチマラマー(zinostatin stimalamer)を包含する。好ましい付加的な抗癌剤は、5−フルオロウラシルおよびロイコボリン(leucovorin)である。これらの2つの薬剤は、特に、タリドミド(thalidomide)およびトポイソメラーゼ阻害剤を用いる方法において使用するときに有用である。
【0049】
本発明は、本発明の三酸化ヒ素組成物の効果および安定性を研究するために行われた臨床試験を詳述している下記の実施例を参照することによって、さらに明らかにされる。
【実施例】
【0050】
下記の実施例は、本発明の三酸化ヒ素組成物の経口処方および該処方を用いる臨床研究の結果を説明する。これらの実施例は、限定的なものとして解釈されるべきではない。
【0051】
実施例1
臨床研究は、本発明の経口処方の全身性バイオアベイラビリティーが静脈内投与に匹敵するか否かを試験するために、および血液の細胞性成分中のAs蓄積の程度、および推論によれば、推定される作用部位である骨髄細胞中のAs蓄積の程度を表すために行われた。
【0052】
経口三酸化ヒ素(As)処方の調製
三酸化ヒ素の経口処方は、前掲のセクション5.1に記載の方法にしたがって調製された。薬局方における一般的な推奨とは対照的に、殺真菌剤は添加されなかった。得られた透明溶液は、1mg/ml濃度でAsを含有するように開発された。さらに、香港政府試験所(Hong Kong Government Laboratory)に提出された試料は、誘導結合プラズマ(Indicative Coupled Plasma: ICP)および容量滴定によってアッセイされ、1mlあたり1mgのAsを含有することが確認された(表1参照)。さらに、微生物部門(Department of Microbiology)に提出された試料中、1ヶ月間のインキュベーション後、真菌は増殖しなかった。該溶液の貯蔵寿命は、3ヶ月を越えた。該研究の目的では、患者は、より長期間貯蔵した処方を受けなかった。
【0053】
【表1】

【0054】
患者
該研究に参加するための書面によるインフォームド・コンセントを、再発した急性骨髄性白血病(AML)または再発した急性前骨髄球性白血病(APL)であって、少なくとも2つの標準的な抗白血病治療に応答しなかった9人の患者から得た。人口統計的特徴ならびに各患者の病態に関係する詳細(研究室の知見を包含する)は、研究期間中、記録された。その後の臨床的な進行および関連する研究室での結果もまた、記録された。香港大学医学部倫理委員会(University of Hong Kong Faculty of Medicine Ethics Committee)は、全プロトコールを是認した。
【0055】
治療プロトコールおよび血液サンプリング
魚貝類を含有する食事はヒ素を含有するので、各患者は、好ましくはヒ素投与前の少なくとも1週間、魚貝類を控えるように指示された。1日目の午前10時に、100mlの塩化ナトリウム0.9%溶液中に希釈した10mgの標準的な市販の静脈内投与用(IV)As処方(Ophthalmic Laboratories, Sydney, Australia)を60分にわたってIV点滴した。2日目の午前10時に(すなわち、IV点滴の開始から24時間後)、各患者は10mg投与量(10ml)の本発明の経口用As溶液を嚥下し、該処理の前または間に、絶食するようには指示されなかった。
1日目のAs投与の前、およびその後、IV点滴の開始後の時点:1、2、3、4、6、8、24、25、26、27、28、30、32および48時間後に、静脈血試料を採取した(11ml)。各試料由来の5mlを、ノンゲル(non-gel)リチウム−ヘパリン管(血漿中ヒ素レベルの測定のため)および3mlx2のEDTA管(全血中レベルの測定のため)中に収集した。リチウム−ヘパリン管由来の血漿を新たに分離し、血漿および全血試料の両方を4℃で保管し、次いで、バッチ分析した。
【0056】
ヒ素濃度のアッセイ
試料を3%(w/v)トリクロロ酢酸で蛋白除去し、次いで、マトリックス調整剤と混合した後、血漿および全血中ヒ素濃度をアッセイした。マトリックス調整剤は、硝酸マグネシウム(10g/L)、塩化パラジウム(6g/L)および亜硫酸アンモニウム(20g/L)を0.5%Triton X100中に含有していた。全化学物質は、分析等級のものであり、Sigma(St Louis, MO)から入手した。処理した試料を、黒鉛炉原子吸光分析(Simma 6000, Perkin-Elmer, Norwalk, CT)によって、全血および血漿(それ自体、Asおよびその代謝産物を含む)中の全ヒ素濃度についてアッセイした。したがって、濃度は、基礎値を超えるヒ素のnmol/Lとして表される。該方法の日間の変動係数は、559〜2169nmol/Lを変動するヒ素濃度の場合、7.5−9.6%であった。該方法の精度は、既知量のヒ素を患者試料中に加えることによって評価され;301〜678nmol/Lを変動する濃度について、回収率は97.3−101.3%であった。
【0057】
経口ヒ素バイオアベイラビリティー測定
各患者につき、静脈内および経口As投与後の血漿および全血中濃度対時間プロットを比較した。台形法則を組み込んでいる標準的なコンピューターソフトウェア(GraphPad PrismR Version 3)を用いて、各ヒ素レベル対時間曲線(AUC)下の面積を、IV投与開始後から0〜24時間(100%であるとされる)の間、および経口投与後0〜24時間(すなわち、IV投与から24〜48時間後)の間に得て、バイオアベイラビリティーの測定値として用いた。
【0058】
静脈内点滴による24−48時間ヒ素レベル対時間曲線(AUC)を得るために、ヒ素の排出は、結局、単一指数関数的減衰に近づくと想定された。これに基づき、個々の患者の対数ヒ素濃度対時間プロット(静脈内投与後24時間までの期間に及ぶ)を、香港大学コンピューター・センター(University of Hong Kong Computer Centre)によって開発された特別注文のコンピューターソフトウェアを用いる回帰分析に付した。負の傾斜(濃度減少を示す)と関連した最高値の次の回帰値(r)を、その後の計算のために選択した。かかる全コンピューター処理は、最低3ポイントに基づいていた。例えば、静脈内投与後に、1−24、2−24、3−24、4−24および6−24時間由来のデータセットのr値が各々、0.53、0.62、0.80、0.95および0.94であった場合、4−24時間由来のデータセットを計算に用いる、但し、その傾斜は負であった。次いで、選択したデータセットから、下記のパラメーターを求めた:β−排出相一次排出速度定数(Ke)、排出半減期(T1/2)、および推定ゼロ時濃度(C0)。各患者につき、これらのパラメーターを用いて、静脈内投与による推定24−48時間AUCを概算した。後者AUCと実際の(または全体の)24〜48時間AUCとの間の差(図1参照)を、経口投与による正味の0〜24時間AUCとみなした。
【0059】
血液の細胞性フラクション中のヒ素の評価
最初の静脈内投与から48時間後の血液の細胞性フラクション中のヒ素濃度(Cc)は、対応する血漿(Cp)および全血(Cb)中濃度ならびに一般的なヘマトクリット(Hct)値から、下記のように算出された:
血液1L由来の血漿中のヒ素のナノモル=Cp(1−Hct)
したがって、血液1L中の残りの細胞性フラクション中のヒ素量は、
Cb−[Cp(1−Hct)]
になる。
かくして、血液の細胞性フラクション1Lあたりのヒ素濃度(重量/容量)は、
Cc={Cb−[Cp(1−Hct)]}/Hct
である。
【0060】
結果
各患者の人口統計学的特徴、基礎ヒ素濃度、病態、および治療結果を表2に示す。発明者らの研究室において、許容された正常な範囲は下記の通りである:尿素3.2−7.5mM/L;クレアチニン86−126μM/L;アラニントランスアミナーゼ(ALT)5−63U/Lおよびアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)13−33U/L。Asを摂取した全患者において規則的に行われたECGsは、異常なQTc延長の例を生じなかった。
【0061】
【表2】

【0062】
経口投与による2日目の平均血漿および血液中ヒ素レベル対時間曲線(AUC)は、各々、対応する1日目の値の99%および87%であった。平均して、48時間血液細胞ヒ素レベルは、血漿中よりも270%大きかった(p=0.013)。予想外の合併症を患った患者はいなかった。
【0063】
4人の患者は再発性/難治性急性骨髄性白血病(AML)に罹患し、5人は再発性で急性の前骨髄球性白血病(APL)に罹患していた。難治性AML患者で血液学的に応答したものはなく、その後、全員が白血病により死亡した。再発性APLの5人は全員、完全な血液学的寛解を達成し、2002年4月現在で生存していた;ヒ素治療開始以後の生存期間中間値は11ヶ月であり、診断から36ヶ月である(20−56ヶ月)。再発性APLの3人(7、8および9)の場合、白血病の迅速な進行のため、一週間ずっと魚貝類を控える前に治療する必要があった。図2は、研究された9人の患者の血漿および血液中ヒ素濃度対時間プロットを示す。発明者らの経口As処方の全身性バイオアベイラビリティーに関し、表3は、IVおよび経口投与に関するAUCの知見をまとめる。表4は、研究された時点のこれらの患者の一般的なヘモグロビンおよびヘマトクリット値および48時間目の概算された細胞中ヒ素濃度を示す。平均して、細胞中As濃度は血漿中濃度の270%を越えた。
【0064】
【表3−1】

【0065】
【表3−2】

【0066】
【表4】

*p=0.013;両側対応のあるt−検定(two tailed paired t-test)
【0067】
考察
バイオアベイラビリティー
発明者らは、最初に各患者がどのようにAsを許容するのかを知りたかったので、100%全身性アベイラビリティーが保証されたとき(IV投与後)、無作為なバランスの一連の投与を該研究に用いなかった。各時間対血漿および全血濃度プロット下のAUC(図1および表3)に基づいて、発明者らの経口処方がIV投与に匹敵する許容できるバイオアベイラビリティーを達成したことは明らかであった。相当な患者間変動があったが、患者内(日間)変動は、比較的小さかった。経口As後のAUCはIV投与後のそれとほぼ同じであるようであったが、ある種の例外について説明する必要がある。かくして、患者6、8および9の場合、経口投与による全血AUCは、IV投与後よりも非常に大きく、同じことが、患者4および9の血漿AUCに当てはまった。可能性のある理由として:i)ヒ素投与または薬物レベル測定に伴う問題;ii)最初の(IV)投与後、Asが組織結合部位を飽和して、第2の(経口)投与後に血液中でより多く利用できるようになる;およびiii)個々の患者による2日目の食事に対する無配慮が挙げられる。
【0068】
それらが異なる病態、患者の生理機能の差、または他の因子によるものであったかどうかは断定できないが、9人の患者の間で、血漿および全血AUCにおいて相当な個人間の変動があり(表3);それは各々、約5および10倍に及んだ。Asの効果および毒性との投与量/薬物レベル関係におけるかかる個人間変動の可能性のある重要性は、さらなる研究を必要とする。
【0069】
細胞中濃度
Asが身体のある特定の組織中で濃縮されることは、よく知られている(Yamauchi H.ら、1985, 経口投与された三酸化ヒ素の代謝および排出(Metabolism and excretion of orally administered arsenic trioxide), Toxicology 34:113-21; Huang SYら、1998, 急性前骨髄球性白血病の治療に関連した急性および慢性ヒ素中毒(Acute and chronic arsenic poisoning associated with treatment of acute promyelocytic leukemia), Brit. J. Haemat. 103:1092-5; Ni JHら、1998, 急性前骨髄球性白血病の治療における静脈内三酸化ヒ素の薬物動態学(Pharmacokinetics of intravenous arsenic trioxide in the treatment of acute promyelocytic leukemia), Chinese Medical J. 111:1107-10)。発明者らの知見は、患者番号1を除き、血液の細胞性フラクション中の48時間濃度が対応する血漿中濃度よりも一貫して高かった(約2〜3倍)ことにおいて、該観察を支持する。患者番号1は、非常に不調で、貧血症であり(表4)、As治療の1日目に、2単位のパック細胞を投与され、それがおそらく、全血中ヒ素レベルを希釈した。As治療をモニターする助けとして、血液の細胞性フラクション中で達成されたヒ素濃度(骨髄の細胞性エレメント中のそれとおそらく近似している)は、所定の応答の達成および/または毒性の回避に重要であるということになりうる。
【0070】
該研究は、明らかに、本発明の経口処方がIV投与に匹敵するヒ素バイオアベイラビリティーを達成することを示した。さらに、発明者らの経口処方の繰り返される治療単位を受け続けた患者のうち5人は、(全員が再発性APL)は、著しくよくなった。かくして、本発明の経口As処方の使用は、患者に利便性および費用効果の改善を提供する重要な進歩である。発明者らの研究の結果は、また、ヒ素が血液の細胞性エレメント中に濃縮されることを示した。かくして、血液中、特にその細胞性フラクション中のヒ素をモニターすることは、おそらく、治療の効果および安全性を改善し、それにより、患者によりカスタマイズさせたAs治療を可能にする有用な手段である。
【0071】
結論
本発明の経口As処方は、該化合物のIV投与よりも便利で、費用効果があった。さらに、ヒ素の全身性バイオアベイラビリティーは、IV投与のそれに匹敵し、ヒ素は、As治療の開始から48時間後の血液の細胞性フラクション中に濃縮された。
【0072】
実施例2
下記の実施例は、本発明の三酸化ヒ素の経口処方を用いることの健康的利益、および該処方を用いる臨床研究の結果を示す。これらの実施例は、限定的なものとして解釈されるべきではない。
【0073】
経口三酸化ヒ素(As)処方の調製
経口三酸化ヒ素処方(経口−As)は、セクション6.1.1の記載と同様に調製された。
【0074】
患者
再発性APLの12人の一連の任意抽出した患者を、経口−Asで処理した(表4参照)。再発は、形態学的(骨髄中において>30%芽細胞+異常な前骨髄細胞)および細胞遺伝学的(付加的な核型異常を示す事例のいずれも伴わないt(15;17)の存在)または分子的(PML/RAARの存在)に確認された。治療は、インフォームド・コンセントと共に与えられ、プロトコールは香港大学医学部倫理委員会(University of Hong Kong Faculty of Medicine Ethics Committee)によって是認された。
全患者は、治療前のKarnofskyスコア80%を有した。ルーチンなモニタリングは、隔日の血液カウントおよび腎/肝機能試験、および最初は一週間毎日、次いで週に1回の心電図記録を包含した。
【0075】
治療プロトコール
第1の再発(R1)における8人の患者は、完全な寛解(CR、骨髄中における<5%の異常な前骨髄細胞+芽細胞)まで、経口−As(10mg/日)で処理し、次いで、イダルビシン(idarubicin)で強化した(最初の1ヶ月は5日間、次いで、2ヶ月間、1月につき2日間、6mg/m/日)(Kwong Y.L.ら、再発性急性前骨髄球性白血病における三酸化ヒ素−およびイダルビシン−誘導性寛解:予備的研究の臨床病理学的および分子的特徴(Arsenic trioxide- and idarubicin-induced remissions in relapsed acute promyelocytic leukaemia: clinicopathological and molecular features of a pilot study)、Am J Hematol. 2001;66:274-9)。患者番号1、2、3、5および7は、最初の薬物動態研究の一部として、静脈内As投与を1日受けた(Kumana C.R.ら、血液学的悪性腫瘍患者の治療に使用された経口三酸化ヒ素の全身性アベイラビリティー(Systemic availability of oral arsenic-trioxide used for treatment of patients with haematological malignancies)、Eur J Clin Pharmacol. 2002;58:521-526)。
第2の再発(R2)における5人の患者(CR2後に再発した事例1を包含する)は、寛解まで、経口−As(10mg/日)と全トランスレチノイン酸(ATRA)(45mg/m/日)との組み合わせで処理され(Au W.Y.ら、三酸化ヒ素を用いて治療が成功した以前の再発から再発している急性前骨髄球性白血病の三酸化ヒ素および全トランスレチノイン酸の組み合わせ治療(Combined arsenic trioxide and all-trans retinoic acid treatment for acute promyelocytic leukaemia recurring from previous relapses successfully treated using arsenic trioxide)、Br J Haematol. 2002;117:130-2)、次いで、AsおよびATRA(As:10mg/日、ATRA:45mg/m/日、2ヶ月毎に2週間)での強化治療を行った。
【0076】
結果
経口As(10mg/日)で中央値で37(22−59)日間治療した第1の再発(R1)における全患者は、第2の完全な寛解(CR2)を達成した。中央値で14(6−18)ヶ月の追跡調査で、数人の患者が連続的なCR2にあった。
経口As/ATRAで中央値で31(28−37)日間治療された第2の再発(R2)における4人の患者は、第3の完全な寛解(CR3)に達した。中央値で17(14−19)ヶ月の追跡調査で、全員がCR3のままであった。患者番号1は、治療から76日後に、CR3に達することなく、脳出血で死亡した。
【0077】
前骨髄球性白血病−レチノイン酸受容体アルファ(PML/RARA)のレベルは、As誘導性CR後、全患者において陽性のままであった。しかしながら、11事例において、寛解後3−6ヶ月で、PML/RARAが陰性になり、最後の骨髄試験まで陰性のままであった。患者番号1におけるPCRは、R2の直前に陽性になった。
【0078】
4人の患者(患者番号1、4、10および12)は、調節のためにイダルビシン(idarubicin)(6mg/m/日x5、白血球数が>15x10/Lの場合に与えられる)を必要とする白血球増加症(中央値74(62−120)x10/L)を発症した。しかしながら、ATRA症候群(Camacho L.H.ら、三酸化ヒ素で治療された急性前骨髄球性白血病患者における白血球増加症およびレチノイン酸症候群(Leukocytosis and the retinoic acid syndrome in patients with acute promyelocytic leukemia treated with arsenic trioxide)、J Clin Oncol. 2000;18:2620-5)に類似の総合的症状は観察されなかった。
【0079】
肝臓機能試験(LFT)の欠陥は、5人の患者において起こり、中央値11(5−21)日でピークになった。LFTは治療の一時的な中止後に標準化し、さらなる経口As治療は妥協されなかった。軽度の皮膚発疹(等級I)が5人の患者に発症し、対症療法で鎮静した。経口As/ATRAの2人の患者に頭痛が発症し、ATRAの投与量を分割することによって鎮静した。以前に報告された型のECG異常(Ohnishi K. ら、急性前骨髄球性白血病のための三酸化ヒ素で治療された患者におけるQTインターバルおよび心室性頻拍の延長(Prolongation of the QT interval and ventricular tachycardia in patients treated with arsenic trioxide for acute promyelocytic leukemia)、Ann Intern Med. 2000;133:881-5)を示す患者はいなかった。
【0080】
考察
該予備的研究における発明者らの予備的結果は、経口Asが再発したAPLにおいて非常に活性であり、静脈内Asに匹敵する効果を有することを示した(Tallman M.S.ら、急性前骨髄球性白血病:発展している治療法(Acute promyelocytic leukemia: evolving therapeutic strategies)、Blood 2002;99:759-67)。白血球増加症、LFT攪乱および皮膚発疹の頻度および重篤度を包含する副作用もまた、静脈内Asに匹敵した(Niu C.ら、急性前骨髄球性白血病の三酸化ヒ素での治療における研究: 11人の新たに診断された急性前骨髄球性白血病患者および47人の再発性の急性前骨髄球性白血病患者における寛解誘導、追跡調査および分子モニタリング(Studies on treatment of acute promyelocytic leukemia with arsenic trioxide: remission induction, follow-up, and molecular monitoring in 11 newly diagnosed and 47 relapsed acute promyelocytic leukemia patients)、Blood 1999;94:3315-24; Soignet S.L.ら、再発性急性前骨髄球性白血病における三酸化ヒ素の合衆国多施設研究(United States multicenter study of arsenic trioxide in relapsed acute promyelocytic leukemia)、J Clin Oncol. 2001;19:3852-60)。心不整脈は見られず、このことは、不整脈がたった1/58人の患者にしか見られなかった中国人患者における静脈内Asの以前の研究と類似していた(Niu C.ら、上掲)。
【0081】
たった4人の患者だけがCR誘導のための単一薬剤として経口Asを投与され、残りの患者は、CRが達成される前に、ATRAまたはイダルビシンを投与されたことに注目することが重要である。このような制限はあるが、発明者らの結果は、経口Asが静脈内Asに類似する短期間の効果および安全プロファイルを有したことを示した。近年の研究は、また、経口四硫化四ヒ素がAPLにおいて非常に効果があることを示した(Lu D.P.ら、急性前骨髄球性白血病の治療のための四硫化四ヒ素:予備的報告(Tetra-arsenic tetra-sulfide for the treatment of acute promyelocytic leukemia: a pilot report)、Blood 2002;99:3136-43)。しかしながら、静脈内Asと比較した経口Asの長期間の効果および安全性には、より長い追跡調査が必要とされるであろう。
【0082】
最後に、経口または静脈内Asおよび造血幹細胞移植は、再発性APL患者にとって効果的な治療モダリティーであるが、それらの相対的なメリットは不確定であり、この問題に取り組むためには、さらに無作為化した試験が必要とされるであろう。
【0083】
同等物
当業者は、単なるルーチンな実験を用いて、本明細書に記載の発明の特定の具体例と同等な多くのものを理解し、または確認することができるであろう。かかる同等物は、請求の範囲によって包含されることが意図される。
本明細書中に引用される全ての出版物、特許および特許出願は、あたかも各出版物、特許または特許出願が特別かつ個々に、出典明示により本明細書の一部にされると示されるかの如く、その同程度まで出典明示により本明細書中に組み込まれるものとする。
本明細書中の引用文献の引用または考察は、かかるものが本発明の先行技術であるという容認として解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】図1は、単一の患者における三酸化ヒ素の静脈内および経口投与によるヒ素レベル対時間曲線(AUC)の代表的な評価を示す。全AUCは、台形法則を用いてコンピューター処理された。経口投与による正味の24h AUCは、2日目の総24−48h AUCと対応する静脈内投与によるAUCとの間の差として算出された。後者のAUCは、1日目の患者の排出薬物動態学の概算から得られた推定ヒ素レベルを用いて算出された(表IV参照)。図1は、Kumanaら、Eur. J Clin Pharmacol. 2002, 58: 521-6(出典明示により全体として本明細書の一部とされる)から借用された。
【図2】図2は、1日目および2日目における全9人の患者の血漿中ヒ素濃度および全血中ヒ素濃度を示す。図2もまた、前掲のKumanaら(出典明示により全体として本明細書の一部とされる)から借用された。
【図3】図3は、経口Asで治療された再発した急性前骨髄球性白血病(APL)の12人の一連の患者の臨床病理学的特徴および結果を示す。図3は、Auら、Blood 2003; 102: 407-8(出典明示により全体として本明細書の一部とされる)から借用された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)三酸化ヒ素を滅菌水に加えて第1の溶液を作成し;
(b)水酸化ナトリウムを第1の溶液に加えて第2の溶液を作成し;次いで
(c)塩酸を第2の溶液に加えて第3の溶液を作成することを含む方法によって調製される、三酸化ヒ素を含む経口投与用組成物。
【請求項2】
工程(a)において三酸化ヒ素が粉末である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
三酸化ヒ素粉末が少なくとも90%、95%、96%、97%、98%または99%純度を有する請求項2記載の組成物。
【請求項4】
水酸化ナトリウムのモル濃度が3Mである請求項1記載の組成物。
【請求項5】
塩酸のモル濃度が6Mである請求項1記載の組成物。
【請求項6】
第3の溶液のpHが8.0である請求項5記載の組成物。
【請求項7】
さらに、希塩酸および滅菌水を第3の溶液に加えて最終溶液を作成する工程を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
最終溶液がpH7.2を有する請求項7記載の組成物。
【請求項9】
最終溶液が1mg/mlの三酸化ヒ素濃度を有する請求項7記載の組成物。
【請求項10】
(a)500mgの三酸化ヒ素を150mlの滅菌水に加えて第1の溶液を作成する第1工程;
(b)3M水酸化ナトリウムを第1の溶液に加えて第2の溶液を作成する第2工程;
(c)250mlの滅菌水を第2の溶液に加えて第3の溶液を作成する第3工程;
(d)6M塩酸を第3の溶液に加えて第4の溶液を作成する第4工程;および
(e)希塩酸および滅菌水を第4の溶液に加えて最終溶液を作成する第5工程を含む方法によって調製される、三酸化ヒ素を含む経口投与用組成物。
【請求項11】
工程(a)における三酸化ヒ素が粉末である請求項10記載の組成物。
【請求項12】
三酸化ヒ素粉末が少なくとも90%、95%、96%、97%、98%または99%純度を有する請求項11記載の組成物。
【請求項13】
三酸化ヒ素が第1の溶液中に完全に溶解している請求項10記載の組成物。
【請求項14】
工程(d)における塩酸の添加前に、三酸化ヒ素が完全に溶解している請求項10記載の組成物。
【請求項15】
第4の溶液のpHが8.0である請求項10記載の組成物。
【請求項16】
最終溶液がpH7.2を有する請求項10記載の組成物。
【請求項17】
最終溶液が500mlの最終容量を有する請求項10記載の組成物。
【請求項18】
最終溶液が1mg/mlの三酸化ヒ素濃度を有する請求項10記載の組成物。
【請求項19】
(a)500mgの三酸化ヒ素を150mlの滅菌水に加えて第1の溶液を作成する第1工程;
(b)3M水酸化ナトリウムを第1の溶液に加えて第2の溶液を作成する第2工程;
(c)250mlの滅菌水を第2の溶液に加えて第3の溶液を作成する第3工程;
(d)6M塩酸を第3の溶液に加えて第4の溶液を作成する第4工程;および
(e)希塩酸および滅菌水を第4の溶液に加えて最終溶液を作成する第5工程を含む、経口投与用三酸化ヒ素組成物の作成方法。
【請求項20】
工程(a)において三酸化ヒ素が粉末である請求項19記載の方法。
【請求項21】
三酸化ヒ素粉末が少なくとも90%、95%、96%、97%、98%または99%純度を有する請求項20記載の方法。
【請求項22】
三酸化ヒ素が第1の溶液中に完全に溶解している請求項19記載の方法。
【請求項23】
工程(d)における塩酸の添加前に、三酸化ヒ素が完全に溶解している請求項19記載の方法。
【請求項24】
第4の溶液のpHが8.0である請求項19記載の方法。
【請求項25】
最終溶液がpH7.2を有する請求項19記載の方法。
【請求項26】
最終溶液が500mlの最終容量を有する請求項19記載の方法。
【請求項27】
最終溶液が1mg/mlの三酸化ヒ素濃度を有する請求項19記載の方法。
【請求項28】
(a)500mgの三酸化ヒ素を150mlの滅菌水に加えて第1の溶液を作成する第1工程;
(b)3M水酸化ナトリウムを第1の溶液に加えて第2の溶液を作成する第2工程;
(c)250mlの滅菌水を第2の溶液に加えて第3の溶液を作成する第3工程;
(d)6M塩酸を第3の溶液に加えて第4の溶液を作成する第4工程;および
(e)希塩酸および滅菌水を第4の溶液に加えて最終溶液を作成する第5工程を含む方法によって調製される三酸化ヒ素組成物の治療上有効量を治療の必要な対象に投与することを特徴とする、該対象において血液学的悪性腫瘍を治療する方法。
【請求項29】
工程(a)において三酸化ヒ素が粉末である請求項28記載の方法。
【請求項30】
三酸化ヒ素粉末が少なくとも90%、95%、96%、97%、98%または99%純度を有する請求項29記載の方法。
【請求項31】
三酸化ヒ素が第1の溶液中に完全に溶解している請求項28記載の方法。
【請求項32】
工程(d)における塩酸の添加前に、三酸化ヒ素が完全に溶解している請求項28記載の方法。
【請求項33】
第4の溶液のpHが8.0である請求項28記載の方法。
【請求項34】
最終溶液がpH7.2を有する請求項28記載の方法。
【請求項35】
最終溶液が500mlの最終容量を有する請求項28記載の方法。
【請求項36】
最終溶液が1mg/mlの三酸化ヒ素濃度を有する請求項28記載の方法。
【請求項37】
三酸化ヒ素組成物が対象に経口投与される請求項28記載の方法。
【請求項38】
三酸化ヒ素組成物が少なくとも1ヶ月間、対象に経口投与される請求項37記載の方法。
【請求項39】
治療上有効量が10mgである請求項28記載の方法。
【請求項40】
血液学的悪性腫瘍が、急性骨髄性白血病、急性非リンパ球性白血病、骨髄芽球性白血病、前骨髄球性白血病、骨髄単球性白血病、単球性白血病、赤白血病、骨髄異形成症候群、急性前骨髄球性白血病、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、毛様細胞性白血病、真性赤血球増加症、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、骨髄腫、巨細胞骨髄腫、無痛性骨髄腫、限局性骨髄腫、多発性骨髄腫、形質細胞性骨髄腫、硬化性骨髄腫、孤立性骨髄腫、くすぶり型多発性骨髄腫、非分泌性骨髄腫、骨硬化性骨髄腫、形質細胞性白血病、孤立性形質細胞腫、および髄外性形質細胞腫からなる群から選択される請求項28記載の方法。
【請求項41】
血液学的悪性腫瘍が急性骨髄性白血病である請求項28記載の方法。
【請求項42】
血液学的悪性腫瘍が急性前骨髄球性白血病である請求項28記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−503109(P2006−503109A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−500968(P2005−500968)
【出願日】平成15年10月8日(2003.10.8)
【国際出願番号】PCT/CN2003/000843
【国際公開番号】WO2004/032822
【国際公開日】平成16年4月22日(2004.4.22)
【出願人】(505134165)ザ・ユニバーシティ・オブ・ホンコン (2)
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY OF HONG KONG
【Fターム(参考)】