説明

上・下鋳型のマッチプレートからの分離方法

【課題】上・下鋳枠内にそれぞれ造型した上・下鋳型を、マッチプレートから分離する際に、鋳型が変形したり、欠けたりすることのない上・下鋳型のマッチプレートからの分離方法を提供する。
【解決手段】上・下鋳枠2・4内にそれぞれ造型した上・下鋳型A・Bを、ピストンロッド1の先端が前記上鋳枠の左右両側にそれぞれ装着された2本の上向きの第1油圧シリンダ5と、下鋳枠の前後左右四側面にそれぞれ装着されピストンロッド6の伸長作動によりマッチプレート7を下鋳枠から押し離す方向へ押圧可能な4本の上向きの第2油圧シリンダ8とを用いてマッチプレート7から分離する方法であって、マッチプレート7がほぼ静止した状態の下に、上・下鋳枠内にそれぞれ造型した上および下鋳型を、静止状態から平面度を維持しながらほぼ同時に上および下方向へそれぞれ移動させてマッチプレート7から分離することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、上・下鋳型のマッチプレートからの分離方法に係り、より詳しくは、マッチプレート、上・下鋳枠および上・下スクイズプレートを用いて上・下鋳枠内にそれぞれ造型した上・下鋳型を、マッチプレートから分離するのに好適な方法に関する。
【背景技術】
【0002】

従来、この種の分離方法の一つとして、上鋳型内在の上鋳枠を固定するとともに、下鋳型内在の下鋳枠とマッチプレートを一体として一緒に下降させて、まず上鋳型内在の上鋳枠をマッチプレートから分離し、その後、下鋳型内在の下鋳枠とマッチプレートの下降の途中で、マッチプレートだけを停止させて下鋳型を下鋳枠と一緒にマッチプレートから分離するようにしたものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許文献1 特開平8−19832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このように構成された従来の上・下鋳型のマッチプレートからの分離方法では、マッチプレートだけを停止させて下鋳型をマッチプレートから分離する際に、分離される下鋳型に大きな衝撃が作用して、その下鋳型は変形したり欠けたりし、その結果、欠陥鋳物を誘発するなどの問題があった。
【0005】
本発明は上記の問題を解消するためになされたもので、その目的は、マッチプレート、上・下鋳枠および上・下スクイズプレートを用いて上・下鋳枠内にそれぞれ造型した上・下鋳型を、マッチプレートから分離する際に、鋳型が変形したり、欠けたりすることのない上・下鋳型のマッチプレートからの分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために本発明の上・下鋳型のマッチプレートからの分離方法は、マッチプレート、上・下鋳枠および上・下スクイズプレートを用いて上・下鋳枠内にそれぞれ造型した上・下鋳型を、ピストンロッドの先端が上鋳枠の左右両側に装着されかつそのシリンダ本体が下鋳枠の左右両側にそれぞれ装着された2本の上向きの第1油圧シリンダと、下鋳枠の前後左右四側面にそれぞれ装着されピストンロッドの伸長作動によりマッチプレートを下鋳枠から押し離す方向へ押圧可能な4本の上向きの第2油圧シリンダとを用いてマッチプレートから分離する方法であって、マッチプレートがほぼ静止した状態の下に、上・下鋳枠内にそれぞれ造型した上鋳型および下鋳型を、静止状態から平面度を維持しながらほぼ同時に上および下方向へそれぞれ移動させてマッチプレートから分離することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上記の説明から明らかなように本発明は、マッチプレート、上・下鋳枠および上・下スクイズプレートを用いて上・下鋳枠内にそれぞれ造型した上・下鋳型を、ピストンロッドの先端が前記上鋳枠の左右両側に装着されかつそのシリンダ本体が下鋳枠の左右両側にそれぞれ装着された2本の上向きの第1油圧シリンダと、下鋳枠の前後左右四側面にそれぞれ装着されピストンロッドの伸長作動によりマッチプレートを下鋳枠から押し離す方向へ押圧可能な4本の上向きの第2油圧シリンダとを用いてマッチプレートから分離する方法であって、マッチプレートがほぼ静止した状態の下に、上・下鋳枠内にそれぞれ造型した上鋳型および下鋳型を、静止状態から平面度を維持しながらほぼ同時に上および下方向へそれぞれ移動させてマッチプレートから分離するから、従来のこの種の分離方法のように、分離される鋳型に大きな衝撃が作用してその下鋳型が変形したり欠けたりすることは、起こらないなどの優れた実用的効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】

【図1】本発明の一実施例を示す一部断面正面図である。
【図2】図1の作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0009】
本発明を適用した上・下鋳型のマッチプレートからの分離装置の一実施例について図1および図2に基づき詳細に説明する。本分離装置は、図1に示すように、ピストンロッド1の先端が上鋳枠2の左右両側に装着されかつそのシリンダ本体3が下鋳枠4の左右両側にそれぞれ装着された2本の上向きの第1油圧シリンダ5・5と、下鋳枠4の前後左右四側面にそれぞれ装着されピストンロッド6の伸長作動によりマッチプレート7を下鋳枠4から押し離す方向へ押圧可能な4本の上向きの第2油圧シリンダ8・8と、第1油圧シリンダ5・5におけるピストンロッド1を収縮作動させる側からの排油を第2油圧シリンダ8・8におけるピストンロッド6を伸長作動させる側に誘導可能な油圧回路9と、上鋳枠2の前後左右四側面にそれぞれ装着されて上鋳枠2からマッチプレート7を押し離すように作用しかつ伸縮性を有する弾性機構27と、で構成してある。
【0010】
そして、油圧回路9においては、第1油圧シリンダ5におけるピストンロッド1を伸長作動させる側に、配管10、チェック弁12および四方口方向切換弁13を介して油圧ポンプ14が接続してある。また、第1油圧シリンダ5におけるピストンロッド1を収縮作動させる側は、配管15、チェック弁16および四方口方向切換弁13を介して油圧タンク17に接続してあり、チェック弁16のパイロット部は四方口方向切換弁18を介して油圧ポンプ14および油圧タンク17に接続してある。また、第1油圧シリンダ5・5におけるピストンロッド1を収縮作動させる側は、配管15、配管19、四方口方向切換弁20、速度調整回路21および配管22を介して第2油圧シリンダ8・8におけるピストンロッド6を伸長作動させる側に接続してある。また、第2油圧シリンダ8・8におけるピストンロッド6を収縮作動させる側およびピストンロッド6を伸長作動させる側は、配管23、配管24、速度調整回路25および四方口方向切換弁26を介して油圧ポンプ14および油圧タンク17に接続してある。
【0011】
また、弾性機構27は、上鋳枠2に装着した筒部材28と、筒部材28の下端に上下動可能にして挿設しかつ筒部材28に内装した圧縮コイルばね(図示せず)によって押圧される当接部材29と、で構成してある。
【0012】

このように構成したものは、図1に示す状態において、上・下鋳枠2・4内にそれぞれ造型した上・下鋳型A・Bを、マッチプレート7から分離するには、まず、図2のaに示すように、四方口方向切換弁13を切り換えて第1油圧シリンダ5・5におけるピストンロッド1・1を伸長作動させる側に、油圧ポンプ14から吐出される圧油を供給する。
【0013】
すると、第1油圧シリンダ5・5が伸長作動しかつ弾性機構27・27の当接部材29・29による押圧力の付加により、上鋳枠2を介して上鋳型Aがマッチプレート7から分離されると同時に、第1油圧シリンダ5・5の伸長作動に伴い第1油圧シリンダ5・5におけるピストンロッド1・1を収縮作動させる側から排出される油が、四方口方向切換弁20の切換えにより第2油圧シリンダ8・8におけるピストンロッド6・6を伸長作動させる側に誘導されて第2油圧シリンダ8・8は伸長作動し、この結果、マッチプレート7がほぼ静止した状態の下に、上・下鋳型A・Bは、静止状態から平面度を維持しながらほぼ同時に上および下方向へそれぞれ移動してマッチプレート7から分離されることとなる。
【0014】
続いて、図2のbに示すように、第1油圧シリンダ5・5におけるピストンロッド1・1を伸長作動させる側に圧油を供給し続けて、第1油圧シリンダ5・5をストロークエンドまで伸長作動し上鋳型A内在の上鋳枠2を上昇端まで上昇させるとともに、第1油圧シリンダ5・5のストロークエンドまでの伸長作動に伴い第1油圧シリンダ5・5におけるピストンロッド1・1を収縮作動させる側から排出される油は、第2油圧シリンダ8・8におけるピストンロッド6・6を伸長作動させる側を満たした後、四方口方向切換弁20の切換えにより、油圧タンク17に戻される。
なお、 上・下鋳枠2・4が分離したマッチプレート7は、図示しないマッチプレート搬入出機構の上に載る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マッチプレート、上・下鋳枠および上・下スクイズプレートを用いて前記上・下鋳枠内にそれぞれ造型した上・下鋳型を、ピストンロッドの先端が前記上鋳枠の左右両側に装着されかつそのシリンダ本体が前記下鋳枠の左右両側にそれぞれ装着された2本の上向きの第1油圧シリンダと、前記下鋳枠の前後左右四側面にそれぞれ装着されピストンロッドの伸長作動により前記マッチプレートを前記下鋳枠から押し離す方向へ押圧可能な4本の上向きの第2油圧シリンダとを用いて前記マッチプレートから分離する方法であって、
前記マッチプレートがほぼ静止した状態の下に、前記上・下鋳枠内にそれぞれ造型した上鋳型および下鋳型を、静止状態から平面度を維持しながらほぼ同時に上および下方向へそれぞれ移動させて前記マッチプレートから分離することを特徴とする上・下鋳型のマッチプレートからの分離方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−142897(P2009−142897A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−23699(P2009−23699)
【出願日】平成21年2月4日(2009.2.4)
【分割の表示】特願2003−420491(P2003−420491)の分割
【原出願日】平成15年12月18日(2003.12.18)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】