説明

上皮病変を治療するためのヒアルロン酸の塩を基とする組成物

【課題】口腔、咽頭および食道腔の病変の治療に使用することができ、上皮の病変および結合組織の病変の治療および予防に有用である、非常に低い粘度を有する生理学的に許容可能なヒアルロン酸塩を基とする組成物の提供。
【解決手段】ヒアルロン酸の少なくとも1種の生理学的に許容可能な塩の0.001%から100%を含み、水中1%w/vの濃度にて20℃において0(ゼロ)mPa.sであり、水中6%w/vの濃度にて20℃において10mPa.s未満である粘度を有することを特徴とする、上皮および結合組織の病変を治療するための組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトおよび動物両方の上皮および結合組織の病変の治療および予防のための、ヒアルロン酸の生理学的に許容可能な塩を基とする組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は酸性非硫化ムコ多糖であり、結合組織の基本的構成要素である。ヒトおよび動物において、ヒアルロン酸は結合組織においてのみでなく、硝子体液、房水などの重要な体液中および臍帯においても存在する。ヒアルロン酸はヒトまたは動物での使用について毒性および禁忌を有さない。
【0003】
ヒアルロン酸は、天然物から、例えば雄鶏のトサカから抽出により得ることができ、または生物工学的方法により製造することができる。ヒアルロン酸は製造方法に依存して15,000,000に及ぶことができる広い分子量スペクトルを有する。ヒアルロン酸はヒトの治療および化粧品においてナトリウムまたはカリウム塩として使用されることが周知である。ヒアルロン酸の外用使用は結合器質化を促進する有用な効果を有し、ヒアルロナーゼを産生する微生物により引き起こされる炎症過程を減少または排除することにおいてもまた効果的であり、炎症成分の消散を促進し、過度の毛細管の浸透性を減少させ、組織修復過程を促進し、遊離水を分子構造に代謝的に結合させることにより抗浮腫生成作用を発現する。
【0004】
ヒアルロン酸の治療的適用は擦過傷様剥離由来の皮膚障害、動脈硬化性脈管障害由来の潰瘍、静脈瘤性潰瘍、瘢痕化遅延および外科手術を含む。
【0005】
化粧品分野においては、ヒアルロン酸はその活性化、強壮、皮膚修復および保水特性のために使用される。
【0006】
US−A−4,736,024は、局所投与用の医薬組成物における薬理学的活性物質用の媒体としてのヒアルロン酸およびこの塩の使用を記載している。
【0007】
EP−B−0444492は、口腔粘膜の炎症状態を治療および予防するための高分子量(800,000から4,000,000の間)のヒアルロン酸(およびこの塩)の使用を示している。
【0008】
EP−B−0138572は、平均分子量が50,000から730,000の間のヒアルロン酸の画分およびこの塩の治療的使用を記載している。平均分子量50,000から100,000の間の画分(“ヒアラスチン”(Hyalastine)として周知)は、種々の病変において瘢痕化作用を有しており、平均分子量500,000から730,000の間の画分(“ヒアレクチン”(Hyalectin)として周知)は、関節連結部の変性障害および外傷性障害の治療ならびに機能改善に使用される。
【0009】
US−A−4,517,295は、高純度、極低粘度および低分子量(例えば、第4コラムの64から68行目および第5コラムの6から7行目に記載のとおり、10,000未満を含む)のヒアルロン酸および/またはこの塩(特にヒアルロン酸ナトリウム)を調製するための発酵法を記載している。この特許は、この方法において得られた生成物を湿潤剤、潤滑剤として、また手術後使用に(第1コラムの65から68行目)および眼科病理学用に(第5コラムの8から13行目)使用できることを明記している。
【0010】
US−A−5,093,487は、高純度形態にて、高分子量(少なくとも1,800,000に及ぶ:第2コラムの47から50行目参照)および低粘度(実施例1ならびに請求項3および14参照)を有するヒアルロン酸および/またはこの塩を調製する方法を記載している。特定の治療または化粧品用の使用は記載されていない。
【発明の開示】
【0011】
本発明によれば、粘度が水中1%w/vの濃度で20℃において0(ゼロ)mPa.sに等しく、水中6%w/vの濃度で20℃において10mPa.s未満であるヒアルロン酸の生理学的に許容可能な塩(特に、ナトリウム塩またはカリウム塩の形態)を局所的、注射用および経口用のいずれも治療用組成物の調製に使用すると、これらの組成物はヒトおよび動物の身体の上皮および結合組織の病変に重要な瘢痕化活性を示すことが驚くべきことに発見された。
【0012】
前述の組成物は液体、半固体または固体形態であることができる。低粘度であることは、本発明で請求しているものなど特に高いヒアルロン酸濃度を有する組成物を得ることを可能とし、種々の利益を提供し、例えば、実際の使用において、特に治療的使用において、例えばより大量の有効成分の投与をして、治療効果を増大させること、例えば適切に調節できる投与量決定における柔軟性を高めること、および患者による治療の受容を改善し、治療を成功させることを可能にする。
【0013】
ヒアルロン酸ナトリウム水溶液濃度の広範囲で粘度がないまたは非常に低いことは、粘稠化剤、ゲル化剤、濃化剤などの成分が存在する組成物の調製において、これらのレオロジー的特徴を変化させないことから、特に重要な特徴である。水の存在下における場合も含み、意図した用途に適したレオロジー的特徴を有する、例えば20%より高い、高いヒアルロン酸ナトリウム濃度の組成物を得ることもできる。
【0014】
本発明の組成物は、ヒアルロン酸の少なくとも1種の生理学的に許容可能な塩(好ましくは、ナトリウムまたはカリウム塩)を0.001%から100%含み、水中1%w/vの濃度にて20℃において0(ゼロ)mPa.sであり、水中6%w/vの濃度にて20℃において10mPa.s未満の粘度を有する。
【0015】
これらの組成物は、ヒアルロン酸および意図した用途に適合性を有する生理学的に許容可能な賦形剤を含むことができる。
【0016】
好ましい賦形剤は、水、アルコール、天然または合成油、ゲル化剤、懸濁剤、乳化または濃化剤製品、不活性粉末、天然および合成ポリマー、甘味料、香料、芳香剤、着色料、保存料ならびに上皮および結合組成での吸収を促進する化合物から成る群から選択される。
【0017】
本発明は、水中1%w/vの濃度にて20℃において0(ゼロ)mPa.sであり、水中6%w/vの濃度にて20℃において10mPa.s未満の粘度を有する、上皮および結合組織の病変の治療のための医薬組成物を調製するためのヒアルロン酸の生理学的に許容可能な塩(ナトリウムまたはカリウム塩など)の使用にも関する。
【0018】
本発明の解釈を明確にするため、いくつかの非限定的な実施例を以下に記載する。
【実施例1】
【0019】
US−A−5,093,487の実施例1に記載の手順に従って、平均分子量1,800,000を有し、水中1%w/vの濃度で20℃において9mPa.sの粘度を有するヒアルロン酸のナトリウム塩を調製する。
【0020】
この塩は、膣および口腔上皮の病変治療用の組成物の調製に0.005%の濃度で使用することができる。
【実施例2】
【0021】
再びUS−A−5,093,487の実施例1の内容に従って、平均分子量1,000,000を有し、水中1%w/vの濃度で20℃において5mPa.sの粘度を有するヒアルロン酸のナトリウム塩を調製する。
【0022】
得られた塩は、固形または嚥下するための錠剤形あるいは一般にチューインガムとして周知の型であってよい組成物(ヒアルロン酸ナトリウム塩は5%の濃度を有する)の調製に使用することができる。
【0023】
この組成物は、口腔、咽頭および食道腔の病変の治療に使用することができる。
【実施例3】
【0024】
US−A−4,517,295に記載の方法を使用して、平均分子量10,000を有し、水中6%w/vの濃度にて20℃において1.5mPa.sを有するヒアルロン酸ナトリウムとしてヒアルロン酸を調製する。得られた化合物を使用して、特に内部の外傷性および外科手術による病変の治療ならびに眼科病変および聴覚管の病変の治療用の注射可能な液状組成物(化合物は10%の濃度で存在する)を調製する。前記の型の化合物は仏国企業SOLIANCEによりHA TBPMの名称で販売されている。
【実施例4】
【0025】
再びUS−A−4,517,295の内容に従って、平均分子量27,000を有し、水中2%w/vの濃度にて20℃において0.5mPa.sを有する、ヒアルロン酸ナトリウムとしてのヒアルロン酸を調製する。
【0026】
この生成物は、歯科口腔学において、例えば抜歯後に有用である粉末(100%前記製品から成る)の調製に使用することができる。
【0027】
前記の特徴を有する生成物は仏国企業SOLIANCEによりRenovhyalの名称で製造されている。
【実施例5】
【0028】
実施例3および4と同じ方法を使用し、平均分子量50,000を有し、水中5%w/vの濃度にて20℃において4mPa.sを有する、ヒアルロン酸ナトリウムとしてのヒアルロン酸を調製する。
【0029】
この生成物は、皮膚または粘膜(肛門、膣)の病変の治療用のクリームまたはゲル(これらにおいて当該製品は濃度1%で含まれる)の調製に使用することができる。
【0030】
この生成物もまた仏国企業SOLIANCEから、これもまたRenovhyalの商標名で入手可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸の少なくとも1種の生理学的に許容可能な塩の0.001%から100%を含み、水中1%w/vの濃度にて20℃において0(ゼロ)mPa.sであり、水中6%w/vの濃度にて20℃において10mPa.s未満である粘度を有することを特徴とする、上皮および結合組織の病変を治療するための組成物。
【請求項2】
前記塩が、ヒアルロン酸のナトリウムおよびカリウム塩から成る群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ヒアルロン酸および前記病変の治療における使用に適合性を有する賦形剤を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
上皮および結合組織の病変を治療するための医薬組成物を調製するための、水中1%w/vの濃度にて20℃において0(ゼロ)mPa.sであり、水中6%w/vの濃度にて20℃において10mPa.s未満である粘度を有する、ヒアルロン酸の生理学的に許容可能な塩の使用。

【公開番号】特開2008−56667(P2008−56667A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−201554(P2007−201554)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(505472872)
【Fターム(参考)】